(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173771
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】内服用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/166 20060101AFI20231130BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/121 20060101ALI20231130BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K31/166
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K31/4166
A61K31/198
A61K31/121
A61P1/04
A61K31/7024
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086246
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 貴裕
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086EA03
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB12
4C206FA53
4C206GA07
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、イトプリド及び/又はその塩を含み、通便異常の予防又は改善効果を有する内服用医薬品物を提供することである。
【解決手段】(A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(B)アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、内服用医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イトプリド及び/又はその塩、並びに
(B)アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種
を含有する、内服用医薬組成物。
【請求項2】
前記(B)成分がアルジオキサであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、アルジオキサを0.1~5重量部含む、請求項1に記載の内服用医薬組成物。
【請求項3】
前記(B)成分がグルタミンであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりグルタミンを0.1~20重量部含む、請求項1に記載の内服用医薬組成物。
【請求項4】
前記(B)成分がテプレノンであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりテプレノンを0.1~3重量部含む、請求項1に記載の内服用医薬組成物。
【請求項5】
前記(B)成分がスクラルファート水和物であり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりスクラルファート水和物を0.25~25重量部含む、請求項1に記載の内服用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イトプリド及び/又はその塩を含み、通便異常の予防又は改善効果を有する内服用医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
イトプリド及びその塩には、ドパミンD2受容体に対して拮抗作用があり、アセチルコリンを遊離させたり、アセチルコリンエステラーゼを阻害したりすることにより、胃部に対し消化管運動賦活作用を示すので、機能性ディスペプシアや慢性胃炎における消化器症状(腹部膨満感、上腹部痛、食欲不振、胸やけ、悪心、嘔吐等)の改善に使用されている。
【0003】
イトプリド及びその塩は、比較的安全性の高い薬剤ではあるが、下痢や便秘といった通便異常の副作用が一定数報告されており(非特許文献1参照)、また、機能性ディスペプシアや慢性胃炎に罹患している患者には通便異常を有していることもあるため、イトプリド又はその塩を含む内服用医薬組成物の有用性を高める上で、通便異常の予防又は改善効果を備えていることが望ましい。また、近年、食生活の乱れ、不規則な生活習慣、過剰なストレス等によって、通便異常を訴える人が増加しており、通便異常を予防又は改善できる新たな内服用医薬組成物の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】医薬品インタビューフォーム 消化管運動賦活剤 ガナトンR錠50mg、マイランEPD合同会社、2021年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イトプリド及び/又はその塩を含み、通便異常の予防又は改善効果を有する内服用医薬品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、イトプリド及び/又はその塩を含む内服用医薬組成物において、アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することにより、通便異常の少なくとも1つの症状に対する予防又は改善効果が奏されることを見出した。より具体的には、イトプリド及び/又はその塩と、アルジオキサ及び/又はグルタミンを含む内服用医薬組成物は、便秘の予防又は改善効果を奏し得ることを見出した。また、イトプリド及び/又はその塩と、テプレノンを含む内服用医薬組成物は、便秘及び下痢の予防又は改善効果を奏し得ることを見出した。更に、イトプリド及び/又はその塩と、スクラルファート水和物を含む内服用医薬組成物は、下痢の予防又は改善効果を奏し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)イトプリド及び/又はその塩、並びに
(B)アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種
を含有する、内服用医薬組成物。
項2. 前記(B)成分がアルジオキサであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、アルジオキサを0.1~5重量部含む、項1に記載の内服用医薬組成物。
項3. 前記(B)成分がグルタミンであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりグルタミンを0.1~20重量部含む、項1に記載の内服用医薬組成物。
項4. 前記(B)成分がテプレノンであり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりテプレノンを0.1~3重量部含む、項1に記載の内服用医薬組成物。
項5. 前記(B)成分がスクラルファート水和物であり、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりスクラルファート水和物を0.25~25重量部含む、項1に記載の内服用医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内服用医薬品において、イトプリド及び/又はその塩と共に、アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種を併用することにより、通便異常の予防又は改善効果を有する内服用医薬品の提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医薬組成物は、イトプリド及び/又はその塩((A)成分と表記することもある)、並びにアルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種((B)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の内服用組成物について詳述する。
【0010】
[(A)成分]
本発明の内服用医薬組成物は、(A)成分として、イトプリド及び/又はその塩を含有する。イトプリドは、ドパミンD2受容体に作用してアセチルコリンの遊離を促進し、またアセチルコリンの分解を抑制することにより胃部の消化管運動を賦活化させることが知られている公知の成分である。
【0011】
イトプリドの塩については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは無機酸塩、より好ましくは塩酸塩が挙げられる。
【0012】
本発明の内服用医薬組成物では、(A)成分として、イトプリド及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
(A)成分の中でも、好ましくはイトプリドの塩、より好ましくはイトプリド塩酸塩が挙げられる。
【0014】
本発明の内服用医薬組成物における(A)成分の含有量については、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~75重量%、好ましくは2~50重量%、より好ましくは2~40重量%、更に好ましくは3~30重量%が挙げられる。
【0015】
[(B)成分]
本発明の内服用医薬組成物は、(B)成分として、アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及びスクラルファート水和物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。イトプリド及びその塩には、副作用として通便異常が生じ得ることが知られているが、アルジオキサ、グルタミン、テプレノン、及び/又はスクラルファート水和物と併用することにより、通便異常の予防又は改善効果を奏することが可能になる。
【0016】
・アルジオキサ
アルジオキサは、アラントインと水酸化アルミニウムを縮合させたアラントインの二水酸化アルミニウム塩であり、胃炎・消化性潰瘍治療薬等として公知の成分である。イトプリド及び/又はその塩とアルジオキサは、共に副作用として便秘が生じ得ることが知られているが、本発明では、これらを併用することにより、便秘の予防又は改善効果を奏することが可能になる。
【0017】
(B)成分としてアルジオキサを使用する場合、イトプリド及び/又はその塩とアルジオキサとの比率としては、例えば、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、アルジオキサが0.1~5重量部が挙げられる。より一層便秘の予防又は改善効果を向上させる観点から、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりのアルジオキサの比率として、好ましくは0.2~5重量部、より好ましくは0.3~3重量部、更に好ましくは0.4~2.5重量部が挙げられる。
【0018】
また、(B)成分としてアルジオキサを使用する場合、本発明の内服用医薬組成物におけるアルジオキサの含有量については、剤型、投与量、前記比率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~70重量%、好ましくは2~60重量%、より好ましくは3~50重量%、更に好ましくは5~50重量%が挙げられる。
【0019】
・グルタミン
グルタミンは、アミノ酸の一種であり、胃粘膜を保護する作用があり、消化性潰瘍治療薬等として公知の成分である。前述の通り、イトプリド及び/又はその塩は副作用として便秘が生じ得ることが知られているが、本発明では、イトプリド及び/又はその塩とグルタミンを併用することにより、便秘の予防又は改善効果を奏することが可能になる。
【0020】
グルタミンは、L体、D体、又はDL体のいずれであってもよいが、L体であることが好ましい。
【0021】
(B)成分としてグルタミンを使用する場合、イトプリド及び/又はその塩とグルタミンとの比率としては、例えば、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、グルタミンが0.1~20重量部が挙げられる。より一層便秘の予防又は改善効果を向上させる観点から、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりのグルタミンの比率として、好ましくは1~20重量部、より好ましくは2~18重量部、更に好ましくは2.5~14重量部が挙げられる。
【0022】
また、(B)成分としてグルタミンを使用する場合、本発明の内服用医薬組成物におけるグルタミンの含有量については、剤型、投与量、前記比率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~95重量%、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~93重量%、更に好ましくは25~90重量%が挙げられる。
【0023】
・テプレノン
テプレノンは、防御因子増強型抗潰瘍薬であり、急性胃炎や慢性胃炎の急性増悪時の胃粘膜病変の改善や胃潰瘍などの治療に用いられる胃炎・胃潰瘍治療薬として公知の成分である。イトプリド及び/又はその塩とテプレノンは、共に副作用として便秘及び下痢が生じ得ることが知られているが、本発明では、これらを併用することにより、便秘及び下痢の予防又は改善効果を奏することが可能になる。
【0024】
(B)成分としてテプレノンを使用する場合、イトプリド及び/又はその塩とテプレノンとの比率としては、例えば、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、テプレノンが0.1~3重量部が挙げられる。より一層便秘の予防又は改善効果を向上させる観点から、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりのテプレノンの比率として、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.2~1.5重量部、更に好ましくは0.5~1重量部が挙げられる。
【0025】
また、(B)成分としてテプレノンを使用する場合、本発明の内服用医薬組成物におけるテプレノンの含有量については、剤型、投与量、前記比率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、2~60重量%、好ましくは3~50重量%、より好ましくは4~50重量%、更に好ましくは5~40重量%が挙げられる。
【0026】
・スクラルファート水和物
スクラルファート水和物は、胃粘膜保護作用、抗ペプシン作用、及び制酸作用があり、胃炎・消化性潰瘍治療薬として公知の成分である。前述の通り、イトプリド及び/又はその塩は、副作用として下痢が生じ得ることが知られているが、本発明では、イトプリド及び/又はその塩とスクラルファート水和物を併用することにより、下痢の予防又は改善効果を奏することが可能になる。
【0027】
(B)成分としてスクラルファート水和物を使用する場合、イトプリド及び/又はその塩とスクラルファート水和物との比率としては、例えば、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たり、スクラルファート水和物が0.25~25重量部が挙げられる。より一層便秘の予防又は改善効果を向上させる観点から、イトプリド及び/又はその塩1重量部当たりのスクラルファート水和物の比率として、好ましくは0.5~20重量部、より好ましくは1~15重量部、更に好ましくは5~15重量部が挙げられる。
【0028】
また、(B)成分としてスクラルファート水和物を使用する場合、本発明の内服用医薬組成物におけるスクラルファート水和物の含有量については、剤型、投与量、前記比率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30~95重量%、好ましくは40~85重量%、より好ましくは50~75重量%、更に好ましくは60~75重量%が挙げられる。
【0029】
[その他の含有成分]
本発明の内服用医薬組成物には、前述する成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に制限されないが、例えば、消炎鎮痛剤、消化剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、催眠鎮静剤、抗ヒスタミン剤、強心利尿剤、抗菌剤、制酸剤、酸分泌抑制剤、血管拡張剤、プロトンポンプ阻害薬、生薬、生薬エキス、カフェイン類、メントール類、ポリフェノール等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類や内服用医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
本発明の医薬組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や内服用医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
[剤型]
本発明の内服用医薬組成物の剤型については、特に制限されず、固体状製剤、半固体状製剤、又は液体状製剤のいずれであってもよい。
【0032】
固体状製剤としては、具体的には、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、散剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)等が挙げられる。半固体状製剤としては、具体的には、ゼリー剤等が挙げられる。液体状製剤としては、具体的には、液剤、懸濁剤、シロップ剤等が挙げられる。
【0033】
これらの剤型の中でも、好ましくは固体状製剤が挙げられる。
【0034】
本発明の内服用医薬組成物を前記剤型に調製するには、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて添加される他の薬理成分、基剤、及び添加剤を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0035】
[用法・用量]
本発明の内服用医薬組成物は、通便異常(便秘・下痢)の少なくとも1つの症状の予防又は改善目的で使用することができる。また、本発明の内服用医薬組成物に含まれるイトプリド及び/又はその塩は、機能性ディスペプシア又は慢性胃炎における消化器症状(腹部膨満感、上腹部痛、食欲不振、胸やけ、悪心、嘔吐等)、胃痛等の症状に対する予防又は改善効果を有しているので、本発明の内服用医薬組成物は、当該症状を有する者において、当該症状を予防又は改善しつつ、通便異常を予防又は改善する目的で使用することもできる。
【0036】
また、本発明の内服用医薬組成物の予防又は改善対象となる通便異常は、便秘又は下痢であるが、本発明の内服用医薬組成物は、(B)成分としてアルジオキサ及び/又はグルタミンを使用する場合には便秘の予防又は改善、(B)成分としてテプレノンを使用する場合には便秘又は下痢の予防又は改善、(B)成分としてスクラルファート水和物を使用する場合には下痢の予防又は改善の目的で使用できる。
【0037】
本発明の内服用医薬組成物の服用量については、用途、服用者の年齢等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1日当たりのイトプリド及び/又はその塩の服用量が1~300mg程度、好ましくは50~150mg程度、より好ましくは100~150mg程度となる量で、1日当たり1~3回程度服用すればよい。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
試験例1:イトプリド塩酸塩とアルジオキサ又はL-グルタミンの併用による便秘の予防又は改善効果の検証
便秘モデルとして汎用されているロペラミド誘発便秘モデルラットを用いて、便秘の予防又は改善効果を評価した。具体的には、8週齢の雄性ラット(Slc:SD)を表1に示す7群に分け、各群に所定の被験物質を5mL/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。被験物質の投与から1時間後に、ロペラミド塩酸塩を1mg/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。ロペラミド塩酸塩を投与した時点から7時間後までラットを通常の環境で飼育し、その間の糞便個数及び糞便(湿)重量を計測した。なお、糞便の回収は1時間程度で1回の頻度で行い、その都度、糞便(湿)重量を測定した。各群における7時間後までの糞便個数及び糞便(湿)重量の合計量から各群の平均値と標準偏差を算出し、群間で統計解析を行った。ラットの飼育は、20~26℃、湿度40~70%RHの雰囲気下で行っており、前記回収条件であれば、糞便が排泄された後に回収されるまでの間の自然乾燥によって糞便(湿)重量の測定値が有意に影響を受けることはないといえる。
【0040】
【0041】
結果を表2に示す。対照群では、無処置群に比べて糞便個数及び糞便(湿)重量が有意に低下しており、ロペラミド塩酸塩投与により便秘症状が誘発されたことが確認できた。イトプリド単独群では、対照群と比べての有意差がなく、便秘の予防又は改善効果は殆ど認められなかった。アルジオキサ単独群では、対照群と比べて糞便個数及び糞便(湿)重量がやや増加しており、便秘症状を僅かに増悪する傾向が認められた。また、L-グルタミン単独群では、糞便個数及び糞便(湿)重量が対照群と同程度であり、便秘の予防又は改善効果は認められなかった。
【0042】
これに対して、イトプリド・アルジオキサ併用群及びイトプリド・L-グルタミン併用群の糞便個数及び糞便(湿)重量は、対照群と比べて有意に増加しており、無処置群と同程度になっていた。即ち、イトプリド塩酸塩と、アルジオキサ又はL-グルタミンとを併用することによって、優れた便秘の予防又は改善効果が奏されることが明らかとなった。
【0043】
【0044】
試験例2:イトプリド塩酸塩とテプレノンの併用による下痢の予防又は改善効果の検証
下痢モデルとして汎用されているヒマシ油誘発下痢モデルラットを用いて、下痢の予防又は改善効果を評価した。具体的には、6~7週齢の雄性ラット(crl:CD(SD))を表3に示す5群に分け、各群に所定の被験物質を5mL/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。被験物質の投与から1時間後に、ヒマシ油を0.5mL/headで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。ヒマシ油を投与した時点から24時間後までラットを通常の環境で飼育し、その間の糞便中水分量を計測した。糞便中水分量は、糞便(湿)重量を測定した後に、糞便を80~90℃で12時間乾燥させて糞便乾燥重量を測定し、糞便(湿)重量から糞便乾燥重量を差し引くことにより求めた。なお、糞便の回収は、ヒマシ油を投与した時点から8時間までは1時間程度で1回の頻度、それ以降は24時間の時点でまとめて行い、その都度、糞便中水分量を測定した。各群における24時間後までの糞便中水分量の合計量から各群の平均値と標準偏差を算出し、群間で統計解析を行った。ラットの飼育は、20~26℃、湿度40~70%RHの雰囲気下で行っており、前記回収条件であれば、糞便が排泄された後に回収されるまでの間の自然乾燥によって糞便(湿)重量の測定値が有意に影響を受けることはないといえる。
【0045】
【0046】
結果を表4に示す。なお、本試験において、各群間で、24時間で回収された糞便の乾燥重量の合計値は、殆ど差は認められなかった。対照群では、無処置群に比べて糞便中水分量が有意に増加しており、ヒマシ油投与により下痢症状が誘発されたことが確認できた。イトプリド単独群では、対照群よりも糞便中水分量がやや上昇しており、下痢症状を悪化させる傾向が認められた。テプレノン単独群では、対照群に比べて糞便中水分量がやや減少していたが、これらの群間では有意な差は認められなかった。
【0047】
これに対して、イトプリド・テプレノン併用群の糞便中水分量は、対照群と比べて有意に低下しており、無処置群と同程度になっていた。即ち、イトプリド塩酸塩とテプレノンとを併用することによって、優れた下痢の予防又は改善効果が奏されることが明らかとなった。
【0048】
【0049】
試験例3:イトプリド塩酸塩とテプレノンの併用による便秘の予防又は改善効果の検証
便秘モデルとして汎用されているロペラミド誘発便秘モデルラットを用いて、便秘の予防又は改善効果を評価した。具体的には、8週齢の雄性ラット(Slc:SD)を表5に示す5群に分け、各群に所定の被験物質を5mL/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。被験物質の投与から1時間後に、ロペラミド塩酸塩を1mg/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。ロペラミド塩酸塩を投与した時点から24時間後までラットを通常の環境で飼育し、その間の糞便個数及び糞便(湿)重量を計測した。なお、糞便の回収は、ロペラミド塩酸塩を投与した時点から8時間までは1時間程度で1回の頻度、それ以降は24時間の時点でまとめて行い、その都度、糞便個数及び糞便(湿)重量を測定した。各群における24時間後までの糞便個数及び糞便(湿)重量の合計量から各群の平均値と標準偏差を算出し、群間で統計解析を行った。ラットの飼育は、20~26℃、湿度40~70%RHの雰囲気下で行っており、前記回収条件であれば、糞便が排泄された後に回収されるまでの間の自然乾燥によって糞便(湿)重量の測定値が有意に影響を受けることはないといえる。
【0050】
【0051】
結果を表6に示す。対照群では、無処置群に比べて糞便個数及び糞便(湿)重量が有意に低下しており、ロペラミド塩酸塩投与により便秘症状が誘発されたことが確認できた。イトプリド単独群の糞便個数及び糞便(湿)重量では、対照群と比べてやや増加していたが、両群間で有意差は認められなかった。テプレノン単独群の糞便個数及び糞便(湿)重量は、対照群と同程度であり、便秘の予防又は改善効果は認められなかった。
【0052】
これに対して、イトプリド・テプレノン併用群の糞便個数及び糞便(湿)重量は、対照群と比べて有意に増加しており、無処置群と同程度になっていた。即ち、イトプリド塩酸塩とテプレノンとを併用することによって、優れた便秘の予防又は改善効果が奏されることが明らかとなった。前記試験例2の結果も踏まえると、イトプリド塩酸塩とテプレノンとの併用は、下痢と便秘の双方に対して予防又は改善効果を示すため、通便異常全般に対する予防又は改善に有効であることが分かった。
【表6】
【0053】
試験例4:イトプリド塩酸塩とスクラルファート水和物の併用による下痢の予防又は改善効果の検証
下痢モデルとして汎用されているヒマシ油誘発下痢モデルラットを用いて、下痢の予防又は改善効果を評価した。具体的には、6~7週齢の雄性ラット(crl:CD(SD))を表7に示す5群に分け、各群に所定の被験物質を5mL/kgで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。被験物質の投与から1時間後に、ヒマシ油を0.5mL/headで経口ゾンデを用いて強制経口投与した。ヒマシ油を投与した時点から24時間後までラットを通常の環境で飼育し、その間の糞便中水分量の測定、及び糞便の性状の評価を行った。糞便中水分量は、糞便(湿)重量を測定した後に、糞便を80~90℃で12時間乾燥させて糞便乾燥重量を測定し、糞便(湿)重量から糞便乾燥重量を差し引くことにより求めた。また、糞便の性状の評価は、個体毎に糞便の外観を観察し、正常便、便異常(軟便(軟らかで一部原形をとどめた便)、下痢便(水分の多い液状あるいは液状に近い便)、又は水様便(ほとんど水の様な便、大量の漿液により柔らかくなった便)のいずれであるかについて判定し、正常便の個体割合(%)を算出した。なお、糞便の回収は、ヒマシ油を投与した時点から8時間までは1時間程度で1回の頻度、それ以降は24時間の時点でまとめて行い、その都度、糞便中水分量の測定及び糞便の性状の評価を行った。各群における24時間後までの糞便中水分量の合計量から各群の平均値と標準偏差を算出し、群間で統計解析を行った。ラットの飼育は、20~26℃、湿度40~70%RHの雰囲気下で行っており、前記回収条件であれば、糞便が排泄された後に回収されるまでの間の自然乾燥によって糞便(湿)重量の測定値や糞便の性状が有意に影響を受けることはないといえる。
【0054】
【0055】
結果を表8に示す。なお、本試験において、各群間で、24時間で回収された糞便の乾燥重量の合計値は、殆ど差は認められなかった。また、表8に示す正常便の個体割合(%)の値は、糞便を回収する度に求めた正常便の個体割合の値の中で最も高かった値を示している。
【0056】
対照群では、無処置群に比べて正常便の個体割合の低下及び糞便中水分量の増加が認められ、ヒマシ油投与により下痢症状が誘発されたことが確認できた。イトプリド単独群では、対照群と比べて、正常便の個体割合が同程度であったが、糞便中水分量が増大しており、下痢症状を悪化させる傾向が認められた。スクラルファート単独群の正常便の個体割合及び、糞便中水分量は、対照群と同程度であり、下痢の予防又は改善効果は認められなかった。
【0057】
これに対して、イトプリド・スクラルファート併用群では、対照群と比べて正常便の個体割合の増加及び糞便中水分量が明らかに低下していた。即ち、イトプリド塩酸塩とスクラルファート水和物とを併用することによって、優れた下痢の予防又は改善効果が奏されることが明らかとなった。
【0058】
【0059】
製剤例
表9に示す組成の錠剤、及び表10に示す組成の顆粒を調製した。表9には1錠当たりの錠剤の組成を示している。表9の処方例1~3、5~6、及び8~12に示す組成の各錠剤を1日当たり3錠、処方例4及び7に示す組成の各錠剤を1日当たり6錠、それぞれ継続して服用したところ、通便異常の予防又は改善効果が認められた。また、表10には1包当たりの顆粒の組成を示している。表10に示す組成の各顆粒を1日当たり3包継続して服用したところ、通便異常の予防又は改善効果が認められた。
【0060】
【0061】