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特開2023-174033立体配線を用いた回路及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174033
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】立体配線を用いた回路及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20231130BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231130BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/88 J
G09F9/30 336
G09F9/00 338
H01L21/90 B
H01L29/78 612C
H01L29/78 626C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086641
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幹司
(72)【発明者】
【氏名】中田 充
【テーマコード(参考)】
5C094
5F033
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA25
5C094AA32
5C094BA03
5C094BA25
5C094CA19
5C094DB01
5C094DB10
5C094EB01
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB02
5C094FB12
5C094JA08
5F033HH08
5F033HH13
5F033HH20
5F033MM30
5F033PP15
5F033XX09
5F110AA03
5F110AA26
5F110CC07
5F110DD02
5F110DD12
5F110DD14
5F110DD17
5F110DD21
5F110DD24
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE06
5F110FF02
5F110FF28
5F110GG01
5F110GG25
5F110GG43
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK06
5F110HK22
5F110HK33
5F110HM05
5F110HM17
5F110NN02
5F110NN27
5F110NN36
5F110NN40
5F110NN71
5F110QQ16
5F110QQ19
5G435AA16
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435HH12
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】フィルム基板の表面側配線と立体配線との間で、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制する。
【解決手段】フィルム基板101の裏面側配線である裏面電極110と表面側配線である信号線10、走査線53、グランド線54及び電源線55とを接続する立体配線63を用いて、フィルム基板101の表面側に形成されたスイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57を駆動する画素回路1において、信号線10の途中に、立体配線63を接続するための電極であって、信号線10の幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成する。これにより、信号線10に備えたコンタクト電極11において、信号線10の幅を、立体配線63が形成された貫通孔62の幅よりも部分的に広げることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体配線を用いて、フィルム基板に形成されたTFTを駆動する回路において、
前記フィルム基板の表面側に形成された表面側配線と、
前記フィルム基板の裏面側に形成された裏面側配線と、
前記フィルム基板の裏面側から表面側へ通された貫通孔に形成され、前記表面側配線及び前記裏面側配線を接続するための前記立体配線と、
前記フィルム基板の表面側に形成され、前記裏面側配線から前記立体配線を介して前記表面側配線により前記フィルム基板の裏面側から駆動する前記TFTと、を備え、
前記表面側配線は、当該表面側配線の幅を部分的に広げたコンタクト電極を備え、当該コンタクト電極には、前記貫通孔に形成された前記立体配線が接続されていることを特徴とする回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路において、
前記コンタクト電極の幅を、前記貫通孔の幅以上の所定値とする、ことを特徴とする回路。
【請求項3】
請求項2に記載の回路において、
前記コンタクト電極の幅を、10μm以上の所定値とする、ことを特徴とする回路。
【請求項4】
請求項1に記載の回路において、
前記コンタクト電極は、モリブデンを含む金属積層膜で形成されている、ことを特徴とする回路。
【請求項5】
請求項1に記載の回路において、
前記表面側配線は、前記コンタクト電極と同じ材料にて一体的に形成されている、ことを特徴とする回路。
【請求項6】
請求項1に記載の回路において、
前記表面側配線を、信号線、走査線、電源線及びグランド線とし、
前記表面側配線のうちの前記信号線は、前記コンタクト電極を備えている、ことを特徴とする回路。
【請求項7】
フィルム基板に形成されたTFTを立体配線により駆動する回路の作製方法において、
前記フィルム基板の表面側に、下地膜を形成する第1工程と、
前記下地膜上に金属積層膜を形成し、前記TFTのゲート電極、走査線、グランド線及び電源線を形成する第2工程と、
前記下地膜、前記TFTのゲート電極、前記走査線、前記グランド線及び前記電源線の表面側に絶縁膜を形成する第3工程と、
前記絶縁膜上に半導体層を製膜する第4工程と、
前記絶縁膜及び前記半導体層の表面側に金属積層膜を形成し、前記TFTのソース電極及びドレイン電極、並びに信号線を形成する第5工程と、
前記絶縁膜、前記半導体層、前記TFTのソース電極及びドレイン電極、並びに前記信号線の表面側に保護膜を形成する第6工程と、
前記フィルム基板の裏面側に、平坦化層を形成する第7工程と、
前記フィルム基板の裏面側から表面側へ通した貫通孔を形成する第8工程と、
前記貫通孔に前記立体配線を形成し、前記立体配線を介して、前記TFTのゲート電極、ソース電極及びドレイン電極、前記走査線、前記グランド線、前記電源線、並びに前記信号線に接続するための裏面配線を形成する第9工程と、を有し、
前記第5工程は、
前記信号線を形成する際に、当該信号線の幅を部分的に広げたコンタクト電極を形成し、
前記第9工程により、前記コンタクト電極に、前記貫通孔に形成された前記立体配線が接続される、ことを特徴とする作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体配線を用いてTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を駆動する回路及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のパネルユニットを並べることで構成されるタイリングディスプレイが知られている(例えば非特許文献1,2を参照)。タイリングディスプレイは、様々なサイズ、形状及びアスペクト比を実現可能な利点を有している。
【0003】
しかしながら、一般的なパネルユニットの場合、その周縁部に信号配線等を形成する必要があり、周縁部に設ける額縁(ベゼル)を無くすことが困難である。そのため、パネルユニットを並べてタイリングし、タイリングディスプレイを構成した場合、ベゼルによりパネルユニット間の継ぎ目が目立ってしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、貫通孔を通した立体配線を用いて、信号配線等をパネルユニットの裏面側に取り出す構造が想定される。この構造により、パネルユニットの周縁部に信号配線等を形成する必要がなくなり、ベゼルレスのパネルユニットを実現することができ、継ぎ目のない、目立たないタイリングが可能となる。
【0005】
このようなベゼルレスのパネルユニットを実現するための要素技術として、極薄ポリイミド(PI)フィルム基板を用い、フィルム基板の裏面側から貫通孔を通した立体配線により駆動可能なTFT(立体配線TFT)が開発されている(例えば非特許文献3を参照)。
【0006】
図6は、従来の立体配線により駆動可能なTFTを含む回路の断面構造を示す概略図である。この回路100は、フィルム基板101の表面側に下地膜105、絶縁膜104及び保護膜102等が形成され、裏面側に平坦化層106等が形成された積層構造をなしている。
【0007】
また、この回路100には、下地膜105の上方にゲート電極107が形成され、絶縁膜104及び半導体層103の上方にソース電極108及びドレイン電極109が形成され、平坦化層106の下方に裏面電極110-1,110-2,110-3が形成されている。
【0008】
また、この回路100には、絶縁膜104、下地膜105、フィルム基板101及び平坦化層106を通す(貫通する)貫通孔111-1,111-3、及び、下地膜105、フィルム基板101及び平坦化層106を通す貫通孔111-2が設けられている。
【0009】
貫通孔111-1内には、ドレイン電極109と裏面電極110-1とを電気的に接続するための立体配線112-1が形成され、貫通孔111-2内には、ゲート電極107と裏面電極110-2とを電気的に接続するための立体配線112-2が形成され、貫通孔111-3には、ソース電極108と裏面電極110-3とを電気的に接続するための立体配線112-3が形成されている。
【0010】
裏面電極110-1,110-2,110-3を総称して裏面電極110とし、貫通孔111-1,111-2,111-3を総称して貫通孔111とし、立体配線112-1,112-2,112-3を総称して立体配線112とする。
【0011】
図7は、従来の画素回路を構成する各素子の配置を示す図であり、図6に示した回路100を、発光素子を駆動するための画素回路に適用した場合の、フィルム基板101の表面側から見た各素子の配置を示している。
【0012】
この画素回路100’は、3個の発光素子57を備えており、3個の発光素子57のそれぞれに対応して、スイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51、保持容量52及び信号線56等が形成されており、3個の発光素子57に共通の走査線53及びグランド線54等が形成されている。また、保持容量52、ドライビング用TFT51及び発光素子57等の電極には、ビア60が形成されている。
【0013】
図6及び図7を参照して、画素回路100’において、立体配線112を用いてフィルム基板101の表面側に形成されたスイッチング用TFT50及びドライビング用TFT51(図6の点線の枠に示すTFTに対応)並びに発光素子57を駆動するためには、フィルム基板101の裏面側から表面側へ貫通した貫通孔111に形成された立体配線112により、走査線53、グランド線54、電源線55及び信号線56と、これらのそれぞれに対応する裏面電極110とを電気的に接続する必要がある。
【0014】
ここで、走査線53、グランド線54、電源線55及び信号線56は、フィルム基板101の表面側に形成された表面側配線であり、裏面電極110は、フィルム基板101の裏面側に形成された裏面側配線である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D.Nakamura et al., SID 2015 DIGEST, pp.1031-1034 (2015)
【非特許文献2】G.Biwa et al., SID 2019 DIGEST, pp.121-124 (2019)
【非特許文献3】H.Tsuji et al., Proceedings of the 28th International Display Workshops (IDW '21), p.143 (2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のとおり、図7に示した画素回路100’において、スイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57をフィルム基板101の裏面側から駆動するためには、図6に示した貫通孔111に形成された立体配線112により、表面側配線と裏面側配線とを電気的に接続する必要がある。
【0017】
ここで、図7に示した画素回路100’を複数用いてディスプレイを構成する場合、ディスプレイの解像度が高くなると、1画素あたりの面積が小さくなってしまう。これに伴い、1画素あたりの面積を小さくするためには、画素回路100’中の走査線53、グランド線54、電源線55及び信号線56の幅を狭くする必要がある。
【0018】
しかしながら、これらの配線の幅を狭くすると、これらの配線と立体配線112との間で、電気的な接続不良が発生し、コンタクト抵抗が増加するという問題が生じる。特に、信号線56の幅は、走査線53、グランド線54及び電源線55の配線よりも狭くなるため、この問題が生じやすい。
【0019】
図8は、図7に示した従来の画素回路100’における信号線56の幅及び貫通孔111の幅を説明する図である。貫通孔111の幅(直径)は、ディスプレイの解像度に依らず一定(一般的には10μm以下)であり、ここでは10μmとする。
【0020】
(1)は、信号線56-1の幅が貫通孔111の直径以上の場合の例を示している。(2)は、ディスプレイの解像度が高くなるに伴い、(1)に示した信号線56-1の配線幅が狭くなった場合、すなわち、信号線56-2の幅が貫通孔111の直径よりも狭い場合の例を示している。
【0021】
(2)に示すように、信号線56-2の幅が貫通孔111の直径よりも狭い場合には、信号線56-2と、貫通孔111に形成された立体配線112との間で、電気的な接続不良が発生し、コンタクト抵抗が増加するという問題が生じる。
【0022】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、フィルム基板の表面側配線と立体配線との間で、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制可能な回路及びその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するために、請求項1の回路は、立体配線を用いて、フィルム基板に形成されたTFTを駆動する回路において、前記フィルム基板の表面側に形成された表面側配線と、前記フィルム基板の裏面側に形成された裏面側配線と、前記フィルム基板の裏面側から表面側へ通された貫通孔に形成され、前記表面側配線及び前記裏面側配線を接続するための前記立体配線と、前記フィルム基板の表面側に形成され、前記裏面側配線から前記立体配線を介して前記表面側配線により前記フィルム基板の裏面側から駆動する前記TFTと、を備え、前記表面側配線が、当該表面側配線の幅を部分的に広げたコンタクト電極を備え、当該コンタクト電極には、前記貫通孔に形成された前記立体配線が接続されていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項2の回路は、請求項1に記載の回路において、前記コンタクト電極の幅を、前記貫通孔の幅以上の所定値とする、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項3の回路は、請求項2に記載の回路において、前記コンタクト電極の幅を、10μm以上の所定値とする、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項4の回路は、請求項1に記載の回路において、前記コンタクト電極が、モリブデンを含む金属積層膜で形成されている、ことを特徴とする。
【0027】
また、請求項5の回路は、請求項1に記載の回路において、前記表面側配線が、前記コンタクト電極と同じ材料にて一体的に形成されている、ことを特徴とする。
【0028】
また、請求項6の回路は、請求項1に記載の回路において、前記表面側配線を、信号線、走査線、電源線及びグランド線とし、前記表面側配線のうちの前記信号線が、前記コンタクト電極を備えている、ことを特徴とする。
【0029】
さらに、請求項7の作製方法は、フィルム基板に形成されたTFTを立体配線により駆動する回路の作製方法において、前記フィルム基板の表面側に、下地膜を形成する第1工程と、前記下地膜上に金属積層膜を形成し、前記TFTのゲート電極、走査線、グランド線及び電源線を形成する第2工程と、前記下地膜、前記TFTのゲート電極、前記走査線、前記グランド線及び前記電源線の表面側に絶縁膜を形成する第3工程と、前記絶縁膜上に半導体層を製膜する第4工程と、前記絶縁膜及び前記半導体層の表面側に金属積層膜を形成し、前記TFTのソース電極及びドレイン電極、並びに信号線を形成する第5工程と、前記絶縁膜、前記半導体層、前記TFTのソース電極及びドレイン電極、並びに前記信号線の表面側に保護膜を形成する第6工程と、前記フィルム基板の裏面側に、平坦化層を形成する第7工程と、前記フィルム基板の裏面側から表面側へ通した貫通孔を形成する第8工程と、前記貫通孔に前記立体配線を形成し、前記立体配線を介して、前記TFTのゲート電極、ソース電極及びドレイン電極、前記走査線、前記グランド線、前記電源線、並びに前記信号線に接続するための裏面配線を形成する第9工程と、を有し、前記第5工程が、前記信号線を形成する際に、当該信号線の幅を部分的に広げたコンタクト電極を形成し、前記第9工程により、前記コンタクト電極に、前記貫通孔に形成された前記立体配線が接続される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、フィルム基板の表面側配線と立体配線との間で、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】(1)は、本発明の実施形態による画素回路におけるフィルム基板の表面側から見た場合の各素子の配置例を示す図である。(2)は、信号線に形成されたコンタクト電極の拡大図である。
図2】(1)は、本発明の実施形態による画素回路におけるフィルム基板の裏面側から見た場合の各素子の配置例を示す図である。(2)は、本発明の実施形態による画素回路における信号線に形成されたコンタクト電極及び貫通孔の拡大図である。(3)は、従来の画素回路における信号線及び貫通孔の拡大図である。
図3】本発明の実施形態による画素回路の作製工程例を説明する図である。
図4図3の続きを説明する図である。
図5】画素回路の実施例における顕微鏡写真を示す図である。
図6】従来の立体配線により駆動可能なTFTを含む回路の断面構造を示す概略図である。
図7】従来の画素回路を構成する各素子の配置を示す図である。
図8】従来の画素回路における信号線の幅及び貫通孔の幅を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、フィルム基板の表面側に形成されたTFTを、表面側配線及び裏面側配線を接続する立体配線により駆動する回路において、表面側配線に、その幅を部分的に広げたコンタクト電極を備え、コンタクト電極には立体配線が接続されている、ことを特徴とする。
【0033】
これにより、表面側配線に備えたコンタクト電極において、表面側配線の幅を、立体配線が形成された貫通孔の幅よりも部分的に広げることができる。したがって、表面側配線と立体配線との間で、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。
【0034】
〔画素回路の構成〕
まず、本発明の実施形態による画素回路の構成について説明する。図1(1)は、本発明の実施形態による画素回路におけるフィルム基板101の表面側から見た場合の各素子の配置例を示す図であり、フィルム基板101の表面側に形成される回路を示している。また、図1(2)は、信号線に形成されたコンタクト電極の拡大図である。
【0035】
尚、図1(1)には、本発明に関連する構成部のみを示しており、関連しない構成部は省略してある。後述する図2(1)についても同様である。
【0036】
この画素回路1は、図6に示した回路100と同様に、フィルム基板101の表面側に下地膜105、絶縁膜104及び保護膜102等が形成され、裏面側に平坦化層106等が形成された積層構造をなしており、スイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51、保持容量52、表面側配線(走査線53、グランド線54、電源線55及び信号線10)、発光素子57、裏面側配線(裏面電極110)、貫通孔62に形成された立体配線63等を備えて構成される。
【0037】
尚、図1(1)は、フィルム基板101の表面側から見た場合の各素子の配置例を示しているため、裏面側配線(裏面電極110)、貫通孔62に形成された立体配線63等は表れていない。
【0038】
画素回路1は、フィルム基板101の表面側に、3個の発光素子(本例ではLED)57を備えており、3個の発光素子57のそれぞれに対応して、図6に示したTFT(点線の枠)に対応するスイッチング用TFT50及びドライビング用TFT51を備えると共に、保持容量52及び信号線10が形成されている。また、画素回路1は、3個の発光素子57に共通の走査線53、グランド線54及び電源線55が形成されている。
【0039】
スイッチング用TFT50及びドライビング用TFT51の中央の四角は、半導体層103を示している。信号線10は、スイッチング用TFT50のソース電極108に接続されており、走査線53は、スイッチング用TFT50のゲート電極107を兼ねている。
【0040】
また、保持容量52、ドライビング用TFT51及び発光素子57の電極には、ビア60が形成されている。ドライビング用TFT51のビア60により、グランド線54とドライビング用TFT51の電極とが電気的に接続され、発光素子57のビア60により、電源線55と発光素子57の電極とが電気的に接続される。
【0041】
ここで、画素回路1において、フィルム基板101の表面側に備えたスイッチング用TFT50及びドライビング用TFT51並びに発光素子57を駆動するために、フィルム基板101の裏面側から表面側へ貫通した貫通孔62に形成された立体配線63(後述する図2を参照)により、表面側配線と裏面側配線とが電気的に接続される。
【0042】
また、画素回路1において、帯状の信号線10における長手方向の途中の所定箇所に、コンタクト電極11が一体的に形成されている。つまり、信号線10は、コンタクト電極11を備えている。また、図1(2)に示すように、コンタクト電極11は、信号線10の幅を部分的に広げた凸部61を有している。コンタクト電極11は、図示していない立体配線63用の電極である。
【0043】
尚、図1(1)には示していないが、画素回路1に用いるフィルム基板101は、例えばポリイミド(PI)基板であり、用途等に応じた様々な樹脂(プラスティック)製の基板を用いることができる。
【0044】
図2(1)は、図1に示した本発明の実施形態による画素回路1におけるフィルム基板101の裏面側から見た場合の各素子の配置例を示す図であり、フィルム基板101の裏面側に形成される回路を示している。また、図2(2)は、本発明の実施形態による画素回路1における信号線10に形成されたコンタクト電極11及び貫通孔62の拡大図であり、図2(3)は、図7に示した従来の画素回路100’における信号線56及び貫通孔111の拡大図である。
【0045】
尚、図2(1)に示す配置例は、フィルム基板101の裏面側から見た場合を示しているため、各素子は、図1(1)に示した配置例に対して左右逆となっている。また、フィルム基板101の裏面側に形成された裏面電極110(図6を参照)は省略してある。裏面電極110には、貫通孔62に形成された立体配線63が接続されている。
【0046】
画素回路1において、信号線10は、その幅を部分的に広げたコンタクト電極11を備えている。コンタクト電極11は、帯状の信号線10における長手方向の途中の所定箇所に、信号線10と一体的に形成されている。図2(2)に示すように、コンタクト電極11は、信号線10の幅を部分的に広げた凸部61を有しており、貫通孔62に形成された立体配線63が接続されている。
【0047】
図2(3)に示す従来技術においては、信号線56の幅は貫通孔111の幅よりも狭い。これに対し、図2(2)に示した本発明の実施形態においては、コンタクト電極11における信号線10の幅は貫通孔62の幅以上である。
【0048】
また、信号線10と同様に、帯状の走査線53、グランド線54及び電源線55には、貫通孔62に形成された立体配線63が接続されている。
【0049】
これにより、フィルム基板101の表面側に備えた信号線10、走査線53、グランド線54及び電源線55と、フィルム基板101の裏面側に備えた裏面電極110(図示していない)とが、貫通孔62に形成された立体配線63により電気的に接続される。そして、フィルム基板101の表面側に備えたスイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57を駆動することができる。
【0050】
〔画素回路1の作製方法〕
次に、本発明の実施形態による画素回路1の作製方法について説明する。図3は、図1及び図2に示した本発明の実施形態による画素回路1の作製工程例を説明する図であり、図4は、図3の続きを説明する図である。
【0051】
まず、第1のガラス基板(第1ガラス基板)に厚さ10μmのPIのフィルム基板101を形成し、フィルム基板101の上に(フィルム基板101の表面側に)、下地膜105として厚さ50nmの窒化シリコン膜をスパッタリングにより形成する(工程P301)。
【0052】
次に、下地膜105の上に(表面側に)、モリブデン合金及びアルミニウムで構成される厚さ140nmの金属積層膜をスパッタリングにより形成する。そして、スイッチング用TFT50のゲート電極107、ドライビング用TFT51のゲート電極107、走査線53、グランド線54及び電源線55をフォトリソグラフィープロセスにより形成する(工程P302)。
【0053】
次に、下地膜105、スイッチング用TFT50のゲート電極107、ドライビング用TFT51のゲート電極107、走査線53、グランド線54及び電源線55の上に(表面側)に、酸化シリコン膜で構成される厚さ200nmの絶縁膜104をスパッタ装置により形成する(工程P303)。
【0054】
次に、絶縁膜104の上に、In-Sn-Zn-O(ITZO)で構成される厚さ30nmの半導体層(活性層)103をスパッタ装置により成膜し、フォトリソグラフィープロセスによりパターン形成する(工程P304)。
【0055】
次に、ホットプレートを用いて、大気中で300℃及び1時間の熱処理を実施し(工程P305)、ビア60をドライエッチングにより形成する(工程P306)。
【0056】
次に、絶縁膜104及び半導体層103の上(表面側)に、金、モリブデン合金及びアルミニウムで構成される厚さ170nmの金属積層膜をスパッタリングにより形成する。そして、スイッチング用TFT50のソース電極108及びドレイン電極109、ドライビング用TFT51のソース電極108及びドレイン電極109、信号線10(コンタクト電極11を含む)、並びに発光素子57用のコンタクト電極をフォトリソグラフィープロセスにより形成する(工程P401)。
【0057】
ここで、工程P401により、コンタクト電極11は信号線10の一部として、信号線10と同時にかつ一体的に形成される。
【0058】
次に、絶縁膜104、半導体層103、スイッチング用TFT50のソース電極108及びドレイン電極109、ドライビング用TFT51のソース電極108及びドレイン電極109、信号線10、並びに発光素子57用のコンタクト電極の上(表面側)に、塗布成膜可能な有機膜を用いて保護膜102を形成する。そして、大気中で150℃及び1時間の熱処理を実施する(工程P402)。
【0059】
次に、保護膜102の上に、接着層(フィックスフィルム)を用いて第2のガラス基板(第2ガラス基板)を貼り付ける(工程P403)。その後、第1ガラス基板をレーザーリフトオフにより剥離する(工程P404)。
【0060】
次に、工程P404にて第1ガラス基板を剥離した後、フィルム基板101の裏面側に、塗布成膜可能な有機膜を用いて平坦化層106を形成し、大気中で150℃及び1時間の熱処理を実施する(工程P405)。
【0061】
次に、貫通孔62をドライエッチングにより形成し(工程P406)、モリブデン合金で構成される立体配線63及び裏面配線(裏面電極110)を形成する(工程P407)。
【0062】
最後に、第2ガラス基板及び接着層(フィックスフィルム)を剥離する(工程P408)。
【0063】
これにより、立体配線63を用いた画素回路1を作製することができる。尚、工程P406において、貫通孔62は、ドライエッチングの他に、ウェットエッチング、レーザー穴開け加工等により形成するようにしてもよい。
【0064】
〔実施例〕
次に、図1及び図2に示した画素回路1の実施例について説明する。図5は、図1に示した画素回路1の実施例における顕微鏡写真を示す図である。
【0065】
この顕微鏡写真は、厚さ10μmのPIのフィルム基板101上に作製された画素回路1において、図1に示したように、フィルム基板101の表面側から見た場合の配置例に対応している。尚、発光素子57を含む周辺箇所は、顕微鏡写真の一部ではなく省略してある。
【0066】
フィルム基板101の表面側に形成された信号線10は、上から下へ向けて、厚さ30nmの金、厚さ20nmのモリブデン合金、厚さ100nmのアルミニウム及び厚さ20nmのモリブデン合金の順で積層された4層構造の積層膜で構成される。
【0067】
信号線10の幅(コンタクト電極11以外の箇所の幅)は約6μmであり、一般的な貫通孔62の幅である10μmに比べて狭くなっている。
【0068】
また、信号線10における長手方向の途中の所定箇所に、約17μmの幅のコンタクト電極11が形成されている。
【0069】
これにより、コンタクト電極11の箇所において、信号線10の幅を貫通孔62の幅よりも十分に広げることができる。このため、信号線10と貫通孔62に形成された立体配線63との間で電気的な接続不良が発生するという問題、及びコンタクト抵抗が増加するという問題を解決することができる。
【0070】
したがって、立体配線63により、フィルム基板101の表面側の信号線10と、フィルム基板101の裏面側の裏面電極110とを、電気的に確実に接続することができる。
【0071】
尚、信号線10に備えたコンタクト電極11の幅は、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制するために、貫通孔62の幅以上の値であることが必要であり、貫通孔62の幅を10μmとすると、好ましくは10μm以上の値である。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態の画素回路1によれば、フィルム基板101の裏面側配線である裏面電極110と表面側配線である信号線10、走査線53、グランド線54及び電源線55とを接続する立体配線63を用いて、フィルム基板101の表面側に形成されたスイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57を駆動する画素回路1において、信号線10の途中に、立体配線63を接続するための電極であって、信号線10の幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成するようにした。
【0073】
これにより、信号線10に備えたコンタクト電極11において、信号線10の幅を、立体配線63が形成された貫通孔62の幅よりも部分的に広げることができる。
【0074】
したがって、信号線10と立体配線63との間で、電気的な接続不良の発生及びコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。
【0075】
また、フィルム基板101の表面側配線である信号線10、走査線53、グランド線54及び電源線55の全てにおいて、これらの幅を貫通孔62の幅よりも広くすることができる。このため、立体配線63により、フィルム基板101の表面側配線と裏面側配線とを電気的に確実に接続することができる。
【0076】
つまり、フィルム基板101の裏面側から、フィルム基板101の表面側に形成されたスイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57を確実に駆動することができる。
【0077】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0078】
前記実施形態では、スイッチング用TFT50、ドライビング用TFT51及び発光素子57を備えた画素回路1の例を挙げて説明したが、本発明は、画素回路1だけでなく、画素以外の回路にも適用がある。要するに、本発明は、フィルム基板101に形成されたTFTを立体配線63により駆動する回路に適用がある。
【0079】
また、前記実施形態では、信号線10における長手方向の途中の所定箇所に、信号線10の幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成するようにした。これに対し、走査線53における長手方向の途中の所定箇所に、走査線53の幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成するようにしてもよい。また、グランド線54の途中に、その幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成するようにしてもよいし、電源線55の途中に、その幅を部分的に広げるコンタクト電極11を形成するようにしてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、図4の工程P401のとおり、コンタクト電極11は、信号線10と同時にかつ一体的に形成するようにした。この場合の信号線10及びコンタクト電極11の材料は金、モリブデン合金及びアルミニウムであり、同じである。
【0081】
これに対し、コンタクト電極11は、信号線10とは別の工程にて、かつ異なる材料で形成するようにしてもよい。具体的には、信号線10を形成した後に、信号線10における長手方向の途中の所定箇所に、図1(2)に示した凸部61を有するように、信号線10とは異なる材料を用いてコンタクト電極11を形成する。これにより、信号線10における長手方向の途中の所定箇所には、その幅を部分的に広げたコンタクト電極11が形成されることとなる。
【0082】
また、前記実施形態では、図4の工程P401のとおり、コンタクト電極11は、金、モリブデン合金及びアルミニウムの金属積層膜で形成されるようにしたが、これは一例であり、モリブデンを含む他の金属の積層膜で形成されるようにしてもよい。例えば、コンタクト電極11は、モリブデンに加え、さらに金、銀、銅及びアルミニウムのうちの1以上の金属の積層膜で形成されるようにする。モリブデンを含むことにより、酸化し難く、かつ安定した特性のコンタクト電極11を形成することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,100’画素回路
10,56 信号線
11 コンタクト電極
50 スイッチング用TFT
51 ドライビング用TFT
52 保持容量
53 走査線
54 グランド線
55 電源線
57 発光素子
60 ビア
61 凸部
62,111 貫通孔
63,112 立体配線
100 回路
101 フィルム基板
102 保護膜
103 半導体層
104 絶縁膜
105 下地膜
106 平坦化層
107 ゲート電極
108 ソース電極
109 ドレイン電極
110 裏面電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8