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特開2023-173100シール構造、チャンバ、基板処理装置及びシール材の取り付け方法
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  • 特開-シール構造、チャンバ、基板処理装置及びシール材の取り付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173100
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】シール構造、チャンバ、基板処理装置及びシール材の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 C
F16J15/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085102
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】廣木 勤
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA12
3J040BA02
3J040EA16
3J040HA03
3J040HA04
3J040HA05
3J040HA21
(57)【要約】
【課題】溝内にシール材を捻じれなく固定する。
【解決手段】シール材より幅が大きく形成された溝と、前記溝内における溝幅方向一方側の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設され、溝幅方向他方側に向けて延び前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成すると共に前記シール材を前記溝内に押さえる庇部を有する押さえ部材と、前記押さえ部材を固定する固定機構と、を有する、シール構造である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材より幅が大きく形成された溝と、
前記溝内における溝幅方向一方側の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設され、溝幅方向他方側に向けて延び前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成すると共に前記シール材を前記溝内に押さえる庇部を有する押さえ部材と、
前記押さえ部材を固定する固定機構と、を有する、シール構造。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記押さえ部材から前記溝幅方向一方側へ突出長さを調整可能に突出する突っ張り部と、
前記溝の底部から突出する凸部と、を有し、
前記突っ張り部により前記押さえ部材を前記凸部に押し付けて固定する、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記突っ張り部は、前記押さえ部材の前記溝幅方向一方側の面に形成されたネジ穴に螺合するネジである、請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記突っ張り部は、弾性を有する弾性部材である、請求項2に記載のシール構造。
【請求項5】
前記固定機構は、
前記押さえ部材を溝深さ方向に貫通し、前記溝の底面に形成されたネジ穴に螺合するネジを有し、
前記ネジにより前記押さえ部材を固定する、請求項1に記載のシール構造。
【請求項6】
前記押さえ部材は、溝幅方向の両側それぞれに配設される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項7】
前記押さえ部材は、前記溝幅方向の片側にのみ配設される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項8】
前記押さえ部材は、前記溝幅方向一方側寄りに位置するときに、前記庇部によって、前記シール材より幅が大きい前記スリットを形成し、前記溝幅方向他方側寄りに位置するときに、前記庇部によって、前記シール材より幅が小さい前記スリットを形成すると共に前記シール材を押さえる、請求項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項9】
前記溝は、セラミック製の部材に形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシール構造を有し、減圧可能に構成され、基板処理の処理対象の基板を収容する、チャンバ。
【請求項11】
請求項10に記載のチャンバを備える、基板処理装置。
【請求項12】
シール材より幅が大きく形成された溝内における溝幅方向一方側の領域に、溝幅方向他方側に受けて延びる庇部を有する押さえ部材を配設し、前記庇部によって、前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成する工程と、
前記溝内に前記シール材を収容する工程と、
前記スリットの幅を前記シール材の幅より小さくする工程と、
前記押さえ部材を固定する工程と、を含む、シール材の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール構造、チャンバ、基板処理装置及びシール材の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板処理装置の内部の処理領域と外部の外部領域との間のシール構造として、下チャンバと上チャンバとの間のシール構造が開示されている。このシール構造では、下チャンバのシール面にアリ溝が形成され、アリ溝にOリング等のシール部材が嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-196053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、溝内にシール材を捻じれなく固定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、シール材より幅が大きく形成された溝と、前記溝内における溝幅方向一方側の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設され、溝幅方向他方側に向けて延び前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成すると共に前記シール材を前記溝内に押さえる庇部を有する押さえ部材と、前記押さえ部材を固定する固定機構と、を有する、シール構造である。
【発明の効果】
【0006】
本開示にかかる技術によれば、溝内にシール材を捻じれなく固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる基板処理装置としての成膜装置の構成の概略を模式的に示す説明図であり、成膜装置の一部を断面で示している。
図2】チャンバ本体の上面図である。
図3】チャンバ本体の部分拡大斜視断面図である。
図4】非固定溝の断面図である。
図5】固定溝の断面図である。
図6】チャンバ本体の部分拡大斜視図である。
図7】固定機構の説明図である。
図8】シール構造の他の例を示す図である。
図9】突っ張り部の他の例を示す図である。
図10】押さえ部材の固定機構の他の例を示す図である。
図11】押さえ部材の固定機構の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板に対して、所定の膜を形成する成膜処理等の各種基板処理が行われる。この基板処理は、基板処理装置で行われ、具体的には、基板処理装置の減圧されたチャンバ内に基板を収容した状態で行われる。
【0009】
また、基板処理装置は、その内部の減圧雰囲気と外部の雰囲気とを遮蔽するシール構造を有する。このシール構造では、基板処理装置を形成する2つの部材間に設けられたOリング等のシール材により、内部減圧雰囲気と外部雰囲気とを遮蔽する。シール材は、上記2つの部材の一方のシール面に設けられた溝内に固定される。また、溝内にシール材を固定するために、アリ溝が採用されることがある。しかし、アリ溝の場合、当該アリ溝にシール材を押し込んで収容する必要があるため、溝内へシール材を収容する際に当該シール材に捻じれが生じることがある。この捻じれは、シール材が溝内へ収容された後に解消されにくい。そして、捻じれた状態のままでは、シール材の寿命等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0010】
そこで、本開示にかかる技術は、溝内にシール材を捻じれなく固定する。
【0011】
以下、本実施形態にかかるシール構造、チャンバ、基板処理装置及びシール材の取り付け方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<成膜装置>
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としての成膜装置の構成の概略を模式的に示す説明図であり、成膜装置の一部を断面で示している。
【0013】
図1の成膜装置1は、基板としてのウェハWを成膜処理し、当該ウェハW上に例えば金属膜を形成するように構成されている。
【0014】
成膜装置1はチャンバ10を有する。
チャンバ10は、ウェハWが収容されるものであり、減圧可能に構成されている。このチャンバ10は、チャンバ本体10aと蓋部材10bと、を有する。
【0015】
チャンバ本体10aは、例えば、上部が開口した有底の筒状(具体的には角筒状)に形成されている。チャンバ本体10aの形成材料には例えばセラミックが用いられる。また、チャンバ本体10aは金型成形により形成される。チャンバ本体10aには、当該チャンバ本体10aを加熱する加熱機構(例えば抵抗加熱式のヒータや高温冷媒の流路)が設けられていてもよい。
【0016】
チャンバ本体10aの側壁11には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が設けられており、この搬入出口には、当該搬入出口を開閉するゲートバルブ(図示せず)が設けられている。
【0017】
チャンバ本体10aの底壁12には、排気口12aが形成されている。また、底壁12には、後述のベローズ33を収容する収容部20の上部の開口20aと排気口12aとが連通するように、当該収容部20が接続されている。収容部20は、上部と側部に開口20a、20bを有し、開口20aと開口20bが互いに連通している。これら開口20a、20bを介してチャンバ10内が排気されるように、収容部20の側部には、排気管21の一端が接続されている。排気管21の他端は、真空ポンプ等を有する排気機構22に接続されている。
【0018】
蓋部材10bは、チャンバ本体10aの上部開口を塞ぐ。蓋部材10bは、例えば平面視方形状に形成されている。蓋部材10bの形成材料には例えばセラミックが用いられる。また、チャンバ本体10aの水平方向一方端(図1の右側端)に、ヒンジ10cが設けられている。蓋部材10bは、ヒンジ10cに軸支されると共に、ヒンジ10cによりチャンバ本体10aの上部開口を開閉自在となっている。
【0019】
チャンバ本体10aと蓋部材10bとの間には、気密性を維持するため、シール材としてのOリング10dが設けられている。言い換えると、チャンバ10は、シール材としてのOリング10dを用いて当該チャンバ10内部の減圧雰囲気と当該チャンバ10外部の雰囲気とを遮蔽するシール構造Sを有する。シール構造Sのより具体的な構成については後述する。
【0020】
チャンバ10内には、ウェハWが水平に載置される平面視円形状の載置台30が設けられている。載置台30の内部には、ウェハWを加熱するためのヒータ(図示せず)が設けられている。載置台30の下面側中央部には、チャンバ本体10aの底壁12の排気口12aを通じて底壁12を貫通し、さらに、収容部20の底壁20cを貫通するように、上下方向に延在する支持部材31の上端部が接続されている。支持部材31の下端は、昇降機構32に接続されている。後述の制御部50に制御される昇降機構32の駆動によって、載置台30は、上方の第1の位置と下方の第2の位置との間を上下に移動することができる。
【0021】
上記第1の位置は、ウェハWに処理が行われる処理位置である。
上記第2の位置は、チャンバ10の前述の搬出入口(図示せず)からチャンバ10内に進入するウェハWの搬送機構(図示せず)と、チャンバ10内の下方に設けられた受け渡しピン(図示せず)との間で、ウェハWを受け渡している時に載置台30が待機する待機位置である。
【0022】
また、支持部材31には、フランジ31aが設けられている。そして、このフランジ31aの下面と、収容部20の底壁20cの上面との間には、支持部材31の外周を囲むように、ベローズ33が設けられている。このベローズ33が設けられているため、収容部20の底壁20cにおける支持部材31の貫通部分によってチャンバ10の気密性が失われることがない。
【0023】
また、載置台30に対向するように、チャンバ10の蓋部材10bには、処理ガスとしての成膜ガスの供給部13が設けられている。供給部13は、成膜ガスをチャンバ10内に供給する。供給部13が供給する成膜ガスは、例えば金属膜を成膜するための成膜ガスである。供給部13には、供給管40の一端が接続されている。供給管40の他端は、ガス供給源からの成膜ガスの流量を調整する流量調整弁(図示せず)等を有する供給機構41に接続されている。
【0024】
以上のように構成される成膜装置1には、図1に示すように、制御部50が設けられている。制御部50は、例えばCPU等のプロセッサやメモリを備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、成膜装置1におけるウェハ処理を実現するためのプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部50にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても、非一時的なものであってもよい。
【0025】
<シール構造S>
続いて、シール構造Sの構成例について説明する。図2は、チャンバ本体10aの上面図であり、後述の溝11a内にOリング10dが収容されているが後述の固定溝11c内に後述の押さえ部材100、110が配設されていない状態を示している。図3は、チャンバ本体10aの部分拡大斜視断面図であり、溝11a内にOリング10dが収容されておらず固定溝11c内に押さえ部材100、110が配設されていない状態を示している。図4は、後述の非固定溝11bの断面図である。図5は、固定溝11cの断面図である。図6は、チャンバ本体10aの部分拡大斜視図であり、溝11a内にOリング10dが収容され固定溝11c内に押さえ部材100、110が配設されている状態を示している。図7は、後述の固定機構120の説明図である。
【0026】
シール構造Sは、前述のように、Oリング10dを用いてチャンバ10内部の減圧雰囲気とチャンバ10外部の雰囲気とを遮蔽する。Oリング10dは、チャンバ本体10aの側壁11の上面と蓋部材10bの周縁部の下面という2つのシール面の間に配設されて用いられる。
【0027】
Oリング10dは、図2に示すように、例えばチャンバ本体10aの側壁11の上面に形成された溝11aに収容される。溝11aは、チャンバ10の形状に沿って形成され、例えば、平面視矩形環状に形成されている。
【0028】
また、溝11aは、図2及び図3に示すように非固定溝11bと固定溝11cとを有する。
【0029】
非固定溝11bは、その内部にOリング10dが収容される。ただし、非固定溝11bは、その内部でOリング10dは固定されない。非固定溝11bは、例えば、図4に示すように、底面が平坦であり側面が垂直な角溝である。
【0030】
また、非固定溝11bの開口の幅W1は、Oリング10dの幅(すなわち直径)より大きい。
さらに、非固定溝11bは、底面でOリング10dを支持する。非固定溝11bの深さD1は、Oリング10dの厚さ(すなわち直径)より所定量小さい。そのため、Oリング10dは、非固定溝11bの底面に支持された状態すなわち非固定溝11bに収容された状態で、非固定溝11bの開口を介して、チャンバ本体10aの側壁11の上面から所定量(例えば1mm)突出する。
【0031】
固定溝11cは、図5及び図6に示すように、その内部にOリング10dが収容されると共に固定される。固定溝11cは、例えば、底面の平坦な部分から側面が垂直に立ち上がるように形成された角溝状の溝である。
【0032】
固定溝11cの幅W2は、開口を含め、Oリング10dの幅(すなわち直径)より大きい。
【0033】
また、固定溝11cの底面における溝幅方向中央から凸部11dが突出している。凸部11dの頂面は平坦に形成され、固定溝11cの溝底面における凸部11d以外の部分すなわち溝幅方向外側の外側よりの領域も平坦に形成されている。
【0034】
固定溝11cでは、凸部11dの頂面でOリング10dを支持する。凸部11dの高さH1は、凸部11dの頂面で支持されたOリング10dがチャンバ本体10aの側壁11の上面から所定量突出する高さである。
【0035】
固定溝11c内には、Oリング10dの固定のため、押さえ部材100、110が配設される。押さえ部材100、110の形成材料は例えばステンレスである。また、押さえ部材100、110のうち、少なくとも真空雰囲気側の部材については、耐食性を高めるためのコーティングが行われてもよい。
【0036】
押さえ部材100は、固定溝11c内における溝幅方向一方側(図5の左側)の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設されている。また、押さえ部材100は庇部101を有する。庇部101は、溝幅方向他方側(図5の右側)に向けて延び、固定溝11cの内部と外部とを連通させるスリットSLを形成する。
【0037】
また、押さえ部材100の溝幅方向他方側(図5の右側)の面における、凸部11dより上側となる部分は、固定溝11cの開口側が溝幅方向他方側(図5の右側)に張り出して庇部101を形成するテーパー面となっている。
【0038】
さらに、押さえ部材100の下面は、固定溝11cの底面上を滑らかに摺動できるよう、平坦に形成されている。また、上記摺動時等に倒れないよう、押さえ部材100の下部は、テーパー面を有するため薄く形成された押さえ部材100の上部より、厚く形成されている。
また、押さえ部材100の高さは、当該押さえ部材100が固定溝11cの底面に支持された状態で、チャンバ本体10aの側壁11の上面から当該押さえ部材100が突出しない高さである。
【0039】
同様に、押さえ部材110は、固定溝11c内における溝幅方向一方側(図5の右側)の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設されている。また、押さえ部材110は庇部111を有する。庇部111は、溝幅方向他方側(図5の左側)に向けて延び、上記スリットSLを形成する。
【0040】
また、押さえ部材110の溝幅方向他方側(図5の左側)の面における、凸部11dより上側となる部分は、固定溝11cの開口側が溝幅方向他方側(図5の左側)に張り出して庇部111を形成するテーパー面となっている。
【0041】
さらに、押さえ部材110の下面は、固定溝11cの底面上を滑らかに摺動できるよう、平坦に形成されている。また、上記摺動時等に倒れないよう、押さえ部材110の下部は、テーパー面を有するため薄く形成された押さえ部材110の上部より、厚く形成されている。
また、押さえ部材110の高さは、当該押さえ部材110が固定溝11cの底面に支持された状態で、チャンバ本体10aの側壁11の上面から当該押さえ部材110が突出しない高さである。
【0042】
これら押さえ部材100、110の溝幅方向の位置を調整することで、庇部101、111により形成されるスリットSLの幅W3を調整することができる。
【0043】
また、庇部101、111は以下の条件(1)~(2)を満たすように形成される。
(1)押さえ部材100が溝幅方向一方側(図5の左側)寄りに位置し、押さえ部材110が溝幅方向一方側(図5の右側)寄りに位置するときに、庇部101、111によって形成されるスリットSLの幅はOリング10dの幅より大きい。
(2)押さえ部材100が溝幅方向他方側(図5の右側)寄りに位置し、押さえ部材110が溝幅方向他方側(図5の左側)寄りに位置するときに、庇部101、111によって形成されるスリットSLの幅はOリング10dの幅より小さく、且つ、庇部101、111によってOリング10dが押さえられる。
【0044】
スリットSLの幅W3がOリング10dより十分小さく、押さえ部材100、110が固定されていれば、Oリング10dがスリットSLを介して固定溝11cから外れないよう当該Oリング10dを庇部101、111によって固定溝11c内に固定することができる。
【0045】
そのため、シール構造Sは、押さえ部材100、110を固定溝11c内に固定する固定機構120、130を有する。
【0046】
押さえ部材100用の固定機構120は、押さえ部材100から溝幅方向一方側(図5の左側)へ突出長さを調整可能に突出する突っ張り部としてのネジ121と、前述の凸部11dとを有する。
ネジ121は、図7に示すように、押さえ部材100の上記溝幅方向一方側の面に形成されたネジ穴102に螺合する。工具T(図6参照)によりネジ121の螺合長さを調整することで、押さえ部材100から溝幅方向一方側(図5の左側)へのネジ121の突出長さを調整することができる。
【0047】
固定機構120では、ネジ121の突出長さが大きくなり、押さえ部材100と固定溝11cの側面との間でネジ121が突っ張られた状態となったときに、押さえ部材100が凸部11dの側面に押し付けられて固定される。
【0048】
押さえ部材110用の固定機構130は、押さえ部材110から溝幅方向一方側(図5の右側)へ突出長さを調整可能に突出する突っ張り部としてのネジ131と、上記凸部11dとを有する。
ネジ131は、押さえ部材110の上記溝幅方向一方側の面に形成されたネジ穴(図示せず)に螺合する。工具T(図6参照)によりネジ131の螺合長さを調整することで、押さえ部材110から溝幅方向一方側(図5の右側)へのネジ131の突出長さを調整することができる。
【0049】
固定機構130では、ネジ131の突出長さが大きくなり、押さえ部材110と固定溝11cの側面との間でネジ131が突っ張られた状態となったときに、押さえ部材100が凸部11dの側面に押し付けられて固定される。
【0050】
<Oリング10dの取り付け方法の一例>
続いて、Oリング10dの取り付け方法の一例について説明する。
【0051】
(ステップS1:押さえ部材100、110の配設)
例えば、まず、押さえ部材100、110が溝幅方向外側の領域に配設される。このとき、押さえ部材100、110に接続されたネジ121、131の溝幅方向外側への突出長さは短く、庇部101、111によって、Oリング10dより幅が大きいスリットSLが形成される。
【0052】
(ステップS2:Oリング10dの収容)
次いで、溝11a内に、Oリング10dが収容される。非固定溝11bについては、当該非固定溝11bの開口を介してOリング10dが収容され、固定溝11cについては、当該固定溝11c及びスリットSLを介してOリング10dが収容される。
【0053】
(ステップS3:スリットSLの幅の調整及び押さえ部材100、110の固定)
その後、スリットSLの幅がOリング10dの幅(すなわち直径)より小さくされると共に、押さえ部材100、110が固定される。
具体的には、ネジ121、131の螺合長さが大きくされ、押さえ部材100、110が溝幅方向内側に移動する。これにより、スリットSLの幅がOリング10dの幅より小さくされると共に、押さえ部材100、110と固定溝11cの側面との間でネジ121、131が突っ張られた状態となり、押さえ部材100、110が凸部11dの側面に押し付けられて固定される。
以上で、Oリング10dの取り付けが完了する。
【0054】
<Oリング10dの取り付け方法の他の例>
次いで、Oリング10dの取り付け方法の他の例について説明する。
【0055】
(ステップS11:Oリング10dの収容)
本例では、まず、溝11a内に、Oリング10dが収容される。非固定溝11b及び固定溝11cの開口を介して、Oリング10dが非固定溝11b及び固定溝11c内に収容される。
【0056】
(ステップS12:押さえ部材100、110の配設)
次いで、押さえ部材100、110が溝幅方向外側の領域に配設される。このとき、押さえ部材100、110に接続されたネジ121、131の溝幅方向外側への突出長さは短くされている。
【0057】
その後、前述のステップS3と同様にして、スリットSLの幅がOリング10dの幅(すなわち直径)より小さくされると共に、押さえ部材100、110が固定される。
以上で、Oリング10dの取り付けが完了する。
【0058】
このように、押さえ部材100、110の配設工程と、Oリング10dの収容工程の順序は問わない。
【0059】
なお、Oリング10dの取り外しは、Oリング10dの取り付けと逆の手順で行うことができる。
【0060】
(本実施形態の主な効果)
以上のように、本実施形態のシール構造Sでは、Oリング10dより幅が広い固定溝11c内へのOリング10dの収容後に、押さえ部材100、110の庇部101、111によってOリング10dより狭いスリットSLを形成すると共に押さえ部材100、110を固定することで、Oリング10dを溝から外れないように固定することができる。そして、本実施形態のシール構造Sでは、Oリング10dを溝11aへ収容させる時に、Oリング10dより狭い状態のスリットSLが存在しないようにすることができる。そのため、本実施形態によれば、溝11a内へOリング10dを収容する際に当該Oリング10dに捻じれが生じるのを抑制することができる。したがって、溝11a内にOリング10dを捻じれなく固定することができる。その結果、Oリング10dの寿命を延ばすことができる。
【0061】
さらに、チャンバ本体10aがセラミック製の場合に、本実施形態と異なり、Oリング10dの固定用にアリ溝をチャンバ本体10aに形成すると、以下のおそれがある。すなわち、溝加工時に、アリ溝の開口を形成する細い部分に破損が生じるおそれがある。また、Oリング10dの取り付けや取り外し時に、同様に破損が生じるおそれがある。Oリング10dとして、耐食性の高いもの等、硬度が高いものを用いる場合、特に取り付け時や取り外しに上述のような破損が生じるおそれがある。それに対し、本実施形態では、チャンバ本体10aに形成されている溝11aはアリ溝ではないため、チャンバ本体10aをセラミックで形成しても、溝加工時やOリング(硬度の高いものを含む。)取り付け時及び取り外し時にチャンバ本体10aに破損が生じる可能性が低い。
【0062】
また、本実施形態のシール構造Sは、従来と同様、チャンバ本体10aの側壁11の上面と蓋部材10bの周縁部の下面という2つのシール面により密封するものであり、且つ、従来と比べたときにシール面に必要な加工は固定溝11cの加工のみである。したがって、本実施形態のシール構造Sによれば、従来と同様なシール性能を得ることができる。
【0063】
なお、セラミック製の部材にネジ穴加工を施すと、当該セラミック製の部材が破損するおそれがある。それに対し、本実施形態では、押さえ部材100、110の固定のために、シール構造Sを構成するセラミック製の部材(チャンバ本体10a)等にネジ穴加工を施していない。つまり、本実施形態では、シール構造Sを構成するセラミック製の部材(チャンバ本体10a)等に、破損のおそれがあるネジ穴加工を行わずに、押さえ部材100、110を固定することができる。
【0064】
<変形例>
図8は、シール構造の他の例を示す図である。
以上の例のシール構造では、庇部を有する押さえ部材が、溝幅方向の両側に設けられていた。ただし、上記押さえ部材は、溝幅方向の片側にのみ設けられていてもよい。すなわち、図5で示した押さえ部材100、110のうち一方のみ設けられていてもよい。図7の例では、減圧雰囲気側となる押さえ部材100のみ設けられている。このように、上記押さえ部材が溝幅方向の片側にのみ設けられる場合、減圧雰囲気側と外部雰囲気側とのうち、減圧雰囲気側にのみ設けられることが好ましい。これにより、溝幅方向の両側に上記押さえ部材が設けられる場合と同様に、固定溝11c内にOリング10dを固定することができる。
【0065】
なお、図の例では、固定溝11cの外部と内部を連通するスリットSLは、庇部101と固定溝11cの側面により形成される。
【0066】
図9は、突っ張り部の他の例を示す図である。
以上の例では、押さえ部材100、110から溝幅方向外側へ突出長さを調整可能に突出する突っ張り部が、押さえ部材100、110の溝幅方向外側の面に形成されたネジ穴に螺合するネジ121、131であった。上記突っ張り部は、図9に示すように、押さえ部材100、110の溝幅方向外側の面に接続された弾性を有する弾性部材としてのバネ200、210であってもよい。
バネ200、210の材料には、バネ鋼、ニッケル合金、ステンレス等を用いることができる。
【0067】
バネ200、210は、押さえ部材100、110へのネジ加工が不要であるため、押さえ部材100、110の形成材料にセラミックを用いることができる。
【0068】
図10及び図11は、押さえ部材の固定機構の他の例を示す図であり、図10は、本例の押さえ部材の固定機構を有するシール構造の断面図であり、図11は、押さえ部材の平面図である。
図10の押さえ部材300も、図5等に示した押さえ部材100と同様、溝幅方向内側に向けて延びる庇部101を有する。
ただし、図10に示すように、押さえ部材300の固定機構320は、押さえ部材100の固定機構120と異なり、押さえ部材300を溝深さ方向に貫通し固定溝11cの底面に形成されたネジ穴321に螺合するネジ322を有する。そして、固定機構320では、ネジ322により押さえ部材300を固定する。
【0069】
この構成は、チャンバ本体10aの側壁11へのネジ穴加工を伴うため、チャンバ本体10aの材料がセラミック材料ではなくステンレス等の金属材料の場合に好適に用いられる。
【0070】
なお、押さえ部材300を貫通させたネジ322をネジ穴321に螺着させた状態で当該押さえ部材300の溝幅方向の位置調整が可能なように、図11に示すように、押さえ部材300のネジ322に対する貫通孔301は平面視で溝幅方向(図の左右方向)に長い長穴となっている。
また、押さえ部材300を固定したネジ322のネジ頭322aが、押さえ部材300の上面及びチャンバ本体10aの側壁11の上面から突出しないように、押さえ部材300の上面には、ネジ頭322aが収まるザグリ302が形成されている。
【0071】
また、図2に示した例では、固定溝11cは、チャンバ本体10aの各辺に複数点在するように設けられていた。すなわち、固定溝11cに配設される押さえ部材は、チャンバ本体10aの各辺に複数点在するように配設されていた。これに代えて、押さえ部材を、チャンバ本体の各辺の例えば1/2より長く形成し、チャンバ本体の各辺に1つずつ配設されてもよい。
【0072】
さらに、押さえ部材の形状は、図6に示した例等では、平面視直線状であるが、平面視弧状であってもよいし、L字状であってもよい。押さえ部材の形状が、平面視弧状または平面視L字状である場合は、溝幅方向だけでなく溝長さ方向にも容易に位置調整が可能な、押さえ部材の固定機構として、図10及び図11に示した、固定機構320を用いるとよい。
さらにまた、チャンバ本体10aの各辺での押さえ部材の配設密度は、例えば辺間で等しいが、一部の辺について、他の辺より押さえ部材の配設密度が高くてもよい。具体的には、ヒンジ10c側の辺及びヒンジ10cに対向する側の辺について、ヒンジ10c側の辺に両端に接続された辺より押さえ部材の配設密度を高くしてもよい。なぜならば、ヒンジ10c側及びヒンジ10cに対向する側では、蓋部材10bを開閉したときに、Oリング10dが、蓋部材10bの周縁部の下面に貼りついたまま溝11aから外れてしまうことがあるため、である。ヒンジ10c側の辺及びヒンジ10cに対向する側の辺における押さえ部材の配設密度を高くすれば、ヒンジ10c側及びヒンジ10cに対向する側において、Oリング10dが上述のようにして溝11aから外れるのを抑制することができる。
【0073】
以上の例では、溝11aが、下側のシール面であるチャンバ本体10aの側壁の上面に形成されているが、これに代えて、上側のシール面である蓋部材10bの周縁部の下面に形成されていてもよい。
【0074】
また、以上の例では、非固定溝11bは角溝であるものとしたが、溝の開口の幅がOリング10dの幅より大きければ、非固定溝11bは、角溝以外の溝形状、例えば、テーパー面を溝幅方向一方側にのみ有する片アリ溝形状であってもよい。
【0075】
以上の例では、シール材としてOリングすなわち断面形状が円形のものが用いられていたが、シール材は断面形状が円形以外のものであってもよい。また、押さえ部材の幅方向内側面の形状は、シール材の断面形状に合わせて適宜変更可能である。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲、後述の付記項及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は上記の効果を損なわない範囲で、任意に組み合わせることができる。また、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0077】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
[付記項1]
シール材より幅が大きく形成された溝と、
前記溝内における溝幅方向一方側の領域に溝幅方向の位置を調整可能に配設され、溝幅方向他方側に向けて延び前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成すると共に前記シール材を前記溝内に押さえる庇部を有する押さえ部材と、
前記押さえ部材を固定する固定機構と、を有する、シール構造。
[付記項2]
前記固定機構は、
前記押さえ部材から前記溝幅方向一方側へ突出長さを調整可能に突出する突っ張り部と、
前記溝の底部から突出する凸部と、を有し、
前記突っ張り部により前記押さえ部材を前記凸部に押し付けて固定する、付記項1に記載のシール構造。
[付記項3]
前記突っ張り部は、前記押さえ部材の前記溝幅方向一方側の面に形成されたネジ穴に螺合するネジである、付記項2に記載のシール構造。
[付記項4]
前記突っ張り部は、弾性を有する弾性部材である、付記項2に記載のシール構造。
[付記項5]
前記固定機構は、
前記押さえ部材を溝深さ方向に貫通し、前記溝の底面に形成されたネジ穴に螺合するネジを有し、
前記ネジにより前記押さえ部材を固定する、付記項1に記載のシール構造。
[付記項6]
前記押さえ部材は、溝幅方向の両側それぞれに配設される、付記項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
[付記項7]
前記押さえ部材は、前記溝幅方向の片側にのみ配設される、付記項1~5のいずれか1項に記載のシール構造。
[付記項8]
前記押さえ部材は、前記溝幅方向一方側寄りに位置するときに、前記庇部によって、前記シール材より幅が大きい前記スリットを形成し、前記溝幅方向他方側寄りに位置するときに、前記庇部によって、前記シール材より幅が小さい前記スリットを形成すると共に前記シール材を押さえる、付記項1~7のいずれか1項に記載のシール構造。
[付記項9]
前記溝は、セラミック製の部材に形成されている、付記項1~7のいずれか1項に記載のシール構造・
[付記項10]
付記項1~9のいずれか1項に記載のシール構造を有し、減圧可能に構成され、基板処理の処理対象の基板を収容する、チャンバ。
[付記項11]
付記項10に記載のチャンバを備える、基板処理装置。
[請求項12]
シール材より幅が大きく形成された溝内における溝幅方向一方側の領域に、溝幅方向他方側に受けて延びる庇部を有する押さえ部材を配設し、前記庇部によって、前記溝の内部と外部とを連通させるスリットを形成する工程と、
前記溝内に前記シール材を収容する工程と、
前記スリットの幅を前記シール材の幅より小さくする工程と、
前記押さえ部材を固定する工程と、を含む、シール材の取り付け方法。
【符号の説明】
【0078】
1 成膜装置
10d Oリング
11c 固定溝
100 押さえ部材
101 庇部
110 押さえ部材
111 庇部
120 固定機構
130 固定機構
300 押さえ部材
320 固定機構
S シール構造
SL スリット
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11