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  • 特開-眼精疲労改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172811
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】眼精疲労改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9068 20060101AFI20231129BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231129BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61P27/02
A61K31/12
A61K9/48
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022093993
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(72)【発明者】
【氏名】木内 良明
(72)【発明者】
【氏名】東川 史子
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD53
4B018ME14
4B018MF01
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC10
4C076CC40
4C076DD41
4C076EE30F
4C076EE38A
4C076FF01
4C088AB81
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA11
4C088CA02
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】 本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな眼精疲労改善剤を提供する。
【解決手段】 発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、眼精疲労改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、眼精疲労改善剤。
【請求項2】
加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、請求項1記載の眼精疲労改善剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする眼精疲労改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、スマートフォン等による作業(VDT作業)が日々の時間の多くを占めることで、眼精疲労等に関連した身体の不調が問題視されるようになっており、眼精疲労の改善が求められている。
【0003】
眼精疲労改善剤としては、例えば、6-ジンゲロールを有効成分とする毛様体筋緊張緩和剤及び該毛様体筋緊張緩和剤を含有する眼精疲労改善剤(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-100561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな眼精疲労改善剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、眼精疲労改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[2]の態様に関する。
[1]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、眼精疲労改善剤。
[2]加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、[1]記載の眼精疲労改善剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって天然物由来の成分を有効成分とする安全な眼精疲労改善剤を提供でき、摂取することで、眼精疲労改善効果が得られ、各種飲食品、医薬品、医薬部外品等に含ませて利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、眼の疲労感(VAS)の測定値の推移を示すグラフである。
図2】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、眼の疲労感(VAS)のベースラインからの変化量の推移を示すグラフである。
図3】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、眼の疲労感(VAS)の8週間の変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の眼精疲労改善剤は、加熱ショウガ抽出物を有効成分として含有する。
【0011】
本発明で使用する加熱ショウガ抽出物は、ショウガ科植物を抽出前後に加熱して得られる抽出物であって、抽出法としては、超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等が例示でき、不織布、メッシュ等を用いたろ過、遠心分離等により、固液分離したショウガ抽出液を加熱処理してもよく、加熱処理後に抽出又は固液分離して液部を回収してもよい。濃縮及び/又は乾燥した、濃縮品や乾燥品が好ましく、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等により乾燥して、粉末化でき、一般的な賦形剤を使用できる。具体的には、加熱ショウガ抽出物は、乳化剤を加えて乳化することで分散性を高めた後、デキストリン等の賦形剤を配合して、噴霧乾燥して得られる粉末品が好ましく、例えばジンジャーエキスパウダーS、H、E又はNE(池田糖化工業株式会社製)を使用できる。生の植物中又は未加熱のショウガ抽出物中では、ジンゲロール含有量よりショウガオール含有量の方がはるかに少ないことが知られているが、本発明では、抽出前後に加熱等の処理を行ってショウガオール含有量を高めており、加熱ショウガ抽出物はジンゲロールよりショウガオールを多く含むのが好ましく、ショウガオールをジンゲロールの1.5倍以上含むのがより好ましく、2倍以上含むのがさらに好ましく、3倍以上含むのが特に好ましく、上限は特に限定されないが、15倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。ショウガオール含有量が高められれば特に限定されないが、製造方法として例えば、100~300℃、好ましくは120~250℃で加熱することで、ショウガオール含有量の高い加熱ショウガ抽出物を製造できる。加熱ショウガ抽出物中のショウガオール含有量は、0.1~20重量%が好ましく、0.2~15重量%がより好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。
【0012】
前記乳化剤は、乳化能力を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、アカシアガム、ガティガム、キサンタンガム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等の多糖類、カゼイン、大豆タンパク質等のタンパク質又はタンパク加水分解物、レシチン、酵素処理レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。乳化処理は、一般的な乳化方法で行うことができる。詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。
【0013】
本発明の眼精疲労改善剤の摂取方法としては、加熱ショウガ抽出物を経口摂取すればよく、本発明の効果が認められる摂取量であれば特に限定されないが、加熱ショウガ抽出物の一人一日当たりの摂取量は、5~2,000mgが好ましく、10~1,000mgがより好ましく、20~500mgがさらに好ましく、加熱ショウガ抽出物中に含まれる6-ショウガオールの一人一日当たりの摂取量は、0.1~50mgが好ましく、0.2~40mgがより好ましく、0.5~20mgがさらに好ましい。該摂取量を摂取できるよう、本発明の組成物を1日1回又は数回に分けて摂取すればよい。
【0014】
本発明の眼精疲労改善剤はその有効成分が天然物由来であり、かつ、製造が容易なため、広く利用でき、各種製品に添加が可能で、液体で添加してもよく、乾燥品を添加してもよい。添加する飲食品等は特に限定されないが、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品の他、医薬品、医薬部外品、飼料等にも利用できる。各種製品中の加熱ショウガ抽出物の含有量は、摂取により本発明の効果が認められる量であれば特に限定されないが、0.001~80重量%が好ましく、0.005~60重量%がより好ましく、0.01~50重量%がさらに好ましい。
【実施例0015】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0016】
(眼の疲労感の評価試験)
20~73歳の疾病に罹患していない男女で、日常的に眼の疲労感の自覚症状を有する100名を、試験食摂取群と対照食摂取群の2グループに分け、試験食又は対照食を、1日1回1カプセルずつ、8週間摂取させた。尚、8週間目の検査日に試験食摂取群の1名が不参加で脱落となったが、欠損値は多重代入法(20回)で補い、100名全員分のデータを用いて解析を行った。
【0017】
試験食のカプセルの配合内訳は、加熱ショウガ抽出液に、アカシアガム(インスタントガム、Nexira株式会社製)を乳化剤として加えて乳化し、デキストリン(サンデック(登録商標)#300、三和澱粉工業株式会社製)を賦形剤として加えて噴霧乾燥して得られた粉末の加熱ショウガ抽出物(ジンジャーエキスパウダーE、池田糖化工業株式会社製)100mg(40%)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100、松谷化学工業株式会社社製)147mg(58.8%)及びステアリン酸カルシウム3mg(1.2%)(合計250mg)とし、対照食のカプセルの配合内訳は、デキストリン(サンデック(登録商標)#300)100mg(40%)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100)147mg(58.8%)及びステアリン酸カルシウム3mg(1.2%)(合計250mg)とした。
【0018】
ジンジャーエキスパウダーEに含まれる6-ジンゲロール、6-ショーガオール及び6-パラドールの含量を、表1に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
「眼の疲労感」を、視覚的評価法(VAS:Visual Analog Scale)により評価した。具体的には、対象者に、10cmの線分が記載されたアンケート(VAS)用紙を配布し、「疲労感が全く感じられない状態」を一番左側(0)、「想像できる限りの最悪の疲労感」を一番右側(10)とした場合、検査日の疲労感がどの程度であるかを、線分上に×で記入してもらい、その変化量(mm)を評価した。尚、数値が大きい程、眼の疲労感の状態が悪いと感じていることを示す。
眼の疲労感(VAS)の測定値の推移、ベースラインからの変化量の推移及び眼の疲労感(VAS)の8週間の変化量を図1~3に示した。尚、試験食摂取群を「Ginger」、対照食摂取群を「Placebo」として図に示した。
【0021】
図1~3より、眼の疲労感の程度は、両摂取群において疲労感が軽減する方向に変化したが、試験食摂取群の8週後の変化量は、対照食摂取群と比較して有意に低下した(p<0.05)。対象者の自覚症状によるVASにおいて、眼の疲労感が、加熱ショウガ抽出物を含有する試験食摂取群で対照食摂取群よりも有意に低下したことから、加熱ショウガ抽出物による眼精疲労改善効果が明らかになり、加熱ショウガ抽出物を有効成分とする眼精疲労改善剤として有用であることが分かった。
図1
図2
図3