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特開2023-172785ピンホール測定装置用の標準サンプル、ピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法、及びピンホールの測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172785
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ピンホール測定装置用の標準サンプル、ピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法、及びピンホールの測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231129BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231129BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20231129BHJP
   G01N 1/32 20060101ALI20231129BHJP
   G01N 21/93 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/66 N
H01L21/304 621A
H01L21/304 621B
H01L21/304 631
G01N1/00 102B
G01N1/28 G
G01N1/32 B
G01N21/93
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084851
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 久之
【テーマコード(参考)】
2G051
2G052
4M106
5F057
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB04
2G051BA06
2G051CB02
2G051EA24
2G052AA13
2G052AA39
2G052AB27
2G052AC28
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA02
2G052BA15
2G052EC14
2G052EC18
2G052EC22
2G052GA35
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA11
4M106AA01
4M106BA08
4M106CA45
4M106CB19
4M106DJ19
5F057AA19
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA36
5F057DA05
5F057DA11
5F057DA21
5F057DA22
5F057DA40
(57)【要約】
【課題】シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切なサイズ標準サンプルを提供することを目的とする。
【解決手段】シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルであって、前記標準サンプルは、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハであり、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部が形成され、該凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされて貼り合わせ界面に前記ピンホールが形成されたものであることを特徴とするピンホール測定装置用の標準サンプル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルであって、
前記標準サンプルは、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハであり、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部が形成され、該凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされて貼り合わせ界面に前記ピンホールが形成されたものであることを特徴とするピンホール測定装置用の標準サンプル。
【請求項2】
前記凹部は半球形状であることを特徴とする請求項1に記載のピンホール測定装置用の標準サンプル。
【請求項3】
前記一方のシリコン単結晶ウェーハの凹部が形成された表面には、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピンホール測定装置用の標準サンプル。
【請求項4】
シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法であって、
(1)2枚のシリコン単結晶ウェーハを準備する工程、
(2)少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部を形成する工程、
(3)前記凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせて貼り合わせ界面に前記ピンホールを形成する工程、及び
(4)前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの厚さを所定の厚さに調整を行い、前記標準サンプルを得る工程、
を含むことを特徴とするピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、レーザーマーカーまたは集束イオンビーム(FIB)で半球形状の前記凹部を形成することを特徴とする請求項4に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)において、前記一方のシリコン単結晶ウェーハの表面に、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部を形成することを特徴とする請求項4に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
【請求項7】
前記工程(4)において、前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの両面もしくは片面に、表面研削、エッチング、及び表面研磨のいずれか1つ以上を行うことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
【請求項8】
シリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する方法であって、
(1)請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルを用い、前記標準サンプルに形成された少なくとも1つの前記ピンホールのサイズをピンホール測定装置で測定して測定結果を得る工程、
(2)前記測定結果に基づいて、前記ピンホール測定装置を校正する工程、及び
(3)前記校正したピンホール測定装置を用いて、測定対象のシリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する工程、
を含むことを特徴とするピンホールの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール測定におけるピンホールサイズ決定のための標準サンプル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶ウェーハ(以下、単にウェーハという場合がある)は純度テンナイン(99.99999999%以上)のシリコンで作られていると思われているが、実際には、ドーパントや酸素、炭素などが含まれている。また点欠陥であるVacancy(空孔)が密集して形作られたVoid欠陥なども存在する。
【0003】
この様な欠陥の中で一際大きな空洞、すなわちピンホールと呼ばれる欠陥も存在する。これは単結晶引き上げ中に、メルトの中に発生した泡がシリコン単結晶中に取り込まれることで生じる欠陥と考えられている。ピンホールはシリコン単結晶中に存在する他の欠陥よりも大きく10μmから100μm以上のサイズの欠陥も存在する。
【0004】
このようなピンホール欠陥の発生頻度は極めて少なく、ウェーハの全数検査を行うことで見つけることができる。検査方法はIR(赤外線)をウェーハに透過し、透過率の違いでピンホールを検出する場合が多い。例えば特許文献1には透過量の違いによって、ピンホール位置を特定することが記載されている。この時ピンホールのある所では透過率が変化する。この透過率の違いをピンホールサイズに換算するが、その際に適切な標準サンプルが無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-2648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピンホールの信号強度と、ピンホールのサイズとを関連付ける方法はいくつかあり、その方法と問題点は以下の通りである。
【0007】
ピンホール部の透過率の差を測定してから、実際のピンホールサイズを断面TEMなどで測定する方法がある。しかし、断面TEMではピンホールサイズは大きすぎて測定できず、図2に示すように劈開で断面形状を求めたとしても、ピンホールの断面の面積が分かるだけで、3次元の形状は求められないため、正確なピンホールサイズを求めることは難しい。ピンホール形状は制御されて作られたものではないので、断面の一部分だけを検出しても全体形状は分からない。また、上記と異なりもしピンホールが球形だとしても、図3に示すようにやはり劈開場所によってサイズが変わるため、正確なサイズの把握はできない。
【0008】
制御された形の凹み(レーザーマーク)をウェーハ表面に作り、これをピンホールとする標準サンプルを用いる方法がある。この場合、凹みがウェーハ表面にあるため、凹みのサイズや深さなどが測定できるため、IRの透過率なども計算しやすいが、そもそも、ピンホールが表面にある場合、ウェーハ内部にある場合と異なり反射光は空洞内で多重反射するのではなくウェーハ外に出てしまうなど、凹みとウェーハ内部にある空洞では同じ現象は起きない。したがって、この方法では十分精度よくピンホールのサイズを求めることはできない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切なサイズ標準サンプルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、
シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルであって、
前記標準サンプルは、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハであり、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部が形成され、該凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされて貼り合わせ界面に前記ピンホールが形成されたものであるピンホール測定装置用の標準サンプルを提供する。
【0011】
本発明は、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切なサイズ標準サンプルを提供することができる。
【0012】
また、前記凹部は半球形状であることが好ましい。
【0013】
このような凹部形状であれば、より精度の高い標準サンプルとすることができる。
【0014】
また、前記一方のシリコン単結晶ウェーハの凹部が形成された表面には、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部が形成されていることが好ましい。
【0015】
このような標準サンプルであれば、より精度の高い実用性に優れたものとなる。
【0016】
また本発明では、
シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法であって、
(1)2枚のシリコン単結晶ウェーハを準備する工程、
(2)少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部を形成する工程、
(3)前記凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせて貼り合わせ界面に前記ピンホールを形成する工程、及び
(4)前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの厚さを所定の厚さに調整を行い、前記標準サンプルを得る工程、
を含むピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法を提供する。
【0017】
本発明により、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切なサイズ標準サンプルを製造することができる。
【0018】
また、前記工程(2)において、レーザーマーカーまたは集束イオンビーム(FIB)で半球形状の前記凹部を形成することが好ましい。
【0019】
このようにすれば、より精度の高い標準サンプルを容易に製造することができる。
【0020】
また、前記工程(2)において、前記一方のシリコン単結晶ウェーハの表面に、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部を形成することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、より高精度で実用性に優れた標準サンプルを容易に製造することができる。
【0022】
また、前記工程(4)において、前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの両面もしくは片面に、表面研削、エッチング、及び表面研磨のいずれか1つ以上を行うことが好ましい。
【0023】
このようにすれば、標準サンプルの厚みを容易に制御して実用的な標準サンプルを得ることができる。
【0024】
また本発明では、
シリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する方法であって、
(1)上記のピンホール測定装置用の標準サンプルを用い、前記標準サンプルに形成された少なくとも1つの前記ピンホールのサイズをピンホール測定装置で測定して測定結果を得る工程、
(2)前記測定結果に基づいて、前記ピンホール測定装置を校正する工程、及び
(3)前記校正したピンホール測定装置を用いて、測定対象のシリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する工程、
を含むピンホールの測定方法を提供する。
【0025】
本発明の標準サンプルを用いて校正した装置によって、シリコン単結晶ウェーハのピンホールを精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0026】
標準サンプルが無い場合、個々の装置で独自のサイズを決めてしまうことになるため、装置間差が大きく精度の高い測定が行えない。しかし、本発明のようなピンホールの標準サンプルを基準として、ピンホール検出器のキャリブレーションを行うことにより、異なる装置で測定したピンホールサイズを容易にかつ精度よく直接比較し合うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の標準サンプルの一例を示す概略図である。
図2】TEMを用いた断面観察によるピンホールのサイズ決定における問題点を説明するための説明図である。
図3】TEMを用いた断面観察によるピンホールのサイズ決定における問題点を説明するための別の説明図である。
図4】実施例1において、一方のウェーハの表面に形成した凹部の位置とサイズを示す図である。
図5】実施例1における、一方のウェーハの表面に形成した凹部(100μm)のレーザー顕微鏡によって、上から凹部を観察した結果である。
図6】実施例1における、一方のウェーハの表面に形成した凹部(100μm)のレーザー顕微鏡によって測定された、凹部の断面像である。
図7】実施例1における標準サンプルの作製手順を示す概略図である。
図8】実施例1において、校正した装置を用いて標準サンプル中のピンホールを測定したときのピンホールの検出位置と検出サイズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切なサイズ標準サンプルの開発が求められていた。
【0029】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ピンホールの標準サンプルとして、ウェーハの表面に所定のサイズの凹部を形成し、その後ウェーハの貼り合わせを行うことで、貼り合わせウェーハ内部に形状、サイズの制御されたピンホールを作り込むことで、ピンホール標準サンプルとすることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
即ち、本発明は、シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルであって、前記標準サンプルは、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハであり、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部が形成され、該凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされて貼り合わせ界面に前記ピンホールが形成されたものであるピンホール測定装置用の標準サンプルである。
【0031】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[ピンホール測定装置用の標準サンプル]
本発明のピンホール測定装置用の標準サンプルの概略図の一例を図1に示す。本発明の標準サンプル10は、シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたものであり、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハである。一方のシリコン単結晶ウェーハ1には、表面の所定の位置に所定のサイズの凹部3が形成されている。この凹部3が形成された表面に、他方のシリコン単結晶ウェーハ2が貼り合わされている。そして貼り合わせ界面に位置する凹部3がシリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズで形成されたピンホールとなる。
【0033】
シリコン単結晶ウェーハとしては特に限定されず、市場で流通するいかなるシリコン単結晶ウェーハであってもよい。もちろん、ウェーハのサイズにも制限はなく、市場で流通するあらゆるサイズのウェーハを用いることができる。また、ウェーハには自然酸化膜が形成されていてもよい。
【0034】
凹部3の形状は特に限定されないが、半球形状であることが好ましく、5μm以上100μm以下のサイズ(口径)の半球状であることがより好ましい。また図1に示すように、凹部3は複数形成されていてもよく、複数の凹部は異なるサイズであってもよい。特に、一方のシリコン単結晶ウェーハ1の表面には、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部3が形成されていることが好ましい。
【0035】
なお、本発明の標準サンプルは、一方のシリコン単結晶ウェーハ1の表面だけに凹部3が形成されたものに限られず、凹部3が他方のシリコン単結晶ウェーハ2の表面にも形成されていて凹部を有する表面同士を貼り合わせたものとしてもよい。
【0036】
また、本発明の標準サンプルには、単に2枚のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせただけの貼り合わせウェーハのみならず、貼り合わせウェーハの片面もしくは両面に研削、エッチング、研磨を行いウェーハの厚さを薄くしたものも含まれる。本発明の標準サンプルの厚さとしては特に限定されないが、例えば、貼り合わせる前の元のシリコン単結晶ウェーハ1枚分の厚さとすることが、実用性の観点から好ましい。望ましくは、直径によって定まる標準のシリコン単結晶ウェーハの厚さ±50μm以内、より好ましくは±30μm以内の厚さである。
【0037】
[ピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法]
また本発明では、シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法であって、(1)2枚のシリコン単結晶ウェーハを準備する工程、(2)少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部を形成する工程、(3)前記凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせて貼り合わせ界面に前記ピンホールを形成する工程、及び(4)前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの厚さを所定の厚さに調整を行い、前記標準サンプルを得る工程、を含むピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法を提供する。
【0038】
以下、本発明の標準サンプルの製造方法について詳細に説明する。おな、本発明の標準サンプルの製造方法では、上記工程(2)と(3)の間に、後述の工程(2’)と工程(2’’)を行うことが好ましい。
【0039】
<工程(1)シリコン単結晶ウェーハの準備>
工程(1)は、2枚のシリコン単結晶ウェーハを準備する工程である。
【0040】
準備するシリコン単結晶ウェーハとしては特に限定されず、市場で流通するいかなるシリコン単結晶ウェーハであってもよい。もちろん、ウェーハのサイズにも制限はなく、市場で流通するあらゆるサイズのウェーハを用いることができる。例えば、直径50mm~300mm、あるいはそれ以上のものであってもよい。
【0041】
<工程(2)凹部の形成>
工程(2)は、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部を形成する工程である。
【0042】
例えば、鏡面研磨したウェーハ(PW:Polished Wafer)の表面の所定の位置に、所定のサイズの凹部を形成する。このとき、レーザーマーカーやFIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)で凹部を形成することができる。その際、ピンホール検出器で検出されるピンホール以外の欠陥と区別できるようにするため、凹部は決まった位置に形成するのが望ましい(例えば、2cmメッシュ)。また凹部の形状は円錐や四角錐、薄い凹みなど特に限定されないが、半球が望ましい。
【0043】
<工程(2’)リポリッシュ及び洗浄>
工程(2)でレーザーマーカーやFIBで凹部を形成すると、凹部周辺にSiが飛び散ったり、凹部周辺が盛り上がる場合があり、その後に行う貼り合わせができない場合があるため、凹部形成後にリポリッシュと洗浄を行うのが好ましい。
【0044】
<工程(2’ ’)凹部のサイズ測定>
貼り合わせる前に、予め凹部のサイズを光学式や触診式の形状測定機で求める。この時、凹部のサイズ(口径、深さ、形状)を求めておくことが好ましい。
【0045】
<工程(3)貼り合わせ>
工程(3)は、前記凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせて貼り合わせ界面に前記ピンホールを形成する工程である。
【0046】
例えば、凹部を形成したPWと同じ抵抗率のPWを用意し、貼り合わせ作業を行う。この時、少なくとも貼り合わせ面の片側には自然酸化膜が形成されていることが好ましい。貼り合わせ面に自然酸化膜が形成されていることで貼り合わせ後の貼り合わせ強度を増すことができる。その後、熱処理(例えば1000℃)を行い、2枚のウェーハを接合させる。
【0047】
<工程(4)ウェーハ厚さの調整>
工程(4)は、前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの厚さを所定の厚さに調整を行い、前記標準サンプルを得る工程である。
【0048】
二枚のウェーハを接合させたウェーハは、そのままでは通常の300mmウェーハの厚さに合わせた装置に入らないため、薄くする必要がある。凹部が表面に露出しないように片側もしくは両側に表面研削、エッチング、表面研磨を行い所定の厚さの標準サンプルに仕上げる。仕上がりの厚さは、例えば直径300mmの場合では通常のPWの厚さである775μmが理想的であるが、その限りではない。
【0049】
[ピンホールの測定方法]
また本発明では、シリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する方法であって、(1)上記のピンホール測定装置用の標準サンプルを用い、前記標準サンプルに形成された少なくとも1つの前記ピンホールのサイズをピンホール測定装置で測定して測定結果を得る工程、(2)前記測定結果に基づいて、前記ピンホール測定装置を校正する工程、及び(3)前記校正したピンホール測定装置を用いて、測定対象のシリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する工程、を含むピンホールの測定方法を提供する。
【0050】
上記で得られた貼り合わせウェーハを標準サンプルとして、ピンホール測定装置によりこの標準サンプルのピンホールのサイズ測定を行い、該ピンホールのサイズを検出する。次に、検出サイズが現実に標準サンプルに形成した凹部のサイズとなるように上記ピンホール測定装置の校正を行う。このように校正されたピンホール測定装置を用いて、測定対象のシリコン単結晶ウェーハのピンホールの検出を行う。これにより、測定装置の検出下限値を把握することができるので、検出感度の高い測定装置を抽出して、測定を行うことも可能となる。
【0051】
上記では片方のウェーハのみに凹部を形成した例を説明したが、本発明はこれには限定されず、両方のウェーハに凹部を形成し、これらを貼り合わせて標準サンプルとしてもよい。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
図7に示す手順に沿って、標準サンプルの作製を行った。
【0054】
まず、図4に示すように、300mmウェーハにレーザーマーカーで規則的に半球形状の凹部を形成した(図7の(1))。凹部の表面の直径(口径)は左端の列から順に100μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、8μm、5μmとした。直径100μmのレーザーマーク痕(凹部)のレーザー顕微鏡によって、上から凹部を観察した結果を図5に、レーザー顕微鏡によって測定された、凹部の断面像を図6に示す。図6から分かるように、この半球状の凹部の深さは55μmであった。
【0055】
次に、レーザーマーク周辺の凹凸の除去のためにウェーハをリポリッシュし、その後洗浄した。
【0056】
上記で凹部を形成したウェーハと同じ厚さのウェーハを貼り合わせた後、熱処理(温度1000℃、1時間)を行い接合して貼り合わせウェーハを作製した(図7の(2))。この貼り合わせウェーハを両面研削で厚さを800μmまで薄くし、さらにエッチング、両面研磨を行って厚さを一枚分の厚さと同じ775μmとし、凹部をウェーハの内部の所定位置に作り込んだ標準サンプルを作製した(図7の(3))。
【0057】
作製した標準サンプルのピンホールを、ピンホール測定装置で測定した。実施例1では、装置メーカーAのIR(赤外線)ピンホール測定装置を用いた。このとき、直径100μmの凹部を検出したときのサイズが100μmになるように校正してから、標準サンプルの各凹部のサイズを測定した。その結果、図8に示す位置に欠陥が検出された。ここでは、図4図8を比較して、図8で表示されていないものはピンホールとして検出できなかったことを意味している。すなわち、直径が10~100μmの大きなピンホールはいずれもほぼ形成した凹部のサイズで検出されたが、直径8μmのピンホールは検出される場合とされない場合があり、直径5μmのピンホールは検出することができなかった。よってこの装置の検出下限は8μm(半球)相当であると推定できる。
【0058】
(実施例2)
実施例1で用いた装置メーカーAの装置とは別の、装置メーカーBのIR(赤外線)ピンホール測定装置を用いて、実施例1で作製した標準サンプルのピンホールを実施例1と同様の手順で測定した。この場合でも、同様に標準サンプルの直径100μmの凹部で校正した後では50,40,30μmの凹部は同様にそれらのサイズ相当で検出されていた。この時の装置メーカーBの装置の検出下限は20μmであった。
【0059】
(比較例)
実施例1、2の校正する前の装置メーカーA、Bのピンホール測定装置を用いて上記標準サンプルの半球100μmのピンホールを検出した際のサイズは、装置メーカーAの装置では85μm、装置メーカーBの装置では75μmであった。これらの原因は、計算の基となるピンホールサイズを決定する際にそれぞれのメーカーで作った標準サンプルが適切でなかったためと考えられる。
【0060】
このように、本発明の標準サンプルは、シリコン単結晶ウェーハ中に存在するピンホール欠陥に対する適切な標準サンプルとなることが明らかになった。特に上記実施例では、ピンホールは球に近い半球で、真球ではないが、不定形のピンホールから算出されたサイズよりは真球サイズ換算に近い値を示すことができる。これにより装置の検出下限を定量的に把握できるようになり、ピンホール測定装置間の測定精度の比較ができるようになった。また、半球直径の換算ではあるが、実際のサイズと測定装置の表示サイズの差異についても求めることができるようになった。これにより、本発明の標準サンプルを用いてキャリブレーションを行って校正することにより、異なる測定装置で測定した場合であっても測定器の表示サイズを実際のピンホールのサイズとみなすことができる。
【0061】
本明細書は、以下の発明を包含する。
[1]:シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルであって、前記標準サンプルは、2枚のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされた貼り合わせウェーハであり、少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部が形成され、該凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハが貼り合わされて貼り合わせ界面に前記ピンホールが形成されたものであることを特徴とするピンホール測定装置用の標準サンプル。
[2]:前記凹部は半球形状であることを特徴とする上記[1]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプル。
[3]:前記一方のシリコン単結晶ウェーハの凹部が形成された表面には、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部が形成されていることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプル。
[4]:シリコン単結晶ウェーハの内部の所定の位置に所定のサイズのピンホールが形成されたピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法であって、(1)2枚のシリコン単結晶ウェーハを準備する工程、(2)少なくとも一方のシリコン単結晶ウェーハの表面の所定の位置に所定のサイズの凹部を形成する工程、(3)前記凹部が形成された表面に他方のシリコン単結晶ウェーハを貼り合わせて貼り合わせ界面に前記ピンホールを形成する工程、及び(4)前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの厚さを所定の厚さに調整を行い、前記標準サンプルを得る工程、を含むことを特徴とするピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
[5]:前記工程(2)において、レーザーマーカーまたは集束イオンビーム(FIB)で半球形状の前記凹部を形成することを特徴とする上記[4]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
[6]:前記工程(2)において、前記一方のシリコン単結晶ウェーハの表面に、少なくとも5μm以上100μm以下の異なるサイズの凹部を形成することを特徴とする上記[4]又は上記[5]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
[7]:前記工程(4)において、前記貼り合わせたシリコン単結晶ウェーハの両面もしくは片面に、表面研削、エッチング、及び表面研磨のいずれか1つ以上を行うことを特徴とする上記[4]、上記[5]、又は上記[6]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルの製造方法。
[8]:シリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する方法であって、(1)上記[1]、上記[2]、又は上記[3]に記載のピンホール測定装置用の標準サンプルを用い、前記標準サンプルに形成された少なくとも1つの前記ピンホールのサイズをピンホール測定装置で測定して測定結果を得る工程、(2)前記測定結果に基づいて、前記ピンホール測定装置を校正する工程、及び(3)前記校正したピンホール測定装置を用いて、測定対象のシリコン単結晶ウェーハのピンホールを測定する工程、を含むことを特徴とするピンホールの測定方法。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
1…一方のシリコン単結晶ウェーハ、 2…他方のシリコン単結晶ウェーハ、
3…凹部、 10…標準サンプル。
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