IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-紫外線発光装置 図1
  • 特開-紫外線発光装置 図2
  • 特開-紫外線発光装置 図3
  • 特開-紫外線発光装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173280
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】紫外線発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085434
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳伸
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CD13
5F142CD18
5F142DB12
5F142GA31
(57)【要約】
【課題】 紫外線発光素子とレンズ体とを接合する接合部材中の気泡の残留をなくし、紫外線発光素子から出射される紫外線を効率的に取り出す。
【解決手段】 本発明は、所定の波長の紫外線を出射面から出射する紫外線発光素子と、前記紫外線発光素子の前記出射面に対向するように設けられたレンズ体と、前記紫外線発光素子の前記出射面と前記紫外線が入射する前記レンズ体の入射面との間に設けられ、前記紫外線発光素子と前記レンズ体とを接合する接合部材とを備える紫外線発光装置である。前記レンズ体の前記入射面は、前記紫外線発光素子の前記出射面に向けて凸状に形成され、前記レンズ体の出射面は、複数の凸状光学要素部分を含みように構成される。また、前記複数の凸状光学要素部分の少なくともいくつかは同じ高さである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長の紫外線を出射面から出射する紫外線発光素子と、
前記紫外線発光素子の前記出射面に対向するように設けられたレンズ体と、
前記紫外線発光素子の前記出射面と前記紫外線が入射する前記レンズ体の入射面との間に設けられ、前記紫外線発光素子と前記レンズ体とを接合する接合部材と、を備え、
前記レンズ体の前記入射面は、前記紫外線発光素子の前記出射面に向けて凸状に形成され、
前記レンズ体の出射面は、複数の凸状光学要素部分を含み、
前記複数の凸状光学要素部分の少なくともいくつかは同じ高さである、
紫外線発光装置。
【請求項2】
前記レンズ体の前記入射面の中央部は、前記紫外線発光素子の前記出射面に向けて凸状に形成され、
前記レンズ体の前記入射面の前記中央部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、前記中央部を取り囲む前記レンズ体の周囲部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値よりも小さい、
請求項1に記載の紫外線発光装置。
【請求項3】
前記レンズ体の前記入射面に形成された凸状の部分は、前記入射面の全体に亘って1つである、
請求項2に記載の紫外線発光装置。
【請求項4】
前記レンズ体の前記入射面の前記中央部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、0.3以上5μm以下であり、前記レンズ体の前記入射面の前記周囲部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、0.5μmより大きく10μm以下である、
請求項2に記載の紫外線発光装置。
【請求項5】
前記接合部材は、非晶質フッ素樹脂材料からなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線発光装置。
【請求項6】
前記接合部材は、SiとOとCとを含む化合物材料であり、Cの含有量が1ppmより大きく40%より小さい、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線発光装置。
【請求項7】
前記接合部材は、シラノール基を含有し、かつ、シロキサン結合により形成された環状構造を有する環状シラノール、及びその脱水縮合物を含むシラノール組成物の硬化物である、
請求項6に記載の紫外線発光装置。
【請求項8】
前記紫外線のピーク波長が220以上280nm未満である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線発光装置に関し、特に、深紫外線を放射する紫外線発光素子を備えた紫外線発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の手や物といった対象物の表面に付着した病原性のウィルスや細菌等を不活化し滅菌・殺菌するために、該対象物の表面に紫外線を照射する技術が知られている(本開示では、ウィルスや菌等を「ウィルス等」と総称するものとし、ウィルス等を不活化し及び/又は細菌を滅菌・殺菌することを「ウィルス等を不活化する」と称するものとする。)。近年は、波長約265nmの紫外線(「深紫外線」や「UVC」と称されることもある。)を照射可能な紫外線発光素子(UVC-LED)の開発が急速に進展しており、従来の水銀ランプに代わる紫外線光源として注目されている。紫外線発光素子を用いた紫外線発光装置は、従来の水銀ランプのものに比べて省電力化・小型化が可能であり、様々な環境や用途での利用が提案されている。
【0003】
紫外線発光装置において、紫外線発光素子から出射される紫外線を効率良く取り出すために、紫外線発光素子の出射面上にはレンズ体(光学部材)が取り付けられる。このようなレンズは、紫外線発光素子の出射面上に塗布された接着樹脂材料に直接的に押し当てられて固着される。このとき、接着樹脂材料中に気泡が残留していると、紫外線発光素子からの紫外線の効率的な取り出しの妨げとなるため、気泡の発生・残留を抑える種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ゲル封止材のゲル前駆体のゲル化を発光素子上に載置する前に行うため、蓋体(透光性レンズ)装着後のゲル化を不要とし、発光素子モジュール中の気泡の発生を防止する技術を開示している。
【0005】
また、下記特許文献2には、発光素子チップを被覆する透光性の柔軟性部材と、該柔軟性部材の上方に載置される透光性剛性部材(レンズ)とを有する発光装置であって、該剛性部材の背面が該発光素子方向へ突出している発光装置を開示している。このような剛性部材の形状により、該柔軟性部材と該剛性部材との界面における気泡混入を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-035798号公報
【特許文献2】特開2003-318448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、ドーム状に形成された透光性レンズの内空間にゲル封止材を設けているため、基体の凹部に収納されたLED素子から透光性レンズまでの距離が長くなり、この結果、LEDから出射した光を効率的に外部に取り出すことができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示される技術は、パッケージの中央に形成された凹部に発光素子チップを設けてそこに柔軟性部材を充填するため、剛性部材(レンズ)を設ける際に、柔軟性部材内の気泡が十分に抜けきらないおそれがあった。また、剛性部材の上面が凸状に形成されていると、押え具を用いて剛性部材を柔軟性部材に押圧させる際に剛性部材が安定せず、柔軟性部材の膜厚を均一にすることができなった。このため、柔軟性部材のみで剛性部材を支持することができず、製品としての厚みを薄くすることができず、また、光学的特性に影響を及ぼすおそれがあった。一方で、押圧の際の安定化のため、剛性部材の上面形状に合った押え具を用いる場合、それに応じて製造コストがかかるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、紫外線発光素子とレンズ体とを接合する接合部材中の気泡の残留がなく、紫外線発光素子から出射される紫外線を効率的に取り出すことができる紫外線発光装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、紫外線発光素子上のレンズ体を接合部材によって固着し支持する構成により、薄型の紫外線発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0012】
ある観点に従う本発明は、所定の波長の紫外線を出射面から出射する紫外線発光素子と、前記紫外線発光素子の前記出射面に対向するように設けられたレンズ体と、前記紫外線発光素子の前記出射面と前記紫外線が入射する前記レンズ体の入射面との間に設けられ、前記紫外線発光素子と前記レンズ体とを接合する接合部材とを備える紫外線発光装置である。前記レンズ体の前記入射面は、前記紫外線発光素子の前記出射面に向けて凸状に形成され、前記レンズ体の出射面は、複数の凸状光学要素部分を含み構成される。また、前記複数の凸状光学要素部分の少なくともいくつかは同じ高さである。
【0013】
また、前記レンズ体の前記入射面の中央部は、前記紫外線発光素子の前記出射面に向けて凸状に形成される。更に、前記レンズ体の前記入射面の前記中央部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、前記中央部を取り囲む前記レンズ体の周囲部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値よりも小さくなるように設定される。
【0014】
また、前記レンズ体の前記入射面に形成された凸状の部分は、前記入射面の全体に亘って1つであることが好ましい。
【0015】
また、前記レンズ体の前記入射面の前記中央部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、0.3以上5μm以下であることが好ましい。また、前記レンズ体の前記入射面の前記周囲部と前記紫外線発光素子の前記出射面との距離の平均値は、0.5μmより大きく10μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記接合部材は、非晶質フッ素樹脂材料からなる。前記接合部材は、SiとOとCとを含む化合物材料であり得る。このとき、Cの含有量が1ppmより大きく40%より小さいことが好ましい。
【0017】
或いは、前記接合部材は、シラノール基を含有し、かつ、シロキサン結合により形成された環状構造を有する環状シラノール、及びその脱水縮合物を含むシラノール組成物の硬化物であり得る。
【0018】
また、前記紫外線のピーク波長が220以上280nm未満であることが好ましい。
【0019】
なお、本明細書等において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されても良い。また、「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことをいい、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、紫外線発光素子とレンズとを接合する接合部材中の気泡の残留を抑制することができ、これにより、紫外線発光装置は、紫外線発光素子から出射される紫外線を効率的に取り出すことができるようになる。とりわけ、本発明によれば、レンズ上面に形成される複数の凸状光学要素部分のいくつかを同じ高さにしているので、接合部材に対してレンズを押圧する力を均等に与えることができ、これにより、接合部材の厚さ(膜厚)を均一にすることができるようになる。
【0021】
更に、本発明によれば、紫外線発光素子上のレンズを接合部材によって固着し支持する構成を採用しているので、紫外線を効率的に取り出すことができ、また、薄型の紫外線発光装置が得られることになる。
【0022】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置の模式的構造の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置におけるレンズ体の例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置における紫外線発光素子の出射面とレンズ体の入射面との間の距離的関係を説明するための図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置の模式的構造の一例を示す断面図である。同図に示すように、紫外線発光装置1は、支持基板10と、紫外線発光素子20と、接合部材30と、レンズ体40とを含み構成される。
【0026】
支持基板10は、紫外線発光素子20をフリップチップ実装により載置し支持する。支持基板10は、放熱性の観点から、例えば、アルミニウム、窒化アルミニウム焼結体又は酸化アルミニウム等の材料からなる。
【0027】
紫外線発光素子20は、所定の波長の紫外線を出射面20aら出射可能な半導体素子である。紫外線発光素子20は、ウィルス等の不活化の観点から、例えばピーク波長が220~280nm、好ましくは265nm近傍の波長の紫外線を出射する、UVC-LEDである。このような紫外線は、深紫外線と呼ばれ、ウィルス等の不活化に有効であるとともに、波長が短いため、屈折率が大きく、レンズ体40を近接配置することで、紫外線を効果的に取り出すことができる。
【0028】
紫外線発光素子20は、異種の電導型の半導体層が例えばエピタキシャル成長により積層されて構成される。本例では、紫外線発光素子20は、p型半導体層21と、n型半導体層23と、これらの半導体層の間に形成された活性領域層22と、p型電極24と、n型電極25とを含み構成されている。これらの半導体層は、紫外線発光に適切な材料であれば良く、例えば、窒化物半導体が選択される。
【0029】
接合部材30は、紫外線発光素子20とレンズ体40とを密着接合するための透光性の接着部材である。一例として、接合部材30は、非晶質フッ素樹脂材料からなる。他の例として、接合部材30は、シラノールを主成分とする樹脂材料からなる。例えば、前記接合部材30は、SiとOとCとを含む化合物材料であり、Cの含有量が1ppmより大きく40%より小さいことが好ましい。より具体的には、接合部材30は、シラノール基を含有し、かつ、シロキサン結合により形成された環状構造を有する環状シラノール、及びその脱水縮合物を含むシラノール組成物の硬化物であり得る。このような接合部材30の材料は、紫外線の透過性に優れ、加熱成形により流動性を持たせることができる。
【0030】
後述するように、レンズ体40の入射面(底面)40a、すなわち、紫外線発光素子20の出射面20aに対向する面は、凸状に形成されているため、接合部材30は、このようなレンズ体40入射面40aの立体的な形状を受けて、紫外線発光素子20とレンズ体40との接合強度を保持しつつ、接合部材30内の気泡の残留を抑制するために必要な適切な厚さを有する。接合部材30の最も薄い部分での厚さは、例えば、0.3以上5μm以下であり得る。また、接合部材30の他の部分での厚さは、0.5μmより大きく10μm以下であり得る。接合部材30の厚さは、紫外線発光素子20の出射面20aとレンズ体40の入射面40aとの距離を規定する。
【0031】
レンズ体40は、例えば、紫外線発光素子20から出射された紫外線を効率的に発散又は収束させて出射するための光学部材である。レンズ体40は、紫外線の出射効率向上の観点から、そのサイズが紫外線発光素子20のサイズよりも大きくなるように設計される。レンズ体40は、例えば、石英やサファイア等の材料からなり、また、強度や量産性の観点から、シリカを含む材料がより好ましい。
【0032】
本開示では、レンズ体40の出射面40bは、複数の凸状光学要素部分を含み構成される。図2に示すような、フレネルレンズ(同図(a))、リニアフレネルレンズ(同図(b))、レンチキュラーレンズ(同図(c))、プリズムレンズ(同図(d))、及びフライアイレンズ(同図(e)及び(f))等並びにこれらの組み合わせは、複数の凸状光学要素部分を含み構成されたレンズ体40の一例である。本開示では、レンズ体40の複数の凸状光学要素部分の少なくともいくつかは、図1の線Aで示されるように、同じ高さとなるように形成されている。また、レンズ体40は、平面視で、円形形状であっても良いし、矩形形状であっても良い。本例では、レンズ体40は、平面視で、略正方形であるものとする。
【0033】
一方、レンズ体40の入射面40aは、紫外線発光素子20の出射面に向けて凸状に形成されている。この凸状の部分は、レンズ体40の入射面40aの全体に亘って1つである。これにより、レンズ体40の入射面40aは、紫外線発光素子20の出射面20aに接合部材30を介して押圧されたときに、接合部材30内の気泡を効果的に外周縁方向に押しやることができるように形成されている。すなわち、レンズ体40の入射面40aの中央部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離は、該中央部を取り囲むレンズ体40の周囲部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離よりも短くなるように規定される。つまり、接合部材30は、紫外線発光素子20とレンズ体40との距離を規定している。
【0034】
より具体的には、図3に示すように、レンズ体40を平面視した面領域を9分割した場合、該面領域は、レンズ体40の中央部及びこれを取り囲む8つの周囲部に分けられる。この場合、レンズ体40の入射面40aと紫外線発光素子20の出射面20aとの距離的関係は、レンズ体40の入射面40aの中央部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離の平均値δ1が、該中央部を取り囲むレンズ体の周囲部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離の平均値δ1よりも小さくなるように規定される。一例として、レンズ体40の入射面40aの中央部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離の平均値δ1は、0.3以上5μm以下であり得る。また、レンズ体40の入射面40aの周囲部と紫外線発光素子20の出射面20aとの距離の平均値δ1は、0.5μmより大きく10μm以下であり得る。したがって、接合部材30は、過度の熱応力を抑えつつ、深紫外線の吸収を最小限に抑えることができる。
【0035】
上述したように、レンズ体40は、接合部材30を介して紫外線発光素子20の出射面上に押圧されて、紫外線発光素子20と密着接合される。本開示では、レンズ体40の出射面(上面)系に形成された複数の凸状光学要素部分のいくつかは、同じ高さとなるように形成されているため、レンズ体40の上面に力を加えて安定的に接合部材30に押し付けることができるようになる。すなわち、凸型レンズのように、レンズ体40の上面が凸状に形成されていると、最も盛り上がった中央部のみに力を加えることになり、レンズ体40が安定せず、正しく紫外線発光素子20に接合できないおそれがある。しかしながら、本開示のように、複数の凸状光学要素部分のいくつかの高さを同一に揃えておくことで、押圧時の力を均等に分散させることができ、レンズ体40を安定的に押し付けて密着接合させることができるようになる。一方で、レンズ体40の入射面(底面)は、全体にわたって1つの凸状に形成されているため、密着接合時に、接合部材30中の気泡を外周縁方向に押しやることで気泡の残留をなくすことができるようになる。また、レンズ体40底面のこのような単純な凸形状により、紫外線発光素子20の出射面との間に介在する接合部材30の量を少なくすることができ、熱応力を低減するとともに、紫外線吸収の影響を抑えることができる。更に、レンズ体40のサイズは、紫外線発光素子20のサイズに対して大きいため、接合部材30がレンズ体40の周縁に回り込むことを防止することができる。
【0036】
次に、上述した紫外線発光装置1の製造方法について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る紫外線発光装置の製造方法の一例を説明するための模式図である。本例では、紫外線発光素子20とレンズ体40との接合部材30として、シラノールを主成分とする樹脂材料を用いるものとする。
【0037】
まず、シリコン基板上にエピタキシャル成長により、n型半導体層23、活性領域層22、p型半導体層21の順で成膜し、絶縁酸化膜を含む多層膜を形成し、更に、これにp型電極25及びn型電極24を形成し、これにより、紫外線発光素子20が形成された半導体基板を作製する。その後、半導体基板は、グラインドされて、フリップチップ実装により支持基板10と一体化され、レンズ体40接合前の紫外線発光装置(パッケージ基板P)を得る(図4(a))。
【0038】
次に、パッケージ基板Pの上面、すなわち、紫外線発光素子20の出射面20a上に所定量の接合部材30を滴下又は塗布等して接着層を形成する(図4(b))。続いて、その接着層上に、レンズ体40を載置して、レンズ体40の上面から約1200gの荷重Fを所定の時間かける(図4(c))。このとき、レンズ体40の下面は凸状に形成されているため、接合部材30は、中央部から周辺部に押しやられることになる。
【0039】
荷重を止めた後、レンズ体40が載置されたパッケージ基板を60℃で1回目の加熱処理を行い、続いて、120℃で2回目の加熱処理を行う(図4(d))。1回目の加熱処理及び/又は2回目の加熱処理において、レンズ体40に荷重をかけても良い。
【0040】
以上により、紫外線発光素子20の出射面上に接合部材30を介してレンズ体40が直接的に取り付けられた紫外線発光装置1が得られることになる。
【0041】
上述した製造方法においては、紫外線発光素子20の出射面20a上に接合部材30を形成し、レンズ体40を配置した後、加熱処理を行ったが、これに限られない。例えば、紫外線発光素子20の出射面上に接合部材30を形成した後、1回目の加熱処理を行い、レンズ体40を載置して荷重をかけた後又は荷重をかけながら、2回目の加熱処理を行うようにしても良い。
【0042】
また、接合部材30として、シラノールを主成分とする樹脂材料に代えて、非晶質フッ素を主成分とする樹脂材料を用いる場合、加熱処理は以下のようになる。
【0043】
すなわち、紫外線発光素子20を含むパッケージ基板を、例えばホットプレート上で加熱し、接合部材30として、溶剤を含む熱可塑性の非晶質フッ素樹脂材料を塗布し、120~200℃の加熱温度で0.5~2時間放置し、溶剤を除去する。
【0044】
次に、加熱温度を260~270℃程度に上昇させて、所定時間保持する。その結果、接合部材30の流動性が高くなり、接合部材30は、紫外線発光素子20の出射面の全面に広がり、接合層を形成する。
【0045】
次に、パッケージ基板が加熱された状態を保持しながら、層状の接合部材30の上にレンズ体40を載置して、上面から荷重をかけて、紫外線発光素子20とレンズ体40とを密着接合する。
【0046】
なお、熱可塑性の非晶質フッ素樹脂と溶媒を含む接合部材30としては、旭硝子社製の「サイトップ(登録商標)」を使用することができる。例えば、サイトップ(登録商標)CTX-809SP2に含まれる樹脂は、パーフルオロアルキル基を有する非晶質フッ素樹脂である。この樹脂は、厚さ50μmで、波長265nmにおける透過率が98%であり、210nm以上300nm未満の全範囲における透過率は90%以上である。
【0047】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0048】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0049】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…紫外線発光装置
10…支持基板
20…紫外線発光素子
20a…出射面
21…p型半導体層
22…活性領域層
23…n型半導体層
24…p型電極
25…n型電極
30…接合部材
40…レンズ体
40a…入射面
40b…出射面
図1
図2
図3
図4