(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173033
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20231130BHJP
【FI】
H02P25/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085009
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】東 信二
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540AA01
5H540BA03
5H540BB03
5H540BB07
5H540BB09
5H540EE02
5H540EE05
5H540FA06
5H540FA16
5H540FC02
5H540GG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容器キャリアの駆動中において、巻線抵抗による熱損失の増加を抑制しつつ容器キャリアの位置検出の感度を向上させること。
【解決手段】被搬送物側に設けられた磁石と、ティース及び前記ティースの外側に巻かれた巻線からなる磁極と、隣接されて配置された複数のヨークと、前記巻線に電流を供給する駆動回路とを備え、前記駆動回路により前記磁極に磁界を発生させ、前記磁界により前記磁石に推力が生じて水平方向に搬送する搬送装置であって、前記磁極は、前記被搬送物の搬送方向に力を作用させるように前記巻線に電流を供給された第1の磁極と、該第1の磁極に所定間隔をもって隣接配置された少なくとも1つの隣接磁極とから成り、前記隣接磁極の少なくとも1つの磁極の巻線に前記第1の磁極の巻線と同時に電流を供給し、少なくとも1つの前記隣接磁極で生成された磁束によって前記第1の磁極の磁気飽和レベルを制御することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物側に設けられた磁石と、強磁性体からなるティース及び前記ティースの外側に巻かれた巻線からなる磁極と、隣接されて配置された複数の前記磁極を結合する強磁性体からなる磁気回路を形成するヨークと、前記磁極の前記巻線に電流を供給する駆動回路とを備え、前記駆動回路により印加される電圧により前記磁極に磁界を発生させ、前記磁界により前記磁石に推力が生じて前記被搬送物を水平方向に搬送する搬送装置であって、
前記磁極は、前記被搬送物の搬送方向に力を作用させるように前記巻線に電流を供給された第1の磁極と、該第1の磁極に所定間隔をもって隣接配置された少なくとも1つの隣接磁極とから成り、前記隣接磁極の少なくとも1つの磁極の巻線に前記第1の磁極の巻線と同時に電流を供給し、少なくとも1つの前記隣接磁極で生成された磁束によって前記第1の磁極の磁気飽和レベルを制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
少なくとも1つの前記隣接磁極は、前記第1の磁極に対して前記被搬送物の進行方向側に配置された第2の磁極であり、前記第2の磁極の巻線に前記第1の磁極の巻線と同時に電流を供給し、前記第2の磁極で生成された磁束によって前記第1の磁極の磁気飽和レベルを制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記第1の磁極に供給された電流と逆向きの電流を前記第2の磁極に供給することを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置であって、
前記第2の磁極に供給する電流は、前記第1の磁極に供給された電流と同じ大きさであることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記第1の磁極に供給された電流と同じ向きの電流を前記第2の磁極に供給することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置であって、
少なくとも1つの前記隣接磁極は、前記第1の磁極に対して前記被搬送物の進行方向の法線方向側に隣接して配置された第3及び第4の磁極であり、前記第3及び第4の磁極の巻線に対し、前記第1の磁極の巻線と同時に電流を供給し、前記第3及び第4の磁極で生成された磁束によって前記第1の磁極の磁気飽和レベルを制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送装置であって、
前記第1の磁極に供給された電流と同じ向きの電流を前記第3及び第4の磁極に供給することを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送装置であって、
前記第3及び第4の磁極に供給する電流は、前記第1の磁極に供給された電流と同じ大きさであることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記被搬送物は容器キャリアに保持され、前記磁石は前記容器キャリアに内蔵された永久磁石であり、前記磁極は電磁石であることを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記搬送装置は、前記電磁石の巻線に流れる前記駆動回路からの電流を検出する電流検出部と、該電流検出部で検出された電流値に基づいて前記容器キャリアを移動させる制御信号を前記駆動回路に出力する演算部と、を備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記搬送装置は、前記電磁石の巻線に流れる前記駆動回路からの電流を検出する電流検出部と、該電流検出部で検出された電流値に基づいて前記ティースと前記容器キャリアとの相対的な位置関係を演算し、前記搬送装置内における前記容器キャリアの位置を演算する演算部と、を備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送装置であって、
前記演算部は、演算した前記容器キャリアの位置情報を用いて、前記容器キャリアの駆動に必要な電流量及びその電流を供給するタイミングを決定することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に係り、例えば、血液や尿などの生体試料(以下、検体という)の分析を行う検体分析システムや分析に必要な前処理を行う検体前処理装置に好適な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液、血漿、血清及び尿やその他の体液等の生体試料の分析を行う検体分析システムにおいては、それぞれの検体について、指示された分析項目を検査するため、複数の機能を有する装置を接続して自動的に各工程を処理している。言い換えると、検体分析システムでは、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部を搬送ラインで接続し、一括して複数の分析がなされている。
【0003】
搬送ラインの搬送方式には、ベルトコンベヤによる方式と電磁吸引力を推力に利用する方式とがある。
【0004】
上記電磁吸引力を推力に利用する方式は、検体を保持するホルダ等の容器キャリアに永久磁石を設け、移送面に設けられた磁気回路の巻線に電流を供給することにより発生する電磁吸引力を、容器キャリアの推力として利用している。
【0005】
更に、特許文献1や特許文献2に記載されているホールICなどのセンサを用いず、永久磁石の磁束による磁気回路の磁気飽和現象を活用した容器キャリアの位置検出方式が検討されている。
【0006】
上記した特許文献1においては、磁気回路の巻線単体にのみ電流を流すことで、磁気飽和によるインダクタンス変化を起こし位置を検出していることが記載されている。
【0007】
一方、上記した特許文献2においては、搬送経路を逸脱して停止した容器キャリアに対し、ある1つのコイルに、容器キャリアに内蔵された磁石に対し吸引力が発生するよう電圧パルスを印加し、吸引力を発生させたコイルの周辺の複数コイルに、磁石に対し反発力を発生させるよう無差別に電圧パルスを印加し、容器キャリアの位置検出を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/137182号
【特許文献2】特開2021-58052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1では、磁気回路の巻線単体にのみ電流を流すことで、磁気飽和によるインダクタンス変化を起こし容器キャリアの位置を検出しているが、磁気飽和させるために電流を増やすと、巻線の熱損失が増加する課題があった。
【0010】
一方、特許文献2では、容器キャリアが搬送されている状況で容器キャリアを吸引するコイルの周辺のコイルを無差別に励磁した場合、多数のコイルを励磁することで過剰にコイルの熱損失が増加するという課題があり、また、容器キャリアに本来の搬送方向以外の方向の力が作用し、容器キャリアが搬送経路から逸脱する課題がある。
【0011】
つまり、容器キャリアの搬送時に、所定の停止位置への停止や容器キャリアに積載されている検体の液揺れ、或いは容器キャリア同士の衝突を避けるための速度の制御を行うためには、正確に容器キャリアの位置を検出する必要があると共に、磁気飽和現象を活用するための電流はある程度大きいことが望ましいが、電流の増加は巻線抵抗による熱損失の増加に繋がってしまう。
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、容器キャリアの駆動中において、巻線抵抗による熱損失の増加を抑制しつつ容器キャリアの位置検出の感度を向上させることができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の搬送装置は、上記目的を達成するために、被搬送物側に設けられた磁石と、強磁性体からなるティース及び前記ティースの外側に巻かれた巻線からなる磁極と、隣接されて配置された複数の前記磁極を結合する強磁性体からなる磁気回路を形成するヨークと、前記磁極の前記巻線に電流を供給する駆動回路とを備え、前記駆動回路により印加される電圧により前記磁極に磁界を発生させ、前記磁界により前記磁石に推力が生じて前記被搬送物を水平方向に搬送する搬送装置であって、
前記磁極は、前記被搬送物の搬送方向に力を作用させるように前記巻線に電流を供給された第1の磁極と、該第1の磁極に所定間隔をもって隣接配置された少なくとも1つの隣接磁極とから成り、前記隣接磁極の少なくとも1つの磁極の巻線に前記第1の磁極の巻線と同時に電流を供給し、少なくとも1つの前記隣接磁極で生成された磁束によって前記第1の磁極の磁気飽和レベルを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器キャリアの駆動中において、巻線抵抗による熱損失の増加を抑制しつつ容器キャリアの位置検出の感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の搬送装置の実施例1の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の搬送装置の実施例1における複数の電磁石の配置構成の一例を示す図である(比較例(従来技術)も同一構成)。
【
図3】比較例(従来技術)における搬送装置に磁気回路を記載した概略構成図である。
【
図4】本発明の搬送装置の実施例1に磁気回路を記載した概略構成図である。
【
図5】本発明の搬送装置の実施例1と比較例(従来技術)の搬送装置における電流と磁束量の関係を表す特性図である。
【
図6】本発明の搬送装置の実施例1と比較例(従来技術)の搬送装置との巻線抵抗による熱損失を比較した図である。
【
図7】本発明の搬送装置の実施例1における容器キャリアと電磁石との距離に対するインダクタンスの関係を示す図である。
【
図8】本発明の搬送装置の実施例2に磁気回路を記載した概略構成図である。
【
図9】本発明の搬送装置の実施例3に磁気回路を記載した概略構成図である。
【
図10】本発明の搬送装置の実施例3の場合と電磁石のみに電流を流した場合における電流と磁束量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の搬送装置を説明する。なお、以下に説明する各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。また、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、形状、配置、その他の構成を変更しても、本発明の所望の作用効果が得られればよい。
【実施例0017】
図1に、本発明の搬送装置の実施例1の概略構成を示す。
【0018】
図1に示すように、本実施例の搬送装置1は、磁極を形成する第1の電磁石25aと、この第1の電磁石25aに所定間隔をもって隣接配置された隣接磁極である第2の電磁石25bと、第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bと、第1の電流検出部40a及び第1の電流検出部40bと、演算部41と、電源55と、から概略構成されている。
【0019】
第1の電磁石25aは、磁性体で形成された第1のティース22aと、この第1のティース22aの外周部に巻かれた第1の巻線21aと、から構成されている。同様に、第2の電磁石25bは、第2のティース22bと、この第2のティース22bの外周部に巻かれた第2の巻線21bと、から構成されている。なお、第1のティース22a及び第2のティース22bは、本実施例では円柱状であるが、これに限定されるものではなく、例えば角柱状でもよい。
【0020】
また、第1の電磁石25a及び第2の電磁石25bの上面部には、被搬送物(被搬送体)である容器キャリア110が水平方向に移動可能に載置されており、容器キャリア110と第1の電磁石25a又は第2の電磁石25bの間には図示していない搬送面があり、容器キャリア110は、この搬送面上を水平方向に摺動する。
【0021】
また、容器キャリア110には、磁石を形成する図示していない永久磁石が内蔵されている。容器キャリア110の永久磁石としては、ネオジム合金やフェライト等が好適に用いられる。なお、場合によっては、永久磁石の代わりに軟磁性体等を用いても構わない。
【0022】
更に、容器キャリア110の例としては、液体の検体を入れた試験管、試料セル等の検体容器を1本ずつ保持する検体ホルダ、或いは検体容器を複数本保持する検体ラックがある。
【0023】
また、第1の電磁石25a及び第2の電磁石25bの第1の巻線21a及び第2の巻線21bは、それぞれ第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bに接続されている。第1の電磁石25a及び第2の電磁石25bは、それぞれ第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bにより印加される電圧により磁界を発生させる。この磁界は、第1のティース22a及び第2のティース22bの上端部から上方に生じる。これら第1のティース22a及び第2のティース22bの上端部から上方に生じる磁界により、容器キャリア110に内蔵されている永久磁石に推力が生じる。
【0024】
また、第1の電流検出部40a及び第2の電流検出部40bは、それぞれ第1の電磁石25a及び第2の電磁石25bの第1の巻線21a及び第2の巻線21bに流れる第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bからの電流を検出し、それらの第1の電流検出部40a及び第2の電流検出部40bで検出された電流値を、演算部41に送る機能を有する。演算部41では、第1の電流検出部40a及び第2の電流検出部40bで検出された電流値等を用いて、容器キャリア110を移動させる制御信号を、第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bに出力する。これにより、容器キャリア110を、所望の位置に搬送することができる。
【0025】
なお、第1の電流検出部40a及び第2の電流検出部40bは、直列抵抗の電圧を測定するもの、カレントトランスによるもの、或いはホール電流センサを用いたものなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、演算部41は、第1の電流検出部40a及び第2の電流検出部40bにより検出された電流値等を基に、第1のティース22a及び第2のティース22bと容器キャリア110との相対的な位置関係を演算し、搬送装置1内における容器キャリア110の位置を演算する。即ち、容器キャリア110が、現在、搬送装置1のどこの位置にいるべきかを演算するものである。また、演算部41は、演算した容器キャリア110の位置情報を用いて、容器キャリア110の駆動に必要な電流量及びその電流を供給するタイミングを決定する。
【0027】
また、第1の駆動回路50a及び第2の駆動回路50bには、電源55が接続されており、この電源55は、交流であっても直流であってもよい。直流の場合は、電池を用いてもよい。
【0028】
図2に、本実施例の搬送装置1における第1の電磁石25aと、この第1の電磁石25aに対して容器キャリア110の進行方向側に配置された隣接磁極である第2の電磁石25b及び第5の電磁石25eと、第1の電磁石25aに対して容器キャリア110の法線方向側に隣接して配置された隣接磁極である第3の電磁石25c及び第4の電磁石25dの配置構成の一例を示す(後述する比較例(従来技術)における電磁石の配置構成も同一の配置構成である)。なお、
図2では、ヨークは図示を省略している。
【0029】
図3は、比較例(従来技術)における搬送装置に磁気回路を記載した概略構成図であり、
図4は、実施例1における搬送装置1に磁気回路を記載した概略構成図である。なお、第1の電磁石25a、第2の電磁石25b、第3の電磁石25c、第4の電磁石25d及び第5の電磁石25eは、ピッチAの間隔で隣接している。
【0030】
図3に示す比較例及び
図4に示す実施例1では、第1の電磁石25aの直上を目標停止位置として、第3の電磁石25cの側から第1の電磁石25aに向かって容器キャリア110が搬送面65上を移動する。
【0031】
図5は、比較例(破線で示す)と実施例1(実線で示す)の搬送装置における電流と磁束量の関係を表す特性図であり、
図6は、比較例の搬送装置と実施例1の搬送装置1との巻線抵抗による熱損失を比較した図である。
【0032】
図3に示す比較例では、停止目標位置に存在する第1の電磁石25aにのみ電流を流している。このとき、第1の電磁石25aが作る磁界が作用し、容器キャリア110を
図3の左方向に駆動させる。容器キャリア110が搬送面65上を移動することで、容器キャリア110に内蔵された永久磁石の磁束71が第1の電磁石25aに鎖交し、第1の電磁石25aが作る磁束70aと強め合うことで、第1の電磁石25a内が磁気飽和しインダクタンスが減少する。このインダクタンス変化を活用して容器キャリア110の位置を検出する(例えば、インダクタンスの変化の値で容器キャリア110の位置を特定する)。
【0033】
図3に示す比較例において、第1の電磁石25aに、
図5に示すように1p.u.の電流を流した場合、磁気飽和が不十分であるため第1の電磁石25a内の磁束量Φm+Φp(Φmは磁束70aの大きさ、Φpは永久磁石の磁束71の大きさ)は、電流と磁束の変化の割合が線形な箇所に位置する。
【0034】
これは、磁気飽和していないためにインダクタンスが変化しない箇所であり、従って、インダクタンスの変化を活用した位置検出が困難である。
【0035】
図3に示す比較例において、第1の電磁石25aに流す電流を2p.u.に増加すると、第1の電磁石25aの磁束量は2Φm+Φpで、磁気飽和によって電流と磁束の関係が非線形となりインダクタンスが変化する領域で動作する。従って、位置検出が容易になる。
【0036】
しかしながら、巻線抵抗による熱損失は電流の2乗と巻線の抵抗の積算であるので、
図6に示すように、電流が1p.u.の時の熱損失に対し、電流が2p.u.のときの熱損失は、4p.u.となり4倍となる。
【0037】
そこで、本実施例においては、
図2及び
図4に示す第1の電磁石25aに隣接し、第1の電磁石25aに対し容器キャリア110の搬送方向側に位置している第2の電磁石25bに、第1の電磁石25aと同時に電流を流している。第1の電磁石25aに隣接する電磁石には、第2の電磁石25bの他に第3の電磁石25cと第4の電磁石25d及び第5の電磁石25eがある。
【0038】
第3の電磁石25c又は第4の電磁石25dのいずれかに通電した場合、容器キャリア110に対し搬送方向の法線方向に電磁力が作用するため、容器キャリア110が搬送経路を逸脱(例えば、第3の電磁石25c及び第4の電磁石25dの方向に容器キャリア110が移動してしまう)し、異常搬送の要因となる。
【0039】
第1の電磁石25aに1p.u.の電流を流すとき、第2の電磁石25bに逆向きの大きさ1p.u.の電流を流す。第2の電磁石25bが作る磁束70bが、電磁石の台座を兼ねる磁気回路を形成するヨーク26を経由して第1の電磁石25aに鎖交し(
図4の第1の電磁石25aを流れる磁束を表す下向きの破線矢印参照)、第1の電磁石25aが作る磁束70a及び永久磁石の磁束71と強め合う。
【0040】
このときの第1の電磁石25a内の磁束量は、合計の電流1p.u.に対しΦm+Φp+Φa=2Φm+Φpである。この合計の点(
図5にPで示す)は、磁気飽和によって
図5における電流と磁束の関係が非線形でインダクタンスが変化する点である。従って、容器キャリア110の位置検出が容易になる。
【0041】
このときの巻線抵抗による熱損失は、第1の電磁石25aと第2の電磁石25bで各々1p.u.であるので合計で2p.u.である。従って、第1の電磁石25aのみに電流を流す比較例の場合から熱損失を半減できる。
【0042】
図7は、本発明の搬送装置1の実施例1における容器キャリア110と第1の電磁石25aとの距離に対するインダクタンスの関係を表したものであり、破線が隣接コイルへ電流を流さない場合、実線が隣接コイルに電流を流した場合である。
【0043】
図7に示すように、
図4の実施例1では、隣接コイルへ電流を流す場合は、インダクタンスは1p.u.からおよそ0.89p.u.に変化するが、隣接コイルに通電時には、インダクタンスは1p.u.からおよそ0.68p.u.に変化しており、容器キャリア110の位置に対するインダクタンスの変化量が増加し、容器キャリア110の位置検出の感度が向上していることが分かる。
【0044】
以上から、容器キャリア110の位置検出を行う第1の電磁石25aの磁束量を、容器キャリア110の進行方向側に隣接する第2の電磁石25bを用いて制御(第2の電磁石25bに流す電流を大きくしたり、小さくしたりして制御)することで、容器キャリア110を搬送経路から逸脱させることなく、熱損失を抑制しながら位置検出感度を高めることが可能である。
【0045】
更に、第2の電磁石25bに第1の電磁石25aと逆向きの電流が流れるため、容器キャリア110に内蔵されている永久磁石に対し反発力を発生させる磁界が発生するので、この磁界が、容器キャリア110が停止目標位置である第1の電磁石25a上を通過することを抑制するブレーキ力として作用する。
【0046】
このような本実施例によれば、容器キャリア110の駆動中において、巻線抵抗による熱損失の増加を抑制しつつ、磁気飽和現象を用いたセンサレス位置検出方式における容器キャリア110の位置検出の感度を向上させることができる。
これにより、第3の電磁石25c及び第4の電磁石25dが作る磁界が容器キャリア110に作用し、容器キャリア110の搬送方向に対して法線方向に電磁力が作用するが、第3の電磁石25cと第4の電磁石25dに同じ電流を流すことで、容器キャリア110の搬送方向の法線方向に作用する電磁力が等しい大きさとなり相殺される。
従って、容器キャリア110の搬送方向の法線方向に作用する電磁力の大きさは、見かけ上0となるため、容器キャリア110が搬送経路を逸脱することなく、位置検出の感度を高めることが可能である。
以上のことから、容器キャリア110の位置検出を行う第1の電磁石25aに対し、容器キャリア110の搬送方向の法線方向に隣接する第3の電磁石25cと第4の電磁石25dの双方に電流を流すことで、容器キャリア110を搬送経路から逸脱させることなく、熱損失を抑制しながら容器キャリア110の位置検出の感度を高めることが可能である。