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特開2023-173917パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173917
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/46 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C08G77/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086473
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智幸
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB02
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB261
4J246BB26X
4J246CA24X
4J246CA76X
4J246EA13
4J246EA16
4J246FA261
4J246FA291
4J246FC291
4J246HA22
4J246HA34
(57)【要約】
【課題】パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有し、分子中のシロキサン単位数等の制御が可能であり、非フッ素系有機化合物との親和性に優れるオルガノポリシロキサン及びその製造方法の提供。
【解決手段】
パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有し、少なくとも分子鎖の両末端にオルガノポリシロキサンブロックを有し、オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に1分子中に少なくとも1つはアミノ基を有する、オルガノポリシロキサン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化1】
[式(1)中、
Rfは下記式(2)
【化2】
(式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、v+w+x+y=3~200である。また、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、
W1は下記式(A)
【化3】
(式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R2は独立してアミノ基を有する1価の基である。p1及びq1はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W2はそれぞれ独立に下記式(B)
【化4】
(式(B)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R2は独立してアミノ基を有する1価の基である。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。p2及びq2はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
但し、上記式(A)のアミノ基を有するシロキサン単位の数q1及び上記式(B)のアミノ基を有するシロキサン単位の数q2は同時に0とならない。
Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
gは0~50の数であるが、gが0のときW2の式(B)中のq2は0とならない。]
【請求項2】
1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
Rfで表されるパーフルオロポリエーテルブロックが、下記式(3)で表される基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化5】
(式(3)中、v及びwはそれぞれ0~200の数で、但しv+w=3~200である。また、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【請求項4】
2で表されるアミノ基を有する1価の基が、下記式(4)で表される基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化6】
(式(4)中、iは3~8の数であり、jは1~4の数であり、kは0又は1である。)
【請求項5】
(a)成分:下記式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、
(b)成分:アミノ基を有するポリシロキサンと、
(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒と
を混合し、該(a)、(b)及び(c)成分の混合物を
(d)成分:塩基触媒の存在下で
(a)成分と(b)成分のシロキサン間の交換反応を行う工程を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンの製造方法。

【化7】
[式(5)中、Rfは前記式(2)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、W3はそれぞれ独立に下記式(A’)
【化8】
(式(A’)中、R1は前記式(A)のR1と同じである。p1’は0~1,000の数である。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W4はそれぞれ独立に下記式(B’)
【化9】
(式(B’)中、R1及びR1’はそれぞれ前記式(B)のR1及びR1’と同じである。p2’は0~1,000の数である)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
Qは前記式(1)のQと同じである。また、上記式(5)中、QはRfの末端の炭素原子、W3の末端のケイ素原子又はW4の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
g’は0~50の数である。]
【請求項6】
(b)成分が、下記式(6)又は下記式(7)で表されるアミノ基を有するポリシロキサンから選ばれる1種以上である、請求項5に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化10】
(式(6)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R3は独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は-SiR1 3(R1は上記と同じである。)である。iは3~8の数であり、jは1~4の数であり、kは0又は1である。p3は0~1,000の数であり、q3は1~100の数である。)
【化11】
(式(7)中、R1、i、j及びkは上記と同じである。p4は0~6の数であり、q4は1~8の数である。但し、3≦p4+q4≦14である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に低いため、耐薬品性、潤滑性、離型性、撥水撥油性などを有する。その性質を利用して、工業的には、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、紙・繊維・ガラス・樹脂などの撥水撥油防汚剤、化粧料、保護膜などとして、幅広く利用されている。
【0003】
しかし、パーフルオロポリエーテル基含有化合物の表面自由エネルギーが低いために、他の物質との相溶性、親和性が非常に低く、パーフルオロポリエーテル基含有化合物を各種工業材料等に添加して上記性質を付与しようとすると、分散安定性や反応性などに問題が生じ、パーフルオロポリエーテル基含有化合物の各種工業材料等への配合は困難であった。
【0004】
一方、ポリシロキサン化合物も、その表面自由エネルギーが低いため、撥水性・潤滑性・離型性などの性質を有する。そして、ポリシロキサン化合物は、パーフルオロポリエーテル化合物に比べて他の物質に対する親和性が良い。また、各種変性を施すと、さらに分散安定性が向上する。そのため、ポリシロキサン化合物は各種工業材料等に添加してシリコーンの性質を容易に付与することができ、幅広い分野で性能向上用の添加剤として利用されている。パーフルオロポリエーテル基とポリシロキサン鎖を有する化合物として、パーフルオロポリエーテル変性のポリシロキサン化合物がある(特許文献1)。
しかし、このポリシロキサン化合物において、パーフルオロポリエーテル基の性質を高める目的でフッ素変性率を上げると、他の材料に対する親和性が著しく低下してしまう。このため、分散安定性や反応性などに問題を生じることがある。
【0005】
これを鑑みて、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体が開発されている(特許文献2)。この共重合体は、パーフルオロポリエーテルとポリシロキサン双方の特性を有し、非フッ素系有機化合物との親和性に優れている。しかし、反応性官能基を有しないので、他材料との反応、固定化ができなかった。
【0006】
また、シロキサン側鎖に、パーフルオロポリエーテル基とアミノ基とを有するパーフルオロポリエーテル変性アミノ基含有オルガノポリシロキサンも開発されている(特許文献3)。しかし、特許文献3のパーフルオロポリエーテル変性アミノ基含有オルガノポリシロキサンは、導入可能なシロキサン単位数が限定的であり、また、全てのシロキサン単位にアミノ基を有しているため、非フッ素系有機化合物に対する相溶性の制御や、得られる硬化物の架橋密度の制御、繊維処理等に使用する際の物性制御等が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-321764号公報
【特許文献2】特開2011-21158号公報
【特許文献3】特開2011-201941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンであって、他の物質、特に非フッ素系有機化合物との親和性に優れるオルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供することを目的とする。具体的には、パーフルオロポリエーテルブロック及びオルガノポリシロキサンブロックそれぞれの数や、オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に導入するアミノ基の変性率等の分子構造の制御が可能なオルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、下記オルガノポリシロキサンが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は下記のものである。
[1]
下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化1】
[式(1)中、
Rfは下記式(2)
【化2】
(式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、v+w+x+y=3~200である。また、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、
W1は下記式(A)
【化3】
(式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R2は独立してアミノ基を有する1価の基である。p1及びq1はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W2はそれぞれ独立に下記式(B)
【化4】
(式(B)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R2は独立してアミノ基を有する1価の基である。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。p2及びq2はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
但し、上記式(A)のアミノ基を有するシロキサン単位の数q1及び上記式(B)のアミノ基を有するシロキサン単位の数q2は同時に0とならない。
Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
gは0~50の数であるが、gが0のときW2の式(B)中のq2は0とならない。]

[2]
1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上である、[1]に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。

[3]
Rfで表されるパーフルオロポリエーテルブロックが、下記式(3)で表される基である、[1]又は[2]に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化5】
(式(3)中、v及びwはそれぞれ0~200の数で、但しv+w=3~200である。また、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)

[4]
2で表されるアミノ基を有する1価の基が、下記式(4)で表される基である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサン。
【化6】
(式(4)中、iは3~8の数であり、jは1~4の数であり、kは0又は1である。)

[5]
(a)成分:下記式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、
(b)成分:アミノ基を有するポリシロキサンと、
(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒と
を混合し、該(a)、(b)及び(c)成分の混合物を
(d)成分:塩基触媒の存在下で
(a)成分と(b)成分のシロキサン間の交換反応を行う工程を有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化7】
[式(5)中、Rfは前記式(2)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、W3はそれぞれ独立に下記式(A’)
【化8】
(式(A’)中、R1は前記式(A)のR1と同じである。p1’は0~1,000の数である。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W4はそれぞれ独立に下記式(B’)
【化9】
(式(B’)中、R1及びR1’はそれぞれ前記式(B)のR1及びR1'と同じである。p2’は0~1,000の数である)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
Qは前記式(1)のQと同じである。また、上記式(5)中、QはRfの末端の炭素原子、W3の末端のケイ素原子又はW4の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
g’は0~50の数である。]

[6]
(b)成分が、下記式(6)又は下記式(7)で表されるアミノ基を有するポリシロキサンから選ばれる1種以上である、[5]に記載のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化10】
(式(6)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R3は独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は-SiR1 3(R1は上記と同じである。)である。iは3~8の数であり、jは1~4の数であり、kは0又は1である。p3は0~1,000の数であり、q3は1~100の数である。)

【化11】
(式(7)中、R1、i、j及びkは上記と同じである。p4は0~6の数であり、q4は1~8の数である。但し、3≦p4+q4≦14である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンは、パーフルオロポリエーテルブロックを有し、シロキサン含有量が多く、分子鎖の両末端にオルガノポリシロキサンブロックを有している。さらに、オルガノポリシロキサンブロックの側鎖にアミノ基を有している。このため、パーフルオロポリエーテルブロックを有しながらも非フッ素系有機化合物と相溶しやすく、エポキシ化合物等と反応可能であり、繊維等への付着性にも優れる。また、本発明のオルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン単位の数やオルガノポリシロキサンブロックの側鎖が有するアミノ基の変性率を容易に制御できる。
従って、本発明のオルガノポリシロキサンは、非フッ素系有機樹脂の表面改質剤や繊維処理等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のオルガノポリシロキサンは、下記式(1)で表され、パーフルオロポリエーテルブロック(Rf)と、オルガノポリシロキサンブロック(W2又はW1)が、交互に存在する。
【化12】
式(1)中の各符号の定義は前記と同じである。
【0013】
上記オルガノポリシロキサンブロックは、側鎖にアミノ基を有するため、種々の有機化合物との反応や付着が可能である。
【0014】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンは、1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上、99%以下であることが好ましく、60%以上、90%以下であることがより好ましい。オルガノポリシロキサンブロック含有量が上記下限値以上であれば、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れ、上記上限値以下であれば、パーフルオロポリエーテル基の性質が発現しやすい。該オルガノポリシロキサンブロック含有量は、式(1)のオルガノポリシロキサンの1H-NMRスペクトルで、上記式(1)中のQのアルキレン由来のピークと、W1及びW2中のケイ素原子上の有機基由来のピークとの積分比から、分子量既知のパーフルオロポリエーテルブロックRfと、オルガノシロキシ単位とのモル比を求め、このモル比を分子量の比に換算して算出した値である。なお、通常、式(1)のオルガノポリシロキサンは構造に分布を有するため、上記オルガノポリシロキサンブロック含有量は1分子当たりの平均値である。
【0015】
オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2のうち1つ以上は、下記式(8)で表されるシロキサン単位を有することが好ましい。
【化13】
【0016】
上記式(8)中、R2はアミノ基を有する1価の基であり、好ましくは下記式(4)で表されるアミノ基を有する1価の基である。
【0017】
【化14】
式(4)中、iは3~8の数であり、好ましくは3~4の数である。jは1~4の数であり、好ましくは2~3の数である。kは0又は1である。
【0018】
上記式(8)で表されるアミノ基を有するシロキサン単位は、上記式(1)中に1つ以上存在し、2個以上存在することが有機化合物との反応性や付着性の観点から好ましい。なお、オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2における式(8)のシロキサン単位は、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0019】
上記式(1)中、オルガノポリシロキサンブロックW1は、下記式(A)で表される2価の基である。
【化15】
【0020】
式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基である。R1の炭素数1~18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。R1の炭素数6~18のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。R1の炭素数7~18のアラルキル基の例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基、ナフチルメチル基、2-ナフチルエチル基などが挙げられる。R1としては、好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0021】
上記式(A)中、R2の例としては、式(8)のR2で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0022】
上記式(A)中、p1及びq1はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0023】
上記式(A)で表される基の例として、下記式(9)~(14)で表される基等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化16】
【化17】
【0024】
上記式(1)中、オルガノポリシロキサンブロックW2は、下記式(B)で表される1価の基である。
【化18】
【0025】
上記式(B)中、R1及びR2は、上記式(A)で挙げたものと同様のものが挙げられる。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基から選ばれる基であり、好ましくは炭素数1~18のアルキル基である。R1’の炭素数1~18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。R1’の炭素数6~18のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。R1’の炭素数7~18のアラルキル基の例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基、ナフチルメチル基、2-ナフチルエチル基などが挙げられる。R1’としては、より好ましくは、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基又はドデシル基である。
【0026】
上記式(B)中、p2及びq2はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。なお、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。但し、上記式(A)中のアミノ基を有するシロキサン単位の数q1及び上記式(B)中のアミノ基を有するシロキサン単位の数q2は同時に0とならない。
【0027】
式(B)で表される基の例として、下記式(15)~(19)で表される基等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化19】
【化20】
【0028】
上記式(1)中のパーフルオロポリエーテルブロックRfは、下記式(2)で示されるものである。
【化21】
【0029】
式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、好ましくはそれぞれ0~50の数であり、但し、v+w+x+y=3~200であり、好ましくは10~50であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0030】
上記式(2)の各繰り返し単位は、例えば下記繰り返し単位等が挙げられる。
【化22】
【0031】
中でも、上記式(2)において、z=1であり、x及びyが0である下記式(3)のパーフルオロポリエーテルブロックが、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れるため好ましい。
【化23】
【0032】
式(3)中、v及びwはそれぞれ0~200の数であり、好ましくはそれぞれ0~50の数であり、但し、v+w=3~200であり、好ましくは10~50であり、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0033】
上記各式で表されるパーフルオロポリエーテルブロックは、通常、構造に分布を有したものであり、v、w、x及びyはそれぞれ1分子当たりの平均値である。
【0034】
上記式(1)中、Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、好ましくは炭素数3~6の2価の有機基である。また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合している。なお、Qは酸素原子や窒素原子を含んでいてもよい。具体的には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及び2級アミノ基などが挙げられる。Qの具体例としては下記の基等が挙げられる。
【化24】
(式中、*はRfに結合する遊離基、**はW1またはW2に結合する遊離基を示す。)
【0035】
上記Qの具体例の中でも、オルガノポリシロキサンブロックとパーフルオロポリエーテルブロックの連結が容易である点で、*-CH2OCH2CH2CH2**が好ましい。
【0036】
上記式(1)中、gは0~50の数であり、好ましくは0~20の数であり、より好ましくは0~10の数である。gがこの範囲にあると、取り扱いが容易な粘度になる。
【0037】
[オルガノポリシロキサンの製造方法]
本発明は、上記パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンの製造方法にも関する。本発明のオルガノポリシロキサンは、例えば以下に述べる方法で製造できる。
【0038】
(a)成分:下記式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、(b)成分:アミノ基を有するポリシロキサンと、(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒とを混合し、該(a)、(b)及び(c)成分の混合物を、(d)成分:塩基触媒の存在下で、
(a)成分と(b)成分のシロキサン間の交換反応を行うことにより、上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0039】
【化25】
【0040】
(a)成分:式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体は、特許第4,900,854号に記載の方法などを用いて製造することができる。
【0041】
詳細には、W4を誘導するための片方の末端にヒドロシリル基を1つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、W3及び/又はW4を誘導するための、両末端にヒドロシリル基を1つずつ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの1種以上と、下記式(20)で表されるRfの両側に不飽和基を有する基Q’を備えた化合物とを、白金触媒の存在下でヒドロシリル化反応させる。両末端にヒドロシリル基を1つずつ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみと下記式(20)で表される化合物とをヒドロシリル化反応させる場合は、さらに炭素数1~18の非置換又は置換の末端不飽和炭化水素をヒドロシリル化反応させ、末端のヒドロシリル基を失活させる。末端のヒドロシリル基を失活させることで、シロキサン間の交換反応中のゲル化を防ぐことができる。
【0042】
【化26】
【0043】
上記式(20)において、Rfは上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、Q’は、例えば、下記で示す末端に不飽和基を含む基である。
【0044】
【化27】
【0045】
上記式(5)において、Rfは上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックである。
【0046】
式(5)中、オルガノポリシロキサンブロックW3は、それぞれ独立に下記式(A’)で表される2価の基である。
【化28】
【0047】
上記式(A’)中、R1は上記式(A)に記載のものと同じである。p1’は0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。
【0048】
上記式(5)中、オルガノポリシロキサンブロックW4は、下記式(B’)で表される1価の基である。
【化29】
【0049】
上記式(B’)中、R1及びR1’は上記式(B)に記載のものと同じである。p2’は0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。
【0050】
上記式(5)中、Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、好ましくは炭素数3~6の2価の有機基である。また、QはRfの末端の炭素原子、W3の末端のケイ素原子又はW4の末端のケイ素原子のいずれかと結合している。なお、Qは酸素原子や窒素原子を含んでいてもよい。具体的には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及び2級アミノ基などが挙げられる。Qの具体例としては下記の基等が挙げられる。
【0051】
【化30】
(式中、*はRfに結合する遊離基、**はW3またはW4に結合する遊離基を示す。)
【0052】
上記Qの具体例の中でも、オルガノポリシロキサンブロックとパーフルオロポリエーテルブロックの連結が容易である点で、*-CH2OCH2CH2CH2**が好ましい。
【0053】
上記式(5)中、g’は0~50の数であり、好ましくは0~20の数であり、より好ましくは0~10の数である。g’がこの範囲にあると、取り扱いが容易な粘度になる。
【0054】
式(5)において、W4を誘導するための、片方の末端にヒドロシリル基を1つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下記のシロキサン等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【0055】
【化31】
(式中、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【0056】
上記式(5)において、W3及び/又はW4を誘導するための、両末端にヒドロシリル基を1つずつ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下記のシロキサン等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【0057】
【化32】
(式中、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【0058】
(b)成分:アミノ基を有するポリシロキサンは、特に制限はないが、下記式(6)又は下記式(7)で表されるポリシロキサンであることが好ましい。
【0059】
【化33】
(式(6)中、R1、i、j及びkはそれぞれ上記式(A)及び上記式(4)に記載のものと同じである。R3は独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は-SiR1 3(R1は上記と同じである。)であり、好ましくは水素原子、メチル基又は-Si(CH33である。p3は0~1,000の数であり、好ましくは0~500である。q3は1~500の数であり、好ましくは1~200の数である。)
【0060】
【化34】
(式(7)中、R1、i、j及びkはそれぞれ上記式(6)に記載のものと同じである。p4は0~6の数であり、好ましくは0である。q4は1~14の数であり、好ましくは1~8の数である。但し、3≦p4+q4≦14である。)
【0061】
上記式(6)で表されるポリシロキサンの例として、下記式のポリシロキサン等を挙げることができるが、下記式に限定されるものではない。
【0062】
【化35】
【0063】
上記式(7)で表されるポリシロキサンの例として、下記式のポリシロキサン等を挙げることができるが、下記式に限定されるものではない。
【0064】
【化36】
【0065】
(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒は、(a)成分:パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、(b)成分:アミノ基を有するポリシロキサンと、(d)成分:塩基触媒を相溶させてシロキサン間の交換反応を進行させるために必要である。(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒は、(d)成分:塩基触媒を失活させないものであれば特に制限はないが、シロキサン間の交換反応を高温で行うために高沸点のものが好ましい。例えば、(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-フルオロヘキサン、1-フルオロオクタン、1-フルオロデカン等を挙げることができる。中でも、(a)成分:上記式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、(b)成分のポリシロキサンとの相溶性が良い1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが好ましい。
【0066】
(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒の使用量は、上記(a)成分、(b)成分及び(d)成分が相溶する量であれば特に制限はないが、(a)成分、(b)成分及び(d)成分の合計に対して、10~300質量%であることが好ましい。
【0067】
(d)成分:塩基触媒は、上記(a)成分及び(b)成分のシロキサン結合を加水分解できるものであれば、特に制限はないが、上記(a)成分及び(b)成分との相溶性が良いシラノラート構造を有するポリシロキサンが好ましい。
【0068】
上記(d)成分:塩基触媒の例として、下記式のシラノラート構造を有するポリシロキサン等を挙げることができるが、下記式に限定されるものではない。
【0069】
【化37】
【0070】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンの製造方法において、必要に応じて(e)成分:下記式(21)及び下記式(22)で表されるポリシロキサンから選ばれる1種以上を加えて、シロキサン間の交換反応を行ってもよい。(e)成分を加えて反応させることにより、上記式(1)中のオルガノシロキシ単位数の制御が可能であり、非フッ素系有機化合物との相溶性の制御が容易になる。
【0071】
【化38】
(式(21)中、R1は上記と同じである。r1は3~14の数であり、好ましくは3~8の数である。)
【0072】
【化39】
(式(22)中、R1は上記と同じである。r2は0~5,000の数であり、好ましくは2~1,000の数である。)
【0073】
(e)成分の中でも、式(21)で示される環状ポリシロキサンが好ましく、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンが好ましい。
【0074】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンの製造方法において、沸点を上昇させる目的及び上記式(1)のオルガノポリシロキサンを副生成物であるアミノ基を有する環状ポリシロキサンから分離して精製する目的で、任意で(f)成分:非フッ素系有機溶媒を加えてもよい。本反応は(c)成分:フッ素化炭化水素溶媒のみの存在下でも可能であるが、(f)成分の非フッ素系有機溶媒を加えて沸点を上昇させることにより、温度を容易に上昇させることができ、シロキサン間の交換反応及び(d)成分:塩基触媒の分解反応を効率よく進行させることができることがある。また、上記式(1)のオルガノポリシロキサンを溶解し、副生成物であるアミノ基を有する環状ポリシロキサンを溶解しない非フッ素系有機溶媒を反応生成物に加えて濾過し、加えた非フッ素系有機溶媒を留去することにより、上記式(1)のオルガノポリシロキサンを精製することができる。
【0075】
上記(f)成分:非フッ素系有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、n-テトラデカンなどの脂肪族炭化水素;ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類等を挙げることができる。沸点を上昇させる目的の場合は、(a)成分:上記式(5)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体と、(b)成分及び(e)成分のポリシロキサンとの相溶性が良く、沸点が高いn-テトラデカンが好ましい。上記式(1)のオルガノポリシロキサンを副生成物であるアミノ基を有する環状ポリシロキサンから分離して精製する目的の場合は、上記式(1)のオルガノポリシロキサンが溶解しやすく、アミノ基を有する環状ポリシロキサンが溶解しにくい脂肪族炭化水素が好ましく、低沸点で留去が容易なヘキサンがより好ましい。
【0076】
(f)成分:非フッ素系有機溶媒の使用量は、シロキサン間の交換反応が進行する量及び上記式(1)のオルガノポリシロキサンと副生成物であるアミノ基を有する環状ポリシロキサンとを分離できる量であれば特に制限はないが、(a)成分、(b)成分、(d)成分及び(e)成分の合計に対して、10~300質量%であることが好ましい。
【0077】
上記製造方法において、反応温度は、上記(a)成分:パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体のシロキサンと、(b)成分及び(e)成分のシロキサンの交換反応が進行する温度であれば特に制限はないが、90~180℃であることが好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、反応が速やかに進行しやすく、上記上限値以下であれば、副反応が起こりにくい。
【0078】
上記製造方法において、反応時間は、上記(a)成分と、(b)成分及び(e)成分のシロキサン間の交換反応が平衡状態に達する時間であれば特に制限はないが、0.5~12時間であることが好ましい。
【0079】
上記製造方法で得られる上記式(1)のオルガノポリシロキサンは、通常、構造に分布を有したものになり、式(1)において、gは1分子あたりの平均値である。
【実施例0080】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、繰り返し単位数gは、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(1)に基づくSi(R1'3-O-構造のSiに由来する積分値Mと、上記式(1)に基づく-Q-Si(R12-O-構造のSiに由来する積分値M’とから算出される値であり、g=(M’/M)-1である。
【0081】
[実施例1]オルガノポリシロキサン(1-1)の合成
反応容器に、特許第4,900,854号に準じて合成した下記式(5-1)で示されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体3.3gと、下記式(6-1)及び下記式(7-1)で示されるアミノ基を有するポリシロキサンの混合物0.25gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.4gと、n-テトラデカン1.2gと、下記式(23-1)で示されるシラノラート構造を有するポリシロキサン0.077gとを入れて、窒素雰囲気下にて150℃で6時間攪拌した。次いで、反応容器中の混合物を100℃まで冷却し、シラノラートを中和する目的で反応容器に2-クロロエタノール0.012gを加えて、100℃で2時間攪拌した。得られた混合物を濾過し、溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンとn-テトラデカン、及び過剰量の2-クロロエタノールを減圧留去して、淡黄色半透明の液状生成物2.6gを得た。
【0082】
【化40】
【0083】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表1~3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0084】
以上の結果から、生成物は下記式(1-1)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は78%であることが分かった。
【化41】
【0085】
[実施例2]オルガノポリシロキサン(1-2)の合成
反応容器に、下記式(5-2)で示されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体3.0gと、下記式(6-2)及び下記式(7-2)で示されるアミノ基を有するポリシロキサンの混合物0.30gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.4gと、下記式(23-2)で示されるシラノラート構造を有するポリシロキサン0.32gとを入れて、窒素雰囲気下にて100℃で3時間攪拌した。次いで、反応容器にn-テトラデカン3.0gを加え、150℃で2時間攪拌して塩基触媒を分解した。溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンとn-テトラデカンを減圧留去した後、n-ヘキサン5.0gを加え、溶液を濾過し、n-ヘキサンに不溶のアミノ基を有する環状ポリシロキサンを除去した。n-ヘキサンを減圧留去し、白色半透明の液状生成物2.3gを得た。
【0086】
【化42】
【0087】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表4~6に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【0088】
以上の結果から、生成物は下記式(1-2)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は79%であることが分かった。
【化43】
【0089】
[実施例3]オルガノポリシロキサン(1-3)の合成
反応容器に、下記式(5-3)で示されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体3.5gと、上記式(6-1)及び上記式(7-1)で示されるアミノ基を有するポリシロキサンの混合物0.35gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.6gと、n-テトラデカン1.3gと、上記式(23-1)で示されるシラノラート構造を有するポリシロキサン0.042gとを入れて、窒素雰囲気下にて150℃で6時間攪拌した。次いで、反応容器中の混合物を100℃まで冷却し、シラノラートを中和する目的で反応容器に2-クロロエタノール0.013gを加えて、100℃で2時間攪拌した。得られた混合物を濾過し、溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンとn-テトラデカン、及び過剰量の2-クロロエタノールを減圧留去して、淡黄色半透明の液状生成物2.7gを得た。
【0090】
【化44】
【0091】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表7~9に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【0092】
以上の結果から、生成物は下記式(1-3)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は55%であることが分かった。
【化45】
【0093】
[比較例1(分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量:23%)]
反応容器に、下記式(24)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン21.5gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン21.5gと、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.60gとを加え、60℃で5分攪拌した。次いで、反応容器中の混合物に、アリルアミン1.25gを15分かけて滴下し、80℃で2時間攪拌した。溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンと過剰量のアリルアミンを減圧留去して、下記式(25)で表されるオルガノポリシロキサン20.8gを得た。
【0094】
【化46】
【0095】
[非フッ素系有機化合物への溶解性の評価]
上記の実施例及び比較例のオルガノポリシロキサン0.1gを、下記の非フッ素系有機化合物0.9gと混合し、その混合液を目視で観察して、下記の基準により溶解性を評価した。
評価基準
○:混合液が透明である。
△:混合液がわずかに濁っている。
×:混合液が白濁又は二相に分離している。
【0096】
【表10】
【0097】
表10の結果から、本発明のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンは、シロキサン含有量が少ない比較例のオルガノポリシロキサンよりも、非フッ素系有機化合物への溶解性に優れることがわかった。
【0098】
[比較例2]
反応溶媒の1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.4gとn-テトラデカン1.2gを用いずに、無溶媒下で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にしてシロキサン間の交換反応を行ったが、反応は進行せず、反応原料である上記式(6-1)で示されるアミノ基を有するポリシロキサンの残存を確認した。
【0099】
[比較例3]
反応溶媒の1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.4gとn-テトラデカン1.2gに代えて、n-テトラデカン3.6gを用いたこと以外は実施例1と同様にしてシロキサン間の交換反応を行い、高粘度の白濁層と低粘度の微白濁層からなる、不均一な液状生成物2.7gを得た。反応原料である上記式(6-1)で示されるアミノ基を有するポリシロキサンの残存は確認できなかった。
上記高粘度の白濁層はトルエンに対して難溶であり、上記低粘度の微白濁層はトルエンに対して易溶であった。
【0100】
以上より、フッ素化炭化水素溶媒下で反応させた実施例1においては、パーフルオロポリエーテルブロックが均一に導入されたアミノ基を有するオルガノポリシロキサンが得られた。これに対し、無溶媒下で反応を行った比較例2においては、パーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンが得られなかった。また、非フッ素系有機溶媒下で反応させた比較例3においては、パーフルオロポリエーテルブロックが不均一に導入されたアミノ基を有するオルガノポリシロキサンが得られた。これらのことから、反応を均一に進行させるためにフッ素化炭化水素溶媒が必要であることは明らかである。
【0101】
本発明のパーフルオロポリエーテルブロックとアミノ基とを有するオルガノポリシロキサンは、パーフルオロポリエーテルブロック及びオルガノポリシロキサンブロックそれぞれの数やアミノ基を有するシロキサン単位数の制御が容易である。そのため、相溶性や硬化物の架橋密度、繊維等への付着性の制御も可能であり、非フッ素系有機樹脂の表面改質剤や繊維処理剤等の用途に有用である。