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特開2023-173152液滴吐出ヘッド、液滴吐出ユニットおよび液滴吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173152
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッド、液滴吐出ユニットおよび液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231130BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085199
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】松原 勇太朗
【テーマコード(参考)】
2C057
4F041
【Fターム(参考)】
2C057AF71
2C057AG01
2C057AG15
2C057AG29
2C057AG44
2C057AN07
2C057BA07
2C057BA14
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA34
(57)【要約】
【課題】ノズル孔の入口側における流体流れを安定化して吐出液滴の飛翔方向を安定化し、画像品質を安定化する。
【解決手段】ノズル孔111を有するノズル板101と当該ノズル板101の周縁部を支持するハウジング10との間に液体流路112が形成され、駆動手段により開閉作動する弁体を開放することで、当該液体流路112の液体がノズル孔111から液滴として吐出される液滴吐出ヘッド1において、ノズル孔111が液体流路112の長手方向に複数配設されると共に、当該複数のノズル孔111の相互間でノズル板101とハウジング10を液体流路112を厚み方向に横断する連結部200で連結したことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔を有するノズル板と当該ノズル板の周縁部を支持するハウジングとの間に液体流路が形成され、駆動手段により開閉作動する弁体を開放することで、当該液体流路の液体が前記ノズル孔から液滴として吐出される液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル孔が前記液体流路の長手方向に複数配設されると共に、当該複数のノズル孔の相互間で前記ノズル板と前記ハウジングを前記液体流路を横断する連結部で連結したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記液体流路に液体を供給する供給ポートと、前記液体流路の液体を排出する回収ポートとを備え、前記複数のノズル孔は前記供給ポートから前記回収ポートへ向かって液体が流れる方向に沿って並んで配設されていることを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた複数列で形成され、当該複数列の各列に含まれる前記ノズル孔の上下流にのみ前記連結部が形成されていることを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数列のノズル孔と前記連結部がそれぞれ千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項3の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた二列で形成され、当該二列の各ノズル孔の相互間に前記連結部が形成され、前記流体流路は、前記二列のノズル孔の列間に形成された中央液体流路を有することを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた単列で形成され、当該単列の各ノズル孔の相互間に前記連結部が形成されていることを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記連結部が前記ハウジングと一体に形成されていることを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記連結部が前記ハウジングと別体に形成されていることを特徴とする請求項1の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、
前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、
前記ノズル板の面方向であって前記流体流路の長手方向と垂直な方向における前記連結部の幅を連結部幅とし、
前記第1の液滴吐出ヘッドの前記連結部幅は、前記第2の液滴吐出ヘッドの連結部幅よりも大きいことを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項10】
請求項2の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、
前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、
前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔から直近上流側の前記連結部に至る上流側間隔は、当該ノズル孔から直近下流側の前記連結部に至る下流側間隔よりも短く、
前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔から直近上流側の前記連結部に至る上流側間隔は、当該ノズル孔から直近下流側の前記連結部に至る下流側間隔よりも長い、
ことを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項11】
請求項1の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、
前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、
前記第1の液滴吐出ヘッドの前記連結部の表面粗さは、前記第2の液滴吐出ヘッドの前記連結部の表面粗さよりも小さい、
ことを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項の液滴吐出ヘッド、又は請求項9から11のいずれか1項の液滴吐出ユニットと、
前記駆動手段を制御する制御部と、
を含むことを特徴とする液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ユニットおよび液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置は、例えば特許文献1(特開2011-131571号公報)に記載のように、振動板部材を圧電部材で振動させることで圧力発生室に圧力を発生させ、この圧力でノズル板に形成された微細なノズル孔から液滴を吐出する。この場合、圧力発生室に大きな圧力を発生させるのが難しいため、使用する液体の粘度に制約(上限)がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献2(特開2020-023177号公報)に記載のように、ノズル孔の内側に高圧流体を流し、当該ノズル孔を圧電素子に連結されたニードル弁で開閉する液滴吐出装置が開発されている。このような液滴吐出装置は幅広い液体粘度に対応できる。液滴吐出装置は様々な分野で使用され、例えば自動車の車体に図形等を高画質で描画したり、あるいは液体レジストやDNA試料を液滴として吐出したりするのに使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高圧流体を使用する液滴吐出装置では、ノズル孔の入口付近の流体流れが吐出液滴の飛翔方向に影響しやすい。特に、後述する図2C(a)のように高画質化に対応してノズル孔111を千鳥状に配列した場合、ノズル孔同士が近接配置されるので、使用する液体の粘度によって上流側ノズル孔の入口付近における流体流れが下流側ノズル孔の入口付近の流体流れに大きく影響し、吐出液滴の飛翔方向が不安定化して画像品質を低下させる可能性があるという課題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、ノズル孔の入口側における流体流れを安定化して吐出液滴の飛翔方向を安定化し、画像品質を安定化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の液滴吐出ヘッドは、ノズル孔を有するノズル板と当該ノズル板の周縁部を支持するハウジングとの間に液体流路が形成され、駆動手段により開閉作動する弁体を開放することで、当該液体流路の液体が前記ノズル孔から液滴として吐出される液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル孔が前記液体流路の長手方向に複数配設されると共に、当該複数のノズル孔の相互間で前記ノズル板と前記ハウジングを前記液体流路を横断する連結部で連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ノズル孔の入口側における流体流れを安定化して吐出液滴の飛翔方向を安定化し、画像品質を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの正面図である。
図1B】本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの斜視図である。
図2A】下部ハウジングを取外した液滴吐出ヘッドの正面図である。
図2B】液滴吐出ヘッドの下端部の拡大斜視図である。
図2C】液滴吐出ヘッドのノズル板の平面図である。
図3】液滴吐出ヘッドの液体流路を横断する断面図である。
図4】液滴吐出ヘッドの(a)液体流路に沿った断面図と(b)(c)ヘッド下端部の水平断面平面図である。
図5】変形例に係る液滴吐出ヘッドの液体流路に沿った断面図である。
図6A】流体粘度の大小に対応した液滴吐出ヘッドの水平断面平面図である。
図6B】流体粘度の大小に対応した液滴吐出ヘッドの設計方法を説明する図である。
図6C】流路内の凸部の平面図である。
図7】液滴吐出装置の斜視図である。
図8】液滴吐出装置の駆動部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(●液滴吐出ヘッド)
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1Aは液滴吐出ヘッド1の正面図、図1Bは液滴吐出ヘッド1を斜め下方から見た斜視図である。
【0010】
液滴吐出ヘッド1のハウジング10は、上部ハウジング10aと下部ハウジング10bを有する。上部ハウジング10aと下部ハウジング10bは一体的に形成することも可能である。上部ハウジング10aの上にカバー20が取付けられ、このカバー20の内側に電装品が配設されている。カバー20の上端部には電装品のコネクタ部2が設けられている。
【0011】
下部ハウジング10bの下面に、耐腐食性のステンレス鋼(SUS)などの金属で構成されたノズル板101が配設されている。ノズル板101に形成された微細なノズル孔111から液滴が吐出される。
【0012】
下部ハウジング10bの内側には図3のように液体の流路112が形成されている。この流路112の一端は供給ポート11に連通し、他端は回収ポート12に連通している。
【0013】
供給ポート11と回収ポート12は循環通路Lを介して連結され、循環通路LのポンプPによって加圧された加圧液体が供給ポート11に供給されるようになっている。ノズル孔111から吐出されなかった加圧液体は、回収ポート12から回収された後、循環通路LとポンプPを経由して再び供給ポート11に供給される。
【0014】
本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、供給ポート11の送液圧力を数100kPaの大きさで加圧するため、ノズル板101の周縁部とハウジング10を接着剤によって強固に接合している。液滴吐出ヘッド1を下面から見たときに、従来は後述の連結部200がない形態としていた。
【0015】
しかしながら、流路112に流入してきたインクは流速が速く、そのまま回収ポート12から吐出するとノズル孔111からの吐出液滴の飛翔方向が傾斜する可能性がある。また、ノズル孔111を複列で形成したりノズル孔の個数を増大したりすると、それに応じてノズル板101が大型化してその受圧面積が増大する。
【0016】
そうすると、ノズル板101の周縁部の接合部分で強度不足のため剥がれが発生し、インクが液室から外部にリークする懸念があった。そこで本実施形態では、後述するようにノズル板101とハウジング10を連結部200で連結している。
【0017】
前述した下部ハウジング10bを取外すと、図2A図2Bのように軸状部材としてのニードル弁113の先端部が、上部ハウジング10aの下面の軸受121から露出する。ニードル弁113は耐腐食性のSUSなどの金属で構成され、細い部分で直径1mm以下、太い部分でも直径2mm程度で非常に細い。この細いニードル弁113が上部ハウジング10aの軸受121から、例えば1~20mmの長さで露出する。
【0018】
ニードル弁113の先端部にはノズル孔111を開閉する弁体113aが配設されている。弁体113aの上側に、シール部材としての弾性を有するOリング113bと、当該Oリング113bをニードル弁113に固定するためのワッシャー113cが配設されている。
【0019】
ノズル板101の周縁部は、ハウジング10に対して熱硬化性樹脂等により接合される。ノズル板101のノズル孔111は、従来、図2C(b)に示すように1列で形成されることが多かったが、近年では高画質化と装置のコンパクト化のため図2C(a)に示すように2列または3列以上の複数列で形成されることも珍しくない。
【0020】
すなわち、図2C(b)のようにノズル孔111を1列で有するノズル板101の場合、所望の画質を得るためにノズル板101を印写方向Xに対してかなり角度を付けて並べる必要がある。そうすると、斜線領域のように印刷可能箇所に制約が生じ、ユーザの印写回数の増加による生産性低下や印写時の不自由さが生じる。
【0021】
図2C(a)に示すようにノズル孔111を複列で有するノズル板101の場合、ノズル孔111を千鳥状に配列することで、ノズル板101を印写方向Xに対して傾斜配置することなく、高画質化と装置コンパクト化および塗装面積拡大による生産率向上を達成することができる。
【0022】
前述の例は、図2C(a)および図2C(b)に示す6個のノズル板101をハウジング10に接合する構成であるが、ノズル板101ごとにハウジングを接合した液滴吐出ヘッド1を6個並べて配置した液滴吐出ユニットとしてもよい。このような複数の液滴吐出ヘッド1を有する液滴吐出ユニットの構成とすることで、ノズル板101ごとに液体供給流路を設けることができる。これにより、ノズル板101ごとに異なる液体を供給し吐出させることができる。
【0023】
例えば図2C(a)の6個のノズル板101ごとに異なる色のインクを供給した場合、1つの液滴吐出ユニットで6色のインクを用いて画像を形成することができる。または、6個のノズル板101それぞれを構成する液滴吐出ヘッド1に異なる粘度の液体を供給することで、1つの液滴吐出ユニットで異なる粘度の液滴を吐出することができる。
【0024】
液滴吐出ヘッド1は、吐出する液滴の粘度に応じて液滴吐出ヘッド1の流路の設計や液滴吐出ヘッド1の駆動方法等を調整する必要がある。液滴吐出ユニットを複数の液滴吐出ヘッド1で構成することで、吐出する液体の粘度に適した設計の液滴吐出ヘッド1を組み合わせることができる。これにより、1つの液滴吐出ユニットで粘度の異なる複数種類の液体を適切に吐出することが可能となる。
【0025】
(●ニードル弁の開閉駆動)
図3に示すように、ニードル弁113と当該ニードル弁113を駆動する圧電素子114が上部ハウジング10aに配設されている。圧電素子114は、保持部材115の中央空間115a内に保持されている。
【0026】
この保持部材115の上下両端部にはバネ部が形成され、当該バネ部によって圧電素子114が軸線方向(Zに沿った方向)で圧縮状態に保持されている。保持部材115の先端部115bとニードル弁113の後端部は、圧電素子114とニードル弁113を同軸状にして連結されている。これにより、圧電素子114が長手方向(Zに沿った方向)で収縮したとき、保持部材115も長手方向(Zに沿った方向)で収縮して、ノズル孔111が開く方向(Zと反対方向)の付勢力をニードル弁113に作用させることができる。
【0027】
圧電素子114は、電圧印加手段によって電圧が印加されたときにd31モードで動作して、ノズル孔111が開く方向(Zと反対方向)にニードル弁113を駆動する。つまり、ニードル弁113は、圧電素子114に電圧が印加されることによりノズル孔111が開く方向(Zと反対方向)に駆動される。
【0028】
したがって、圧電素子114に電圧を印加していないときには、ニードル弁113がノズル孔111を閉塞している。このため、流路112に加圧液体が供給されていても、ノズル孔111から液体が吐出されることはない。
【0029】
そして、圧電素子114に電圧を印加することで、圧電素子114が収縮して、保持部材115を介してニードル弁113を引っ張るので、ニードル弁113の弁体113aがノズル孔111から離間してノズル孔111を開放する。これにより、流路112に供給されている加圧液体が液滴となってノズル孔111から吐出される。
【0030】
圧電素子114は、電圧が印加されたときにニードル弁113を閉じる方向(Z方向)に伸長するd33モードで動作させることも可能である。圧電素子がd33モードで動作するときには、電圧を印加した状態でニードル弁113の弁体113aがノズル孔111側に押し付けられてノズル孔111を閉塞する。
【0031】
液滴を吐出させるときは、圧電素子114に対する電圧の印加を停止あるいは電圧を低くすることで、ニードル弁113の弁体113aを開く方向(Zと反対方向)に移動させてノズル孔111を開放する。圧電素子114のd33モードは、応答性が高く変位量が大きい。したがって、ニードル弁113の開閉動作の応答性を高め、ノズル孔111から吐出する液体の滴速度、滴量のばらつきを小さくしたい場合はd33モードが適する。
【0032】
(●ニードル弁の上下移動)
保持部材115は、上部ハウジング10a内で図3の上下方向(Zに沿った方向)に位置調整可能に配設されている。保持部材115の後端部115cは、固定ねじ124によって、上部ハウジング10aに位置決め固定できるようになっている。保持部材115の後端部115cには、軸線方向(Zに沿った方向)と直角方向(Xに沿った方向)に雌ねじ孔115dが形成され、この雌ねじ孔115dに固定ねじ124の先端が螺合されている。
【0033】
上部ハウジング10aの上端部には、図3に示すように軸線方向(Zに沿った方向)の長孔30が形成され、この長孔30に固定ねじ124が挿通されている。固定ねじ124を緩めると保持部材115が上下移動可能になる。
【0034】
固定ねじ124は、図3の状態で、弁体113aとノズル孔111との間に所定の隙間δが形成される位置で長孔30に対して締付け固定される。この状態で液滴吐出ヘッド1が製品として納品される。
【0035】
(●液滴吐出ヘッド)
図1B図4に示すように、供給ポート11から回収ポート12に向かう流路112に沿って、ノズル板101にノズル孔111が形成されている。図4(b)は二列のノズル孔111が形成された場合であり、図4(c)は一列のノズル孔111が形成された場合である。ノズル孔111は一列4つで構成され、これらノズル孔111がニードル弁113の先端の弁体113aで開閉される。なお、図4(a)の2aと2bはコネクタ部2のリード線である。
【0036】
従来、ノズル孔111の入口付近における流体流れについては特に考慮されてなかった。しかしながら、使用する流体の粘度や圧力によって、ノズル孔111の入口付近における流体流れが吐出液滴の飛翔方向に影響することが本願発明者らによって確認された。すなわち、流体の粘度や圧力によって吐出液滴の飛翔方向がノズル孔111の軸線方向(Zに沿った方向)からズレるという知見が得られた。このように吐出液滴の飛翔方向がズレると、吐出液滴によって形成される画像の品質が低下する。
【0037】
また、高圧流体を使用する場合のノズル板101の補強についても、十分な考慮がされてなかった。特に、図4(b)のようにノズル孔111を二列(または多列)にすると、流路112の幅ないし容積が増大し、その分だけノズル板101の受圧面積が増加する。そうすると、下部ハウジング10bに対するノズル板101の周縁部の接合部分に過大な剥離力が作用し、接合部分での剥離・液漏れが発生しやすい。
【0038】
(●連結部)
そこで本実施形態では、図4(b)(c)のように、ノズル板101の各ノズル孔111の上流側と下流側において、ノズル板101の内側とハウジング10aを、流路112を図4(a)の上下方向(Zに沿った方向)に横断する連結部200で連結した。
【0039】
図4(b)は、流路112の長手方向(Yに沿った方向)に並んだ4つのノズル孔111を二列で千鳥状に形成し、各列の各ノズル孔111の上流と下流(上下流)にのみ連結部200を配置したものである。連結部200もノズル孔111と同じように千鳥状に形成されている。
【0040】
流路112の長手方向(Yに沿った方向)は、供給ポート11から回収ポート12へ向かって液体が流れる方向である。連結部200は流路112の長手方向(Yに沿った方向)に延びた細長形状であり、その上流端と下流端は流体流れを阻害しないように先鋭にしてある。
【0041】
供給ポート11から流路112を通って回収ポート12に流れる流体は、図4(b)のように三列の流れになる。三列の中央が中央液体流路であり、この中央液体流路には連結部200を形成していない。これにより、流路112内の各ノズル孔111の入口付近の流速を均一にし、ノズル孔111の入口付近に安定した流速の液体を供給することができ、吐出液滴の飛翔方向を安定化することができる。
【0042】
三列の流れの間には連結部200があるので、ノズル孔111の入口に対して流体が傾斜して流れ込むのが抑制される。また、各列のノズル孔111の両側、すなわち流れと直角方向(Xに沿った方向)の両側に中央液体流路を含む3列の流体流れが存在する。
【0043】
これにより、各ノズル孔111の入口付近の流体流れ状態が平均化され、吐出液滴の飛翔方向が安定化する。また、ノズル孔111の入口付近のインク流速が抑制されるので、次に説明する図4(c)に比べて対応できるインク粘度の範囲が広い。したがって、図2Cにおいて6つのヘッド(ノズル板101)にそれぞれ粘度の異なる液体を供給する場合に好都合である。
【0044】
図4(c)は、流路112の長手方向(Yに沿った方向)に並んだ4つのノズル孔111を一列で形成し、各ノズル孔111の上流側と下流側に連結部200を配置したものである。連結部200は図4(b)と同様に流路112の長手方向(Yに沿った方向)に延びた細長形状であり、その上流端と下流端は流体流れを阻害しないように先鋭にしてある。
【0045】
図4(c)において、供給ポート11から流路112を通って回収ポート12に流れる流体は、二列の流れになる。二列の流れの間に連結部200があるので、ノズル孔111の入口に対して流体が傾斜して流れ込むのが抑制される。
【0046】
これにより吐出液滴の飛翔方向が安定化する。また、各ノズル孔111の両側、すなわち流れと直角方向(Xに沿った方向)の両側に流体流れが存在する。これにより、各ノズル孔111の入口付近の流体流れ状態が平均化され、吐出液滴の飛翔方向が安定化する。図4(b)の構成に比べてノズル孔111の入口付近のインク流速を抑制しにくいため、比較的高粘度のインクを使用する場合に適する。
【0047】
前述の連結部200は、図4(a)に示すように、流路112に面した上部ハウジング10aの下面に上部ハウジング10aと一体的に形成することができる。連結部200の下端面は、ノズル板101の上面に対して熱硬化性樹脂等を使用して接合される。
【0048】
これにより、インクの色、仕向け(使用環境)によって粘度が変わった場合でも、その影響を受けないような流路形状にすることができる。連結部200の長さ・幅は任意に決めることができる。
【0049】
流路112の外周部の高さと、連結部200の上下方向(Zに沿った方向)高さは、同一となるように設定することができる。これにより、連結部200の下端面と流路112の外周部下面を同一平面に位置させることができ、これらに対しノズル板101の上面を変形させずに隙間なく接合することができる。
【0050】
連結部200の長さ・幅は任意に設定可能であるが、流路112の流れを阻害しない範囲で、できるだけ長く幅広に形成するのがよい。これにより、ノズル板101と上部ハウジング10aの接合面積を増大することができる。
【0051】
すなわち、連結部200によって、ノズル板101と上部ハウジング10aの連結力(ノズル板101の耐圧力性)を向上することができる。前記連結力は連結部200の断面積に比例するので、連結部200を図5のように流路112に沿ってできるだけ長く幅広に形成するのが有利である。
【0052】
このように、ノズル板101に作用する液体圧力の一部を連結部200で担持することで、ノズル板101の周縁接合部分に作用する液体圧力による剥離力を軽減して当該接合部分での剥離・液漏れを防止することができる。また、連結部200によってノズル板101の耐圧力性を向上することができるので、ノズル板101の平面度を高精度に維持し、接合強度も高めることができる。これにより、ノズル孔111ごとの液滴の速度・体積バラつきを抑制することが可能になる。
【0053】
ノズル板101と上部ハウジング10aは、高圧液体に対する耐腐食性を有し十分な強度を有する材料で構成することができる。ノズル板101と上部ハウジング10aの材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
ノズル板101と上部ハウジング10aの材質は、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb25、NiCr、Si、SiO2、Sn、Ta25、Ti、W、ZAO(ZnO+Al23)、Znなどを選択することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0055】
ノズル板101と上部ハウジング10aを、前述のように連結部200を介して相互連結する場合、ノズル板101と上部ハウジング10aの線膨張率の差が大きいと、連結部10a1の下端接合部で変形が発生するおそれがある。このような変形が発生すると、ノズル板101の平面度に悪影響が及び、ノズル孔111からの液滴吐出精度(描画精度)が低下する。
【0056】
したがって、ノズル板101と上部ハウジング10aは同一材料で構成することが望ましい。同一材料であれば、連結部200の下端接合部で熱硬化性樹脂が冷却硬化する際の熱収縮量がノズル板101と連結部200で同じになり、ノズル板101の平面度を高精度に維持し、接合強度も高めることができる。これにより、ノズル孔111ごとの液滴の速度・体積バラつきを抑制することが可能になる。
【0057】
本実施形態では、ノズル板101と上部ハウジング10aをステンレス鋼(SUS304)で構成するものとする。上部ハウジング10aの連結部200に代えて、ノズル板101の上面に同様の連結部を一体形成し、当該連結部の上端部を上部ハウジング10aの下面に熱硬化性樹脂で接合してもよい。
【0058】
また、図5に示すように、上部ハウジング10aやノズル板101とはまったく別体の連結部210を配置することも可能である。この場合は連結部210の材料選択範囲が広がると共に、連結部210を複雑形状に容易形成することができる。これにより、インクの色、仕向け(使用環境)によって粘度が変わった場合でも、図4の一体形連結部200以上に、粘度の影響を受けないような流路形状にすることができる。
【0059】
(●ノズル孔と連結部の間隔)
ノズル孔111と連結部200の流路112の長手方向(Yに沿った方向)における間隔は、前述した図4では、ノズル孔111の上流側と下流側でほぼ同等の間隔にしている。しかしながら、使用する液体(インク)の粘度によって、ノズル孔111の上流側と下流側で異なる間隔にすることもできる。
【0060】
図6Aの(a)(b)は、低粘度液体と高粘度液体でノズル孔111の直近上流側と直近下流側で異なる間隔にした例を示している。図6A(a)は低粘度液体を使用する場合である。低粘度液体の流れは変化しやすいので、直近上流側間隔A1を直近下流側間隔B1よりも短くしている(A1<B1)。
【0061】
これに対して、高粘度液体を使用する場合は図6A(b)に示すように、直近上流側間隔A2を直近下流側間隔B2よりも長くしている(A2>B2)。高粘度液体の流れは比較的変化しにくいので、低粘度液体のように上流側間隔A2を短くする必要はない。
【0062】
逆に、直近上流側間隔A2を短くし過ぎると、ノズル孔111に流れ込む流体流れを阻害する可能性がある。よって、ノズル孔111から直近上流側の連結部200に至る上流側間隔Aと直近下流側の連結部200に至る下流側間隔Bの比A/Bを、液体流路112を流れる液体の粘度が増大するに従い増大する。このように、低粘度液体(第1の液体)と高粘度液体(第2の液体)では、連結部200の配置等を変更する。
【0063】
図6Bは、流路設計の方法を説明するためのフローチャートである。このフローチャートでは、使用する液体(インク)の粘度が基準粘度Aよりも大きいか小さいかによって凸部(連結部200)の大きさ、形状等を変更する。
【0064】
ここでは、図4(b)(c)が基準粘度Aのインクを使用する場合であるものとする。この場合、ノズル孔111から凸部(連結部200)に至る上流側間隔と下流側間隔は同じであるとする。また、流路長手方向(Yに沿った方向)と垂直方向(Xに沿った方向)における凸部(連結部200)の連結部幅Wは例えば1mmとすることができる。
【0065】
基準粘度Aよりも小さい粘度Bのインク(第1の液体)を使用する場合、
図6C(a)に示す流路長手方向(Yに沿った方向)と垂直方向(Xに沿った方向)の連結部幅Wを大きくする(1mm<W)。
図6A(a)のように上流側間隔A1を短く、下流側間隔B1を長くする(A1<B1)。
図6C(a)のように凸部(連結部200)の表面を滑らかにする。
これにより、流路内のノズル孔111入口付近の流速と流れ方向が安定化する。
【0066】
基準粘度Aよりも大きい粘度Cのインク(第2の液体)を使用する場合、
図6C(a)に示す流路長手方向(Yに沿った方向)と垂直方向(Xに沿った方向)の連結部幅Wを小さくする(W<1mm)。
図6A(b)のように上流側間隔A2を長く、下流側間隔B2を短くする(B2<A2)。
図6C(b)(c)のように凸部(連結部200)の表面にくぼみ(ディンプル)200aや突起部(プロジェクション)200bを形成する。くぼみ200aと突起部200bは混在形成してもよい。
以上により、流路内のノズル孔111入口付近の流速と流れ方向が安定化する。
【0067】
連結部200の連結部幅Wは、ノズル板101の面方向であって流体流路112の長手方向(Yに沿った方向)と垂直な方向(Xに沿った方向)における幅である。この連結部200の連結部幅Wを、液体流路112を流れる液体の粘度が増大するに従い減少する。
【0068】
くぼみ200aや突起部200bの大きさ(深さ・高さ)の程度は、連結部200表面の凸凹の平均値を基に計算される。計算方法としては「十点平均粗さ」や「算術平均粗さ」を使用することができる。JISでは「Ra」や「RzJIS」と表記される。連結部200の表面粗さ(Ra)を、液体流路112を流れる液体の粘度が増大するに従い増大する。
【0069】
(●間隔AB、連結部幅W、粗さRaについて)
インク粘度に対応して前述した間隔AB、連結部幅W、粗さRaとする理由について、以下さらに説明する。
[間隔AB]
液体吐出ヘッド1に使用するインク粘度が増大すると(第2の液体)、連結部200の下流側のノズル孔111側表面に境界層が発生し、逆流が発生して流速が低下する。この流速低下により、当該下流側ノズル孔111から吐出する液滴の量と速度が減少する。
【0070】
連結部200の下流側のノズル孔111までの距離を長くすることで、いったん低下した流速が加速し始める。これにより、ノズル孔111から吐出する液滴の量と速度が回復する。したがって、液体吐出ヘッド1に使用するインク粘度が増大する場合は(第2の液体)、上流側間隔A2を長く、下流側間隔B2を短くする(B2<A2)。このように、連結部200から下流側ノズル孔111までの距離を長くする調整が必要である。
【0071】
[連結部幅W]
液体吐出ヘッド1に使用するインク粘度が増大すると(第2の液体)、前述したようにインクが連結部200に衝突したときの流速低下が大きくなり、下流側ノズル孔111の入口流速が遅くなる。この流速低下により、当該下流側ノズル孔111から吐出する液滴の量と速度が減少する。そこで、使用するインク粘度が増大する場合は連結部200の連結部幅Wを細くし、連結部200による流体抵抗を減少することで下流側ノズル孔111の入口流速を大きくするように調整する。
【0072】
[粗さRa]
液体吐出ヘッド1に使用する粘度が増大すると(第2の液体)、前述したように連結部200の下流側のノズル孔111の入口流速が遅くなる。この流速低下により、当該下流側ノズル孔111から吐出する液滴の量と速度が減少する。
【0073】
この場合、連結部200の表面が凹凸のない滑らかな表面であると、連結部200の表面に沿って境界層が発生するので、連結部200の下流側には大きな渦(逆流)が発生して流速低下がより大きくなる。そこで、連結部200の表面に凹凸を形成することで乱流境界層を形成し(境界層制御)、連結部200の表面の剥離点を上流側に移動することで流速低下を抑制する。
【0074】
このように、液体吐出ヘッド1から吐出する液体の粘度に合わせて液滴吐出ヘッド1の連結部200の形状,配置等を適正化することで、粘度の異なる複数液体(第1の液体と第2の液体)のそれぞれに対して安定した吐出性能を得ることができる。すなわち、粘度の異なる2以上の複数液体、例えば粘度Bのインクに対して適切に設計された液滴吐出ヘッド(HB)と、粘度Cのインクに対して適切に設計された液滴吐出ヘッド(HC)とを組み合わせて、1つの液滴吐出ユニットを構成することもできる。これにより、単一の液滴吐出ユニットを用いて粘度の異なる(少なくとも粘度Bと粘度Cの)インクを、安定した吐出性能で吐出することができる。
【0075】
前述した間隔AB、連結部幅W、粗さRaは、いずれか1種類だけの数値を調整することで、粘度の異なる2以上の複数液体に対して適切に設計された複数の液滴吐出ヘッドを構成することができる。また、間隔AB、連結部幅W、粗さRaの任意複数種類の組合せのそれぞれの数値を調整することでも、同様に粘度の異なる2以上の複数液体に対して適切に設計された複数の液滴吐出ヘッドを構成することができる。間隔AB、連結部幅W、粗さRaの複数種類のそれぞれの数値を調整することで、1種類だけの数値を調整する場合に比べ、より広い粘度範囲の流体に対応することが可能となる。
【0076】
(●液滴吐出装置)
次に、図1の液滴吐出ヘッド1を利用した液滴吐出装置500の実施形態を図7図8を参照して説明する。液滴吐出ヘッド1は、前述したように使用する液体の粘度に対応して連結部を構成したものである。図7は液滴吐出装置500の斜視図、図8は液滴吐出装置500の駆動部の斜視図である。
【0077】
液滴吐出装置500は、車両のボンネットなどの曲面を有する印刷対象物700に対向させて据付けられる移動可能な枠ユニット802を備えている。枠ユニット802を構成する左右の枠部材810,811には、枠部材810,811に架け渡されるようにして、可動ユニット813が垂直方向(Y方向)へ昇降可能に取り付けられている。
【0078】
可動ユニット813には、可動ユニット813上を水平方向(Xに沿った方向)に往復移動可能に配置されたモータを内蔵する駆動部803と、この駆動部803に取り付けられて印刷対象物700へ向けて液体を吐出する液滴吐出ユニット501とが搭載されている。
【0079】
また、液滴吐出ユニット501からの液体の吐出、駆動部803の往復移動及び可動ユニット813の昇降を制御する制御部としてのコントローラ805と、このコントローラ805に対して指示を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置806とを備えている。情報処理装置806には、形状や大きさなどの印刷対象物700に関する情報を記録保存するデータベース部(DB部)807が接続されている。
【0080】
枠ユニット802は、金属柱状体等によって形成された上下左右の枠部材808,809,810,811と、枠ユニット802を自立させるために下側の枠部材809の両側に直角且つ水平に取り付けられた左右の脚部材812a,812bを備えている。そして、左右の枠部材810,811の間に架け渡された可動ユニット813は、駆動部803を支持した状態で昇降可能に構成されている。
【0081】
印刷対象物700は、液体の吐出方向(Z方向)に直角に、すなわち、枠ユニット802の上下左右の枠部材808,809,810,811によって形成される平面に対向するようにして配置される。この場合、印刷を行うべき所定の位置に印刷対象物700を配置させるためには、例えば、多関節型アームロボットのアームの先端に取り付けたチャックによって印刷対象物700の印刷領域の裏側を吸着保持させることによって行うことができる。多関節型アームロボットを用いることで印刷対象物700をプリント位置に正確に配置することが可能となり、印刷対象物700の姿勢を適宜に変更することもできる。
【0082】
駆動部803は、図7に示すように、可動ユニット813上を水平方向(Xに沿った方向)に往復移動可能に配置されている。可動ユニット813は、枠ユニット802の左右の枠部材810,811に架け渡されるようにして水平に配設されたレール830と、このレール830と平行となるように配設されたラックギヤ831と、レール830の一部に外嵌されてスライドしながら移動するリニアガイド832と、このリニアガイド832と連結されてラックギヤ831と噛合うピニオンギヤユニット833と、このピニオンギヤユニット833を回転駆動する減速機836付きのモータ834と、印刷点位置検出用のロータリエンコーダ835を備えて構成されている。
【0083】
モータ834を駆動(正転又は逆転)することによって、液滴吐出ユニット501を可動ユニット813に沿って図8のX方向における右方向または左方向に移動させる。そして、駆動部803は液滴吐出ユニット501のX方向の駆動機構として機能する。なお、減速機836の筐体の両側にはリミットスイッチ837a,837bが取付けられている。
【0084】
液滴吐出ユニット501は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数の液滴吐出ヘッド1、又は、複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッド1を少なくとも1つ備えている。この液滴吐出ユニット501の各液滴吐出ヘッド1又は液滴吐出ヘッド1の各ノズル列に対しては、液体タンクから各色の液体が加圧供給される。液滴吐出ヘッド1は使用する液体の粘度に対応して構成可能であるので、各液体の粘度が異なる場合であっても1つの液滴吐出ユニット501で各液体を適切に吐出することができる。
【0085】
この液滴吐出装置500においては、可動ユニット813をY方向に移動させ、液滴吐出ユニット501をX方向に移動させて、印刷対象物700に所要の画像を印刷する。前述の「液滴吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンや一様な塗料の膜などを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。例えば、ノズル板101と下部ハウジング10bは接着剤以外の方法で接合することも可能であり、例えばノズル板101と下部ハウジング10bを拡散接合で接合してもよい。
【0087】
また、液体流路112は必ずしも循環通路Lに接続されている必要はなく、回収ポート12がなく供給された液体をすべてノズル孔111から吐出する型式の液滴吐出ヘッドにも適用可能である。また、圧電素子114は、長手方向に伸縮作動する他の駆動体に代替可能である。例えば、電磁ソレノイドで長手方向に伸縮作動するピストンを圧電素子114の代わりに使用することも可能である。
【0088】
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明の液滴吐出ヘッドを取り付けた形態でもよい。また、ドローンなどの無人航空機、または壁面を登ることが可能なロボットに本発明の液体吐出ヘッドを搭載して、塗装・散布可能な無人航空機、あるいは塗装・散布可能なクライミングロボットの形態としてもよい。
【0089】
<●付記>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
<第1態様>
第1態様は、ノズル孔を有するノズル板と当該ノズル板の周縁部を支持するハウジングとの間に液体流路が形成され、駆動手段により開閉作動する弁体を開放することで、当該液体流路の液体が前記ノズル孔から液滴として吐出される液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル孔が前記液体流路の長手方向に複数配設されると共に、当該複数のノズル孔の相互間で前記ノズル板と前記ハウジングを前記液体流路を横断する連結部で連結したことを特徴とする液滴吐出ヘッドである。
<第2態様>
第1態様は、前記液体流路に液体を供給する供給ポートと、前記液体流路の液体を排出する回収ポートとを備え、前記複数のノズル孔は前記供給ポートから前記回収ポートへ向かって液体が流れる方向に沿って並んで配設されていることを特徴とする第1態様の液滴吐出ヘッドである。
<第3態様>
第3態様は、前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた複数列で形成され、当該複数列の各列に含まれる前記ノズル孔の上下流にのみ前記連結部が形成されていることを特徴とする第1態様又は第2態様の液滴吐出ヘッドである。
<第4態様>
第4態様は、前記複数列のノズル孔と前記連結部がそれぞれ千鳥状に配置されていることを特徴とする第3態様の液滴吐出ヘッドである。
<第5態様>
第5態様は、前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた二列で形成され、当該二列の各ノズル孔の相互間に前記連結部が形成され、前記流体流路は、前記二列のノズル孔の列間に形成された中央液体流路を有することを特徴とする第1態様から第4態様のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドである。
<第6態様>
第6態様は、前記ノズル孔が、前記液体流路の長手方向に延びた単列で形成され、当該単列の各ノズル孔の相互間に前記連結部が形成されていることを特徴とする第1態様又は第2態様の液滴吐出ヘッドである。
<第7態様>
第7態様は、前記連結部が前記ハウジングと一体に形成されていることを特徴とする第1態様から第6態様のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドである。
<第8態様>
第8態様は、前記連結部が前記ハウジングと別体に形成されていることを特徴とする第1態様から第6態様のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドである。
<第9態様>
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれか1項の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、前記ノズル板の面方向であって前記流体流路の長手方向と垂直な方向における前記連結部の幅を連結部幅とし、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記連結部幅は、前記第2の液滴吐出ヘッドの連結部幅よりも大きいことを特徴とする液滴吐出ユニットである。
<第10態様>
第10態様は、第2態様の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔から直近上流側の前記連結部に至る上流側間隔は、当該ノズル孔から直近下流側の前記連結部に至る下流側間隔よりも短く、前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔から直近上流側の前記連結部に至る上流側間隔は、当該ノズル孔から直近下流側の前記連結部に至る下流側間隔よりも長い、ことを特徴とする液滴吐出ユニットである。
<第11態様>
第11態様は、第1態様から第8態様のいずれか1項の液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出ユニットであって、前記複数の液滴吐出ヘッドは、第1の液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドと、前記第1の液体よりも粘度の高い第2の液体を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、を含み、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記連結部の表面粗さは、前記第2の液滴吐出ヘッドの前記連結部の表面粗さよりも小さい、ことを特徴とする液滴吐出ユニットである。
<第12態様>
第12態様は、第1態様から第8態様のいずれか1項の液滴吐出ヘッド、又は第9から11のいずれか1項の液滴吐出ユニットと、前記駆動手段を制御する制御部と、を含むことを特徴とする液滴吐出装置である。
【符号の説明】
【0090】
1:液滴吐出ヘッド 2:コネクタ部
10:ハウジング 10a:上部ハウジング
10a1~10a5:連結部 10b:下部ハウジング
11:供給ポート 12:回収ポート
20:カバー 30:長孔
101:ノズル板 111:ノズル孔
112:液体流路 113:ニードル弁
113a:弁体 113b:Oリング
113c:ワッシャー 114:圧電素子
115:保持部材 115a:中央空間
115b:先端部 115c:後端部
115d:雌ねじ孔 121:軸受
124:固定ねじ 200:連結部(凸部)
210:連結部(凸部) 500:液滴吐出装置
501:液滴吐出ユニット 700:印刷対象物
802:枠ユニット 803:駆動部
805:コントローラ(制御部) 806:情報処理装置
807:データベース部(DB部) 808~811:枠部材
812a,812b:脚部材 813:可動ユニット
830:レール 831:ラックギヤ
832:リニアガイド 833:ピニオンギヤユニット
834:モータ 835:ロータリエンコーダ
836:減速機 836:減速機
837a,837b:リミットスイッチ L:循環通路
P:ポンプ δ:隙間
A1、A2:上流側間隔 B1、B2:下流側間隔
W:連結部幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2011-131571号公報
【特許文献2】特開2020-023177号公報
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8