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特開2023-173183ヘッドユニットおよび液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173183
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ヘッドユニットおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231130BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231130BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/01 401
B41J2/14 607
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085259
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】倉持 譲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4F041
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC07
2C056EC08
2C056EC18
2C056FA10
2C056FA15
2C056KB03
2C057AF21
2C057AG12
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG76
2C057AM03
2C057AM04
2C057AM40
2C057AN01
2C057AN07
2C057BA08
2C057DB03
2C057DB07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA35
(57)【要約】
【課題】弁体表面に異物が付着することによるノズルの封止性の低下を低減する。
【解決手段】
ノズルが形成されたノズル板と、前記ノズルから吐出させる液体を収容する液室と、前記液室内に設けられた弁体と、前記弁体に接続された弁体接続部材と、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させ、前記弁体が前記ノズルを開閉するように前記弁体接続部材を駆動する駆動機構と、を有する液体吐出ヘッドと、前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御部と、を備えるヘッドユニットであって、前記駆動制御部は、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で、前記弁体を振動させるように前記駆動機構を制御する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが形成されたノズル板と、前記ノズルから吐出させる液体を収容する液室と、前記液室内に設けられた弁体と、前記弁体に接続された弁体接続部材と、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させ、前記弁体が前記ノズルを開閉するように前記弁体接続部材を駆動する駆動機構と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御部と、
を備えるヘッドユニットであって、
前記駆動制御部は、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で、前記弁体を振動させるように前記駆動機構を制御するヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動制御部は、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて前記液体を前記ノズルから吐出させる第1制御と、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で振動させる第2制御と、を選択的に実行可能なヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、前記液室に通じる液路に、該液路内の液体に振動を付与し、振動が付与された液体を通して前記弁体を振動させる加振機構を備えるヘッドユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヘッドユニットを備える、液体を吐出する装置。
【請求項5】
請求項4において、前記液室内の液体を加圧する加圧機構を備え、
前記駆動制御部は、
前記加圧機構が液体を加圧している状態で、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて、前記液体を前記ノズルから吐出させ、
前記加圧機構が液体を加圧していない状態で、前記弁体を前記ノズル板から離間させて振動させる、液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項5において、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動機構を備え、
前記駆動制御部は、
前記加圧機構が液体を加圧している状態で、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて、前記液体を前記ノズルから液体吐出対象物の吐出領域へ吐出させ、
前記加圧機構が液体を加圧していない状態で、且つ前記ノズルが前記吐出領域に対向しない位置に前記液体吐出ヘッドを前記移動機構によって移動させた状態で、前記弁体を前記ノズル板から離間させて振動させる、液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニットおよび液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを吐出する吐出口に向けて、移動可能に形成された弁体を押圧することによりインクの吐出を制御する液体吐出ヘッドにおいて、弁体の吐出口に対向する位置に凹部が配置されている液体吐出ヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-023177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、弁体表面に異物が付着することにより、吐出口(ノズル)の封止性が低下してしまうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ノズルが形成されたノズル板と、前記ノズルから吐出させる液体を収容する液室と、前記液室内に設けられた弁体と、前記弁体に接続された弁体接続部材と、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させ、前記弁体が前記ノズルを開閉するように前記弁体接続部材を駆動する駆動機構と、を有する液体吐出ヘッドと、前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御部と、を備えるヘッドユニットであって、前記駆動制御部は、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で、前記弁体を振動させるように前記駆動機構を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、弁体表面に異物が付着することによるノズルの封止性の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るヘッドユニットの一例としてのインクジェットヘッドユニットの構成を示す構成図。
図2】加圧機構および移動機構の一例を示す説明図。
図3】ヘッドユニット、加圧機構および移動機構の制御系の一例を示すブロック図。
図4】ヘッド駆動波形の一例を示す説明図。
図5】ヘッドユニットの動作を説明する説明図。
図6】ヘッドユニットの動作を説明する説明図。
図7】変形例を示す説明図。
図8】液体を吐出する装置での動作例を示す説明図。
図9】本発明に係るヘッドユニットの第2実施形態を示す説明図。
図10】応用例を示す説明図。
図11】キャリッジの一例を示す全体斜視図。
図12】液体を吐出する装置の一例を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
[ヘッドユニットの構成]
まず図1を参照して、実施形態に係るヘッドユニットの一例としてのインクジェットヘッドユニットの構成について説明する。図1は、実施形態に係るヘッドユニットの一例としてのインクジェットヘッドユニットの構成を示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、インクジェットヘッドユニットHU(以下、ヘッドユニットと称する)は、液体吐出ヘッドの一例としてのインクジェットヘッド100(以下、ヘッドと称する)、および駆動制御部500を備える。
【0011】
ヘッド100は、中空状に形成された筐体110と、筐体110の一端部に設けられたノズル板101を備える。ノズル板101には、液体の一例としてのインク10を吐出するノズル102が形成されている。
【0012】
また、筐体110は、ノズル102の近傍の側面に、インク10を注入する注入口113を備える。注入口113から注入されたインク10は、筐体110内の液室114に収容される。
【0013】
液室114は、概略として、ノズル板101と、筐体110内に設けた封止部材135との間に形成される空間によって構成される。液室114内において、ノズル板101が設けられている側には、ノズル102と対向するように弁体130が設けられ、さらに、弁体130には弁体接続部材の一例としてのニードル131が接合されている。
【0014】
封止部材135は、例えばOリングからなり、筐体110の内面とニードル131の外周面との間の隙間を封止するように、ニードル131に外嵌されている。これにより、封止部材135は、液室114のインク10が駆動機構の一例としての圧電素子132側へ流入することを防止する。
【0015】
圧電素子132は、封止部材135を境に液室114の隣(図1では上方)に形成された空間内に設けられる。圧電素子132は、駆動制御部500からの信号(駆動波形)に応じて、弁体130がノズル板101に接触する位置と離間する位置との間で移動するように、ニードル131を駆動する。この弁体130の移動によってノズル102の開閉が行われる。なお、圧電素子132は、ピエゾ素子(Piezoelectric element)であり、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されている。その形状等は吐出されるインクドットの量等に応じて適宜設定される。
【0016】
駆動制御部500は、圧電素子132に対して電気的に接続されており、圧電素子132の駆動を制御する。
【0017】
[加圧機構および移動機構の構成]
次に、図2および図3を参照して、ヘッド100にインク10を加圧供給する加圧機構、およびヘッド100を移動させる移動機構について説明する。図2は、加圧機構および移動機構の一例を示す説明図、図3はヘッドユニット、加圧機構および移動機構の制御系の一例を示すブロック図である。
【0018】
図2において、ヘッド100から吐出するインク10は、密閉された液体(インク)タンク202に収容されている。インクタンク202とヘッド100の注入口113とは、チューブ201を介して接続されている。
【0019】
一方、インクタンク202は、エアレギュレータ204を含むパイプ203を介してコンプレッサ205と接続されている。エアレギュレータ204は、コンプレッサ205で作成した圧縮空気の圧力を、必要とするエア圧力に調節し、コンプレッサ205からの加圧空気をインクタンク202へ供給する。
【0020】
これにより、ヘッド100の注入口113には、加圧されたインク10が供給され、弁体130の開閉に応じてノズル102からインク10が吐出される。ここで、チューブ201、インクタンク202、パイプ203、エアレギュレータ204およびコンプレッサ205は、「加圧機構」の一例であり、インク10を液室114に加圧供給するための加圧機構200として機能する。
【0021】
また、図2において、ヘッド100の筐体110の一部(図2では上部)は、ヘッド保持部材301に取り付けられている。ヘッド保持部材301は、駆動装置302を備え、駆動装置302を駆動させることでヘッド保持部材301がレール部材303に沿って矢印A方向および矢印B方向へ移動可能に設けられている。
【0022】
これにより、ヘッド保持部材301に取り付けられたヘッド100も、レール部材303に沿って矢印A方向および矢印B方向へ移動する。ここで、ヘッド保持部材301、駆動装置302およびレール部材303は、「移動機構」の一例であり、ヘッド100を液体吐出対象物に対して移動させるためのヘッド移動機構300として機能する。なお、駆動装置302およびレール部材303の部位は、例えば、ボールネジを用いた送りネジ機構、ラックアンドピニオンによる送り機構、動力伝達ベルトとプーリによる送り機構等、周知の機構を用いて適宜構成してよい。
【0023】
図3に示すように、ヘッドユニットHU、加圧機構200およびヘッド移動機構300は、制御部600に電気的に接続されている。制御部600は、例えば、後述する液体を吐出する装置の全体動作を制御する機能を兼ねるものであってもよく、図3に示した構成要素以外にも、必要に応じて構成要素が追加されてよい。
【0024】
制御部600は、例えば、画像データに基づいたインク吐出周期信号を、ヘッドユニットHUの駆動制御部500に対して送信する。制御部600は、ヘッド100の状態情報等を駆動制御部500を介して受信する。また、制御部600は、加圧機構200に対して加圧のオンオフを切り替えるための切替信号を送信する。さらに、制御部600は、ヘッド移動機構300に対してヘッド100を移動させるための移動信号を送信する。
【0025】
ヘッドユニットHUの駆動制御部500は、制御部600から受信するインク吐出周期信号に基づき、駆動波形を生成し、生成した駆動波形を用いてヘッド100を駆動する。ヘッド100は、駆動制御部500からの駆動波形に応じてノズル102を開閉し、インクを吐出する。
【0026】
加圧機構200は、制御部600から受信する切替信号に基づき、コンプレッサ205(またはエアレギュレータ204)のオンオフ切替を行い、液室114に供給されるインク10に対して加圧状態と非加圧状態とを切り替える。
【0027】
ヘッド移動機構300は、制御部600から受信する移動信号に基づき、駆動装置302を所定の方向へ所定の距離だけ駆動し、ヘッド保持部材301を介してヘッド100を所望の位置へ移動させる。
【0028】
[ヘッドユニットの動作]
次に、図4乃至図6を参照して、ヘッドユニットHUの動作について説明する。
【0029】
図4は、ヘッド駆動波形の一例を示す説明図である。図4(a)は、ヘッド100からインクを吐出させる場合に使用される液体吐出波形を示し、図4(b)および図4(c)は、ヘッド100の弁体130を振動させる場合に使用される弁体振動波形を示す。図5および図6は、ヘッドユニットの動作を説明する説明図である。
【0030】
図4(a)に示した液体吐出波形、および図4(b)に示した弁体振動波形は、駆動制御部500によって生成され、駆動制御部500から圧電素子132に印加される。なお、弁体振動波形の電圧V3は、液体吐出波形および弁体振動波形の電圧V1より大きく、液体吐出波形の電圧V2よりも小さい。また、弁体振動波形の電圧V4は電圧V3より小さく、電圧V1より大きい。
【0031】
駆動制御部500から圧電素子132に液体吐出波形(図4(a))による電圧が印加された場合、圧電素子132に電圧V1が印加された状態では図5(a)に示すように、弁体130はノズル板101に接触する位置にある。この状態では、弁体130はノズル102を閉じているため、液室114内のインク10はノズル102から吐出されない。
【0032】
圧電素子132に電圧V2が印加された状態では図5(b)に示すように、圧電素子132は収縮し、圧電素子132はニードル131を図において上方へ動かす。このニードル131の移動と共に弁体130もノズル板101から離間する位置に移動し、弁体130の先端部とノズル102との間に隙間Gが形成される。液室114内のインク10は、加圧機構200によって、例えば0.1~3.0MPa程度の圧力で加圧供給されており、隙間Gの形成と共に液室114内のインク10はノズル102からインク滴10´となって吐出される。
【0033】
こうして、弁体130は、圧電素子132に液体吐出波形が印加された場合、ノズル板101に接触する位置と離間する位置との間(図5(b)矢印C方向)で移動し、弁体130は、ノズル102を開閉する。このノズル102の開閉によって、インク10がノズル102から吐出されるように弁体130は制御される(以降、当該制御を「第1制御」とも称する)。
【0034】
駆動制御部500から圧電素子132に弁体振動波形(図4(b))による電圧V3および電圧V4が交互に印加された場合は、弁体130は、圧電素子132およびニードル131を介して、図6矢印Dに示すように動く。つまり、弁体130は、ノズル板101から離間した状態で液体吐出時よりも小さい振幅で動く。弁体振動波形の電圧V3および電圧V4は、液体吐出波形(図4(a))の電圧V1より大きいので、圧電素子132に電圧V3または電圧V4が印加された状態では、弁体130はノズル板101から離間した状態となる。この動きにより弁体130の表面に付着した異物を落とすことが可能になる。
【0035】
また、図4(b)のように電圧V3,V4を液体吐出波形の電圧V2よりも小さくすることで、液体吐出波形よりも小さい電位差で弁体130を振動させることができるので、圧電素子132の発熱や消費電力を低減できる。
【0036】
つまり、駆動制御部500は、弁体130をノズル板101から離間させた状態で振動させ、弁体130の表面に付着した異物を落とすように制御する(以降、当該制御を「第2制御」とも称する)。
【0037】
なお、図4(b)に示した弁体振動波形は、電圧V3,V4を電圧V2よりも小さい電圧としているが、電圧V3,V4は、弁体130がノズル板101から離間する位置になる任意の電圧を設定することができる。例えば、図4(c)に示すように、弁体振動波形の電圧V3を、液体吐出波形の電圧V2と同じ電圧としてもよい。電圧V3と電圧V2を同じ電圧とすることで駆動制御部500による電圧制御を簡易にすることができる。
【0038】
上記以外の例として、弁体振動波形の電圧V3を、液体吐出波形の電圧V2より大きくした場合は、弁体130をノズル板101から十分に離間した位置において、弁体130を振動させる振幅を大きく取ることができる。これにより、弁体130に付着した異物の除去を、より効果的に行うことができる。
【0039】
また、図4(b)および図4(c)では、弁体振動波形は電圧V3および電圧V4を交互に圧電素子132に印加する構成を例示したが、波形の形状はこれに限るものではない。弁体振動波形は、弁体130をノズル板101から離間した状態で振動させる波形であればよく、例えば、弁体振動波形を正弦波状や三角波状などの波形としてもよい。
【0040】
駆動制御部500は、上述の第1制御と第2制御とを選択的に実行可能であり、例えば、弁体130表面の異物を落としてから液体吐出動作を開始させるためには、第1制御の実施前に第2制御を実施することが好ましい。
【0041】
なお、上記の説明では、圧電素子132として、電圧を印加するとノズル板101から遠ざかる側へ収縮する伸縮特性を有するものを例示したが、これに限るものではない。例えば、圧電素子132として、電圧を印加するとノズル板101に近づく側へ伸張する伸縮特性を有するものを用いてもよい。
【0042】
この場合、圧電素子132に電圧V2を印加することにより圧電素子132が伸張して弁体130がノズル102を閉塞する。また、圧電素子132に電圧V1を印加することにより圧電素子132が収縮して弁体130がノズル102を開放し、液室114に加圧供給したインク10をノズル102から吐出する。
【0043】
上述のように、本実施形態は、ノズル102が形成されたノズル板101と、ノズル102から吐出させるインク10を収容する液室114と、液室114内に設けられた弁体130と、弁体130に接続されたニードル131と、弁体130をノズル板101に接触する位置と離間する位置との間で移動させ、弁体130がノズル102を開閉するようにニードル131を駆動する圧電素子132とを有するヘッド100と、圧電素子132の駆動を制御する駆動制御部500と、を備えるヘッドユニットHUであって、駆動制御部500は、弁体130をノズル板101から離間させた状態で、弁体130を振動させるように圧電素子132を制御する。
【0044】
また、上述のように、駆動制御部500は、弁体130をノズル板101に接触する位置と離間する位置との間で移動させてインク10をノズル102から吐出させる第1制御と、弁体130をノズル板101から離間させた状態で振動させる第2制御とを選択的に実行可能である。
【0045】
これにより、弁体130表面に付着した異物(例えば、インク中の成分、粒子等)を弁体130から落とすことが可能になり、弁体130への異物の付着によるノズル102の封止性の低下を低減することができる。
【0046】
[変形例]
図7は、変形例を示す説明図である。本変形例は、上述の実施形態の構成に対して、液室114に通じる液路に加振機構400を備える点が異なる。
【0047】
加振機構400は、液路内のインク10に振動を付与し、振動が付与されたインク10を通して、矢印D方向に移動(振動)している弁体130に対してさらに外的振動を与える。これにより、弁体130表面に付着した異物を、より効果的に除去することができる。
【0048】
[液体を吐出する装置での動作例]
図8は、液体を吐出する装置での動作例を示す説明図である。
【0049】
図1で説明したように、ヘッドユニットHUは、液体を吐出する装置に設けられたヘッド移動機構300によって図において左右方向へ移動可能なように設けられている。
【0050】
弁体振動波形を用いて弁体130を矢印D方向に振動させる第2制御を行う場合は、図8(a)に示すように、駆動制御部500は、加圧機構200によるインク10への加圧をオフ状態にする。すなわち、駆動制御部500は、弁体130をノズル板101に接触する位置と離間する位置との間で移動させて、インク10をノズル102から吐出させる第1制御のときは、加圧機構200によりインク10を加圧状態にする。これに対し、第2制御のときは、加圧機構200によるインク10の加圧を停止させる。
【0051】
これにより、液体吐出対象物1000の吐出領域に向けてインク10を吐出するときは、インク10に圧がかかることで確実にインク10をノズル102から吐出させることができる。また、弁体130を振動させて弁体130に付着した異物を落とすときは、不用意にインク10が液体吐出対象物1000に向けて吐出されることを防止できる。また、インク消費を抑制することができる。
【0052】
なお、図8(a)の場合、ノズル102は開放状態となるため、インク10が加圧されていなくても、装置内の圧力変動または駆動制御部500内の電気的ノイズ等により不用意にインク10が吐出される可能性がある。
【0053】
そこで、好ましくは、駆動制御部500は第2制御に先立ちインク10の加圧を停止させることに加え、ノズル102を液体吐出対象物1000の吐出領域と対向しない位置(非吐出領域)にヘッド移動機構300で移動させる。そして、ヘッド100を非吐出領域へ移動させた状態で、弁体130をノズル板101から離間させて振動させる。これにより、吐出領域での不用意なインク吐出をより確実に防止することができる。
【0054】
次に、図9を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明に係るヘッドユニットの第2実施形態を示す説明図である。図9(a)はノズルを閉じた状態を示す断面図、図9(b)はノズルを開いた状態を示す断面図である。
【0055】
第2実施形態は、ニードル131と圧電素子132との間に、伝達機構の一例としての逆バネ機構134を備える点が上述の実施形態と異なる。なお、第2実施形態では、圧電素子132として、電圧を印加するとノズル板101側へ伸張する伸縮特性を有するものを用いる。
【0056】
逆バネ機構134は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成された弾性部材である。逆バネ機構134は、変形部134a、固定部134b、ガイド部134cおよび屈曲辺134dを備える。
【0057】
変形部134aは、ニードル131の基端側の面(図9(a)ではニードル131の上側端面)に当接するようにして形成された断面略台形状を有する。
【0058】
固定部134bは、変形部134aと、筐体110の内壁面に固定される。
【0059】
ガイド部134cは、固定部134bと、圧電素子132とを連結する。
【0060】
屈曲辺134dは、台形状の変形部134aの長辺(台形の下底に相当)と固定部134bとを連結する。
【0061】
上記のような構造を備えた逆バネ機構134は、圧電素子132に所定の電圧が印加されて圧電素子132が伸張すると、圧電素子132の伸張により、ガイド部134cがノズル102側(図9(b)の矢印a方向)に押される。
【0062】
この押される力に伴い、変形部134aをノズル102から遠ざかる方向(図9(b)の矢印b方向)に引き込む。すなわち、逆バネ機構134は、圧電素子132の伸びる力を、ニードル131を引き込む力に変換した上で、ニードル131へ伝達する。
【0063】
第2実施形態に係るヘッド100は、圧電素子132へ電圧印加することにより、圧電素子132が伸び、それに伴い弁体130がノズル102を開放し、ノズル102から液滴10´を吐出する。
【0064】
上述のように第2実施形態は、ニードル131と圧電素子132との間に、圧電素子132の伸びる力を、ニードル131を引き込む力、すなわち圧電素子132の伸びる力と相反する力に変換した上で、ニードル131へ伝達する逆バネ機構134を備える。
【0065】
第2実施形態においても、上述の第2制御を実施することにより、弁体130表面に付着した異物を弁体130から落とすことが可能であり、弁体130への異物の付着によるノズル102の封止性の低下を低減することができる。
【0066】
[応用例]
次に、図10を参照して応用例について説明する。図10は、応用例を示す説明図である。
【0067】
図10に示すように、ヘッドモジュール700は、筐体710に複数(図10の例では8個)のヘッド100を備える。
【0068】
筐体710は、筐体710内にインク10を供給する供給口711と、供給口711と注入口713とをつなぐ供給路712と、液室714を挟んで注入口713の反対側に設けられた排出口715を有する。また、筐体710は、筐体710内のインク10を回収する回収口717と、回収口717と排出口715とをつなぐ回収路716を有する。
【0069】
複数のヘッド100の基本的な構成は、図1乃至図6を参照して説明したものと同様であり、図10では対応する要素について700番台の符号を付している。
【0070】
本応用例では、8個のヘッド100が、それぞれのノズル702が一方向(図10では左右方向)に略等間隔で配列されるように設けられている。ヘッド100のそれぞれは、図中下部のノズル702からインク10を下方に吐出するように上下方向に延在して設けられている。
【0071】
8個のヘッド100の配列方向の一方側(図10では左側)から他方側(図10では右側)にインク10が流れるように、各ヘッド100の液室714は、貫通して設けられている。つまり、個々のヘッド100では、注入口713の反対側に排出口715が設けられる点が、上述の実施形態の構成と異なる。
【0072】
[適用例]
次に、図11および図12を参照して、図10で説明したヘッドモジュール700の適用例について説明する。図11は、キャリッジの一例を示す全体斜視図、図12は、図11のキャリッジを搭載した液体を吐出する装置の一例を示す全体斜視図である。なお、図11は、図12に示した液体を吐出する装置800に搭載したキャリッジ801を液体吐出対象物1000側から見たものである。
【0073】
キャリッジ801は、ヘッド保持体80を備える。また、キャリッジ801は、後述する第1のZ方向駆動部807からの動力によりZ軸レール804に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。
【0074】
ヘッド保持体80は、後述する第2のZ方向駆動部808からの動力によりキャリッジ801に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体80はヘッドモジュール700を取り付けるためのヘッド固定板80aを備える。
【0075】
本適用例では、図10で説明したヘッドモジュール700を、ヘッド固定板80aに6個取り付けた構成を例示しており、6個のヘッドモジュール700を積層状に並べて設けている。
【0076】
ヘッドモジュール700は、それぞれ複数のノズル702を備えている。なお、ヘッドモジュール700で用いるインクの色の種類や数は、各ヘッドモジュール700毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、液体を吐出する装置800が、単色を用いる塗装装置である場合は、各ヘッドモジュール700で用いるインクは同色でよい。また、ヘッドモジュールの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0077】
ヘッドモジュール700は、図示のようにノズル列(8個のノズル702がなす列)が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル702の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板80aに固定する。この状態でノズル702は、重力方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出する。
【0078】
図12に示された液体を吐出する装置の一例としての印刷装置800は、液体吐出対象物1000に対向させて設置される。印刷装置800は、X軸レール802と、このX軸レール802と交差するY軸レール803と、X軸レール802およびY軸レール803と交差するZ軸レール804を備える。
【0079】
Y軸レール803は、X軸レール802がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール802を保持する。また、X軸レール802は、Z軸レール804がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール804を保持する。そして、Z軸レール804は、キャリッジ801がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ801を保持する。
【0080】
印刷装置800は、キャリッジ801をZ軸レール804に沿ってZ方向へ動かす第1のZ方向駆動部807と、Z軸レール804をX軸レール802に沿ってX方向へ動かすX方向駆動部805とを備える。また、印刷装置800は、X軸レール802をY軸レール803に沿ってY方向へ動かすY方向駆動部806を備える。さらに、印刷装置800は、キャリッジ801に対してヘッド保持体80をZ方向へ動かす第2のZ方向駆動部808を備える。
【0081】
印刷装置800は、キャリッジ801をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながら、ヘッド保持体80に設けたヘッドモジュール700(図11参照)からインクを吐出し、液体吐出対象物1000に印刷を行う。なお、キャリッジ801およびヘッド保持体80のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0082】
また、液体吐出対象物1000の表面形状は、平面で図示されているが、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、もしくは多少の凹凸を有する面であってもよい。
【0083】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。
【0084】
これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0085】
また、本発明に係る液体を吐出する装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明のヘッドユニット(もしくはヘッド)を取り付けた形態でもよい。
【0086】
また、液体を吐出する装置は、液体吐出対象物に対してヘッドを動かす構成のものに限らない。ヘッドと液体吐出対象物とは相対的に移動が可能であればよく、液体吐出対象物をヘッドに対して動かす構成のものであってもよい。
【0087】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0088】
[第1態様]
第1態様は、ノズルが形成されたノズル板と、前記ノズルから吐出させる液体を収容する液室と、前記液室内に設けられた弁体と、前記弁体に接続された弁体接続部材(例えばニードル131)と、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させ、前記弁体が前記ノズルを開閉するように前記弁体接続部材を駆動する駆動機構(例えば、圧電素子132)と、を有する液体吐出ヘッド(例えば、ヘッド100)と、前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御部(例えば、駆動制御部500)と、を備えるヘッドユニット(例えば、ヘッドユニットHU)であって、前記駆動制御部は、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で、前記弁体を振動させるように前記駆動機構を制御する。
【0089】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記駆動制御部(例えば、駆動制御部500)は、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて前記液体を前記ノズルから吐出させる第1制御と、前記弁体を前記ノズル板から離間させた状態で振動させる第2制御と、を選択的に実行可能である。
【0090】
第1態様および第2態様によれば、弁体表面に付着した異物を弁体から落とすことが可能になり、弁体への異物の付着によるノズルの封止性の低下を低減することができる。
【0091】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記液室に通じる液路に、該液路内の液体に振動を付与し、振動が付与された液体を通して前記弁体を振動させる加振機構(例えば、加振機構400)を備える。
【0092】
第3態様によれば、弁体表面に付着した異物を、より効果的に除去することができる。
【0093】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかに記載のヘッドユニットを備える液体を吐出する装置(例えば、印刷装置800)である。
【0094】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記液室内の液体を加圧する加圧機構(例えば、加圧機構200)を備え、前記駆動制御部(例えば、駆動制御部500)は、前記加圧機構が液体を加圧している状態で、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて、前記液体を前記ノズルから吐出させ、前記加圧機構が液体を加圧していない状態で、前記弁体を前記ノズル板から離間させて振動させる。
【0095】
第4態様および第5態様によれば、液体吐出対象物の吐出領域に向けて液体を吐出するときは、液体に圧がかかることで確実に液体をノズルから吐出させることができる。また、弁体を振動させて弁体に付着した異物を落とすときは、不用意に液体が液体吐出対象物に向けて吐出されることを防止できる。
【0096】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記液体吐出ヘッド(例えば、ヘッド100)を移動させる移動機構(例えば、ヘッド移動機構300)を備え、前記駆動制御部(例えば、駆動制御部500)は、前記加圧機構(例えば、加圧機構200)が液体を加圧している状態で、前記弁体を前記ノズル板に接触する位置と離間する位置との間で移動させて、前記液体を前記ノズルから液体吐出対象物の吐出領域へ吐出させ、前記加圧機構が液体を加圧していない状態で、且つ前記ノズルが前記吐出領域に対向しない位置に前記液体吐出ヘッドを前記移動機構によって移動させた状態で、前記弁体を前記ノズル板から離間させて振動させる。
【0097】
第6態様によれば、液体吐出対象物の吐出領域での不用意なインク吐出をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 液体吐出ヘッド
101 ノズル板
102 ノズル
130 弁体
131 ニードル(弁体接続部材の一例)
132 圧電素子(駆動機構の一例)
500 駆動制御部
800 印刷装置(液体を吐出する装置の一例)
1000 液体吐出対象物
HU ヘッドユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12