(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173973
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】発酵乾燥汚泥の製造方法及び発酵乾燥汚泥製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/02 20060101AFI20231130BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20231130BHJP
C02F 11/12 20190101ALI20231130BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20231130BHJP
C10L 5/46 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C02F11/02 ZAB
C02F11/04 A
C02F11/12
C02F11/13
C10L5/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086550
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】513176959
【氏名又は名称】株式会社森づくり
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 保史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘義
(72)【発明者】
【氏名】中山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉添 貴典
(72)【発明者】
【氏名】久次 修二
(72)【発明者】
【氏名】杉田 哲也
【テーマコード(参考)】
4D059
4H015
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA23
4D059BA06
4D059BA12
4D059BA31
4D059BA48
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4D059EB01
4H015AA02
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA07
4H015BA09
4H015BB03
4H015BB09
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】下水汚泥を主原料とし、乾燥処理に極力化石燃料を用いずかつ下水汚泥に由来しない添加材を極力使用することなく製造でき、運搬時や保管時に悪臭や粉塵が生じ難く、しかもバイオマス燃料としての取り扱いが容易な発酵乾燥汚泥を提供する。
【解決手段】下水汚泥P
2aを嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥P
3の含水率を10~30質量%の範囲内に調整して乾燥消化汚泥P
6を得る減容乾燥工程(ステップS1)と、このステップS1により得られる乾燥消化汚泥P
6と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥P
2bと、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥P
7を得る混合工程(ステップS2)と、調整汚泥P
7を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥P
8を得る発酵乾燥工程(ステップS3)を備える発酵乾燥汚泥の製造方法1による。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥の含水率を10~30質量%の範囲内に調整して乾燥消化汚泥を得る減容乾燥工程と、
前記減容乾燥工程により得られる前記乾燥消化汚泥と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥を得る混合工程と、
前記調整汚泥を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥を得る発酵乾燥工程と、を備えることを特徴とする発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項2】
前記発酵乾燥工程より得られる前記発酵乾燥汚泥の一部を、前記混合工程において加えて前記調整汚泥を得るように循環させる循環工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項3】
前記調整汚泥における前記発酵乾燥汚泥の含有率は、15~40質量%の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項4】
前記調整汚泥は、通気助材を含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項5】
前記調整汚泥の嵩密度は、0.6~0.75g/cm3の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項6】
前記減容乾燥工程において前記消化汚泥の乾燥は、前記下水汚泥を嫌気条件下で消化処理する際に発生する消化ガスの燃焼熱により行う、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発酵乾燥汚泥の製造方法。
【請求項7】
下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥の含水率を10~30質量%の範囲内に調整してなる乾燥消化汚泥と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥である未消化下水汚泥と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥にする混合設備と、
前記調整汚泥を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥にする密閉縦型発酵槽である発酵乾燥設備と、を備え、
前記発酵乾燥設備は、
前記調整汚泥を収容して発酵乾燥処理を行う容器と、
前記容器の上方に設けられ前記調整汚泥を投入するための投入口と、
前記容器の下方に設けられ前記調整汚泥を発酵乾燥処理してなる前記発酵乾燥汚泥を排出する排出口と、
前記容器内に配される回転軸と、この回転軸の上部から下部にかけて所望間隔で離間して多段に設けられかつ前記回転軸を基軸に回転する撹拌体と、を備えてなる撹拌手段と、
前記回転軸及び前記撹拌体を介して前記容器内に酸素含有気体を供給する給気手段と、
前記容器の上方に設けられる排気手段と、を備えていることを特徴とする発酵乾燥汚泥製造システム。
【請求項8】
前記排出口から排出される前記発酵乾燥汚泥の一部を前記混合設備に返送する返送手段を備えている、ことを特徴とする請求項7に記載の発酵乾燥汚泥製造システム。
【請求項9】
前記混合設備の上流側に設けられる減容乾燥設備を備え、
前記減容乾燥設備は、
前記未消化下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して消化汚泥及び消化ガスを生成させる消化手段と、
前記消化汚泥を脱水してケーキ状の脱水消化汚泥にする脱水手段と、
前記消化ガスを燃焼させてその燃焼熱で前記脱水消化汚泥を乾燥させて前記乾燥消化汚泥にする乾燥手段と、を備えていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の発酵乾燥汚泥製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥を嫌気条件下で消化処理した際の残渣である乾燥消化汚泥を用いた発酵乾燥汚泥の製造方法及び発酵乾燥汚泥製造システムに関する。
【0002】
従来、一般家庭や畜産設備等から排出されるし尿等の下水は、下水処理設備(又は下水処理施設等)において微生物により生分解されて処理される。その際に、下水処理設備(又は下水処理施設等)の最終沈殿池において処理水が分離されて生じる残渣が下水汚泥である。
このような下水汚泥は通常、易分解性有機物及び好気性菌に富んでいる。また、従来このような下水汚泥は、さらに脱水して堆肥原料として用いられたり、セメント製造時等の燃料(バイオマス燃料)として利用されたりしている。
その一方で下水汚泥(未消化汚泥又は活性汚泥)は主に有機物であり、より詳細には、主に生きている微生物細胞とその死骸からなる有機物により構成されている。つまり、下水汚泥は、水と有機質が細胞膜に包まれて閉じ込められた粒子(細胞)の集合体を多く含んでいる。このため、下水汚泥を凝集剤等を用いて濃縮した後、さらに遠心分離機やフィルタープレス等を用いて脱水してもその含水率は依然として70~85質量%程度もあり、燃料(バイオマス燃料)として大量に使用することが難しいという課題があった。また、下水汚泥は、悪臭が強く、臭気の問題も燃料として使用する上での大きな問題となっていた。
【0003】
このような事情に鑑み、下水汚泥をバイオマス燃料としてより利用し易くするために様々な工夫がなされている。
より具体的には、下水汚泥等の汚泥をバイオマス燃料として利用可能にするための従来公知のプロセスとしては、例えば以下に示すようなものが知られている。
a)下水汚泥を消化処理して減容化した後、その残渣である消化汚泥を乾燥して燃料化
b)下水汚泥を消化処理することなく乾燥して燃料化
また、上記a)のプロセスの場合は、下水汚泥を消化処理する際にメタン等の消化ガス(燃料)を得られるというメリットがある。その反面、この消化処理により生じる消化汚泥は、易分解性有機物の含有率が低下しているものの、その臭気は依然として高いものである。また、消化汚泥は嫌気性菌の存在比率が高いため、臭気を低減させるための好気性発酵処理を行おうとしても、好気性発酵が進行し難いことから、臭気の低減を十分に行うことができないという問題を有する。
他方、上記b)のプロセスの場合、消化処理を行っていない下水汚泥等の汚泥(未消化汚泥)は、易分解性有機物に富んでいることから高い臭気を放つが、好気性菌にも富んでいる。このため、未消化汚泥は、発酵処理を経て臭気低減を行うことが容易で、含水率を十分に低下させた未消化汚泥(発酵物)は、バイオマス燃料としても利用しやすい。
その反面、未消化汚泥から上記バイオマス燃料を製造するには、直接雨水に晒されない環境で未消化汚泥を山積みにし、随時切り返しを行いながら6~8週間程度の時間をかけて好気性発酵処理を行う必要があった。
【0004】
さらに、消化処理の有無にかかわらず、下水汚泥等の汚泥をバイオマス燃料として利用可能にするための主要な乾燥プロセスとしては、例えば炭化方式が知られている。
上記炭化方式は、下水汚泥等の汚泥を、化石燃料の消費を伴う乾燥機等を用いて乾燥した後、造粒機等を用いるなどして造粒し、さらに造粒された乾燥汚泥を、化石燃料の消費を伴う炭化炉等を用いて炭化して最終的にバイオマス燃料にするというものである。
【0005】
しかしながら、上記炭化方式は、下水汚泥等の汚泥を炭化の状態まで処理するために大量のエネルギー(化石燃料)を消費する必要があり、エネルギー効率が悪かった。
また、上述のような乾燥手段を用いて下水汚泥等の汚泥を原料として製造されるバイオマス燃料は、運搬時や保管時に粉塵が周囲に飛散し易いという別の課題を有していた。
【0006】
そして、上述のような課題に対処するための先願としては、例えば特開昭60-137497号公報(特許文献1)の「下水汚泥の発酵処理方法及びその装置」、特公昭56-48239号公報(特許文献2)の「汚泥処理方法」、特開2020-163318号公報(特許文献3)の「下水汚泥発酵原料の製造方法」、特開2005-111374号公報(特許文献4)の「有機汚泥の処理方法」、特開2021-159800号公報(特許文献5)の「発酵乾燥物の製造方法、セメントクリンカーの製造方法、及び、発酵乾燥物の使用方法」等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-137497号公報
【特許文献2】特公昭56-48239号公報
【特許文献3】特開2020-163318号公報
【特許文献4】特開2005-111374号公報
【特許文献5】特開2021-159800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1,2に開示される発明の場合は、発酵処理対象物が未消化汚泥であるため、好気性発酵処理(発酵)をスムーズに進められると考えられる。その一方で、特許文献1,2のいずれにも、乾燥消化汚泥から悪臭を効率良く除去しつつ、その含水率を燃焼し易くかつ粉塵が生じ難い状態にする具体的な方法については、開示はおろか示唆や言及はない。
【0009】
また、特許文献3には、脱水していない下水汚泥、又は脱水汚泥、あるいは消化汚泥を、悪臭の発生を防ぎつつ発酵処理する技術が開示されている。その一方で、特許文献3に開示される発明の場合は、下水汚泥の発酵を促進するために、「資材」を上記下水汚泥に混合する必要がある。
また、引用文献3における上記「資材」とは、水汚泥の含水率を低減させたり、下水汚泥と資材とを含む下水汚泥発酵原料の通気性を高めたり、好気発酵に寄与する微生物の栄養源となる易分解性有機物を供給したり、好気発酵を効率良く進行させるための好気性微生物群を供給したりするのに用いられるものである。
さらに、特許文献3に開示される発明では、下水汚泥100質量部に対する資材の総質量部を、好ましくは15質量部以上300質量部以下、より好ましくは22質量部以上230質量部以下、更に好ましくは28質量部以上170質量部以下に設定されている。
加えて、特許文献3に開示される発明では、上記「資材」は、例えば、稲わら、もみがら、おがくず、バーク、草木又はこれらの乾燥物若しくは破砕物などの有機系通気助材や、パーライト、ゼオライト、珪藻土、フライアッシュなどの無機系通気助材等からなる通気助材を含んでいる。
よって、特許文献3に開示される発明の場合は、悪臭の発生を抑制しながら下水汚泥を好気性発酵処理することができるものの、別途コストをかけて資材を調達する必要があるため、下水汚泥の処理コストを低減することが難しいという別の課題を有していた。
【0010】
特許文献4には、有機汚泥を好気性発酵させることで、化石燃料の消費を伴う乾燥機等を用いることなく有機汚泥を脱水して燃料としての使用に適した含水率に調整する技術が開示されている。
その一方で、特許文献4には、有機汚泥を好気性発酵させる際に、木くず等の通気性改善材を添加しない場合の実施例が開示されていない。
つまり、特許文献4に開示される発明においても、上述の特許文献3に開示される発明の場合と同様に、有機汚泥(脱水消化汚泥を含む)を好気性発酵処理するためには通気性改善材の添加が不可欠であり、有機汚泥の処理コストを低減し難いという別の課題を有していた。
【0011】
特許文献5には、下水汚泥を好気性発酵させることでセメントの製造に使用できる発酵乾燥物を効率良く製造する方法が開示されている。
その一方で、特許文献5に開示される発明では、下水汚泥(消化汚泥を含む)を好気性発酵させるために、必須成分として鶏糞を添加する必要がある。
つまり、特許文献5に開示される発明においても、上述の特許文献3や特許文献4に開示される発明の場合と同様に、下水汚泥(消化汚泥を含む)を好気性発酵処理するにあたり何らかの添加物を添加する必要があり、発酵乾燥物の製造に要するコストを低減し難いという別の課題を有していた。
【0012】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、下水汚泥を主原料とし、下水汚泥に由来しない添加材等を全く又は極力使用することなく製造することができ、運搬時や保管時に悪臭や粉塵が生じ難く、しかもバイオマス燃料として利用し易い発酵乾燥汚泥の製造方法及び発酵乾燥汚泥製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第1の発明である発酵乾燥汚泥の製造方法は、下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥の含水率を10~30質量%の範囲内に調整して乾燥消化汚泥を得る減容乾燥工程と、この乾燥工程により得られる乾燥消化汚泥と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥を得る混合工程と、調整汚泥を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥を得る発酵乾燥工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成の第1の発明において、減容乾燥工程は、下水処理設備(又は下水処理施設等)の最終沈殿槽において処理水が分離されて得られる濃縮された下水汚泥(未消化濃縮汚泥)を、嫌気条件下で嫌気性菌により嫌気性発酵させることで減容し、その残渣である消化汚泥を脱水及び乾燥して、含水率が10~30質量%の範囲内である乾燥消化汚泥を得る工程である。なお、この減容乾燥工程で得られる乾燥消化汚泥は通常、好気性菌が乏しく、しかも、依然として強い悪臭を有する。
また、第1の発明における混合工程は、上述の減容乾燥工程により得られる乾燥消化汚泥と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥を得る工程である。なお、この混合工程において乾燥消化汚泥に混合される未消化脱水汚泥は、続く発酵乾燥工程において乾燥消化汚泥を好気性発酵させる際の含水率調整材として、好気性菌が繁殖する際の栄養源として好適に作用する。さらに、未消化脱水汚泥は、加熱処理(燃焼熱等を利用した乾燥処理)を経ないために、好気性菌が生きたまま残存しており、好気性発酵処理を行う際の菌種として有効に作用する。つまり、未消化脱水汚泥は、易分解性有機物及び好気性菌に富む一方で、未消化脱水汚泥も強い悪臭を有する。
さらに、第1の発明における発酵乾燥工程は、上述の調整汚泥を好気性環境下で好気性発酵させながら乾燥して、含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥を得る工程である。
この発酵乾燥工程では、調整汚泥を好気性発酵処理することで、調整汚泥を構成する乾燥消化汚泥及び未消化脱水汚泥に含まれる悪臭の元の臭気成分が生分解されて低減するとともに、発酵時に生じる熱等により最終産物である発酵乾燥汚泥の含水率を、燃焼炉内で燃焼する際に不具合を生じない程度で、かつ運搬時や保管時に粉塵が生じない状態、にするという作用を有する。
【0014】
第2の発明は、上述の第1の発明であって、発酵乾燥工程より得られる発酵乾燥汚泥の一部を、混合工程において加えて調整汚泥を得るように循環させる循環工程を更に含むことを特徴とする。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明が上述のような循環工程を有することで、混合工程において作製される調整汚泥は、消化乾燥汚泥、未消化脱水汚泥に加えて、発酵乾燥汚泥を含有することになる。
この場合、調整汚泥を構成する発酵乾燥汚泥は、調整汚泥の含水率を低下させる含水率調整材として、また、好気性菌を高い比率で含有していることにより、さらに続く発酵乾燥工程において調整汚泥を好気性発酵させる際の好気性菌の菌種として有効に作用する。
また、調整汚泥を構成する発酵乾燥汚泥は、続く発酵乾燥工程の発酵条件に特に適した菌叢である。
このため、第2の発明によれば、続く発酵乾燥工程において、調整汚泥をスムーズに好気性発酵させることができないという不具合が生じるのを回避することができる。つまり、第2の発明によれば、続く発酵乾燥工程において、高い確実性を持って安定的に調整汚泥を好気性発酵させることができる。
【0015】
第3の発明は、上述の第2の発明であって、調整汚泥における発酵乾燥汚泥の含有率は、15~40質量%の範囲内であることを特徴とする。
上記構成の第3の発明は、上述の第2の発明の調整汚泥における発酵乾燥汚泥の含有率を具体的に特定したものであり、その作用は上述の第2の発明による作用と同じである。
【0016】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明であって、調整汚泥は、通気助材を含んでいることを特徴とする。
上記構成の第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。
また、調整汚泥が通気助材を含有していることで、通気助材を含有しない場合に比べて、発酵乾燥工程における発酵乾燥処理時に調整汚泥内の通気性を向上させるという作用を有する。
第4の発明では、下水汚泥に由来しない添加材である通気助材の調達にコストがかかるものの、調整汚泥の好気性発酵を促進してその完了までの時間を短縮するという作用を有する。
また、調整汚泥の好気性発酵が促進されることで、調整汚泥から生じる悪臭の元である臭気成分の生分解を促進するともに、調整汚泥の含水率の低下速度を速めるという作用も有する。
つまり、第4の発明によれば、臭気強度が低く十分に含水率が低減された発酵乾燥汚泥の生産性を向上させるという作用を有する。
【0017】
第5の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、調整汚泥の嵩密度は、0.6~0.75g/cm3の範囲内であることを特徴とする。
上記構成の第5の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第5の発明では、混合工程において得られる調整汚泥の嵩密度を上記範囲内に特定することで、発酵乾燥工程において、発酵槽内に収容される調整汚泥の充填率を高めつつ、調整汚泥の通気性を十分に確保することができる。
よって、第5の発明によれば、最終産物である発酵乾燥汚泥の生産性が高まる。
【0018】
第6の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、減容乾燥工程において消化汚泥の乾燥は、下水汚泥を嫌気条件下で消化処理する際に発生する消化ガスの燃焼熱により行う、ことを特徴とする。
上記構成の第6の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第6の発明では、消化汚泥を乾燥して乾燥消化汚泥を得る際に必要な燃料を、消化ガスで賄うことができる。
この場合、乾燥消化汚泥を得るために別途化石燃料を消費する必要がないので、その分最終産物である発酵乾燥汚泥の製造コストを廉価にできる。
【0019】
第7の発明である発酵乾燥汚泥製造システムは、下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥の含水率を10~30質量%の範囲内に調整してなる乾燥消化汚泥と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥である未消化下水汚泥と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥にする混合設備と、上記調整汚泥を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥にする密閉縦型発酵槽である発酵乾燥設備と、を備え、この発酵乾燥設備は、調整汚泥を収容して発酵乾燥処理を行う容器と、この容器の上方に設けられ調整汚泥を投入するための投入口と、容器の下方に設けられ調整汚泥を発酵乾燥処理してなる発酵乾燥汚泥を排出する排出口と、容器内に配される回転軸と、この回転軸の上部から下部にかけて所望間隔で離間して多段に設けられかつ回転軸を基軸に回転する撹拌体と、を備えてなる撹拌手段と、回転軸及び撹拌体を介して容器内に酸素含有気体を供給する給気手段と、容器の上方に設けられる排気手段と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の第7の発明における混合設備は、少なくとも乾燥消化汚泥と未消化下水汚泥(未消化脱水汚泥)の2種類の下水汚泥由来物を混合して、発酵乾燥原料である調整汚泥を得るという作用を有する。
また、第7の発明における発酵乾燥設備は、上記調整汚泥を好気性条件下において発酵させつつ乾燥することで、調整汚泥中の悪臭の元である臭気成分を生分解して減少させるとともに、調整汚泥を発酵乾燥して得られる発酵乾燥汚泥の含水率を粉塵が生じない程度にまで低減させるという作用を有する。
また、発酵乾燥設備における容器は、調整汚泥を収容するという作用を有する。さらに、この容器の上方に設けられる投入口は、容器の上方側から容器内に調整汚泥を供給する際の供給口として作用する。さらに、容器の下方に設けられる排出口は、調整汚泥を発酵乾燥処理して得られる最終産物である発酵乾燥汚泥を、容器の外に導出する際の導出口として作用する。また、撹拌手段は、回転軸を基軸に回転する撹拌体により、容器内に収容される調整汚泥を撹拌するという作用を有する。さらに、給気手段は、回転軸及び撹拌体を介して容器内に収容される調整汚泥に酸素含有気体を供給するという作用を有する。加えて、排気手段は、容器内を流動し、調整汚泥の発酵及び乾燥に使用された気体を容器の外に排出するという作用を有する。
そして、上述のような第7の発明では、調整汚泥の発酵及び乾燥が、密閉縦型発酵槽である発酵乾燥設備内において行われることで、調整汚泥中に含まれる悪臭の元である臭気成分が容器の外の環境に悪影響を及ぼすのを防ぐという作用を有する。
【0020】
第8の発明は、上述の第7の発明であって、排出口から排出される発酵乾燥汚泥の一部を混合設備に返送する返送手段を備えている、ことを特徴とする。
上記構成の第8の発明は、上述の第7の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第8の発明が上述のような返送手段を備えていることで、少なくとも消化乾燥汚泥、未消化脱水汚泥及び発酵乾燥汚泥の3種類により調整汚泥を構成することができる。
この場合、調整汚泥において発酵乾燥汚泥は、調整汚泥の含水率を低下させる含水率調整材として、また発酵乾燥設備において調整汚泥を好気性発酵させる際の好気性菌を多量に含む菌種として作用する。
つまり、第8の発明によれば、発酵乾燥設備を構成する容器内において調整汚泥を好気性発酵させる際に、容器内の環境(発酵乾燥処理の処理条件)に適応した好気性発酵菌群を調整汚泥に供給することができる。
この場合、発酵乾燥設備において、調整汚泥中の臭気成分の生分解及び乾燥をスムーズに進行させるという作用を有する。
【0021】
第9の発明は、上述の第7又は第8の発明であって、混合設備の上流側に設けられる減容乾燥設備を備え、この減容乾燥設備は、未消化下水汚泥を嫌気条件下で消化処理して消化汚泥及び消化ガスを生成させる消化手段と、上記消化汚泥を脱水してケーキ状の脱水消化汚泥にする脱水手段と、先の消化手段によって得られた消化ガスを燃焼させてその燃焼熱で脱水消化汚泥を乾燥させて乾燥消化汚泥にする乾燥手段と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の第9の発明は、上述の第7又は第8の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第9の発明では、脱水消化汚泥を乾燥させて乾燥消化汚泥を得る際に必要な燃料として、消化処理時に生じる消化ガスを使用できる。
この場合、減容乾燥設備において乾燥消化汚泥を得るために別途化石燃料等を消費する必要がなくなるので、その分のコストが最終産物である発酵乾燥汚泥の製造コストに上乗せされるのを防ぐことができる。
よって、第9の発明によれば、発酵乾燥汚泥の製造コストを廉価にできる。
【発明の効果】
【0022】
上述のような第1の発明によれば、好気性菌及び含水率が乏しい乾燥消化汚泥を高い確実性を持って好気性発酵させることができる。
また、調整汚泥を構成する乾燥消化汚泥及び下水汚泥(より具体的には未消化脱水汚泥)はいずれもそのままでは強い悪臭を有するが、調整汚泥を好気性発酵させることで、調整汚泥中の臭気成分を生分解して調整汚泥から生じる悪臭を除去又は大幅に低減させることができる。
さらに、調整汚泥を構成する乾燥消化汚泥の含水率は、バイオマス燃料として使用する際に燃焼には特に悪影響を及ぼさないが、含水率が低いものは、炉内に供給する際に粉塵が生じたりするという不具合を有する。また、乾燥消化汚泥は、好気性発酵させる際の発酵原料には適さない。
他方、調整汚泥を構成する下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)は、好気性発酵には適するものの、そのままバイオマス燃料として使用すると含水率が高いせいで、炉内の燃焼に支障をきたすため、燃料として大量には使用することができない。
これに対して、第1の発明によれば、上述のようなそれぞれ単体ではバイオマス燃料として使用する際に不具合を有する乾燥消化汚泥と下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)を組み合せて調整汚泥を作製するとともに(混合工程)、この調整汚泥を好気性発酵させることで(発酵乾燥処理)、悪臭が大幅に低減され、粉塵が生じ難く、しかもバイオマス燃料として使用する際に炉内における燃焼に支障のない含水率を有する発酵乾燥汚泥を効率良く製造することができる。
この結果、第1の発明により製造される発酵乾燥汚泥を運搬したり保管したりする際に、その周辺環境に対して臭気対策や粉塵対策を施す必要がなくなるので、その取り扱いが容易になる。
さらに、第1の発明により製造される発酵乾燥汚泥の含水率は20~40質量%の範囲内であるため、その態様は重質感のある粉体となる。従って、搬送等の取り扱い時において飛散の問題が効果的に解消される。
よって、第1の発明によれば、バイオマス燃料として使用する際の取り扱いが容易でない下水汚泥由来物同士を組み合せて、取り扱いが容易なバイオマス燃料(発酵乾燥汚泥)を新たに製造することができる。
【0023】
さらに、特に第1の発明において、特に混合工程において得られる調整汚泥の原料を下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)とその処理物(乾燥消化汚泥)に特定する場合は、下水汚泥のみを原料とし、それ以外の成分を何ら添加することなく上述のような発酵乾燥汚泥を効率良く製造することもできる。
つまり、第1の発明によれば、下水汚泥に対して、下水汚泥以外の添加物を添加したりすることなく、悪臭が生じず又は大幅に低減され、運搬時や保管時に粉塵が生じる恐れがないバイオマス燃料(発酵乾燥汚泥)を製造することができる。
【0024】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第2の発明によれば、循環工程を有することで、発酵乾燥工程における調整汚泥の好気性菌による発酵乾燥処理を好適に促進できる。
つまり、本発明が循環工程を有しない場合は、発酵乾燥工程時に、調整汚泥中において好気性菌が増殖するまでの時間が相対的に長くなり、最終産物の発酵乾燥汚泥になるまでの時間も相対的に長くなる。
他方、第2の発明が循環工程を有する場合は、調整汚泥に添加される発酵乾燥処理用の好気性菌の菌種が、下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)と発酵乾燥汚泥の2種類になる。また、調整汚泥に菌種として添加される発酵乾燥汚泥は、以後の発酵乾燥処理時の環境に特に適した菌叢を有する菌種である。
よって、第2の発明によれば、調整汚泥に発酵乾燥処理用の好気性菌の菌種として下水汚泥のみが添加される場合に比べて、以後の発酵乾燥工程において当初予定通り調整汚泥の発酵が進行しなくなるリスクを大幅に低減することができる。
つまり、第2の発明によれば、発酵乾燥工程時に効率良くかつ高い確実性をもって調整汚泥を発酵させつつ乾燥することができる。
したがって、第2の発明によれば、循環工程を有しない場合に比べて、発酵乾燥汚泥の生産効率を向上させることができる。
【0025】
なお、第2の発明において、特に混合工程で得られる調整汚泥の原料を下水汚泥(例えば未消化脱水汚泥)とその処理物(乾燥消化汚泥及び発酵乾燥汚泥)に特定する場合は、下水汚泥のみを原料とし、それ以外の成分を何ら添加することなく上述のような発酵乾燥汚泥を効率良く製造することができる。
つまり、第2の発明によっても、下水汚泥に対して、下水汚泥以外の添加物を添加したりすることなく、悪臭が生じず又は大幅に低減され、運搬時や保管時に粉塵が生じる恐れがないバイオマス燃料(発酵乾燥汚泥)を製造することができる。
【0026】
第3の発明は、上述の第2の発明において調整汚泥中の発酵乾燥汚泥の含有率を具体的に特定したものであり、その効果は第2の発明による効果と同じである。
【0027】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のいずれか発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明によれば、発酵乾燥工程における好気性菌による調整汚泥の発酵及び乾燥を促進することができる。
そして、第4の発明によれば、調整汚泥が通気助材を含有しない場合と比べて、調整汚泥が最終製品である発酵乾燥汚泥になるまでの期間を相対的に短くすることができる。
よって、第4の発明によれば、発酵乾燥汚泥の生産効率を向上させることができる。
【0028】
第5の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第5の発明によれば、発酵乾燥工程において処理対象物である調整汚泥自体の通気性を良好に維持できる。
この結果、発酵乾燥工程における調整汚泥の好気性菌による発酵及び乾燥を効率良く進行させることができる。
よって、第5の発明によっても、発酵乾燥汚泥の生産効率を向上させることができる。
【0029】
第6の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第6の発明では、消化汚泥を乾燥させるための燃料として特に消化ガス(例えばメタン等)を用いることで、その乾燥処理時に化石燃料を別途調達して消費する必要がなくなる。
したがって、第6の発明によれば、最終産物である発酵乾燥汚泥の製造に要するコストを削減することができる。
【0030】
第7の発明によれば、上述の第1の発明による効果と同じ効果を奏する。また、第7の発明によれば、発酵乾燥設備として特に密閉縦型発酵槽を用いることで、調整汚泥を発酵乾燥処理する際に生じる排気の管理及び処理を容易に行うことができる。
この場合、調整汚泥を密閉縦型発酵槽である容器内において発酵乾燥処理する際に生じる悪臭を含む排気を、集めて脱臭処理を行うことが容易になるので、発酵乾燥設備の周辺環境に排気が悪影響を及ぼすのを好適に防ぐことができる。
また、第7の発明では、発酵乾燥設備を構成する容器内において、調整汚泥を撹拌する際に用いる回転軸及び撹拌体を介して、容器内に収容される調整汚泥に酸素含有気体を供給することができる。
この場合、容器内に収容される調整汚泥に対してむらなく酸素含有気体を供給することができる。この結果、容器内に収容される調整汚泥全体においてむらなく好気性菌による発酵と、この発酵に伴う温度上昇による調整汚泥の乾燥を進行させることができる。
したがって、第7の発明によれば、発酵乾燥設備の排出口から導出される最終産物である発酵乾燥汚泥の品質(例えば含水率や臭気強度)を均質化することができる。
よって、第7の発明によれば、品質が均質化された発酵乾燥汚泥を効率良く製造することができる。
【0031】
第8の発明は、上述の第7の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第8の発明では、返送手段を備えていることで、発酵乾燥設備において発酵乾燥処理が完了した発酵乾燥汚泥の一部を好気性菌の菌種として、また調整汚泥の含水率調整材として混合設備に送給することができる。
この結果、第8の発明によれば、上述の第2の発明による効果と同じ効果を奏する。
【0032】
第9の発明は、上述の第7又は第8の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第9の発明によれば、上述の第6の発明による効果と同じ効果を奏する。
また、第9の発明では、混合設備及び発酵乾燥設備に加えて、減容乾燥設備を備えていることで、下水汚泥から効率的にかつ処理コストを極力抑えながら、乾燥消化汚泥を得ることができる。
そして、上記のように処理コストを極力抑えて製造された乾燥消化汚泥を用いることで、最終産物である発酵乾燥汚泥の製造コストも抑えることができる。
この結果、第9の発明によれば、発酵乾燥汚泥の製造に要するコストを廉価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図2】本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムのシステム構成図である。
【
図3】本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムの発酵乾燥手段である密閉縦型発酵槽の鉛直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法及び発酵乾燥汚泥製造システムについて
図1乃至
図3を参照しながら説明する。
【0035】
[1:発酵乾燥汚泥の製造方法について]
<1-1;発酵乾燥汚泥の製造方法の概要について>
まず、
図1を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態という)に係る発酵乾燥汚泥の製造方法の基本構成について説明する。
図1は本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法の各工程を示すフローチャートである。なお、
図1ではフロー中に示される各工程に対応する設備の符号を併記している。
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1は、例えば
図1に示すように、下水汚泥(より具体的には未消化濃縮汚泥P
2a)を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥P
3の含水率を10~30質量%の範囲内に調整して乾燥消化汚泥P
6を得る減容乾燥工程(ステップS1)と、この減容乾燥工程(ステップS1)により得られる乾燥消化汚泥P
6と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥(未消化脱水汚泥P
2b)と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥P
7を得る混合工程(ステップS2)と、調整汚泥P
7を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥P
8を得る発酵乾燥工程(ステップS3)を備えている。
【0036】
<1-1-1;準備工程について>
ここで、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1に先立って行われる準備工程(第1の準備工程及び第2の準備工程)について説明する。
まず、第1の準備工程(ステップS0-1)は、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の減容乾燥工程(ステップS1)において用いる未消化濃縮汚泥P
2aを得る工程である。
より具体的には、この第1の準備工程(ステップS0-1)は、一般家庭や事業所等から排出されるし尿等や、畜産設備等から排出される糞尿等からなる汚水を、
図1に示す下水処理設備3(下水処理施設)の図示しない処理槽等において微生物により生分解処理した際に生じる下水汚泥(未消化汚泥P
1=活性汚泥)を濃縮したものである。
より詳細には、上記未消化汚泥P
1を、例えば下水処理設備3における枡状の最終沈殿池(濃縮設備4)に流し入れて、この最終沈殿池の底に沈殿した未消化汚泥P
1(活性汚泥)を、処理水から分離した際の残渣が未消化濃縮汚泥P
2aである。
【0037】
さらに、上述の第1の準備工程(ステップS0-1)において得られた未消化濃縮汚泥P2aを脱水してさらに減容する工程が第2の準備工程(ステップS0-2)である。
より具体的には、第2の準備工程(ステップS0-2)は、先の第1の準備工程(ステップS0-1)において得られた未消化濃縮汚泥P2aを、遠心分離機やフィルタープレス等の脱水手段8を用いて脱水してケーキ状の未消化脱水汚泥P2bを得る工程である。
つまり、第1の準備工程(ステップS0-1)において得られる未消化濃縮汚泥P2aと、第2の準備工程(ステップS0-2)において得られる未消化脱水汚泥P2bは、含水率が異なるだけでそれ以外は実質的に同じである。
より具体的には、未消化濃縮汚泥P2aと未消化脱水汚泥P2bはいずれも、易分解性有機物及び好気性菌に富む一方で、強い悪臭を有する。
【0038】
<1-1-2;減容乾燥工程(ステップS1)について>
次に、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における減容乾燥工程(ステップS1)について説明する。
減容乾燥工程(ステップS1)は、以下に示すステップS1-1~ステップS1-3の3つの工程により構成されている。
減容乾燥工程(ステップS1)における消化工程(ステップS1-1)は、原料である未消化濃縮汚泥P
2aを図示しない消化処理タンク等の容器(消化手段5)内に収容し、嫌気条件下において未消化濃縮汚泥P
2aを嫌気性菌により嫌気発酵して減容する工程である。
また、この消化工程(ステップS1-1)では、嫌気性菌により未消化濃縮汚泥P
2aが生分解されることでメタン等の消化ガスP
4が生成する。
つまり、この消化工程(ステップS1-1)では、
図1に示すように、嫌気性菌による発酵産物としてメタン等の消化ガスP
4が得られる一方で、その残渣として消化汚泥P
3が生じる。
【0039】
また、減容乾燥工程(ステップS1)における脱水工程(ステップS1-2)は、先の消化工程(ステップS1-1)において生じる消化汚泥P3を脱水してさらに減容する工程である。
より具体的には、脱水工程(ステップS1-2)では先の消化工程(ステップS1-1)において生じる消化汚泥P3を、遠心分離機やフィルタープレス等の脱水手段6を用いて脱水してケーキ状の脱水消化汚泥P5を得る工程である。
【0040】
そして、減容乾燥工程(ステップS1)における乾燥工程(ステップS1-3)は、先の脱水工程(ステップS1-2)において得られるケーキ状の脱水消化汚泥P5をさらに乾燥して、含水率が10~30質量%の範囲内である乾燥消化汚泥P6を得る工程である。
より具体的には、乾燥工程(ステップS1-3)は、先の脱水工程(ステップS1-2)において得られる脱水消化汚泥P5を、化石燃料等の燃料を燃焼設備(乾燥手段7)において燃焼させた際に生じる燃焼熱により加熱して乾燥させてその含水率を10~30質量%の範囲内に調整する工程である。
なお、乾燥工程(ステップS1-3)の燃焼設備(乾燥手段7)において使用する燃料として、先の消化工程(ステップS1-1)において生じた消化ガスP4を用いてもよい。
【0041】
また、上述のような一連の減容乾燥工程(ステップS1)において得られる乾燥消化汚泥P6は、上述の未消化濃縮汚泥P2a(=乾燥消化汚泥P6の原料)とは対照的に、易分解性有機物及び好気性菌が乏しくかつ含水率も低いため、乾燥消化汚泥P6のみを好気性発酵させることは難しい。
しかも、減容乾燥工程(ステップS1)において得られる乾燥消化汚泥P6は、上述の未消化濃縮汚泥P2aと同様に、強い悪臭を有する。
【0042】
<1-1-3;混合工程(ステップS2)について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における混合工程(ステップS2)は、上記減容乾燥工程(ステップS1)において得られる乾燥消化汚泥P6と、先の第2の準備工程(ステップS0-2)において得られる未消化脱水汚泥P2bを例えばパドル式混合機等の混合設備9を用いて混合して、含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥P7を得る工程である。
なお、この混合工程(ステップS2)において調整汚泥P7を構成する乾燥消化汚泥P6は、次の発酵乾燥工程における主発酵原料である。また、調整汚泥P7を構成する未消化脱水汚泥P2bは、次の発酵乾燥工程において乾燥消化汚泥P6を好気性発酵させるための好気性菌(菌種)、及びこの好気性菌を増殖させるための栄養源(易分解性有機物)及び水分を供給するという作用を有する。
なお、この混合工程(ステップS2)において調整汚泥P7の構成成分は、上述の乾燥消化汚泥P6及び未消化脱水汚泥P2bのみでもよいし、これらに加えて必要に応じて後段において説明する最終産物である発酵乾燥汚泥P8や通気助材を含んでいてもよい。
【0043】
<1-1-4;発酵乾燥工程(ステップS3)について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における発酵乾燥工程(ステップS3)は、先の混合工程(ステップS2)において得られる調整汚泥P7を、例えば密閉縦型発酵槽等の発酵乾燥設備10において好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥P8を得る工程である。
なお、この発酵乾燥工程(ステップS3)において得られる発酵乾燥汚泥P8は粉状であるものの、適度な湿り気を帯びて重質な状態になる。
【0044】
<1-2;発酵乾燥汚泥の製造方法による作用・効果について>
上述のような本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の基本構成によれば、それのみで好気性発酵させることが難しい乾燥消化汚泥P6を、高い確実性をもってかつスムーズに好気性発酵させることができる。
そして、乾燥消化汚泥P6及び未消化脱水汚泥P2bを少なくとも含有する発酵原料を好気性発酵させることで、この発酵原料中に含まれている悪臭のもととなる臭気成分を生分解してその量を大幅に低減するとともに、最終産物である発酵乾燥汚泥P8の含水率をバイオマス燃料として使用する際に燃焼に支障が生じない程度にまで低減することができる。
しかも、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の場合は、最終産物である発酵乾燥汚泥P8の含水率を上記のように低減するために、化石燃料等を消費する乾燥機の使用を必要最小限度にすることができる。
さらに、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1によれば、最終産物である発酵乾燥汚泥P8の含水率が20~40質量%の範囲内であることで、発酵乾燥汚泥P8は適度な湿り気を帯びた状態になる。
つまり、発酵乾燥汚泥P8は粉状であるものの、湿り気を帯びた重質な状態になる。
この場合、発酵乾燥汚泥P8を運搬したり保管したりする際に、発酵乾燥汚泥P8から粉塵が生じるのを好適に防ぐことができる。
【0045】
したがって、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1によれば、乾燥消化汚泥P6と未消化脱水汚泥P2bを原料として用い、その乾燥の際に化石燃料の消費を極力抑えつつ、バイオマス燃料として使用することができ、かつその運搬時や保管時に、悪臭及び粉塵が生じ難い発酵乾燥汚泥P8を効率良く製造することができる。
しかも、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1により製造される発酵乾燥汚泥P8は、バイオマス燃料として使用する際の燃焼炉へ供給も極めて容易である。
【0046】
さらに、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1では、先のステップS2(混合工程)において製造される調整汚泥P7の原料を特に乾燥消化汚泥P6及び未消化脱水汚泥P2bに特定する場合は、未消化汚泥P1(下水汚泥)由来物のみを用い、それ以外の成分を何ら添加することなく上述のような発酵乾燥汚泥P8を効率良く製造することができる。
つまり、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1によれば、それぞれをバイオマス燃料として使用する場合に悪臭や粉塵の発生等の不具合を有する乾燥消化汚泥P6及び未消化脱水汚泥P2bを用いて、新たに投入する化石燃料等のエネルギーを極力少なくしつつ、しかも、好気性発酵を促進させるための菌種や栄養源として下水汚泥P1由来物以外の添加物を添加したりすることなく、悪臭や粉塵の対策が不要なより高品質なバイオマス燃料を製造することができる。
【0047】
<1-3;発酵乾燥汚泥の製造方法の任意付加的事項について>
<1-3-1;発酵乾燥汚泥の循環工程について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1は、
図1に示すように、必要に応じて先の発酵乾燥工程(ステップS3)より得られる発酵乾燥汚泥P
8の一部を、混合工程(ステップS2)において調整汚泥P
7に加えて循環させる循環工程(ステップS4)を備えていてもよい。
より具体的には、発酵乾燥設備10の排出口と混合設備9の投入口の間に、例えばコンベア等からなる返送手段11を設けて、発酵乾燥設備10において発酵乾燥処理が完了した発酵乾燥汚泥P
8の一部を、混合設備9に送給可能に構成してもよい。
この場合、調整汚泥P
7に添加されて含有される発酵乾燥汚泥P
8は、調整汚泥P
7の含水率を低下させる含水率調整材として、また以後の発酵乾燥工程(ステップS3)において調整汚泥P
7を好気性発酵させる際の菌種として作用する。
また、調整汚泥P
7に含有される発酵乾燥汚泥P
8は、以後の発酵乾燥工程(ステップS3)の環境に十分に適応した好気性菌からなる微生物叢である。
このため、調整汚泥P
7が発酵乾燥汚泥P
8を含有していることで、以後の発酵乾燥工程(ステップS3)において発酵処理がスムーズに進行しないといった不具合が生じるのを好適に回避することができる。
つまり、混合工程(ステップS2)において作製される調整汚泥P
7が発酵乾燥汚泥P
8を含有していることで、以後の発酵乾燥工程(ステップS3)における調整汚泥P
7の発酵及び乾燥を、スムーズに進行させることができる。
【0048】
つまり、調整汚泥P7が発酵乾燥汚泥P8を含有する場合は、発酵乾燥工程(ステップS3)において、調整汚泥P7の発酵及び乾燥の進行を所望に維持することができる。より具体的には、調整汚泥P7が発酵乾燥汚泥P8を含有することで、調整汚泥P7に含まれる悪臭の元である臭気成分の生分解速度や、調整汚泥P7の乾燥速度にばらつきが生じるのを好適に抑制することができる。
この場合、発酵乾燥工程(ステップS3)において調整汚泥P7の発酵の進行が遅延したり、最終産物である発酵乾燥汚泥P8の含水率が当初目的とする値よりも大きく又は小さくなったりするといった不具合が生じるのを好適に防ぐことができる。
したがって、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1が循環工程(ステップS4)を備える場合は、この循環工程(ステップS4)を有しない場合に比べて、効率良くかつ連続的に、臭気強度や含水率等の品質が所望に維持された発酵乾燥汚泥P8を製造し続けることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1が循環工程(ステップS4)を有する場合、調整汚泥P7における発酵乾燥汚泥P8の含有率は15~40質量%の範囲内に設定するとよい。
なお、調整汚泥P7における発酵乾燥汚泥P8の含有率が15質量%を下回る場合は、上述のような独自の効果が発揮され難くなる。
また、発酵乾燥汚泥P8は、好気性菌に富む一方で、易分解性有機物及び水分の含有率は調整汚泥P7よりも低い。このため、調整汚泥P7における発酵乾燥汚泥P8の含有率が高まるにつれ、調整汚泥P7は発酵し難くなる。加えて、調整汚泥P7における発酵乾燥汚泥P8の含有率が高い場合は、最終産物である発酵乾燥汚泥P8の生産効率も低下する。
このため、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1が循環工程(ステップS4)を備える場合、調整汚泥P7における発酵乾燥汚泥P8の含有率は40質量%を下回っていることが望ましい。
【0050】
<1-3-2;通気助材について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の、ステップS2(混合工程)において作製される調整汚泥P7は、乾燥消化汚泥P6及び未消化脱水汚泥P2bに加えて、さらにおが屑、植物由来粒状物(例えばもみ殻等)、木質系材料粉砕物(例えばチップ等)等の通気助材を含有してもよい。
一般に、調整汚泥P7を構成する乾燥消化汚泥P6や未消化脱水汚泥P2bは泥状で固形物が含まれていないため、含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥P7は通気性が低くなりがちである。
このため、調整汚泥P7が特に下水汚泥(未消化汚泥P1)由来物のみからなる場合は、続く発酵乾燥工程(ステップS3)において、調整汚泥P7中に均質に空気等の酸素含有気体を行き渡らせることが難しい場合もある。そして、このような場合は、調整汚泥P7中に発酵むらが生じてしまう懸念がある。
また、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の混合工程(ステップS2)において調整汚泥P7を作製する場合、その嵩密度等を適宜調整することで調整汚泥P7の通気性を確保しているが、原料として用いる未消化脱水汚泥P2bの性状によっては、調整汚泥P7の通気性を十分に高めることができない場合も想定される。
このような場合、調整汚泥P7に通気助材として例えばおが屑、植物由来粒状物(例えばもみ殻等)、木質系材料粉砕物(例えばチップ等)等を単独で、あるいはこれらの内の2種類以上の組み合せを添加することで、調整汚泥P7の通気性を高めることができる。
【0051】
なお、調整汚泥P7に含有される通気助材は、燃料として使用でき、かつ調整汚泥P7に含有された際に調整汚泥P7の通気性を向上させるものであれば、上記以外のものを用いてもよい。
また、調整汚泥P7における通気助材の含有率については、調整汚泥P7を構成する乾燥消化汚泥P6や未消化脱水汚泥P2bの含有量や含有率、さらには通気助材として何を用いるかやその粒径あるいは嵩密度等に応じて決定する必要があるため一概に特定することができないが、調整汚泥P7における通気助材の含有率が高いと発酵乾燥汚泥P8の生産性が低下する。このため、調整汚泥P7における通気助材の含有率は25質量%以下に設定することが望ましい。
【0052】
<1-3-3;調整汚泥の嵩密度について>
先にも述べた通り、調整汚泥P
7を構成する乾燥消化汚泥P
6や未消化脱水汚泥P
2bは、ある程度の水分を含有した場合の性状は泥状であり、通気性が低くなりがちである。
このため、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1では、混合工程(ステップS2)において乾燥消化汚泥P
6を作製する際に、例えばパドル式混合機を用いるなどして原料である乾燥消化汚泥P
6や未消化脱水汚泥P
2bを十分に撹拌混合してその通気性を確保してもよい。
より具体的には、調整汚泥P
7の嵩密度を0.6~0.75g/cm
3の範囲内に設定してもよい。この場合、発酵槽(例えば
図3に示す容器12)内に収容される調整汚泥P
7に加圧することなく空気等の酸素含有気体を通気させることができる。
この場合、発酵乾燥工程(ステップS3)時に、調整汚泥P
7中に存在する好気性菌にむらなく発酵に必要な酸素を供給できるとともに、発酵時に生じた二酸化炭素等の不要なガスを、調整汚泥P
7内を流動させることで除去することができる。
この結果、発酵乾燥処理中の調整汚泥P
7に発酵むらが生じるのを好適に抑制できるので、均質な発酵乾燥汚泥P
8を効率良く製造することができる。
【0053】
<1-3-4;乾燥工程(ステップS1-3)で使用する燃料について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の減容乾燥工程(ステップS1)を構成する乾燥工程(ステップS1-3)において、脱水消化汚泥P5を乾燥する際に用いる燃料として、その前の消化工程(ステップS1-1)で得られる消化ガスP4を用いてもよい。
この場合は、乾燥工程(ステップS1-3)において脱水消化汚泥P5を乾燥して乾燥消化汚泥P6を得る際に、別途化石燃料を調達して消費する必要がなくなるので、その分乾燥消化汚泥P6の製造コストを削減することができる。
さらに、乾燥消化汚泥P6の製造コストを削減できることで、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1による最終産物である発酵乾燥汚泥P8の製造コストも廉価にできる。
つまり、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1では、減容乾燥工程(ステップS1)における脱水消化汚泥P5の乾燥に消化ガスP4を用いることで、下水処理設備3(又は下水処理施設等)から排出される未消化汚泥P1を用いて、化石燃料を消費することなくバイオマス燃料を製造することができるという独自の効果を奏する。
【0054】
[2;発酵乾燥汚泥製造システムについて]
<2-1;発酵乾燥汚泥製造システムの概要について>
続いて、
図2及び
図3を参照しながら本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムの基本構成について説明する。
図2は本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムのシステム構成図である。また、
図3は本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムの発酵乾燥手段である密閉縦型発酵槽の鉛直方向断面図である。
なお、先の
図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、
図2では、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システムを構成する各設備に対応する工程(ステップ)を併記した。
【0055】
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、先の
図1に示す本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における各工程を実施する各設備を組み合せてなるものを物の発明として特定したものである。
より具体的には本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、例えば
図2に示すように、未消化汚泥P
1(下水汚泥)を嫌気条件下で消化処理して得られる消化汚泥P
3の含水率を10~30質量%の範囲内に調整してなる乾燥消化汚泥P
6と、含水率が70~85質量%の範囲内であり消化処理されていない下水汚泥である未消化下水汚泥(未消化脱水汚泥P
2b)と、を混合して含水率が50~60質量%の範囲内である調整汚泥P
7にする混合設備9と、調整汚泥P
7を好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が20~40質量%の範囲内である発酵乾燥汚泥P
8にする密閉縦型発酵槽である発酵乾燥設備10と、を備えている。
さらに、上述のような発酵乾燥設備10は、例えば
図3に示すように、調整汚泥P
7を収容して発酵乾燥処理を行う容器12と、この容器12の上方に設けられ調整汚泥P
7を投入するための投入口13と、容器12の下方に設けられ調整汚泥P
7を発酵乾燥処理してなる発酵乾燥汚泥P
8を排出する排出口14と、容器12内において発酵乾燥処理中の調整汚泥P
7を撹拌する撹拌手段と、容器12内に収容される発酵乾燥処理中の調整汚泥P
7に例えば空気等の酸素含有気体19を供給する通気手段17と、容器12の上方に設けられる排気口18(排気手段)を備えている。
【0056】
また、本実施形態に係る発酵乾燥設備10の撹拌手段は、例えば
図3に示すように、容器12内に配される回転軸15と、この回転軸15の上部から下部にかけて所望間隔で離間して多段に設けられかつ回転軸15を基軸に回転する例えば棒状の撹拌体16a、16bと、を備えていてもよい。
さらに、上述のような撹拌手段は、例えば回転軸15がその中心軸を基軸に、例えば間欠的に回動されることで、撹拌体16a、16bが容器12内に収容される調整汚泥P
7中をゆっくりと回転軸15を基軸に回転するよう構成されていてもよい。
加えて、本実施形態に係る発酵乾燥設備10では、例えば
図3に示すように、撹拌手段を構成する回転軸15と、特に容器12の下部側に配される撹拌体16bを中空管体により構成しておき、回転軸15から撹拌体16bに送給される空気等の酸素含有気体19を、撹拌体16bの表面に形成される複数の孔から調整汚泥P
7中に排出することで、調整汚泥P
7に空気等の酸素含有気体19を供給するよう構成してもよい。
また、本実施形態に係る発酵乾燥設備10は、容器12の下方側に設けられる排出口14に、発酵乾燥処理が完了した発酵乾燥汚泥P
8を容器12の外に導出するための、例えばスクリューコンベア21等の搬送手段を必要に応じて設けておいてもよい。この場合、容器12から発酵乾燥汚泥P
8を自動的かつ連続的に取り出すことができる。
そして、排出口14から発酵乾燥処理が完了した発酵乾燥汚泥P
8が順次導出されることで、容器12内に収容される発酵乾燥処理中の調整汚泥P
7は、容器12の上方から下方に向かって徐々に移動する。
【0057】
また、上述のような本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2における混合設備9による作用は、先に説明した実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の混合工程(ステップS2)による作用と同じである。
さらに、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2における発酵乾燥設備10による作用は、先の発酵乾燥汚泥の製造方法1の発酵乾燥工程(ステップS3)による作用と同じである。
【0058】
<2-2;発酵乾燥汚泥製造システムによる作用・効果について>
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、先にも述べたが、上述の実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1の各工程(ステップ)を実現する設備の組み合せを物の発明として特定したものである。
よって、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、上述の実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1による効果と同じ効果を奏する。
【0059】
さらに、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2が発酵乾燥設備10として、例えば
図3に示すような密閉縦型発酵槽を備える場合はさらに、以下に示すような効果が発揮される。
つまり、発酵乾燥設備10として
図3に示すような密閉縦型発酵槽を用いる場合は、調整汚泥P
7を発酵乾燥処理する際に生じる排気の管理及び処理が容易になる。
つまり、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2が
図3に示すような発酵乾燥設備10を備える場合は、発酵乾燥設備10の排気口18(排気手段)から排出される排気20中に含まれる悪臭の元となる臭気成分を、図示しない脱臭設備等において除去してから周辺環境に放出することができる。
この場合、発酵乾燥設備10の容器12内で生じる排気20中の臭気(悪臭)が周辺環境に悪影響を及ぼすのを好適に防ぐことができる。
この場合、人の居住地域に近接するエリアに本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2を建設して利用することができる。
【0060】
また、発酵乾燥設備10として例えば
図3に示すような密閉縦型発酵槽を用いる場合は、容器12内において、中空管体からなる回転軸15及び撹拌体16bを介して、容器12内に収容される調整汚泥P
7に対してむらなく空気等の酸素含有気体19を供給することができる。
つまり、
図3に示すような発酵乾燥設備10では、容器12内において撹拌体16bが回転軸15を基軸にその周方向に回転することで、容器12の水平方向断面の全域に撹拌体16bから調整汚泥P
7に対して空気等の酸素含有気体19を供給することができる。
そして、容器12の下方において撹拌体16bから調整汚泥P
7に供給される酸素含有気体19中の酸素は、調整汚泥P
7の内部を容器12の上方に向かって移動しながら、調整汚泥P
7内の好気性菌によって消費され、それに伴い調整汚泥P
7の発酵乾燥処理が進行する。
よって、
図3に示すような密閉縦型発酵槽である発酵乾燥設備10を用いる場合は、容器12内において調整汚泥P
7にむらなく酸素含有気体19を供給することができるので、容器12の排出口14から排出される発酵乾燥汚泥P
8の品質(例えば含水率や臭気強度)を均質化することができる。
したがって、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2によれば、品質(例えば含水率や臭気強度)が安定した発酵乾燥汚泥P
8を効率的にかつ連続的に製造することができる。
【0061】
<2-3;発酵乾燥汚泥製造システムの任意付加的事項について>
<2-3-1;発酵乾燥汚泥の返送手段について>
図2に示すように、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、発酵乾燥設備10において発酵乾燥処理が完了した発酵乾燥汚泥P
8の一部を混合設備9に送給するための例えばコンベア等の返送手段11を備えていてもよい。
なお、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2が返送手段11を備えることによる作用・効果は、循環工程(ステップS4)を備える本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1による作用・効果と同じである。
つまり、返送手段11を備えてなる本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2によれば、発酵乾燥設備10における調整汚泥P
7の発酵乾燥処理が遅延したり、意図せず早まったり、あるいは不均一に生じるのを好適に防いで、発酵乾燥汚泥P
8を効率良く製造することができる。
【0062】
<2-3-2;減容乾燥設備について>
図2に示すように、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2は、混合設備9の上流側に設けられる減容乾燥設備22を備えていてもよい。
また、この減容乾燥設備22は、例えば
図2に示すように、下水処理設備3(下水処理施設等)から生じる未消化下水汚泥(未消化濃縮汚泥P
2a)を嫌気条件下で消化処理して消化汚泥P
3及び消化ガスP
4を生成させる消化手段5(例えば図示しない消化タンク等)と、この消化手段5で生成される消化汚泥P
3をケーキ状の脱水消化汚泥P
5にする例えば遠心分離機やフィルタープレス等の脱水手段6と、先の消化手段5において生成された消化ガスP
4を燃焼させてその燃焼熱で脱水消化汚泥P
5を乾燥させて乾燥消化汚泥P
6にする乾燥手段7と、を備えていてもよい。
【0063】
なお、上述のような減容乾燥設備22は、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2の混合設備9において使用する発酵原料である乾燥消化汚泥P
6を製造するのに用いられる設備を具体的に特定したものである。
より具体的には、
図2に示す減容乾燥設備22は、先の
図1に示す減容乾燥工程(ステップS1)を構成する各工程(ステップS1-1~ステップS1-3)を実際に行うための各設備からなる組み合せを、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2の構成要素として特定したものである。
したがって、減容乾燥設備22を構成する消化手段5による作用は、先の本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における消化工程(ステップS1-1)による作用と同じである。
さらに、減容乾燥設備22を構成する脱水手段6による作用は、先の本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における脱水工程(ステップS1-2)による作用と同じである。
加えて、減容乾燥設備22を構成する乾燥手段7による作用は、先の本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1における乾燥工程(ステップS1-3)による作用と同じである。
【0064】
そして、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2が、混合設備9及び発酵乾燥設備10に加えて上述のような減容乾燥設備22を備えていることで、下水汚泥(未消化汚泥P1)から効率的にかつ処理コストを極力抑えながら乾燥消化汚泥P6を得ることができる。
そして、上記のように処理コストを極力抑えて製造された乾燥消化汚泥P6を用いることで、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2による最終産物である発酵乾燥汚泥P8の製造コストも抑えることができる。
よって、減容乾燥設備22を備える本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2によれば、下水汚泥(未消化汚泥P1)を用いて、その含水率の低下させるために化石燃料の消費を全く又は極力行うことなく、かつ下水汚泥(未消化汚泥P1)に由来しない添加材の添加を全く又は極力行うことなく、バイオマス燃料として使用する際の取り扱いが容易な発酵乾燥汚泥P8を効率良く製造することができる。
【0065】
[3;その他]
本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1や発酵乾燥汚泥製造システム2では、乾燥消化汚泥P6や未消化脱水汚泥P2bを下水処理設備3(又は下水処理施設等)において製造する場合を例に挙げて説明しているが、乾燥消化汚泥P6や未消化脱水汚泥P2bは必ずしも下水処理設備3(又は下水処理施設等)で製造する必要はない。
より具体的には、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2における減容乾燥設備22は、下水処理設備3(下水処理施設等)とは別の、混合設備9や発酵乾燥設備10に付随する設備として設けられてもよい。
あるいは、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2を構成する混合設備9及び発酵乾燥設備10に加えて、減容乾燥設備22を備えたシステム全体を下水処理設備3(又は下水処理施設等)としてもよい。
いずれの場合も、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥製造システム2による作用・効果と同様の作用・効果を奏する。
なお、本実施形態に係る発酵乾燥汚泥の製造方法1(又は発酵乾燥汚泥製造システム2)では、未消化汚泥P1から未消化脱水汚泥P2b又は乾燥消化汚泥P6を製造する工程(又はそのための設備群)は、広義での脱水工程(脱水設備)といえる。
【0066】
[4;本発明による効果を示すための試験結果について]
ここで、本発明による処理対象物の臭気の低減効果を確認するために行った試験及びその結果について説明する。
<試験に供試した試料の製造工程について>
図2に示す工程に従って、供試試料である発酵乾燥汚泥P
8を製造した。
より具体的には、先ず、含水率が約80質量%の未消化汚泥P
1(下水汚泥)を嫌気条件下で消化処理及び脱水して得られた消化汚泥P
3を乾燥装置(乾燥手段7)により、含水率を15質量%に調整して乾燥消化汚泥P
6を得た。一方、上述の未消化汚泥P
1の一部を未消化脱水汚泥P
2bとして使用し、混合設備9において両者(乾燥消化汚泥P
6及び未消化脱水汚泥P
2b)を混合して含水率が54質量%の調整汚泥P
7を得た。得られた調整汚泥P
7を
図3に示す発酵乾燥設備10を使用し、好気条件下で発酵させながら乾燥して含水率が35質量%の発酵乾燥汚泥P
8を得た。
尚、上記発酵乾燥設備10の撹拌手段は、容器12内に配される回転軸15と、この回転軸15の上部から下部にかけて所望間隔で離間して多段に設けられかつ回転軸15を基軸に回転する例えば棒状の撹拌体16a、16bと、を備えてなるものを使用した。また、上述のような撹拌手段は、回転軸15がその中心軸を基軸に、例えば間欠的に回動されることで、撹拌体16a、16bが容器12内に収容される調整汚泥P
7中をゆっくりと回転軸15を基軸に回転するよう構成されている。さらに、上記撹拌手段を構成する回転軸15と、容器12の下部側に配される撹拌体16bを中空管体により構成するとともに、回転軸15から撹拌体16bに空気を供給して、撹拌体16bの表面に形成される複数の孔から空気等の酸素含有気体19を、容器12内に収容される調整汚泥P
7中に排出しながら発酵乾燥処理を行った。
【0067】
<各汚泥の臭気強度の測定結果について>
上記のような工程により得られた、未消化汚泥P1、乾燥消化汚泥P6及び発酵乾燥汚泥P8をそれぞれ所望量だけ分取して、それぞれの臭気強度を測定した結果は、以下の通りであった。
尚、以下に示す各汚泥の臭気強度の測定には、臭気計:ポータブル型ニオイセンサXP-IIIR 新コスモス電機株式会社製、を使用した。
・未消化脱水汚泥P1 臭気強度:260~360 臭気感度:強い臭気
・乾燥消化汚泥P6 臭気強度:110~180 臭気感度:楽に感知できる
・発酵乾燥汚泥P8 臭気強度: 40~ 50 臭気感度:やっと感知できる
【0068】
また、上述の臭気試験用の試料製造工程における、調整汚泥P7の調整工程において、乾燥消化汚泥P6の10質量%に相当する量を、発酵乾燥設備10による発酵乾燥工程で得られる発酵乾燥汚泥P8に置換することで、この発酵乾燥汚泥P8を循環使用する以外は同様の条件にすることで別の発酵乾燥汚泥P8’を得た。また、この得られた発酵乾燥汚泥P8’の水分は、32質量%であり、同上の臭気計による臭気強度の測定結果は、30~40であった。
【0069】
<試験結果について>
上述のような試験により、本発明にかかる発酵乾燥汚泥の製造方法1及び発酵乾燥汚泥製造システム2によれば、未消化脱水汚泥P1及び乾燥消化汚泥P6を用いて、臭気強度が大幅に低減され、かつ収納時や保管時に粉塵が生じにくい適度な含水率を有する発酵乾燥汚泥P8を効率よく製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように本発明は、下水汚泥を主原料とし、最終産物の含水率を低下させるために化石燃料を全く又は極力消費することなく、かつ下水汚泥に由来しない添加材等を全く又は極力使用することなく製造することができ、運搬時や保管時に悪臭や粉塵が生じ難く、しかもバイオマス燃料として利用し易い発酵乾燥汚泥の製造方法及び発酵乾燥汚泥製造システムであり、下水汚泥の再資源化に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…発酵乾燥汚泥の製造方法 2…発酵乾燥汚泥製造システム 3…下水処理設備 4…濃縮設備(最終沈殿池) 5…消化手段 6…脱水手段 7…乾燥手段 8…脱水手段 9…混合設備 10…発酵乾燥設備 11…返送手段 12…容器 13…投入口 14…排出口 15…回転軸 16a,16b…撹拌体 17…通気手段 18…排気口(排気手段) 19…酸素含有気体 20…排気 21…スクリューコンベア 22…減容乾燥設備 P1…下水汚泥(未消化汚泥) P2a…未消化濃縮汚泥 P2b…未消化脱水汚泥 P3…消化汚泥 P4…消化ガス P5…脱水消化汚泥 P6…乾燥消化汚泥 P7…調整汚泥 P8…発酵乾燥汚泥