(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173562
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】直列に連結されたポンプ装置の始動方法および停止方法
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20231130BHJP
F04B 49/035 20060101ALI20231130BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F04D15/00 D
F04B49/035 311
F04D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085897
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】本田 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 哲司
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】渡次 圭
(72)【発明者】
【氏名】菊池 日向
(72)【発明者】
【氏名】石見 光隆
【テーマコード(参考)】
3H020
3H130
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA02
3H020AA04
3H020AA05
3H020AA08
3H020BA02
3H020BA03
3H020BA25
3H020DA18
3H130AA06
3H130AB23
3H130AB42
3H130AB66
3H130AB68
3H130AC01
3H130BA82J
3H130BA87J
3H130CA13
3H130CA14
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB08Z
3H130DD01Z
3H130DG04X
3H130DG07X
3H130EC08A
3H130ED05J
3H145AA15
3H145AA16
3H145AA22
3H145AA25
3H145AA40
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA45
3H145DA19
3H145DA31
(57)【要約】
【課題】直列に連結された複数の潜没式ポンプのうち、運転停止中の潜没式ポンプの羽根車の回転を防止しつつ、他の潜没式ポンプを始動する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、ポンプ装置100Aの吸込み容器2A内に配置された潜没式ポンプ1Aを始動して、液化ガスを吸込み容器2A内の流路切り替え装置5Aを通じてポンプ装置100Bの吸込み容器2Bに移送し、液化ガスを、吸込み容器2B内に配置された潜没式ポンプ1Bをバイパスさせながら、液化ガスを吸込み容器2B内の流路切り替え装置5Bを通過させ、その後、潜没式ポンプ1Bを始動させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に連結された第1ポンプ装置および第2ポンプ装置を少なくとも含む複数のポンプ装置を始動する方法であって、
前記第1ポンプ装置の第1吸込み容器内に配置された第1潜没式ポンプを始動して、液化ガスを第1吸込み容器内の第1流路切り替え装置を通じて前記第2ポンプ装置の第2吸込み容器に移送し、
前記液化ガスを、前記第2吸込み容器内に配置された第2潜没式ポンプをバイパスさせながら、前記液化ガスを前記第2吸込み容器内の第2流路切り替え装置を通過させ、その後、
前記第2潜没式ポンプを始動させる、方法。
【請求項2】
前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、
ポンプ側流路、容器側流路、および流出流路を有する流路構造体と、
前記流路構造体内に配置され、前記流出流路を前記ポンプ側流路または前記容器側流路のいずれかに選択的に連通させる弁体を備えており、
前記ポンプ側流路は、前記対応する潜没式ポンプの吐出し口に連通し、
前記容器側流路は、前記対応する吸込み容器の内部に連通し、
前記流出流路は、前記対応する吸込み容器の吐出しポートに連通する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、前記弁体を前記流路構造体に対して押し付けて前記ポンプ側流路を閉じるばねをさらに備えている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のポンプ装置は、直列に連結された第3ポンプ装置および第4ポンプ装置をさらに含み、
前記第3ポンプ装置および前記第4ポンプ装置は、前記第1ポンプ装置および前記第2ポンプ装置と並列に配置されており、
前記第3ポンプ装置および前記第4ポンプ装置は、前記第1ポンプ装置および前記第2ポンプ装置と同一の構成を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ポンプ装置と前記第2ポンプ装置とを連結する連通ラインは、前記第3ポンプ装置と前記第4ポンプ装置とを連結する連通ラインに中間ヘッダにより連結されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
直列に連結された第1ポンプ装置および第2ポンプ装置を少なくとも含む複数のポンプ装置の運転を停止させる方法であって、
前記第1ポンプ装置の第1吸込み容器内に配置された第1潜没式ポンプにより、液化ガスを前記第1吸込み容器内の第1流路切り替え装置を通じて前記第2ポンプ装置の第2吸込み容器に移送しているときに、前記第2吸込み容器内に配置された第2潜没式ポンプの運転を停止させ、
前記液化ガスを前記第2潜没式ポンプをバイパスさせながら、前記液化ガスを前記第2吸込み容器内の第2流路切り替え装置を通過させ、その後、
前記第1潜没式ポンプの運転を停止させる、方法。
【請求項7】
前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、
ポンプ側流路、容器側流路、および流出流路を有する流路構造体と、
前記流路構造体内に配置され、前記流出流路を前記ポンプ側流路または前記容器側流路のいずれかに選択的に連通させる弁体を備えており、
前記ポンプ側流路は、前記対応する潜没式ポンプの吐出し口に連通し、
前記容器側流路は、前記対応する吸込み容器の内部に連通し、
前記流出流路は、前記対応する吸込み容器の吐出しポートに連通する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、前記弁体を前記流路構造体に対して押し付けて前記ポンプ側流路を閉じるばねをさらに備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のポンプ装置は、直列に連結された第3ポンプ装置および第4ポンプ装置をさらに含み、
前記第3ポンプ装置および前記第4ポンプ装置は、前記第1ポンプ装置および前記第2ポンプ装置と並列に配置されており、
前記第3ポンプ装置および前記第4ポンプ装置は、前記第1ポンプ装置および前記第2ポンプ装置と同一の構成を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1ポンプ装置と前記第2ポンプ装置とを連結する連通ラインは、前記第3ポンプ装置と前記第4ポンプ装置とを連結する連通ラインに中間ヘッダにより連結されている、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素、液体窒素、液化アンモニア、液化天然ガス、液化エチレンガス、液化石油ガスなどの液化ガスを移送する用途に使用される潜没式ポンプの始動方法および停止方法に関し、特に運転停止中の潜没式ポンプの羽根車の回転を防止しつつ、他の潜没式ポンプを始動および停止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、火力発電や化学原料として広く利用されている。また、水素は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生しないエネルギーとして期待されている。エネルギーとしての水素の用途には、燃料電池およびタービン発電などが挙げられる。天然ガスおよび水素は、常温では気体の状態であるため、これらの貯蔵および運搬のために、天然ガスおよび水素は冷却され、液化される。液化天然ガス(LNG)や液体水素などの液化ガスは、一旦液化ガス貯槽に貯蔵された後、ポンプによって発電所や工場などに移送される。
【0003】
図11は、液化ガスを汲み上げるためのポンプ装置の従来例を示す模式図である。ポンプ500は、液化ガスが貯蔵された液化ガス貯槽(図示せず)に接続された縦型吸込み容器505内に設置される。液化ガスは、吸込みポート501を通じて吸込み容器505内に導入され、吸込み容器505内は液化ガスで満たされる。ポンプ500の全体は液化ガス中に浸漬される。したがって、ポンプ500は、液化ガス中で運転可能な潜没式ポンプである。ポンプ500が運転されると、液化ガスはポンプ500によって吐出しポート502を通じて排出される。ポンプ500の運転中、吸込み容器505内の液化ガスの一部は気化してガスになり、このガスはベントライン503を通じて吸込み容器505から排出される。
【0004】
需要側で必要とされる圧力にまで液化ガスを加圧するために、
図12に示すように、複数のポンプ装置が直列に連結されることがある。液化ガスは、複数のポンプ装置のポンプ500によって順次加圧される。複数のポンプ装置を始動する際には上流側のポンプ500から順に始動し、停止する際には下流側のポンプ500から順に停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59-159795号公報
【特許文献2】実公昭62-031680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、直列に連結されたポンプ装置を順に始動または停止するとき、次のような問題が生じる。すなわち、最初のポンプ500を始動すると、停止しているポンプ500内に液化ガスの流れを生じさせる。その結果、停止中のポンプ500の羽根車を強制的に回転させて、軸受などの摺動部を損傷させてしまう。
【0007】
ポンプ500が運転されているときは、液化ガスは羽根車の回転によって加圧されるので、ポンプ500内に配置されているスラストバランス機構が機能し、軸受などの摺動部に過度な負荷が掛かることはない。しかしながら、ポンプ500の停止中にはスラストバランス機構は機能せず、他のポンプ500から送り込まれる液化ガスは羽根車を強制的に回転させ、結果として、軸受などの摺動部を損傷させてしまう。特に、液化ガスは低粘度であり、羽根車の意図しない回転により軸受などの摺動部が摩耗しやすい。また、下流側のポンプ500を停止する際には、上流側のポンプ500がまだ運転中の為、同じ事が起きる。ポンプ500の故障に起因してポンプ500が突然停止した場合にも同じ問題が起こる。
【0008】
そこで、本発明は、直列に連結された複数の潜没式ポンプのうち、運転停止中の潜没式ポンプの羽根車の回転を防止しつつ、他の潜没式ポンプを始動および停止する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、直列に連結された第1ポンプ装置および第2ポンプ装置を少なくとも含む複数のポンプ装置を始動する方法であって、前記第1ポンプ装置の第1吸込み容器内に配置された第1潜没式ポンプを始動して、液化ガスを第1吸込み容器内の第1流路切り替え装置を通じて前記第2ポンプ装置の第2吸込み容器に移送し、前記液化ガスを、前記第2吸込み容器内に配置された第2潜没式ポンプをバイパスさせながら、前記液化ガスを前記第2吸込み容器内の第2流路切り替え装置を通過させ、その後、前記第2潜没式ポンプを始動させる、方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、ポンプ側流路、容器側流路、および流出流路を有する流路構造体と、前記流路構造体内に配置され、前記流出流路を前記ポンプ側流路または前記容器側流路のいずれかに選択的に連通させる弁体を備えており、前記ポンプ側流路は、前記対応する潜没式ポンプの吐出し口に連通し、前記容器側流路は、前記対応する吸込み容器の内部に連通し、前記流出流路は、前記対応する吸込み容器の吐出しポートに連通する。
【0011】
一態様では、直列に連結された第1ポンプ装置および第2ポンプ装置を少なくとも含む複数のポンプ装置の運転を停止させる方法であって、前記第1ポンプ装置の第1吸込み容器内に配置された第1潜没式ポンプにより、液化ガスを前記第1吸込み容器内の第1流路切り替え装置を通じて前記第2ポンプ装置の第2吸込み容器に移送しているときに、前記第2吸込み容器内に配置された第2潜没式ポンプの運転を停止させ、前記液化ガスを前記第2潜没式ポンプをバイパスさせながら、前記液化ガスを前記第2吸込み容器内の第2流路切り替え装置を通過させ、その後、前記第1潜没式ポンプの運転を停止させる、方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記第1流路切り替え装置および前記第2流路切り替え装置のそれぞれは、ポンプ側流路、容器側流路、および流出流路を有する流路構造体と、前記流路構造体内に配置され、前記流出流路を前記ポンプ側流路または前記容器側流路のいずれかに選択的に連通させる弁体を備えており、前記ポンプ側流路は、前記対応する潜没式ポンプの吐出し口に連通し、前記容器側流路は、前記対応する吸込み容器の内部に連通し、前記流出流路は、前記対応する吸込み容器の吐出しポートに連通する。
【発明の効果】
【0013】
潜没式ポンプの始動および停止時では、流路切り替え装置は、液化ガスを運転停止中の潜没式ポンプをバイパスさせることができる。したがって、運転停止中の潜没式ポンプの羽根車は回転せず、結果として潜没式ポンプの軸受などの摺動部の損傷が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】液化ガスを移送するためのポンプ装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】流路切り替え装置の詳細な構成の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】潜没式ポンプが運転しているときの流路切り替え装置の状態を示している。
【
図4】直列に連結された複数のポンプ装置を備えたポンプシステムの一実施形態を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す複数の潜没式ポンプを順番に始動させる方法の一実施形態を説明する図である。
【
図6】
図4に示す複数の潜没式ポンプを順番に始動させる方法の上記実施形態を説明する図である。
【
図7】
図4に示す複数の潜没式ポンプの運転を順番に停止させる方法の一実施形態を説明する図である。
【
図8】
図4に示す複数の潜没式ポンプの運転を順番に停止させる方法の上記実施形態を説明する図である。
【
図9】直列に連結された複数のポンプ装置を備えたポンプシステムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】直列に連結された複数のポンプ装置を備えたポンプシステムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図11】液化ガスを汲み上げるためのポンプ装置の従来例を示す模式図である。
【
図12】直列に連結された複数のポンプ装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、液化ガスを移送するためのポンプ装置の一実施形態を示す図である。
図1に示すポンプ装置100によって移送される液化ガスの例としては、液体水素、液体窒素、液化アンモニア、液化天然ガス、液化エチレンガス、液化石油ガスなどが挙げられる。
【0016】
図1に示すように、ポンプ装置100は、液化ガスを移送するための潜没式ポンプ1と、潜没式ポンプ1が内部に収容された吸込み容器2と、運転停止中の潜没式ポンプ1の羽根車15の回転を防止するための流路切り替え装置5を備えている。吸込み容器2は、吸込みポート7および吐出しポート8を有している。液化ガスは、吸込みポート7を通じて吸込み容器2内に導入され、吸込み容器2内は液化ガスで満たされる。潜没式ポンプ1の運転中、潜没式ポンプ1の全体は液化ガス中に浸漬される。したがって、潜没式ポンプ1は、液化ガス中で運転可能なように構成されている。
【0017】
潜没式ポンプ1は、モータロータ9およびモータステータ10を有する電動機11と、電動機11に連結された回転軸12と、回転軸12を回転可能に支持する複数の軸受14と、回転軸12に固定された羽根車15と、羽根車15を収容するポンプケーシング16を有する。流路切り替え装置5は、吸込み容器2内に配置されている。より具体的には、流路切り替え装置5は、潜没式ポンプ1の吐出し口4および吸込み容器2の吐出しポート8の両方に連結されている。流路切り替え装置5の具体的構成については後述する。
【0018】
電力ケーブル(図示せず)を通じて電力が電動機11に供給されると、電動機11は、回転軸12および羽根車15を一体に回転させる。羽根車15の回転に伴い、液化ガスは吸込み口3から潜没式ポンプ1内に吸い込まれ、吐出し流路17および吐出し口4を通じて流路切り替え装置5内に吐き出される。さらに、液化ガスは、流路切り替え装置5内を通過し、吸込み容器2の吐出しポート8を通じて排出される。
【0019】
吸込みポート7には吸込み弁22が接続され、吐出しポート8には吐出し弁23が接続されている。吸込み容器2の底部にはドレンライン25が接続され、ドレンライン25にはドレン弁26が接続されている。吸込みポート7は、吸込み容器2の側壁に設けられており、吸込み容器2の底部よりも高い位置にある。吐出しポート8は、吸込み容器2の上部に設けられており、吸込みポート7よりも高い位置にある。潜没式ポンプ1の運転中は、吸込み弁22および吐出し弁23は開かれ、ドレン弁26は閉じられている。
【0020】
吸込み容器2の上部にはベントライン31が接続されている。潜没式ポンプ1の運転中、液化ガスの一部は潜没式ポンプ1の発熱に起因して気化してガスになり、このガスはベントライン31を通じて吸込み容器2から排出される。ベントライン31にはベント弁32が接続されている。一実施形態では、このガスを、ベントライン31を通じてガス処理装置(図示せず)に導いてもよい。ガス処理装置は、液化ガスから気化したガス(例えば天然ガスまたは水素ガス)を処理する装置である。ガス処理装置の例としては、ガス焼却装置(フレアリング装置)、化学的ガス処理装置、ガス吸着装置などが挙げられる。
【0021】
図2は、流路切り替え装置5の詳細な構成の一実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、流路切り替え装置5は、ポンプ側流路41、容器側流路42、および流出流路43を有する流路構造体45と、流路構造体45内に配置された弁体47を備えている。ポンプ側流路41は、潜没式ポンプ1の吐出し口4に連通し、容器側流路42は、吸込み容器2の内部に連通し、流出流路43は、吸込み容器2の吐出しポート8に連通している。弁体47は、流出流路43をポンプ側流路41または容器側流路42のいずれかに選択的に連通させるように配置されている。流路切り替え装置5の構成は、その意図した機能が発揮できる限り、
図2に示す実施形態に限定されない。
【0022】
図2は、潜没式ポンプ1が運転していないときの流路切り替え装置5の状態を示している。弁体47は、ばね50により流路構造体45に対して押し付けてポンプ側流路41を閉じる。より具体的には、流路構造体45は、ポンプ側流路41の出口の周りに形成された弁座51を有しており、弁体47はばね50により弁座51に押し付けられる。したがって、弁体47が弁座51に押し付けられている間は、ポンプ側流路41は閉じられ、容器側流路42と流出流路43は連通している。容器側流路42は、吸込み容器2内で開口しており、吸込み容器2の内部を通じて吸込みポート7に連通している。
【0023】
図3は、潜没式ポンプ1が運転しているときの流路切り替え装置5の状態を示している。潜没式ポンプ1が運転しているとき、液化ガスは、潜没式ポンプ1の吐出し口4から吐き出され、流路切り替え装置5のポンプ側流路41に流入する。ポンプ側流路41を流れる液化ガスは、弁体47をばね50の力に抗って移動させ、ポンプ側流路41を開くとともに、容器側流路42を弁体47で閉じる。その結果、ポンプ側流路41と流出流路43が連通する。
【0024】
潜没式ポンプ1の運転が停止すると、弁体47はばね50によって弁座51に対して押し付けられる。その結果、
図2に示すように、ポンプ側流路41は閉じられ、容器側流路42と流出流路43は連通する。このように、本実施形態の流路切り替え装置5は、ばね50と液化ガスの流れのみによって作動する。
【0025】
需要側で必要とされる圧力にまで液化ガスを加圧するために、複数のポンプ装置100が直列に連結されることがある。
図4は、直列に連結された複数のポンプ装置100A,100B,100Cを備えたポンプシステムの一実施形態を示す模式図である。
図4において、複数のポンプ装置100A,100B,100Cは、
図1乃至
図6を参照して説明したポンプ装置100と同じ構成を有している。以下の説明では、ポンプ装置100Aの潜没式ポンプ、吸込み容器、流路切り替え装置を、潜没式ポンプ1A、吸込み容器2A、流路切り替え装置5Aとそれぞれ称し、ポンプ装置100Bの潜没式ポンプ、吸込み容器、流路切り替え装置を、潜没式ポンプ1B、吸込み容器2B、流路切り替え装置5Bとそれぞれ称し、ポンプ装置100Cの潜没式ポンプ、吸込み容器、流路切り替え装置を、潜没式ポンプ1C、吸込み容器2C、流路切り替え装置5Cとそれぞれ称する。
【0026】
ポンプ装置100Aは、ポンプ装置100Bの上流に配置され、ポンプ装置100Bは、ポンプ装置100Cの上流に配置されている。ポンプ装置100Aの吸込みポート7は、液化ガスが内部に貯留される液化ガス貯槽105に連結されている。ポンプ装置100Aは、連通ライン107によりポンプ装置100Bに直列に連結され、ポンプ装置100Bは、連通ライン108によりポンプ装置100Cに直列に連結されている。より具体的には、ポンプ装置100Aの吐出しポート8は、ポンプ装置100Bの吸込みポート7に連通ライン107により連結され、ポンプ装置100Bの吐出しポート8は、ポンプ装置100Cの吸込みポート7に連通ライン108により連結されている。
【0027】
潜没式ポンプ1A,1B,1Cは、潜没式ポンプ1A、潜没式ポンプ1B、潜没式ポンプ1Cの順で直列に連結されている。液化ガスは、これら潜没式ポンプ1A,1B,1Cによって順次加圧される。潜没式ポンプ1A,1B,1Cが運転中であって、液化ガスを移送しているときの流路切り替え装置5A,5B,5Cは、
図3に示す状態にある。
【0028】
次に、
図4に示す直列に連結された潜没式ポンプ1A,1B,1Cを始動する方法の一実施形態について説明する。潜没式ポンプ1A,1B,1Cは、上流側から順番に始動される。すなわち、最初に潜没式ポンプ1Aが始動され、次に、潜没式ポンプ1Bが始動され、最後に潜没式ポンプ1Cが始動される。
【0029】
図5は、潜没式ポンプ1Aが始動され、潜没式ポンプ1B,1Cは運転停止中の状態を説明する図である。潜没式ポンプ1Aが始動されると、液化ガスは潜没式ポンプ1Aにより流路切り替え装置5Aを通じてポンプ装置100Bの吸込み容器2Bに移送される。潜没式ポンプ1Aが運転中であって、液化ガスを移送しているときの流路切り替え装置5Aは、
図3に示す状態にある。
【0030】
この段階では、潜没式ポンプ1Bは運転停止中であるので、流路切り替え装置5Bは、
図2に示す状態にある。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Bをバイパスしながら(すなわち、液化ガスは潜没式ポンプ1B内を流れずに)、流路切り替え装置5Bを通過する。液化ガスは、さらに、ポンプ装置100Bからポンプ装置100Cの吸込み容器2Cに移送される。潜没式ポンプ1Cも運転停止中であるので、流路切り替え装置5Cは、
図2に示す状態にある。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Cをバイパスしながら(すなわち、液化ガスは潜没式ポンプ1C内を流れずに)、流路切り替え装置5Cを通過する。
【0031】
次に、潜没式ポンプ1Bが始動される。
図6は、潜没式ポンプ1Aの運転中に潜没式ポンプ1Bが始動され、潜没式ポンプ1Cは運転停止中の状態を説明する図である。潜没式ポンプ1Bが始動されると、液化ガスは潜没式ポンプ1Bにより流路切り替え装置5Bを通じてポンプ装置100Cの吸込み容器2Cに移送される。潜没式ポンプ1Bが運転中であって、液化ガスを移送しているときの流路切り替え装置5Bは、
図3に示す状態にある。
【0032】
この段階では、潜没式ポンプ1Cはまだ運転停止中であるので、流路切り替え装置5Cは、
図2に示す状態にある。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Cをバイパスしながら(すなわち、液化ガスは潜没式ポンプ1C内を流れずに)、流路切り替え装置5Cを通過する。
【0033】
次に、潜没式ポンプ1Cが始動される。潜没式ポンプ1Cが始動されるとき、潜没式ポンプ1A,1Bは運転中である。潜没式ポンプ1A,1B,1Cのすべてが運転された状態は、
図4に示される。このように、潜没式ポンプ1A,1B,1Cは、上流側から順番に始動される。
【0034】
潜没式ポンプ1A,1B,1Cの始動時において、流路切り替え装置は、液化ガスを運転停止中の潜没式ポンプをバイパスさせることができる。したがって、運転停止中の潜没式ポンプの羽根車は回転せず、結果として潜没式ポンプの軸受などの摺動部の損傷が防止できる。
【0035】
次に、
図4に示す直列に連結された潜没式ポンプ1A,1B,1Cの運転を停止する方法の一実施形態について説明する。潜没式ポンプ1A,1B,1Cの運転は、下流側から順番に停止される。すなわち、最初に潜没式ポンプ1Cの運転が停止され、次に、潜没式ポンプ1Bの運転が停止され、最後に潜没式ポンプ1Aの運転が停止される。
【0036】
図7は、潜没式ポンプ1Cの運転が停止され、潜没式ポンプ1A,1Bは運転中の状態を説明する図である。潜没式ポンプ1Cが停止された結果、流路切り替え装置5Cは、
図2に示す状態となる。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Cをバイパスしながら(すなわち、液化ガスは潜没式ポンプ1C内を流れずに)、流路切り替え装置5Cを通過する。
【0037】
この段階では、潜没式ポンプ1A,1Bは運転中である。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Aにより流路切り替え装置5Aを通じてポンプ装置100Bの吸込み容器2Bに移送され、さらに、液化ガスは潜没式ポンプ1Bにより流路切り替え装置5Bを通じてポンプ装置100Cの吸込み容器2Cに移送される。潜没式ポンプ1A,1Bが運転中であって、液化ガスを移送しているときの流路切り替え装置5A,5Bは、
図3に示す状態にある。
【0038】
次に、潜没式ポンプ1Bが停止される。
図8は、潜没式ポンプ1Aは運転中であって、かつ潜没式ポンプ1Cは運転停止中に、潜没式ポンプ1Bが停止された状態を説明する図である。潜没式ポンプ1Bが停止された結果、流路切り替え装置5Bは、
図2に示す状態となる。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Bをバイパスしながら(すなわち、液化ガスは潜没式ポンプ1B内を流れずに)、流路切り替え装置5Bを通過する。
【0039】
この段階では、潜没式ポンプ1Aはまだ運転中であるので、流路切り替え装置5Aは、
図3に示す状態にある。したがって、液化ガスは、潜没式ポンプ1Aにより流路切り替え装置5Aを通じてポンプ装置100Bの吸込み容器2Bに移送される。
【0040】
次に、潜没式ポンプ1Aが停止される。潜没式ポンプ1Aが停止されるとき、潜没式ポンプ1B,1Cは運転停止中である。このように、潜没式ポンプ1A,1B,1Cは、下流側から順番に停止される。
【0041】
潜没式ポンプ1A,1B,1Cの運転停止時において、流路切り替え装置は、液化ガスを運転停止中の潜没式ポンプをバイパスさせることができる。したがって、運転停止中の潜没式ポンプの羽根車は回転せず、結果として潜没式ポンプの軸受などの摺動部の損傷が防止できる。
【0042】
図4乃至
図8に示す実施形態のポンプシステムは、直列に連結された3つのポンプ装置100A,100B,100Cを備えているが、ポンプ装置の数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、ポンプシステムは、直列に連結された2つのポンプ装置のみを備えてもよく、あるいは直列に連結された4つ以上のポンプ装置を備えてもよい。直列に連結された複数の潜没式ポンプは、上述の実施形態と同様にして始動および停止される。
【0043】
図9は、直列に連結された複数のポンプ装置を備えたポンプシステムの他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図9に示す実施形態のポンプシステムは、直列に連結されたポンプ装置100A,100B,100Cに加えて、直列に連結されたポンプ装置100D,100E,100Fをさらに備えている。
【0044】
ポンプ装置100Dは、吸込み容器2Dと、吸込み容器2D内に配置された潜没式ポンプ1Dおよび流路切り替え装置5Dを備え、ポンプ装置100Eは、吸込み容器2Eと、吸込み容器2E内に配置された潜没式ポンプ1Eおよび流路切り替え装置5Eを備え、ポンプ装置100Fは、吸込み容器2Fと、吸込み容器2F内に配置された潜没式ポンプ1Fおよび流路切り替え装置5Fを備えている。
【0045】
ポンプ装置100Dは、連通ライン109によりポンプ装置100Eに直列に連結され、ポンプ装置100Eは、連通ライン110によりポンプ装置100Fに直列に連結されている。より具体的には、ポンプ装置100Dの吐出しポートは、ポンプ装置100Eの吸込みポートに連通ライン109により連結され、ポンプ装置100Eの吐出しポートは、ポンプ装置100Fの吸込みポートに連通ライン110により連結されている。
【0046】
ポンプ装置100D,100E,100Fは、ポンプ装置100A,100B,100Cと並列に配列されている。複数のポンプ装置100A,100B,100C,100D,100E,100Fは、
図1乃至
図3を参照して説明したポンプ装置100と同じ構成を有しているので、それらの重複する説明を省略する。ポンプ装置100Aとポンプ装置100Dは、液化ガスが貯留される液化ガス貯槽105に連結されている。
図9に示す実施形態によれば、並列に配列されたポンプ装置100A~100Cの潜没式ポンプ1A~1Cと、ポンプ装置100D~100Fの潜没式ポンプ1D~1Fにより、液化ガスが圧送される。
【0047】
潜没式ポンプ1D,1E,1Fは、潜没式ポンプ1A,1B,1Cと同様に、上流側から順番に始動される。すなわち、最初に潜没式ポンプ1Dが始動され、次に、潜没式ポンプ1Eが始動され、最後に潜没式ポンプ1Fが始動される。
【0048】
潜没式ポンプ1D,1E,1Fの運転は、潜没式ポンプ1A,1B,1Cと同様に、下流側から順番に停止される。すなわち、最初に潜没式ポンプ1Fの運転が停止され、次に、潜没式ポンプ1Eの運転が停止され、最後に潜没式ポンプ1Dの運転が停止される。
【0049】
図10は、直列に連結された複数のポンプ装置を備えたポンプシステムのさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図10に示す実施形態では、ポンプ装置100Aとポンプ装置100Bとを連結する連通ライン107は、ポンプ装置100Dとポンプ装置100Eとを連結する連通ライン109に中間ヘッダ111により連結されている。また、ポンプ装置100Bとポンプ装置100Cとを連結する連通ライン108は、ポンプ装置100Eとポンプ装置100Fとを連結する連通ライン110に中間ヘッダ112により連結されている。
【0050】
上述した実施形態と同じように、潜没式ポンプ1A,1B,1Cは、上流側から順番に始動され、潜没式ポンプ1D,1E,1Fも上流側から順番に始動される。潜没式ポンプ1A,1B,1Cの運転は、下流側から順番に停止され、潜没式ポンプ1D,1E,1Fの運転も下流側から順番に停止される。
【0051】
中間ヘッダ111,112により、ポンプ装置100A~100Cは、ポンプ装置100D~100Fにも直列で連結される。結果として、液化ガスの様々な流れが形成され、ポンプ装置100A~100Cおよびポンプ装置100D~100Fの多様な運転が可能となる。例えば、メンテナンスのために、または需要側の要求される圧力に応じて、ポンプ装置100Cまたはポンプ装置100Fの運転を停止することも可能である。
【0052】
図9および
図10に示すポンプシステムでは、2列のポンプ装置100A~100Cおよびポンプ装置100D~100Fが並列に設けられているが、3列以上の複数のポンプ装置が並列に設けられてもよい。
【0053】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 潜没式ポンプ
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F 吸込み容器
3 吸込み口
4 吐出し口
5,5A,5B,5C,5D,5E,5F 流路切り替え装置
7 吸込みポート
8 吐出しポート
9 モータロータ
10 モータステータ
11 電動機
12 回転軸
14 軸受
15 羽根車
16 ポンプケーシング
17 吐出し流路
22 吸込み弁
23 吐出し弁
25 ドレンライン
26 ドレン弁
31 ベントライン
32 ベント弁
41 ポンプ側流路
42 容器側流路
43 流出流路
45 流路構造体
47 弁体
50 ばね
51 弁座
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F ポンプ装置
105 液化ガス貯槽
107,108,109,110 連通ライン
111,112 中間ヘッダ