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特開2023-17309座標測定装置用点検ゲージ及び異常判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017309
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】座標測定装置用点検ゲージ及び異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
G01B5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121497
(22)【出願日】2021-07-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 先端ソリューションDays in UTSUNOMIYAにて公開した。(開催日:令和2年11月18日から令和2年11月20日)
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】清谷 進吾
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062BB09
2F062CC22
2F062CC23
2F062DD23
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF02
2F062GG17
2F062HH01
2F062MM02
(57)【要約】
【課題】点検ゲージを用いた座標測定装置の点検の精度を向上させることができる。
【解決手段】点検ゲージ20は、三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材21と、複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体23と、を備え、複数の支持部材21のうち少なくとも3本の支持部材21の形状が、互いに異なる形状である。
【選択図】図3



【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、
一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が前記三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材と、
複数の前記支持部材における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体と、
を備え、
前記複数の支持部材のうち少なくとも3本の支持部材の形状が、互いに異なる形状である、
座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項2】
前記複数の支持部材のうち、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の支持部材が他の複数の前記支持部材と異なる形状である、
請求項1に記載の座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項3】
前記複数の支持部材は、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の鉛直支持部材と、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で水平方向になる3本の水平支持部材とにより構成されており、
前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材が、他の2本の水平支持部材と異なる形状である、
請求項1又は2に記載の座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項4】
前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における前記鉛直支持部材の側の面に、前記他の2本の水平支持部材と異なる形状の凸部又は凹部が形成されている、
請求項3に記載の座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項5】
前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における前記他の2本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状が、前記他の2本の水平支持部材における前記1本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状と異なっている、
請求項3又は4に記載の座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項6】
前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合され、他端に前記球体が設けられた複数の棒状部材を備え、
前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項7】
三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、
一端が三角錐の頂点に対応する位置になるように設けられた複数の支持部材と、
前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合された複数の棒状部材と、
前記複数の棒状部材の他端に設けられた複数の球体と、
を備え、
前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一である、
座標測定装置用点検ゲージ。
【請求項8】
三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が前記三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材と、複数の前記支持部材における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の支持部材のうち少なくとも3本の支持部材の形状が、互いに異なる形状である座標測定装置用点検ゲージを座標測定装置に載置する載置ステップと、
前記座標測定装置を用いて、前記座標測定装置用点検ゲージの複数の球体の間の距離である被測定距離を測定する距離測定ステップと、
前記被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、前記座標測定装置の異常の有無を判定する異常判定ステップと、
を有する異常判定方法。
【請求項9】
前記座標測定装置用点検ゲージにおける前記複数の支持部材は、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の鉛直支持部材と、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で水平方向になる3本の水平支持部材とにより構成されており、前記3本の水平支持部材のうち1本の基準水平支持部材における他の2本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状が、前記他の2本の水平支持部材における前記基準水平支持部材と結合していない側の先端の形状と異なっており、
前記座標測定装置には、前記基準水平支持部材の先端の形状に対応する形状の位置決め部材が設けられており、
前記距離測定ステップの前に実行される、前記複数の球体の少なくともいずれかの位置を測定する位置測定ステップと、
前記位置測定ステップと前記距離測定ステップとの間に実行される、前記複数の球体の少なくともいずれかの位置が、前記基準水平支持部材が前記位置決め部材に接触している状態における位置であるか否かを判定する位置判定ステップと、
を有し、
前記位置判定ステップにおいて、前記基準水平支持部材が前記位置決め部材に接触している状態における位置であると判定したことを条件として、前記異常判定ステップを実行する、
請求項8に記載の異常判定方法。
【請求項10】
三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置になるように設けられた複数の支持部材と、前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合された複数の棒状部材と、前記複数の棒状部材の他端に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一である座標測定装置用点検ゲージを座標測定装置に載置する載置ステップと、
前記座標測定装置のプローブの向きが前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きと同一の状態で、前記プローブを用いて、前記座標測定装置用点検ゲージの複数の球体の間の距離である被測定距離を測定する距離測定ステップと、
前記被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、前記座標測定装置の異常の有無を判定する異常判定ステップと、
を有する異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標測定装置用点検ゲージ及び異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座標測定装置用の点検ゲージとして、三角錐の頂点に対応する位置に設けられた球体を三角錐の辺に対応する位置に設けられた棒状部材で接続した点検ゲージが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19720883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の点検ゲージを用いて座標測定装置を点検する際には、点検ゲージが有する三角錐の頂点に対応する4つの球体の位置を測定する。点検ゲージにおける4つの球体の判別が困難である場合、座標測定装置の点検のたびに異なる向きに座標測定装置に載置されてしまう。点検ゲージにおける4つの球体の位置は、点検ゲージを構成する部材の公差又は部材の組み立てのばらつきにより、それぞれ異なるため、点検ゲージを異なる向きに載置することにより測定結果が変化する。このように、従来の点検ゲージを用いる場合、座標測定装置の点検時に複数の球体を一定の条件で測定することが困難であったため、点検の精度が低いという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、点検ゲージを用いた座標測定装置の点検の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る座標測定装置用点検ゲージは、三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が前記三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材と、複数の前記支持部材における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の支持部材のうち少なくとも3本の支持部材の形状が、互いに異なる形状である。
【0007】
前記複数の支持部材のうち、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の支持部材が他の複数の前記支持部材と異なる形状であってもよい。
【0008】
前記複数の支持部材は、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の鉛直支持部材と、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で水平方向になる3本の水平支持部材とにより構成されており、前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材が、他の2本の水平支持部材と異なる形状であってもよい。
【0009】
前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における前記鉛直支持部材の側の面に、前記他の2本の水平支持部材と異なる形状の凸部又は凹部が形成されていてもよい。
【0010】
前記3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における前記他の2本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状が、前記他の2本の水平支持部材における前記1本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状と異なっていてもよい。
【0011】
前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合され、他端に前記球体が設けられた複数の棒状部材を備え、前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一であってもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る座標測定装置用点検ゲージは、三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置になるように設けられた複数の支持部材と、前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合された複数の棒状部材と、前記複数の棒状部材の他端に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一である。
【0013】
本発明の第3の態様に係る異常判定方法は、三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が前記三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材と、複数の前記支持部材における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の支持部材のうち少なくとも3本の支持部材の形状が、互いに異なる形状である座標測定装置用点検ゲージを座標測定装置に載置する載置ステップと、前記座標測定装置を用いて、前記座標測定装置用点検ゲージの複数の球体の間の距離である被測定距離を測定する距離測定ステップと、前記被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、前記座標測定装置の異常の有無を判定する異常判定ステップと、を有する。
【0014】
前記座標測定装置用点検ゲージにおける前記複数の支持部材は、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で鉛直方向になる1本の鉛直支持部材と、前記座標測定装置用点検ゲージが使用される状態で水平方向になる3本の水平支持部材とにより構成されており、前記3本の水平支持部材のうち1本の基準水平支持部材における他の2本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状が、前記他の2本の水平支持部材における前記基準水平支持部材と結合していない側の先端の形状と異なっており、前記座標測定装置には、前記基準水平支持部材の先端の形状に対応する形状の位置決め部材が設けられており、前記距離測定ステップの前に実行される、前記複数の球体の少なくともいずれかの位置を測定する位置測定ステップと、前記位置測定ステップと前記距離測定ステップとの間に実行される、前記複数の球体の少なくともいずれかの位置が、前記基準水平支持部材が前記位置決め部材に接触している状態における位置であるか否かを判定する位置判定ステップと、を有し、前記位置判定ステップにおいて、前記基準水平支持部材が前記位置決め部材に接触している状態における位置であると判定したことを条件として、前記異常判定ステップを実行してもよい。
【0015】
本発明の第4の態様に係る異常判定方法は、三角錐形状の座標測定装置用点検ゲージであって、一端が三角錐の頂点に対応する位置になるように設けられた複数の支持部材と、前記複数の支持部材における前記三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合された複数の棒状部材と、前記複数の棒状部材の他端に設けられた複数の球体と、を備え、前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きが同一である座標測定装置用点検ゲージを座標測定装置に載置する載置ステップと、前記座標測定装置のプローブの向きが前記複数の棒状部材の前記一端から前記他端への向きと同一の状態で、前記プローブを用いて、前記座標測定装置用点検ゲージの複数の球体の間の距離である被測定距離を測定する距離測定ステップと、前記被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、前記座標測定装置の異常の有無を判定する異常判定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、点検ゲージを用いた座標測定装置の点検の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る三次元測定装置1の概要を説明するための図である。
図2】点検ゲージ20の一例を示す図である。
図3】点検ゲージ20の構成を示す図である。
図4】点検ゲージ20及び位置決め部材30が載置された状態を示すである。
図5】水平支持部材に形成された凸部又は凹部を説明するための図である。
図6】第1変形例に係る点検ゲージ20の構成を示す図である。
図7】第2変形例に係る点検ゲージ20の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[三次元測定装置1の概要]
図1は、本実施形態に係る三次元測定装置1の概要を説明するための図である。三次元測定装置1は本実施形態に係る座標測定装置の一例であり、当該座標測定装置は、例えば工作機械に測定プローブを取り付けることにより座標を測定する装置を含む。三次元測定装置1は、テーブル10、コラム11、サポータ12、ビーム13、Y軸方向駆動部14、スライダ15、Z軸スピンドル16、プローブ17及び制御ユニット18を備える。図1においては、三角錐形状の三次元測定装置用点検ゲージである点検ゲージ20、及び点検ゲージ20を所定の位置に載置させるための位置決め部材30がテーブル10に載置されている。三次元測定装置1のユーザは、三次元測定装置1を点検するために、三次元測定装置1に点検ゲージ20を測定させる。
【0019】
図2は、点検ゲージ20の一例を示す図である。点検ゲージ20は、複数の支持部材21(支持部材21a、支持部材21b、支持部材21c、支持部材21d)と、複数の棒状部材22(棒状部材22a、棒状部材22b、棒状部材22c、棒状部材22d)と、複数の球体23(球体23a、球体23b、球体23c、球体23d)と、ハンドル24と、を備える。
【0020】
複数の支持部材21は、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が三角錐の内側の領域で互いに結合されている。複数の棒状部材22は、複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合され、他端に球体23が設けられている。複数の棒状部材22は、一端から他端への向きが同一である。複数の球体23は、三次元測定装置1が座標を測定するためにプローブ17を接触させるための球体である。ハンドル24は、三次元測定装置1のユーザが点検ゲージ20を所定の位置に移動させるための把手である。
【0021】
図1に戻って、三次元測定装置1は、例えばプローブ17を移動させながら、プローブ17を被測定物である点検ゲージ20に接触させることにより、点検ゲージ20における複数の被測定位置の座標を測定する。複数の被測定位置は、複数の球体23における所定の位置であり、例えば球体23の中心位置又は球体23における点検ゲージ20の中心から最も遠い位置である。被測定位置として球体23の中心位置が用いられる場合、被測定位置は、プローブ17が球体の表面に接触した複数の位置の座標に基づいて測定される。
【0022】
具体的には、三次元測定装置1は、スライダ15をビーム13に沿ってX軸方向に移動させることによりプローブ17をX軸方向に移動させる。三次元測定装置1は、Y軸方向駆動部14がコラム11、サポータ12及びビーム13を含む門部を移動させることにより、プローブ17をY軸方向に移動させる。三次元測定装置1は、Z軸スピンドル16をスライダ15に対してZ軸方向に移動させることによりプローブ17をZ軸方向に移動させる。三次元測定装置1は、プローブ17をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させながら、複数の球体23それぞれにおいて複数の被測定位置の座標を測定する。
【0023】
制御ユニット18は通信部を有しており、例えば三次元測定装置1のユーザが使用しているコンピュータ等の情報端末と、イントラネット又はインターネット等のネットワークを介して接続されている。制御ユニット18とユーザが使用している情報端末とは、USB(Universal Serial Bus)のような通信線を介して接続されていてもよい。制御ユニット18は、例えば三次元測定装置1の異常の有無を示す異常判定情報を出力する。
【0024】
以下、点検ゲージ20を用いて三次元測定装置1を点検する方法について図1及び図2を用いて説明する。最初に、三次元測定装置1のユーザは、点検ゲージ20及び位置決め部材30をテーブル10の所定の位置に載置する。位置決め部材30は、例えばテーブル10において予め定められた位置に載置される。一例として、テーブル10における点検ゲージ20が載置される面には複数の凹部が設けられており、位置決め部材30には当該複数の凹部に挿入される複数の凸部を有していてもよい。ユーザは、テーブル10の複数の凹部に点検ゲージ20の複数の凸部を挿入することにより、点検するたびに同一の位置に位置決め部材30を載置することができる。
【0025】
点検ゲージ20は、位置決め部材30に所定の部位が接する状態で載置される。詳細については後述するが、点検ゲージ20が位置決め部材30に接する部位が異なると、球体23の位置が異なる状態になるように点検ゲージ20が構成されている。したがって、三次元測定装置1は、三次元測定装置1が球体23の位置を測定した結果が基準値から大きく乖離している場合に、点検ゲージ20が載置されている向きが間違っているということを検出することができる。
【0026】
三次元測定装置1は、複数の球体23の少なくともいずれかの位置を測定する。三次元測定装置1は、例えば球体23aの表面における複数の位置にプローブ17を接触させることにより、球体23aの中心位置を測定する。三次元測定装置1は、測定した球体23の位置に基づいて、点検ゲージ20が正しい向きで位置決め部材30に適切な位置で接触した状態で載置されたか否かを判定する。
【0027】
三次元測定装置1は、例えば測定した球体23aの中心位置が所定の範囲である場合、点検ゲージ20が正しい向きで適切な位置に載置されたと判定する。一方、球体23aの中心位置が所定の範囲を超えている場合、三次元測定装置1は、点検ゲージ20が正しい向きで適切な位置に載置されていないと判定する。三次元測定装置1は、判定結果を示す位置判定情報を、制御ユニット18が有する通信部から出力する。
【0028】
三次元測定装置1は、点検ゲージ20が正しい向きで適切な位置に載置されたと判定した場合、点検ゲージ20が有する複数の球体23の間の距離である被測定距離を測定する。三次元測定装置1は、例えば複数の球体23それぞれの中心位置を測定することにより、複数の球体23の間の距離を測定する。点検ゲージ20が正しい向きで適切な位置に載置されていないと判定した場合、三次元測定装置1は、被測定距離を測定しない。
【0029】
三次元測定装置1は、測定した被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、三次元測定装置1の異常の有無を判定する。三次元測定装置1は、例えば被測定距離が適正範囲に含まれている場合、三次元測定装置1に異常がないと判定し、被測定距離が適正範囲に含まれていない場合、三次元測定装置1に異常があると判定する。三次元測定装置1は、異常の有無を示す異常判定情報を、制御ユニット18が有する通信部から出力する。
【0030】
このように、ユーザは、例えば日常点検において同じ向きで同じ位置に点検ゲージ20を載置することができるため、測定条件を変えずに三次元測定装置1を点検できる。さらに、図2に示すように、点検ゲージ20においては、複数の球体23のそれぞれが棒状部材22の上方に結合されている。したがって、三次元測定装置1は、位置を測定する対象の球体23によってプローブ17の向きを変える必要がなく、プローブ17の向きを変化させることに起因する誤差も生じない。その結果、ユーザは、点検ゲージ20を用いることにより、三次元測定装置1を点検する精度を向上させることができる。
【0031】
[点検ゲージ20の構成]
図3は、点検ゲージ20の構成を示す図である。図3(a)は、点検ゲージ20を側方から見た図である。図3(b)は、点検ゲージ20を上から見た図である。図3に示すように、複数の支持部材21は、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が三角錐の内側の領域で互いに結合する。複数の支持部材21それぞれにおける三角錐の頂点に対応する一端は、他の支持部材21における三角錐の頂点に対応する一端と異なる位置に設けられている。
【0032】
複数の棒状部材22は、複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合され、他端に球体23が設けられている。図3に示すように、複数の棒状部材22の一端から他端への向きは同一である。すなわち、複数の球体23は、複数の支持部材21の上方に設けられている。複数の球体23がこのように棒状部材22に結合されていることで、三次元測定装置1は、プローブ17の向きが複数の棒状部材22の一端から他端への向きと同一の状態で、複数の球体23における複数の被測定位置を測定することができる。その結果、三次元測定装置1は、プローブ17の向きを変化させなくても点検ゲージ20を測定することができるので、プローブ17の向きを変化させることに起因する誤差の発生を防げる。
【0033】
続いて、支持部材21について詳細を説明する。複数の支持部材21は、例えば点検ゲージ20が使用される状態で鉛直方向になる1本の鉛直支持部材と、点検ゲージ20が使用される状態で水平方向になる3本の水平支持部材とにより構成されている。鉛直支持部材は、例えば図3(a)に示す支持部材21aであり、水平支持部材は、例えば図3(b)に示す支持部材21b、支持部材21c、及び支持部材21dである。
【0034】
点検ゲージ20においては、複数の支持部材21のうち少なくとも3本の支持部材21の形状が、互いに異なる形状である。図3においては、支持部材21aの形状と、支持部材21b又は支持部材21cの形状と、支持部材21dの形状とが互いに異なる。支持部材21bの形状と支持部材21cの形状とは同じ形状であってもよい。複数の支持部材21の形状がこのように異なることで、点検ゲージ20は、三次元測定装置1のユーザが点検ゲージ20を誤った位置又は誤った向きに載置することを防ぐことができる。
【0035】
点検ゲージ20においては、例えば複数の支持部材21のうち、点検ゲージ20が使用される状態で鉛直方向になる1本の支持部材21である鉛直支持部材が他の複数の支持部材21と異なる形状である。具体的には、図3に示すように、鉛直支持部材である支持部材21aは、他の複数の支持部材である支持部材21b、支持部材21c及び支持部材21dと異なる形状である。複数の支持部材21の形状がこのように異なることで、点検ゲージ20は、三次元測定装置1のユーザが点検ゲージ20を誤った向きに載置することを防ぐことができる。
【0036】
点検ゲージ20においては、例えば3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材が、他の2本の水平支持部材と異なる形状である。例えば、点検ゲージ20においては、図3(b)に示す支持部材21dにおける長手方向と直交する方向の幅が、支持部材21b及び支持部材21cにおける長手方向と直交する方向の幅と異なっていてもよい。
【0037】
点検ゲージ20においては、3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における他の2本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状が、他の2本の水平支持部材における1本の水平支持部材と結合していない側の先端の形状と異なっていてもよい。
【0038】
具体的には、図3(b)に示す支持部材21dにおける他の複数の支持部材21と結合していない側の先端には、支持部材21dの長手方向と直交する方向の平坦面が形成されている。これに対して、支持部材21b及び支持部材21cにおける他の複数の支持部材21と結合していない側の先端には、支持部材21b及び支持部材21cの長手方向において突出した部位が形成されている。このように複数の水平支持部材のうち、1本の支持部材21dの先端の形状が他の水平支持部材の先端の形状と異なっていることにより、ユーザが、複数の支持部材21を判別することができる。
【0039】
また、三次元測定装置1には、位置決め部材30と接触する基準水平支持部材である支持部材21b及び支持部材21cの先端の形状に対応する形状の位置決め部材30が設けられてもよい。この場合、三次元測定装置1は、複数の球体23の少なくともいずれかの位置を測定し、測定した位置が、基準水平支持部材が位置決め部材30に適切に接触している状態における位置であるか否かを判定する。三次元測定装置1は、基準水平支持部材が位置決め部材30に接触している状態における位置であると判定したことを条件として、三次元測定装置1の異常の有無を判定する。
【0040】
図4は、点検ゲージ20が位置決め部材30に接触した状態を示す図である。図4は、テーブル10に載置された点検ゲージ20及び位置決め部材30を上から見た図である。図4(a)は、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触した状態を示す。図4(b)は、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触していない状態の一例を示す。距離D1及び距離D2は、位置決め部材30の長手方向と直交する方向における、球体23aの中心位置と位置決め部材30との距離である。
【0041】
図4(a)は、支持部材21b及び支持部材21cが位置決め部材30の所定の位置と適切に接触した状態を示す。図4(a)に示すように、支持部材21bにおいては、支持部材21bの長手方向における突出した部位を形成する複数の面のうち2つの面が位置決め部材30における直角の角の面と適切に接触している。支持部材21cにおいては、支持部材21cの長手方向における突出した部位を形成する複数の面のうち1つの面が位置決め部材30と適切に接触している。
【0042】
このように、三次元測定装置1のユーザが、基準水平支持部材である支持部材21b及び支持部材21cを位置決め部材30と接するように載置することで、点検ゲージ20は位置決め部材30と適切に接触する。点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触することで、三次元測定装置1のユーザは、点検のたびに点検ゲージ20を同一の位置に載置することができる。
【0043】
一方、図4(b)は、支持部材21b及び支持部材21cが位置決め部材30の所定の位置と適切に接触していない状態の一例を示す。図4(b)に示すように、支持部材21bにおいては、支持部材21bの長手方向における突出した部位を形成する2つの面のうち、いずれの面も位置決め部材30と接触していない。さらに、図4(b)においては、基準水平支持部材である支持部材21bと基準水平支持部材ではない支持部材21dとが位置決め部材30と接しており、基準水平支持部材である支持部材21cが位置決め部材30と接していない。
【0044】
これに対して、点検ゲージ20が備える基準水平支持部材の先端の形状は、位置決め部材30の形状に対応している。したがって、三次元測定装置1のユーザは、支持部材21の先端の形状と位置決め部材30の形状とが異なることにより、点検ゲージ20が適切に接触していないことを容易に判別できる。その結果、三次元測定装置1のユーザは、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触するように、点検ゲージ20を載置しなおすことができる。
【0045】
三次元測定装置1は、点検ゲージ20を測定することにより、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触しているか否かを判定してもよい。三次元測定装置1は、例えばプローブ17を移動させることにより、複数の球体23の少なくともいずれかの位置を測定し、測定した位置に基づいて点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触しているか否かを判定する。
【0046】
三次元測定装置1は、例えば球体23aの中心位置の座標を測定する。三次元測定装置1は、測定した球体23aの座標が所定の範囲内に入っている場合、点検ゲージ20が位置決め部材30に適切に接触している状態であると判定する。一方、測定した球体23aの座標が所定の範囲内に入っていない場合、三次元測定装置1は、点検ゲージ20が位置決め部材30に適切に接触していない状態であると判定する。所定の範囲は、点検ゲージ20が正しい向きで適切な位置に載置された場合における球体23aの位置として予め測定又は算出された位置に基づいて定められている。
【0047】
三次元測定装置1がこのように動作することで、三次元測定装置1は、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触しているか否かをユーザに通知することができる。その結果、三次元測定装置1のユーザは、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触していない場合は、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触するように載置し直すことができる。三次元測定装置1は、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触していない状態で点検ゲージ20を測定することを防げる。
【0048】
三次元測定装置1は、位置決め部材30の長手方向と直交する方向における、球体23の中心位置と位置決め部材30との距離に基づいて、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触している状態であるか否かを判定してもよい。三次元測定装置1は、例えば測定した距離が図4(a)に示す距離D1である場合、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触している状態であると判定する。一方、測定した距離が図4(b)に示す距離D2である場合、点検ゲージ20が位置決め部材30と適切に接触していない状態であると判定する。
【0049】
点検ゲージ20においては、3本の水平支持部材のうち1本の水平支持部材における鉛直支持部材の側の面に、他の2本の水平支持部材と異なる形状の凸部又は凹部が形成されていてもよい。図5は、水平支持部材に形成された凸部又は凹部を説明するための図である。図5に示す点検ゲージ20は、複数の凹部25(凹部25b、凹部25c)及び凸部26を有する点で図3に示す点検ゲージ20と異なり、他の点において同じである。
【0050】
三次元測定装置1は、例えば球体23bの中心位置におけるZ軸方向の座標と凹部25bの下面におけるZ軸方向の座標との差である距離H1を測定する。三次元測定装置1は、測定した距離H1に基づいて、支持部材21bが位置決め部材30と接触する基準水平支持部材であると判定する。三次元測定装置1は、例えば球体23dの中心位置におけるZ軸方向の座標と凸部26の上面におけるZ軸方向の座標との差である距離H2を測定する。三次元測定装置1は、測定した距離H2に基づいて、支持部材21dが位置決め部材30と接触しない支持部材であると判定する。
【0051】
点検ゲージ20がこのような構成を有することで、三次元測定装置1は、複数の球体23と複数の凹部25と凸部26におけるZ軸方向の座標を測定することにより、点検ゲージ20が位置決め部材30と接触した状態における位置であるか否かを判定できる。なお、点検ゲージ20においては、複数の凹部25を複数の凸部に置き換えるとともに、凸部26を凹部に置き換えた構成であってもよい。
【0052】
[第1変形例]
以上の説明においては、点検ゲージ20における複数の球体23が複数の棒状部材22に結合されている場合を例示したが、これに限らない。図6は、第1変形例に係る点検ゲージ20の構成を示す図である。図6に示す点検ゲージ20は、複数の球体23が複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に設けられている点で図3に示す点検ゲージ20と異なり、他の点において同じである。点検ゲージ20がこのような構成を有することで、点検ゲージ20は、複数の棒状部材22を必要としない。その結果、点検ゲージ20を構成する部材の数を少なくすることができる。
【0053】
[第2変形例]
以上の説明においては、点検ゲージ20において複数の支持部材21のうち少なくとも3本の支持部材21の形状が、互い異なる形状である場合を例示したが、これに限らない。図7は、第2変形例に係る点検ゲージ20の構成を示す図である。図7に示す点検ゲージ20は、複数の支持部材21(支持部材21a、支持部材21b、支持部材21c、支持部材21d、支持部材21e、支持部材21f)と、複数の棒状部材22(棒状部材22a、棒状部材22b、棒状部材22c、棒状部材22d)と、複数の球体(球体23a、球体23b、球体23c、球体23d)と、を有する。
【0054】
複数の支持部材21は、一端が三角錐の頂点に対応する位置になるように設けられている。複数の棒状部材22は、複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に一端が結合されており、他端に球体23が設けられている。複数の棒状部材22の一端から他端への向きは同一である。
【0055】
三次元測定装置1は、プローブ17の向きが複数の棒状部材22の一端から他端への向きと同一の状態で、プローブ17を用いて、点検ゲージ20の複数の球体の間の距離である被測定距離を測定する。三次元測定装置1は、被測定距離が適正であると判定される適正範囲に含まれているか否かに基づいて、三次元測定装置1の異常の有無を判定する。
【0056】
点検ゲージ20がこのような構成を有することで、三次元測定装置1は、プローブ17の向きを変化させなくても複数の球体23が有する複数の被測定位置を測定することができる。さらに、三次元測定装置1のユーザは、点検ゲージ20を適切な位置及び適切な向きに載置しやすくなる。その結果、三次元測定装置1は、点検ゲージ20を測定する精度が向上する。
【0057】
[第3変形例]
以上の説明においては、球体23が支持部材21の一端又は棒状部材22の一端の上方に結合されている場合を例示したが、これに限らない。球体23が支持部材21又は棒状部材22と結合される向きは任意である。球体23は、例えば支持部材21又は棒状部材22の側面、又は下面に結合されていてもよい。
【0058】
[点検ゲージ20による効果]
以上説明したように、点検ゲージ20は、一端が三角錐の頂点に対応する位置に設けられており、他端が三角錐の内側の領域で互いに結合する複数の支持部材21と、複数の支持部材21における三角錐の頂点に対応する位置に設けられた複数の球体23と、を備える。そして、複数の支持部材21のうち少なくとも3本の支持部材21の形状が、互いに異なる形状である。
【0059】
点検ゲージ20がこのような構成を有することで、三次元測定装置1のユーザは、点検ゲージ20をテーブル10における適切な位置に載置しやすくなる。そして、三次元測定装置1は、プローブ17の向きを変化させなくても複数の球体23が有する複数の被測定位置を測定することができる。その結果、三次元測定装置1が点検ゲージ20を測定する精度を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
1 三次元測定装置
10 テーブル
11 コラム
12 サポータ
13 ビーム
14 Y軸方向駆動部
15 スライダ
16 Z軸スピンドル
17 プローブ
18 制御ユニット
20 点検ゲージ
21 支持部材
22 棒状部材
23 球体
24 ハンドル
25 凹部
26 凸部
30 位置決め部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7