IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武田薬品工業株式会社の特許一覧

特開2023-172975遺伝性血管性浮腫の発作を治療するための血漿カリクレイン阻害薬およびその用途
<>
  • 特開-遺伝性血管性浮腫の発作を治療するための血漿カリクレイン阻害薬およびその用途 図1
  • 特開-遺伝性血管性浮腫の発作を治療するための血漿カリクレイン阻害薬およびその用途 図2
  • 特開-遺伝性血管性浮腫の発作を治療するための血漿カリクレイン阻害薬およびその用途 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172975
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】遺伝性血管性浮腫の発作を治療するための血漿カリクレイン阻害薬およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231128BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20231128BHJP
   C07K 16/40 20060101ALN20231128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P7/10 ZNA
A61K39/395 D
C07K16/40
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171924
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2021195425の分割
【原出願日】2016-12-09
(31)【優先権主張番号】62/266,192
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/266,175
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/395,833
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュランツ,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】エーデルマン,バート
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤン
(57)【要約】
【課題】活性血漿カリクレインに結合する血漿カリクレイン抗体、ならびに遺伝性血管性浮腫の発作の治療および予防において当該抗体を使用する方法を提供する。
【解決手段】第1の治療期間において、活性血漿カリクレインとの結合に関して、DX-2930と同じエピトープと結合するまたはDX-2930と競合する抗体の複数回投与で、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで前記抗体は、前記第1の治療期間で約150mgまたは約300mgの複数回投与で投与する、方法とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作を治療、またはHAEの発作の回数を減らすための方法であって、前記方法が、
第1の治療期間において、活性血漿カリクレインとの結合に関して、DX-2930と同じエピトープと結合するまたはDX-2930と競合する抗体の複数回投与で、それを必要とする対象に投与することを含み、
ここで前記抗体は、前記第1の治療期間で約150mgまたは約300mgの複数回投与で投与する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2015年12月11日に出願の米国仮特許出願第62/266,175号および2015年12月11日に出願の米国仮特許出願第62/266,192号、および2016年9月16日に出願の米国仮特許出願第62/395,833号の出願日の利益を請求するものであり、これら参照される出願のそれぞれの各内容全体は、本明細書中参照により援用されている。
【背景技術】
【0002】
血漿カリクレインは、接触系のセリンプロテアーゼの構成成分であり、異なる炎症性疾患、心血管疾患、感染性疾患(敗血症)、および腫瘍疾患にとって有望な薬剤標的である(Sainz I.M. et al., Thromb Haemost 98, 77-83, 2007)。接触系は、外来の表面もしくは負に帯電した表面に曝露されると第XIIa因子により活性化されるか、またはプロリルカルボキシペプチダーゼにより内皮細胞の表面で活性化される(Sainz I.M. et al., Thromb Haemost 98, 77-83, 2007)。血漿カリクレインの活性化は、第XII因子のフィードバック活性を介して内因性の凝固を増幅し、炎症誘発性ノナペプチドのブラジキンの産生を介して炎症を亢進する。循環中の主なキニノゲナーゼとして、血漿カリクレインは、脈管構造におけるブラジキンの産生に大きく関わっている。C1インヒビタータンパク質(C1-INH)は、血漿カリクレインの天然の主な阻害剤であり、C1インヒビタータンパク質の遺伝的欠損は遺伝性血管性浮腫(HAE)をもたらす。HAE患者は、多くの場合未知のトリガーにより引き起こされる疼痛性の浮腫の急性発作に苦しんでいる(Zuraw B.L. et al., N Engl J Med 359, 1027-1036, 2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書中、活性型のヒトの血漿カリクレイン(pKal)と結合および阻害できる抗体、たとえば活性なヒトのpKalとの結合に関して、DX-2930(別名、SHP643)と同じエピトープと結合する、またはDX-2930と競合する抗体を使用して、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作を治療し、HAEの発作の回数を減らし、またはHAEの発作を阻害するためのレジメンを提供する。
【0004】
一部の態様では、本開示は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作を治療、またはHAEの発作の回数を減らすための方法であって、本明細書中記載される抗pKal抗体のいずれか(たとえばDX-2930)を、単回投与および/または複数回投与で、それを必要とする対象に投与(たとえば皮下投与)することを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、抗体は、第1の治療期間、たとえば26週間に複数回投与で対象(たとえばヒトの患者)に投与される。たとえば抗体は、第1の治療期間において、2週間ごとに約300mg、4週間ごとに約300mg、または4週間ごとに約150mg投与され得る。
【0005】
本明細書中記載される方法のいずれかは、第1の治療期間後の第2の治療期間(たとえば26週間)の間、抗体を対象に投与することをさらに含み得る。一部の実施形態では、第2の治療期間の1回目の投与は、第1の治療期間の最後の投与から約2週間後である。一部の実施形態では、第2の治療期間は、たとえば26週間の間、2週間ごとに約300mgの抗体の複数回投与を含む。
【0006】
あるいは本方法は、第1の治療期間の後に、抗体の単回用量(たとえば約300mg)を対象に投与することをさらに含み得る。この単回投与は、経過観察され、ここでHAEの発作が単回投与の後に起こる場合に抗体の単回または複数回の抗体の投与(たとえば2週間ごとに約300mg)を行ってもよい。追加の治療の1回目の投与は、HAEの発作後1週間以内であり得る。一部の実施形態では、単回投与と追加の治療の1回目の投与とは、少なくとも10日間離れている。
【0007】
本開示の他の態様は、HAEの前治療を受けた対象において、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作を治療、またはHAEの発作の回数を減らすための方法であって、(i)本明細書中に記載の抗pKal抗体のいずれか(たとえばDX-2930)を約300mgの単回投与で、それを必要とする対象に投与(たとえば皮下投与)することと、(ii)(i)の後に対象がHAEの発作を経験する場合に、2週間ごとに約300mgの複数回投与で、抗体を対象にさらに投与することとを含む、方法を提供する。対象は、本明細書中に記載される第1のHAE治療を受けていてもよい。たとえば、第1のHAE治療は、同じ抗体(たとえばDX-2930)を含む治療とすることができる。一部の例では、第1のHAE治療は、4週間ごとの約150mgもしくは300mgの複数回の投与で抗体を投与すること、または2週間ごとの約300mgの複数回投与で抗体を投与することを含む。あるいはまたはさらに、複数回投与の1回目の投与は、HAEの発作から1週間以内に対象に提供される。
【0008】
本明細書中に記載される治療方法のいずれかでは、対象は、HAEを有する、HAEを有する疑いのある、またはHAEのリスクがある、ヒトの患者とすることができる。一部の実施形態では、対象はI型またはII型HAEを有するヒトの患者である。たとえば、対象は、第1の治療期間の1回目の投与前の4週間の間に少なくとも1回のHAEの発作を起こしていてもよく、または第1の治療期間の1回目の投与前の8週間の間に少なくとも2回のHAEの発作を起こしていてもよい。他の例では、対象は、治療前の1年間に少なくとも2回のHAEの発作を経験したヒトの患者とすることができる。あるいはまたはさらに、対象は、前治療を受けていない、たとえば第1の治療期間の1回目の投与前の少なくとも2週間の間、前治療を受けていないヒト患者である。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される抗pKal抗体のいずれか(たとえばDX-2930)の使用を含む、本明細書中に記載される方法のいずれかにより治療される対象は、抗pKal抗体の1回目の投与前に1つまたは複数のHAEの治療を受けている。このようなHAEの前治療は、C1インヒビター(たとえばC1-INH)、血漿カリクレイン阻害薬(たとえばエカランチド)、ブラジキニン受容体拮抗薬(たとえばイカチバント)、弱効性アンドロゲン(たとえばダナゾール)、抗線溶剤(たとえばトラネキサム酸)、またはそれらの組み合わせを含み得る。このような対象に、HAEの前治療から本明細書中記載される抗pKal抗体まで徐々に移行する漸減期間を供することができる。一部の例では、漸減期間は、2~4週間の範囲であり得る。HAEの前治療は、抗pKal抗体の1回目の投与の前、または抗pKal抗体の1回目の投与を対象に提供してから3週間以内に終了し得る。あるいは対象を、本明細書中記載されるように、HAEの前治療のいずれかから抗pKal抗体の治療へと直接移行してもよい。
【0010】
一部の実施形態では、対象は、第1の治療期間の前、第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間に、HAEの長期間の発病予防、またはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、エストロゲン含有薬物療法、もしくはアンドロゲンを含むHAEの治療を受けていない。
【0011】
本明細書中に記載される治療レジメンに使用するためのpKal抗体は、完全長の抗体またはその抗原結合フラグメントであり得る。一部の実施形態では、抗体は、DX-2930と同じCDRを含んでもよい。一例では、抗体はDX-2930である。
【0012】
本明細書中記載される任意の方法において、抗体は、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に製剤化することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、リン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、塩化ナトリウム、およびTween80を含む。一例では、リン酸ナトリウムは約30mMの濃度であり、クエン酸は約19mMの濃度であり、ヒスチジンは約50mMの濃度であり、塩化ナトリウムは約90mMの濃度であり、かつ/またはポリソルベート80は約0.01%である。
【0013】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本発明の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明、ならびに添付の特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2週間ごとに300mg、4週間ごとに300mg、または4週間ごとに150mgの用量でDX-2930を患者に投与する第1の治療期間を含む例示的な投与レジメンを示す。
図2】第1の治療期間後に第2の治療期間を含む例示的な投与レジメンを示す。第2の治療期間では、DX-2930を300mgの単回投与で患者に投与する。患者がHAEの発作を経験する場合、その後抗体を、2週間ごとに400mgの用量で投与する。
図3】ウェスタンブロット解析により検出された、表記の用量(30mg、100mg、300mg、または400mg)で、表記の日にDX-2930で治療した患者由来の血漿試料中の2本鎖高分子量キニノーゲン(HMWK)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
簡便性のため、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用されている特定の用語を、ここに定義する。他の用語は、本明細書中で現れる際に定義する。
【0016】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈で明らかに他の意味を示さない限りは、複数形を含む。
【0017】
本明細書中使用されるように、用語「約」は、特定の値±5%を表す。たとえば、約300mgの抗体は、285mg~315mgの間のいずれかの量の抗体を含む。
【0018】
用語「抗体」は、イムノグロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できるイムノグロブリン分子を表す。抗体は、重鎖イムノグロブリン可変ドメイン(V)を含む少なくとも1つの重鎖(H)、軽鎖イムノグロブリン可変ドメイン(V)を含む少なくとも1つの軽鎖、またはその両方を含み得る。たとえば、抗体は、重鎖(H)可変領域(本明細書中VまたはHVと略されている)および軽鎖(L)可変領域(本明細書中VまたはLVと略されている)を含むことができる。別の例では、抗体は、2つの重鎖(H)可変領域および2つの軽鎖(L)可変領域を含む。
【0019】
本明細書中使用されるように、用語「抗体」は、インタクト(すなわち完全長)のポリクローナルまたはモノクローナルの抗体だけでなく、その抗原結合フラグメント(Fab、Fab′、F(ab′)、Fvなど)、一本鎖(scFv)、ドメイン抗体(dAb)フラグメント(de Wildt et. al., Euro. J. Immunol. (1996) 26(3): 629-639)、またはそれらのいずれかの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、ならびに、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、および共有結合で修飾された抗体を含む、必要とされる特異性のある抗原認識部位を含むイムノグロブリン分子の他のいずれかの修飾された立体配置を、含む。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、またはIgMなどのいずれかのクラス(またはそれらのサブクラス)の抗体を含み、抗体はいずれかの特定のクラスにある必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、イムノグロブリンを異なるクラスに分類することができる。主要な5つのクラスのイムノグロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分類ことができる。異なるクラスのイムノグロブリンに対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれている。異なるクラスのイムノグロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置は、周知である。抗体は、いずれの供給源由来であってもよいが、霊長類(ヒトおよび非ヒトの霊長類)由来の抗体および霊長類化抗体が好ましい。
【0020】
および/またはV領域は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列のすべてまたは一部を含み得る。たとえば配列は、1つ、2つ、もしくはそれ以上のN末端もしくはC末端のアミノ酸、内部のアミノ酸が除外されてもよく、1つもしくは複数の挿入もしくは追加の末端アミノ酸を含んでもよく、または他の変更を含んでもよい。一実施形態では、イムノグロブリン可変ドメインの配列を含むポリペプチドは、別のイムノグロブリン可変ドメインと会合して、抗原結合部位、たとえば血漿カリクレインと優先的に相互作用する構造を形成することができる。
【0021】
領域およびV領域は、より保存されている「フレームワーク領域(FR)」と呼ばれる領域がその間に存在する、「相補性決定領域(CDR)」と呼ばれる超可変領域に、さらに細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている(Kabat, E.A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, and Chothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を参照されたい)。Kabatの定義を本明細書中で使用する。各VおよびVは、概して、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている3つのCDRおよび4つのFRから構成されている。
【0022】
領域およびV領域に加えて、抗体の重鎖または軽鎖は、重鎖または軽鎖の定常領域のすべてまたは一部をさらに含むことができる。一実施形態では、抗体は、イムノグロブリンの重鎖および軽鎖が、たとえばジスルフィド結合により内部で結合されている、2つのイムノグロブリン重鎖および2つのイムノグロブリン軽鎖の四量体である。IgGでは、重鎖定常領域は、3つのイムノグロブリンドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、概して、免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織または因子への抗体の結合を媒介する。イムノグロブリンの軽鎖は、κ型またはλ型であり得る。一実施形態では、抗体はグリコシル化されている。抗体は、抗体に依存する細胞傷害性および/または補体媒介型の細胞傷害性に関して機能的であり得る。
【0023】
抗体の1つまたは複数の領域は、ヒトまたは実際上ヒトであり得る。たとえば、1つまたは複数の可変領域は、ヒトまたは実際上ヒトであり得る。たとえば1つまたは複数のCDRは、ヒト、たとえばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、および/またはLC CDR3であり得る。軽鎖(LC)および/または重鎖(HC)のCDRは、それぞれ、ヒトであり得る。HC CDR3はヒトであり得る。1つまたは複数のフレームワーク領域は、ヒト、たとえばHCおよび/またはLCのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4であり得る。たとえばFc領域はヒトの領域であり得る。一実施形態では、すべてのフレームワーク領域は、ヒトのフレームワーク領域であり、たとえばイムノグロブリンを産生する血液系細胞または非血液系細胞といった、ヒトの体細胞に由来するフレームワーク領域である。一実施形態では、ヒトの配列は生殖系列の配列、たとえば生殖系列の核酸によりコードされた生殖系列の配列である。一実施形態では、選択されたFabのフレームワーク(FR)残基は、最も類似する霊長類の生殖系列の遺伝子、特にはヒトの生殖系列の遺伝子における対応する残基のアミノ酸型に変換することができる。1つまたは複数の定常領域は、ヒト、または実際上ヒトの定常領域であり得る。たとえばイムノグロブリンの可変ドメイン、定常領域、定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、および/またはCL1)、または抗体全体のうちの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または100%が、ヒトまたは実際上ヒトであり得る。
【0024】
抗体は、イムノグロブリンの遺伝子またはそのセグメントによりコードすることができる。例示的なヒトイムノグロブリンの遺伝子として、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン、およびミューの定常領域の遺伝子、ならびに多くのイムノグロブリンの可変領域の遺伝子が挙げられる。完全長イムノグロブリンの「軽鎖」(約25kDa、または約214アミノ酸)は、NH2末端(約110個のアミノ酸)で可変領域の遺伝子およびCOOH末端でカッパまたはラムダの定常領域の遺伝子により、コードされている。また完全長イムノグロブリンの「重鎖」(約50kDaまたは約446個のアミノ酸)は、可変領域の遺伝子(約116個のアミノ酸)および他の上述の定常領域の遺伝子の1つ、たとえばガンマ(約330個のアミノ酸をコード)により、コードされている。ヒトのHCの長さは、HC CDR3が約3個のアミノ酸残基から約35個のアミノ酸残基まで変動するため、大幅に変動する。
【0025】
完全長の抗体の「抗原結合フラグメント」との用語は、対象の標的に特異的に結合する能力を保持する完全長の抗体の1つまたは複数のフラグメントを表す。完全長の抗体の「抗原結合フラグメント」との用語に包含され、機能性を保持する結合フラグメントの例として、(i)V、V、C、およびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab′)2フラグメント;(iii)VドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVドメインおよびVドメインからなるFvフラグメント、(v)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VおよびVは、別々の遺伝子によりコードされているが、これらは、組み換え方法を使用して、VおよびVの領域が対を形成して、一本鎖Fv(scFv)として知られている一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより、結合させることができる。たとえば米国特許第5,260,203号、同4,946,778号、および同4,881,175号;Bird et al. (1988) Science 242:423-426;ならびにHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい。抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を含むいずれかの適切な技術を使用して得ることができる。
【0026】
用語「単一特異性抗体」は、特定の標的、たとえばエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体を表す。この用語は、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を含み、どのように抗体が作製されたかに関わらず、単一の分子組成の抗体またはそのフラグメントの調製物を表すように本明細書中で使用されている。抗体は、結合特性が実質的に保持されている限り、フレームワーク領域中の1つまたは複数の非生殖系列のアミノ酸を、抗体の対応する生殖系列のアミノ酸に戻すことにより、「生殖系列化」されている。
【0027】
阻害定数(K)は、阻害剤の効力の測定値を提供し;これは、酵素活性を半分低減させるために必要な阻害剤の濃度であり、酵素または基質の濃度に依存するものではない。見かけのK(Ki,app)は、反応の程度(たとえば酵素活性)に及ぼす阻害剤(たとえば阻害性結合タンパク質)の異なる濃度の阻害効果を測定することにより得られ;阻害剤の濃度の関数として擬1次速度定数の変化をMorrisonの式(式1)に適合させることにより、見かけのK値の推定値を得る。Kは、Ki,app対基質濃度のプロットの線形回帰の解析から引き出されるy切片から得られる。
【数1】
(式中、v=測定された速度;v0=阻害剤の非存在下での速度;Ki,app=見かけの阻害定数;I=阻害剤の総濃度;およびE=酵素の総濃度)
【0028】
本明細書中使用されるように、「結合親和性」は、見かけの結合定数またはKを表す。Kは、解離定数(K)の逆数である。結合抗体は、たとえば、特定の標的分子、たとえば血漿カリクレインに対して少なくとも105、106、107、108、109、1010、および1011M-1の結合親和性を有し得る。第2の標的と比較して第1の標的に対する結合抗体の結合親和性が高いことは、第2の標的の結合に関するK(または数値K)よりも第1の標的の結合に関するKが大きい(または数値Kが小さい)ことにより、表すことができる。このような場合、結合抗体は、第2の標的(たとえば第2の立体構造の同じタンパク質もしくはそれらの模倣物、または第二のタンパク質)と比較して、第1の標的(たとえば第1の立体構造のタンパク質またはその模倣物)に対して特異性を有する。結合親和性の差異(たとえば特異性または他の比較対象に関する)は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、70倍、80倍、90倍、100倍、500倍、1000倍、10,000倍、または10倍であり得る。
【0029】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(たとえば蛍光アッセイを使用する)を含む様々な方法により決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-Pバッファー(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、0.005%(v/v)のSurfactant P20)である。これらの技術を使用して、結合タンパク質(または標的)の濃度の関数として、結合および遊離の結合タンパク質の濃度を測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([Bound])は、以下の式
【数2】
により、遊離の結合タンパク質の濃度([Free])および標的上の結合タンパク質の結合部位の濃度と関連する。
【0030】
場合によっては、たとえば高い親和性が2倍高いかどうかを決定することなどの、Kに比例し、よって比較に使用できる、ELISAまたはFACSなどの方法を使用して決定される親和性の定量的測定を得ること、親和性の定性的測定を得ること、または機能的なアッセイ、たとえばin vitroもしくはin vivonアッセイにおける活性による親和性の推論を得ることで十分であるため、必ずしもKの正確な決定を行う必要はない。
【0031】
用語「結合抗体」(または本明細書中互換可能に使用されている「結合タンパク質」)は、標的分子と相互作用できる抗体を表す。この用語は、「リガンド」と互換可能に使用されている。「血漿カリクレイン結合抗体」は、血漿カリクレインと相互作用(たとえば結合)できる抗体を表し、特には、優先的にまたは特異的に、血漿カリクレインと相互作用および/または血漿カリクレインを阻害する抗体を含む。抗体の非存在下および同じ条件下での血漿カリクレインの活性と比較して血漿カリクレインの活性の減少を引き起こす場合、抗体は血漿カリクレインを阻害する。
【0032】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーとして、塩基性側鎖(たとえばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含むアミノ酸が挙げられる。
【0033】
結合タンパク質の1つまたは複数のフレームワークおよび/またはCDRのアミノ酸残基は、本明細書中に記載される結合タンパク質と比較して1つまたは複数の変異(たとえば置換(たとえば保存的置換または非必須アミノ酸の置換)、挿入、または欠失)を含むことが可能である。血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書中記載される結合タンパク質と比較して、変異(たとえば置換(たとえば保存的置換または非必須アミノ酸の置換)、挿入、または欠失)(たとえば少なくとも1個、2個、3個、もしくは4個および/または15未満、12未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、または2未満の変異)、たとえばタンパク質の機能に実質的に影響しない変異を有していてもよい。この変異は、フレームワーク領域、CDR、および/または定常領域に存在することができる。一部の実施形態では、変異はフレームワーク領域に存在する。一部の実施形態では、変異はCDRに存在する。一部の実施形態では、変異は定常領域に存在する。特定の置換が許容されるかどうか、すなわち、結合活性などの生物学的な特性に悪影響を及ぼさないかどうかは、たとえば変異が保存的かどうかを評価することにより、またはBowie、 et al. (1990) Science 247:1306-1310の方法により、予測することができる。
【0034】
「実際上ヒト」のイムノグロブリンの可変領域は、当該イムノグロブリンの可変領域が正常なヒトの免疫原性応答を誘発しないよう十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むイムノグロブリンの可変領域である。「実際上ヒト」の抗体は、当該抗体が正常なヒトの免疫原性応答を誘発しないよう十分な数のヒトアミノ酸位置を含む抗体である。
【0035】
「エピトープ」は、結合タンパク質(たとえばFabまたは完全長抗体などの抗体)により結合されている標的化合物にある部位を表す。標的化合物がタンパク質である場合、この部位は、完全にアミノ酸の構成成分から構成することができ、完全にタンパク質のアミノ酸の化学的修飾物(たとえばグリコシル部分)から構成することができ、またはそれらの組み合わせから構成することができる。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通するアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基、または他の分子特徴を含む。
【0036】
第1の結合抗体が、第2の結合抗体が結合する標的化合物上の同じ部位と結合する、または第2の結合抗体が結合する部位と重複する(たとえばアミノ酸配列または他の分子特徴(たとえばグリコシル基、リン酸基、または硫酸基)に関して50%、60%、70%、80%、90%、または100%重複する)部位と結合する場合、第1の結合抗体は、第2の結合抗体と「同じエピトープに結合する」。
【0037】
第1の結合抗体のエピトープと第1の結合抗体の結合が、第2の結合抗体のエピトープと結合する第2の結合抗体の量を(たとえば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれ以上)減少させる場合、第1の結合抗体は、第2の結合抗体と「結合に関して競合する」。この競合は、直接的(たとえば第1の結合抗体が、第2の結合抗体が結合するエピトープと同じであるエピトープと結合する、または同エピトープと重複するエピトープと結合する)、または間接的(たとえば第1の結合抗体のエピトープに対する第1の結合抗体の結合が、第2の結合抗体のエピトープに結合する第2の結合抗体の能力を減少させる標的化合物の立体的な変化を引き起こす)であり得る。
【0038】
2つの配列の間の「相同性」または「配列同一性」(これら用語は本明細書中互換可能に使用されている)の計算は、以下の通りに行われている。2つの配列を、最適な比較目的のために整列させる(たとえば、最適なアライメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸の配列の1つまたは両方にギャップを導入することができ、非相同配列を、比較の目的のため無視することができる)。最適なアライメントを、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、および5のフレームシフトギャップペナルティを伴うBlossum 62スコア行列を用いて、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用した最良のスコアとして決定する。次に、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列におけるある位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合、分子は、当該位置で同一である(本明細書中使用されるようにアミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一の位置の数の関数である。
【0039】
好ましい実施形態では、比較目的のため整列させた参照配列の長さは、参照配列の長さの、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、およびさらにより好ましくは、少なくとも70%、80%、90%、92%、95%、97%、98%、または100%である。たとえば、参照配列は、イムノグロブリンの可変ドメインの配列の長さであってもよい。
【0040】
「ヒト化」イムノグロブリン可変領域は、イムノグロブリン可変領域が、正常なヒトで免疫原性応答を誘発しないように十分な数のヒトのフレームアミノ酸位置を含むように修飾されているイムノグロブリン可変領域である。「ヒト化」イムノグロブリンの記載として、たとえば米国特許第6,407,213号および同5,693,762号が挙げられる。
【0041】
「単離」抗体は、単離抗体を得ることができる天然の試料の少なくとも1つの成分の少なくとも90%から除去されている抗体を表す。抗体は、対象の種または種の集団が、重量‐重量ベースで少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、90%、92%、95%、98%、または99%純粋である場合、抗体は、「少なくとも」特定の度合いの純度を有することができる。
【0042】
対象となる方法により治療される「患者」、「対象」、または「宿主」(これら用語は互換可能に使用されている)は、ヒトまたは非ヒトの動物のいずれかを意味し得る。対象は、本明細書中に記載される抗体を含む治療などの、HAEに関する前治療を受けている対象であり得る。一部の実施形態では、対象は、小児の対象(たとえば幼児、子供、または青年期の対象)である。
【0043】
用語「プレカリクレイン」および「血漿プレカリクレイン」は、本明細書中互換可能に使用されており、プレカリクレインとしても知られている活性な血漿カリクレインの酵素前駆体の形態を表す。
【0044】
本明細書中使用されるように、用語「実質的に同一の」(または「実質的に相同な」)は、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列が、類似の活性、たとえば結合活性、結合特性、または生物学的な活性を有する(または有するタンパク質をコードする)ように、十分な数の、第2のアミノ酸配列または核酸配列と同一または等価な(たとえば類似の側鎖、たとえば保存的アミノ酸置換を伴う)アミノ酸残基またはヌクレオチドを含む第1のアミノ酸配列または核酸配列を表すように本明細書中使用されている。抗体の場合、第2の抗体は、同じ特異性を有し、同じ抗原と比較して少なくとも50%、少なくとも25%、または少なくとも10%の親和性を有する。
【0045】
また、本明細書中に開示される配列と類似または相同な配列(たとえば少なくとも約85%の配列同一性)も本願の一部である。一部の実施形態では、配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上とすることができる。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、本明細書中記載される抗体と約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有することができる。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)と、HCおよび/またはLCフレームワーク領域(たとえばHCおよび/またはLCのFR1、2、3、および/または4)において約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有することができる。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)と、HCおよび/またはLC CDR(たとえば、HCおよび/またはLC CDR1、2、および/または3)において約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有することができる。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)と、定常領域(たとえば、CH1、CH2、CH3、および/またはCL1)において約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有することができる。
【0046】
さらに、核酸セグメントが、選択的なハイブリダイゼーション条件(たとえば極めてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で鎖の相補体にハイブリダイズする場合に、実質的な同一性が存在する。核酸は、細胞、細胞のライセートに存在してもよく、または部分的に精製した形態もしくは実質的に純粋な形態で存在してもよい。
【0047】
統計的有意性を、任意の技術の既知の方法により決定することができる。例示的な統計的検定として、スチューデントのt検定、ノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定、およびウィルコクソンのノンパラメトリック統計検定が挙げられる。一部の統計的に有意な関係は、0.05未満または0.02未満のP値を有する。特定の結合タンパク質は、たとえば特異性または結合性において統計的に有意(たとえばP値<0.05または0.02)である差異を示し得る。たとえば、2つの状態の間の区別可能な定性的または定量的な差異を表す用語「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「高める」、「増加させる」、「減少させる」などは、たとえば2つの状態の間の統計的に有意な差異を表し得る。
【0048】
「治療上有効用量」は、好ましくは、測定可能なパラメータ、たとえば血漿カリクレインの活性を、無処置の対象と比較して統計的に有意な度合、または少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、およびなおより好ましくは少なくとも80%調節する。測定可能なパラメータ、たとえば疾患に関連するパラメータを調節する化合物の能力は、ヒトの障害および病態における有効性を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、この組成物の特性は、in vitroで化合物がパラメータを調節する能力を試験することにより、評価することができる。
【0049】
本明細書中で使用される用語「治療する」は、アレルギー性疾患、アレルギー性疾患の症状、またはアレルギー性疾患の素因を有する対象に対する、疾患、疾患の症状、または疾患の素因を治す、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、治療する、寛解する、改善する、または影響を与える目的での、1つまたは複数の活性薬剤を含む組成物の適用または投与を表す。予防的治療(preventive treatment)としても知られている予防治療(prophylactic treatment)は、患者が患ったことのある疾患、または曝露され得る疾患から患者を保護する、または同疾患のリスクを低下させることを目的とする治療を表す。
【0050】
対象において疾患を「予防する」との用語は、疾患の少なくとも1つの症状を予防する、すなわち、宿主を望ましくない病態の発症から保護するように、望ましくない病態の臨床発現の前に投与される、薬物治療、たとえば薬物投与を対象に行うことを表す。疾患を「予防すること」は、「発病予防」または「予防治療」と表され得る。
【0051】
「予防上有効量」は、望ましい予防上の結果を達成するために必要な投与量および期間での有効量を表す。概して、予防上の用量は、疾患前、または疾患の早期で対象に使用されるため、予防上有効量は治療上有効量よりも少ない。
【0052】
血漿カリクレイン(pKal)に対する抗体の結合
本明細書中記載される方法に使用するための血漿カリクレイン結合抗体(抗pKal抗体)は、完全長(たとえばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgM、IgA(IgA1、IgA2を含む)、IgD、およびIgE)であり得るか、または抗原結合フラグメント(たとえばFab、F(ab′)またはscFvフラグメントのみを含み得る。結合抗体は、2つの重鎖イムノグロブリンおよび2つの軽鎖イムノグロブリンを含むことができ、または一本鎖抗体であり得る。血漿カリクレイン結合抗体は、ヒト化抗体、CDR移植抗体、キメラ抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、またはin vitroで作製した抗体などの組み換え抗体であり得て、任意に、ヒト生殖系列のイムノグロブリン配列由来の定常領域を含み得る。一実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体はモノクローナル抗体である。
【0053】
一態様では、本開示は、血漿カリクレイン(たとえばヒトの血漿カリクレインおよび/またはマウスのカリクレイン)に結合し、少なくとも1つのイムノグロブリン可変領域を含む抗体(たとえば単離された抗体)を特徴とする。たとえば、抗体は、重鎖(HC)イムノグロブリン可変ドメイン配列および/または軽鎖(LC)イムノグロブリン可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、抗体は、血漿カリクレイン、たとえばヒト血漿カリクレインおよび/またはマウスカリクレインと結合し、当該血漿カリクレインを阻害する。
【0054】
抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である1つまたは複数の(たとえば1個、2個、または3個の)CDRを含む;(c)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である1つまたは複数の(たとえば1個、2個、または3個の)CDRを含む;(d)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメイン(たとえば全体またはフレームワーク領域もしくはCDR)と少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である;(e)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメイン(たとえば全体またはフレームワーク領域もしくはCDR)と少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である;(f)抗体は、本明細書中記載される抗体が結合するエピトープに結合するか、または本明細書中記載される抗体と結合に関して競合する;(g)霊長類のCDRまたは霊長類のフレームワーク領域;(h)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメインのCDR1と、少なくとも1つのアミノ酸、ただし2または3以下のアミノ酸だけ異なるCDR1を含む;(i)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメインのCDR2と少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、または8個以下のアミノ酸が異なるCDR2を含む;(j)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメインのCDR3と、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、5以下、または6個以下のアミノ酸が異なるCDR3を含む;(k)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメインのCDR1と、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、または5個以下のアミノ酸が異なるCDR1を含む;(l)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメインのCDR2と、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、または4個以下のアミノ酸が異なるCDR2を含む;(m)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメインのCDR3と、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、または5個以下のアミノ酸が異なるCDR3を含む;(n)LCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるLC可変ドメインと、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、または10個以下のアミノ酸が異なり;および(o)HCイムノグロブリン可変ドメイン配列は、本明細書中記載されるHC可変ドメイン(たとえば全体またはフレームワーク領域もしくはCDR)と、少なくとも1つのアミノ酸、しかし2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、または10個以下のアミノ酸が異なる。
【0055】
血漿カリクレイン結合タンパク質は、単離抗体(たとえば他のタンパク質を少なくとも70%、80%、90%、95%、または99%含まない)であり得る。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体またはその組成物は、血漿カリクレイン結合抗体と比較して不活性であるかまたは部分的に活性である(たとえば5000nM以上のKi,appで血漿カリクレインと結合する)抗体切断フラグメント(たとえばDX-2930)から、単離されている。たとえば、血漿カリクレイン結合抗体は、当該抗体切断フラグメントを少なくとも70%含まず;他の実施形態では、結合抗体は、不活性であるかまたは部分的に活性である抗体切断フラグメントを少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはさらには100%含まない。
【0056】
血漿カリクレイン結合抗体は、さらに、血漿カリクレイン、たとえばヒト血漿カリクレインを阻害し得る。
【0057】
一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、プレカリクレイン(たとえばヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)と結合しないが、血漿カリクレイン(たとえばヒト血漿カリクレインおよび/またはマウスカリクレイン)の活性型と結合する。
【0058】
特定の実施形態では、抗体は、血漿カリクレインもしくはそのフラグメントの触媒ドメインの活性部位もしくはその付近で結合するか、または血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープと結合する。
【0059】
一部の態様では、抗体は、本明細書中記載される抗体と同じエピトープに結合するか、または結合に関して競合する。
【0060】
抗体は、少なくとも10、10、10、10、10、1010、および1011-1の結合親和性で、血漿カリクレイン、たとえばヒト血漿カリクレインと結合できる。一実施形態では、抗体は、1×10-3、5×10-4-1、または1×10-4-1よりも遅いKoffでヒト血漿カリクレインと結合する。一実施形態では、抗体は、1×10、1×10、または5×10-1-1よりも速いKonでヒト血漿カリクレインと結合する。一実施形態では、抗体は血漿カリクレインと結合するが、血漿カリクレインとの結合ほどには組織カリクレインおよび/または血漿プレカリクレインとは結合しない(たとえば抗体は、陰性対照と比較して低い有効性で(たとえば5倍、10倍、50倍、100倍、もしくは100倍低い、または全く結合しない)、組織のカリクレインおよび/または血漿プレカリクレインと結合する)。
【0061】
一実施形態では、抗体は、たとえば10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、および10-10MのKiで、ヒトの血漿カリクレイン活性を阻害する。抗体は、たとえば100nM未満、10nM未満、1、0.5、または0.2nM未満のIC50を有することができる。たとえば抗体は、血漿カリクレインの活性、ならびに第XIIa因子(たとえば第XII因子由来)および/またはブラジキン(たとえば高分子量のキニノーゲン(HMWK)由来)の産生を調節し得る。抗体は、血漿カリクレインの活性、ならびに第XIIa因子(たとえば第XII因子由来)および/またはブラジキン(たとえば高分子量のキニノーゲン(HMWK)由来)の産生を阻害してもよい。ヒト血漿カリクレインに関する抗体の親和性は、100nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満のKを特徴とすることができる。一実施形態では、抗体は、血漿カリクレインを阻害するが、血漿カリクレインを阻害するほどには組織カリクレインを阻害しない(たとえば抗体は、陰性対照と比較して低い有効性で(たとえば5倍、10倍、50倍、100倍、もしくは1000倍低い、または全く阻害しない)。
【0062】
一部の実施形態では、抗体は、1000nM未満、500nM未満、100nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、または0.2nM未満の見かけの阻害定数(Ki,app)を有する。
【0063】
血漿カリクレイン結合抗体は、単一のポリペプチド(たとえばscFv)、または異なるポリペプチド(たとえばIgGまたはFab)に含まれるHCおよびLCの可変ドメイン配列を有し得る。
【0064】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成成分である。別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成成分である。たとえば抗体は、IgG、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。抗体は、可溶性のFabであり得る。他の実施では、抗体は、Fab2′、scFv、ミニボディ(minibody)、scFv::Fc融合物、Fab::HSA融合物、HSA::Fab融合物、Fab::HSA::Fab融合物、または本明細書中の結合タンパク質のうちの1つの抗原結合部位(antigen combining site)を含む他の分子を含む。これらFabのV領域およびV領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2′、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、V::CH1::HSA+LC、HSA::V::CH1+LC、LC::HSA+V::CH1、HSA::LC+V::CH、または他の適切な構築物として提供することができる。
【0065】
一実施形態では、抗体は、ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。たとえば抗体は、1つまたは複数のヒト抗体フレームワーク領域、たとえばすべてのヒトフレームワーク領域、またはヒトフレームワーク領域と少なくとも85%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一のフレームワーク領域を含む。一実施形態では、抗体は、ヒトFcドメイン、またはヒトFcドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるFcドメインを含む。
【0066】
一実施形態では、抗体は、霊長類抗体もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。たとえば、抗体は、1つまたは複数の霊長類抗体フレームワーク領域、たとえばすべての霊長類フレームワーク領域、または霊長類フレームワーク領域と少なくとも85%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるフレームワーク領域を含む。一実施形態では、抗体は、霊長類Fcドメイン、または霊長類Fcドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」として、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル(gibons)、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)、ならびにメガネザルが挙げられる。一部の実施形態では、ヒトの血漿カリクレインに関する霊長類抗体の親和性は、1000nM未満、500nM未満、100nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、たとえば10nM未満、1nM未満、または0、5nM未満のKを特徴とする。
【0067】
特定の実施形態では、抗体は、マウスまたはウサギ由来の配列を全く含まない(たとえばマウス抗体もしくはウサギ抗体ではない)。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書中記載される方法に使用される抗体は、本明細書中記載されるDX-2930もしくはその機能的変異体であり得るか、または活性血漿カリクレインとの結合に関して、DX-2930と同じエピトープと結合するか、もしくはDX-2930と競合する抗体であり得る。
【0069】
一例では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930と同じ相補性決定領域(CDR)を含む。別の例では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930のVおよびVのフレームワーク領域と比較して、VまたはVのFRに1つまたは複数の変異(たとえば保存的置換)を含み得る。好ましくは、このような変異は、通常の技術により決定することができる、1つまたは複数のCDRと相互作用すると予測されている残基で起こらない。他の実施形態では、本明細書中記載される機能的な変異体は、DX-2930の1つまたは複数のCDRの中に1つまたは複数の変異を(たとえば1つ、2つ、または3つ)含む。好ましくは、このような機能的変異体は、抗原結合に関与する親と同じ領域/残基を保持する。さらなる他の実施形態では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930のVのアミノ酸配列と少なくとも85%(たとえば90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一のアミノ酸配列を含むV鎖、および/またはDX-2930のVのアミノ酸配列と少なくとも85%(たとえば、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一のアミノ酸配列を有するV鎖を含み得る。これらの変異体は、血漿カリクレインの活性型と結合することができ、好ましくはプレカリクレインと結合しない。
【0070】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993のように修正されたKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを使用して決定する。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLASTおよびXBLASTのプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、対象のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施することができる。ギャップが2つの配列間に存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載するように実施することができる。BLASTおよびGapped BLASTのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(たとえばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される方法および組成物に使用される抗体は、DX―2930抗体であり得る。DX-2930の重鎖および軽鎖の完全な配列および可変の配列を以下に提供し、ここでシグナル配列はイタリック体である。CDRは太字であり、かつ下線が引かれている。
【化1】
【表1】
【0072】
抗体の調製
本明細書中に記載される抗体(たとえばDX-2930)は、当該分野で知られているいずれかの方法により、作製することができる。たとえばHarlow and Lane, (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York and Greenfield, (2013) Antibodies: A Laboratory Manual, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0073】
対象の抗体、たとえばDX-2930をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持されてもよく、次いで、宿主細胞を増大させて、さらに使用するため凍結することができる。代替として、ポリヌクレオチド配列を、抗体を「ヒト化」するための、または抗体の親和性(親和性の成熟)もしくは他の特徴を改善するための、遺伝的操作に使用してもよい。たとえば、定常領域を、抗体がヒトでの臨床試験および治療に使用される場合の免疫応答を回避するため、ヒトの定常領域により類似するように遺伝子操作してもよい。標的抗原に対するより高い親和性、およびPKalの活性の阻害におけるより大きな有効性を得るために、抗体の配列を遺伝的に操作することが望ましい場合がある。抗体に対して1つまたは複数のポリヌクレオチドの変化を作製することができ、それでもなお標的抗原に対する抗体の結合特異性を維持できることは、当該分野の当業者に明らかである。
【0074】
他の実施形態では、特異的なヒトのイムノグロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することにより、完全なヒトの抗体を得ることができる。より望ましい(たとえば完全なヒト抗体)またはより強力な免疫応答を産生するように設計されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化抗体またはヒト抗体の作製に使用してもよい。このような技術の例として、Amgen, Inc.(カリフォルニア州フリーモント)製のXenomouse(登録商標)、ならびにMedarex, Inc.(ニュージャージー州プリンストン)製のHuMAb-Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)がある。別の代替において、抗体は、ファージディスプレイ技術または酵母の技術による組み換えにより作製され得る。たとえば、米国特許第5,565,332号;同5,580,717号;同5,733,743号;および同6,265,150号;ならびにWinter et al., (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553)は、非免疫ドナー由来のイムノグロブリン可変(V)ドメインの遺伝子のレパートリーから、in vitoでヒト抗体および抗体フラグメントを生成するために使用することができる。
【0075】
インタクト抗体(完全長の抗体)の抗原結合フラグメントは、通常の方法を介して調製することができる。たとえばF(ab′)フラグメントは、抗体分子のペプシン消化により産生することができ、Fabフラグメントは、F(ab′)フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより作製することができる。
【0076】
ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、および二重特異性抗体などの遺伝子操作された抗体は、たとえば従来の組み換え技術を介して作製することができる。一例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAを、容易に単離または合成することができる。DNAを、1つまたは複数のベクターの中に配置してもよく、次いで大腸菌の細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはイムノグロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫の細胞などの宿主細胞にトランスフェクトすることにより、組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成する。たとえば国際特許公開公報第87/04462号を参照されたい。次にDNAを、たとえば、相同的なマウスの配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖の定常ドメインコード配列を使用することにより(Morrison et al., (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851)、または非イムノグロブリンのポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を、イムノグロブリンコード配列に共有結合させることにより、修飾することができる。このようにして、標的抗原の結合特異性を有する「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体などの遺伝子操作された抗体を調製することができる。
【0077】
「キメラ抗体」の生成に関して開発された技術は、当該分野でよく知られている。たとえばMorrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851; Neuberger et al. (1984) Nature 312, 604;およびTakeda et al. (1984) Nature 314:452を参照されたい。
【0078】
ヒト化抗体を構築するための方法も、当該分野で周知である。たとえば、Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033 (1989)を参照されたい。一例では、親の非ヒト抗体のVおよびVの可変領域に、当該分野で公知の方法に従って3次元分子モデリング解析を行う。次に、正確なCDRの構造の形成に重要であると予測されるフレームワークのアミノ酸残基を、同じ分子モデリング解析を使用して同定する。並行して、親の非ヒト抗体の配列と相同なアミノ酸配列を有するヒトVおよびV配列を、検索クエリとして親のVおよびV配列を使用して、いずれかの抗体遺伝子データベースから同定する。次に、ヒトVおよびVアクセプター遺伝子を選択する。
【0079】
選択されたヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域を、親の非ヒト抗体またはその機能的変異体由来のCDR領域と置換することができる。必要な場合、CDR領域との相互作用に重要であると予測される親の鎖のフレームワーク領域内の残基(上の記載を参照)を、ヒトのアクセプター遺伝子の対応する残基と置換するために使用できる。
【0080】
一本鎖抗体は、組み換え技術を介して、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を結合することにより、調製することができる。好ましくは、フレキシブルリンカーが、2つの可変領域の間に組み込まれている。あるいは、一本鎖抗体の産生に関して記載される技術(米国特許第4,946,778号および同4,704,692号)を改変して、ファージまたは酵母のscFvライブラリーを生産することができ、PKalに特異的なscFvクローンは、通常の手段に従ってライブラリーから同定することができる。PKal活性を阻害するクローンを同定するため、陽性クローンにさらなるスクリーニングを行うことができる。
【0081】
一部の抗体、たとえばFabを、細菌細胞、たとえば大腸菌細胞において産生させることができる(たとえばNadkarni, A. et al., 2007 Protein Expr Purif 52(1):219-29参照)。たとえばFabが、ディスプレイ部分とバクテリオファージタンパク質(またはそのフラグメント)との間に抑制可能な終止コドンを含むファージディスプレイベクター中の配列によりコードされている場合、ベクターの核酸を、終止コドンを抑制できない細菌細胞に転移させることができる。この場合、Fabは、第IIIの遺伝子のタンパク質(gene III protein)に融合されず、周辺質および/または培地に分泌される。
【0082】
抗体はまた、真核細胞でも産生させることができる。一実施形態では、抗体(たとえばscFv′の抗体)は、ピチア(Pichia)(たとえばPowers et al., 2001, J. Immunol. Methods. 251:123-35; Schoonooghe S. et al., 2009 BMC Biotechnol. 9:70; Abdel-Salam, HA. et al., 2001 Appl Microbiol Biotechnol 56(1-2):157-64; Takahashi K. et al., 2000 Biosci Biotechnol Biochem 64(10):2138-44; Edqvist, J. et al., 1991 J Biotechnol 20(3):291-300を参照)、ハンゼヌラ(Hanseula)、またはサッカロミケス(Saccharomyces)などの酵母の細胞で発現されている。当業者は、たとえば酸素の状態(たとえばBaumann K., et al. 2010 BMC Syst. Biol. 4:141参照)、モル浸透圧濃度(たとえばDragosits, M. et al., 2010 BMC Genomics 11:207参照)、温度(たとえばDragosits, M. et al., 2009 J Proteome Res. 8(3):1380-92参照)、発酵状態(たとえばNing, D. et al. 2005 J. Biochem. and Mol. Biol. 38(3): 294-299参照)、酵母株(たとえばKozyr, AV et al. 2004 Mol Biol (Mosk) 38(6):1067-75; Horwitz, AH. et al., 1988 Proc Natl Acad Sci USA 85(22):8678-82; Bowdish, K. et al. 1991 J Biol Chem 266(18):11901-8参照)、抗体産生を高めるためのタンパク質の過剰発現(たとえばGasser, B. et al., 2006 Biotechol. Bioeng. 94(2):353-61参照)、培養の酸性度のレベル(たとえばKobayashi H., et al., 1997 FEMS Microbiol Lett 152(2):235-42参照)、基質および/またはイオンの濃度(たとえばKo JH. et al., 2996 Appl Biochem Biotechnol 60(1):41-8参照)を最適化することにより、酵母での抗体の産生を最適化することができる。さらに、酵母系を使用して、半減期の長い抗体を産生することができる(たとえばSmith, BJ. et al. 2001 Bioconjug Chem 12(5):750-756参照)。
【0083】
1つの好ましい実施形態では、抗体は、哺乳動物細胞で産生されている。クローン抗体またはその抗原結合フラグメントを発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(たとえばKaufman and Sharp, 1982, Mol. Biol. 159:601 621に記載されるようにDHFR選択マーカーと共に使用されている、Urlaub and Chasin, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr- CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株、たとえばNS0骨髄腫細胞およびSP2細胞、COS細胞、HEK293T細胞(J. Immunol. Methods (2004) 289(1-2):65-80)、ならびにトランスジェニック動物、たとえばトランスジェニック哺乳動物由来の細胞が、挙げられる。たとえば、当該細胞は乳腺上皮細胞である。
【0084】
一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、植物または無細胞をベースとする系で産生されている(たとえばGaleffi, P., et al., 2006 J Transl Med 4:39参照)。
【0085】
多様なイムノグロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を調節する配列(たとえば複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などの、追加的な配列を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(たとえば米国特許第4,399,216号、同4,634,665号、および同5,179,017号を参照)。たとえば、概して選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサートの選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞に使用するため)およびneo遺伝子(G418の選択のため)が挙げられる。
【0086】
抗体またはその抗原結合部位の組み換え発現のための例示的なシステムにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターを、リン酸カルシウム媒介型のトランスフェクションにより、dhfrCHO細胞に導入する。組み換え発現ベクターの中で、抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子をそれぞれ、高レベルの遺伝子の転写を駆動するため、エンハーサー/プロモーター調節エレメント(たとえばCMVエンハーサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハーサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなどの、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する)に作動可能に結合する。また組み換え発現ベクターは、DHFR遺伝子を有しており、これによりメトトレキサート選択/増幅を使用してベクターがトランスフェクトされているCHO細胞の選択を可能にする。選択した形質転換体の宿主細胞を、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするよう培養し、インタクトの抗体を培養培地から回収する。組み換え発現ベクターを調製する、宿主細胞をトランスフェクトする、形質転換体を選択する、宿主細胞を培養する、および培養培地からの抗体を回収するために、標準的な分子生物学の技術を使用する。たとえば、一部の抗体は、プロテインAまたはプロテインG結合マトリックスを用いた親和性クロマトグラフィーにより単離することができる。
【0087】
Fcドメインを含む抗体では、抗体産生システムは、Fc領域がグリコシル化されている抗体を産生し得る。たとえば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297でグリコシル化されている。このアスパラギンは、二分岐型のオリゴ糖での修飾部位である。このグリコシル化は、Fcg受容体および補体C1qにより媒介されるエフェクター機能に必要とされている(Burton and Woof, 1992, Adv. Immunol. 51:1-84; Jefferis et al., 1998, Immunol. Rev. 163:59-76)。一実施形態では、Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系で産生されている。またFcドメインは、他の真核生物の翻訳後修飾を含むことができる。
【0088】
また抗体は、トランスジェニック動物により産生することができる。たとえば米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック動物の乳腺において抗体を発現させる方法を記載している。乳特異的プロモーターと、対象の抗体および分泌のためのシグナル配列をコードする核酸とを含む導入遺伝子を構築する。このような雌性トランスジェニック哺乳動物により産生された乳は、その中に分泌された対象の抗体を含む。この抗体を、乳から精製することができ、または一部の応用では直接使用することができる。
【0089】
医薬組成物
本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、組成物、たとえば薬学的に許容可能な組成物または医薬組成物に存在することができる。本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、薬学的に許容可能な担体と共に製剤化することができる。一部の実施形態では、150mgまたは300mgのDX-2930抗体が、薬学的に許容可能な担体を任意に含む組成物、たとえば薬学的に許容可能な組成物または医薬組成物に存在している。
【0090】
薬学的に許容可能な担体は、生理学的に適合可能なありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(たとえば注射または点滴)に適しているが、吸入および鼻腔内投与に適した担体も企図されている。
【0091】
本明細書中に記載される医薬組成物中の薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、アミノ酸、浸透圧調節剤のうちの1つまたは複数を含み得る。いずれかの適切な緩衝剤または緩衝剤の組み合わせを、本組成物の適切なpHを維持するため、または維持を助けるために、本明細書中に記載される医薬組成物に使用してもよい。緩衝剤の非限定的な例として、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、トリス、および酢酸ナトリウムが挙げられる。一部の実施形態では、緩衝剤は、5~100mM、5~50mM、10~50mM、15~50mM、または約15~40mMの濃度であり得る。たとえば、1つまたは複数の緩衝剤は、約15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、31mM、32mM、33mM、35mM、36mM、37mM、38mM、39mM、または約40mMの濃度であり得る。一部の例では、薬学的に許容可能な担体は、リン酸ナトリウムおよびクエン酸を含み、これらはそれぞれ約30mMおよび約19mMの濃度であり得る。
【0092】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、投与前の保存の間、抗体の凝集を減少させ、および/または抗体の安定性を増加させ得る1つまたは複数のアミノ酸を含む。本明細書中に記載される医薬組成物の作製に使用するための例示的なアミノ酸として、限定するものではないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン、またはセリンが挙げられる。一部の例では、医薬組成物中のアミノ酸の濃度は、約5~100mM、10~90mM、20~80mM、30~70mM、40~60mM、または約45~55mMであり得る。一部の例では、アミノ酸(たとえばヒスチジン)の濃度は、約40mM、41mM、42mM、43mM、44mM、45mM、46mM、47mM、48mM、49mM、50mM、51mM、52mM、53mM、54mM、55mM、56mM、57mM、58mM、59mM、または約60mMであり得る。一例では、医薬組成物は、約50mMの濃度のヒスチジンを含む。
【0093】
いずれかの適切な浸透圧調整剤を、本明細書中記載される医薬組成物を調製するために使用することができる。一部の実施形態では、浸透圧調節剤は塩またはアミノ酸である。適切な塩の例として、限定するものではないが、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウムが挙げられる。一部の実施形態では、医薬組成物中の浸透圧調節剤は、約10~150mM、50~150mM、50~100mM、75~100mM、または約85~95mMの濃度であり得る。一部の実施形態では、浸透圧調節剤は、約80mM、81mM、82mM、83mM、84mM、85mM、86mM、87mM、88mM、89mM、90mM、91mM、92mM、93mM、94mM、95mM、96mM、97mM、98mM、99mM、または約100mMの濃度であり得る。一例では、浸透圧調節剤は、約90mMの濃度であり得る、塩化ナトリウムであってもよい。
【0094】
本明細書中に記載される医薬組成物中の薬学的に許容可能な担体は、さらに、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。一般的に、薬学的に許容可能な賦形剤は、薬理学的に不活性な物質である。賦形剤の非限定的な例として、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコース、ウシ血清アルブミン(BSA)、デキストラン、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンイミン(PEI)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール、グリセロール、ジメチルスルホキシド(dimethysulfoxide)(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween-80)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリソルベート、ポリオキシエチレンコポリマー、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミン-N-オキシド、ベタイン、亜鉛イオン、銅イオン、カルシウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、CHAPS、スクロースモノラウラート、および2-O-β―マンノグリセラート(2-O-beta-mannoglycerate)が挙げられる。一部の実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、約0.001%~0.1%、0.001%~0.05%、0.005~0.1%、0.005%~0.05%、0.008%~0.05%、0.008%~0.03%、または約0.009%~0.02%の賦形剤を含む。一部の実施形態において、賦形剤は、約0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または約0.1%である。一部の実施形態では、賦形剤はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween-80)である。一例では、薬学的に許容可能な担体は、0.01%のTween-80を含む。
【0095】
一部の例では、本明細書中記載される医薬組成物は、同様に本明細書中に記載される抗PKal抗体(たとえばDX-2930)と、リン酸ナトリウム(たとえばリン酸水素二ナトリウム・二水和物)、クエン酸(たとえばクエン酸・一水和物)、ヒスチジン(たとえばL-ヒスチジン)、塩化ナトリウム、およびポリソルベート80のうちの1つまたは複数とを含む。たとえば医薬組成物は、抗体、リン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、塩化ナトリウム、およびポリソルベート80を含み得る。一部の例では、抗体は、約30mMのリン酸ナトリウム、約19mMのクエン酸、約50mMのヒスチジン、約90mMの塩化ナトリウム、および約0.01%のポリソルベート80に製剤化されている。本組成物中の抗体(たとえばDX-2930)の濃度は、約150mg/mlまたは300mg/mlであり得る。一例では、本組成物は、1mLの溶液あたり約150mgのDX2930、約30mMのリン酸水素二ナトリウム・二水和物、約19mM(たとえば19.6mM)のクエン酸・一水和物、約50mMのL-ヒスチジン、約90mMの塩化ナトリウム、および約0.01%のポリソルベート80を含むか、またはそれらからなる。別の例では、本組成物は、1mlの溶液あたり約300mgのDX-2930、約30mMリン酸水素二ナトリウム・二水和物、約19mM(たとえば19.6mM)のクエン酸・一水和物、約50mMのL-ヒスチジン、約90mMの塩化ナトリウム、および約0.01%のポリソルベート80を含むか、またはそれらからなる。
【0096】
薬学的に許容可能な塩は、本化合物の望ましい生物学的な活性を保持し、かついかなる望ましくない毒性効果も与えない塩である(たとえばBerge, S.M., et al., 1977, J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。このような塩の例として、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性の無機酸、ならびに脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカノン酸、ヒドロキシアルカノン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸などの非毒性の有機酸に由来する塩を含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにN,N′-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性の有機アミンに由来する塩を含む。
【0097】
本組成物は様々な形態であり得る。これらの形態は、たとえば液体、半固体、および固体の剤形、たとえば液剤(たとえば注射可能な液剤および注入可能な液剤)、分散剤または乳剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム剤、および坐剤を含む。この形態は、意図する投与形態および治療方法に依存し得る。多くの組成物は、たとえば抗体をヒトに投与するために使用される形態と類似の組成物などの、注射可能な液剤または注入可能な液剤の形態である。例示的な投与形態は、非経口(たとえば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、静脈内への点滴または注射により投与する。別の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、筋肉内注射により投与する。別の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、皮下注射により投与する。別の好ましい実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、腹腔内注射により投与する。
【0098】
本明細書中使用される「非経口投与」および「非経口に投与される」との文言は、腸投与および局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および点滴を含む。一部の実施形態では、抗体は皮下投与される。
【0099】
本組成物は、液剤、マイクロエマルション、分散剤、リポソーム、または高い薬剤濃度に適した他の規則正しい構造として製剤化することができる。無菌の注射可能な液剤は、上記に列挙された成分のうちの1つまたは組合せと共に適切な溶媒に必要量の結合タンパク質を組み込み、次いで必要に応じて濾過滅菌(filtered sterilization)を行うことにより、調製することができる。一般的に、分散剤は、基本的な分散媒体および上記に列挙される成分からの必要とされる他の成分を含む無菌性のビヒクルに活性化合物を組み込むことにより、調製される。無菌性の注射可能な液剤の調製用の無菌性散剤の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその液剤から活性成分に加えて追加的な望ましい成分の散剤を提供する真空乾燥および凍結乾燥である。液剤の適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティング剤の使用により、分散剤の場合には必要とされる粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により、維持することができる。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを本組成物に含めることにより、もたらすことができる。
【0100】
本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、静脈内注射、皮下注射、または点滴を含む様々な方法により投与することができる。たとえば、一部の治療応用では、抗体は、約1~100mg/mまたは7~25mg/mの用量に達するために、30mg/分未満、20mg/分未満、10mg/分未満、5mg/分未満、または1mg/分未満の割合で静脈内点滴により投与することができる。投与の経路および/または形態は、望ましい結果に応じて変動する。特定の実施形態では、活性化合物を、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放製剤などの、急速な放出から化合物を保護する担体と共に調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。当該製剤の調製のために多くの方法が利用可能である。たとえばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., 1978, Marcel Dekker, Inc., New Yorkを参照されたい。
【0101】
医薬組成物は、医療機器を用いて投与することができる。たとえば一実施形態では、本明細書中記載される医薬組成物は、デバイス、たとえば無針皮下注射装置、ポンプ、またはインプラントを用いて投与することができる。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、in vivoで、適切な分布を確実にするために製剤化することができる。たとえば血液脳関門(BBB)は、多くの親水性の高い化合物を排除する。本明細書中開示される治療化合物がBBBを通過することを確実にするために(望ましい場合)、たとえばリポソームに製剤化することができる。リポソームの製造方法に関しては、たとえば米国特許第4,522,811号;同5,374,548号;および同5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送される1つまたは複数の部分を含み得ることにより、標的化薬剤送達を高めることができる(たとえばV.V. Ranade, 1989, J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。
【0103】
最適な望ましい応答(たとえば治療上の応答)を提供するために、投与レジメンを調節する。たとえば単回ボーラス投与を投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性により指定されるように、用量を比例して減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のため、非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に好ましい。本明細書中使用される単位剤形は、治療される対象の単位用量として適した物理的に別々の単位を表し、各単位は、必要とされる薬学的な担体と共に望ましい治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。単位剤形の仕様は、(a)活性化合物固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感受性のために、当該活性化合物を治療のために合成する分野における固有の制限に応じて、決定され得る、またはこれらに直接依存し得る。
【0104】
本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)の治療上または予防上の有効量の例示的な非限定的な範囲は、約150mgまたは300mgである。当業者により理解されているように、抗体の治療上または予防上の有効量は、成年の対象よりも小児の対象に関して低くなり得る。一部の実施形態では、小児の対象に投与される有効量は、固定用量または体重ベースの用量である。一部の実施形態では、約150mg未満または300mg未満の有効量を、小児の対象に投与する。一部の実施形態では、抗体の治療上または予防上の有効量を、第1の治療期間の間、2週間ごとまたは4週間ごとに投与する。一部の実施形態では、抗体を、第2の治療期間の間に対象に投与してもよい。一部の実施形態では、第1の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量は、第2の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量と異なる。一部の実施形態では、第1の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量は150mgであり、第2の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量は300mgである。一部の実施形態では、第1の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量は、第2の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量と同じである。一例では、第1の治療期間および第2の治療期間における抗体の治療上または予防上の有効量は300mgである。
【0105】
一部の実施形態では、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)の治療上または予防上の有効量の例示的な非限定的な範囲は、約300mgである。一部の実施形態では、抗体の治療上または予防上の有効量は単回投与で投与される。対象がHAE発作を起こす場合、さらに対象に複数回投与、たとえば2週間ごとに約300mgの用量で抗体を投与してもよい。
【0106】
キット
本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、キット、たとえばキットの構成成分として提供することができる。たとえばキットは、(a)DX-2930抗体、たとえば当該抗体を含む組成物(たとえば医薬組成物)、および任意に(b)情報材料を含む。情報材料は、本明細書中に記載される方法および/またはたとえば本明細書中に記載される方法のための本明細書中記載される抗体(たとえばDX-2930)の使用に関連する、説明、指示、マーケティング、または他の材料であり得る。一部の実施形態では、本キットは、1つまたは複数の用量のDX-2930を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の用量は150mgまたは300mgである。
【0107】
本キットの情報材料は、この形態に限定されるものではない。一実施形態では、情報材料は、本化合物の生産についての情報、本化合物の分子量、濃度、使用期限、バッチまたは生産の場所の情報などを含み得る。一実施形態では、情報材料は、障害および病態、たとえば血漿カリクレイン関連疾患または病態の治療、予防、または診断するための抗体の使用に関連する。
【0108】
一実施形態では、情報材料は、本明細書中記載される方法を行うために適切な方法で、たとえば適切な用量、剤形、投与形式、または投与スケジュール(たとえば本明細書中記載される用量、剤形、投与スケジュール、または投与形式)で、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)を投与するための説明書を含むことができる。別の実施形態では、情報材料は、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)を、対象、たとえばヒト、たとえば血漿カリクレイン関連疾患もしくは病態を有するヒトまたは同疾患もしくは病態のリスクのあるヒトに投与するための説明書を含むことができる。たとえば材料は、本明細書中記載される障害または病態、たとえば血漿カリクレイン関連疾患を有する患者に、たとえば本明細書中記載される投与スケジュールにしたがって、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)を投与するための説明書を含むことができる。本キットの情報材料は、その形態に限定されるものではない。多くの場合、情報材料、たとえば説明書は印刷されて提供されているが、他のフォーマット、たとえばコンピュータ読み取り可能な材料で提供され得る。
【0109】
本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)は、任意の形態、たとえば液体、乾燥形態、または凍結乾燥形態で提供することができる。抗体は、実質的に純粋かつ/または無菌的であることが好ましい。抗体が液体溶液で提供される場合、液体溶液は、好ましくは水溶液であり、無菌性の水溶液が好ましい。抗体が乾燥形態で提供される場合、通常、適切な溶媒を追加することにより再構成される。溶媒、たとえば滅菌水またはバッファーを、任意に本キットに提供することができる。
【0110】
本キットは、本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)を含む組成物のための1つまたは複数のコンテナを含むことができる。一部の実施形態では、本キットは、本組成物および情報材料のための別々のコンテナ、仕切り、または区画を含む。たとえば本組成物は、瓶、バイアル、またはシリンジに含むことができ、情報材料は、コンテナに関連して含むことができる。他の実施形態では、本キットの別々の要素は、単一の分割されていないコンテナに含まれている。たとえば本組成物は、ラベルの形態で情報材料を添付したビン、バイアル、またはシリンジに含まれている。一部の実施形態では、本キットは、それぞれが、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)の1つまたは複数の単位剤形(たとえば本明細書中記載の剤形)を含む、複数(たとえば1パック)の個々のコンテナを含む。たとえば本キットは、それぞれが、単回の単位用量の本明細書中記載の抗体(たとえばDX-2930)を含む、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット(foil packet)、またはブリスター包装を含む。本キットのコンテナは気密性、耐水性(たとえば湿度の変化または蒸発を通さない)、および/または遮光性であり得る。
【0111】
本キットは、任意に、本組成物の投与に適した装置、たとえばシリンジまたはいずれかの送達装置を含む。一実施形態では、このデバイスは、定量の抗体を分注する埋め込み可能な装置である。また本開示は、たとえば本明細書中記載の化合物を組み合わせることによって、キットを提供する方法を特徴とする。
【0112】
治療
一部の態様では、本開示は、HAEの治療における本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)の使用を提供する
【0113】
(i)遺伝性血管性浮腫
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、「クインケ浮腫」、C1エステラーゼインヒビター欠損症、C1インヒビター欠損症、および遺伝性血管神経性浮腫(HANE)としても知られている。HAEは、予測できない再発性の、重篤な皮下または粘膜下の腫脹(血管性浮腫)の発作を特徴とし、これはたとえば肢、顔、生殖器、消化器、および気道に起こり得る(Zuraw, 2008)。HAEの症状として、たとえば腕、脚、唇、眼、舌、および/または喉の腫脹;喉の腫脹、突然の嗄声を伴い得る、および/または窒息により死に至る可能性のある気道閉塞が挙げられる(Bork et al., 2012; Bork et al., 2000)。全HAE患者の約50%が、生涯にわたり喉頭の発作を経験し、どの患者が喉頭の発作のリスクがあるかを予測する方法はない(Bork et al., 2003; Bork et al., 2006)。また、HAEの症状は、明確な原因のない腹痛;ならびに/または重篤であり得て、腹痛、嘔吐、脱水、下痢、疼痛、ショック、および/もしくは腹腔の緊急事態に類似した腸管の症状を引き起こし得る腸の腫脹の繰り返しエピソードをも含み、これらにより不必要な外科手術が行われる場合がある(Zuraw, 2008)。腫脹は、最大5日またはそれ以上持続し得る。このHAEを伴う個体のおよそ1/3が、発作時に輪状紅斑と呼ばれる痒みのない発疹を発症する。大部分の患者は、1年に複数回発作に苦しんでいる。
【0114】
HAEは希少疾患であり、正確な有病率は不明であるが、現在10,000人に1人から150,000人に1人の範囲であると推定されており、多くの著者が、50,000人に1人が最も近い推定値である可能性があることに同意している(Bygum, 2009; Goring et al., 1998; Lei et al., 2011;Nordenfelt et al., 2014; Roche et al., 2005)
【0115】
血漿カリクレインは、HAEの発作の発病に重要な役割を果たしている(Davis, 2006; Kaplan and Joseph, 2010)。正常な生理機能では、C1-INHは、血漿カリクレイン、ならびに様々な他のプロテアーゼ、たとえばC1r、C1s、第XIa因子、および第XIIa因子の活性を調節する、血漿カリクレインは、高分子キニノーゲン(HMWK)からのブラジキニンの放出を調節する。HAEにおいてC1-INHが欠損しているため、制御されていない血漿カリクレイン活性が起こり、過剰なブラジキンの産生がもたらされる。ブラジキニンは、局所化した腫脹、炎症、および疼痛といった特徴的なHAEの症状の原因と考えられている血管拡張剤である。
【0116】
気道の腫脹は、生命を脅かし得て、一部の患者に死をもたらす。死亡率は15~31%と推定されている。HAEにより、1年あたり約15,000~30,000人が救急外来診療を受けている。
【0117】
外傷またはストレス、たとえば歯科処置、疾患(たとえば風邪およびインフルエンザなどのウイルス性の疾病)、月経、および外科手術が、浮腫の発作の引き金となり得る。HAEの急性発作を予防するために、患者は以前発作を引き起こした特定の刺激を避けようと努力することができる。しかしながら、多くの場合、発作は既知の引き金がなくとも起こる。概して、HAEの症状は、まず、小児期に起こり、思春期の間に悪化する。平均して、治療を受けていない人は、1~2週間ごとに1回の発作を起こし、ほとんどのエピソードは約3~4日間持続する(ghr.nlm.nih.gov/condition/hereditary-angioedema)。発作の頻度および持続期間は、遺伝性血管性浮腫を有する患者間で大きく変動し、さらには同じ家族間でも、大きく変動する。
【0118】
I型、II型、およびIII型として知られている3種類のHAEが存在しており、これらすべてを、本明細書中記載の方法により治療することができる。HAEは、50,000人に1人が罹患しており、I型はこのうちの約85%を占め、II型はこのうちの約15パーセントを占め、III型は非常にまれであることが推定されている。III型は、最も新規に類型化された形態であり、もともと女性のみ発症すると考えられていたが、罹患した男性のいる家族が同定された。
【0119】
HAEは、常染色体優性パターンで遺伝され、これにより罹患した人は一人の罹患した親から変異を受け継ぐ場合がある。また遺伝子の新規の変異が起こり得、よって、HAEは、患者の家族にこの障害の病歴がない人でも発症する場合がある。症例の20~25%が、新規の自然発生的な変異からもたらされることが推定されている。
【0120】
SERPING1遺伝子の変異は、I型およびII型遺伝性血管性浮腫を引き起こす。SERPING1遺伝子は、炎症を制御するために重要であるC1インヒビタータンパク質を作製するための指示を提供する。C1インヒビターは、炎症を促進する特定のタンパク質の活性を遮断する。I型遺伝性血管性浮腫を引き起こす変異は、血液中のC1インヒビターのレベルを減少させる。対照的に、II型を引き起こす変異は、異常に機能するC1インヒビターの産生をもたらす。患者の約85%が、機能的に正常なC1-INHタンパク質の産生が非常に少ないことを特徴とするI型HAEを有し、残りの患者の約15%が、II型HAEを有し、正常に機能しないC1-INHを通常または高レベルで産生する(Zuraw, 2008)。適切なレベルの機能的なC1インヒビターが存在しなければ、過剰量のブラジキニンが高分子キニノーゲン(HMWK)から作製され、内皮細胞の表面でB2受容体(B2-R)に結合したブラジキニンにより媒介される血管の漏出が増大する(Zuraw, 2008)。ブラジキニンは、血管壁を介して体組織への体液の漏出を増大させることにより、炎症を促進する。体組織での過剰な体液の凝集は、I型およびII型遺伝性血管性浮腫の人で見られる腫脹エピソードを引き起こす。
【0121】
F12遺伝子の変異は、III型遺伝性血管性浮腫の一部の症例に関連している。F12遺伝子は、凝固第XII因子を作製する指示を提供する。血液凝固(凝結)に重要な役割を果たすことに加えて、第XII因子はまた、炎症の重要な刺激因子でもあり、ブラジキニンの産生にも関与している。F12遺伝子の特定の変異は、活性が増大した第XII遺伝子の産生をもたらす。結果として、より多くのブラジキニンが産生され、血管壁がより漏出しやすくなり、腫脹エピソードをもたらす。III型遺伝性血管性浮腫の他の症例の原因は未だ知られていない。1つまたは複数のいまだ特定されていない遺伝子の変異が、これら症例における障害の原因である可能性がある。
【0122】
HAEは、アレルギーまたは他の医学的な状態からもたらされる他の形態の血管浮腫でも同様に存在し得る、原因および治療が有意に異なる。遺伝性血管性浮腫がアレルギーと誤診された場合、最も一般的には抗ヒスタミン剤、ステロイド、および/またはエピネフリンで治療されるが、エピネフリンは生命を脅かす反応に使用することができるものの、これらは概してHAEに無効である。また誤診は、腹部腫脹を有する患者に不必要な探索的手術をもたらし、一部のHAE患者では、腹痛は心身症と誤って診断されてきた。
【0123】
成年と同様に、HAEを有する小児は、再発性および衰弱性の発作を有し得る。症状は小児期の非常に早期に存在することがあり、上気道の血管性浮腫が、3歳の若さのHAE患者で報告されている(Bork et al., 2003)。49人の小児HAE患者に関する1つの症例研究では、23人が、18歳までに気道の血管性浮腫を少なくとも1回発症した(Farkas, 2010)。この疾患は一般的に思春期後に悪化するため、HAEを有する小児、特に青年では、まだ満たされていない重要な医療上の必要性が存在する(Bennett and Craig, 2015; Zuraw, 2008)。
【0124】
HAEに関するC1インヒビターの治療および他の治療は、Kaplan, A.P., J Allergy Clin Immunol, 2010, 126(5):918-925に記載されている。
【0125】
HAEの発作の急性治療は、可能な限り早く浮腫の進行を止めるために提供されている。ドナーの血液由来のC1インヒビター濃縮物を静脈内に投与することが、1つの急性治療である。しかしながらこの治療は、多くの国で利用できない。C1インヒビター濃縮物が利用できない緊急の状況では、同様にC1インヒビターを含む新鮮凍結血漿(FFP)を代替物として使用することができる。
【0126】
ヒト血液に由来する精製C1インヒビターは、1979年以降ヨーロッパで使用されている。いくつかのC1インヒビターの治療が、現在米国で利用可能であり、2つのC1インヒビター製品が、現在カナダで利用可能である。Berinert P(CSL Behring)は、低温殺菌されており、急性発作に関して2009年にFDAにより認可されている。Cinryze(ViroPharma)は、ナノフィルターで濾過されており、発病予防に関して2008年にFDAにより認可されている。Rhucin(Pharming)は、ヒトの血液由来の病原体による感染性疾患の伝染のリスクを有しない開発中の組み換えC1インヒビターである。
【0127】
急性HAE発作の治療はまた、疼痛の緩和のための薬物療法および/または静脈内輸液をも含み得る。
【0128】
他の治療モダリティで、C1インヒビターの合成を刺激するか、またはC1インヒビターの消費を低減することができる。ダナゾールなどのアンドロゲン薬物療法は、C1インヒビターの産生を刺激することにより、発作の頻度および重症度を低減することができる。
【0129】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、腹部発作の引き金となり得る。ヘリコバクター・ピロリを治療するための抗生剤は、腹部発作を減少させる。
【0130】
より新規の治療は、接触カスケードを攻撃する。エカランチド(KALBITOR(登録商標)、DX-88、Dyax)は、血漿カリクレインを阻害し、米国で認可されている。イカチバント(FIRAZYR(登録商標), Shire)はブラジキニンB2受容体を阻害し、欧州および米国で認可されている。
【0131】
HAEの診断は、たとえば家族歴および/または血液検査に依存し得る。I型、II型、およびIII型HAEに関連する臨床所見が、たとえばKaplan, A.P., J Allergy Clin Immunol, 2010, 126(5):918-925に記載されている。I型HAEでは、C4のレベルと同様にC1インヒビターのレベルが減少しており、これに対してC1qレベルは正常である。II型HAEでは、C1インヒビターのレベルは正常であるかまたは増大しているが、C1インヒビターの機能が異常である。C4レベルは減少しており、C1qのレベルは正常である。III型では、C1インヒビター、C4、およびC1qのレベルはすべて正常であり得る。
【0132】
HAEの症状は、アンケート、たとえば患者、臨床医、または家族構成員が記入したアンケートを使用して、評価することができる。このようなアンケートは当該分野で知られており、たとえば視覚的アナログ尺度を含む。たとえばMcMillan, C.V. et al. Patient. 2012;5(2):113-26を参照されたい。一部の実施形態では、対象はI型HAEまたはII型HAEを有する。I型HAEまたはII型HAEは、HAEと一致する病歴(たとえば皮下腫脹、粘膜の腫脹、または非そう痒の腫脹エピソード)、または診断試験(たとえばC1-INHの機能性試験、およびC4レベルの評価)によるものなどの、当該分野に知られているいずれかの方法を使用して診断することができる。
【0133】
(ii)抗PKal抗体によるHAEの治療
本開示は、本明細書中に記載の抗体(たとえば本明細書中に記載の抗体の治療上有効量)を、HAEを有する、またはHAEを有する疑いのある対象に、たとえば本明細書中に記載の投与スケジュールに従って投与することによって、遺伝性血管性浮腫(HAE)を治療(たとえば1つまたは複数の症状を寛解、安定化、または除去)する方法を提供する。さらに、たとえば本明細書中に記載の投与スケジュールに従って、または第2の治療、たとえば他の1つの薬剤、たとえば本明細書中に記載の他の薬剤と組み合わせて、本明細書中に記載の抗体(たとえば本明細書中に記載の抗体の治療上有効量)を投与することにより、HAEを治療する方法を提供する。また本開示は、たとえば本明細書中に記載の投与スケジュールに従って、HAEを発症するリスクのある対象(たとえばHAEまたはその遺伝的素因を有する家族の構成員を有する対象)に本明細書中に記載の抗体(たとえば本明細書中に記載の抗体の予防上有効量)を投与することにより、HAEまたはその症状を予防する方法を提供する。一部の例では、対象は、治療の時点でHAEの症状を有していないヒトの患者である。一部の実施形態では、対象はI型HAEまたはII型HAEを有するヒトの患者である。一部の実施形態では、対象は、治療の前年に少なくとも2回(たとえば2回、3回、4回、5回、またはそれ以上)のHAEの発作を経験したヒトの患者である。
【0134】
治療は、障害、障害の症状、または障害の素因を軽減する、緩和する、変化させる、治療する、寛解する、改善する、または影響を与えるために有効な量を投与することを含む。また、治療は疾患または病態の発症を遅らせることができ、たとえば疾患または病態を発症予防することができ、または疾患または病態の悪化を予防することができる。
【0135】
DX-2930抗体を投与する方法も同様に、「医薬組成物」に記載する。使用される抗体の適切な用量は、対象の年齢および重量、ならびに使用される特定の薬剤に依存し得る。抗体は、望ましくない相互作用、たとえば血漿カリクレインとその基質(たとえば第XII因子またはHMWK)との間の相互作用を阻害、低減するための競合剤として使用できる。抗体の用量は、患者における、特に疾患部位で、血漿カリクレインの活性を90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%遮断するために十分な量であり得る。一部の実施形態では、150mgまたは300mgの抗体を、2週間ごとまたは4週間ごとに投与する。一部の実施形態では、300mgの抗体を、単回投与で投与する。対象が単回投与の後にHAEの発作を経験する場合、抗体を2週間ごとに300mgで投与してもよい。
【0136】
一実施形態では、抗体は、たとえばin vivoで、血漿カリクレインの活性を阻害(たとえば血漿カリクレインの少なくとも1つの活性を阻害、たとえば第XIIa因子および/またはブラジキニンの産生を低減)するために使用されている。結合タンパク質は、単独で使用することができ、またはある薬剤、たとえば細胞傷害剤、細胞毒酵素、または放射性同位体にコンジュゲートさせて使用することができる。
【0137】
抗体は、天然の補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して、抗原発現細胞を排除するためにin vivoで直接使用することができる。本明細書中記載される抗体は、IgG1、-2、または-3由来のFcタンパク質、または補体を結合するIgMの対応する部分などの、補体結合エフェクタードメインを含むことができる。一実施形態では、標的細胞集団を、本明細書中記載の抗体および適切なエフェクター細胞を用いて、ex vivoで処置する。処置を、補体または血清含有補体の添加により補足することができる。さらに、本明細書中記載の抗体でコーティングした標的細胞の食作用が、補体タンパク質の結合により改善することができる。別の実施形態では、補体結合エフェクタードメインを含む抗体でコーティングした標的細胞は、補体により溶解される。
【0138】
DX-2930抗体を投与する方法を「医薬組成物」に記載する。この分子の適切な用量は、対象の年齢および体重ならびに使用される特定の薬剤に依存する。抗体は、望ましくない相互作用、たとえば天然のまたは病理学的な薬剤と血漿カリクレインとの間の相互作用を阻害または低減するための競合剤として、使用することができる。
【0139】
本明細書中記載される抗体の治療上有効量を、HAEを有する対象、HAEを有する疑いのある対象、HAEのリスクのある対象に投与することにより、この障害を治療(たとえば障害の症状または特徴を寛解もしくは改善、障害の進行を遅延、安定化、かつ/または停止)することができる。
【0140】
本明細書中記載の抗体は、治療上有効量で投与することができる。抗体の治療上有効量は、たとえば当該治療の非存在下で予測される度合いを超える度合で、対象の障害の少なくとも1つの症状を治癒、軽減、緩和、または改善するといった、対象を治療する際の、対象への単回または複数回の用量の投与で有効な量である。
【0141】
投与レジメンは、最適な望ましい応答(たとえば治療上の応答)を提供するために調節することができる。たとえば単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を、経時的に投与してもよく、または治療上の状況の緊急性により示されるように用量を比例して減少または増大させてもよい。他の例では、ボーラス投与を行った後、経時的に複数回の投与を行ってもよく、または治療上の状況の緊急性により示されるように、用量を比例して減少または増加させてもよい。他の例では、用量は、いくつかの用量に分割してもよく、かつ経時的に投与してもよい。投与が容易であり、用量が均一であるため、単位剤形で非経口組成物を製剤化することが特に好ましい。本明細書中使用される単位剤形は、治療される対象のための単位用量として適した物理的に別々の単位を表す。各単位は、必要とされる薬学的な担体と共に望ましい治療効果をもたらすように計算された、あらかじめ決定された量の活性化合物を含む。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書中記載の抗体は、第1の治療期間の間、投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、抗体を、第1の治療期間で、複数回投与で投与する。この期間では、抗体(たとえばDX-2930)の治療上または予防上有効量は、約150mgまたは300mgであり、毎週、2週ごと、3週ごと、4週ごと、5週ごと、6週ごと、7週ごと、8週ごと、またはそれ以上の期間ごとに、投与される。一部の実施形態では、抗体(たとえばDX-2930)の治療上または予防上有効な量は約150mgまたは300mgであり、2週ごとまたは4週ごとに投与される。一部の実施形態では、治療上または予防上有効な量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、またはそれ以上投与される。一部の実施形態では、第1の治療期間は26週間である。一部の実施形態では、治療上または予防上有効な量は150mgであり、対象に4週ごとに投与する(たとえば26週間の間4週ごと、合計7回用量の送達をもたらす)。一部の実施形態では、治療上または予防上有効な量は300mgであり、対象に2週ごとに投与する(たとえば26週間の間2週ごと、合計13回用量の送達をもたらす)。
【0143】
一例では、第1の治療期間は26週間であり、抗体は、0日目、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に投与される。別の例では、第1の治療期間は26週間であり、抗体は、0日目、14日目、28日目42日目、56日目、70日目、84日目、98日目、112日目、126日目、140日目、154日目、および168日目に投与される。記載の治療スケジュールは、±4日(たとえば±3日、±2日、または±1日)の治療可能時間域を許容することが、当業者により理解されている。たとえば、10~18日目に投与される用量は、上述の14日目の投与に包有されている。
【0144】
一部の実施形態では、治療上または予防上有効な量は、第1の治療期間の後の第2の治療期間の間、投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、治療上または予防上有効な量は、第1の治療期間および第2の治療期間で異なる。一部の実施形態では、第2の治療期間での治療上または予防上有効な量は約300mgである。この期間の間、抗体を、約300mgの複数回投与で投与してもよく、たとえば300mgを2週ごとに投与してもよい。一部の実施形態では、第2の治療期間では、抗体の複数回用量を、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回投与する。一部の実施形態では、第2の治療期間は26週間である。一部の実施形態では、抗体は、26週間の間2週ごとに約300mgの用量で投与される(たとえば13回用量の送達をもたらす)。一部の実施形態では、第2の治療期間の単回の1回目の投与は、第1の治療期間の最後の投与から少なくとも2週間後に投与されている。
【0145】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかでは、抗体の投与のタイミングは、おおよそであり、指定される日数の3日前および3日後を含み得る(たとえば2週ごとの投与は、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、または17日目での投与を包有する)。
【0146】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の抗体を、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)と同じ抗PKal抗体による複数回投与での治療などのHAEの前治療(第1の治療)を経験した対象に、約300mgの単回投与で投与する。対象が単回投与の後にHAEの発作を経験する場合、対象を、適切な期間、たとえば26週間の間、2週ごとに約300mgの複数回投与で抗体により治療することができる。一部の実施形態では、複数回投与の1回目の投与は、HAEの発作から1週間以内(たとえばHAEの発作から1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、または7日以内)に投与する。一部の実施形態では、抗体は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、またはそれ以上投与される。
【0147】
HAEの前治療は、本明細書中記載される抗体と同じ抗体(たとえばDX-2930)を含むことができる。一部の実施形態では、HAEの前治療は、2週ごとまたは4週ごとのDX-2930の複数回投与を含み得る。一部の実施形態では、2週ごとに150mg、2週ごとに300mg、または4週ごとに300mgで、DX-2930を対象に提供する。一例では、抗体の単回投与前の26週の間、2週ごとまたは4週ごとにあらかじめ対象に抗体を投与した。一部の実施形態では、前治療の抗体の複数回投与は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、投与する。一部の実施形態では、0日目、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に、抗体をあらかじめ投与した。一部の実施形態では、約300mgの抗体の単回投与は、前治療の最後の治療から約2週間後に投与する。一例では、第2の治療期間の単回投与は、第1の治療期間の182日目に投与される。
【0148】
本明細書中記載されるいずれかの実施形態では、抗体の投与のタイミングはおおよそのものであり、指定された日の3日前および3日後を含む(たとえば2週ごとの投与は、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、または17日目の投与を包有する)。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法のいずれかに従って抗体を投与する前に、対象を、HAEの発作のベースラインでの回数を確立するために評価してもよい。このような評価期間は「導入期間(run in period)」を指してもよい。一部の実施形態では、HAEの発作のベースラインの回数は、所定の期間のHAEの発作の回数の最小値と一致しなければならず、またはこれを超えなければならない。一例では、対象は、抗体の1回目の投与前の4週間の導入期間内に少なくとも1回のHAEの発作を経験している。別の例では、対象は、抗体の1回目の投与前の8週間の導入期間に少なくとも2回のHAEの発作を経験している。
【0150】
本明細書中記載されるいかなる対象も、HAEの予防上または治療上の治療などの、HAEの前治療を受けていてもよい。また本開示の態様は、HAEに関する1つまたは複数の前治療を受けた対象に、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)を投与する方法を提供する。一部の実施形態では、HAEの前治療は、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)を含む治療である。一部の実施形態では、2週間ごとまたは4週間ごとのDX-2930の複数回用量を、あらかじめ対象に投与した。一部の実施形態では、2週ごとに150mgのDX-2930を、あらかじめ対象に投与した。一部の実施形態では、対象に、2週ごとに300mgのDX-2930をあらかじめ投与した。一部の実施形態では、対象に、4週ごとに300mgのDX-2930をあらかじめ投与した。一部の実施形態では、前治療の抗体の複数回用量を、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回投与する。
【0151】
一部の実施形態では、対象は、当該分野で知られているHAEに関する治療剤のいずれかを含み得る、HAEに関する1つまたは複数の前治療を受けている。例示的な抗HAE剤として、限定するものではないが、C1インヒビター(たとえばCinryze(登録商標)、Berinert(登録商標)、またはRuconest(登録商標))、血漿カリクレイン阻害薬(たとえばKalbitor(登録商標))、ブラジキニン受容体阻害剤(たとえばFirazyr(登録商標))、弱効性アンドロゲン(たとえばダナゾール)、および抗線溶剤(たとえばトラネキサム酸(traexamic acid))が挙げられる。一部の例では、対象は、本明細書中に記載の抗pKal抗体の治療を受ける前に漸減期間を経験してもよい。漸減期間は、抗HAE治療(たとえばC1-INH、経口アンドロゲン、および/または抗線溶剤)を受けている対象が、対象がHAEの前治療から本明細書中に記載の抗PKal抗体の治療に徐々に移行できるように、抗HAE剤の用量、頻度、またはその両方を徐々に低減する、抗PKal抗体治療の前の期間を表す。一部の実施形態では、漸減は、前治療の用量および/または前治療が行われる頻度を少なくさせる漸進的または段階的な方法を含む。漸減期間は2~4週間持続してもよく、個々の患者(patent)の要因に基づき変動し得る。一部の例では、前治療は、抗pKal抗体の治療が開始する前に終了する。他の例では、前治療は、対象が抗pKal抗体の1回目の投与を受けた後の適切な時間枠内(たとえば1回目の投与を受けてから2週間以内、3週間以内、または4週間以内)に終了してもよい。
【0152】
あるいは、前治療中の対象を、漸減期間を伴わず直接本明細書中に記載される抗pKal抗体の治療に移行させてもよい。
【0153】
他の実施形態では、対象は、本明細書中に記載の第1の治療、第1の治療期間、ならびに/または後続の単回および複数回投与の治療(第2の治療期間)の前に、HAEの前治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療期間の間および/または第2の治療期間の間、本明細書中に記載の抗体以外の治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療または第1の治療期間の前、第1の治療または第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間に、少なくとも2週間(たとえば少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、またはそれ以上)の間、HAEの前治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療または第1の治療期間の前、第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間に、少なくとも2週間の間、HAEに関する長期間の発病予防(たとえばC1インヒビター、弱効性アンドロゲン、抗線溶剤)を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療もしくは第1の治療期間の前、第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間、少なくとも4週間の間、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を含むHAEの治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療もしくは第1の治療期間の前、第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間に、少なくとも4週間の間、エストロゲン含有薬物療法を受けていない。一部の実施形態では、対象は、第1の治療もしくは第1の治療期間の前、第1の治療期間の間、および/または第2の治療期間の間、少なくとも2週間、アンドロゲン(たとえばスタノゾロール、ダナゾール、オキサンドロロン、メチルテストステロン、テストステロン)を投与されていない。
【0154】
本明細書中記載の方法のいずれかは、治療前後または治療過程の間、副作用(たとえばクレアチンホスファターゼレベルの増加)および/または抗体によるpKalレベルの阻害(たとえば抗体の血清中もしくは血漿中の濃度またはpKal活性レベル)に関して患者をモニタリングすることをさらに含み得る。1つまたは複数の有害作用が観察される場合、抗体の用量を低下させてもよく、または治療を終了させてもよい。阻害レベルが最小治療レベルを下回る場合、さらなる用量の抗体を患者に投与してもよい、また患者を、投与される抗体に対する抗体の産生;C1インヒビター、C4、および/もしくはC1qの活性;クオリティ・オブ・ライフ;いずれかのHAEの発作の発症率;健康に関連するクオリティ・オブ・ライフ;不安および/もしくは抑うつ(たとえばHAD尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale))、労働生産性(たとえばWPAI(Work Productivity and Activity Impairment Questionnair))、他の注射剤と比較した抗体(たとえばDX-2930)の皮下投与の優先度、クオリティ・オブ・ライフ(たとえば血管性浮腫のクオリティ・オブ・ライフ(AE-QOL)、EQ-5D(EuroQoL Group 5-dimension)の報告書)に関して、評価してもよい。
【0155】
一部の実施形態では、抗体(たとえばDX-2930)の血漿または血清中の濃度を、治療の有効性を評価するために治療過程の間(たとえば1回目の投与の後)に測定してもよい。抗体の血清中または血漿中の濃度が約80nMを下回る場合、後続の投与が必要とされてもよく、これは最初の用量と同一または高くてもよい。抗体の血清中または血漿中の濃度は、たとえば免疫アッセイまたはMSアッセイにより、対象から得られた血漿または血清の試料中の抗体のタンパク質レベルを決定することにより、測定することができる。また抗体の血漿中または血清中の濃度は、抗体で治療した対象から得た血漿または血清の試料におけるpKalの阻害性レベルを決定することにより、測定してもよい。このようなアッセイは、本明細書中に記載の切断したキニノーゲンを測定するための合成基質アッセイまたはウェスタンブロットアッセイを含み得る。
【0156】
あるいはまたはさらに、クレアチンキナーゼおよび/または1つもしくは複数の凝固パラメータ(たとえば活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、プロトロンビン時間(PT)、出血性イベント)を、治療過程の間モニタリングすることができる。クレアチンキナーゼの血漿中または血清中のレベルが治療の間上がることが見いだされる場合、抗体の用量を低減させてもよく、または治療を終了させてもよい。同様に、1つまたは複数の凝固パラメータが治療の間有意に影響を受けることが見いだされる場合、抗体の用量を修正してもよく、または治療を終了させてもよい。
【0157】
一部の実施形態では、抗体(たとえばDX-2930)の最適な用量(たとえば最適な予防上の用量または最適な治療上の用量)を、以下のように決定してもよい。抗体を、初回投与量で治療の必要な対象に提供する。対象の抗体の血漿中濃度を測定する。血漿中濃度が80nM未満である場合、その後の投与において抗体の用量を増加させる。抗体の血漿中濃度を約80nM超に維持する抗体の用量を、対象の最適用量として選択することができる。対象のクレアチンホスホキナーゼのレベルを、治療過程の間モニタリングすることができ、対象の最適な用量を、クレアチンホスホキナーゼのレベルに基づきさらに調節することができる。たとえば、クレアチンホスホキナーゼの増加が治療の間に観察される場合には、抗体の用量を減少させてもよい。
【0158】
(iii)併用療法
本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)は、血漿カリクレイン活性に関連する疾患または病態、たとえば本明細書中に記載の疾患または病態を治療するための1つまたは複数の他の治療と併用して投与することができる。たとえば、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)は、別の抗血漿カリクレインFabまたはIgG(たとえば本明細書中に記載の別のFabまたはIgG)、別の血漿カリクレイン阻害薬、ペプチド阻害剤、小分子阻害剤、または手術と共に、治療または予防のため(たとえば治療過程の前、治療過程の間、または治療過程の後に)使用することができる。本明細書中に記載の血漿カリクレイン結合抗体との併用療法に使用できる血漿カリクレイン阻害薬の例として、たとえば国際特許公開公報第95/21601号または国際特許公開公報第2003/103475号に記載の血漿カリクレイン阻害薬が挙げられる。
【0159】
1つまたは複数の血漿カリクレイン阻害薬を、本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)と併用して使用することができる。たとえばこの併用は、必要とされる阻害剤の用量を少なくすることにより、副作用を低減させることができる。
【0160】
本明細書中に記載の抗体(たとえばDX-2930)を、HAEを治療するための1つまたは複数の最新の治療と併用して投与することができる。たとえば、DX-2930抗体は、エカランチド、C1エステラーゼインヒビター(たとえばCINRYZE(商標))、アプロチニン(TRASYLOL(登録商標))、および/またはブラジキニンB2受容体阻害剤(たとえばイカチバント(FIRAZYR(登録商標)))などの第2の抗HAE治療剤と共に使用することができる。
【0161】
用語「併用」は、薬剤または治療の使用または作用が時間内で重複する、同じ患者を治療するための2つ以上の薬剤の使用を表す。薬剤または治療は、同時に投与することができ(たとえば患者に投与される単一の製剤として、または同時に投与される2つの別々の製剤として)、または任意の順で連続して投与することができる。連続投与は、異なる時間に提供される投与である。1つの薬剤および別の薬剤の投与の間の時間は、分単位、時間単位、日数単位、または週単位であり得る。また本明細書中に記載の血漿カリクレイン結合抗体の使用は、別の治療の用量を低減するため、たとえば投与される別の薬剤に関連する副作用を低減させるために、使用することもできる。よって、併用は、血漿カリクレイン結合抗体の非存在下で使用する場合よりも少なくとも10%、20%、30%、または50%少ない用量で第2の薬剤を投与することを含むことができる。一部の実施形態では、本明細書中に記載の抗pKal抗体(たとえばDX-2930)の1回目の投与と同時に負荷用量のIV投与またはSC投与としてC1インヒビターを対象に提供することができる。次に対象は、抗pKal抗体の治療(さらなる用量のC1インヒビターを伴わない)を続けることができる。
【0162】
併用療法は、他の治療の副作用を低減する薬剤を投与することを含むことができる。この薬剤は、血漿カリクレイン関連疾患の治療の副作用を低減する薬剤であり得る。
【0163】
(iv)治療レジメンを評価するためのアッセイ
また、本明細書中に記載の治療方法のいずれかの有効性を評価するためのアッセイ方法も、本開示の範囲内にある。一部の実施形態では、HAEに関連する1つまたは複数のバイオマーカー(たとえば二本鎖HMWK)の血漿中または血清中の濃度を、治療の有効性を評価するために、治療過程の前および/または間(たとえば最初の投与の後)に測定してもよい。一部の実施形態では、ある用量の投与後の時点で得たHAEに関連する1つまたは複数のバイオマーカーの血漿中または血清中濃度(レベル)を、ある用量の投与の後より早い時点または初回投与の投与前で得た試料におけるバイオマーカーの濃度と比較する。一部の実施形態では、バイオマーカーは2-HMWKである。
【0164】
バイオマーカーのレベルは、たとえば当該バイオマーカーを特異的に検出する抗体を使用するウェスタンブロットアッセイまたはELISAなどのイムノアッセイにより、対象から得た血漿または血清の試料中のバイオマーカーを検出することにより、測定することができる。一部の実施形態では、対象から得た血漿または血清の試料中の2-HMWKのレベルを、イムノアッセイにより評価する。2-HMWKの検出のためのイムノアッセイに使用する抗体は、当該分野で知られており、本明細書中記載の方法に使用するための当該抗体の選択は、当業者にとって明らかである。
【0165】
さらなる生成を行うことなく、当業者は、上記の説明に基づき本発明を完全な度合で利用することができると、考えるものである。よって以下の特定の実施形態は単なる例示と解釈されるものであり、残りの本開示を限定するものでは決してない。本明細書中引用されるすべての刊行物は、本明細書中言及される目的または対象のため、参照として援用されている。
【0166】
実施例
実施例1:複数回投与を使用したDX-2930の有効性および安全性を評価するための二重盲検試験
試験の概要
I型およびII型HAEの患者の急性発作の予防におけるDX-2930の有効性および安全性を評価するため、フェーズ3の、多施設のランダム化二重盲検のプラセボ対照試験を説明する。この二重盲検試験に続き、後続の治療期間があってもよい。一般的に、12歳以上であり、導入期間の間に4週間あたり少なくとも1回の発作を経験するI型およびII型HAEの診断が報告されている対象が含まれている。
【0167】
長期の予防(LTP)療法のウォッシュアウト
インフォームドコンセントの後、対象にスクリーニング評価を行う。HAEの長期の予防療法を受けているスクリーニングされた対象は、導入期間の開始前に最小2週間のウォッシュアウト期間を設けることが求められている。LTPのウォッシュアウトは、ウォッシュアウトを行うことにより対象が不当な安全上のリスク下に置かれておらず、かつ対象が少なくとも18歳であると治験責任医師が決定する限り、許容される。これらの基準は、LTPに関して持続すべき患者はこの試験でウォッシュアウトを行わないが、患者のLTPを行わない期間を最小限にしつつ、重篤な疾患を有する適切な患者の登録を可能にすることを、確実にする。現在の治療のガイドラインは、LTPおよびオンデマンド療法を含む、HAEを治療するための2つの異なる標準治療アプローチを認めている(Cicardi et al., 2012; Craig et al., 2012; Zuraw et al., 2013)。試験を通して、対象は、急性HAEの発作を治療することが認められる。よって、試験に参加するためにLTPを終了し、その後プラセボ群に無作為化される対象は、その標準治療を低減させないようになおも管理される。対象が導入期間に入ることができるためには、対象が2週間のウォッシュアウト期間を首尾よく完了したとの確認が必要である。
【0168】
導入期間
HAEに関して長期の予防療法を受けておらず、または必要とされるウォッシュアウト期間を完了しているスクリーニングされた対象は、ベースラインのHAEの発作の回数を決定するため、4週間の導入期間に入る。4週間あたり少なくとも1回のHAEの発作が確認されることというベースラインの最少回数を満たす対象のみが、登録および無作為化にとって適格である。4週間が終了する前に3回以上の発作が確認された対象は、早期に導入期間を終了し、登録および無作為化へと進む。導入の4週間の後に少なくとも1回の発作が確認されなかった対象では、さらに4週間導入期間を延長するが、登録および無作為化へと進むには、この間に少なくとも2回の発作が確認される必要がある。
【0169】
登録に適格となるために、導入期間を延長した対象は、治療期間に入る前に最大8週の導入期間を完了しなければならない。導入期間の間に発作の最少回数を満たさない、またはスクリーニング評価により不適格と決定された対象は、スクリーニング不適格とされ、試験での再スクリーニングは認められない。
【0170】
治療期間
適格性の検証の後、対象を2:1に無作為化して、DX-2930またはプラセボの反復皮下(SC)投与を二重盲検法で行う。DX-2930に無作為化された対象は、1:1:1の比率で、3つの用量レジメン:2週ごとに300mg、4週ごとに300mg、または4週ごとに150mgのうちの1つに割り当てられる。すべての治療グループへの無作為化を、投薬を受けていない対象対投薬を受けた対象(プロトコールDX-2930-02で活性試験薬を投与された対象)、ならびに導入期間の間に観察されたベースラインの発作回数の以下の群:4週間あたり1回以上2回未満の発作、4週間あたり2回以上3回未満の発作、および4週あたり3回以上の発作によりブロックにする。
【0171】
各対象は、0日目での1回目の投与日から最後の投与から2週間後までの26週間の間、治験薬(IMP)の13回の投与からなる治療期間に入る。4つの治療アームのうちの1つに無作為化した対象に、表2の投与スケジュールに従ってDX-2930またはプラセボのいずれかを投与する。
【表2】
【0172】
治療の説明
DX-2930
DX-2030は、pH6.0の防腐剤の入っていない滅菌注射用溶液である。活性成分のDX-2930は、以下の公定の成分:30mMのリン酸水素二ナトリウム・二水和物、19.6mMのクエン酸・一水和物、50mMのL-ヒスチジン、90mMの塩化ナトリウム、0.01%のポリソルベート80を使用して製剤化されている。各バイアルは、1mL溶液中に名目上の濃度150mgのDX-2930の活性成分を含む。被験薬を、盲検法で上腕への皮下注射により投与する。
【0173】
各300mg用量のDX-2930では、各対象に、2回の個別の1.0mlのDX-2930のSC注射に分割して、合計2mlで投与する。この2回の注射は、各注射部位の間を少なくとも2cm空けて、同じ上腕に行う。各150mgの用量のDX-2930では、各対象に、2回の個別の1.0mlのSC注射に分割して、合計2mlで投与する。ここで1回の注射はDX-2930であり、もう1つの注射はプラセボである。この2回の注射は、各注射部位の間を少なくとも2cm空けて、同じ上腕に行う。
【0174】
プラセボ
プラセボは、被験薬の不活性製剤:0.01%のポリソルベート80を含む、30mMのリン酸水素二ナトリウム・二水和物、19.6mMのクエン酸・一水和物、50mMのL-ヒスチジン、90mMの塩化ナトリウム(pH6.0)からなる。プラセボ用量は、表1の投与スケジュールに従って、プラセボの治療アームに無作為化された対象に投与され、4週ごとの300mgまたは150mgのDX-2930の治療アームに無作為化された対象では、DX-2930用量の間に投与される。
【0175】
各プラセボ用量に関して、各対象を、2回の個別の1.0mlのプラセボの皮下注射に分割して、合計2mlで投与する。この2回の注射は、各注射部位の間を少なくとも2cm空けて、同じ上腕に行う。
【0176】
経過観察期間
さらに対象に、8週間の経過観察期間の間、安全性および追加的な評価(すなわち薬物動態学および薬力学の評価)を行ってもよい。対象(または介護者)に、最後の経過観察来院の後に、自身が経験するいかなるHAEの発作部位も知らせるように指導する。
【0177】
中止規則
ある投与群を、重要な安全性シグナルにより脱落させなければならないといずれかの時点で決定される場合、残りの登録されてない対象を、残りのより低用量のDX-2930の投与アームもしくはプラセボに再度無作為化してもよいか、または二重盲検法で試験の残りの登録を続行してもよい。有効性の解析においてその用量を脱落させることが決定された時点、および安全性解析全体においてその全体を脱落させることが決定された時点までのこれらの対象に関するデータを使用する。
【0178】
対象が、治験責任医師の評価において、対象の健全性のためさらなる投与の中止が妥当である、DX-2930に関連する重篤な有害作用(またはDX-2930に関連する臨床的に有意な非重篤な副作用)を経験する場合、いかなる個々の対象への投与も中止する。治験責任医師は、このよう事例に関してメディカルモニターと接触して相談する能力を有する。対象は、試験の中止が要請される場合を除き、すべての予定来院の完了まで経過観察される。さらなる投与が中止された対象は、オープンラベルの延長(OLE)に参加する資格を有さない。
【0179】
試験集団
この試験では、108人の対象が試験を終了するために最大120人の対象を登録する。対象は12歳以上であり、導入期間の間に4週間あたり少なくとも1回の発作が確認され、HAE(1型または2型)と診断されている。試験は、12~17歳の少なくとも5人の対象を登録することを目的とする。HAEの診断は、HAEと一致する病歴の報告およびスクリーニング来院の前または後のいずれかで行われる診断試験を介して、確認する。
【0180】
対象の選択基準
以下の基準を満たす患者に、本明細書中に記載される治療を行う対象。
1.スクリーニング時に12歳以上の男性および女性
2.以下のうちのすべてに基づき報告されたHAE(I型またはII型)の診断:
HAEと一致する病歴(蕁麻疹を伴わない皮下または粘膜の、非そう痒の腫脹のエピソード)が報告されている
I型またはII型HAEを確認するスクリーニングの間に得た診断試験結果:C1インヒビター(C1-INH)の機能的レベルが正常レベルの40%未満。機能的C1-INHが正常レベルの40~50%である対象は、C4レベルが正常な範囲を下回る場合に登録してもよい。対象は、これらの診断結果が入手可能となる前に導入期間への参加を開始してもよい。結果が病歴と一致しない、または最近のLTPの使用により混同されると考えられる場合、対象を再試験してもよい。
以下のうちの少なくとも1つ:最初の血管性浮腫の症状が報告された発症時の年齢が30歳以下、I型もしくはII型HAEと一致する家族歴、または正常範囲内のC1q。
3.導入期間の間に確認された、治験責任医師により確認された、4週間あたり少なくとも1回のHAEの発作である、ベースラインの回数の経験。
4.成年の対象および18歳未満の対象の介護者は、インフォームドコンセントの書類を読み、理解し、サインをする意思があり、それらが可能であること。介護者がインフォームドコンセントを提供する12歳から17歳の対象は、同意書を読み、理解し、サインする意思があり、それらが可能であること。
5.繁殖力があり、性的に活性である男性および女性は、以下のように、試験期間の間、避妊の要件を遵守しなければならない。
妊娠の可能性のある女性は、禁欲することに同意しなければならず、またはスクリーニングから最後の試験来院の30日後まで、きわめて有効な形態の避妊薬を使用することが推奨される。これは、排卵の阻害に関連するプロゲスチン単独の経口避妊薬(経口、注射可能、または埋め込み可能)、子宮内避妊器具(IUD、すべての型)、またはIUS(intrauterine hormone releasing system)を含む。精管切除を受けた男性パートナーを有する女性は、医療上許容可能な避妊の形態をさらに1つ使用することに同意しなければならない。殺精子薬もしくは子宮頸部キャップ、ペッサリー、または殺精子薬を含むスポンジ、またはその組み合わせ(二重障壁法)を伴うまたは伴わない男性のコンドームの使用は、きわめて有効であると考えられているわけではない。
手術により繁殖不能(子宮摘出術、両側卵巣摘出術、または両側卵管結索術の後の状態)、または閉経から少なくとも12か月後と定義される、妊娠する可能性のない女性は、試験の間に避妊を必要としない。
妊娠する可能性のある女性のパートナーを有する、手術により繁殖不能(精管切除後)である男性を含む男性は、スクリーニングから最後の試験来院の60日後まで、禁欲であるか、または医療上許容可能な避妊方法を使用することに同意しなければならない。
【0181】
対象の除外基準
以下の基準のうちの1つまたは複数を有する患者は、本明細書中記載の治療から除外され得る。
1.後天性血管性浮腫(AAE)、正常なC1-INHを有するHAE(III型HAEとしても知られている)、特発性血管性浮腫、または蕁麻疹に関連する再発性血管性浮腫などの別の形態の、慢性、再発性の血管性浮腫の同時診断
2.スクリーニング前4週間以内の治験薬の投与または治験用医療機器への曝露
3.スクリーニング前4週間以内のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤または全身吸収を伴ういずれかのエストロゲン含有薬物療法への曝露(たとえば経口避妊薬またはホルモン補充療法)。
4.導入期間に入る前2週間以内のアンドロゲン(たとえばスタノゾロール、ダナゾール、オキサンドロロン、メチルテストステロン、テストステロン)への曝露
5.導入期間に入る前2週間以内のHAEの長期予防療法(C1-INH、弱効性アンドロゲン、または抗線溶剤)の使用
6.導入期間に入る前7日間以内のHAEの短期発病予防の使用。短期の発病予防は、医療上指定される手法から血管性浮腫の合併症を回避するために使用されるC1-INH、弱効性アンドロゲン、または抗線溶剤として定義されている。
7.以下の肝機能試験の異常のうちのいずれか:アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)が正常値の上限の3倍超、またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が正常値の上限の3倍超、または総ビリルビンが正常値の上限の2倍超(ビリルビンの上昇がジルベール症候群の結果でない限り)。
8.妊娠または授乳中
9.対象が、自身の安全性またはコンプライアンスを損なう、試験の実施成功を妨害する、または結果の解釈に干渉する(たとえば薬物の乱用または依存性の既往、治験責任医師が試験結果の解釈を混同し得る有意な既存の疾病または他の主要な依存症)と考えられ得るいずれかの状態を有する。
【0182】
プライマリーエンドポイントおよびセカンダリーエンドポイント
以下の、有効性に関するプライマリーエンドポイントおよびセカンダリーエンドポイントを、14日目~182日目まで評価する
試験のプライマリーエンドポイントは、HAE発作の回数である。
セカンダリーエンドポンとは、以下の序列を含む:
1.急性治療を必要とするHAE発作の回数
2.中等度から重篤なHAE発作の回数
【0183】
探索的な有効性のエンドポイント
1.14日目以降の最初の発作までの時間、すなわち、対象が14日以後の最初の発作まで発作を有していない持続期間。
2.高発生率のHAEの発作の週当たりの回数:高発生率のHAEの発作は、以下の特徴のうち少なくとも1つを有するいずれかの発作として定義されている:重篤である発作、入院(24時間未満の経過観察の入院を除く)をもたらす発作、血行動態的に著しい発作(収縮期血圧90未満、静脈からの水分補給を必要とし、気絶または気絶に近い状態を伴う)、または喉頭の発作。
【0184】
臨床検査
臨床試験に参加した対象に、一般的な安全性のパラメータ(血液、凝固、検尿、および血清化学)、血清学、妊娠の試験、C1-INHの機能性アッセイ、C4アッセイ、C1qアッセイ、PK試料、血漿中抗薬剤抗体試験、およびPD試料を含む臨床試験を行う。すべての臨床検査は、確立された検証済みの方法を使用して行われる。
【0185】
実施例2.DX-2930の有効性および安全性を評価するためのオープンラベル試験
試験の概要
DX-2930を含むHAEの前治療を受けているI型およびII型HAE患者における急性血管性浮腫の発作の予防における治験薬(IMP)DX-2930の有効性および安全性を評価するための、フェーズ3多施設無作為化オープンラベル延長試験を説明する。この試験は、概して、4週ごとの約150mgもしくは300mgのDX-2930、または2週ごとの300mgのDX-2930の複数回投与を含むHAEの前治療レジメンに続くものである。一般に、12歳以上であり、かつI型およびII型のHAEの診断が報告されている対象(ロールオーバー患者、たとえば実施例1に開示されるレジメンに従ってDX-2930で治療されている患者、または非ロールオーバー患者、たとえばDX-2930で治療されたことがない患者)、ならびに導入期間の間に4週間あたり少なくとも1回の発作を経験する、DX-2930で治療する前の対象が、含まれる。
【0186】
この試験の対象は、DX-2930を含むHAEの前治療の前に4週間あたり少なくとも1回の発作の経験が確認された、HAE(I型またはII型)と確定診断された12歳以上である。HAEの診断は、HAEと一致する病歴の報告、およびスクリーニング来院の前または来院時に行われる診断試験を介して、確認する。
【0187】
治療期間
(i)ロールオーバー対象
それぞれのロールオーバー対象(たとえば上記の実施例1における本明細書中記載の治療レジメンに従ってDX-2930で治療されているヒトの患者)に、DX2930の単回オープンラベル用量300mgを0日目に皮下投与(SC)する。対象には、最初のHAEの発作が報告され、治験責任医師が確認するまで、追加的なDX-2930の用量を投与しない。第1のオープンラベル用量と最初に報告されるHAEの発作との間の期間は、ロールオーバー対象により変動する。ロールオーバー対象が最初のHAE発作を報告するまで、対象は、以下の試験および評価を実施しなければならない試験来院日が予定されている:妊娠試験、臨床試験、理学的検査、12-Lead ECG、QoL、PK、PD、および抗薬剤抗体試料の収集。
【0188】
ロールオーバー対象が最初のHAE発作を報告した後、対象および施設のスケジュールが可能である限り早く、第2のオープンラベルのDX-2930の投与のための試験施設に対象を紹介する。第2のオープンラベルのDX-2930の投与が投与される来院時に、対象は、バイタルサイン、理学的検査、臨床検査、およびPK、PDのための採血、および抗薬剤抗体評価に関する、投与前評価を受ける。バイタルサインは投与から1時間後に得る。
【0189】
ロールオーバー対象がいつ最初のHAE発作を起こすかどうかに関わらず、第1のオープンラベルの投与と第2のオープンラベルの投与との間は最小10日間である。第2の投与の後に、ロールオーバー対象に、予定される投与に関する残りの治療期間の間、2週ごとにオープンラベル300mgのDX-2930の繰り返しSC投与を継続する。治療期間は第1のオープンラベルの投与日から350日間継続する。この期間の間に投与される投与回数は、各対象の第2の投与日に基づき対象により変動するが、26回の投与を超えるものではない。
【0190】
(ii)非ロールオーバー対象
すべてのスクリーニング評価が完了し、適格性が確認された後、非ロールオーバー対象は、試験施設に到着し、投与前評価の後、0日目に300mgのオープンラベル用量のDX-2930をSC投与で投与される。非ロールオーバー対象は、予定される投与に関する治療期間の間、2週ごとにオープンラベル300mgのDX-2930のSC投与を継続する。合計26用量が投与され、350日目の試験来院時に最後の投与が行われる。
【0191】
(iii)すべての対象
すべての投与(ロールオーバー対象に関しては第2の投与を除く)は、投与の間に最小10日および最大18日を必要とし、試験来院日近くの±4日の許容期間の中に含まれる。対象が、治験責任医師の意見で医学的介入を必要とする急性血管性浮腫を、試験の間のいずれかの時間で経験する場合、対象の病歴に基づき、かつ地域で認可された製品情報によって標準治療を提供すべきである。
【0192】
DX-2930の投与および試験手順は、対象が試験薬の予定投与日(自己投与の場合)または予定試験来院日に、突然の血管浮腫発作の治療を受ける場合であっても、プロトコールの試験活動スケジュールを変更することなく継続する。
【0193】
(iv)治療期間
すべての対象に、350日の治療期間の間、オープンラベルDX-2930を投与する。この期間の間にロールオーバー対象が受ける投与回数は対象により変動するが、26回の投与を超えるものではない。これら対象に投与されるオープンラベルDX-2930の最後の用量は、350日目の試験来院時に投与してもよい。
【0194】
非ロールオーバー対象は、1回目の投与が0日目に行われ、最後の投与が350日目の試験来院時に行われる、2週ごとに300mgのDX-2930の合計26用量を投与される。
【0195】
各試験来院日の近くで±4日間の許容期間が存在する。いずれか2つの投与の間に最小10日間が存在する。ロールオーバー対象のオープンラベルの1回目の投与と2回目の投与との間の間隔を除き、いずれか2つの投与の間に最大18日が存在する。予定試験来院時に、対象を、投与後1時間にわたり試験施設でモニタリングする。試験施設ではなくて自己投与を選択した対象では、バイタルサインをモニタリングしない。
【0196】
被験薬;用量;および投与形式
DX-2930(DX-2930)は、pH6.0の防腐剤の入っていない滅菌注射用溶液である。活性成分のDX-2930は、以下の公定の成分:30mMのリン酸水素二ナトリウム・二水和物、19.6mMのクエン酸(たとえばクエン酸・一水和物)、50mMのヒスチジン(たとえばL-ヒスチジン)、90mMの塩化ナトリウム、0.01%のポリソルベート80を使用して製剤化されている。各バイアルは、1mL溶液中に名目上の濃度150mgのDX-2930活性成分を含む。被験薬を、盲検法で上腕への皮下注射により投与する。
【0197】
各300mg用量のDX-2930では、各対象に、DX-2930を2回の個別の1.0mlのSC注射に分割して、合計2mlで投与する。この2回の注射は、各注射部位の間を少なくとも2cm空けて、同じ上腕に行う。
【0198】
各150mgの用量のDX-2930では、各対象に、2回の個別の1.0mlのSC注射に分割して、合計2mlで投与する。ここで1回の注射はSX-2930であり、もう一つはプラセボである。この2回の注射は、各注射部位の間を少なくとも2cm空けて、同じ上腕に行う。
【0199】
DX-2930は、対象が、治験責任医師または被指名人により適切な訓練を受け、対象の理解が確認された後に、監督されることなく(青年期の対象では親の監督が必要)自己投与することができる。対象は、試験施設で最初の2用量のDX-2930を投与された後、自己投与を開始することが許され、その後のすべての用量を自己投与し続けてもよい。同様に本明細書中の記載を参照されたい。
【0200】
経過観察期間
8週間の経過観察期間の間、安全性および追加的な評価(すなわち薬物動態学的および薬力学的な評価)を対象に行う。対象(または介護者)に、最後の経過観察来院の後に、経験するいかなるHAEの発作部位も知らせるように指導する。
【0201】
中止規則
投与が重要な安全性シグナルを有するといずれかの時点で決定される場合、DX-2930の用量を減少させてもよい。対象が、対象の健全性に関してさらなる投与の中止が妥当である、DX-2930関連の重篤な副作用(またはDX-2930関連、臨床的に有意な非重篤性の副作用)を経験する場合、いずれかの個々の対象の投与を中止する。
【0202】
対象の選択基準
以下の基準を満たす患者が、本明細書中に記載される治療の対象である。
1.スクリーニング時に12歳以上の男性および女性
2.以下のうちのすべてに基づき報告されたHAE(I型またはII型)の診断:
HAEと一致する病歴(蕁麻疹の兆候を伴わない皮下または粘膜の、非そう痒の腫脹エピソード)が報告されている。
I型またはII型HAEを確認するスクリーニングの間に得た診断試験結果:C1インヒビター(C1-INH)の機能的なレベルが正常なレベルの40%未満。機能的C1-INHが正常レベルの40~50%である対象は、C4レベルが正常な範囲を下回る場合に登録してもよい。対象は、これらの診断結果が入手可能となる前に導入期間への参加を開始してもよい。対象は、結果が病歴と一致しない、または最近のLTPの使用により混同されると考えられる場合、対象を再試験してもよい。
以下のうちの少なくとも1つ:最初の血管性浮腫の症状が報告された発症時の年齢が30歳以下、I型もしくはII型HAEと一致する家族歴、または正常範囲内のC1qと一致する家族歴。
3.導入期間の間に確認された、治験責任医師により確認された、4週あたり少なくとも1回のHAEの発作である、ベースラインの回数の経験。
4.成年の対象および18歳未満の対象の介護者は、インフォームドコンセントの書類を読み、理解し、サインをする意思があり、それらが可能であること。介護者がインフォームドコンセントを提供する12歳から17歳の対象は、同意書を読み、理解し、サインする意思があり、それらが可能であること。
5.繁殖力があり、性的に活性である男性および女性は、以下のように、試験期間の間、避妊の要件を遵守しなければならない。
妊娠の可能性のある女性は、禁欲することに同意しなければならないか、またはスクリーニングから最後の試験来院の30日後まで、きわめて有効な形態の避妊薬を使用することが推奨される。これは、試験のスクリーニング前の3か月間、排卵の阻害に関連した安定した用量の、併用したエストロゲンおよびプロゲスチン含有ホルモン性避妊薬(経口、注射可能、または埋め込み可能)、排卵の阻害に関連するプロゲスチンのみのホルモン避妊、子宮内避妊器具(IUD、すべての型)、またはIUS(intrauterine hormone releasing system)を含む。精管切除を受けた男性パートナーを有する女性は、医療上許容可能な避妊の形態をさらに1つ使用することに同意しなければならない。殺精子薬もしくは子宮頸部キャップ、ペッサリー、または殺精子薬を含むスポンジ、またはその組み合わせ(二重障壁法)を伴うまたは伴わない男性のコンドームの使用は、きわめて有効であると考えられているわけではない。
手術により繁殖不能(子宮摘出術、両側卵巣摘出術、または両側卵管結索術の後の状態)、または閉経から少なくとも12か月後と定義される、妊娠する可能性のない女性は、試験の間に避妊を必要としない。
妊娠する可能性のある女性のパートナーを有する、手術により繁殖不能(精管切除後)な男性を含む男性は、スクリーニングから最後の試験来院の60日後まで、禁欲であるか、または医療上許容可能な避妊方法を使用することに同意しなければならない。
【0203】
対象の除外基準
以下の基準のうちの1つまたは複数を有する患者は、本明細書中記載の治療から除外され得る。
1.後天性血管性浮腫(AAE)、正常なC1-INHを有するHAE(III型HAEとしても知られている)、特発性血管性浮腫、または蕁麻疹に関連する再発性血管性浮腫などの別の形態の、慢性、再発性の血管性浮腫の同時診断
2.スクリーニング前4週間以内の治験薬の投与(DX-2930または他のHAE療法以外)または治験用医療機器への曝露
3.スクリーニング前4週間以内のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤または全身吸収を伴ういずれかのエストロゲン含有薬物療法への曝露(たとえば経口避妊薬またはホルモン補充療法)。
4.以下の肝機能試験の異常のうちのいずれか:アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)が正常値の上限の3倍超、またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が正常値の上限の3倍超、または総ビリルビンが正常値の上限の2倍超(ビリルビンの上昇がジルベール症候群の結果でない限り)。
5.妊娠または授乳中
6.対象が、自身の安全性またはコンプライアンスを損なう、試験の実施成功を妨害する、または結果の解釈に干渉する(たとえば薬物の乱用または依存性の既往、治験責任医師が試験結果の解釈を混同し得る有意な既存の疾病または他の主要な依存症)と考えられ得るいずれかの状態を有する。
【0204】
禁止される併用治療
以下の治療の使用は、試験の間許可されない
LTPを一度中止した後(DX-2930の1回目の投与から3週間以内)での、HAEに関する長期間の発病予防(LTP)(たとえば長期間の発病予防のためのC1-INHの使用、弱効性アンドロゲン、または抗線溶剤)
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
全身吸収を伴うエストロゲン含有薬物療法(たとえば経口避妊薬またはホルモン補充療法)。
最初の3週間の間に中止した後での非HAE関連病態またはHAEに関するアンドロゲン(たとえばスタノゾロール、ダナゾール、オキサンドロロン、メチルテストステロン、テストステロン)の使用
他のいずれかの治験薬または装置
【0205】
臨床検査
臨床検査が必要である対象は、一般的な安全性のパラメータ(血液、凝固、検尿、および血清化学)、血清学、妊娠の試験、C1-INHの機能性アッセイ、C4アッセイ、C1qアッセイ、PK試料、PD試料、および血漿中抗薬剤抗体試験を含む臨床検査を受ける。すべての臨床検査は、確立された検証済みの方法を使用して行われる。
【0206】
自己投与
適切な候補者とみなされたすべての対象(青年または成年)(すなわち身体能力および学習能力があり、訓練をうける意思がある対象)は、自己投与治療が認められる。対象は、治験責任医師または被指名人による適切な訓練を修了しなければならず、治験責任医師または被指名人が対象の理解を確認しなければならない。
【0207】
対象は、試験施設でDX-2930の投与の最初の2用量を投与された後に、自己投与を開始することが許される。開始後、対象は、試験施設(試験施設の来院が予定されている場合)、または対象の自宅、または他の合意された場所(試験が現地外で許可された場合)で、その後のDX-2930の投与を自己投与することが許される。治験薬を自己投与する青年の対象は、親/法的監督者/介護者が監督する。あるいは、親/法的後見人/介護者は、適切な訓練を修了した後、試験施設での職員の監督なしに青年にDX-2930を投与することが許される。施設の職員は、投与が行われたかを確認し、有害事象(AE)、併用する薬物療法を収集し、かつすべての発作が適切に報告されたことを確実にするために、計画された施設以外での自己投与の後に対象を呼び出す。
【0208】
有効性評価
有効性のエンドポイントに関する追加的な基準は、
ロールオーバー対象の第1のHAEの発作までの時間(第1のオープンラベル試験の投与から第1のHAEの発作までの時間に基づく)
治療期間中に治験責任医師が確認したHAEの発作の回数
治療期間中に急性治療を必要とする調査者が確認したHAEの発作の回数
治療期間中の中程度または重篤なHAEの発作の回数
治療期間中の高発生率のHAEの発作の回数;高発生率のHAEの発作は、以下の特徴のうち少なくとも1つを有するいずれかの発作として定義されている:重篤である発作、入院(24時間未満の経過観察の入院を除く)をもたらす発作、血行動態的に著しい発作(収縮期血圧90未満、静脈からの水分補給を必要とし、気絶または気絶に近い状態を伴う)、または喉頭の発作。
追加的な測定は、
抗薬物抗体の発生
薬物動態(PK)
薬力学的(PD)の効果
クオリティ・オブ・ライフの評価
DX-2930の注射の記録
DX-2930の自己投与および皮下注射の調査
を含むものであった。
【0209】
実施例3:DX-2930の治療後のHMWKの評価
HAE患者を、異なる用量群(30mg、100mg、300mg、および400mg)を含む活性薬(DX-2930)を投与する群、ならびにプラセボ投与群、ならびにプラセボまたはDC-2930(DX-2930)の皮下用量を投与する群に無作為化した。血漿の試料を、用量を投与される前の時点(「投与前」)から、および8日目、22日目、50日目、64日目、92日目、および120日目の投与後の時点に、収集した。
【0210】
患者の血漿中のDX-2930の薬力学的活性を評価するためのバイオマーカーアッセイを、この血漿の試料で行った。特に、二本鎖HMWKに特異的に結合する抗体を使用するアッセイで、二本鎖HMWKの存在に関して試料を評価した。
【0211】
図3に示されるように、DX-2930の投与は、DX-2930、たとえば300mgまたは400mgのDX-2930を投与した患者において、二本鎖HMWKの減少をもたらした。これらの対象の二本鎖HMWKのレベルは、投与から8日後および22日後に健常な対象で検出した二本鎖HMWKのレベルに達し、少なくとも投与後92日目にはなおも減少していた。
【0212】
これらの結果は、DX-2930の投与が、二本鎖HMWK(血漿カリクレインの不安定性を評価し、DX-2930の効果を安定化させるためのバイオマーカー)のレベルを減少させ、これを投与後数カ月間検出できることを示すものである。二本鎖HMWKはまた、血漿カリクレインを評価するためのバイオマーカーとしても使用される。
【0213】
他の実施形態
本明細書中開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書中開示される各特徴は、同一、均等、または同様の目的を有する代替的な特徴により置き換えられてもよい。よって、特段他の意味が明記されていない限り、開示される各特徴は、後続の一連の均等物または類似の特徴の単なる例である。
【0214】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に本発明を適合させるため、本発明に様々な変化および修正を行うことができる。よって他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
【0215】
均等物
いくつかの本発明の実施形態が、本明細書中に記載され、例示されてきたが、当業者は、本明細書中記載される、機能を行い、かつ/または、結果および/もしくは利益のうちの1つまたは複数を入手するための、様々な他の手段および/または構造を容易に想像するものである。このような変化および/または修正のそれぞれは、本発明に記載される本発明の実施形態の範囲内にあるとされる。より一般的には、当業者は、本明細書中記載されるすべてのパラメータ、次元、材料、および/または構成が、例示的なものであり、本発明の技術が使用される特定の利用に依存することを意味することを、容易に理解するものである。当業者は、単なる定例的な実験を使用して、本明細書中に記載される特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認することができる。よって、上記の実施形態が単なる例示として提示されていることを理解するために、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、特に記載および請求されているもの以外の他の形で行ってもよい。本開示の発明の実施形態は、本明細書中に記載される各個々の特徴、システム、項目、材料、キット、および/または方法を対象にするものである。さらに、2つ以上の当該特徴、システム、項目、材料、キット、および/または方法のいずれかの組み合わせは、当該特徴、システム、項目、材料、キット、および/または方法が相互に食い違っていない場合、本開示の発明の範囲内に含められている。
【0216】
本明細書中定義および使用されるすべての定義は、辞書での定義、参照として援用されている文書中の定義、および/または定義されている用語の通常の意味より優先すると理解すべきである。
【0217】
本明細書および特許請求の範囲において、本文で使用されている限定されていない項目「1つの(a)」、および「1つの(an)」は、特段反対の意味が明記されていない限り、「少なくとも1つ」を意味することが理解されている。
【0218】
本明細書および特許請求の範囲において、本文で使用されている「および/または」の文言は、組み合わされた要素の「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち、場合によっては組み合わせて存在し、他の場合では選言的に存在する要素を意味することが理解されている。「および/または」と共に列挙されている複数の要素は、同様の形式、すなわち「組み合わされた要素のうちの「1つまたは複数」であると解釈すべきである。要素に関連するまたは関連していない要素が具体的に同定されているかどうかに関わらず、「および/または」の節により特に同定された要素以外の他の要素が、任意に存在してもよい。よって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」との言及が、「~を含む」などのオープンエンドの言語と共に使用される場合、一実施形態においてはAのみ(任意にB以外の要素を含む)を表すことができ;別の実施形態においてはBのみ(任意にA以外の要素を含む)を表すことができ;さらなる別の実施形態では、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む)を表すことができる。
【0219】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「または」は、上記に定義された「および/または」と同一の意味を有することが理解されている。たとえばリストにおける項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈され、すなわち、多数の要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、1超の要素をも含み、任意に列挙されていない追加的な項目をさらに含む。「~のうちの1つのみ」、「のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用する場合の「~からなる」などの逆であることを明らかに示す用語のみが、多数の要素または要素のリストのうちの正確に1つを含むことを意味する。一般的に、本明細書中使用される用語「または」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、「または「~のうちの正確に1つ」などの排他的な文言が先にある場合、排他的な選択肢(すなわち1つまたはその他、しかし両方ではない)」を意味すると、解釈される。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される際の通常の意味を有するものである。
【0220】
本明細書および特許請求の範囲において本文で使用されている、1つまたは複数の要素の列挙に関する「少なくとも1つ」との文言は、複数の要素のリストにおける要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解すべきであるが、要素の列挙の中に特に列挙されている各列挙およびすべての列挙のうちの少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、要素の列挙のうちの要素のいずれかの組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つの」との文言が、特に特定された要素に関連しているかそうでないかに関わらず、意味する要素のリスト内に、特に特定された要素以外が任意に存在してもよいことが認められている。よって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、任意に1超のAを含む、少なくとも1つのA(B以外の要素を任意に含む)を意味し;別の実施形態では、Aが存在しない、任意に1超のBを含む、少なくとも1つのB(A以外の要素を任意に含む)を意味し;さらなる別の実施形態では、任意に1超のAを含む、少なくとも1つのA、および任意に1超のBを含む、少なくとも1つのB(任意に他の要素を含む)を意味する。
【0221】
また、特段逆であることが明記されていない限り、1超のステップまたは行為を含む本明細書中請求されるいずれかの方法では、当該方法のステップまたは作用の順序は、本方法のステップまたは行為が記載されている順序に必ずしも限定されていないことを理解すべきである。
【0222】
特許請求の範囲および上記の明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「~から構成される」などのすべての移行句は、オープンエンド、すなわち、記載の項目を含むがこれらに限定されないことを意味することが理解されている。「~からなる」および「~本質的になる」の移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03に記載されるように、それぞれクローズド、または半クローズドの移行句とされている。
図1
図2
図3
【配列表】
2023172975000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023172975000001.xml