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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174065
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】インク及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20231130BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231130BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C09D11/00
B41J2/01 501
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086707
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】百武 大希
(72)【発明者】
【氏名】梁川 宜輝
(72)【発明者】
【氏名】戸村 辰也
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】坂内 昭子
(72)【発明者】
【氏名】松下 友樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FA10
2C056FB03
2C056FC01
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB31
2H186AB43
2H186AB61
2H186BA08
2H186DA17
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB20
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB53
4J039BA13
4J039BA35
4J039BE02
4J039BE04
4J039BE08
4J039BE22
4J039EA35
4J039EA36
4J039EA38
4J039EA42
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性に優れ、かつ、鮮明な画像を得ることができるインクの提供。
【解決手段】水と、光触媒物質と、染料と、を含有し、前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm以下であり、前記光触媒物質の含有量が3質量%以上20質量%以下であるインクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、光触媒物質と、染料と、を含有し、
前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm以下であり、前記光触媒物質の含有量が3質量%以上20質量%以下であることを特徴とするインク。
【請求項2】
前記光触媒物質の個数平均粒子径が80nm以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記光触媒物質の含有量が5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記染料の分子が、非イオン性の分子骨格又は非イオン性の官能基のみから構成される分子である、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
前記染料が分散染料を含む、請求項4に記載のインク。
【請求項6】
前記染料が昇華染料を含む、請求項4に記載のインク。
【請求項7】
前記インクを用いて印刷された印刷物のISO 105 B02に基づき測定した耐光性が3級以上5級以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項8】
前記インクを用いて印刷された印刷物のISO 105 B02に基づき測定した耐光性が4級以上5級以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項9】
前記染料の含有量が5質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のインクを有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイル用インクで印刷した印刷物には、様々な画像特性が求められる。例えば、屋外のスポーツ用途などで使用されるウェアの印刷物では、日光に当たることで光退色を起こすため、耐光性の向上が望まれている。また、印刷物が衣類の場合には、使用と共に汗や汚れで黄ばみが生じるため、黄ばみの防止も求められている。黄ばみの主な原因は、衣類に人の汗や皮脂などが付着し、汗や皮脂中の油性成分が光を受けることで酸化されて固化した結果、変色することによるものである。固化した油性成分は水に溶けにくく、洗濯しても落ちないことから、衣類に黄ばみが付くとなかなか落とすことができないという問題がある。また、近年では、感染症防止の観点から印刷画像の抗菌作用も求められるようになっている。
【0003】
例えば、非多孔質基材に印字した際に良好な乾燥性を示し、かつ印字部が高い光沢を有し、優れた耐擦過性、耐エタノール性、耐ブロッキング性、及び耐光性を有するインクジェット用インクとして、水、水溶性有機溶剤、顔料、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂粒子、紫外線吸収剤、及び光安定化剤を少なくとも含有するインクジェット用インクが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、前記提案のインクジェット用インクは、非多孔質基材としてのプラスチックフィルムに好適なものである。
【0004】
また、布帛の明度Lが30.0以上の領域にプリント捺染する際の耐光堅牢度を改善し、耐光劣化を緩和した全芳香族ポリアミド繊維布帛として、プリント捺染により着色された全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であって、該プリント捺染が顔料と紫外線遮蔽剤とを併用してなされている全芳香族ポリアミド繊維布帛が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、インクジェット用インク自体、又はインクジェット用インクを定着してなるシート状印刷物(定形用紙、冊子、カレンダ、壁紙等)、布地(布帛)、樹脂部材からなるシート、金属部材からなるシート、セラミックス部材からなるシート等にカビが付着したり細菌が繁殖したりするのを防止することを目的として、光触媒と、染料と、有機溶剤と、水とを含むインクジェット用インクが提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性に優れ、かつ、鮮明な画像を得ることができるインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクは、水と、光触媒物質と、染料と、を含有し、前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm以下であり、前記光触媒物質の含有量が3質量%以上20質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性に優れ、かつ、鮮明な画像を得ることができるインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の記録装置の一例を示す斜視説明図である。
図2図2は、図1の記録装置のメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(インク)
本発明のインクは、水と、光触媒物質と、染料と、を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記インクにおける前記光触媒物質の個数平均粒子径は100nm以下であり、前記光触媒物質の含有量は3質量%以上20質量%以下である。
【0011】
前記インクにより記録媒体に印刷された印刷物は、日光に当たっても印刷画像が光退色しにくく耐光性及び耐擦過性に優れるものであり、また抗菌性及び抗ウイルス性にも優れるものである。更に、前記インクは、汗や汚れによる黄ばみも防止することができ、洗濯堅牢性に優れ、かつ、鮮明な画像を得ることができるものである。
なお、前記インクを用いて印刷される印刷物の代表的な例としてはテキスタイル印刷物が挙げられるが、本発明は必ずしもテキスタイル印刷物に限定するものではなく、光退色に関する課題や汚れによる画像の黄変が起こる印刷物に対して好適に適用することができる。
【0012】
[耐光性]
前記インクが含有する前記光触媒物質は、光照射された際に紫外光を吸収して色素分子の分解を防ぐことができるため、前記インクを用いて印刷された印刷物の耐光性を向上させることができる。
前記耐光性は、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物について、ISO規格「ISO 105 B02」に基づいて試験することで確認することができる。なお、前記試験による耐光性には1級~5級があり、3級以上が好ましく、4級以上がより好ましく、5級が特に好ましい。
【0013】
[耐擦過性]
前記耐擦過性は、印刷画像表面の摩擦に対する耐性である。前記耐擦過性は、以下のように試験して確認することができる。
前記インクを用いて記録媒体に形成されたベタ画像部を、摩擦摩耗試験機(HHS2000S、新東科学株式会社製)により、荷重300g、擦過速度:1mm/sの条件で擦過する。このような処理を行った印刷物のベタ画像をスキャナ(スキャナ:GT-X970(EPSON製)、プロフェッショナルモード、1,200dpi、グレースケールで読み取り)により取り込み、画像処理を行う(画像処理ソフトImageJを用いて8-bitに変換後、二値化処理を行う)ことで擦過により削れた面積の割合を算出する。
前記画像処理において、摩擦摩耗試験機によって削れた部分の面積を求め、「S1」とする。また、摩擦摩耗試験機によって削れなかった部分の面積を「S2」とする。下記式(1)に従い、削れ面積率ΔS(%)を算出し、耐擦過性を確認することができる。
前記削れ面積率ΔSとしては、0%以上20%以下が好ましく、0%以上5%以下がより好ましく、0%が特に好ましい。
削れ面積率ΔS(%)=S1/(S1+S2)×100 ・・・ 式(1)
【0014】
[洗濯堅牢性]
前記洗濯堅牢性は、印刷画像が洗濯によって受ける変退色や、他の洗濯物への色移りなどの汚染の程度を表す指標である。前記洗濯堅牢性は、前記インクを用いて記録媒体に印刷された印刷物について、JIS規格「JIS L 0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法」のA法に基づいて試験して確認することができる。なお、洗濯堅牢度は1級~5級があり、3級以上が好ましく、4級以上がより好ましく、5級が特に好ましい。
【0015】
[黄ばみ防止性]
前記インクを用いて印刷された印刷物が衣類等のテキスタイル印刷物である場合、人の油脂や汗、その他の汚れなどが付着すると、その油性成分や汚れ成分が光を受けることで酸化されて固化し、黄変することが知られている。また固化した油脂成分は水にも溶けにくく洗濯しても落ちないことから、黄ばみが付くとなかなか落とすことができない。
前記光触媒物質は、その黄ばみの原因となる汚れを分解するため、前記インクを用いて印刷された印刷物の白さを維持することができる。
【0016】
前記黄ばみ防止性は、反射分光濃度計を用いて、以下のようにして試験して確認することができる。
具体的には、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物について、分光測色計(装置名:X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いてLab値を測定する。この測定で得られたb値を「b1」とする。次に、前記印刷物のベタ画像に対し、油脂汚れに見立てた油脂成分液を塗布(塗布量0.2mg/cm)する。その後、下記条件で3時間の紫外光照射を行い、再び前記分光測色計を用いてLab値を測定する。この測定で得られたb値を「b2」とする。
-紫外線照射条件-
・ 使用ランプ:キセノンアークランプ(ウシオ電機株式会社製)に分光特性を制御するフィルターを取り付けたもの。
・ フィルター:ISO 105-B02に基づくフィルター(波長380nm~750nmで透過率が90%、波長310nm~320nmで透過率0%となるフィルター)。
・ ブラックパネル温度:65±3℃
・ 相対湿度:30±5%
・ 放射照度:42W/m
【0017】
更に、下記式(2)に従い、b値の変化率Δb(%)を算出する。
前記b値の変化率Δbとしては、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が特に好ましい。
b値の変化率Δb(%)={(b2-b1)/b1}×100 ・・・ 式(2)
【0018】
[抗菌性]
前記インクが含有する前記光触媒物質は、菌に対する分解作用を有する。そのため、前記インクを用いて記録媒体に印刷された印刷物は、抗菌性を有しており、前記した作用に加え、感染症対策も同時に実現可能となる。前記抗菌性は、記録媒体の種類に応じて、以下のように試験して確認することができる。
【0019】
-記録媒体が非繊維製品である場合の抗菌性試験-
前記インクに用いられる記録媒体が非繊維製品の場合には、前記抗菌性は、JIS規格「JIS Z 2801:抗菌加工製品-抗菌試験方法・抗菌効果」に基づき、以下のようにして確認することができる。
具体的には、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物における、ベタ画像を有する領域を1辺5cmの正方形に切り取り、試験片とする。また、前記印刷物のベタ画像を有しない領域又は前記印刷物に使用した記録媒体(印刷されていない記録媒体)を1辺5cmの正方形に切り取り、対照試験片とする。
前記試験試料及び対照試料それぞれをシャーレに入れ、菌数が2.5×10個/mL~10×10個/mLとなるよう調製した試験菌液(大腸菌:Escherichia coli)を、試験片及び対照試験片へそれぞれ0.4mL滴下し、被覆フィルム(ポリエチレンフィルム)を密着させる。シャーレの蓋を閉めて35℃、相対湿度90%RH以上にて24時間保存する。その後、SCDLP培地10mLを加えてフィルムと試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の菌数を寒天平板培養法により測定することで24時間後の生菌数を測定し、下記式(3)に基づき抗菌活性値R1を算出して、前記抗菌性を確認することができる。
前記抗菌活性値R1としては、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
R1={log(U/U)-log(A/U)}=log(U/A) ・・・ 式(3)
ここで、前記式(3)において「R1」は抗菌活性値を示し、「U」は対照試験片の菌接種直後の生菌数の平均値(個)を示し、「U」は対照試験片の菌接種から24時間後の生菌数の平均値(個)を示し、「A」は試験片の菌接種から24時間後の生菌数の平均値(個)を示す。
【0020】
-記録媒体が繊維製品である場合の抗菌性試験-
前記インクに用いられる記録媒体が繊維製品の場合には、前記抗菌性は、JIS規格「JIS L 1902:繊維製品の抗菌試験方法及び抗菌効果」に規定されている菌液吸収法に基づき、以下のようにして確認することができる。
具体的には、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物を試験試料とする。また、前記印刷物のベタ画像を有しない領域又は前記印刷物に使用した記録媒体(印刷されていない記録媒体)を対照試料とする。前記試験試料0.4g及び対照試料0.4gそれぞれをバイアル瓶に入れ、1×10CFU/mL~3×10CFU/mLになるよう調製した試験菌液(大腸菌:Escherichia coli)0.2mLを滴下後、バイアル瓶の蓋を閉めて37℃で18時間~24時間培養する。その後、SCDLP培地20mLを加えて試験試料から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法により測定する。下記式(4)に基づき抗菌活性値R2を算出して、前記抗菌性を確認することができる。
前記抗菌活性値R2としては、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
抗菌活性値R2=(logC-logC)-(logT-logT) ・・・ 式(4)
ここで、前記式(4)において「R2」は抗菌活性値を示し、「C」は対照試料の培養後生菌数を示し、「C」は対照試料の接種直後生菌数を示し、「T」は試験試料の培養後生菌数を示し、「T」は試験試料の接種直後生菌数を示す。
【0021】
[抗ウイルス性]
前記インクが含有する前記光触媒物質は、ウイルスに対する分解作用を有する。そのため、前記インクを用いて印刷された印刷物は、抗ウイルス性を有しており、前記した作用に加え、感染症対策も同時に実現可能となる。前記抗ウイルス性は、記録媒体の種類に応じて、以下のように試験して確認することができる。
【0022】
-記録媒体が非繊維製品である場合の抗ウイルス性試験-
前記インクに用いられる記録媒体が非繊維製品の場合には、前記抗ウイルス性は、ISO規格「ISO 21702:抗ウイルス性 繊維以外」に基づき、以下のようにして確認することができる。
具体的には、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物における、ベタ画像を有する領域を1辺5cmの正方形に切り取り、試験片とする。また、前記印刷物のベタ画像を有しない領域又は前記印刷物に使用した記録媒体(印刷されていない記録媒体)を1辺5cmの正方形に切り取り、対照試験片とする。
前記試験試料及び前記対照試料をそれぞれシャーレに入れ、1×10PFU/mL~5×10PFU/mLになるよう調製されたウイルス液を0.4mL接種し、被覆フィルム(ポリエチレンフィルム)を密着させる。シャーレの蓋を閉めて25℃、相対湿度90%RH以上にて24時間静置する。その後、SCDLP培地10mLを加えて試験試料又は対照試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価を、下記宿主細胞を用いて下記宿主細胞を用いて24時間後のウイルス感染価をプラーク法にて測定し、下記式(5)に基づき抗ウイルス活性値R3を算出して、前記抗ウイルス性を確認することができる。
前記抗ウイルス活性値R3としては、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
抗ウイルス活性値R3 =LogU-LogA ・・・ 式(5)
ここで、前記式(5)において、「U」は対照試験片の24時間静置後のウイルス感染価を示し、「V」は試験片の24時間静置後のウイルス感染価を示す。
--ウイルス及び宿主細胞--
前記ウイルス及び前記宿主細胞は、以下の組合せで使用することができる。
(1):ウイルスの種類:A型インフルエンザウイルス(H3N2又はH1N1)
宿主細胞:MDCK細胞
(2):ウイルスの種類:ネコカリシウイルス
宿主細胞:CRFK細胞
【0023】
-記録媒体が繊維製品である場合の抗ウイルス性試験-
前記インクに用いられる記録媒体が繊維製品の場合には、前記抗ウイルス性は、JIS規格「JIS L 1922:繊維製品の抗ウイルス性試験方法」に基づき、以下のようにして確認することができる。
具体的には、前記インクを用いて記録媒体に印刷されたベタ画像を有する印刷物を試験試料とする。また、前記印刷物のベタ画像を有しない領域又は前記印刷物に使用した記録媒体(印刷されていない記録媒体)を対照試験試料とする。
前記試験試料0.4g及び前記対照試料0.4gをそれぞれバイアル瓶に入れ、ウイルス濃度が1×10PFU/mL~5×10PFU/mLとなるように調製したウイルス液0.2mLを接種し、バイアル瓶の蓋を閉めて25℃で2時間静置する。その後、SCDLP培地20mLを加えて試験試料又は対照試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価を、宿主細胞を用いてプラーク法により測定する。なお、「ウイルス感染価」とは感染性ウイルス量を表す。また、測定されたウイルス感染価をもとに、下記式(6)に基づき抗ウイルス活性値R4を算出して、前記抗ウイルス性を確認することができる。
前記抗ウイルス活性値R4としては、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
なお、前記ウイルス及び前記宿主細胞は、非繊維製品の場合と同様の組合せで使用することができる。
抗ウイルス活性値R4=logV-logV ・・・ 式(6)
ここで、前記式(6)において、「V」は接種して2時間静置後の対照試料のウイルス感染価を示し、「V」は接種して2時間静置後の試験試料のウイルス感染価を示す。
【0024】
[画像の鮮明性]
前記インクは、前記染料による色相が白濁することなく、鮮明な画像を得ることができるものである。
前記画像の鮮明性は、以下のようにして試験して確認することができる。
具体的には、まず、前記水と、前記光触媒物質と、前記染料と、を含有する本発明のインクを調製する。次に、前記光触媒物質を含有せず、残部に水(イオン交換水)を使用すること以外は、前記同様の方法で白濁度評価用インクを調製する。次に、本発明のインク及び白濁度評価用インクを用いて記録媒体に印刷し、本発明のインクを用いて印刷した印刷物、及び白濁度評価用インクを用いて印刷した白濁度評価用印刷物を得る。これらを目視で比較し、インク中の光触媒物質の有無により得られた印刷物の見た目の白濁の様子に差があるかを確認する。白濁度評価用印刷物と比較して、印刷物に白濁の様子が目立たないものが好ましく、白濁度評価用印刷物と比較して、白濁の度合いにほとんど差がないものがより好ましい。
【0025】
なお、前記画像の鮮明性の試験において、記録媒体としては、コットンメディア(綿ブロード 未シル(シルケット加工無し))、ポリエステルメディア(ポリエステルタフタ)、レーヨンメディア(レーヨンタフタ)、又はウールメディア(ウールサージ)(以上、株式会社色染社製)を使用することができる。
【0026】
<光触媒物質>
前記光触媒物質とは、光を照射することにより化学反応を促進する物質をいう。具体的には、光触媒物質に、そのバンドギャップエネルギーEgに相当する波長の光より短波長の光を照射すると、価電子帯を充填している電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が生じる。伝導帯の下端が他物質の酸化還元電位より負である場合には、伝導帯の励起電子が他物質に移動して移動先の物質の還元反応を引き起こす。一方で価電子帯の上端が他物質の酸化還元電位よりも正である場合には、価電子帯の正孔が他物質から電子を奪い取って他物質を酸化させる。このような酸化及び/又は還元が進行して光触媒反応が起こる。
【0027】
前記光触媒物質が光触媒作用を有するか否かは、例えば、JIS規格「JISR1703-1:ファインセラミックス-光触媒材料のセルフクリーニング試験方法 第1部 水接触角の測定」やJIS規格「JISR1703-2:ファインセラミックス-光触媒材料のセルフクリーニング試験方法 第2部 湿式分解性能」といったセルフクリーニング法;JIS規格「JISR1701-1 窒素酸化物の除去性能試験」やJIS規格「JIS1701-2 アセトアルデヒド除去性能試験」といった空気浄化性能試験などの試験で判断することができる。
【0028】
前記光触媒物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、有機高分子、金属硫化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
<<金属酸化物>>
前記金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化クロムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの複合物であってもよい。これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウムが好ましく、酸化チタンがより好ましい。
酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウムなどは、バンドギャップが広いため紫外光吸収性に優れており、前記インクが酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウムなどを含有することで、該インクに光照射した際に紫外光を吸収し、該インク中に含まれる染料分子の分解を防ぐことができる点で好ましい。
【0030】
<<有機高分子>>
前記金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリパラフェニレンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
<<金属硫化物>>
前記金属硫化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化水銀などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性の点から、前記金属硫化物としては、硫化亜鉛が好ましい。
【0032】
前記光触媒物質の個数平均粒子径は、100nm以下であるが、80nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm超であると、紫外光の吸収効率が悪くなり、前記インク中の染料が光分解してしまい、耐光性を有する印刷物を得ることができず、また前記インクが白濁しやすくなり鮮明な画像を得ることができない。一方、前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm以下であると、効率よく紫外光を吸収し、前記インク中の染料の光分解を防止することができ、高い耐光性及び画像の鮮明性を有する印刷物を得られ、前記光触媒物質の個数平均粒子径が80nm以下であると、より効率よく紫外光を吸収し、前記インク中の染料の光分解を防止することができ、より高い耐光性及びより鮮明な画像を有する印刷物を得られ、前記光触媒物質の個数平均粒子径が50nm以下であると、更に効率よく紫外光を吸収し、前記インク中の染料の光分解を防止することができ、更に高い耐光性及び更に鮮明な画像を有する印刷物を得られる。なお、前記光触媒物質の個数平均粒子径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、10μm以上が好ましい。
前記光触媒物質の個数平均粒子径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0033】
前記光触媒物質の含有量(固形分含有量)としては、前記インクの全質量に対して、3質量%以上20質量%以下であり、5質量%以上10質量%以下が好ましい。前記光触媒物質の含有量が3質量%未満であると、耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性が悪くなり、また前記インクを用いて印刷された印刷物が衣類等のテキスタイル印刷物である場合、黄ばみが発生し、洗濯堅牢性が低くなる。また、前記光触媒物質の含有量が20質量%超であると、鮮明な画像を得ることができない。一方、前記光触媒物質の含有量が3質量%以上20質量%以下であると、耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性に優れ、かつ、鮮明な画像を得ることができ、また前記インクを用いて印刷された印刷物が衣類等のテキスタイル印刷物である場合、黄ばみ防止性が高く、洗濯堅牢性に優れるものであり、前記光触媒物質の含有量が5質量%以上10質量%以下であると、耐光性、耐擦過性、抗菌性、及び抗ウイルス性により優れ、かつ、より鮮明な画像を得ることができ、また前記インクを用いて印刷された印刷物が衣類等のテキスタイル印刷物である場合、黄ばみ防止性がより高く、洗濯堅牢性により優れるものである。
【0034】
<染料>
前記染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料、又は昇華染料が使用可能である。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの中でも、前記染料の分子構造としては、非イオン性の分子骨格又は非イオン性の官能基のみから構成される分子構造であることが好ましい。前記染料が、イオン性の分子骨格又はイオン性の官能基を有する分子構造の場合、染料分子が光触媒物質に吸着する可能性がある。前記染料の分子が前記光触媒物質に吸着すると、吸着した結合部分を通じて該光触媒物質の光触媒作用が前記染料に対しても作用し、前記染料の分子が分解してしまう可能性が生じる。一方、前記染料が、非イオン性の分子骨格又は非イオン性の官能基のみから構成される分子構造の場合、前記光触媒物質に吸着して光触媒作用の影響を受ける可能性が減り、より高い耐光性を得られる点で好ましい。
【0036】
前記酸性染料、前記直接染料、前記反応性染料、及び前記塩基性染料は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基等のイオン性の分子骨格やイオン性の官能基を有するが、前記分散染料及び前記昇華染料は、非イオン性の分子骨格や非イオン性の官能基のみから構成されるため、前記染料としては、前記分散染料又は前記昇華染料が、より耐光性に優れる点で好ましい。
【0037】
前記酸性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.アシッドイエロー 17、23、42、44、79、142、250;C.I.アシッドレッド 52、80、82、249、254、289;C.I.アシッドブルー 9、45、249;C.I.アシッドブラック 1、2、24、94、172;C.I.アシッドオレンジ94などが挙げられる。
【0038】
前記直接染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ダイレクトイエロー 1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173;C.I.ダイレクトレッド 1、4、9、80、81、225、227;C.I.ダイレクトブルー 1、2、15、71、86、87、98、165、199、202;C.I.ダイレクトブラック 19、38、51、71、154、168、171、173、193、195、199などが挙げられる。
【0039】
前記反応性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.リアクティブレッド 14、24、32、55、79、218、245、249;C.I.リアクティブオレンジ 13;C.I.リアクティブブラック 3、4、5、35、39;C.I.リアクティブイエロー95;C.I.リアクティブブルー72、49などが挙げられる。
【0040】
前記塩基性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ベーシックイエロー 1、2、13、19、21、25、32、36、40、51;C.I.ベーシックレッド 11、5、12、19、22、29、37、39、92;C.I.ベーシックブルー 1、3、9、11、16、17、24、28、41、45、54、65、66;C.I.ベーシックブラック 2、8;カチオンイエロー3G、;カチオンゴールデンイエローGL;カチオンオレンジR;カチオンブリリアントレッド4G;カチオンブルー5Gなどが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、前記酸性染料、直接染料、反応性染料、又は塩基性染料としては、前記インク中における安定性の点で、C.I.リアクティブレッド 24、218、245;C.I.リアクティブオレンジ 13;C.I.リアクティブブラック 5、39;C.I.リアクティブイエロー 95;C.I.リアクティブブルー 72、49;C.I.アシッドブラック 172;C.I.ダイレクトブラック 173;C.I.ダイレクトブルー 193、199;C.I.アシッドイエロー 79、250;C.I.アシッドオレンジ 94;C.I.アシッドレッド 52、249が好ましい。
【0042】
また、上述の通り、染料分子の前記光触媒物質への吸着能の観点から、下記のような分散染料又は昇華染料がより好ましい。
【0043】
イエローの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・イエロー 1、3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、61、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、154、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、201、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232などが挙げられる。
【0044】
オレンジの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・オレンジ 1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、60、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142などが挙げられる。
【0045】
レッドの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・レッド 1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、364などが挙げられる。
【0046】
バイオレットの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・バイオレット 1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77などが挙げられる。
【0047】
グリーンの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・グリーン 9などが挙げられる。
【0048】
ブラウンの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・ブラウン 1、2、4、9、13、19などが挙げられる。
【0049】
ブルーの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・ブルー 3、7、9、14、16、19、20、24、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、92、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、191、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360などが挙げられる。
【0050】
ブラックの昇華染料又は分散染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ディスパース・ブラック 1、3、10、24などが挙げられる。
【0051】
また、前記インクは、上記以外のその他の染料を使用してもよい。
前記その他の染料としては、例えば、C.I.フードブラック 1、2などが挙げられる。
【0052】
前記染料の含有量(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、前記インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0053】
また、前記インクを用いて印刷された印刷物が衣類等のテキスタイル印刷物である場合、汗や汚れによる印刷物の黄ばみは、印刷物の画像濃度が薄いほど目立つようになる。そのため、黄ばみ防止の観点では、前記染料の含有量(固形分含有量)は、前記インクの全質量に対して、5質量%以上20質量%以下が好ましく、より高い効果が得られる点で10質量%以上20質量%未満がより好ましい。
【0054】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記インクの全質量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましく、25質量%以上35質量%以下が更に好ましい。
【0056】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、前記染料以外の色材、樹脂、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<<有機溶剤>>
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性有機溶剤を用いることができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記水溶性有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物などが挙げられる。
【0059】
これらの中でも、前記有機溶剤は、色材として用いられる顔料及び前記染料の安定性の点から、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールが好ましい。
【0060】
また、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0061】
前記有機溶剤としては、炭素数8以上のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。
前記炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
前記グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0062】
前記炭素数8以上のポリオール化合物及び前記グリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0063】
前記有機溶剤のインク中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記インクの全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0064】
<<染料以外の色材>>
前記染料以外の色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料などが挙げられる。
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
【0065】
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色等の光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0066】
前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0067】
また、前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0068】
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー 1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213;C.I.ピグメントオレンジ 5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド 1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264;C.I.ピグメントバイオレット 1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38;C.I.ピグメントブルー 1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン 1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
【0069】
インク中の前記染料以外の色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、前記インクの全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0070】
顔料を分散して前記インクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0071】
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えば、カーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、前記インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0072】
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を使用することが可能である。
前記分散剤の具体例としては、オルフィンPD‐201(ノニオン系界面活性剤、日信化学工業株式会社)、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物(アニオン系界面活性剤)、DISPERBYK-190(ビックケミー株式会社製)などが挙げられる。前記分散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
-顔料分散体-
前記顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合して前記インクを得ることが可能である。また、前記顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合して前記インクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
【0074】
前記顔料分散体における顔料の粒径については、特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。前記顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0075】
前記顔料分散体における顔料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、前記インクの全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0076】
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0077】
<<樹脂>>
前記インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、前記染料及び前記染料以外の色材や、有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0080】
前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、前記インクの保存安定性の点から、前記インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0081】
<<界面活性剤>>
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0082】
-シリコーン系界面活性剤-
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0083】
このようなシリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0084】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、前記一般式(S-1)において、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0085】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(以上、信越化学工業株式会社製)、EMALEX SS-5602、EMALEX SS-1906EX(以上、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL FZ-2105、DOWSIL FZ-2118、DOWSIL FZ-2154、DOWSIL FZ-2161、DOWSIL FZ-2162、DOWSIL FZ-2163、DOWSIL FZ-2164(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(以上、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0086】
-フッ素系界面活性剤-
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素の数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素の数が4~16の化合物がより好ましい。
【0087】
これらの中でも、前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが、起泡性が小さいので好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
【0089】
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
【0090】
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0091】
これらのフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0092】
これらの中でも、前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいため好ましく、下記一般式(F-1)及び下記一般式(F-2)で表されるフッ素系界面活性剤が特に好ましい。
【化2】
(但し、前記一般式(F-1)において、m及びnは、それぞれ独立に、整数を表す。)
【0093】
前記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するために、mは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
(但し、前記一般式(F-2)において、Yは、H、C2m+1(但し、mは1~6の整数)、CHCH(OH)CH-C2m+1(但し、mは4~6の整数)、又はC2p+1(但し、pは1~19の整数)を表し、nは1~6の整数を表し、aは4~14の整数を表す。)
【0094】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロン(登録商標)S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(以上、AGCセイミケミカル株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(以上、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(以上、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)(登録商標)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(以上、Chemours社製);フタージェント(FT)-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(以上、株式会社ネオス製)、ポリフォックス(PF)-136A、PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(以上、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のPF-151N、及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0095】
-両性界面活性剤-
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
-ノニオン系界面活性剤-
前記ノニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
-アニオン系界面活性剤-
前記アニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記インク中における前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、前記インクの全質量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0099】
<<消泡剤>>
前記消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記消泡剤としては、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0100】
前記インク中における前記消泡剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0101】
<<防腐防黴剤>>
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0102】
前記インク中における前記防腐防黴剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0103】
<<防錆剤>>
前記防錆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0104】
前記インク中における前記防錆剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0105】
<<pH調整剤>>
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、pHを7以上に調整することが可能なものが好ましい。
前記pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸アンモニウム等のアルカリ剤などが挙げられる。
【0106】
前記インク中における前記pH調整剤の含有量としては、前記インクを所望のpHに調整することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0107】
前記インク中の前記光触媒物質、前記染料、前記水、及び前記その他の成分の各成分及びその含有量は、溶液や固体による核磁気共鳴分光法(NMR)による測定、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ分析(LC/MS)、赤外吸収分光法(IR)による測定等の各種分析方法により確認することができる。
【0108】
<インクの物性>
前記インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH、固形分の粒径等が以下の範囲であることが好ましい。
【0109】
<<インクの粘度>>
前記インクの25℃での粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
前記インクの粘度は、例えば、回転式粘度計(RE-80L、東機産業株式会社製)を使用して測定することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0110】
<<インクの表面張力>>
前記インクの表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、記録媒体上で好適に前記インクがレベリングされ、該インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
前記インクの表面張力は、例えば、静的表面張力計(例えば、協和界面科学株式会社製)で測定可能である。
【0111】
<<インクのpH>>
前記インクのpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
前記インクのpHは、例えば、pHメーター(HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)で測定可能である。
【0112】
<<固形分の粒径>>
前記インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。前記固形分は、前記染料、前記光触媒物質、前記樹脂粒子、前記顔料の粒子などが含まれる。
前記インク中の固形分の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0113】
<インクの製造方法>
前記インクの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記光触媒物質、前記染料、及び前記水、更に必要に応じて、前記その他の成分を、水中に分散又は溶解し、必要に応じて攪拌混合して製造する方法などが挙げられる。
前記攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等により行うことができる。
【0114】
<記録媒体>
前記インクを用いた記録に用いる記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、汎用印刷紙などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
【0115】
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
【0116】
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;金属製基材;セラミックス基材などが挙げられる。これらの中でも、前記プラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0117】
前記記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材;Tシャツなど衣料用等の布;テキスタイル;皮革;人工皮革;ダンボールなどを適宜使用することができる。また、前記記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
前記インクは、テキスタイルの印刷に用いた場合、洗濯堅牢性及び衣類の黄ばみ防止性に優れるという利点を有する。
【0118】
本明細書において「布」又は「テキスタイル」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。前記繊維の太さや網目の大きさに制限はない。
前記繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然繊維、再生繊維、合繊繊維、半合成繊維、生分解性繊維、又はこれらの混紡繊維などが挙げられる。
【0119】
前記天然繊維としては、例えば、綿(コットン)、麻、羊毛(ウール)、絹などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0120】
前記再生繊維としては、例えば、ビスコース、リヨセル、ポリノジック、レーヨン、キュプラなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0121】
前記合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、Nomex(登録商標)(Dupon社製)、Kevlar(登録商標)(Dupon社製)などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0122】
前記半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0123】
前記生分解性繊維としては、例えば、ポリ乳酸などからなる繊維が挙げられる。
【0124】
<<前処理液>>
前記記録媒体としては、前処理を施したものであってもよい。前記前処理を行うことにより、好適に前記インクの印刷物を得ることができる。
前記記録媒体を前処理するための前処理液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凝集剤、糊剤、ヒドロトロピー剤、有機溶剤、及び水を含有し、更に必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などを含有していてもよい。
【0125】
前記前処理液における前記有機溶剤、前記界面活性剤、前記消泡剤、前記pH調整剤、前記防腐防黴剤、及び前記防錆剤は、上記したインクに用いられる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の前処理液に用いられる材料も使用できる。
【0126】
-糊剤-
前記糊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グアーガム、ローカストビーン等の天然ガム類;澱粉類;アルギン酸ナトリウム、ふのり等の海草類;ペクチン酸等の植物皮類;メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体;焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉;シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム;アルギン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊;エマルジョンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併称してもよい。これらの中でも、アルギン酸ナトリウムが、滲み防止性が高い点で好ましい。
【0127】
前記前処理液中の前記糊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0128】
-ヒドロトロピー剤-
前記ヒドロトロピー剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併称してもよい。これらの中でも、尿素が、水分吸収性が高く、反応染料が反応する際のpH変動を抑制できる点で好ましい。
【0129】
前記前処理液中の前記ヒドロトロピー剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0130】
-凝集剤-
前記凝集剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
本発明のインクの用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0132】
前記立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。前記立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上に前記インクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気又は電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0133】
また、本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
【0134】
なお、本発明の用語における、「画像形成」、「記録」、「印字」、「印刷」などは、いずれも同義語とする。
また、本発明の用語における、「記録媒体」、「メディア」、「被印刷物」などは、いずれも同義語とする。
【0135】
(インクセット)
本発明のインクセットは、本発明のインクと、前処理液と、後処理液と、を有し、更に必要に応じて、その他の構成を有する。
本発明のインク及び前処理液は、前記(インク)の項目に記載の通りであるため、詳細な説明は省略する。
【0136】
<後処理液>
前記後処理液としては、前記インクにより印刷された印刷物に透明な層を形成することが可能であれば、特に制限はなく、例えば、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などの中から必要に応じて適宜選択し、混合して得たものなどが挙げられる。
【0137】
前記後処理液における前記有機溶剤、前記水、前記樹脂、前記界面活性剤、前記消泡剤、前記pH調整剤、前記防腐防黴剤、及び前記防錆剤は、前述のインクに用いられる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の後処理液に用いられる材料も使用できる。
【0138】
前記後処理液は、前記印刷物に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、前記インクによるインク像が形成された領域のみに塗布してもよい。
【0139】
本明細書において、「インクセット」とは、前記インク、前記前処理液、及び前記後処理液がそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、前記インクセットは、前記インクを収容しているインク収容手段、前記前処理液を収容している前処理液収容手段、及び前記後処理液を収容している後処理液収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前記インクセットは、前記インク収容手段、前記前処理液収容手段、及び前記後処理液収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、前記インク、前記前処理液、及び前記後処理液が併用されることを前提としている場合、あるいは、前記インク、前記前処理液、及び前記後処理液が併用されることを実質的に誘導している場合などは、本発明のインクセットに含まれる。
【0140】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクを収容してなるものであり、前記インクと、容器と、を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記インクカートリッジは、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
【0141】
前記インクカートリッジは、各色の前記インクを一体的に収容していてもよく、各色の前記インクをそれぞれ独立に収容していてもよい。
【0142】
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好ましい。
【0143】
前記インクカートリッジの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いて製造することができる。
【0144】
前記インクカートリッジは、例えば、前記インク袋等の容器に収容された前記インクを、更にカートリッジケース(例えば、プラスチック製のケース)内に収容し、画像形成装置に着脱可能に装着して用いられるようになっていることが好ましい。これにより、インクの補充や交換を簡素化でき作業性を向上させることができる。
【0145】
(記録装置及び記録方法)
本発明の記録装置は、本発明のインクを有する限り、特に制限はないが、インク収容部と、インク飛翔手段と、を有することが好ましく、更に必要に応じて、加熱手段、前処理手段、後処理手段、記録媒体の給送、搬送、又は排紙に係わる手段、制御手段等のその他の手段を有する。
前記記録装置は、記録媒体に対して前記インクや各種処理液等を吐出することが可能な装置である。前記記録媒体とは、前記インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。具体的には、前記記録媒体は、前記(インク)の項目に記載した通りであるため、詳細な説明は省略する。
【0146】
本発明の記録方法は、本発明のインクを用いる限り、特に制限はないが、インク飛翔工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、加熱工程、前処理工程、後処理工程、記録媒体の給送、搬送、又は排紙する工程、制御工程等のその他の工程を含む。
【0147】
前記記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、前記記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とするような広幅の記録装置、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0148】
前記記録装置及び前記記録方法は、前記インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元の立体像(立体造形物)を造形するものも含まれる。
【0149】
本発明の記録方法は、本発明の記録装置により好適に行われる。以下、本発明の記録装置の説明と併せて、本発明の記録方法について説明する。
【0150】
<インク収容部>
前記インク収容部は、本発明のインクを収容してなる。
前記インク収容部としては、前記インクを収容できる部材であれば、特に制限はなく、例えば、インク収容容器、インクタンクなどが挙げられる。
【0151】
前記インク収容容器としては、前記インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
【0152】
前記インクタンクとしては、例えば、メインタンク、サブタンクなどが挙げられる。
【0153】
<インク飛翔手段及びインク飛翔手段工程>
前記インク飛翔手段は、前記インクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて画像を形成する手段である。
前記インク飛翔工程は、前記インクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて画像を形成する工程である。
前記インク飛翔工程は、前記インク飛翔手段により好適に行われる。
【0154】
前記インク飛翔手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出ヘッドなどが挙げられる。
前記吐出ヘッドは、ノズル面に形成されたノズルから前記インクを吐出する手段であり、ノズルプレートを有し、更に必要に応じて、加圧室、刺激発生部材等のその他の部材を有する。
【0155】
前記吐出ヘッドから前記インクを吐出させる方法としては、特に制限はないが、前記刺激発生部材から前記インクに印加する刺激を発生させて、該インクを吐出させる方法などが挙げられる。
【0156】
<<ノズルプレート>>
前記ノズルプレートは、ノズル基板と、前記ノズル基板上に撥インク膜とを有する。
【0157】
-ノズル基板-
前記ノズル基板は、ノズル孔を有しておりその数、形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル基板は、前記ノズル孔から前記インクが吐出されるインク吐出側の面と、前記インク吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。
前記撥インク膜は、前記ノズル基板の前記インク吐出側の面であり、前記記録媒体に対向する面に形成されている。
【0158】
前記ノズル基板の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形、正方形、菱形、円形、楕円形などが挙げられる。
また、前記ノズル基板の断面形状としては、例えば、平板状、プレート状などが挙げられる。
前記ノズル基板の大きさとしては、特に制限はなく、前記ノズルプレートの大きさに応じて適宜選択することができる。
【0159】
前記ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb、NiCr、Si、SiO、Sn、Ta、Ti、W、ZAO(ZnO+Al)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ノズル基板の材質は、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0160】
前記ステンレス鋼としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0161】
前記ノズル基板の少なくとも前記インク吐出側の面は、前記撥インク膜と前記ノズル基板との密着性を向上させる点から、酸素プラズマ処理を行って水酸基を導入してもよい。
【0162】
前記ノズル孔の数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数の前記ノズル孔が、前記ノズル基板の長さ方向に沿って等間隔に並んで配列されている態様などが挙げられる。
前記ノズル孔の配列は、吐出するインクの種類に応じて適宜選定することができるが、1列~複数列が好ましく、1列~4列がより好ましい。
前記1列当たりの前記ノズル孔の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10個以上10,000個以下が好ましく、50個以上500個以下がより好ましい。
隣接する前記ノズル孔の中心間の最短距離である間隔(ピッチ)Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、21μm以上169μm以下が好ましい。
前記ノズル孔の開口形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。これらの中でも、前記ノズル孔の開口形状は、前記インクの液滴を吐出する点から、円形が好ましい。
【0163】
-撥インク膜-
前記撥インク膜としては、撥インク性の点から、シリコーン樹脂、又はフッ素樹脂を含有することが好ましい。
前記撥インク膜は、撥インク材料含有膜、ポリマー含有膜、シリコーン樹脂含有膜、フッ素樹脂含有膜などと称することもある。
【0164】
前記シリコーン樹脂は、SiとOからできたシロキサン結合を基本骨格とした樹脂であり、オイル、レジン、エラストマー等の種々の形態で市販されており、撥インク性以外にも耐熱性、離型性、消泡性、粘着性等種々の特性を備えている。前記シリコーン樹脂は常温硬化、加熱硬化、紫外線硬化型等があり、作製方法、使用用途に応じて選択できる。
【0165】
前記シリコーン樹脂を含有する撥インク膜をノズル面(前記インク吐出側)上に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状のシリコーン樹脂材料を真空蒸着する方法、シリコーンオイルをプラズマ重合することにより形成する方法、スピンコート、ディッピング、スプレーコート等の塗布により形成する方法、電着法などが挙げられる。前記撥インク層を形成する際には、電着法以外ではノズル孔及びノズルプレートの前記インク吐出側の面とは反対側の面をフォトレジスト、水溶性樹脂等でマスキングし、撥インク層形成後、レジストを剥離除去すればノズルプレートの吐出側の面のみに、シリコーン樹脂を含有する撥インク層を形成することができる。この場合、アルカリ性の強い剥離液を使用すると撥インク層へダメージを与えるので、注意が必要である。
【0166】
前記シリコーン樹脂を含む撥インク膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.0μm以下がより好ましい。
【0167】
前記フッ素樹脂としては、特に制限はないが、含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体が好ましい。
前記撥インク膜が、前記含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことにより、表面自由エネルギーが非常に小さくなり、表面張力の低いインクであっても濡れ難い状態を維持できるので好ましい。
【0168】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体におけるフッ素の含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、撥インク(接触角)の点から、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0169】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記含フッ素アクリレートエステル重合体の市販品としては、例えば、krytox(登録商標)FSL、krytox(登録商標)FSH(以上、デュポン社製)、FomblinZ、FLUOROLINKS10(以上、ソルベイソレクシス社製)、オプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)、モレスコホスファロールA20H、モレスコホスファロールADOH、モレスコホスファロールDDOH(以上、株式会社MORESCO製)、フロロサーフFG5010、フロロサーフFG5020、フロロサーフFG5060、フロロサーフFG5070(以上、株式会社フロロテクノロジー製)、サイトップCTX-105、サイトップCTX-805(以上、AGC株式会社製)、テフロン(登録商標)AF1600、テフロン(登録商標)AF2400(デュポン社製)などが挙げられる。
【0170】
前記撥インク膜は、前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物膜で構成されている。前記ノズルプレートと前記撥インク膜の間には、含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物との結合点となる水酸基を多く存在させて密着性を向上させるために、無機酸化物層を設けることもできる。
前記無機酸化物層の材料としては、例えば、SiO、TiOなどが挙げられる。
前記無機酸化物層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm以上0.2μm以下が好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。
【0171】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物による撥インク膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素系溶媒を用いたスピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布、印刷、真空蒸着等の方法が挙げられる。
【0172】
前記フッ素系溶媒としては、例えば、ノベック(スリーエムジャパン株式会社製)、バートレル(デュポン社製)、ガルデン(ソルベイソレクシス社製)、アフルード(登録商標)(AGC旭硝子株式会社製のフッ素系溶剤)、フロリナートFC-75(スリーエムジャパン株式会社製のパーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)を含んだ液体)などが挙げられる。
【0173】
<<加圧室>>
前記加圧室は、前記ノズルプレートに設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置される。前記加圧室は、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
【0174】
<<刺激発生部材>>
前記刺激発生部材としては、例えば、加熱部材、加圧部材、圧電素子、振動発生部材、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生部材の具体的としては、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて前記インクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0175】
前記刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記刺激は、熱、圧力が好適に挙げられる。
【0176】
前記刺激が「熱」の場合、前記吐出ヘッド内の前記インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。
前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記吐出ヘッドにおけるノズルプレートのノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
【0177】
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。
圧電素子が撓むことにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記吐出ヘッドにおけるノズルプレートのノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、前記刺激が「圧力」の場合には、ピエゾ素子に電圧を印加して前記インクを飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0178】
前記吐出ヘッドの具体例としては、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2-51734号公報参照)、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61-59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6-71882号公報参照)などが挙げられる。
【0179】
前記飛翔させる前記インクの液滴の大きさ、吐出噴射の速さ、駆動周波数、解像度などとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記インクの液滴の大きさとしては、3pl以上40pl以下とするのが好ましい。
前記インクの吐出噴射の速さとしては、5m/s以上20m/s以下とするのが好ましい。
前記駆動周波数としては、1kHz以上とするのが好ましい。
前記解像度としては、300dpi以上とするのが好ましい。
【0180】
<加熱手段及び加熱工程>
前記加熱手段は、前記画像が記録された記録媒体を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記画像が記録された記録媒体を加熱する工程である。
前記加熱工程は、前記加熱手段により好適に行われる。前記加熱手段及び前記加熱工程によって、前記記録媒体に印刷された前記インクが乾燥される。また、前記記録媒体の印字面や裏面を乾燥することができる。
【0181】
前記加熱手段としては、特に制限はなく、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターなどが挙げられる。
【0182】
前記加熱工程は、印刷前、印刷中、印刷後などに行うことができる。
【0183】
前記加熱の温度及び時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱の温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、加熱の時間は300秒間以上3,600秒間以下が好ましい。前記加熱の温度及び時間が前記好ましい範囲であると、乾燥性や造膜性に優れ、また前記記録媒体がダメージを防止でき、前記吐出ヘッドまで暖まってしまうことによる吐出不良を防止することができる。
【0184】
<前処理手段及び前処理工程>
前記前処理手段は、前記記録媒体に前処理液を吐出する手段である。
前記前処理工程は、前記記録媒体に前処理液を吐出する工程である。
前記前処理工程は、前記前処理手段により好適に行うことができる。
【0185】
前記前処理手段は、前記前処理液を収容する前処理液収容部と、前処理液体吐出ヘッドとを有することが好ましい。
【0186】
前記前処理液を吐出する方法としては、インクジェット記録方式が好ましいが、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法であってもよい。
【0187】
前記前処理液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(インク)の項目に記載したものを用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0188】
前記前処理液は、前記記録媒体において前記インクを用いて記録する領域の全域に塗布してもよいし、前記インクによるインク像を形成する領域のみに塗布してもよい。
【0189】
<後処理手段及び後処理工程>
前記後処理手段は、前記記録媒体に後処理液を吐出する手段である。
前記後処理工程は、前記記録媒体に後処理液を吐出する工程である。
前記後処理工程は、前記後処理手段により好適に行うことができる。
前記後処理手段は、前記後処理液を収容する後処理液収容部と、後処理液体吐出ヘッドとを有することが好ましい。
前記記録装置が前記後処理手段を有すること、又は前記記録方法が前記後処理工程を含むことにより、前記インク中の前記色材を好適に定着させることができる。
【0190】
前記後処理液を吐出する方法としては、インクジェット記録方式が好ましいが、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法であってもよい。
【0191】
前記後処理液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(インクセット)の項目に記載したものを用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0192】
前記後処理液は、前記記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、前記インクによるインク像が形成された領域のみに塗布してもよい。
【0193】
<制御手段及び制御工程>
前記制御手段は、前記記録装置を実行するために、各手段の動作を制御する手段である。
前記制御工程は、前記記録方法を実行するために、各工程の動作を制御する手段である。
前記制御工程は、前記制御手段により好適に行われる。
【0194】
前記制御手段としては、前記各手段の動作を制御することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0195】
以下に、図面を用いて本発明の記録装置及び記録方法について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0196】
図1は、本発明の記録装置の一例を示す斜視説明図である。図2は、メインタンクの一例を示す斜視説明図である。
記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のインク収容容器(メインタンク、インクカートリッジとも呼ぶ)410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。インク収容部411は、インクの液体Lを収容する。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0197】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0198】
(記録物)
本発明の記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
前記記録物は、本発明の記録装置及び本発明の記録方法により、前記記録媒体上に前記インクを用いて記録することで製造することができる。
前記記録媒体は、前記(インク)の項目に記載した通りであるため、詳細な説明は省略する。
【0199】
(転写用記録物)
本発明の転写用記録物は、仮支持体上に本発明のインクを用いて形成された画像を有するものである。
【0200】
<仮支持体>
前記仮支持体としては、その表面に前記記録物を製造可能であり、本発明の効果に影響しないものである限り、特に制限はなく、公知の剥離シートを用いることができる。
【0201】
前記剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0202】
前記仮支持体上に前記インクを用いて画像を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、本発明の記録装置及び記録方法において、前記記録媒体を前記支持体に代えること以外は同様にして形成することができる。
【0203】
前記転写用記録物は、前記インクを用いて形成された画像の片面に前記仮支持体を有するものであってもよく、両面に前記仮支持体を有するものであってもよい。
【0204】
前記転写用記録物は、前記インクを用いて形成された画像の両面に前記仮支持体を有するものである場合は、片面の仮支持体を剥離し、所望の記録媒体と前記画像とを重ね合わせ、該画像を前記記録媒体に転写させた後、もう一方の仮支持体を剥離して、前記画像を前記記録媒体に転写させることができる。
前記インクを用いて形成された画像の片面に前記仮支持体を有するものである場合は、所望の記録媒体と前記画像とを重ね合わせ、該画像を前記記録媒体に転写させた後、前記仮支持体を剥離して、前記画像を前記記録媒体に転写させることができる。
【0205】
このように、前記転写用記録物は、前記画像の保存及び搬送が容易であり、取扱性に優れ、また、記録媒体に直接前記画像を形成できない場合であっても、前記転写用記録物を記録媒体に貼り付け、前記仮支持体を剥離することで、前記画像を前記記録媒体に容易に形成できる点で有利である。
【実施例0206】
以下に製造例、比較製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の製造例、比較製造例、実施例、及び比較例において、別段の断りない限り「部」は「質量部」を示す。また、特に記載が無い場合、インクの調製、評価は、25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0207】
(製造例1~16及び比較製造例1~6)
下記表1~表3に示す組成及び含有量(質量部)のインク材料を撹拌し均一に混合し、得られた混合液を平均孔径0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子及びゴミを除去して、製造例1~16のインク1~16、及び比較製造例1~6のインク17~22を製造した。
なお、表1~表3において、染料(直接染料、反応染料、酸性染料、及び分散染料又は昇華染料)及び光触媒物質(酸化チタン)の含有量は、固形分含有量を示す。
【0208】
製造例1~16及び比較製造例1~6で使用したインク材料は、以下の通りである。
<染料>
・ 直接染料:C.I.ダイレクトブラック 173(Tianjin Ruiji Chemical Trade Co., Ltd.社製)
・ 反応染料:C.I.リアクティブブラック 5(Xiamen AmoyChem Co., Ltd.社製)
・ 酸性染料:C.I.アシッドブラック 172(Yamada Chemical Co., Ltd.社製)
・ 分散染料又は昇華染料:C.I.ディスパース・ブラック 1(Dideu Industries Group Limited社製)
<光触媒物質>
・ 酸化チタン(粒子径30nm):超微粒子酸化チタンTTO-51(A)(石原産業株式会社製)
・ 酸化チタン(粒子径50nm):超微粒子酸化チタンTTO-55(A)(石原産業株式会社製)
・ 酸化チタン(粒子径100nm):高純度酸化チタンPT-501A(石原産業株式会社製)
・ 酸化チタン(粒子径 400nm):塗料用酸化チタン R-38L(堺化学工業株式会社製)
<分散剤>
・ 分散剤:DISPERBYK-190(ビックケミー株式会社製)
<界面活性剤>
・ フッ素系界面活性剤:FS-300(Chemours社製)
【0209】
(実施例1)
製造例1に記載の方法で調合したインク1と、記録媒体としてコットンメディア(綿ブロード 未シル(シルケット加工無し)、株式会社色染社製)とを用いて、以下のようにして印刷物を得た。
【0210】
<記録媒体への前処理方法>
イオン交換水90質量%、アルギン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)2質量%、尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%、及び炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)5質量%を撹拌して混合し、前処理液を得た。この前処理液をコットンメディア(綿ブロード 未シル(シルケット加工無し)、株式会社色染社製)に均一に塗布した後、乾燥させることで、前処理済み記録媒体を得た。
【0211】
<記録媒体への印刷方法>
製造例1に記載の方法で調合したインク1をインクジェットプリンター(RICOH Ri 100、株式会社リコー製)に充填し、該インクジェットプリンターに前記前処理済み記録媒体をセットし、付着量1.0mg/cmでインク1を均一に吐出してベタ画像を印刷した。
【0212】
<後処理方法>
得られたベタ画像に対して100℃にて15分間のスチーム処理を行った後、50℃に加熱した水で40分間洗浄した。以上より、実施例1の印刷物1を作製した。
【0213】
(実施例2)
実施例1において、製造例1に記載の方法で調合したインク1を、製造例2に記載の方法で調合したインク2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の印刷物2を作製した。
【0214】
(実施例3)
実施例1において、製造例1に記載の方法で調合したインク1を、製造例3に記載の方法で調合したインク3に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の印刷物3を作製した。
【0215】
(実施例4)
実施例1において、製造例1に記載の方法で調合したインク1を、製造例4に記載の方法で調合したインク4に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の印刷物4を作製した。
【0216】
(実施例5)
製造例5に記載の方法で調合したインク5と、記録媒体としてポリエステルメディア(ポリエステルタフタ、株式会社色染社製)とを用いて、以下のようにして印刷物を得た。
【0217】
<記録媒体への前処理方法>
イオン交換水90質量%、グアーガム(富士フイルム和光純薬株式会社製)4質量%、尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%、及び硫酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%を撹拌して混合し、前処理液を得た。この前処理液をポリエステルメディア(ポリエステルタフタ、株式会社色染社製)に均一に塗布した後、乾燥させることで、前処理済み記録媒体を得た。
【0218】
<記録媒体への印刷方法>
製造例5に記載の方法で調合したインク5をインクジェットプリンター(RICOH Ri 100、株式会社リコー製)に充填し、該インクジェットプリンターに前記前処理済み記録媒体をセットし、付着量1.0mg/cmでインク5を均一に吐出してベタ画像を印刷した。
【0219】
<後処理方法>
得られたベタ画像に対して180℃にて30分間の加熱処理を行った後、高純水で40分間洗浄した。以上より、実施例5の印刷物5を作製した。
【0220】
(実施例6)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例6に記載の方法で調合したインク6に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例6の印刷物6を作製した。
【0221】
(実施例7)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例7に記載の方法で調合したインク7に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例7の印刷物7を作製した。
【0222】
(実施例8)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例8に記載の方法で調合したインク8に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例8の印刷物8を作製した。
【0223】
(実施例9)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例9に記載の方法で調合したインク9に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例9の印刷物9を作製した。
【0224】
(実施例10)
製造例10に記載の方法で調合したインク10と、記録媒体としてレーヨンメディア(レーヨンタフタ、株式会社色染社製)とを用いて、以下のようにして印刷物を得た。
【0225】
<記録媒体への前処理方法>
イオン交換水90質量%、アルギン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)2質量%、及び尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%を撹拌して混合し、前処理液を得た。この前処理液をレーヨンメディア(レーヨンタフタ、株式会社色染社製)に均一に塗布した後、乾燥させることで、前処理済み記録媒体を得た。
【0226】
<記録媒体への印刷方法>
製造例10に記載の方法で調合したインク10をインクジェットプリンター(RICOH Ri 100、株式会社リコー製)に充填し、該インクジェットプリンターに前記前処理済み記録媒体をセットし、付着量1.0mg/cmでインク10を均一に吐出してベタ画像を印刷した。
【0227】
<後処理方法>
得られたベタ画像に対して100℃にて30分間のスチーム処理を行った後、50℃に加熱した水で40分間洗浄した。以上より、実施例10の印刷物10を作製した。
【0228】
(実施例11)
製造例11に記載の方法で調合したインク11と、記録媒体としてウールメディア(ウールサージ、株式会社色染社製)とを用いて、以下のようにして印刷物を得た。
【0229】
<記録媒体への前処理方法>
イオン交換水90質量%、グアーガム(富士フイルム和光純薬株式会社製)4質量%、尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%、及び硫酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量%を撹拌して混合し、前処理液を得た。この前処理液をウールメディア(ウールサージ、株式会社色染社製)に均一に塗布した後、乾燥させることで、記録媒体となる前処理済み記録媒体を得た。
【0230】
<記録媒体への印刷方法>
製造例11に記載の方法で調合したインク11をインクジェットプリンター(RICOH Ri 100、株式会社リコー製)に充填し、該インクジェットプリンターに前記前処理済み記録媒体をセットし、付着量1.0mg/cmでインク11を均一に吐出してベタ画像を印刷した。
【0231】
<後処理方法>
得られたベタ画像に対して100℃にて30分間のスチーム処理を行った後、50℃に加熱したアルカリ溶液(10-4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、pH10に調整したもの)で40分間洗浄し、その後更に水で20分間洗浄した。以上より、実施例11の印刷物11を作製した。
【0232】
(実施例12)
製造例12に記載の方法で調合したインク12と、記録媒体としてポリエステルメディア(ポリエステルタフタ、株式会社色染社製)とを用いて、以下のようにして印刷物を得た。
【0233】
<記録媒体への印刷方法>
製造例12に記載の方法で調合したインク12をインクジェットプリンター(RICOH Ri 100、株式会社リコー製)に充填し、該インクジェットプリンターに記録媒体としてポリエステルメディア(ポリエステルタフタ、株式会社色染社製)をセットし、付着量1.0mg/cmでインク12を均一に吐出してベタ画像を印刷した。得られたベタ画像に対して、水で40分間洗浄を行った。以上より、実施例12の印刷物12を作製した。
なお、実施例12は昇華転写方式のため、記録媒体に前処理は行わなかった。
【0234】
(実施例13)
実施例12において、製造例12に記載の方法で調合したインク12を、製造例13に記載の方法で調合したインク13に変更したこと以外は実施例12と同様の方法で、実施例13の印刷物13を作製した。
【0235】
(実施例14)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例14に記載の方法で調合したインク14に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例14の印刷物14を作製した。
【0236】
(実施例15)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、製造例15に記載の方法で調合したインク15に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、実施例15の印刷物15を作製した。
【0237】
(実施例16)
実施例12において、製造例12に記載の方法で調合したインク12を、製造例16に記載の方法で調合したインク16に変更したこと以外は実施例12と同様の方法で、実施例16の印刷物16を作製した。
【0238】
(比較例1)
実施例1において、製造例1に記載の方法で調合したインク1を、比較製造例1に記載の方法で調合したインク17に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の印刷物17を作製した。
【0239】
(比較例2)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、比較製造例2に記載の方法で調合したインク18に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、比較例2の印刷物18を作製した。
【0240】
(比較例3)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、比較製造例3に記載の方法で調合したインク19に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、比較例3の印刷物19を作製した。
【0241】
(比較例4)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、比較製造例4に記載の方法で調合したインク20に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、比較例4の印刷物20を作製した。
【0242】
(比較例5)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、比較製造例5に記載の方法で調合したインク21に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、比較例5の印刷物21を作製した。
【0243】
(比較例6)
実施例5において、製造例5に記載の方法で調合したインク5を、比較製造例6に記載の方法で調合したインク22に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で、比較例6の印刷物22を作製した。
【0244】
[評価方法]
実施例1~16及び比較例1~6の印刷物1~22について、以下のようにして「黄ばみ防止性」、「洗濯堅牢性」、「耐擦過性」、「耐光性」、「抗菌性」、「抗ウイルス性」及び「見た目の白濁度」を評価した。結果を下記表1~表3に示す。
【0245】
<<黄ばみ防止性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22のベタ画像について、分光測色計(装置名:X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いてLab値を測定した。この測定で得られたb値を「b1」とした。
更に、印刷物1~22のベタ画像に対し、油脂汚れに見立てた油脂成分液(スクアレン、富士フイルム和光純薬株式会社製)を塗布(塗布量0.2mg/cm)した。その後、下記条件で3時間の紫外光照射を行い、再び前記分光測色計を用いてLab値を測定した。この測定で得られたb値を「b2」とした。
-紫外線照射条件-
・ 使用ランプ:キセノンアークランプ(ウシオ電機株式会社製)に分光特性を制御するフィルターを取り付けたもの。
・ フィルター:ISO 105-B02に基づくフィルター(波長380nm~750nmで透過率が90%、波長310nm~320nmで透過率0%となるフィルター)。
・ ブラックパネル温度:65±3℃
・ 相対湿度:30±5%
・ 放射照度:42W/m
・ 波長範囲:300nm~400nm
【0246】
更に、下記式(2)に従い、b値の変化率Δb(%)を算出し、下記評価基準に基づき黄ばみ防止性を評価した。下記表1~表3において、下記評価基準に基づくランクの結果と併せて、変化率Δb(%)の結果を示す。なお、下記評価基準において、ランクS、ランクA、及びランクBが、実用上問題ない範囲である。
b値の変化率Δb(%)={(b2-b1)/b1}×100 ・・・ 式(2)
-「黄ばみ防止性」の評価基準-
ランクS:Δbが、3%以下
ランクA:Δbが、3%超5%以下
ランクB:Δbが、5%超10%以下
ランクC:Δbが、10%超15%以下
ランクD:Δbが、15%超20%以下
ランクF:Δbが、20%超
【0247】
<<洗濯堅牢性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22のベタ画像について、JIS規格「JIS L 0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法」のA法に基づいて試験を行い、判定された洗濯堅牢度の級から下記評価基準に基づき洗濯堅牢性を評価した。なお、洗濯堅牢度は1級~5級があり、5級が最も優れた結果である。また、下記評価基準において、ランクS、ランクA、及びランクBが、実用上問題ない範囲である。
-「洗濯堅牢性」の評価基準-
ランクS:5級
ランクA:4級以上5級未満
ランクB:3級以上4級未満
ランクC:2級以上3級未満
ランクD:2級未満
【0248】
<<耐擦過性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22のベタ画像について、以下のようにして耐擦過性の評価を行った。
印刷物1~22のベタ画像を、摩擦摩耗試験機(HHS2000S、新東科学株式会社製)により、荷重300g、擦過速度:1mm/sの条件で擦過した。このような処理を行った印刷物のベタ画像をスキャナ(スキャナ:GT-X970(EPSON製)、プロフェッショナルモード、1,200dpi、グレースケールで読み取り)により取り込み、画像処理を行う(画像処理ソフトImageJを用いて8-bitに変換後、二値化処理を行う)ことで擦過により削れた面積の割合を算出した。
前記画像処理において、摩擦摩耗試験機によって削れた部分の面積を求め、「S1」とした。また、摩擦摩耗試験機によって削れなかった部分の面積を「S2」とした。下記式(1)に従い、削れ面積率ΔS(%)を算出し、下記評価基準に基づき耐擦過性を評価した。
なお、下記評価基準において、ランクS、ランクA、及びランクBが、実用上問題ない範囲である。
削れ面積率ΔS(%)=S1/(S1+S2)×100 ・・・ 式(1)
-「耐擦過性」の評価基準-
ランクS:ΔSが、0%
ランクA:ΔSが、0%超5%以下
ランクB:ΔSが、5%超20%以下
ランクC:ΔSが、20%超
【0249】
<<耐光性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22のベタ画像について、ISO規格「ISO 105 B02」に基づいて試験を行い、判定された耐光性の級から下記評価基準に基づき耐光性を評価した。なお、耐光性は1級~5級があり、5級が最も優れた結果である。また、下記評価基準において、ランクS、ランクA、及びランクBが、実用上問題ない範囲である。
-「耐光性」の評価基準-
ランクS:5級
ランクA:4級以上5級未満
ランクB:3級以上4級未満
ランクC:2級以上3級未満
ランクD:2級未満
【0250】
<<抗菌性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22について、以下のようにして抗菌性の評価を行った。
前記試験試料としては、インク1~22を用いて印刷されたベタ画像を有する印刷物1~22を用い、対照試料としては、印刷物1~22に用いた前記インクで印刷されていない記録媒体を用いた。
JIS規格「JIS L 1902:繊維製品の抗菌試験方法及び抗菌効果」に規定されている菌液吸収法に基づき、試験試料0.4g及び対照試料0.4gそれぞれをバイアル瓶に入れ、1×10CFU/mL~3×10CFU/mLになるよう調製した試験菌液(大腸菌:Escherichia coli)0.2mLを滴下後、バイアル瓶の蓋を閉めて37℃で18時間~24時間培養した。その後、SCDLP培地20mLを加えて試験試料から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法により測定した。下記式(4)に基づき抗菌活性値R2を算出し、下記評価基準に基づき抗菌性を評価した。なお、下記評価基準において、ランクA、ランクB、及びランクCが、実用上問題ない範囲である。
抗菌活性値R2=(logC-logC)-(logT-logT) ・・・ 式(4)
ここで、式(4)において「R2」は抗菌活性値を示し、「C」は対照試料の培養後生菌数を示し、「C」は対照試料の接種直後生菌数を示し、「T」は試験試料の培養後生菌数を示し、「T」は試験試料の接種直後生菌数を示す。
-「抗菌性」の評価基準-
ランクA:抗菌活性値が、4以上
ランクB:抗菌活性値が、3以上4未満
ランクC:抗菌活性値が、2以上3未満
ランクD:抗菌活性値が、2未満
【0251】
<<抗ウイルス性の評価>>
実施例1~16及び比較例1~6で得られた印刷物1~22について、以下のようにして抗ウイルス性の評価を行った。
前記試験試料としては、インク1~22を用いて印刷されたベタ画像を有する印刷物1~22を用い、対照試料としては、印刷物1~22に用いた前記インクで印刷されていない記録媒体を用いた。
JIS規格「JIS L 1922:繊維製品の抗ウイルス性試験方法」に基づき、試験試料0.4g及び対照試料0.4gをそれぞれバイアル瓶に入れ、ウイルス濃度が1×10PFU/mL~5×10PFU/mLとなるように調製したウイルス液(ウイルス株:A型インフルエンザウイルス(H3N2)又はネコカリシウイルス)0.2mLを接種し、バイアル瓶の蓋を閉めて25℃で2時間静置した。その後、SCDLP培地20mLを加えて試験試料又は対照試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価を、下記宿主細胞を用いてプラーク法により測定した。また、測定されたウイルス感染価をもとに、下記式(6)に基づき抗ウイルス活性値R4を算出し、下記評価基準に基づき抗ウイルス性を評価した。なお、下記評価基準において、ランクA、ランクB、及びランクCが、実用上問題ない範囲である。
抗ウイルス活性値R4=logV-logV ・・・ 式(6)
ここで、前記式(6)において、「V」は接種して2時間静置後の対照試料のウイルス感染価を示し、「V」は接種して2時間静置後の試験試料のウイルス感染価を示す。
-ウイルス及び宿主細胞の組合せ-
(1):ウイルスの種類:A型インフルエンザウイルス(H3N2)
宿主細胞:MDCK細胞
(2):ウイルスの種類:ネコカリシウイルス
宿主細胞:CRFK細胞
-「抗ウイルス性」の評価基準-
ランクA:抗ウイルス活性値が、4以上
ランクB:抗ウイルス活性値が、3以上4未満
ランクC:抗ウイルス活性値が、2以上3未満
ランクD:抗ウイルス活性値が、2未満
【0252】
<<見た目の白濁度の評価>>
光触媒物質を含有するインクを用いた実施例1~16で得られた印刷物1~16、及び比較例4~6で得られた印刷物20~22について、以下のようにして見た目の白濁度の評価を行った。なお、比較例1~3で得られた印刷物17~19については、インク17~19に光触媒物質を含有していなかったため、本評価は実施しなかった。
【0253】
まず、製造例1~16及び比較製造例4~6に記載のインク1~16及び20~22の製造方法において、光触媒物質を含有せず、残部に水(イオン交換水)を使用したこと以外は、製造例1~16及び比較製造例4~6と同様の方法で、白濁度評価用インク1~16及び20~22を製造した。なお、白濁度評価用インク1~16及び20~22については、光触媒物質以外の成分の含有量(質量%)は、製造例1~16及び比較製造例4~6で製造したインク1~16及び20~22と同じ含有量(質量%)とした。したがって、各インクの番号に対応する番号を有する白濁度評価用インクは、光触媒物質以外の点においては各インクと同様の組成であった。
【0254】
次に、実施例1~16及び比較例4~6において、使用したインクを白濁度評価用インク1~16及び20~22に変更したこと以外は、実施例1~16及び比較例4~6と同様の方法で、白濁度評価用印刷物1~16及び20~22を作製した。
【0255】
専門評価者が、印刷物1~16及び20~22と、白濁度評価用印刷物1~16及び20~22とをそれぞれ目視で比較し、インク中の光触媒物質の有無により得られた印刷物の見た目の白濁の様子に差があるかを判定し、下記評価基準に基づき見た目の白濁度を評価した。下記表1~表3において、本評価を実施しなかった比較例1~3については「-」で示す。なお、下記評価基準において、ランクA及びランクBが、実用上問題ない範囲である。
-「見た目の白濁度」の評価基準-
ランクA:白濁の度合いにほとんど差がない
ランクB:少し白濁しているが許容できるレベル
ランクC:白濁の様子が少し目立っている
ランクD:白濁の度合いが大きく、許容できないレベルである。
【0256】
【表1】
【0257】
【表2】
【0258】
【表3】
【0259】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 水と、光触媒物質と、染料と、を含有し、
前記光触媒物質の個数平均粒子径が100nm以下であり、前記光触媒物質の含有量が3質量%以上20質量%以下であることを特徴とするインクある。
<2> 前記光触媒物質の個数平均粒子径が80nm以下である、前記<1>に記載のインクである。
<3> 前記光触媒物質の含有量が5質量%以上10質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクである。
<4> 前記染料の分子が、非イオン性の分子骨格又は非イオン性の官能基のみから構成される分子である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクである。
<5> 前記染料が分散染料を含む、前記<5>に記載のインクである。
<6> 前記染料が昇華染料を含む、前記<5>に記載のインクである。
<7> 前記インクを用いて印刷された印刷物のISO 105 B02に基づき測定した耐光性が3級以上5級以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクである。
<8> 前記インクを用いて印刷された印刷物のISO 105 B02に基づき測定した耐光性が4級以上5級以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクである。
<9> 前記染料の含有量が5質量%以上20質量%以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクである。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクと、前処理液と、後処理液と、を有することを特徴とするインクセットである。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクを容器に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
<12> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクを有することを特徴とする記録装置である。
<13> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段と、
前記画像が記録された記録媒体を加熱する加熱手段と、
を有する、前記<12>に記載の記録装置である。
<14> 前記記録媒体がテキスタイルである、前記<12>から<13>のいずれかに記載の記録装置である。
<15> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクを用いることを特徴とする記録方法である。
<16> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程と、
前記画像が記録された記録媒体を加熱する加熱工程と、
を含む、前記<15>に記載の記録方法である。
<17> 前記記録媒体がテキスタイルである、前記<15>から<16>のいずれかに記載の記録方法である。
<18> 記録媒体上に、前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクを用いて形成された画像を有することを特徴とする記録物である。
<19> 仮支持体上に、前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクを用いて形成された画像を有することを特徴とする転写用記録物である。
【0260】
前記<1>から<9>のいずれかに記載のインク、前記<10>に記載のインクセット、前記<11>に記載のインクカートリッジ、前記<12>から<14>のいずれかに記載の記録装置、前記<15>から<17>のいずれかに記載の記録方法、前記<18>に記載の記録物、及び前記<19>に記載の転写用記録物は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0261】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 インク収容容器(メインタンク、インクカートリッジ)
410k ブラック(K)のインク収容容器(メインタンク、インクカートリッジ)
410c シアン(C)のインク収容容器(メインタンク、インクカートリッジ)
410m マゼンタ(M)のインク収容容器(メインタンク、インクカートリッジ)
410y イエロー(Y)のインク収容容器(メインタンク、インクカートリッジ)
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0262】
【特許文献1】特開2016-006150号公報
【特許文献2】特開2009-57652号公報
【特許文献3】特許第3006473号
図1
図2