IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-スピンドルユニット 図1
  • 特開-スピンドルユニット 図2
  • 特開-スピンドルユニット 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173585
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】スピンドルユニット
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/04 20060101AFI20231130BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20231130BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B24B41/04
B23B19/02 B
F16C32/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085932
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕之
【テーマコード(参考)】
3C034
3C045
3J102
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034BB07
3C034BB27
3C045FD03
3C045FD08
3C045FD15
3C045FD23
3C045FD29
3J102AA02
3J102BA03
3J102BA17
3J102BA18
3J102CA02
3J102CA18
3J102CA32
3J102EA02
3J102EA06
3J102EA09
3J102EA13
3J102EA26
3J102EA29
3J102EA30
3J102EB08
3J102FA01
3J102GA07
(57)【要約】
【課題】加工時にスピンドルに振動が発生することを抑制する。
【解決手段】圧力調整部114により、ラジアルエアベアリングを形成するために供給するエア圧力を、スラストエアベアリングを形成するために供給するエア圧力よりも低くする。すなわち、圧力調整部114により、研削砥石23によってウェーハを研削加工しているときに、ラジアル側エア噴出口32に供給されるエアの流量を減らすことにより、ラジアル隙間300におけるエアの圧力を、スラスト隙間301におけるエアの圧力よりも低くする。これにより、スピンドル10および研削砥石23がラジアル方向にスライドすることが可能となる。その結果、スピンドル10の受ける衝撃を緩和することができるので、スピンドル10に振動が生じにくくなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工具を先端に装着するスピンドルをケーシングで囲繞して、該スピンドルの外面と該ケーシングの内面との隙間でスラストエアベアリングとラジアルエアベアリングとを形成して、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルユニットであって、
被加工物を加工しているときに、該スピンドルの回転軸の方向に直交する方向へのスライドを可能にするスライド機構を備える、スピンドルユニット。
【請求項2】
該スライド機構は、該ラジアルエアベアリングを形成するために供給するエア圧力を、該スラストエアベアリングを形成するために供給するエア圧力よりも低くする圧力調整部を備える、
請求項1記載のスピンドルユニット。
【請求項3】
該スライド機構は、該スラストエアベアリングと、該スラストエアベアリングよりも広い間隔を有する該ラジアルエアベアリングと、を含む、
請求項1記載のスピンドルユニット。
【請求項4】
該スライド機構は、ビッカーズ硬度50以上100以下の金属で形成された、該ラジアルエアベアリングを形成する該スピンドルの外壁または該ケーシングの内壁を含む、
請求項1記載のスピンドルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、チャックテーブルに保持されたウェーハを砥石で研削する研削装置は、環状基台に砥石を環状に配置した研削ホイールをスピンドルの先端に装着し、スピンドルを回転させることによって、回転する砥石でウェーハを研削している。
【0003】
スピンドルを回転させるスピンドルユニットは、特許文献1に開示のように、スピンドルを囲繞するケーシングを備え、スピンドルとケーシングとの隙間に高圧エアを満たしてスラストエアベアリングとラジアルエアベアリングとを形成し、スピンドルを回転可能に支持している。
【0004】
近年、ウェーハを研削する研削時間を短縮させることなどのために、砥石からウェーハにかかる荷重を大きくしている。また、研削の際には、ウェーハの半径部分に、環状の砥石の一部分を接触させている。そのため、荷重が大きくなることで、スピンドルが傾きやすくなる。そこで、荷重を大きくしてもスピンドルが傾かないように、スラストエアベアリングおよびラジアルエアベアリングを形成している隙間を狭くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-222003号公報
【特許文献2】特開2013-226625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、狭い隙間で形成したスラストエアベアリングおよびラジアルエアベアリングによって回転可能に支持されたスピンドルは、砥石がウェーハに接触するときや、砥石から砥粒が脱落するときなどに、僅かな衝撃が伝わることによって、振動することがある。そして、この振動は、エアベアリングによって共振されるため、消えにくい。また、振動は、定量的に砥粒が脱落し続けることで消えにくい。
【0007】
そのため、特許文献2に開示の研削方法では、ウェーハから離間する方向に砥石を移動させている。しかし、この研削方法を用いると、砥粒の脱落する量を少なくすることによって振動を消すことができるが、研削時間を長くしてしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ウェーハを研削する砥石などの加工具を先端に装着するスピンドルを回転可能に支持するスピンドルユニットおいて、加工時に振動が発生することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスピンドルユニット(本スピンドルユニット)は、被加工物を加工する加工具を先端に装着するスピンドルをケーシングで囲繞して、該スピンドルの外面と該ケーシングの内面との隙間でスラストエアベアリングとラジアルエアベアリングとを形成して、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルユニットであって、被加工物を加工しているときに、該スピンドルの回転軸の方向に直交する方向へのスライドを可能にするスライド機構を備える。
本スピンドルユニットでは、該スライド機構は、該ラジアルエアベアリングを形成するために供給するエア圧力を、該スラストエアベアリングを形成するために供給するエア圧力よりも低くする圧力調整部を備えてもよい。
本スピンドルユニットでは、該スライド機構は、該スラストエアベアリングと、該スラストエアベアリングよりも広い間隔を有する該ラジアルエアベアリングと、を含んでいてもよい。
本スピンドルユニットでは、該スライド機構は、ビッカーズ硬度50以上100以下の金属で形成された、該ラジアルエアベアリングを形成する該スピンドルの外壁または該ケーシングの内壁を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本スピンドルユニットは、スピンドルの回転軸の方向に直交する方向へのスライドを可能にするスライド機構を備えている。これにより、研削砥石が被加工物や加工屑に接触したときに、スピンドルをスライドさせることにより、スピンドルの受ける衝撃を緩和することができる。したがって、スピンドルに振動が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スピンドルユニットの構成を示す断面図である。
図2】ケーシングの環状部の近傍の構成を拡大して示す説明図である。
図3】ケーシングの環状部の近傍の構成を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すスピンドルユニット1は、たとえば、研削装置に備えられ、研削装置のチャックテーブルに保持された被加工物としてのウェーハを研削加工するために用いられる。
図1に示すように、スピンドルユニット1は、直立姿勢のスピンドル10、スピンドル10を覆っており、スピンドル10を支持するケーシング30、スピンドル10の下端部分を覆うスピンドルカバー50、および、スピンドル10を回転駆動する回転モータ60を備えている。
【0013】
スピンドル10は、図1に示す回転軸A1の方向であるZ軸方向に延びるように配置されている。スピンドル10の中間部分には、大径の第1円板部11が形成されている。また、スピンドル10の下端部分にも、大径の第2円板部12が形成されている。
【0014】
スピンドル10の上端には、回転モータ60が連結されている。回転モータ60は、スピンドル10の上端部分に設けられたロータ61と、ステータ62とを有している。ステータ62に所定の電圧を印加することにより、ロータ61が回転し、スピンドル10が、その回転軸A1を中心として回転する。
【0015】
また、ステータ62は、冷却ジャケット65を介して、ケーシング30の内周面に設けられている。冷却ジャケット65内には、多数の冷却水路66が形成されている。これらの冷却水路66によって、回転モータ60が冷却される。
【0016】
ケーシング30におけるスピンドル10の上端近傍には、回転検知センサ67が設けられている。回転検知センサ67は、スピンドル10の上端に取り付けられた被検知部68に対向可能に設けられている。回転検知センサ67は、被検知部68の回転移動を検知することにより、スピンドル10の回転を検知するように構成されている。
【0017】
スピンドル10の先端(下端)には、ホイールマウント20が連結されている。ホイールマウント20は、円板状に形成されており、スピンドル10の先端に固定されている。ホイールマウント20は、研削ホイール21を支持している。
【0018】
研削ホイール21は、外径がホイールマウント20の外径と略同径を有するように形成されている。研削ホイール21は、金属材料から形成された円環状のホイール基台22を含む。ホイール基台22の下面には、全周にわたって、略直方体形状の複数の研削砥石23が固定されている。このように、スピンドル10の先端には、研削砥石23が装着されている。
【0019】
研削砥石23は、被加工物を加工する加工具の一例であり、ホイール基台22の下面に環状に配置されている。研削砥石23は、スピンドル10、ホイールマウント20、およびホイール基台22を介して、回転モータ60によって回転される。これにより、研削砥石23は、たとえば、スピンドルユニット1が備えられた研削装置において、図示しないチャックテーブルに保持されたウェーハを研削することができる。
【0020】
スピンドル10の上端には、研削水源130に連通される研削水導入路131が取り付けられている。また、研削水導入路131は、スピンドル10、ホイールマウント20およびホイール基台22内に設けられている研削水路132に連通されている。このような構造により、研削水源130からの研削水が、研削水導入路131および研削水路132を介して、研削砥石23に供給される。
【0021】
ケーシング30は、たとえば略円筒形状を有しており、その内部にスピンドル10および回転モータ60等が配置されるように構成されている。ケーシング30の上部は、蓋部材25によって塞がれている。そして、ケーシング30は、スピンドル10を囲繞し、ラジアルエアベアリングおよびスラストエアベアリングにより、スピンドル10を回転自在に支持するように構成されている。
【0022】
ケーシング30は、その下端部分に、環状部31を備えている。環状部31は、スピンドル10の第1円板部11と第2円板部12との間に入り込むように、かつ、第1円板部11および第2円板部12と環状部31との間に僅かな隙間が形成されるように、ケーシング30に設けられている。
【0023】
また、ケーシング30は、図1および図2に示すように、環状部31に、ラジアルエアベアリングを構成するラジアル側エア噴出口32を備えている。このラジアル側エア噴出口32は、エア供給源110に接続された第1エア供給路111に連通されている。なお、図2は、図1に示したケーシング30における環状部31の+X方向側の近傍を拡大して示している。
【0024】
第1エア供給路111は、スピンドルユニット1の外部からケーシング30における環状部31の内部に延びるように形成されており、環状部31の表面に設けられた圧力調整部114を備えている。この圧力調整部114については後述する。
【0025】
ラジアル側エア噴出口32は、この第1エア供給路111に接続されている。ラジアル側エア噴出口32は、ケーシング30における環状部31のZ軸方向に延びるラジアル側ケーシング面36に、スピンドル10における第1円板部11と第2円板部12との間に延びるラジアル側スピンドル面13に対向するように設けられている。スピンドル10のラジアル側スピンドル面13は、スピンドル10の外面の一例である。また、ケーシング30のラジアル側ケーシング面36は、ケーシング30の内面の一例である。
【0026】
ラジアル側エア噴出口32は、スピンドル10のラジアル側スピンドル面13とケーシング30のラジアル側ケーシング面36との間の隙間であるラジアル隙間300に向けて開口されている。ラジアル側エア噴出口32が、このラジアル隙間300に向けてラジアル方向である水平方向に、第1エア供給路111から供給される高圧のエアを噴出することにより、ケーシング30とスピンドル10との間であるラジアル隙間300に、スピンドル10を回転可能にエアによって非接触で支持するラジアルエアベアリングが形成される。
【0027】
また、ケーシング30は、図1および図3に示すように、環状部31に、スラストエアベアリングを構成するスラスト側エア噴出口35を備えている。このスラスト側エア噴出口35は、エア供給源110に接続された第2エア供給路112に連通されている。なお、図3は、図1に示したケーシング30における環状部31の-X方向側の近傍を拡大して示している。
第2エア供給路112は、スピンドルユニット1の外部から環状部31を含むケーシング30の内部に延びるように形成されている。
【0028】
スラスト側エア噴出口35は、この第2エア供給路112に接続されている。スラスト側エア噴出口35は、ケーシング30における環状部31の上面および下面である2つのスラスト側ケーシング面37に、スピンドル10における第1円板部11の下面15および第2円板部12の上面16に対向するように設けられている。スピンドル10における第1円板部11の下面15および第2円板部12の上面16は、スピンドル10の外面の一例である。また、ケーシング30のスラスト側ケーシング面37は、ケーシング30の内面の一例である。
【0029】
スラスト側エア噴出口35は、スピンドル10の第1円板部11の下面15および第2円板部12の上面16とケーシング30の2つのスラスト側ケーシング面37との間の隙間であるスラスト隙間301に向けて開口されている。スラスト側エア噴出口35が、このスラスト隙間301に向けてスラスト方向であるZ軸方向に、第2エア供給路112から供給される高圧のエアを噴出することにより、ケーシング30とスピンドル10との間であるスラスト隙間301に、スピンドル10を回転可能にエアによって非接触で支持するスラストエアベアリングが形成される。
【0030】
このように、スピンドルユニット1では、加工具である研削砥石23を先端に装着するスピンドル10をケーシング30で囲繞して、スピンドル10の外面とケーシング30の内面との隙間でスラストエアベアリングとラジアルエアベアリングとを形成して、スピンドル10を回転可能に支持している。
【0031】
また、図2および図3に示すように、ケーシング30は、環状部31のラジアル側ケーシング面36に、ラジアル隙間300に向けて開口されているラジアル側吸気口40を備えている。ラジアル側吸気口40は、破線によって示される第1排気路115に接続されている。第1排気路115は、環状部31内に延びるように設けられており、図2に示すように、環状部31の表面に設けられたラジアルエアベアリング排気口116に連通されている。これらラジアル側吸気口40、第1排気路115およびラジアルエアベアリング排気口116は、ラジアル隙間300からエアを排出するために用いられる。
【0032】
さらに、ケーシング30は、環状部31のスラスト側ケーシング面37に、スラスト隙間301に向けて開口されているスラスト側吸気口41を備えている。スラスト側吸気口41は、破線によって示される第2排気路117に接続されている。第2排気路117は、環状部31内に延びるように設けられており、環状部31の表面に設けられたスラストエアベアリング排気口118に連通されている。これらスラスト側吸気口41、第2排気路117およびスラストエアベアリング排気口118は、スラスト隙間301からエアを排出するために用いられる。
【0033】
また、図1に示すように、スピンドルユニット1は、制御部7を有している。制御部7は、上述したスピンドルユニット1の各部材を制御することにより、スピンドルユニット1の動作を制御する。
【0034】
さらに、スピンドルユニット1は、研削砥石23によって被加工物であるウェーハを加工しているときに、スピンドル10の回転軸A1の方向に直交する方向であるラジアル方向へのスライドを可能にするスライド機構を備えている。
【0035】
具体的には、スピンドルユニット1は、スライド機構として、上述した圧力調整部114を備えている。この圧力調整部114は、ラジアルエアベアリングを形成するために供給するエア圧力を、スラストエアベアリングを形成するために供給するエア圧力よりも低くするものである。
【0036】
すなわち、圧力調整部114は、第1エア供給路111に配置されており、エア供給源110から第1エア供給路111を介してラジアル側エア噴出口32に供給されるエアの流量を調整するための弁である。これにより、圧力調整部114は、たとえば制御部7の制御により、研削砥石23によってウェーハを研削加工しているときに、ラジアル側エア噴出口32に供給されるエアの流量を減らすことにより、ラジアル隙間300におけるエアの圧力を、スラスト隙間301におけるエアの圧力よりも低くする。
【0037】
ここで、スピンドルユニット1では、スピンドル10の先端に配置された研削砥石23によってウェーハを研削する際には、研削砥石23の側面および下面が、ウェーハに接触し、ウェーハを研削する。このため、ウェーハから研削砥石23の側面あるいは下面に与えられる衝撃によって、スピンドル10に振動が発生することがある。また、研削砥石23から脱落した砥粒を含む加工屑が研削砥石23の近傍から排出されない場合、加工屑が研削砥石23に接触することによってスピンドル10が衝撃を受けて、スピンドル10に振動が発生することがある。
【0038】
これに関し、本実施形態のように、スピンドル10を支持するラジアルエアベアリングを形成するラジアル隙間300におけるエアの圧力を圧力調整部114によって低くすることにより、スピンドル10および研削砥石23がラジアル方向にスライドすることが可能となる。これにより、スピンドル10が衝撃を受けたときに、スピンドル10をラジアル方向にスライドさせて、スピンドル10の受ける衝撃を緩和することができるので、スピンドル10に振動が生じにくくなる。
【0039】
また、スピンドル10および研削砥石23がラジアル方向にスライドする場合、研削中に、研削砥石23が被加工物であるウェーハから離間しないので、研削加工が中断されることがない。したがって、本実施形態では、研削時間が長くなることを抑制しながら、スピンドル10の振動の発生を抑えることができる。
【0040】
また、スピンドル10および研削砥石23がラジアル方向にスライドすることによって、研削砥石23から脱落した砥粒を含む加工屑を、研削砥石23の近傍から容易に排出することができる。これにより、スピンドル10の振動を、より良好に抑制することが可能となる。
【0041】
なお、スピンドルユニット1は、スピンドル10のラジアル方向へのスライドを可能にするスライド機構として、圧力調整部114に代えてまたは加えて、スピンドル10をスラスト方向に支持するスラストエアベアリングと、スピンドル10をラジアル方向に支持する、スラストエアベアリングよりも広い間隔を有するラジアルエアベアリングと、を含んでもよい。すなわち、ラジアルエアベアリングが形成されるラジアル隙間300が、スラストエアベアリングが形成されるスラスト隙間301よりも広い間隔を有していてもよい。
【0042】
この場合、ラジアルエアベアリングを形成するラジアル隙間300が比較的に広くなり、ラジアル隙間300におけるエアを貯める容積が大きくなるため、ラジアル隙間300におけるエアの圧力が、比較的に減少しやすくなる。したがって、スピンドル10がラジアル方向の力を受けた場合に、スピンドル10がラジアル方向にスライドすることが可能となる。これにより、上述したように、スピンドル10の受ける衝撃を緩和することができるので、スピンドル10に振動が生じにくくなる。
【0043】
なお、ラジアルエアベアリングが形成されるラジアル隙間300を、スラストエアベアリングが形成されるスラスト隙間301よりも広くするために、スピンドル10を細くしてラジアル隙間300を広げてもよい。あるいは、ケーシング30における環状部31の厚さ(Z軸方向のサイズ)を大きくして、スラスト隙間301を狭くしてもよい。
【0044】
また、スピンドルユニット1は、スピンドル10のラジアル方向へのスライドを可能にするスライド機構として、圧力調整部114および/またはスラストエアベアリングよりも広い間隔を有するラジアルエアベアリングに代えてまたは加えて、ビッカーズ硬度50以上100以下の金属で形成された、ラジアルエアベアリングを形成するスピンドル10の外壁(ラジアル側スピンドル面13)またはケーシング30の内壁(ラジアル側ケーシング面36)を含んでいてもよい。
【0045】
すなわち、ジアルベアリングが形成されるラジアル隙間300を囲むスピンドル10の外壁であるラジアル側スピンドル面13、または、ケーシング30における環状部31のラジアル側ケーシング面36が、ビッカーズ硬度50以上100以下の、比較的に柔らかい金属から形成されていることが好ましい。
【0046】
これに関し、スピンドル10が衝撃を受けたときには、ラジアルエアベアリングを構成するラジアル隙間300に、通常よりも強い圧力が加えられる。このラジアル隙間300を構成するラジアル側スピンドル面13またはラジアル側ケーシング面36が、上述のような柔らかい金属から形成されている場合、ラジアル隙間300に強い圧力が加わったときにラジアル側スピンドル面13またはラジアル側ケーシング面36が弾性変形して、ラジアル隙間300が一時的に広くなる。
【0047】
したがって、上述したように、ラジアル隙間300におけるエアの圧力が、比較的に減少しやすくなり、スピンドル10がラジアル方向にスライドすることが可能となる。これにより、スピンドル10の受ける衝撃を緩和することができるので、スピンドル10に振動が生じにくくなる。
【0048】
なお、弾性変形したラジアル側スピンドル面13またはラジアル側ケーシング面36は、ラジアル隙間300の圧力の低下に伴って、元の形状に復帰する。
また、この場合におけるラジアル側スピンドル面13またはラジアル側ケーシング面36を構成するビッカーズ硬度50以上100以下の金属としては、たとえば、銅合金、亜鉛合金、およびアルミニウム合金を挙げられる。
【符号の説明】
【0049】
1:スピンドルユニット、7:制御部、10:スピンドル、11:第1円板部、
12:第2円板部、13:ラジアル側スピンドル面、15:下面、16:上面、
20:ホイールマウント、21:研削ホイール、22:ホイール基台、23:研削砥石、
25:蓋部材、30:ケーシング、31:環状部、32:ラジアル側エア噴出口、
35:スラスト側エア噴出口、36:ラジアル側ケーシング面、
37:スラスト側ケーシング面、
40:ラジアル側吸気口、41:スラスト側吸気口、50:スピンドルカバー、
60:回転モータ、61:ロータ、62:ステータ、65:冷却ジャケット、
66:冷却水路、67:回転検知センサ、68:被検知部、110:エア供給源、
111:第1エア供給路、112:第2エア供給路、114:圧力調整部、
115:第1排気路、116:ラジアルエアベアリング排気口、117:第2排気路、
118:スラストエアベアリング排気口、130:研削水源、131:研削水導入路、
132:研削水路、300:ラジアル隙間、301:スラスト隙間、A1:回転軸
図1
図2
図3