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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173302
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231130BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085462
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新関 智彦
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB14
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD25
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084FF25
2G084FF27
2G084FF29
2G084FF39
2G084HH02
2G084HH12
2G084HH16
2G084HH19
2G084HH30
2G084HH55
5F004AA09
5F004BA08
5F004BB07
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA37
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】エッチングの中盤以降においても不均一なCD(Critical Dimension)拡大領域の発生を抑制できる基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、基板処理装置における基板処理方法であって、基板処理装置は、チャンバと、チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、基板の中心に対向する上部電極と、上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、を備え、エッチング中における複数の電磁石の極性変更パターンを選択する工程と、チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、極性変更パターンに基づいて、基板をエッチングする工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置における基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記基板の中心に対向する上部電極と、
前記上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、
を備え、
エッチング中における前記複数の電磁石の極性変更パターンを選択する工程と、
前記チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、前記極性変更パターンに基づいて、前記基板をエッチングする工程と、
を有する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記極性変更パターンは、前記複数の電磁石のうち、隣接する電磁石の極性を交互に変更するパターンである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記極性変更パターンは、前記複数の電磁石のうち、一の電磁石が隣接する複数の電磁石の組において、前記電磁石の極性の一部を交互に変更するパターンである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記極性変更パターンは、前記上部電極面内の領域ごとに異なるパターンが設定される、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記交互の切り替えの周期は、エッチング時間の10%以下の時間である、
請求項2又は3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記周期は、前記エッチング時間に比例して長くなる、
請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記複数の電磁石の設定電流値の大きさは、前記エッチング時間に比例して大きくなる、
請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記エッチングする工程は、前記極性変更パターンに基づく前記複数の電磁石の極性変更を、前記プラズマによる処理の開始から所定の時間の経過後に開始する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記所定の時間は、エッチングによる形状の深さが、目標となる深さの中間以降となる時間である、
請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記エッチングによる形状は、アスペクト比が30以上である、
請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記エッチングによる形状は、前記基板上に形成された酸化膜と窒化膜の積層膜、又は、前記酸化膜とシリコン膜の積層膜に形成される、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記基板の中心に対向する上部電極と、
前記上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、エッチング中における前記複数の電磁石の極性変更パターンを選択するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、前記極性変更パターンに基づいて、前記基板をエッチングするよう前記基板処理装置を制御するように構成される、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された膜に対する高アスペクト比のエッチングにおいて、垂直な側壁形状を得るために、イオン(荷電粒子)と中性エッチャント(Cold Radical)とを制御することが知られている。また、処理空間のプラズマ密度の分布を容易に変更するために、上部電極の外側に電磁石を配置して電磁石の磁極を制御することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-149722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングの中盤以降においても不均一なCD(Critical Dimension)拡大領域の発生を抑制できる基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、基板処理装置における基板処理方法であって、基板処理装置は、チャンバと、チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、基板の中心に対向する上部電極と、上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、を備え、エッチング中における複数の電磁石の極性変更パターンを選択する工程と、チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、極性変更パターンに基づいて、基板をエッチングする工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。
図2図2は、側壁形状の垂直化の要素の一例を示す図である。
図3図3は、プラズマ処理空間に発生する磁界の一例を示す図である。
図4図4は、シャワーヘッドの下面側から見た極性変更を行う電磁石の組の一例を示す図である。
図5図5は、電磁石の極性変更パターンの一例を示す図である。
図6図6は、イオンの入射角度の歳差運動による穴の拡大方向の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態におけるエッチング処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板処理方法及び基板処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
上述のように、垂直な側壁形状を得るために、イオンと中性エッチャントとを制御する場合、イオンは、入射角の分布(Ion Angular Distribution)が狭くなるように制御することによりボトム(Btm)形状の矩形化に寄与してきた。また、中性エッチャントは、側壁保護ガスとの組み合わせにより、ボトムCDの拡大に寄与してきた。しかしながら、さらなる高アスペクト比を求めた場合、マスクで反跳されたイオンが対角方向の側壁に集中入射することで、不均一なCD拡大領域、つまりボーイング(Bowing(1st,2nd,…))が生じることがある。不均一なCD拡大領域は、ハードマスクがエッチングされてファセット(Facet)形状を呈し始めるエッチングの中盤以降で顕在化し始める。そこで、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制することが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理システムの構成]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。図1に示すように、プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
電磁石50は、上部電極を含むシャワーヘッド13のプラズマ処理空間10sと反対側である上面に略放射状に複数配置される。電磁石50は、鉄心からなる棒状のヨーク50aと、ヨーク50aの側面に巻回されて両端が引き出される導線からなるコイル50bとを有する。電磁石50は、図示しないコントローラによってコイル50bへ流す電流の値や電流の向きを制御して、電磁石50が発生する全磁束や磁束の向きを任意に変化させることができる。なお、電磁石50は、エッチングの初期においては、ヨーク50aのヒステリシスによるバイアス磁場を消すための電流が流され、磁場を発生しないように制御される。
【0024】
複数の電磁石50は、例えば、中央部対向群51と、周縁部対向群52と、外側対向群53とに分けられる。中央部対向群51には、基板Wの中心に対向する電磁石50が含まれる。周縁部対向群52には、基板Wの中心に対向するシャワーヘッド13(上部電極)の中心に対して円環状に配置され、かつ、基板Wの周縁部に対向する複数の電磁石50が含まれる。外側対向群53には、シャワーヘッド13(上部電極)の中心に対して円環状に配置され、かつ、周縁部対向群52よりも外側に配置されて基板Wとは対向しない複数の電磁石50が含まれる。なお、中央部対向群51と、周縁部対向群52との間、及び、周縁部対向群52と、外側対向群53との間にも、複数の電磁石50が配置されてもよい。また、中央部対向群51には、複数の電磁石50が含まれてもよい。
【0025】
プラズマ処理装置1では、例えば、周縁部対向群52の各電磁石50におけるプラズマ処理空間10s側の磁極が全て同じとなるように各電磁石50のコイル50bへ流す電流の向きが制御される。また、例えば、外側対向群53の各電磁石50におけるプラズマ処理空間10s側の磁極が全て同じとなるように各電磁石50のコイル50bへ流す電流の向きが制御される。さらに、プラズマ処理装置1では、例えば、隣接する電磁石50や、一の電磁石50が隣接する複数の電磁石50の組において、選択された極性変更パターンに基づいて、エッチング処理中に極性を変更するように制御される。
【0026】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0027】
[側壁形状の垂直化の要素]
ここで、図2を用いて高アスペクト比(HAR:High Aspect Ratio)エッチングにおける側壁形状の垂直化の要素について説明する。図2は、側壁形状の垂直化の要素の一例を示す図である。図2に示す状態60~62は、従来のイオンと中性エッチャントとを制御した場合における穴の側壁の状態変化を示している。また、状態63は、本実施形態におけるイオンの法線方向を歳差運動させた場合における穴の側壁の状態変化を示している。
【0028】
状態60は、被エッチング膜70に対してマスク71で規定された開口72によるエッチングにおいて、イオンエネルギー(Ei)及びイオンフラックス(Γi)を高くしたイオン73によって穴74の形状をテーパ状から垂直へと漸近させる状態を表している。状態61は、穴74の側壁を保護しつつ、中性エッチャント75によるオーバーエッチング(OE)により、ボトムCD76を拡大させる状態を表している。状態62は、エッチングが進みファセット形状となったマスク71aによってイオン77が反跳され、イオン77が軌跡78a,78bで示すように穴74の対角方向の側壁に集中入射するようになり、深さ方向に離散的なCD拡大領域(Bow)79a,79bが発生する状態を表している。
【0029】
これに対し、状態63では、イオン77aの入射角度が法線方向の歳差運動により変化するため、マスク71aによってイオン77aが反跳されても、軌跡78c~78eに示すように穴74aの側壁の特定の場所に集中入射しない。従って、穴74aの側壁では、CD拡大領域の発生を抑制することができる。本実施形態では、状態63に示すように、イオン77aの法線方向を電磁石50の磁界により歳差運動させることで、CD拡大領域の発生を抑制する。
【0030】
[電子密度の分布と制御]
次に、図3から図6を用いて、プラズマ処理空間10sにおける電子密度(Ne)の分布と制御について説明する。図3は、プラズマ処理空間に発生する磁界の一例を示す図である。図4は、シャワーヘッドの下面側から見た極性変更を行う電磁石の組の一例を示す図である。なお、図4では、電磁石50を透過して表している。
【0031】
図3に示すように、プラズマ処理装置1では、例えば、中央部対向群51における電磁石50のプラズマ処理空間10s側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群52及び外側対向群53における各電磁石50のプラズマ処理空間10s側の磁極をS極に設定する。すると、中央部対向群51から周縁部対向群52や外側対向群53に向けて放射状に磁界Bが発生する。このとき、プラズマ処理空間10sには電界Eが発生しているので、プラズマ処理空間10s中の電子は、電界E及び磁界Bに起因するローレンツ力を受けてドリフトする。具体的には、図4において手前から奥に向けて電界Eが発生し、かつ、シャワーヘッド13(上部電極)の中心に対して放射状に磁界Bが発生する。このため、電子は、フレミング左手の法則に従い、シャワーヘッド13(上部電極)の中心と同心円の円周の接線方向に加速度を受けて円状の電子軌跡Dに沿って旋回する。このとき、旋回する電子は、プラズマ処理空間10s中の処理ガスの分子や原子と衝突してプラズマを生成する。その結果、円状の電子軌跡Dに沿って円環状のプラズマが発生する。
【0032】
ここで、特定の電磁石50を制御して磁界Bの強度を大きくすると、電子のドリフト運動の速度が低下し、特定の電磁石50に対応する箇所の電子密度が上昇する。つまり、電子密度(Ne)をテーブルクロスに例えると、各電磁石50の位置に凹凸(シース厚さの変化)を作ることで、局所的に任意の角度及び方向の傾きを実現することができる。すなわち、電子密度の分布に基づくイオンの入射角度を、電磁石50によって制御することができる。また、電子密度が上昇した箇所は、電子と処理ガスの分子や原子との衝突機会が増加するため、プラズマ密度が上昇する。
【0033】
電子密度を基板Wの面内(二次元)で制御するには、動径方向(Radial)と、方位角方向(Azimuth)とに複数の電磁石50を分割し、電子密度を位相差で制御すればよい。これにより、イオンの法線方向(入射角度)を歳差運動させることができる。そこで、本実施形態では、例えば、隣接する電磁石50である、中央部対向群51の電磁石50と、周縁部対向群52の電磁石50との組80を設ける。また、例えば、一の電磁石50が隣接する複数の電磁石50の組である、周縁部対向群52の電磁石50と、外側対向群53の電磁石50との組81を設ける。なお、組80,81は、円周方向に複数設けられる。また、組80,81は、それぞれ設けてもよいし、組80と組81の一方を設けるようにしてもよい。さらに、図4に示す複数の電磁石50の数は一例であるので、電磁石50をシャワーヘッド13の全域に配置し、任意の隣接する電磁石50を組80としてもよいし、任意の一の電磁石50が隣接する複数の電磁石50を組81としてもよい。そして、電子密度を位相差で制御するには、複数の組80,81それぞれにおいて、電磁石50の極性を変更する。
【0034】
図5は、電磁石の極性変更パターンの一例を示す図である。なお、図5で示す極性は、図4と同様に、シャワーヘッド13の下面側から見ているものとする。図5に示す極性変更パターン150,160は、それぞれ、上述の電磁石50の組80,81に対応する極性変更パターンの一例である。極性変更パターン150は、組80の隣接する電磁石50において、一方をN極、他方をS極とした状態151と、N極とS極とを入れ替えた状態152とを繰り返すパターンである。つまり、極性変更パターン150は、複数の電磁石50のうち、隣接する電磁石50の極性を交互に変更するパターンの一例である。
【0035】
極性変更パターン160は、組81の4つの電磁石50において、隣接する2つの電磁石50を同じ極性とし、極性が回転するように変更するパターンである。極性変更パターン160において、状態161では、図5中、上側の2つの電磁石50をS極、下側の2つの電磁石50をN極としている。状態162では、図5中、右側の2つの電磁石50をS極、左側の2つの電磁石50をN極としている。状態163では、図5中、下側の2つの電磁石50をS極、上側の2つの電磁石50をN極としている。状態164では、図5中、左側の2つの電磁石50をS極、右側の2つの電磁石50をN極としている。つまり、極性変更パターン160は、状態161~164を繰り返すパターンである。すなわち、極性変更パターン160は、複数の電磁石50のうち、一の電磁石50が隣接する複数の電磁石50の組において、電磁石50の極性の一部を交互に変更するパターンの一例である。
【0036】
また、電磁石50の極性変更パターンは、シャワーヘッド13(上部電極)の面内を動径方向及び方位角方向に分割した複数の領域について、領域ごとに異なるパターンが設定されてもよい。例えば、動径方向について、中心領域、ミドル領域及びエッジ領域に3分割し、中心領域は極性変更パターン150を用いて極性変更し、ミドル領域及びエッジ領域は極性変更パターン160を用いて極性変更するようにしてもよい。方位角方向についても同様に、分割された領域ごとに異なる極性変更パターンを用いて極性変更するようにしてもよい。
【0037】
極性変更パターン150,160において、電磁石50の極性を交互に切り替える周期は、例えば、エッチング時間の10%以下の時間とする。これは、深さ方向のエッチング速度と比較した場合、側壁がエッチングされる速度は遅いため、側壁のエッチング速度に応じた周期としているためである。例えば、エッチング時間が5分~20分であれば、10秒~120秒周期で電磁石50の極性を切り替える。
【0038】
また、電磁石50の極性を交互に切り替える周期は、例えば、エッチング時間に比例して長くなるようにしてもよい。これは、エッチングが深くなるに従ってエッチレートが低下するので、周期を長くすることで、より垂直にエッチングすることができるためである。さらに、各電磁石50の設定電流値の大きさは、エッチング時間に比例して、つまりエッチングの進行に伴って大きくなるようにしてもよい。これは、エッチングが深くなるに従って入射するイオンの法線方向の角度、つまり、歳差運動の軸の傾きを大きくすることで、より垂直にエッチングすることができるためである。
【0039】
また、極性変更パターン150,160に基づく各電磁石50の極性変更は、プラズマによる処理の開始から所定の時間の経過後に開始される。これは、マスクの開口がファセット形状となってから、イオンの入射角度を歳差運動させることで、不均一なCD拡大領域の発生を抑制するためである。
【0040】
図6は、イオンの入射角度の歳差運動による穴の拡大方向の一例を示す図である。図6に示す状態85は、被エッチング膜90のエッチングの中盤以降において、電磁石50の極性を、例えば、極性変更パターン150,160によって変更しながらエッチングした場合を示している。また、状態85のA-A断面(Top)を断面86として表し、状態85のB-B断面(Botom)を断面87として表している。ここで、被エッチング膜90は、例えば、酸化膜と窒化膜の積層膜、又は、酸化膜とシリコン膜の積層膜を用いることができる。つまり、エッチングにより形成される穴94は、これらの積層膜に形成される。また、穴94のアスペクト比は、30以上であるとする。
【0041】
状態85では、マスク91がファセット形状となっている。このとき、各電磁石50の極性が制御されることで、開口92から穴94内に入射するイオン93の軌跡を、軌跡95に示すように歳差運動させる。これにより、基板Wの平面方向をX,Y軸、深さ方向をZ軸とした場合、断面87では、穴94の断面がXY方向に均等に広がることになる。なお、図6に示すように、イオン93の軌跡を歳差運動させることで、断面87における穴94の大きさは、断面86における穴94の大きさよりも大きくする(逆テーパ形状とする)ことができる。
【0042】
[エッチング方法]
次に、本実施形態に係るエッチング方法について説明する。図7は、本実施形態におけるエッチング処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
本実施形態に係るエッチング方法では、制御部2は、図示しない開口部を開放し、プラズマ処理チャンバ10内に、被エッチング膜が形成された基板Wが搬入され、基板支持部11の中央領域111aに載置される。基板Wは、静電チャック1111に直流電圧が印加されることで静電チャック1111に保持される。制御部2は、その後、開口部を閉鎖して排気システム40を制御することにより、プラズマ処理空間10sの雰囲気が所定の真空度になるように、プラズマ処理空間10sから気体を排気する。また、制御部2は、図示しない温調モジュールを制御することにより、基板Wの温度が所定の温度となるように、温度調整される(ステップS1)。
【0044】
次に、制御部2は、エッチング中における各電磁石50の極性変更パターンを選択する(ステップS2)。制御部2は、例えば、予めエッチング処理のレシピとともに記憶された極性変更パターンを読み出して、当該極性変更パターンを選択するようにしてもよいし、プラズマ処理システムの操作者から極性変更パターンの選択を受け付けるようにしてもよい。
【0045】
続いて、制御部2は、処理ガスをガス供給口13aに供給するようにガス供給部20を制御する。処理ガスは、ガス供給口13aからガス拡散室13b及び複数のガス導入口13cを介して、プラズマ処理チャンバ10のプラズマ処理空間10sに導入される。
【0046】
制御部2は、第1のRF生成部31aを制御することにより、プラズマ励起用のソースRF信号を下部電極を含む基板支持部11に供給する。プラズマ処理空間10sには、プラズマ励起用のソースRF信号が供給されることにより、プラズマが発生する。また、制御部2は、第2のRF生成部31bを制御することにより、バイアスRF信号を下部電極を含む基板支持部11に供給する。基板Wは、プラズマ処理空間10sに発生したプラズマにより被エッチング膜がエッチングされる。つまり、制御部2は、基板Wの被エッチング膜のエッチングを開始するように第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを制御する(ステップS3)。
【0047】
制御部2は、エッチング処理のレシピに基づいて、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。ここで、所定の時間は、エッチングによる形状の深さが、目標となる深さの中間以降となる時間である。つまり、制御部2は、エッチングが中盤以降に差し掛かったか否かを判定する。制御部2は、所定の時間が経過していないと判定した場合(ステップS4:No)、引き続き、エッチング及びステップS4の判定を継続する。
【0048】
制御部2は、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS4:Yes)、選択された極性変更パターンに基づいて、各電磁石50を制御し、各電磁石50の極性変更を開始する(ステップS5)。なお、極性変更が開始されても、プラズマによるエッチングは継続して行われている。
【0049】
制御部2は、エッチング処理により、所定の形状が得られたか否かを判定する(ステップS6)。なお、所定の形状が得られたか否かの判定は、例えば、レシピに基づく所定の処理時間の経過等によって判定される。制御部2は、所定の形状が得られていないと判定した場合(ステップS6:No)、引き続き、エッチング及びステップS6の判定を継続する。一方、制御部2は、所定の形状が得られたと判定した場合(ステップS6:Yes)、処理を終了する。
【0050】
制御部2は、処理を終了する場合、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを制御することにより、下部電極へのRF信号の供給を停止する。制御部2は、図示しない開口部を開放する。基板Wは、開口部を介してプラズマ処理チャンバ10のプラズマ処理空間10sから搬出される。
【0051】
以上、本実施形態によれば、基板処理装置(プラズマ処理システム)は、チャンバ(プラズマ処理チャンバ10)と、チャンバ内で基板Wを支持するように構成された基板支持部11と、基板Wの中心に対向する上部電極(シャワーヘッド13)と、上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石50と、制御部2とを備える。制御部2は、エッチング中における複数の電磁石50の極性変更パターン(150,160)を選択するよう基板処理装置を制御するように構成される。また、制御部2は、チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、極性変更パターンに基づいて、基板Wをエッチングするよう基板処理装置を制御するように構成される。その結果、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、極性変更パターンは、複数の電磁石50のうち、隣接する電磁石50の極性を交互に変更するパターンである。その結果、イオンの法線方向(入射角度)を歳差運動させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、極性変更パターンは、複数の電磁石50のうち、一の電磁石50が隣接する複数の電磁石50の組において、電磁石50の極性の一部を交互に変更するパターンである。その結果、イオンの法線方向(入射角度)を歳差運動させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、極性変更パターンは、上部電極面内の領域ごとに異なるパターンが設定される。その結果、上部電極面内の領域ごとに、イオンの法線方向(入射角度)の歳差運動を制御することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、交互の切り替えの周期は、エッチング時間の10%以下の時間である。その結果、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、周期は、エッチング時間に比例して長くなる。その結果、より垂直にエッチングすることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、複数の電磁石50の設定電流値の大きさは、エッチング時間に比例して大きくなる。その結果、エッチングが深くなるに従って入射するイオンの歳差運動の軸の傾きを大きくすることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、エッチングする工程は、極性変更パターンに基づく複数の電磁石50の極性変更を、プラズマによる処理の開始から所定の時間の経過後に開始する。その結果、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、所定の時間は、エッチングによる形状の深さが、目標となる深さの中間以降となる時間である。その結果、エッチングの中盤以降においても不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、エッチングによる形状は、アスペクト比が30以上である。その結果、高アスペクト比の穴や溝等の形状において、不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、エッチングによる形状は、基板W上に形成された酸化膜と窒化膜の積層膜、又は、酸化膜とシリコン膜の積層膜に形成される。その結果、積層膜のエッチングにおいて、不均一なCD拡大領域の発生を抑制できる。
【0062】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0063】
また、上記した実施形態では、電磁石50として鉄心からなる棒状のヨーク50aを有する電磁石50を用いた場合を説明したが、これに限定されない。例えば、空芯コイルの電磁石を用いてもよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、プラズマ源として容量結合型プラズマを用いて基板Wに対してエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて基板Wに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は容量結合型プラズマに限られず、例えば、誘導結合型プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。例えば、誘導結合型プラズマを用いる場合、基板支持部11内の静電チャック1111の裏面側に電磁石50を配置することで、上記した実施形態と同様に、電子密度(Ne)の面内分布を形成することができる。また、例えば、誘導結合型プラズマを用いる場合、複数の誘導コイルを組み合わせて制御することにより、電子密度の面内分布を形成するようにしてもよい。
【0065】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
基板処理装置における基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記基板の中心に対向する上部電極と、
前記上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、
を備え、
エッチング中における前記複数の電磁石の極性変更パターンを選択する工程と、
前記チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、前記極性変更パターンに基づいて、前記基板をエッチングする工程と、
を有する、
基板処理方法。
(2)
前記極性変更パターンは、前記複数の電磁石のうち、隣接する電磁石の極性を交互に変更するパターンである、
前記(1)に記載の基板処理方法。
(3)
前記極性変更パターンは、前記複数の電磁石のうち、一の電磁石が隣接する複数の電磁石の組において、前記電磁石の極性の一部を交互に変更するパターンである、
前記(1)に記載の基板処理方法。
(4)
前記極性変更パターンは、前記上部電極面内の領域ごとに異なるパターンが設定される、
前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の基板処理方法。
(5)
前記交互の切り替えの周期は、エッチング時間の10%以下の時間である、
前記(2)又は(3)に記載の基板処理方法。
(6)
前記周期は、前記エッチング時間に比例して長くなる、
前記(5)に記載の基板処理方法。
(7)
前記複数の電磁石の設定電流値の大きさは、前記エッチング時間に比例して大きくなる、
前記(5)又は(6)に記載の基板処理方法。
(8)
前記エッチングする工程は、前記極性変更パターンに基づく前記複数の電磁石の極性変更を、前記プラズマによる処理の開始から所定の時間の経過後に開始する、
前記(1)~(7)のいずれか1つに記載の基板処理方法。
(9)
前記所定の時間は、エッチングによる形状の深さが、目標となる深さの中間以降となる時間である、
前記(8)に記載の基板処理方法。
(10)
前記エッチングによる形状は、アスペクト比が30以上である、
前記(9)に記載の基板処理方法。
(11)
前記エッチングによる形状は、前記基板上に形成された酸化膜と窒化膜の積層膜、又は、前記酸化膜とシリコン膜の積層膜に形成される、
前記(10)に記載の基板処理方法。
(12)
基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記基板の中心に対向する上部電極と、
前記上部電極の中心に対して放射状に配置された複数の電磁石と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、エッチング中における前記複数の電磁石の極性変更パターンを選択するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記チャンバ内に供給された処理ガスからプラズマを生成し、前記極性変更パターンに基づいて、前記基板をエッチングするよう前記基板処理装置を制御するように構成される、
基板処理装置。
【符号の説明】
【0066】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
50 電磁石
51 中央部対向群
52 周縁部対向群
53 外側対向群
80,81 組
150,160 極性変更パターン
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7