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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174241
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】熱伝導部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20231130BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086985
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 隆政
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC07
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA22
5F136FA51
5F136FA82
5F136FA88
5F136GA33
(57)【要約】
【課題】シート化が可能で放熱性に優れた熱伝導部材の提供。
【解決手段】本熱伝導部材は、複数のカーボンナノチューブと、複数の前記カーボンナノチューブの一端側に設けられた第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層された、前記第1樹脂層よりも熱伝導率の高い第1伝熱層と、複数の前記カーボンナノチューブの他端側に設けられた第2樹脂層と、前記第2樹脂層に積層された、前記第2樹脂層よりも熱伝導率の高い第2伝熱層と、を有し、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層はフィラーを含有せず、前記第1樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの一端側に含浸し、前記第2樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの他端側に含浸している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブと、
複数の前記カーボンナノチューブの一端側に設けられた第1樹脂層と、
前記第1樹脂層に積層された、前記第1樹脂層よりも熱伝導率の高い第1伝熱層と、
複数の前記カーボンナノチューブの他端側に設けられた第2樹脂層と、
前記第2樹脂層に積層された、前記第2樹脂層よりも熱伝導率の高い第2伝熱層と、を有し、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層はフィラーを含有せず、
前記第1樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの一端側に含浸し、
前記第2樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの他端側に含浸している、熱伝導部材。
【請求項2】
前記第1樹脂層の前記第1伝熱層側は、複数の前記カーボンナノチューブの一端側が入り込んでいなく、樹脂のみから形成された領域であり、
前記第2樹脂層の前記第2伝熱層側は、複数の前記カーボンナノチューブの他端側が入り込んでいなく、樹脂のみから形成された領域である、請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
前記第1樹脂層は前記第1伝熱層よりも薄く、前記第2樹脂層は前記第2伝熱層よりも薄い、請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
前記第1樹脂層又は前記第2樹脂層は、ポリフェニレンエーテル系樹脂から形成されている、請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項5】
前記第1伝熱層及び前記第2伝熱層は、フィラーを含有する樹脂層である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の熱伝導部材。
【請求項6】
前記樹脂層は、ポリフェニレンエーテル系樹脂から形成されている、請求項5に記載の熱伝導部材。
【請求項7】
前記第1伝熱層及び前記第2伝熱層は、はんだから形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の熱伝導部材。
【請求項8】
前記第1伝熱層及び前記第2伝熱層は、インジウムから形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の熱伝導部材。
【請求項9】
前記第1伝熱層及び前記第2伝熱層は、焼結材から形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の熱伝導部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブを用いた積層体が知られている。この積層体では、カーボンナノチューブを挟んで上下に保護材を配置している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カーボンナノチューブは熱伝導性に優れているため、カーボンナノチューブを含む積層体は熱伝導部材として使用される場合がある。しかし、カーボンナノチューブは容易にばらけてしまうため、シート化が困難である。また、カーボンナノチューブを含む積層体の構成によっては、十分な放熱性が得られない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/158496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シート化が可能で放熱性に優れた熱伝導部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本熱伝導部材は、複数のカーボンナノチューブと、複数の前記カーボンナノチューブの一端側に設けられた第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層された、前記第1樹脂層よりも熱伝導率の高い第1伝熱層と、複数の前記カーボンナノチューブの他端側に設けられた第2樹脂層と、前記第2樹脂層に積層された、前記第2樹脂層よりも熱伝導率の高い第2伝熱層と、を有し、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層はフィラーを含有せず、前記第1樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの一端側に含浸し、前記第2樹脂層を構成する樹脂は、複数の前記カーボンナノチューブの他端側に含浸している。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、シート化が可能で放熱性に優れた熱伝導部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る熱伝導部材を例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係る熱伝導部材を例示する断面図である。
図3】第1実施形態に係る熱伝導部材の断面のSEM写真である。
図4】比較例に係る熱伝導部材を例示する断面図である。
図5】第1実施形態に係る熱伝導部材の製造工程を例示する図(その1)である。
図6】第1実施形態に係る熱伝導部材の製造工程を例示する図(その2)である。
図7】第1実施形態に係る熱伝導部材の製造工程を例示する図(その3)である。
図8】第1実施形態の変形例に係る熱伝導部材を例示する断面図である。
図9】熱伝導部材の熱伝導率等の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[熱伝導部材の構造]
図1は、第1実施形態に係る熱伝導部材を例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係る熱伝導部材を例示する断面図であり、図2(a)は全体図、図2(b)は図2(a)のA部の拡大図である。
【0011】
図1及び図2を参照すると、第1実施形態に係る熱伝導部材10は、複数のカーボンナノチューブ11と、第1樹脂層12と、第1伝熱層13と、第2樹脂層14と、第2伝熱層15とを有している。熱伝導部材10は、さらに保護層16及び17を有してもよい。熱伝導部材10は、所謂TIM(Thermal Interface Material)であり、2つの部材の間に配置され、両者の間の熱伝導を行う部材である。例えば、2つの部材の一方が発熱体、他方が放熱体である。
【0012】
複数のカーボンナノチューブ11は、第1樹脂層12と第2樹脂層14との間に、長手方向を概ね熱伝導方向に向けて配置されている。ここで、熱伝導方向とは、第1伝熱層13の上面及び第2伝熱層15の下面に略垂直な方向である。隣接するカーボンナノチューブ11の間隔は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。隣接するカーボンナノチューブ11は接してもよいが、隣接するカーボンナノチューブ11の間に空隙があることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブ11の収縮性が向上し、膨張や収縮しやすくなる。
【0013】
カーボンナノチューブ11は、例えば直径が0.7~70nm程度の略円筒形をした炭素の結晶である。カーボンナノチューブ11の長手方向の長さは、例えば、50μm以上300μm以下である。カーボンナノチューブ11は熱伝導性が高く、その熱伝導率は、例えば3000W/m・K程度である。良好な伝熱性能を得るために、カーボンナノチューブ11の面密度は、1×1010本/cm以上であることが好ましい。
【0014】
第1樹脂層12は、複数のカーボンナノチューブ11の一端側に設けられている。第1伝熱層13は、第1樹脂層12のカーボンナノチューブ11とは反対側に積層されている。第1樹脂層12を構成する樹脂は、複数のカーボンナノチューブ11の一端側に含浸している。言い換えれば、複数のカーボンナノチューブ11の一端側は、第1樹脂層12に埋め込まれている。
【0015】
複数のカーボンナノチューブ11の一端側において、第1樹脂層12に埋め込まれている部分の長さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。なお、それぞれのカーボンナノチューブ11の一端側の先端11aの位置は、ばらついていても構わない。
【0016】
複数のカーボンナノチューブ11の一端側の先端11aは、第1樹脂層12の下面から突出していない。すなわち、第1樹脂層12の第1伝熱層13側は、複数のカーボンナノチューブ11の一端側が入り込んでいなく、樹脂のみから形成された領域である。ただし、一部のカーボンナノチューブ11の一端側の先端11aは、第1樹脂層12の下面に達してもよいし、下面から突出してもよい。
【0017】
第2樹脂層14は、複数のカーボンナノチューブ11の他端側に設けられている。第2伝熱層15は、第2樹脂層14のカーボンナノチューブ11とは反対側に積層されている。第2樹脂層14を構成する樹脂は、複数のカーボンナノチューブ11の他端側に含浸している。言い換えれば、複数のカーボンナノチューブ11の他端側は、第2樹脂層14に埋め込まれている。
【0018】
複数のカーボンナノチューブ11の他端側の、第2樹脂層14に埋め込まれている部分の長さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。ただし、それぞれのカーボンナノチューブ11の他端側の先端11bの位置は、ばらついていても構わない。
【0019】
複数のカーボンナノチューブ11の他端側の先端11bは、第2樹脂層14の上面から突出していない。すなわち、第2樹脂層14の第2伝熱層15側は、複数のカーボンナノチューブ11の他端側が入り込んでいなく、樹脂のみから形成された領域である。ただし、一部のカーボンナノチューブ11の他端側の先端11bは、第2樹脂層14の上面に達してもよいし、上面から突出してもよい。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る熱伝導部材の断面のSEM写真であり、図3(a)は全体図、図3(b)は図3(a)の部分拡大図である。図3(b)の破線Bで囲んだ部分において、第2樹脂層14を構成する樹脂が複数のカーボンナノチューブ11の他端側に含浸していることが確認できる。
【0021】
図1及び図2の説明に戻り、第1樹脂層12及び第2樹脂層14の各々は、フィラーを含有していない。一方、第1伝熱層13は、フィラー13fを含有する樹脂層である。第1伝熱層13は、第1樹脂層12よりも熱伝導率が高い。また、第2伝熱層15は、フィラー15fを含有する樹脂層である。第2伝熱層15は、第2樹脂層14よりも熱伝導率が高い。フィラー13f及び15fとしては、例えば、アルミナや窒化アルミニウム等を用いることができる。フィラー13f及び15fの径は、例えば、0.1μm~10μm程度とすることができる。第1樹脂層12及び第2樹脂層14の各々の熱伝導率は、例えば、0.1W/m・K~0.3W/m・K程度である。一方、第1伝熱層13及び第2伝熱層15の各々の熱伝導率は、例えば、1W/m・K~15W/m・K程度である。
【0022】
第1樹脂層12及び第2樹脂層14の各々は、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂から形成することができる。第1伝熱層13及び第2伝熱層15を構成する各々の樹脂層は、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂から形成することができる。なお、第1伝熱層13及び第2伝熱層15を構成する樹脂層は、第1樹脂層12及び第2樹脂層14と異なる樹脂から形成してもよい。
【0023】
第1樹脂層12は第1伝熱層13よりも薄く、第2樹脂層14は第2伝熱層15よりも薄いことが好ましい。第1樹脂層12及び第2樹脂層14の各々の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下とすることができる。第1樹脂層12及び第2樹脂層14の各々の厚さは、1μm以上10μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上5μm以下とすることがより好ましい。第1伝熱層13及び第2伝熱層15の各々の厚さは、例えば、50μm~250μm程度とすることができる。
【0024】
第1樹脂層12は第1伝熱層13よりも熱伝導率が低く、第2樹脂層14は第2伝熱層15よりも熱伝導率が低い。しかし、第1樹脂層12及び第2樹脂層14の厚さが1μm以上30μm以下であれば、第1樹脂層12及び第2樹脂層14の熱抵抗を低く抑えられ、熱伝導部材10全体としての熱伝導率の低下を抑制することができる。第1樹脂層12及び第2樹脂層14の厚さが1μm以上10μm以下であれば熱伝導部材10全体としての熱伝導率の低下をさらに抑制することができ、0.1μm以上5μm以下であれば熱伝導部材10全体としての熱伝導率の低下をさらに抑制することができる。
【0025】
保護層16は、必要に応じ、第1伝熱層13の第1樹脂層12とは反対側に積層され、第1伝熱層13を保護する。保護層17は、必要に応じ、第2伝熱層15の第2樹脂層14とは反対側に積層され、第2伝熱層15を保護する。保護層16及び17はフィルム状の部材であり、熱伝導部材10が使用される際に剥離される。保護層16及び17としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。
【0026】
図4は、比較例に係る熱伝導部材を例示する断面図であり、図4(a)は全体図、図4(b)は図4(a)のC部の拡大図である。
【0027】
図4を参照すると、比較例に係る熱伝導部材10Xは、第1樹脂層12及び第2樹脂層14を有していない点が、熱伝導部材10(図1等参照)と相違する。
【0028】
熱伝導部材10Xにおいて、第1伝熱層13に含有されるフィラー13fは、第1伝熱層13を構成する樹脂がカーボンナノチューブ11の一端側へ含浸することを阻害する。そのため、第1伝熱層13を構成する樹脂は複数のカーボンナノチューブ11の一端側に全く含浸しないか、ほとんど含浸しない。また、第2伝熱層15に含有されるフィラー15fは、第2伝熱層15を構成する樹脂がカーボンナノチューブ11の他端側へ含浸することを阻害する。そのため、第2伝熱層15を構成する樹脂は複数のカーボンナノチューブ11の他端側に全く含浸しないか、ほとんど含浸しない。
【0029】
その結果、熱伝導部材10Xでは、カーボンナノチューブ11がばらけてしまうため図4に示す形状を維持できず、シート化することができない。仮に、第1伝熱層13及び第2伝熱層15からフィラーを除去したとすれば、第1伝熱層13及び第2伝熱層15を構成する樹脂がカーボンナノチューブ11の両端側へ含浸することができる。そのため、シート化は可能となるが、第1伝熱層13及び第2伝熱層15からフィラーを除去すると、第1伝熱層13及び第2伝熱層15の熱伝導率が低下するため、熱伝導部材10Xは十分な放熱性能を発揮できない。
【0030】
一方、熱伝導部材10では、カーボンナノチューブ11の一端側にフィラーを含有しない第1樹脂層12を配置し、カーボンナノチューブ11の他端側にフィラーを含有しない第2樹脂層14を配置している。そのため、第1樹脂層12及び第2樹脂層14を構成する樹脂がカーボンナノチューブ11の両端側へ含浸することができ、シート化が可能となる。また、第1樹脂層12及び第2樹脂層14を熱伝導部材10の放熱性に影響がない程度に薄化し、さらに第1樹脂層12に熱伝導率のよい第1伝熱層13を積層し、第2樹脂層14に熱伝導率のよい第2伝熱層15を積層している。その結果、熱伝導部材10は、シート化が可能であるとともに、放熱性にも優れている。熱伝導部材10の熱伝導率は、例えば、20~30W/m・K程度とすることができる。
【0031】
また、仮に熱伝導部材がカーボンナノチューブを有さず、はんだや焼結材のような柔軟性が低く硬い材料のみからなる場合、熱伝導部材が発熱体と放熱体との間に配置されると、各部材の熱膨張係数の差から熱負荷時に熱伝導部材に反りや剥離が発生するおそれがある。一方、熱伝導部材10では、厚さ方向の中央部に柔軟性に優れたカーボンナノチューブ11が配置されている。そのため、熱伝導部材10が発熱体と放熱体との間に配置されたときに、各部材の熱膨張係数の差から生じる応力をカーボンナノチューブ11が緩和する。その結果、熱負荷時に熱伝導部材10に反りや剥離が発生するおそれを低減できる。なお、はんだの弾性率が40GPa程度であるのに対し、カーボンナノチューブ11を有する熱伝導部材10の弾性率は5GPa以下である。
【0032】
[熱伝導部材の製造方法]
次に、第1実施形態に係る熱伝導部材の製造方法について説明する。図5図7は、第1実施形態に係る熱伝導部材の製造工程を例示する図である。
【0033】
まず、図5(a)に示す工程では、基板200を準備し、基板200の上面に複数のカーボンナノチューブ11を形成する。基板200としては、例えば、板状のシリコン(Si)や銅(Cu)等を用いることができる。
【0034】
より具体的には、基板200の上面にスパッタ法等によって、金属触媒層を形成する。金属触媒層としては、例えばFe、Co、Al、及びNi等を用いることができる。金属触媒層の厚さは、例えば数nm程度とすることができる。次に、金属触媒層が形成された基板200を加熱炉に入れて、CVD法(化学的気相成長法)により所定の圧力及び温度、プロセスガスで金属触媒層上にカーボンナノチューブ11を形成する。加熱炉の圧力及び温度は、例えば0.1~8.0kPa及び500~800℃とすることができる。又、プロセスガスとしては、例えばアセチレンガス等を用いることができ、キャリアガスとしては、例えばアルゴンガスや水素ガス等を用いることができる。
【0035】
次に、図5(b)に示す工程では、基板200上に成長したカーボンナノチューブ11の上端部に転写部材210を接触させ、基板200側に押圧する。転写部材210としては、例えば、シリコンゴムシート等を用いることができる。次に、図5(c)に示す工程では、図5(b)に示す基板200を剥離する。これにより、カーボンナノチューブ11が転写部材210に転写される。
【0036】
次に、図6(a)に示す工程では、保護層16、第1伝熱層13、及び第1樹脂層12の積層体を準備し、カーボンナノチューブ11が転写された転写部材210を、カーボンナノチューブ11を第1樹脂層12側に向けて配置する。第1樹脂層12としては、例えば、フィルム状の熱硬化性のポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。第1樹脂層12は、フィラーを含有していない。第1伝熱層13としては、例えば、フィルム状の熱硬化性のポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。第1伝熱層13はフィラー13fを含有している。保護層16としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。
【0037】
次に、図6(b)に示す工程では、図6(a)に示す構造体を加熱しながら、転写部材210を第1樹脂層12側へ押圧する。これにより、第1樹脂層12が軟化し、第1樹脂層12を構成する樹脂は、複数のカーボンナノチューブ11の一端側に含浸する。
【0038】
次に、図7(a)に示す工程では、図6(b)に示す転写部材210をカーボンナノチューブ11から除去する。図6(b)に示す工程において加熱する際の熱は、転写部材210にも伝えられ、転写部材210が軟化する。そのため、転写部材210はカーボンナノチューブ11から容易に除去することができる。
【0039】
次に、図7(b)に示す工程では、保護層17、第2伝熱層15、及び第2樹脂層14の積層体を準備する。そして、第2樹脂層14をカーボンナノチューブ11側に向けて配置し、加熱しながら第1樹脂層12側へ押圧する。これにより、第2樹脂層14が軟化し、第2樹脂層14を構成する樹脂は、複数のカーボンナノチューブ11の他端側に含浸する。第2樹脂層14としては、例えば、フィルム状の熱硬化性のポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。第2樹脂層14は、フィラーを含有していない。第2伝熱層15としては、例えば、フィルム状の熱硬化性のポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。第2伝熱層15はフィラー15fを含有している。保護層17としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。以上の工程により、熱伝導部材10が完成する。
【0040】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、第1伝熱層及び第2伝熱層にフィラーを含有した樹脂以外の部材を用いた熱伝導部材の例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0041】
図8は、第1実施形態の変形例に係る熱伝導部材を例示する断面図である。図8を参照すると、第1実施形態の変形例に係る熱伝導部材10Aは、第1伝熱層13及び第2伝熱層15が第1伝熱層13A及び第2伝熱層15Aに置換された点が、熱伝導部材10(図2等参照)と相違する。
【0042】
熱伝導部材10Aにおいて、第1伝熱層13A及び第2伝熱層15Aは、はんだから形成されている。第1伝熱層13A及び第2伝熱層15Aを形成するはんだとしては、例えば、Sn系のはんだ等を用いることができる。
【0043】
このように、第1伝熱層及び第2伝熱層はフィラーを含有した樹脂には限定されず、放熱性に優れた様々な材料を用いて形成することができる。第1伝熱層及び第2伝熱層は、インジウムや焼結材から形成されても構わない。この場合も、優れた放熱性が得られる。
【0044】
図9は、熱伝導部材の熱伝導率等の評価結果である。具体的には、第1接着層及び第2接着層のみで第1伝熱層及び第2伝熱層を有していない熱伝導部材(便宜上、熱伝導部材10Yとする)と、第1伝熱層及び第2伝熱層としてはんだを用いた熱伝導部材10Aについて、熱拡散率、比熱、及び密度を測定し、計算により熱伝導率を求めた。ここで、熱伝導率=熱拡散率×比熱×密度である。
【0045】
熱伝導部材10Y及び10Aにおいて、第1樹脂層及び第2樹脂層の厚さは、いずれも3μmとした。また、熱伝導部材10Aにおいて、第1伝熱層及び第2伝熱層の厚さは、いずれも250μmとした。熱拡散率は、ベテル社製サーモウェイブアナライザTA35を用いて測定した。比熱は、NETZCH社製DSC200F3 Maiaを用いて測定した。密度は、QURNTACHROME INSTRUMENTS社製 ウルトラピクノメータ 1000M-UPYCを用いて測定した。
【0046】
図9に示すように、熱伝導部材10Yでは、30.8[W/m・K]という熱伝導率を実現できることが分かった。一方、第1伝熱層及び第2伝熱層として、はんだを用いた熱伝導部材10Aでは、47、6[W/m・K]という熱伝導部材10Yと比較して1.5倍程度の良好な熱伝導率を実現できることが分かった。
【0047】
なお、第1伝熱層及び第2伝熱層として、はんだより高熱伝導性の焼結材やインジウム等を用いることで、さらなる熱伝導率の向上が期待できる。
【0048】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10,10A 熱伝導部材
11 カーボンナノチューブ
11a カーボンナノチューブの一端側の先端
11b カーボンナノチューブの他端側の先端
12 第1樹脂層
13,13A 第1伝熱層
13f,15f フィラー
14 第2樹脂層
15,15A 第2伝熱層
16,17 保護層
200 基板
210 転写部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9