(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174238
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】魚介類エキスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/20 20160101AFI20231130BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
A23L17/20
A23L27/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086982
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平石 智裕
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨野 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊教
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇裕
【テーマコード(参考)】
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AE08
4B042AG12
4B042AG27
4B042AP03
4B042AP14
4B042AP15
4B042AP18
4B042AP20
4B047LB03
4B047LE01
4B047LG54
4B047LP01
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP06
4B047LP08
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、魚介類エキスを大量に製造することである。
【解決手段】
新鮮な魚介類、又は、冷凍した魚介類を5℃以下の低温を保ちながら粉砕し、さらに磨砕して魚介類スラリーを得る。得られた魚介類スラリーを直接加熱により加熱したのち、固液分離して魚介類エキスを得る。魚介類スラリーを配管内で移動させながら高温の水蒸気を吹き込んで直接加熱を行う管状の加熱装置を使用することで、連続的に魚介類エキスを製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類の磨砕物を、加熱装置内を移動させながら水蒸気を吹き込む直接加熱により連続的に加熱処理したのち固液分離する魚介類エキスの製造方法。
【請求項2】
魚介類が冷凍した魚介類である請求項1に記載の魚介類エキスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類エキスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原料となる魚の保存状態(生鮮・冷凍)、品質(脂肪分)、さらには魚種、大きさ等にできる限り制約されず、広範囲の原料に適応でき、手間やコストのかかる頭や内臓の除去工程や乾燥工程等を省いて製造時間を大幅に短縮でき、魚介類エキスを効率的に得るのに適した方法として、原料となる魚を頭、内臓を除去せずに丸ごとミンチ化し、直接加熱、固液分離により苦味や酸化臭のない高濃度のエキスを効率的に得ることが記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の実施例は、最大でも503gであり実験室規模の試験である。製造規模を大きくすると実験室規模の製造条件では品質が保てない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、魚介類エキスを大量に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、魚介類を磨砕して得られた魚介類の磨砕物を、管状の加熱装置内を移動させながら水蒸気を吹き込んで直接加熱することで連続的に加熱処理すると、魚介類エキスを大量に製造することができることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す魚介類エキスの製造方法である。
(1)魚介類の磨砕物を、加熱装置内を移動させながら水蒸気を吹き込む直接加熱により連続的に加熱処理したのち固液分離する魚介類エキスの製造方法。
(2)魚介類が冷凍した魚介類である上記(1)に記載の魚介類エキスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、魚介類エキスを大量に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法では、加熱工程前の工程で魚介類をできるだけ低温に保つことが重要である。新鮮な魚介類を使用して低温で処理すればよいが、冷凍された魚介類を使用する方法が好ましい。冷凍した魚介類を使用する場合は、解凍せずにそのままフローズンカッターで粉砕する。凍ったまま処理することで、温度の上昇を防ぎ、魚介類の鮮度を保ったまま加熱処理工程に送ることができる。冷凍魚介類は、魚介類を一尾ずつ個別に冷凍した冷凍魚介類でも、氷のブロック中に複数の魚介類を冷凍した魚介類ブロックでも良い。魚介類エキスとする魚介類としては、カタクチイワシなどが好ましい。
【0010】
フローズンカッターで粉砕した魚介類の粉砕物は約1~3倍容量の水に混合して均一に分散させたのち、マルチミルなどでさらにクリアランス0.15mm以下まで細かく磨砕して魚介類スラリーを調製する。冷凍魚介類の粉砕、磨砕工程は、魚介類スラリーの品質を保つために品温を5℃以下とするのが好ましく、0℃以下とするのがより好ましい。
【0011】
調製した魚介類スラリーを加熱することで魚介類エキスを得る。大量の魚介類スラリーを加熱するためには、バッチ式処理では巨大な鍋が必要となるが、スラリー全量を短時間で均一に加熱するのは困難である。そのため、大量の魚介類スラリーを加熱する場合は、短時間で品温を急速に上げられるように少量を連続的に加熱できる装置が好ましい。連続的にスラリーを加熱する装置として、管状の加熱装置があり、加熱方法として間接加熱と直接加熱がある。
【0012】
連続的に間接加熱する装置では、配管内を移動するスラリーを配管の外から水蒸気で加熱する。温度ムラができないようにスタティックミキサーで撹拌しながら加熱する。連続的に直接加熱する装置では、配管内を移動するスラリーに直接水蒸気を吹き込み加熱する。魚介類スラリーの場合、間接加熱装置で連続的に加熱を行うと魚介類スラリーが凝集して塊になり配管を移動できなくなる場合がある。一方、直接加熱装置では、塊ができないので、魚介類スラリーの連続的な加熱処理としては直接加熱装置を使用することが好ましい。
【0013】
前記、調製した魚介類スラリーを連続式直接加熱装置に投入して配管内を移動させながら水蒸気を吹き込み加熱する。連続式直接加熱装置では、複数箇所に設置されたインジェクションノズルによって加熱装置内全体に高温の水蒸気が送達されるように常時外部から吹き込まれ、魚介類スラリーが所定の温度に加熱される。水蒸気を吹き込む量や速度はとくに限定されないが魚介類スラリーの量や粘度、加熱温度及び魚介類スラリーが移動する速度などを考慮して適宜決定してよい。
【0014】
加熱装置内で魚介類スラリーは短時間に約100℃~150℃の温度にまで加熱され、ホールディング管内で約30秒~2分間、約90℃~135℃の温度に保温したのち、フラッシュベッセルで減圧して冷却される。冷却された魚介類スラリーを約100メッシュの振動ふるいで骨などの粗い固形物を除去することで魚介類エキスが得られる。
【0015】
本発明の製造方法に用いられる連続式直接加熱装置は、魚介類スラリーを配管内で移動させながら水蒸気を吹き込み加熱できる装置であればよい。このような装置としてGOLD PEG社製ロタサームが例示される。
【0016】
以下、実施例を示して本発明の効果をより具体的に説明する。
【実施例0017】
(魚介類スラリーの調製)
カタクチイワシを冷凍した15kgの冷凍ブロック8個を解凍せずにフローズンカッター(湘南産業社製 FZ型)で粉砕して15℃の水240Lと混合して均一に分散させた。次に、クリアランスを0.1mmに設定したマルチミル(グローエンジニアリング社製RG2-20G型)で磨砕してスラリーを調製した。
【0018】
(魚介類エキスの調製)
調製した魚介類スラリーを蒸気による連続式直接加熱装置(GOLD PEG社製ロタサーム)に投入し、加熱管内6か所に設置されたイグニッションノズルによって約110℃の水蒸気を加熱管内全体に送達されるように常時外部から吹き込み、スラリーを撹拌しながら同加熱管の投入口から排出口に向けて2000g/分の速度で移送した。110℃に加熱された魚介類スラリーをホールディング管内で90秒間移送しながら保温したのち、フラッシュベッセルで減圧により約70℃に冷却して装置から排出した。フラッシュベッセルでは投入した水蒸気の約90%に相当する水分が留去された。約100メッシュの振動ふるいで冷却したスラリーから固形物を除去しさらにろ紙(アドバンテック社No.2)でろ過して本発明の製造方法による魚介類エキスを得た。
【0019】
(アミノ酸の分析)
アミノ酸は、高速アミノ酸分析計(日立製作所社製LA-8080型)を用いて生体液分析法により測定した。
【0020】
(イノシン酸の定量)
イノシン酸の定量は、高速液体クロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製1260Infinity)を用いて常法に従って行った。
【0021】
(アミノ酸組成)
本発明の製造方法で得られた魚介類エキスのアミノ酸組成を分析した。結果を表1に示した。表中のn.d.は検出限界以下を示す。
【0022】
【0023】
(イノシン酸)
本発明の製造方法で得られた魚介類エキスのイノシン酸含有量を測定したところ、587.9ppmであった。