(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172964
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】肩こり改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9068 20060101AFI20231129BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231129BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231129BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20231129BHJP
A61P 9/08 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61P9/00
A61P21/00
A61K31/12
A61P9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023086535
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022093994
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(72)【発明者】
【氏名】木内 良明
(72)【発明者】
【氏名】東川 史子
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C088AB81
4C088BA08
4C088CA02
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZA39
4C088ZA94
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA39
4C206ZA94
(57)【要約】
【課題】 本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな肩こり改善剤を提供する。
【解決手段】 発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、肩こり改善効果及び末梢血流改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、肩こり改善剤。
【請求項2】
加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、請求項1記載の肩こり改善剤
【請求項3】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、末梢血流改善剤。
【請求項4】
加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、請求項3記載の末梢血流改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする肩こり改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、スマートフォン等による作業(VDT作業)が日々の時間の多くを占めることで、肩こりの症状を訴える人が増加している。
【0003】
肩こり改善剤としては、例えば、ウコンを含有する薬品の混合物を原料とした肩凝りなどの症状を改善する医薬品(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな肩こり改善剤又は末梢血流改善剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、肩こり改善効果及び末梢血流改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]の態様に関する。
[1]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、肩こり改善剤。
[2]加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、[1]記載の肩こり改善剤。
[3]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、末梢血流改善剤。
[4]加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、[3]記載の末梢血流改善剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって天然物由来の成分を有効成分とする安全な肩こり改善剤及び末梢血流改善剤を提供でき、摂取することで、肩こり改善効果や末梢血流改善効果が得られ、各種飲食品、医薬品、医薬部外品等に含ませて利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)の測定値の推移を示すグラフである。
【
図2】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)のベースラインからの変化量の推移を示すグラフである。
【
図3】試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)の8週間の変化量を示すグラフである。
【
図4】女性の試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)の測定値の推移を示すグラフである。
【
図5】女性の試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)のベースラインからの変化量の推移を示すグラフである。
【
図6】女性の試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、肩こり(VAS)の8週間の変化量を示すグラフである。
【
図7】女性の試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、末梢血流速度(深部)の測定値の推移を示すグラフである。
【
図8】女性の試験食摂取群(Ginger)及び対照食摂取群(Placebo)における、末梢血流速度(深部)の8週間の変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の肩こり改善剤又は末梢血流改善剤は、加熱ショウガ抽出物を有効成分として含有する。
【0011】
本発明で使用する加熱ショウガ抽出物は、ショウガ科植物を抽出前後に加熱して得られる抽出物であって、抽出法としては、超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等が例示でき、不織布、メッシュ等を用いたろ過、遠心分離等により、固液分離したショウガ抽出液を加熱処理してもよく、加熱処理後に抽出又は固液分離して液部を回収してもよい。濃縮及び/又は乾燥した、濃縮品や乾燥品が好ましく、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等により乾燥して、粉末化でき、一般的な賦形剤を使用できる。具体的には、加熱ショウガ抽出物は、乳化剤を加えて乳化することで分散性を高めた後、デキストリン等の賦形剤を配合して、噴霧乾燥して得られる粉末品が好ましく、例えばジンジャーエキスパウダーS、H、E又はNE(池田糖化工業株式会社製)を使用できる。生の植物中又は未加熱のショウガ抽出物中では、ジンゲロール含有量よりショウガオール含有量の方がはるかに少ないことが知られているが、本発明では、抽出前後に加熱等の処理を行ってショウガオール含有量を高めており、加熱ショウガ抽出物はジンゲロールよりショウガオールを多く含むのが好ましく、ショウガオールをジンゲロールの1.5倍以上含むのがより好ましく、2倍以上含むのがさらに好ましく、3倍以上含むのが特に好ましく、上限は特に限定されないが、15倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。ショウガオール含有量が高められれば特に限定されないが、製造方法として例えば、100~300℃、好ましくは120~250℃で加熱することで、ショウガオール含有量の高い加熱ショウガ抽出物を製造できる。加熱ショウガ抽出物中のショウガオール含有量は、0.1~20重量%が好ましく、0.2~15重量%がより好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。
【0012】
前記乳化剤は、乳化能力を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、アカシアガム、ガティガム、キサンタンガム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等の多糖類、カゼイン、大豆タンパク質等のタンパク質又はタンパク加水分解物、レシチン、酵素処理レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。乳化処理は、一般的な乳化方法で行うことができる。詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。
【0013】
本発明の肩こり改善剤又は末梢血流改善剤の摂取方法としては、加熱ショウガ抽出物を経口摂取すればよく、本発明の効果が認められる摂取量であれば特に限定されないが、加熱ショウガ抽出物の一人一日当たりの摂取量は、5~2,000mgが好ましく、10~1,000mgがより好ましく、20~500mgがさらに好ましく、加熱ショウガ抽出物中に含まれる6-ショウガオールの一人一日当たりの摂取量は、0.1~50mgが好ましく、0.2~40mgがより好ましく、0.5~20mgがさらに好ましい。該摂取量を摂取できるよう、本発明の組成物を1日1回又は数回に分けて摂取すればよい。摂取することにより、深部の血流が促進されることで、末梢血流が改善され、肩こりが改善され、肩こり改善用の末梢血流改善剤として有用であり、特に限定されないが、女性用が好ましい。
【0014】
本発明の肩こり改善剤又は末梢血流改善剤はその有効成分が天然物由来であり、かつ、製造が容易なため、広く利用でき、各種製品に添加が可能で、液体で添加してもよく、乾燥品を添加してもよい。添加する飲食品等は特に限定されないが、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品の他、医薬品、医薬部外品、飼料等にも利用できる。各種製品中の加熱ショウガ抽出物の含有量は、摂取により本発明の効果が認められる量であれば特に限定されないが、0.001~80重量%が好ましく、0.005~60重量%がより好ましく、0.01~50重量%がさらに好ましい。
【実施例0015】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
試験食のカプセルの配合内訳は、加熱ショウガ抽出液に、アカシアガム(インスタントガム、Nexira株式会社製)を乳化剤として加えて乳化し、デキストリン(サンデック(登録商標)#300、三和澱粉工業株式会社製)を賦形剤として加えて噴霧乾燥して得られた粉末の加熱ショウガ抽出物(ジンジャーエキスパウダーE、池田糖化工業株式会社製)100mg(40%)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100、松谷化学工業株式会社製)147mg(58.8%)及びステアリン酸カルシウム3mg(1.2%)(合計250mg)とし、対照食のカプセルの配合内訳は、デキストリン(サンデック(登録商標)#300)100mg(40%)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100)147mg(58.8%)及びステアリン酸カルシウム3mg(1.2%)(合計250mg)とした。
全対象者の自覚症状によるVASにおいて、肩こりが、加熱ショウガ抽出物を含有する試験食摂取群で対照食摂取群よりも低下する傾向が認められ、さらに、層別解析により、女性の自覚症状によるVASにおける肩こりと末梢血流速度(深部)とで、加熱ショウガ抽出物を含有する試験食摂取群で対照食摂取群よりも有意に改善したことから、加熱ショウガ抽出物による肩こり改善効果が明らかになり、加熱ショウガ抽出物を摂取することで深部の血流が促進され、末梢血流を改善させることで、肩こりが改善されたと言える。よって、加熱ショウガ抽出物を有効成分とする肩こり改善剤及び末梢血流の改善剤として有用であることが分かった。