(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172866
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007387
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2022083680
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】反射部材の劣化を防ぎ、熱源から反射部材や支持部材に伝わった熱を有効活用し、消費電力を低減できる定着装置を提供する。
【解決手段】可撓性を有する無端状の定着部材21と、前記定着部材の内周と摺動する摺動部材と、前記定着部材の外周面に当接する加圧部材22と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材と前記摺動部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成するニップ形成部材24と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材25と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を加熱する熱源23と、前記熱源の輻射熱を反射する反射部材28と、を備え、前記ニップ形成部材の熱伝導率は、10W/mK以上であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材の内周と摺動する摺動部材と、
前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、
前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材と前記摺動部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を加熱する熱源と、
前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、を備え、
前記ニップ形成部材の熱伝導率は、10W/mK以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ニップ形成部材は、金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ形成部材は、1枚の板部材からなることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、板部材を2度曲げた形状であり、2つの端部が同じ方向に向いた形状であることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ形成部材は、前記板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に、前記ニップ部とは反対側の方向に凸となる複数の凸部を有することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記複数の凸部は、前記定着部材の軸方向において、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ部に記録媒体が入る方向から前記ニップ形成部材を見た場合の前記ニップ形成部材の面を側面としたとき、
前記複数の凸部は、前記側面を見たときに、隣接する凸部の根元が繋がっていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、ニップ部側の長さをAとし、板部材を2度曲げた形状における一の端部から他の端部までの距離をBとしたとき、B>Aであることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、ニップ部側の長さをAとし、前記ニップ部のニップ幅をCとしたとき、A>Cであることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項10】
前記反射部材は、前記支持部材と接する箇所を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
前記支持部材と接しておらず、かつ、前記ニップ形成部材と接した位置であって、前記ニップ部とは反対側に板金部材を有し、
前記板金部材の熱伝導率は、前記ニップ形成部材の熱伝導率以上であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、未定着トナー画像を記録媒体に転写し、この記録媒体が定着装置に搬送されて、記録媒体上の未定着トナー画像を熱と圧力により記録媒体に定着させる。近年、画像形成装置に対し、省エネルギー化、高速化についての市場要求が強くなってきている。高速化させて生産性を向上させた場合、それに伴い、熱源の熱量も増えてしまう。
【0003】
特許文献1では、定着ベルトの内周面と摺接してその長手方向に熱を移動する熱移動補助部材と、中空フィラーを混在した耐熱性樹脂で形成されたニップ形成部材を用いる定着装置が開示されている。特許文献1では、熱伝導しにくい樹脂を用いたニップ形成部材を備えることで、ニップ形成部材の熱伝導率が下がり、定着に寄与しないニップ形成部材への熱移動量が減り、定着装置での消費電力量が削減できるとしている。
【0004】
特許文献1では、反射部材を用いており、反射部材を用いることで、熱源から他の部材(例えばニップ形成部材を支持する支持部材)への熱を定着部材に反射させることができ、エネルギー消費を抑制できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、熱伝導しにくいニップ形成部材を用いる場合、ニップ形成部材が熱伝導の壁となってしまい、熱源からの熱が反射部材や支持部材から移動しにくくなる。このため、反射部材や支持部材が高温となり、反射部材が劣化しやすくなってしまう。また、熱源から反射部材や支持部材に伝わった熱を有効活用し、消費電力を低減できる仕組みも求められている。
【0006】
そこで本発明は、反射部材の劣化を防ぎ、熱源から反射部材や支持部材に伝わった熱を有効活用し、消費電力を低減できる定着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の定着装置は、可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材の内周と摺動する摺動部材と、前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材と前記摺動部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を加熱する熱源と、前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、を備え、前記ニップ形成部材の熱伝導率は、10W/mK以上であることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射部材の劣化を防ぎ、熱源から反射部材や支持部材に伝わった熱を有効活用し、消費電力を低減できる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る定着装置の一例を示す概略図である。
【
図3A】本発明に含まれない定着装置の一例を示す概略図である。
【
図3B】本発明に含まれる定着装置の一例を示す概略図である。
【
図4】ニップ形成部材の一例を示す概略図(a)~(c)である。
【
図5】ニップ形成部材の他の例を示す斜視概略図(a)及び平面概略図(b)である。
【
図6】ニップ形成部材の他の例を示す斜視概略図(a)及び側面概略図(b)である。
【
図7】ニップ形成部材の他の例を示す斜視概略図(a)、側面概略図(b)並びに断面概略図(c)及び(d)である。
【
図8】本発明に係る定着装置の他の例を示す要部概略図である。
【
図9】本発明に係る定着装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の定着装置は、可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材の内周と摺動する摺動部材と、前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材と前記摺動部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を加熱する熱源と、前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、を備え、前記ニップ形成部材の熱伝導率は、10W/mK以上であることを特徴とする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
本例の画像形成装置は、カラー画像を形成可能であり、中間転写ベルト30の展張方向に沿って4つの作像部4が並置して設けられている。4つの作像部4は、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容する以外は、同じ構成となっている。
【0013】
作像部4は、例えば、潜像担持体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を備えている。潜像担持体としては例えばドラム状の感光体を用いる。感光体は、露光装置によって表面が露光される。帯電装置は、感光体の表面を帯電させる。現像装置は、感光体の表面にトナーを供給する。クリーニング装置は、感光体の表面をクリーニングする。
【0014】
特に制限されるものではないが、例えば読取装置100により原稿の読み取りが行われ、画像データが得られる。画像データに基づいて露光が行われ、潜像(静電潜像などと称してもよい)が感光体に形成される。現像装置により現像が行われ、感光体上にトナー像が形成される。
【0015】
感光体に形成されたトナー像は、転写手段によって中間転写ベルト30に転写される。中間転写ベルト30に転写されたトナー像は、転写ローラ36により記録媒体(記録材などとも称される)に転写される。
【0016】
記録媒体は、例えば給紙トレイ10から給紙ローラ11により給紙され、レジストローラ12により搬送される。記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、周知のように、手差し給紙機構が設けられていてもよい。
【0017】
トナー像が転写された記録媒体は、定着装置20に搬送される。定着装置20は、記録媒体に転写されたトナー画像(未定着画像などと称してもよい)を定着する。定着が行われた記録媒体は、排紙トレイ14に排紙される。必要に応じて記録媒体の両面に画像を形成してもよい。
【0018】
図2は、本実施形態の定着装置20を示す概略図である。
本実施形態の定着装置20は、例えば、定着ベルト21、ベルト支持部材27、摺動シート26、加圧ローラ22、ニップ形成部材24、ステー25、ヒータ23、リフレクタ28を備えている。
【0019】
定着ベルト21は、定着部材の一例であり、可撓性を有する無端状のベルトである。定着ベルト21は、ベルト支持部材27により支持され、回転可能である。定着ベルト21の回転軸の方向は紙面と垂直な方向であり、軸方向などとも称する。定着ベルト21は、その内部(ループ内)に配された熱源としてのヒータ23の輻射熱によって加熱される。
【0020】
定着ベルト21としては、例えば、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成された外周側の離型層によって構成されている。基材と離型層の間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着トナーを押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。
【0021】
定着ベルト21は、全体として厚さ1mm以下に、直径20~40mmに設定されていることが好ましく、この場合、低熱容量化を図ることができる。そして、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さは、適宜変更可能であるが、例えば20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定されていることが好ましい。更に低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、更に望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよく、直径は30mm以下とするのが望ましい。
【0022】
ベルト支持部材27は、例えば定着ベルト21を定着ベルト21の両端部で支持する。ベルト支持部材27は、ベルト保持部材などと称されてもよい。ベルト支持部材27は、例えば側板フランジを用いることができる。
【0023】
摺動シート26は、摺動部材の一例であり、定着ベルト21の内周と摺動するように配置されている。また、図示するように、ニップ形成部材24と接する位置に配置されている。摺動シート26の形状は、特に制限されるものではなく、図示する断面のようにコの字状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0024】
摺動シート26としては、適宜選択することができ、例えば、低摩擦材料からなる低摩擦シートを用いることができる。また、摺動シート26としては、例えばPTFEなどの繊維から形成されたシート等を用いることができる。
【0025】
加圧ローラ22は、加圧部材の一例であり、定着ベルト21の外周面に当接する。加圧ローラ22は、例えば、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴム等から成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFE等から成る離型層によって構成することができる。例えば加圧手段のバネにより加圧ローラ22が定着ベルト21に押し付けられ、定着ベルト21と圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層が押し潰されることで、所定幅の定着ニップNが形成される。なお、定着ニップNは、ニップ部Nなどと称してもよい。
【0026】
加圧ローラ22は、例えば、画像形成装置本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。定着ベルト21は定着ニップNで挟み込まれて回転し、定着ニップN以外では両端部に配された側板フランジにガイドされ、走行する。
【0027】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の熱源を配設してもよい。弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラの内部に熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0028】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内部に配置され、定着ベルト21と摺動シート26を介して加圧ローラ22に当接してニップ部Nを形成する。ニップ形成部材24の形状、材質等の詳細例については後述する。
【0029】
ステー25は、支持部材の一例であり、ニップ形成部材24を支持する。
【0030】
ヒータ23は、熱源の一例であり、定着ベルト21の内部に配置され、定着ベルト21を加熱する。ヒータ23は、例えば輻射熱により定着ベルト21を加熱する。熱源としては、例えば、ハロゲンヒータを用いることができ、その他にも、誘導加熱装置、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよい。図示するように、熱源は複数であってもよい。
【0031】
リフレクタ28は、反射部材の一例であり、ヒータ23の輻射熱を反射する。リフレクタ28を用いることにより、ヒータ23の定着ベルト21に対する加熱効率を上げることができる。また、リフレクタ28を用いることにより、ヒータ23からの輻射熱によりステー25が加熱されることによるエネルギー消費を抑制することができる。
【0032】
記録媒体Pがニップ部Nを通過することで、記録媒体P上の未定着画像32が記録媒体Pに定着される。図中の白矢印は、記録媒体Pの搬送方向を模式的に示している。
【0033】
本実施形態において、ニップ形成部材24の熱伝導率は10W/mK以上である。これにより、リフレクタ28の熱を定着ベルト21に伝熱しやすくすることができ、リフレクタ28の破損を抑制することができる。また、ニップ形成部材24の熱伝導率は10W/mK以上にすることで、熱源の熱がニップ部Nにも伝わりやすくなり、熱源の熱をニップ部Nにも有効活用することができ、消費電力を低減することができる。
【0034】
図3A及び
図3Bを用いて本実施形態のニップ形成部材における詳細例を説明する。
図3Aは、本発明に含まれない比較例であり、熱伝導率が10W/mK未満のニップ形成部材24aを用いた定着装置の概略図である。本比較例におけるニップ形成部材24aは熱伝導率が低い材料を使用している。図中の黒矢印は、熱の移動経路を模式的に示している。
【0035】
図示するように、ヒータ23からの熱がリフレクタ28に伝わり、リフレクタ28の熱がステー25に伝わる。この比較例では、熱伝導率が低いニップ形成部材24aを用いているため、ステー25に伝わった熱はニップ形成部材24aに移動できない、もしくは移動しにくい。そのため、リフレクタ28やステー25が高温になり、リフレクタ28が劣化しやすくなってしまう。リフレクタ28が劣化すると破損にもつながる。また、リフレクタ28やステー25に伝わった熱が有効活用されず、消費電力の低減ができない。
【0036】
図3Bは、本実施形態の定着装置20の概略図であり、
図2と同じ図である。本実施形態では、ニップ形成部材24に熱伝導率が高い材料を使用しており、ニップ形成部材24の熱伝導率が10W/mK以上である。そのため、ヒータ23からリフレクタ28を経由してステー25に伝わった熱は、ニップ形成部材24に移動することができる。これにより、リフレクタ28の温度が過度に上昇することを防ぐことができ、リフレクタ28の劣化や破損を抑制することができる。また、本実施形態では、ニップ形成部材24に伝わった熱がニップ部Nに移動するため、ニップ形成部材24に伝わった熱をニップ部Nに有効活用することができ、消費電力を低減することができる。
【0037】
ニップ形成部材24から摺動シート26を経由してニップ部Nに熱が移動する場合も考慮すると、摺動シート26としては、耐熱性に優れた材質であることが好ましい。
【0038】
ニップ形成部材24の材料としては、ニップ形成部材24の熱伝導率が10W/mK以上にすることができるものであれば適宜選択して用いることができる。ニップ形成部材24の材料としては、金属材料を用いることが好ましく、ニップ形成部材24が金属材料からなることが好ましい。この場合、ニップ形成部材24の熱伝導率を10W/mK以上にしやすくなる。
【0039】
金属材料としては、適宜選択することができ、例えばSECC材のような鋼板(電気亜鉛メッキを施した鋼板)やアルミニウムが好ましい。SECC材やアルミニウムを用いる場合、加工がしやすいという利点も得られる。
【0040】
ニップ形成部材24は、1枚の板部材(単に板と称してもよい)からなることが好ましい。この場合、リフレクタ28やステー25からの熱をニップ部Nに移動させやすくすることができる。また、ニップ形成部材24は、1枚の金属の板部材(板金などと称してもよい)からなることがより好ましい。
【0041】
ニップ形成部材24の形状としては、適宜選択することができる。ニップ形成部材24は、
図2に示すように、定着ベルト21の軸方向と垂直な断面において、板部材を2度曲げた形状であり、2つの端部が同じ方向に向いた形状であることが好ましい。この形状は、換言すると、コの字形状であるともいえる。このような形状である場合、加工がしやすく、また加工精度を向上させることができる。
【0042】
図4に、ニップ形成部材24の例を示す。
図4は、定着ベルト21の軸方向と垂直な断面を示す図である。ここで示されるニップ形成部材24は、熱伝導率が10W/mK以上である。なお、
図4は、定着ベルト21の軸方向と垂直な断面を示す図であり、定着ベルト21の軸方向をニップ形成部材24の長手方向と称することがある。また、ニップ形成部材24の長手方向を単に長手方向と称することがある。
【0043】
図4(a)に示すニップ形成部材24は、熱伝導率は本実施形態の要件を満たしているものの、1枚の板部材ではない。熱伝導率の高い金属の例としてアルミダイキャストが挙げられるが、アルミダイキャストで
図4(a)に示すニップ形成部材24を作製しようとすると、加工のコストが増えてしまう。また、型を使用してこのような形状のニップ形成部材24を作製する場合、成型上の精度が低くなる。
【0044】
図4(b)に示すニップ形成部材24は、1枚の板金からなる場合の例である。この例では、コの字形状に曲げるだけの加工でよく、精度も出やすく、製造コストも削減できる。このニップ形成部材24は、板部材を2度曲げた形状であり、2つの端部が同じ方向に向いた形状である。
【0045】
板部材を折り曲げてニップ形成部材24を形成する場合、折り曲げたところの角部は、例えば
図4(b)のように、2つの直線が交わるような角度をもった形状であってもよいが、通常、
図4(c)のように曲げRが付きやすい。板部材を折り曲げてコの字状のニップ形成部材24を形成する場合、曲げRを有していることが好ましく、この場合、定着ベルト21の回転を阻害しにくくすることができる。
【0046】
また、板部材を折り曲げてコの字状のニップ形成部材24を形成する場合、以下のB>Aを満たすことが好ましい。すなわち、ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向(長手方向)と垂直な断面において、ニップ部N側の長さをAとし、板部材を2度曲げた形状における一の端部から他の端部までの距離をBとしたとき、B>Aであることが好ましい。Aの長さを、ニップ形成部材24のニップ部N側のストレート部の長さと称してもよい。
【0047】
板部材を折り曲げてニップ形成部材24を形成し、ニップ形成部材24に曲げRが付いている場合、B>Aを満たすことで、ニップ形成部材24が定着ベルト21の回転に干渉しにくくすることができ、定着ベルト21の回転に影響が生じることを抑えることができる。更にこの場合、ステー25からの支持が安定する。板部材をコの字形状にしてニップ形成部材24にする場合において、B>Aを満たさない場合(B≦Aの場合)、ステー25がニップ形成部材24を支持しにくくなる。
【0048】
図5(a)に、ニップ形成部材24における斜視図の一例を示す。また、
図5(b)に、
図5(a)を定着ベルト21の内側から見た場合の平面図を示す。
図5に示す例は、1枚の板金を2度曲げて作製したニップ形成部材24の例である。
【0049】
図示するように、本例のニップ形成部材24は、板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に、ニップ部Nとは反対側の方向に凸となる複数の凸部(例えば、凸部24x、24y、24z)を有している。換言すると、板部材を折り曲げた部分では、複数の隙間が設けられているともいえる。その他にも、複数の凸部を1つ1つ折り曲げた形状であるともいえる。例えば曲げ高さC1,C2,C3が小さくなってしまう場合、図示するような1本1本折り曲げる構成にする方が加工上、精度が出やすいため好ましい。
のためである。
【0050】
図6(a)に、ニップ形成部材24における斜視図の他の例を示す。また、
図6(b)に、
図6(a)におけるニップ形成部材24を側面から見た場合の図を示す。
図6に示す例においても、1枚の板金を2度曲げて作製したニップ形成部材24の例である。
【0051】
図6に示す例においても、ニップ形成部材24は、板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に、ニップ部Nとは反対側の方向に凸となる複数の凸部(例えば、凸部24x、24y、24z)を有している。本例において、複数の凸部は、定着ベルト21の軸方向(ニップ形成部材の長手方向)において、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっている。例えば、長手方向の中央側の凸部24zの高さがc3であり他の凸部に比べて高く、長手方向の端部側の凸部24xの高さがc1であり他の凸部に比べて低くなっている。図示する例では、c1<c2<c3の関係になっている。
【0052】
図6では、長手方向の一方側のみを図示しており、他方側については図示を省略している。他方側についても同様に、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっている。換言すると、コの字に曲げて作製したニップ形成部材24のコの字の高さは、中央が高く、端部に向かって低くなっている。
【0053】
本例におけるステーは端部で保持されており、中央側には保持する機構が備わっていない。これより、ニップ部から受けた力は端部では保持されているため支えられるが、中央は力を受けられないため、ステー25の中央部が撓みやすくなる。本例のように、複数の凸部において、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっていることで、ステー25が撓んでも安定してニップ部Nを形成することができる。
【0054】
なお、板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に凸部が形成されていない場合であっても、折り曲げた部分の高さは、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっていることが好ましい。
【0055】
図7に、ニップ形成部材24の他の例を示す。
図7(a)は、本例のニップ形成部材24の斜視図である。図示するように、本例においても、ニップ形成部材24は、板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に、ニップ部Nとは反対側の方向に凸となる複数の凸部(例えば、凸部24x、24y、24z)を有している。
図7(b)は、
図7(a)におけるニップ形成部材24を側面から見た場合の図である。
図7(c)は、
図7(a)におけるc部分の断面図であり、
図7(d)は、
図7(a)におけるd部分の断面図である。
【0056】
本例において、ニップ部Nに記録媒体Pが入る方向からニップ形成部材24を見た場合のニップ形成部材24の面を側面としたとき、複数の凸部は、前記側面を見たときに、隣接する凸部の根元が繋がっている。なお、
図7(b)における破線は、板部材における折り曲げられていない部分の高さを模式的に示している。隣接する凸部の根元が繋がっていることにより、凸部同士が繋がった部分が破線部分よりも高くなる。また、
図7(d)に示すように、隣接する凸部の根元が繋がっていることにより、d部分の断面では、ニップ部Nと反対側の方向に凸となる。なお、ここでいう側面は、定着ベルト21の軸方向と垂直な方向に沿った方向から見た場合の面であるともいえる。
【0057】
例えば
図5に示すようなニップ形成部材24の場合、凸部を一つ一つ折り曲げてコの字形状にする必要があり、製造の手間が生じる他、精度が出にくくなってしまう。また、隣接する凸部の根元が繋がっていない分、ニップ部Nを形成する際に生じる力に対して撓みやすくなってしまう。また、ニップ形成部材24が撓むことで、狙いとするニップ部Nにできない場合がある。
【0058】
一方、本例のように、隣接する凸部の根元が繋がっていることで、ニップ部Nを形成する際に生じる力に対して強度が上昇し、ニップ形成部材24が撓むことを抑制できる。また、本例では1度の曲げでよいため、凸部を一つ一つ折り曲げるよりも精度が向上するという利点も得られる。
【0059】
また、従来使用されている熱伝導率の低い樹脂で、
図7に示すような根元が繋がった形状を作製しようとした場合、厚みの異なる箇所が多いため、型で成型する上で引けが発生してしまう。このため、コの字曲げの先端の精度が低くなってしまう。一方、本例においても、金属材料でニップ形成部材24を作製することが好ましく、金属材料で
図7に示す形状のニップ形成部材24を作製することで、コの字曲げの先端の精度を向上させることができる。
【0060】
なお、
図7に示す例はB>Aを満たしており、この観点で好ましい構成である。また、
図7に示す例においても、
図6に示すように、複数の凸部は、定着ベルト21の軸方向において、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっていることがより好ましい。
【0061】
図8に、ニップ形成部材24とニップ部Nの関係の一例を示す。本実施形態において、ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向と垂直な断面において、ニップ部N側の長さをAとし、ニップ部Nのニップ幅をCとしたとき、A>Cであることが好ましい。この場合、ニップ部Nのニップ安定性を向上させることができる。
なお、上記と同様に、Aの長さを、ニップ形成部材24のニップ部N側のストレート部の長さと称してもよい。
【0062】
このようにA>Cにするには、特に制限されるものではないが、例えば、ニップ形成部材24の形状、加圧ローラ22の層構成や加圧ローラ22の加圧力等を適宜選択する。
【0063】
図9に、本実施形態の定着装置20の他の例を示す。
定着装置20においては、リフレクタ28の温度が下がりきらない場合、更なる放熱をすることが好ましい場合がある。このような場合に、板金部材29を追加で用いることが好ましい。本例における板金部材29は、図示するように、ステー25と接しておらず、かつ、ニップ形成部材24と接した位置であって、ニップ部Nとは反対側に設けられる。また、板金部材29の熱伝導率は、ニップ形成部材24の熱伝導率以上であることが好ましく、本例ではそのようにしている。
【0064】
このような板金部材29を用いることにより、ニップ形成部材24と板金部材29が一体となるような構成にでき、ニップ形成部材としての熱容量が増え、更なる放熱が可能になる。これにより、リフレクタ28の温度が高くなることを抑え、リフレクタ28の劣化や破損をより抑制することができる。
【0065】
板金部材29は、1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。ニップ形成部材24の熱伝導率以上となる板金部材29を1枚用いることで、上記の効果が得られる。ニップ形成部材24の熱伝導率以上となる板金部材29を更に加えることで、より放熱しやすくなる。一方、放熱が大きくなり温度が下がりすぎる場合も考えられる。この場合は、ニップ形成部材24よりも熱伝導率が低い板金部材を更に1枚追加することで、ニップ形成部材24からの放熱を抑えることが可能となる。
【0066】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材の内周と摺動する摺動部材と、前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材と前記摺動部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を加熱する熱源と、前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、を備え、前記ニップ形成部材の熱伝導率は、10W/mK以上であることを特徴とする定着装置。
<2>前記ニップ形成部材は、金属材料からなることを特徴とする<1>に記載の定着装置。
<3>前記ニップ形成部材は、1枚の板部材からなることを特徴とする<1>又は<2>に記載の定着装置。
<4>前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、板部材を2度曲げた形状であり、2つの端部が同じ方向に向いた形状であることを特徴とする<3>に記載の定着装置。
<5>前記ニップ形成部材は、前記板部材を2度折り曲げた部分の2つの端部側に、前記ニップ部とは反対側の方向に凸となる複数の凸部を有することを特徴とする<3>又は<4>に記載の定着装置。
<6>前記複数の凸部は、前記定着部材の軸方向において、軸方向の中央が最も高く、軸方向の端部に向かって低くなっていることを特徴とする<5>に記載の定着装置。
<7>前記ニップ部に記録媒体が入る方向から前記ニップ形成部材を見た場合の前記ニップ形成部材の面を側面としたとき、前記複数の凸部は、前記側面を見たときに、隣接する凸部の根元が繋がっていることを特徴とする<5>又は<6>に記載の定着装置。
<8>前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、ニップ部側の長さをAとし、板部材を2度曲げた形状における一の端部から他の端部までの距離をBとしたとき、B>Aであることを特徴とする<4>から<7>のいずれかに記載の定着装置。
<9>前記ニップ形成部材は、前記定着部材の軸方向と垂直な断面において、ニップ部側の長さをAとし、前記ニップ部のニップ幅をCとしたとき、A>Cであることを特徴とする<4>から<8>のいずれかに記載の定着装置。
<10>前記反射部材は、前記支持部材と接する箇所を有することを特徴とする<1>から<9>のいずれかに記載の定着装置。
<11>前記支持部材と接しておらず、かつ、前記ニップ形成部材と接した位置であって、前記ニップ部とは反対側に板金部材を有し、前記板金部材の熱伝導率は、前記ニップ形成部材の熱伝導率以上であることを特徴とする<1>から<10>のいずれかに記載の定着装置。
<1>から<11>のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0067】
20 定着装置
21 定着ベルト
22 加圧ローラ
23 ヒータ
24 ニップ形成部材
25 ステー
26 摺動シート
27 ベルト支持部材
28 リフレクタ
29 板金部材
32 未定着画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】