(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173008
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20231130BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20231130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B49/02 Z
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084939
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】中村 文
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB92
3C034CA02
3C034CB01
3C043BA03
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F057AA02
5F057AA12
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA11
(57)【要約】
【課題】被加工物を正確に仕上げ厚みとすることが可能な被加工物の研削方法を提供する。
【解決手段】スパークアウト(第4研削ステップ)の際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブルと研削ホイールとの距離をスパークアウトに先立って把握する。これにより、被加工物の厚みが仕上げ厚みに当該距離を加算した厚みとなった時点でスパークアウトを開始することによって、被加工物を正確に仕上げ厚みとすることが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとの双方を回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとの間隔を調整することが可能な移動機構によって該チャックテーブルと該研削ホイールとを接近させて仕上げ厚みとなるまで該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物を該チャックテーブルで保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該チャックテーブルを第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを第2回転速度で回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとを所定の移動速度で接近させるように該移動機構を動作させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧された状態で該仕上げ厚みより厚い所定の厚みとなるまで該被加工物を研削する第1研削ステップと、
該第1研削ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該被加工物と該研削ホイールとが接触した状態で該移動機構の動作を停止させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧する力を減少させながら所定の期間が経過するまで該被加工物を研削する第2研削ステップと、
該第2研削ステップの後に、該被加工物の厚みを測定する測定ステップと、
該測定ステップの後に、該所定の厚みから該測定ステップにおいて測定された該被加工物の厚みを減算することによって、該第2研削ステップにおいて接近する該チャックテーブルと該研削ホイールとの距離を算出する算出ステップと、
該算出ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとを該所定の移動速度で接近させるように該移動機構を動作させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧された状態で該仕上げ厚みに該距離を加算した厚みとなるまで該被加工物を研削する第3研削ステップと、
該第3研削ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該被加工物と該研削ホイールとが接触した状態で該移動機構の動作を停止させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧する力を減少させながら該所定の期間が経過するまで該被加工物を研削する第4研削ステップと、
を備える被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとの双方を回転させながら、チャックテーブルと研削ホイールとの間隔を調整することが可能な移動機構によってチャックテーブルと研削ホイールとを接近させて仕上げ厚みとなるまで被加工物を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハ等を含む被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
この被加工物は、製造されるチップの小型化を目的として、その分割に先立って薄化されることがある。被加工物を薄化する方法としては、研削が挙げられる。研削は、一般的に、被加工物の厚みを測定しながら、この被加工物の厚みが所望の厚みになるまで行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、研削は、被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとの双方を回転させながら、チャックテーブルと研削ホイールとの間隔を調整することが可能な移動機構によって両者を接近させることによって行われる。すなわち、この研削は、被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとの双方が回転した状態で両者が互いに押圧されることによって行われる。
【0005】
このように被加工物が研削されると、周期的な凹凸(研削痕)が被加工物の被研削面に形成されることがある。そのため、被加工物を研削する際には、研削痕を除去して被加工物の被研削面を平坦化するための研削、いわゆるスパークアウトが最後に行われることがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
具体的には、スパークアウトは、被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとのそれぞれを回転させながら、被加工物と研削ホイールとが接触した状態で移動機構の動作を停止させることによって行われる。
【0007】
この場合、被加工物を介してチャックテーブルと研削ホイールとを互いに押圧する力が減少しながら両者の間隔が小さくなる、いわゆるスプリングバックが生じる。そして、スプリングバックが生じると被加工物が研削され、スプリングバックが実質的に完了した時点で被加工物が実質的に研削されなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-6018号公報
【特許文献2】特開2003-236736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スパークアウトが行われると、被加工物の厚みが上記の移動機構の動作を停止した時点の厚みよりも小さくなる。この場合、被加工物を所望の仕上げ厚みとなるように研削することが困難になるおそれがある。この点に鑑み、本発明の目的は、被加工物を正確に仕上げ厚みとすることが可能な被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと研削ホイールとの双方を回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとの間隔を調整することが可能な移動機構によって該チャックテーブルと該研削ホイールとを接近させて仕上げ厚みとなるまで該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物を該チャックテーブルで保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該チャックテーブルを第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを第2回転速度で回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとを所定の移動速度で接近させるように該移動機構を動作させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧された状態で該仕上げ厚みより厚い所定の厚みとなるまで該被加工物を研削する第1研削ステップと、該第1研削ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該被加工物と該研削ホイールとが接触した状態で該移動機構の動作を停止させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧する力を減少させながら所定の期間が経過するまで該被加工物を研削する第2研削ステップと、該第2研削ステップの後に、該被加工物の厚みを測定する測定ステップと、該測定ステップの後に、該所定の厚みから該測定ステップにおいて測定された該被加工物の厚みを減算することによって、該第2研削ステップにおいて接近する該チャックテーブルと該研削ホイールとの距離を算出する算出ステップと、該算出ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該チャックテーブルと該研削ホイールとを該所定の移動速度で接近させるように該移動機構を動作させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧された状態で該仕上げ厚みに該距離を加算した厚みとなるまで該被加工物を研削する第3研削ステップと、該第3研削ステップの後に、該チャックテーブルを該第1回転速度で回転させ、かつ、該研削ホイールを該第2回転速度で回転させながら、該被加工物と該研削ホイールとが接触した状態で該移動機構の動作を停止させることによって、該被加工物を介して該チャックテーブルと該研削ホイールとが互いに押圧する力を減少させながら該所定の期間が経過するまで該被加工物を研削する第4研削ステップと、を備える被加工物の研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、スパークアウト(第4研削ステップ)の際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブルと研削ホイールとの距離をスパークアウトに先立って把握する。これにより、本発明においては、被加工物の厚みが仕上げ厚みに当該距離を加算した厚みとなった時点でスパークアウトを開始することによって、被加工物を正確に仕上げ厚みとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、研削装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、研削装置に内蔵される制御ユニットの一例を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、被加工物を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図であり、また、
図2は、
図1に示される研削装置の一例を模式的に示す断面図である。なお、
図1及び
図2に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0014】
図1及び
図2に示される研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する直方体状の溝4aが形成されている。そして、溝4aの底面には、後述するチャックテーブル24をX軸方向に沿って移動させるX軸方向移動機構6が設けられている。
【0015】
このX軸方向移動機構6は、それぞれがX軸方向に沿って延在する一対のガイドレール8を有する。一対のガイドレール8の上側には、X軸方向に沿ってスライド可能な態様で直方体状のX軸移動プレート10が取り付けられている。また、一対のガイドレール8の間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸12が配置されている。
【0016】
そして、ねじ軸12の後端部には、ねじ軸12を回転させるためのパルスモータ14が連結されている。また、ねじ軸12のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸12の回転に応じて循環する多数のボールを収容するナット16が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0017】
また、ナット16は、X軸移動プレート10の下面側に固定されている。そのため、パルスモータ14でねじ軸12を回転させれば、ナット16とともにX軸移動プレート10がX軸方向に沿って移動する。また、X軸移動プレート10の上には、下端部に従動プーリ18が連結されている回転体と、原動プーリ(不図示)に連結されているモータ等の回転駆動源(不図示)とが設けられている。
【0018】
また、従動プーリ18と原動プーリとには、無端ベルト(不図示)が架けられている。さらに、X軸移動プレート10の上には、1つの固定軸(不図示)と、それぞれのZ軸方向に沿った長さが可変な2つの可動軸20とを有する傾き調整機構が設けられている。また、固定軸と2つの可動軸20とは、テーブルベース22の下面側に連結され、テーブルベース22を支持する。
【0019】
このテーブルベース22の中央には貫通孔(不図示)が形成されており、この貫通孔には、下端部に従動プーリ18が連結されている回転体が通されている。そして、この回転体の上端部は、円板状のチャックテーブル24の下面側に連結されている。そのため、従動プーリ18に架けられている無端ベルトを回転させるように原動プーリに連結されている回転駆動源を動作させると、チャックテーブル24の周方向に沿ってチャックテーブル24が回転する。
【0020】
また、チャックテーブル24は、ベアリング(不図示)を介してテーブルベース22に支持されている。そのため、上述のとおりチャックテーブル24を回転させても、テーブルベース22が回転することはない。他方、傾き調整機構において2つの可動軸20のそれぞれのZ軸方向に沿った長さが調整されると、テーブルベース22のみならず、チャックテーブル24の傾きも調整される。
【0021】
チャックテーブル24は、セラミックス等からなる円板状の枠体26を有する。この枠体26は、円板状の底壁と、この底壁から立設する円筒状の側壁とを有する。すなわち、枠体26の上面側には、底壁及び側壁によって画定される円板状の凹部が形成されている。
【0022】
なお、枠体26の側壁の内径は、後述する被加工物11の直径よりも僅かに短く、かつ、その外径は、被加工物11の直径よりも僅かに長い。また、枠体26の底壁には凹部の底面において開口する流路(不図示)が形成されており、この流路はエジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。
【0023】
さらに、枠体26の上面側に形成されている凹部には、この凹部の直径と概ね等しい直径を有する円板状のポーラス板28が固定されている。このポーラス板28は、例えば、多孔質セラミックスからなる。また、ポーラス板28の上面及び枠体26の側壁の上面は、円錐の側面に対応する形状(中心が外周よりも突出する形状)を有する。
【0024】
そして、枠体26の内部に形成されている流路に連通する吸引源を動作させると、ポーラス板28の上面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、ポーラス板28の上面及び枠体26の側壁の上面は、チャックテーブル24の保持面24aとして機能する(
図1参照)。
【0025】
例えば、被加工物11がチャックテーブル24の保持面24aに置かれた状態で吸引源を動作させることによって、被加工物11がチャックテーブル24に保持される。この被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料からなり、その表面13a側に複数のデバイスが形成されているウェーハ13を有する。
【0026】
また、ウェーハ13の表面13aには、例えば、樹脂からなり、ウェーハ13の裏面13b側を研削する際のデバイスの破損を防止する保護テープ15が貼着されている。そして、被加工物11は、保護テープ15を介してウェーハ13が保持されるように、すなわち、ウェーハ13の裏面13bが露出されるようにチャックテーブル24に保持される。
【0027】
さらに、チャックテーブル24の周囲には、その保持面24aが露出するようにチャックテーブル24を囲む直方体状のテーブルカバー30が設けられている。このテーブルカバー30の幅(Y軸方向に沿った長さ)は基台4の上面に形成されている溝4aの幅と概ね等しい。また、テーブルカバー30の前後には、X軸方向に沿って伸縮可能な防塵防滴カバー32が設けられている。
【0028】
また、基台4の上面のうち溝4aの後方に位置する領域には、四角柱状の支持構造34が設けられている。この支持構造34の前面には、Z軸方向移動機構36が設けられている。このZ軸方向移動機構36は、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール38を有する。そして、一対のガイドレール38のそれぞれの前側には、Z軸方向に沿ってスライド可能な態様でスライダ40が設けられている(
図2参照)。
【0029】
また、スライダ40の前端部は、直方体状のZ軸移動プレート42の後面側に固定されている。さらに、一対のガイドレール38の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸44が配置されている。そして、ねじ軸44の上端部には、ねじ軸44を回転させるためのパルスモータ46が連結されている。
【0030】
また、ねじ軸44のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸44の回転に応じて循環する多数のボールを収容するナット48が設けられ、ボールねじが構成されている。また、ナット48は、Z軸移動プレート42の後面側に固定されている。そのため、パルスモータ46でねじ軸44を回転させれば、ナット48とともにZ軸移動プレート42がZ軸方向に沿って移動する。
【0031】
Z軸移動プレート42の前側には、研削ユニット50が設けられている。この研削ユニット50は、Z軸移動プレート42の前面に固定されている円筒状の保持部材52を有する。そして、保持部材52の内側には、Z軸方向に沿って延在する円筒状のスピンドルハウジング54が設けられている。
【0032】
また、スピンドルハウジング54の内側には、Z軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル56が設けられている(
図2参照)。このスピンドル56は、回転可能な態様でスピンドルハウジング54に支持され、その上端部は、モータ等の回転駆動源58に連結されている。
【0033】
また、スピンドル56の下端部は、スピンドルハウジング54から露出し、円板状のホイールマウント60に固定されている。そして、ホイールマウント60の下面側には、ボルト等の固定部材(不図示)を用いて、ホイールマウント60の直径と概ね等しい外径を有する環状の研削ホイール62が装着されている。
【0034】
この研削ホイール62は、複数の研削砥石62aと、複数の研削砥石62aが環状に離散して配置されている下面を有するホイール基台62bとを有する。そして、回転駆動源58を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として、スピンドル56とともにホイールマウント60及び研削ホイール62が回転する。
【0035】
なお、複数の研削砥石62aは、ビトリファイドボンド又はレジンボンド等の結合材に分散されたダイヤモンド又はcBN等の砥粒を有する。また、ホイール基台62bは、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属材料からなる。
【0036】
さらに、研削ホイール62の近傍には、研削水供給ノズルが設けられている。この研削水供給ノズルは、複数の研削砥石62aによって被加工物11を研削する際に純水等の液体(研削水)を所定の流量で加工点に供給する。
【0037】
また、基台4の上面のうち溝4aの側方に位置し、かつ、研削ユニット50に近接する領域には、測定ユニット64が設けられている。この測定ユニット64は、例えば、それぞれの測定子が接触する位置の高さを測定する一対のハイトゲージ64a,64bを有する。
【0038】
ハイトゲージ64aの測定子は、チャックテーブル24に保持された被加工物11に含まれるウェーハ13の裏面13bに接触するように配置可能である。また、ハイトゲージ64bの測定子は、チャックテーブル24の保持面24a(具体的には、枠体26の側壁の上面)に接触するように配置可能である。
【0039】
そのため、ウェーハ13の裏面13b側の研削に先立って、又は、その最中に、このように各ハイトゲージ64a,64bの測定子を配置することによって、測定ユニット64において被加工物11の厚みを測定することができる。
【0040】
また、研削装置2は、上述した構成要素を制御する制御ユニットを内蔵する。
図3は、研削装置2に内蔵される制御ユニットの一例を模式的に示す機能ブロック図である。
図3に示される制御ユニット66は、処理部68と記憶部70とを有する。
【0041】
処理部68は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成される。また、記憶部70は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリ及びSSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリによって構成される。
【0042】
記憶部70は、処理部68において用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、この記憶部70には、研削前の被加工物11の初期厚み(T1)及び被加工物11の仕上げ厚み(T2)等が記憶されている。
【0043】
また、処理部68は、記憶部70に記憶された各種のプログラムを読みだして実行し、研削装置2の構成要素を制御する。この処理部68は、例えば、駆動部72と、算出部74とを有する。
【0044】
駆動部72は、研削装置2の構成要素の移動又は回転を制御する。すなわち、駆動部72は、X軸方向移動機構6(具体的には、パルスモータ14)と、Z軸方向移動機構36(具体的には、パルスモータ46)と、傾き調整機構(具体的には、可動軸20)と、チャックテーブル24を回転させる回転駆動源と、研削ホイール62を回転させる回転駆動源58とを制御する。
【0045】
算出部74は、スパークアウトの際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブル24と研削ホイール62との距離を算出する。なお、当該距離の具体的な算出方法については後述する。
【0046】
図4は、研削装置2において、その厚さが初期厚み(T1)から仕上げ厚み(T2)となるまで被加工物11を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0047】
この方法においては、まず、被加工物11をチャックテーブル24で保持する(保持ステップ:S1)。具体的には、保護テープ15が下になるように被加工物11をチャックテーブル24の保持面24aに搬入してから、チャックテーブル24のポーラス板28と連通する吸引源を動作させる。
【0048】
次いで、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とが互いに押圧された状態で被加工物11を研削する(第1研削ステップ:S2)。具体的には、まず、チャックテーブル24の保持面の外周のうち最も高くなる点と保持面の中心とを結ぶ線分がZ軸方向と直交するように傾き調整機構(具体的には、可動軸20)を動作させる。
【0049】
次いで、平面視において、研削ホイール62を回転させた時の複数の研削砥石62aの軌跡と上記の線分の一端及び他端とが重なるように、X軸方向移動機構を動作させる。次いで、第1回転速度(例えば、100rpm~700rpm、代表的には、300rpm)でチャックテーブル24を回転させるように上記の原動プーリに連結されている回転駆動源を動作させ、かつ、第2回転速度(例えば、1000rpm~7000rpm、代表的には、4000rpm)で研削ホイール62を回転させるようにスピンドル56の上端部に連結されている回転駆動源58を動作させる。
【0050】
次いで、それぞれの回転速度を変更することなくチャックテーブル24と研削ホイール62との双方を回転させたまま、チャックテーブル24と研削ホイール62とを所定の移動速度(例えば、0.1μm/s~0.6μm/s、代表的には、0.3μm/s)で接近させるようにZ軸方向移動機構36を動作させる。
【0051】
これにより、回転する複数の研削砥石62aの下面と回転するウェーハ13の裏面13bとが接触し、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とが互いに押圧された状態となる。その結果、複数の研削砥石62aによってウェーハ13の裏面13b側が研削される。
【0052】
また、ウェーハ13の裏面13b側の研削に先立って、又は、その最中に、被加工物11の厚さが測定ユニット64によって測定されるように、ハイトゲージ64aの測定子及びハイトゲージ64bの測定子をウェーハ13の裏面13b及び枠体26の側壁の上面にそれぞれ接触させる。
【0053】
そして、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが所定の厚み(T3)よりも大きければ(ステップ(S3):NO)、ウェーハ13の裏面13b側の研削が継続される。なお、この第1研削ステップ(S2)においては、例えば、被加工物11の研削量(初期厚み(T1)から仕上げ厚み(T2)を減算して得られる厚み)の少なくとも1/3が残存するように被加工物11を研削する。
【0054】
すなわち、この所定の厚み(T3)は、例えば、初期厚み(T1)よりも小さく、かつ、初期厚み(T1)と仕上げ厚み(T2)の2倍との和を1/3倍した厚みよりも大きい(T1>T3>(T1+2×T2)/3)。なお、この所定の厚みは、制御ユニット66の記憶部70に記憶されている。
【0055】
そして、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが所定の厚み(T3)となれば(ステップ(S3):YES)、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とが互いに押圧する力を減少させながら所定の期間が経過するまで被加工物11を研削する(第2研削ステップ:S4)。
【0056】
具体的には、それぞれの回転速度を変更することなくチャックテーブル24と研削ホイール62との双方を回転させたまま、被加工物11と研削ホイール62とが接触した状態でZ軸方向移動機構36の動作を停止させる。換言すると、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが所定の厚み(T3)となった時点で、被加工物11の研削の最後に実施されるスパークアウトを実施する。
【0057】
この第2研削ステップ(S4)においては、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とを互いに押圧する力が減少しながら両者の間隔が小さくなる、いわゆるスプリングバックが生じる。そして、スプリングバックが生じるとウェーハ13の裏面13b側が研削され、スプリングバックが実質的に完了した時点でウェーハ13の裏面13b側が実質的に研削されなくなる。
【0058】
また、第2研削ステップ(S4)は、スプリングバックが実質的に完了するまで、すなわち、ウェーハ13の裏面13b側が実質的に研削されなくなるまで実施される。換言すると、上記の所定の期間は、スプリングバックが実質的に完了までの期間、すなわち、ウェーハ13の裏面13b側が実質的に研削されなくなるまでの期間である。
【0059】
なお、第2研削ステップ(S4)においては、ハイトゲージ64aの測定子は、ウェーハ13の裏面13bから離隔されてもよいし、接触したままでもよい。測定子が離隔される場合には、第2研削ステップ(S4)の後にウェーハ13の裏面13bに測定子の接触痕が残存することを防止できる点で好ましい。他方、測定子が接触したままの場合には、研削装置2の動作が簡便になる点で好ましい。
【0060】
次いで、被加工物11の厚みを測定する(測定ステップ:S5)。具体的には、第2研削ステップ(S4)に先立って、又は、その後に、ハイトゲージ64aの測定子及びハイトゲージ64bの測定子をウェーハ13の裏面13b及び枠体26の側壁の上面にそれぞれ接触させる。これにより、第2研削ステップ(S4)後の被加工物11の厚み(T4)が測定ユニット64によって測定される。
【0061】
次いで、第2研削ステップ(S4)において接近するチャックテーブル24と研削ホイール62との距離(D)を算出する(算出ステップ:S6)。具体的には、この距離(D)は、上記の所定の厚み(T3)から測定ステップ(S5)において測定された被加工物11の厚み(T4)を減算することによって算出される(D=T3-T4)。また、この距離(D)は、スパークアウトの際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブル24と研削ホイール62との距離であると表現できる。
【0062】
なお、測定ステップ(S5)及び算出ステップ(S6)は、チャックテーブル24と研削ホイール62との双方が回転した状態で行われてもよいし、両者の回転を停止した状態で行われてもよい。さらに、測定ステップ(S5)及び算出ステップ(S6)は、被加工物11と研削ホイール62とが接近した状態で行われてもよいし、両者が離隔するようにZ軸方向移動機構36を動作させてから行われてもよい。
【0063】
次いで、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とが互いに押圧された状態で被加工物11を研削する(第3研削ステップ:S7)。具体的には、上述した第1研削ステップ(S2)と同様に、チャックテーブル24を第1回転速度で回転させ、かつ、研削ホイール62を第2回転速度で回転させながら、チャックテーブル24と研削ホイール62とを所定の移動速度で接近させるようにZ軸方向移動機構36を動作させる。
【0064】
また、第3研削ステップ(S7)に先立って、又は、その最中に、被加工物11の厚さが測定ユニット64によって測定されるように、ハイトゲージ64aの測定子及びハイトゲージ64bの測定子をウェーハ13の裏面13b及び枠体26の側壁の上面にそれぞれ接触させる。
【0065】
そして、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが仕上げ厚み(T2)に上記の距離(D)を加算した厚み(T2+D)よりも大きければ(ステップ(S8):NO)、ウェーハ13の裏面13b側の研削が継続される。
【0066】
他方、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが当該厚み(T2+D)となれば(ステップ(S8):YES)、被加工物11を介してチャックテーブル24と研削ホイール62とが互いに押圧する力を減少させながら所定の期間が経過するまで被加工物11を研削する(第4研削ステップ:S9)。
【0067】
具体的には、上述した第2研削ステップ(S4)と同様に、それぞれの回転速度を変更することなくチャックテーブル24と研削ホイール62との双方を回転させたまま、被加工物11と研削ホイール62とが接触した状態でZ軸方向移動機構36の動作を停止させる。換言すると、測定ユニット64によって測定される被加工物11の厚みが当該厚み(T2+D)となった時点でスパークアウトを実施する。
【0068】
なお、ハイトゲージ64aの測定子は、第4研削ステップ(S4)の最中にウェーハ13の裏面13bから離隔されることが好ましい。これにより、第4研削ステップ(S4)後にウェーハ13の裏面13bに測定子の接触痕が残存することを防止できる。
【0069】
また、上記の距離(D)は、上述のとおり、スパークアウトの際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブル24と研削ホイール62との距離である。そのため、第4研削ステップ(S9)後の被加工物11の厚みは仕上げ厚み(T2)となる。
【0070】
図4に示される方法においては、スパークアウト(第4研削ステップ(S4))の際のスプリングバックに伴って接近するチャックテーブル24と研削ホイール62との距離(D)をスパークアウトに先立って把握する。これにより、この方法においては、被加工物11の厚みが仕上げ厚み(T2)に当該距離(D)を加算した厚みとなった時点でスパークアウトを開始することによって、被加工物11を正確に仕上げ厚み(T2)とすることが可能となる。
【0071】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、チャックテーブル24と研削ホイール62とを相対的に移動させる移動機構に制限はない。例えば、本発明においては、X軸方向移動機構6及びZ軸方向移動機構36に換えて、チャックテーブル24をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動機構と、研削ホイール62をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構とが設けられていてもよい。
【0072】
また、本発明においては、被加工物11の厚みを測定する測定ユニットに制限はない。例えば、本発明の研削装置においては、測定ユニット64に換えて、非接触で被加工物11の厚みを測定する測定ユニットが設けられていてもよい。
【0073】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0074】
2 :研削装置
4 :基台(4a:溝)
6 :X軸方向移動機構
8 :ガイドレール
10:X軸移動プレート
11:被加工物
12:ねじ軸
13:ウェーハ(13a:表面、13b:裏面)
14:パルスモータ
15:保護テープ
16:ナット
18:従動プーリ
20:可動軸
22:テーブルベース
24:チャックテーブル(24a:保持面)
26:枠体
28:ポーラス板
30:テーブルカバー
32:防塵防滴カバー
34:支持構造
36:Z軸方向移動機構
38:ガイドレール
40:スライダ
42:Z軸移動プレート
44:ねじ軸
46:パルスモータ
48:ナット
50:研削ユニット
52:保持部材
54:スピンドルハウジング
56:スピンドル
58:回転駆動源
60:ホイールマウント
62:研削ホイール(62a:研削砥石、62b:ホイール基台)
64:測定ユニット(64a,64b:ハイトゲージ)
66:制御ユニット
68:処理部
70:記憶部
72:駆動部
74:算出部