(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174274
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/005 20120101AFI20231130BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231130BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231130BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20231130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B24B37/005 A
B24B41/06 L
B24B49/10
B24B37/30 E
H01L21/304 622L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087034
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】山口 都章
(72)【発明者】
【氏名】吉成 大
(72)【発明者】
【氏名】浅野 建太郎
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB75
3C034CA13
3C158AA07
3C158AA14
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA07
3C158BC01
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA06
5F057AA31
5F057CA25
5F057DA03
5F057FA50
5F057GA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】研磨装置において、基板を基板保持部材からリリースする際に基板の乾燥を抑制する。
【解決手段】研磨パッドを支持する研磨テーブルと、弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が、同心状に配置された複数のエリアを有し、前記圧力室内の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する基板保持部材の前記圧力室に供給するガスの圧力を調節する圧力レギュレータと、加圧流体を噴射可能なリリースノズルと、前記圧力レギュレータを制御して、前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧した後に、前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで中心部を加圧すると共に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するように前記リリースノズルを制御することにより、前記基板を前記弾性膜からリリースさせる。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が、同心状に配置された複数のエリアを有し、前記圧力室内の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する基板保持部材と、
前記基板保持部材の前記圧力室に供給するガスの圧力を調節する圧力レギュレータと、
加圧流体を噴射可能な1又は複数のリリースノズルと、
前記圧力レギュレータを制御して、前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧した後に、前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧すると共に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するように前記1又は複数のリリースノズルを制御することにより、前記基板を前記弾性膜からリリースさせる基板リリース処理を実行する制御装置と、
を備える研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨装置であって、
前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出する検出装置を更に備え、
前記制御装置は、前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップを実施した後に、前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップを所定回数実施するように構成されており、前記検出装置が前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出した時点で、前記基板リリース処理を終了する、研磨装置。
【請求項3】
請求項2に記載の研磨装置であって、
前記制御装置は、前記全体加圧ステップの後に前記中心部加圧ステップを前記所定回数実施することを1制御サイクルとして、前記1制御サイクルを所定の上限回数になるまで繰り返し実施するように構成されており、前記検出装置により前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出した時点で、前記基板リリース処理を終了する、研磨装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置であって、
前記制御装置は、前記弾性膜全体の加圧を開始した時点の後、所定の遅延時間後であって前記弾性膜全体を加圧している間に、前記加圧流体の噴射を開始するように前記リリースノズルを制御する、研磨装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置であって、
前記制御装置は、前記圧力室の中心にあるエリアが他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで、前記弾性膜の中心部を加圧する、研磨装置。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置であって、
前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアは、前記圧力室の中心から、前記圧力室の半径の50%以下の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリアである、研磨装置。
【請求項7】
請求項6に記載の研磨装置であって、
前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアは、前記圧力室の中心から、前記圧力室の半径の40%から50の間の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリアである、研磨装置。
【請求項8】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置であって、
前記1又は複数のリリースノズルの噴射方向は、前記基板の中心を向いている、研磨装
置。
【請求項9】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置において、
前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、液体である、研磨装置。
【請求項10】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置において、
前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、気体である、研磨装置。
【請求項11】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置において、
前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、液体及び気体である、研磨装置。
【請求項12】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置において、
前記リリースノズルは、液体供給源及び気体供給源に接続されており、前記加圧流体として液体及び/又は気体を噴射可能である、研磨装置。
【請求項13】
弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材を用いて基板を研磨する方法であって、
前記圧力室内の圧力により前記基板を研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行うステップと、
研磨後の前記基板を前記基板保持部材の前記基板保持面上に保持するステップと、
前記基板を前記基板保持部材から基板受渡し装置に受け渡す際に、前記基板を前記弾性膜からリリースするステップと、
を含み、
前記受け渡すステップは、
前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップと、
前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップと、
少なくとも前記弾性膜の中心部を加圧する間に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するステップとを含む、
を含む研磨方法。
【請求項14】
弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材を用いて基板を研磨する研磨装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶する不揮発性の記憶媒体であって、
前記圧力室内の圧力により前記基板を研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行うステップと、
研磨後の前記基板を前記基板保持部材の前記基板保持面上に保持するステップと、
前記基板を前記基板保持部材から基板受渡し装置に受け渡す際に、前記基板を前記弾性膜からリリースするステップと、
を含み、
前記リリースするステップは、
前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップと、
前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップと、
少なくとも前記弾性膜の中心部を加圧する間に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラムを記憶する不揮発性の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板を研磨する研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)である。このCMPは、シリカ(SiO2)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッド上に供給しつつウエハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0003】
CMPを行うための研磨装置は、研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を保持するためのトップリング等と称される基板保持部材と、を備えている。このような研磨装置を用いて基板の研磨を行う場合には、トップリングにより基板を保持しつつ、この基板を研磨面に対して所定の圧力で押圧する。さらに、研磨テーブルとトップリングとを相対運動させることにより基板が研磨面に摺接し、基板の表面が平坦かつ鏡面に研磨される。
【0004】
このような研磨装置において、研磨中のウエハと研磨パッドの研磨面との間の相対的な押圧力がウエハの全面に亘って均一でない場合には、ウエハの各部分に与えられる押圧力に応じて研磨不足や過研磨が生じてしまう。ウエハに対する押圧力を均一化するために、トップリングの下部に弾性膜(メンブレン)から形成される圧力室を設け、この圧力室に空気などの気体を供給することでメンブレンを介して気体の圧力により基板を研磨パッドの研磨面に押圧して研磨することが行われている。
【0005】
研磨工程の終了後、研磨面上のウエハをトップリングに真空吸着させ、トップリングをウエハとともに上昇させた後、搬送ステージの上方位置に移動させて、ウエハをメンブレンから離脱(リリース)させる。ウエハのリリースは、圧力室に気体を供給してメンブレンを膨らませながら、リリースシャワーをウエハとメンブレンとの間の隙間に噴射することにより実施している(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-006549号公報
【特許文献2】特開2017-185589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したウエハリリース処理において、リリースシャワーとして窒素ガス等の気体を含む流体をメンブレン-ウエハ間に吹き付ける場合、ウエハ表面が瞬間的に乾燥してウエハにディフェクト(欠陥)が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、研磨装置において、基板を基板保持部材からリリースする際に基板の乾燥を抑制することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、 弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が、同心状に配置された複数のエリア
を有し、前記圧力室内の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する基板保持部材と、 前記基板保持部材の前記圧力室に供給するガスの圧力を調節する圧力レギュレータと、 加圧流体を噴射可能な1又は複数のリリースノズルと、 前記圧力レギュレータを制御して、前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧した後に、前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧すると共に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するように前記1又は複数のリリースノズルを制御することにより、前記基板を前記弾性膜からリリースさせる基板リリース処理を実行する制御装置と、を備える研磨装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態における研磨装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】研磨対象物であるウエハを保持して研磨テーブルの研磨面に押圧する基板保持部材を構成するトップリングの模式的な断面図である。
【
図4】トップリングと基板受渡し装置(プッシャー)とを示す概略図である。
【
図6】リリースノズルに供給する加圧流体の流体回路図である。
【
図7】リリースノズルの向きを示すプッシャの平面図である。
【
図8A】トップリングからの基板のリリースを説明する説明図である。
【
図8B】トップリングからの基板のリリースを説明する説明図である。
【
図8C】トップリングからの基板のリリースを説明する説明図である。
【
図8D】トップリングからの基板のリリースを説明する説明図である。
【
図9A】比較例に係る基板リリース処理のタイムチャートである。
【
図9B】本実施形態に係る基板リリース処理のタイムチャートである。
【
図10】本実施形態に係る基板リリース処理のフローチャートである。
【
図11】加圧流体の噴射開始時期によるウエハリリース時間の違いを測定した測定例である。
【
図12】リリースノズルの向きによるウエハリリース時間の違いを測定した測定例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る基板処理装置100は一例として基板を研磨する研磨装置である。本実施形態では基板としてウエハを例に説明するが、ウエハ以外の任意の基板(ガラス基板、プリント配線基板等)に対して本発明を適用可能である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置100の全体構成を示す平面図である。
図1に示すように、この基板処理装置100は、略矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は隔壁1a,1bによってロード/アンロード部2と研磨部3と洗浄部4とに区画されている。これらのロード/アンロード部2、研磨部3、および洗浄部4は、それぞれ独立に組み立てられ、独立に排気される。また、基板処理装置100は、基板処理動作を制御する制御装置5を有している。
【0013】
ロード/アンロード部2は、多数のウエハ(基板)をストックするウエハカセットが載置される2つ以上(本実施形態では4つ)のフロントロード部20を備えている。これらのフロントロード部20はハウジング1に隣接して配置され、基板処理装置100の幅方向(長手方向と垂直な方向)に沿って配列されている。フロントロード部20には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができるようになっている。ここで
、SMIF、FOUPは、内部にウエハカセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0014】
また、ロード/アンロード部2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上にウエハカセットの配列方向に沿って移動可能な搬送ロボット(ローダー)22が設置されている。搬送ロボット22は走行機構21上を移動することによってフロントロード部20に搭載されたウエハカセットにアクセスできるようになっている。搬送ロボット22は上下に2つのハンドを備えており、上側のハンドを、処理されたウエハをウエハカセットに戻すときに使用し、下側のハンドを、処理前のウエハをウエハカセットから取り出すときに使用して、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。さらに、搬送ロボット22の下側のハンドは、その軸心周りに回転することで、ウエハを反転させることができるように構成されている。
【0015】
ロード/アンロード部2は最もクリーンな状態を保つ必要がある領域であるため、ロード/アンロード部2の内部は、基板処理装置100外部、研磨部3、および洗浄部4のいずれよりも高い圧力に常時維持されている。研磨部3は研磨液としてスラリーを用いるため最もダーティな領域である。したがって、研磨部3の内部には負圧が形成され、その圧力は洗浄部4の内部圧力よりも低く維持されている。ロード/アンロード部2には、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、またはケミカルフィルタなどのクリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられており、このフィルタファンユニットからはパーティクルや有毒蒸気、有毒ガスが除去されたクリーンエアが常時吹き出している。
【0016】
研磨部3は、ウエハの研磨(平坦化)が行われる領域であり、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、第4研磨ユニット3Dを備えている。これらの第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、および第4研磨ユニット3Dは、例えば、
図1に示すように、基板処理装置100の長手方向に沿って配列されている。
【0017】
図1に示すように、第1研磨ユニット3Aは、研磨面を有する研磨パッド10が取り付けられた研磨テーブル30Aと、ウエハを保持しかつウエハを研磨テーブル30A上の研磨パッド10に押圧しながら研磨するためのトップリング(基板保持部材)31Aと、研磨パッド10に研磨液やドレッシング液(例えば、DIW等の純水)を供給するための研磨液供給ノズル32Aと、研磨パッド10の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ33Aと、液体(例えば、DIW等の純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体または液体(例えば、DIW等の純水)を霧状にして研磨面に噴射するアトマイザ34Aと、を備えている。
【0018】
同様に、第2研磨ユニット3Bは、研磨パッド10が取り付けられた研磨テーブル30Bと、トップリング(基板保持部材)31Bと、研磨液供給ノズル32Bと、ドレッサ33Bと、アトマイザ34Bとを備えており、第3研磨ユニット3Cは、研磨パッド10が取り付けられた研磨テーブル30Cと、トップリング(基板保持部材)31Cと、研磨液供給ノズル32Cと、ドレッサ33Cと、アトマイザ34Cとを備えており、第4研磨ユニット3Dは、研磨パッド10が取り付けられた研磨テーブル30Dと、トップリング(基板保持部材)31Dと、研磨液供給ノズル32Dと、ドレッサ33Dと、アトマイザ34Dとを備えている。
【0019】
次に、ウエハを搬送するための搬送機構について説明する。
図1に示すように、第1研磨ユニット3Aおよび第2研磨ユニット3Bに隣接して、第1リニアトランスポータ6が配置されている。この第1リニアトランスポータ6は、第1研磨ユニット3A,第2研磨
ユニット3Bが配列する方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロード部側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4とする)の間でウエハを搬送する機構である。
【0020】
また、第3研磨ユニット3Cおよび第4研磨ユニット3Dに隣接して、第2リニアトランスポータ7が配置されている。この第2リニアトランスポータ7は、第3研磨ユニット3C、第4研磨ユニット3Dが配列する方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロード部側から順番に第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7とする)の間でウエハを搬送する機構である。
【0021】
ウエハは、第1リニアトランスポータ6によって第1研磨ユニット3A,第2研磨ユニット3Bに搬送される。第1研磨ユニット3Aのトップリング31Aは、トップリングヘッド110のスイング動作により研磨位置と第2搬送位置TP2との間を移動する。したがって、トップリング31Aへのウエハの受け渡しは第2搬送位置TP2で行われる。同様に、第2研磨ユニット3Bのトップリング31Bは研磨位置と第3搬送位置TP3との間を移動し、トップリング31Bへのウエハの受け渡しは第3搬送位置TP3で行われる。第3研磨ユニット3Cのトップリング31Cは研磨位置と第6搬送位置TP6との間を移動し、トップリング31Cへのウエハの受け渡しは第6搬送位置TP6で行われる。第4研磨ユニット3Dのトップリング31Dは研磨位置と第7搬送位置TP7との間を移動し、トップリング31Dへのウエハの受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
【0022】
第1搬送位置TP1には、搬送ロボット22からウエハを受け取るためのリフタ11が配置されている。ウエハはこのリフタ11を介して搬送ロボット22から第1リニアトランスポータ6に渡される。リフタ11と搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ(図示せず)が隔壁1aに設けられており、ウエハの搬送時にはシャッタが開かれて搬送ロボット22からリフタ11にウエハが渡されるようになっている。また、第1リニアトランスポータ6と、第2リニアトランスポータ7と、洗浄部4との間にはスイングトランスポータ12が配置されている。このスイングトランスポータ12は、第4搬送位置TP4と第5搬送位置TP5との間を移動可能なハンドを有しており、第1リニアトランスポータ6から第2リニアトランスポータ7へのウエハの受け渡しは、スイングトランスポータ12によって行われる。ウエハは、第2リニアトランスポータ7によって第3研磨ユニット3Cおよび/または第4研磨ユニット3Dに搬送される。また、研磨部3で研磨されたウエハはスイングトランスポータ12を経由して洗浄部4に搬送され、洗浄部4において洗浄、乾燥され、搬送ロボット22に渡される。
【0023】
上記研磨装置の構成は一例であり、他の構成を採用してもよい。また、基板処理装置100は、研磨装置以外であってもよい。
【0024】
[研磨ユニット]
次に、研磨ユニットについてより詳細に説明する。第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、および第4研磨ユニット3Dは、互いに同一の構成を有しているので、以下、第1研磨ユニット3Aについて説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る第1研磨ユニット3Aの構成を示す概略図である。
図2に示すように、第1研磨ユニット3Aは、研磨テーブル30Aと、研磨対象物であるウエハ等の基板を保持して研磨テーブル30A上の研磨面に押圧するトップリング31Aとを備えている。
【0026】
研磨テーブル30Aは、テーブル軸30Aaを介してその下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されており、そのテーブル軸30Aa周りに回転可能になっている。研磨
テーブル30Aの上面には研磨パッド10が貼付されており、研磨パッド10の研磨面10aがウエハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル30Aの上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル30A上の研磨パッド10上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0027】
トップリング31Aは、ウエハWを研磨面10aに対して押圧するトップリング本体202と、ウエハWの外周縁を保持してウエハWがトップリングから飛び出さないようにするリテーナリング203とから基本的に構成されている。
【0028】
トップリング31Aは、トップリングシャフト111に接続されており、このトップリングシャフト111は、上下動機構124によりトップリングヘッド110に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト111の上下動により、トップリングヘッド110に対してトップリング31Aの全体を昇降させ位置決めするようになっている。なお、トップリングシャフト111の上端にはロータリージョイント125が取り付けられている。
【0029】
トップリングシャフト111およびトップリング31Aを上下動させる上下動機構124は、軸受126を介してトップリングシャフト111を回転可能に支持するブリッジ128と、ブリッジ128に取り付けられたボールねじ132と、支柱130により支持された支持台129と、支持台129上に設けられたサーボモータ138とを備えている。サーボモータ138を支持する支持台129は、支柱130を介してトップリングヘッド110に固定されている。
【0030】
ボールねじ132は、サーボモータ138に連結されたねじ軸132aと、このねじ軸132aが螺合するナット132bとを備えている。トップリングシャフト111は、ブリッジ128と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ138を駆動すると、ボールねじ132を介してブリッジ128が上下動し、これによりトップリングシャフト111およびトップリング31Aが上下動する。
【0031】
また、トップリングシャフト111はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112はその外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用回転モータ114が固定されており、上記タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用回転モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。したがって、トップリング用回転モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、およびタイミングプーリ113を介して回転筒112およびトップリングシャフト111が一体に回転し、トップリング31Aが回転する。トップリング用回転モータ114は、エンコーダ140を備えている。エンコーダ140は、トップリング31Aの回転角度位置を検知する機能やトップリング31Aの回転数を積算する機能を有している。また、トップリング31Aの回転角度「基準位置(0度)」を検知するセンサを別途設けても良い。なお、トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0032】
制御装置5は、トップリング用回転モータ114、サーボモータ138、エンコーダ140をはじめとする装置内の各機器を制御する。記憶部51は、制御装置5に有線又は無線で接続されており、制御装置5は記憶部51を参照可能である。記憶部51には、基板処理動作を制御するためのプログラム、各種パラメータ等が記憶されている。記憶部51は、揮発性及び/又は不揮発性のメモリを有する。
【0033】
図2に示すように構成された第1研磨ユニット3Aにおいて、トップリング31Aは、
その下面にウエハWなどの基板を保持できるようになっている。トップリングヘッド110はトップリングヘッドシャフト117を中心として旋回可能に構成されており、下面にウエハWを保持したトップリング31Aは、トップリングヘッド110の旋回によりウエハWの受取位置から研磨テーブル30Aの上方に移動される。そして、トップリング31Aを下降させてウエハWを研磨パッド10の表面(研磨面)10aに押圧する。このとき、トップリング31Aおよび研磨テーブル30Aをそれぞれ回転させ、研磨テーブル30Aの上方に設けられた研磨液供給ノズル32Aから研磨パッド10上に研磨液を供給する。このように、ウエハWを研磨パッド10の研磨面10aに摺接させてウエハWの表面を研磨する。
【0034】
[トップリング]
次に、本発明の研磨装置におけるトップリング(基板保持部材)について説明する。
図3は、研磨対象物であるウエハWを保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧する基板保持部材又は基板保持装置を構成するトップリング31Aの模式的な断面図である。
図3においては、トップリング31Aを構成する主要構成要素だけを図示している。
【0035】
図3に示すように、トップリング31Aは、ウエハWを研磨面10aに対して押圧するトップリング本体(キャリアとも称する)202と、研磨面101aを直接押圧するリテーナリング203とから基本的に構成されている。トップリング本体(キャリア)202は概略円盤状の部材からなり、リテーナリング203はトップリング本体202の外周部に取り付けられている。トップリング本体202は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。トップリング本体202の下面には、ウエハの裏面に当接する弾性膜(メンブレン)204が取り付けられている。弾性膜(メンブレン)204は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0036】
弾性膜(メンブレン)204は同心状の複数の隔壁204aを有し、これら隔壁204aによって、弾性膜204の上面とトップリング本体202の下面との間に複数のエリア/室からなる圧力室が形成されている。この圧力室は、円形状の室である第1エリア205、環状の室である第2エリア206、環状の室である第3エリア室207、環状の室である第4エリア208を有する。すなわち、トップリング本体202の中心部又は中心に第1エリア205が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、第2エリア206、第3エリア207、第4エリア208が形成されている。ここでは、弾性膜204内に4つのエリアが形成される場合を説明するが、エリアの数は、3つ以下、又は5つ以上(例えば8つ)とすることもできる。
【0037】
弾性膜(メンブレン)204は、第2エリア206にウエハ吸着用の弾性膜の厚さ方向に貫通する複数の孔204hを有している。本実施例では孔204hは第2エリアに設けられているが、第2エリア以外に設けても良い。なお、弾性膜204にウエハ吸着用の複数の孔を設けず、弾性膜204のゴム材による吸着性、及び弾性膜204の膨張/収縮によりウエハを弾性膜に吸着する構成としてもよい。
【0038】
トップリング本体202内には、第1エリア205に連通する流路211、第2エリア206に連通する流路212、第3エリア207に連通する流路213、第4エリア208に連通する流路214がそれぞれ形成されている。そして、第1エリア205に連通する流路211、第3エリア207に連通する流路213、第4エリア208に連通する流路214は、ロータリージョイント225を介して流路221,223,224にそれぞれ接続されている。そして、流路221,223,224は、それぞれバルブV1-1,V3-1,V4-1および圧力レギュレータR1,R3,R4(例えば、電空レギュレータ)を介して圧力調整部230に接続されている。また、流路221,223,224は
、それぞれバルブV1-2,V3-2,V4-2を介して真空源231に接続されるとともに、バルブV1-3,V3-3,V4-3を介して大気に連通可能になっている。
【0039】
一方、第2エリア206に連通する流路212は、ロータリージョイント225を介して流路222に接続されている。そして、流路222は、気水分離槽235、バルブV2-1および圧力レギュレータR2(例えば、電空レギュレータ)を介して圧力調整部230に接続されている。また、流路222は、気水分離槽235およびバルブV2-2を介して真空源131に接続されるとともに、バルブV2-3を介して大気に連通可能になっている。圧力レギュレータR1~R4は、制御装置5に接続されており、制御装置5は、圧力レギュレータR1~R4を制御してメンブレン204内の各エリアに供給するガスの圧力を可変にする。
【0040】
このようにメンブレン204内の各室内の圧力を可変させてメンブレン204の膨らみをコントロールすることにより、メンブレン204に吸着されたウエハWを剥がす(リリースする)ことができる。例えば、ウエハWのメンブレン204への張り付き力に応じて、メンブレン204内に供給するガスの圧力を可変にしてメンブレン204の膨らみをコントロールすることができ、ウエハWがメンブレン204から剥がれるのに要する時間(以下、ウエハリリース時間ともいう)を安定化することができる。例えば、メンブレン204内の圧力を可変させることにより、ウエハWに応じた適切な圧力に変更することができるので、ウエハWに与えるストレスを低減することができる。
【0041】
また、リテーナリング203の直上にも弾性膜からなるリテーナリング加圧室209が形成されており、リテーナリング加圧室209は、トップリング本体(キャリア)202内に形成された流路215およびロータリージョイント225を介して流路226に接続されている。そして、流路226は、バルブV5-1および圧力レギュレータR5(電空レギュレータ)を介して圧力調整部230に接続されている。また、流路226は、バルブV5-2を介して真空源231に接続されるとともに、バルブV5-3を介して大気に連通可能になっている。なお、本実施形態ではリテーナリング押圧機構としてリテーナリング加圧室209を用いたが、リテーナリング押圧機構は、エア、水、又は、油等を用いる流体アクチュエータ、ボールネジ等を用いる電動アクチュエータ、バネや袋状バッグを含む弾性部材等であってもよい。
【0042】
圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5は、それぞれ圧力調整部230から第1エリア205、第2エリア206、第3エリア207、第4エリア208およびリテーナリング加圧室209に供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5および各バルブV1-1~V1-3,V2-1~V2-3,V3-1~V3-3,V4-1~V4-3,V5-1~V5-3は、制御装置5(
図1及び2参照)に接続されていて、それらの作動が制御されるようになっている。また、流路221,222,223,224,226にはそれぞれ圧力センサP1,P2,P3,P4,P5および流量センサF1,F2,F3,F4,F5が設置されている。
【0043】
図3に示すように構成されたトップリング31Aにおいては、上述したように、トップリング本体202の中心部又は中心に第1エリア205が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、第2エリア206、第3エリア207、第4エリア208が形成され、これら第1エリア205、第2エリア206、第3エリア207、第4エリア208およびリテーナリング加圧室209に供給する流体の圧力を圧力調整部230および圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5によってそれぞれ独立に調整することができる。このような構造により、ウエハWを研磨パッド10に押圧する押圧力をウエハWの領域毎に調整でき、かつリテーナリング203が研磨パッド10を押圧する押圧力を
調整できる。
【0044】
次に、
図1~
図3に示すように構成された基板処理装置100による一連の研磨処理工程について説明する。トップリング31Aは第1リニアトランスポータ6からウエハWを受け取り真空吸着により保持する。弾性膜(メンブレン)204にはウエハWを真空吸着するための複数の孔204hが設けられており、これらの孔204hは真空源131に連通されている。ウエハWを真空吸着により保持したトップリング31Aは、予め設定したトップリングの研磨時設定位置まで下降する。この研磨時設定位置では、リテーナリング203は研磨パッド10の表面(研磨面)10aに接地しているが、研磨前は、トップリング31AでウエハWを吸着保持しているので、ウエハWの下面(被研磨面)と研磨パッド10の表面(研磨面)10aとの間には、わずかな間隙(例えば、約1mm)がある。このとき、研磨テーブル30Aおよびトップリング31Aは、ともに回転駆動されている。この状態で、ウエハの裏面側にある弾性膜(メンブレン)204を膨らませ、ウエハの下面(被研磨面)を研磨パッド10の表面(研磨面)に当接させ、研磨テーブル30Aとトップリング31Aとを相対運動させることにより、ウエハWの表面(被研磨面)が所定の状態(例えば、所定の膜厚)になるまでウエハを研磨する。
【0045】
研磨パッド10上でのウエハ処理工程の終了後、メンブレン204を収縮させると共にウエハWをトップリング31Aに真空吸着し、トップリング31Aを上昇させ、第1リニアトランスポータ(基板搬送部)6が有する基板受渡し装置(例えば、プッシャ)150へ移動させる。移動後に、メンブレン204内の各エリアにガス(例えば、窒素)を供給して所定の程度メンブレン204を膨らませてウエハWとの貼り付け面積を減らしメンブレン204とウエハWの間に加圧流体を吹く。これにより、ウエハWをメンブレン204から剥がす。このウエハWのメンブレン204からの離脱をウエハリリースともいう。以下、ウエハリリースの詳細を説明する。
【0046】
メンブレン204を膨らませる所定の程度は、ウエハWの位置が後述するリリースノズルからウエハWの裏面に加圧流体を噴出可能な位置になる程度である。一例では、ウエハWの裏面の高さが、リリースノズル153と略同一の高さ、又は、リリースノズル153より僅かに低い高さとなるように、メンブレン204を膨張させる。このようにすれば、リリースノズル153から噴射される加圧流体が、メンブレン-ウエハ間に入り、メンブレン(及び/又はウエハ裏面)に当たった後にメンブレン-ウエハ間の接触箇所に供給される。
【0047】
[プッシャ]
図4は、トップリング31Aとプッシャ150とを示す概略図である。ウエハWをトップリング31Aからプッシャ150へ受け渡しするために、プッシャを上昇させた状態を示す模式図である。
図3に示すように、プッシャ150は、トップリング31Aとの間で芯出しを行うためにトップリング31Aの外周面と嵌合可能なトップリングガイド151と、トップリング31Aとプッシャ150との間でウエハを受け渡しする際にウエハを支持するためのプッシュステージ152と、プッシュステージ152を上下動させるためのエアシリンダ(図示せず)と、プッシュステージ152とトップリングガイド151とを上下動させるためのエアシリンダ(図示せず)と、を備えている。また、プッシュステージ152上には、メンブレン204からリリースされたウエハWがプッシュステージ152上に載置されたことを検出することにより、ウエハのリリースを検出するための1又は複数(例えば3つ)の着座センサ154が設けられている。着座センサ154は、例えば、接触センサである。着座センサの数は、2つ以下でも、4つ以上でもよい。なお、本実施形態では、着座センサ154によりウエハリリースを検出する例を挙げるが、メンブレン204の圧力室の圧力をモニターすることにより、ウエハのリリースを検出してもよい。
【0048】
以下、ウエハWをトップリング31Aからプッシャ150に受け渡しする動作を説明する。研磨パッド10上でのウエハ処理工程終了後、トップリング31AはウエハWを吸着する。ウエハWの吸着は、メンブレン204の孔204hを真空源131に連通させることにより行う。このように、トップリング31Aは、表面に孔204hが設けられたメンブレン204を有し且つ当該孔204hを介してウエハWを吸い付けることにより当該メンブレン204の表面に当該ウエハWを吸着する。
【0049】
ウエハWの吸着後に、トップリング31Aを上昇させ、プッシャ150へ移動させて、ウエハWの離脱(リリース)を行う。プッシャ150へ移動後、トップリング31Aに吸着保持したウエハWに純水や薬液を供給しつつトップリング31Aを回転させて洗浄動作を行う場合もある。
【0050】
その後、プッシャ150のプッシュステージ152とトップリングガイド151が上昇し、トップリングガイド151がトップリング31Aの外周面と嵌合してトップリング31Aとプッシャ150との芯出しを行う。このとき、トップリングガイド151は、リテーナリング203を押し上げるが、同時にリテーナリング加圧室209を真空にすることにより、リテーナリング203の上昇を速やかに行うようにしている。そして、プッシャの上昇完了時、リテーナリング203の底面は、トップリングガイド151の上面に押圧されてメンブレン204の下面よりも上方に押し上げられているので、ウエハとメンブレンとの間が露出された状態となっている。
図4に示す例においては、リテーナリング203の底面はメンブレン下面よりも所定高さ(例えば、1mm)だけ、上方に位置している。その後、トップリング31AによるウエハWの真空吸着を止め、ウエハリリース動作(処理)を行う。なお、プッシャが上昇する代わりにトップリングが下降することによって所望の位置関係に移動しても良い。
【0051】
図5は、プッシャ150の詳細構造を示す概略図である。
図5に示すように、プッシャ150は、トップリングガイド151と、プッシュステージ152と、トップリングガイド151内に形成され加圧流体Fを噴射可能な二つのリリースノズル(基板剥離促進部)153と、を備える。加圧流体Fは、加圧気体(例えば、加圧窒素)のみであってもよいし、加圧液体(例えば、加圧水)のみであってもよいし、加圧気体(例えば、加圧窒素)と液体(例えば、純水)の混合流体であってもよい。リリースノズル153は、制御装置5に制御線等を介して接続されており、制御装置5により制御される。更に、プッシャ150は、メンブレン204に吸着しているウエハWの位置を検出する位置検出部154を備える。本実施形態ではその一例として、位置検出部154は、メンブレン204に吸着しているウエハWの裏面の高さを検出する。位置検出部154は、例えば、トップリングガイド151の内側を撮像する撮像部を有し、撮像した画像からウエハWの裏面の高さを検出する。位置検出部154は、省略してもよい。
【0052】
リリースノズル153は、トップリングガイド151の円周方向に所定間隔を置いて複数個設けられており、加圧流体Fをトップリングガイド151の半径方向内方に且つトップリングガイド151の中心に向かって噴射するようになっている。これにより、ウエハWとメンブレン204との間に、加圧流体Fからなるリリースシャワーを噴射し、メンブレン204からウエハWを離脱させるウエハリリースを行うことができる。
【0053】
[リリースノズルへの流体供給部]
図6は、リリースノズル153に供給する加圧流体Fの流体回路図である。リリースノズル153は、流路331に接続されており、流路331は、流路311と流路321とに分岐し、流路311を介して液体供給源312に接続され、流路321を介して気体供給源322に接続されている。液体供給源312は、例えば、DIW等の純水、その他半
導体プロセスに影響を与えない液体を供給する供給源とすることができる。気体供給源322は、例えば、窒素ガス等の不活性ガス、その他半導体プロセスに影響を与えない気体を供給する供給源とすることができる。ここでは、加圧流体Fとして液体及び/又は気体を供給可能な構成を説明するが、液体のみを供給する構成、又は、気体のみを供給するような配管構成としてもよい。
【0054】
液体供給源312は、所定の圧力の又は所定の圧力に調整された液体を供給する。液体供給源312に接続された流路311には、バルブ313と、流量計314とが設けられている。バルブ313は、制御装置5により制御される仕切弁又は流量制御弁とすることができる。流量計314は、例えば、カルマン式又は差圧式とすることができる。液体供給源312は、所定の圧力に調整された液体をバルブ313に供給する構成である。液体供給源312は、例えば、工場のユーティリティライン等、工場のユーティリティライン等に接続された流路、及び/又は、工場のユーティリティライン等に接続された圧力レギュレータ、流量制御バルブ等(図示略)を含むことができる。なお、バルブ313を工場のユーティリティライン等に直接接続してもよい。バルブ313を開くことにより、液体供給源312から所定の圧力の液体を、流路311を介して流路331に供給することができる。
【0055】
気体供給源322は、所定の圧力の又は所定の圧力に調整された気体を供給する。気体供給源322に接続された流路321には、バルブ323と、逆止弁324とが設けられている。バルブ323は、制御装置5により制御される仕切弁又は流量制御弁とすることができる。気体供給源322は、所定の圧力に調整された気体をバルブ323に供給する構成である。気体供給源322は、例えば、工場のユーティリティライン等、工場のユーティリティライン等に接続された流路、及び/又は、工場のユーティリティライン等に接続された圧力レギュレータ、流量制御バルブ等(図示略)を含むことができる。なお、バルブ323を工場のユーティリティライン等に直接接続してもよい。バルブ323を開くことにより、気体供給源322から所定の圧力の気体を、流路321を介して流路331に供給することができる。
【0056】
上記構成によれば、バルブ323を閉じ、バルブ313のみを開いて、加圧流体Fとして液体のみをリリースノズル153から噴射することができる。また、上記構成によれば、バルブ313を閉じ、バルブ323のみを開いて、加圧流体Fとして気体のみをリリースノズル153から噴射することができる。また、上記構成によれば、加圧流体Fとして液体及び気体をリリースノズル153から噴射することができる。
【0057】
一例では、先ずバルブ313のみを開き、液体(例えばDIW)を流路331に充填した後、バルブ323のみを開いて、気体供給源322からの気体(例えば窒素ガス)によって、流路331に充填された液体(例えばDIW)をリリースノズル153から噴射することができる。この場合、加圧流体Fは、液体(例えばDIW)及び気体(例えば窒素ガス)の混合流体となる。気体供給源322から供給する気体(例えば窒素ガス)の圧力は、液体供給源312から供給する液体(例えばDIW)の圧力よりも高く設定することができる。例えば、液体(例えば、DIW)の圧力を0.2MPaとし、気体(例えば、窒素ガス)の圧力を0.4MPaとすることができる。液体と気体の間に圧力差がある場合、後述する理由により、バルブ313及びバルブ323を同時に開くことは好ましくない。従って、上記のように、液体のみ先に流路331に充填し、その後、液体の供給を止めて流路331に気体を供給することで、気体で液体を押し出して噴射する。このとき、流路に充填された液体がウエハリリース前に出尽くして気体のみがウエハに吹き付けられないように、メンブレン膨張開始時期を基準とした加圧流体の噴射開始時期を調整することにより、ウエハの乾燥を効果的に抑制することができる。
【0058】
従来、圧力の異なる気体供給源322及び液体供給源312にそれぞれ接続されたバルブ323、313を同時に開いて気体及び液体の混合流体をリリースノズルから噴射することが行われていたが、この場合、気体及び液体の配管合流部(流路311、321の合流部)で圧力差が発生して、液体が気体で止められ、リリースノズルから気体だけが噴射されてしまうことがあり、ウエハリリース時間によってはウエハが乾燥してしまうおそれがあった。そこで、本実施形態では、液体を先に流路331に充填した後、その後、液体の供給を止めて流路331に気体を供給することで、リリースノズルから気体だけが噴射されることを抑制ないし防止し、ウエハの乾燥を抑制することができる。また、メンブレン膨張開始時期から所定の遅延時間後に加圧流体の噴射を開始することにより、流路に充填された液体がウエハリリース前に出尽くして気体のみがウエハに吹き付けられることを防止し、ウエハの乾燥を効果的に抑制することができる。
【0059】
[リリースノズルの向き]
図7は、リリースノズルの向きを示すプッシャの平面図である。線D0は、比較例に係るリリースノズルの噴射方向を示す。線D1は、本実施形態に係るリリースノズル153の噴射方向を示す。同図に示すように、比較例に係るリリースノズルの噴射方向D0は、ウエハのホバーリングを防止するために、ウエハ中心に加圧流体が集中しないようにするものである。ホバーリングとは、気体、又は気体を含む加圧流体をウェハ中心に集中させると、ウェハWがメンブレン204から離れた後もプッシュステージ152に着座せず、浮いた状態となる現象である。このようなホバーリングは、ウエハリリース動作時に加圧流体をウエハに噴射する時間に起因すると考えられている。一方、本実施形態では、後述するように、メンブレンの2段階加圧(全体加圧+中心部加圧)及び/又は加圧流体の噴射開始時期の調整によって、より短い加圧流体の噴射時間でウエハをリリースさせることができる。このため、気体、又は気体を含む加圧流体を含む加圧流体をウエハ中心に向けたとしても、ウエハリリース時のホバーリングを防止することができる。本実施形態では、リリースノズル153の噴射方向をウエハWの中心に向けることにより、メンブレン-ウエハ間の接触箇所に加圧流体をより効率よく吹き付けることができ、ウエハリリース時間(ウエハリリースに要する時間)を更に低減する。なお、加圧流体として液体のみを噴射する場合には、ホバーリングの問題は発生しないので、リリースノズル153の噴射方向をウエハWの中心に向けることにより、ウエハリリース時間を低減することができる。
【0060】
[ウエハリリースの原理]
図8Aから
図8Dは、トップリングからのウエハのリリースを説明する説明図である。なお、これらの図では、図面の複雑化を避けるため、プッシュステージ152及び着座センサ154を省略して記載している。
【0061】
上述したように、研磨パッド10上でのウエハ処理工程終了後、ウエハWを吸着したトップリング31Aをプッシャ150へ移動させて、トップリング31Aのリテーナリング203と、プッシャ150のトップリングガイド151とを係合させる(
図8A)。
【0062】
その後、トップリング31AによるウエハWの真空吸着を止め、メンブレン204の全エリア205~208にガスを供給して加圧し、メンブレン204の全体を膨張させる(全体加圧ステップ、
図8B)。メンブレンの全体を加圧/膨張させるとは、メンブレンの全エリアが略同一の高さになるようにメンブレンの全エリアを均等に膨張させることを意味する。即ち、全体加圧ステップは、全体膨張ステップとも称することができる。このとき、メンブレン204とウエハWとの接触箇所の高さが、リリースノズル253の高さに概ね一致するようにする(リリースノズル253と略同一の高さ又はわずかに低い高さとする)。メンブレン204は中心側ほど膨らみ易く、外周側ほど膨らみ難いので、一例では、メンブレンの全エリアを均等に膨張させるために、最も中心側のエリア1の圧力を最も低くし、外周側のエリアほど順次圧力が高くなるように、各エリアの加圧を調整する。
メンブレン全体を加圧した後、メンブレン204の全エリア205~208を一旦大気に連通させ全エリア205~208内の圧力をリセットする。
【0063】
次に、メンブレン204の中心部を加圧する/膨張させるようにメンブレン204の各エリア205~208にガスを供給する(中心部加圧ステップ、
図8C)。これにより、メンブレン204とウエハWとの接触箇所(貼り付け面積)が、ウエハWの中心部に向かって縮小されるようにする。このとき、メンブレン204とウエハWとの接触箇所の高さは、全体加圧ステップのときと概ね変化せず、リリースノズル253の高さに概ね一致するようにする。一例では、最も中心側にある第1エリア205の圧力を、全体加圧ステップ時の第1エリア205の圧力の4倍以上とし、他のエリア206から208を全体加圧ステップ時の圧力より減少させる。これにより、第1エリア205の圧力を他のエリア206~208の圧力よりも高くして、第1エリア205を他のエリアよりも大きく膨張させる中心部加圧ステップを実施することができる。即ち、中心部加圧ステップは、中心部膨張ステップと称することもできる。なお、メンブレンの圧力室のエリアの数が多い場合などには、最も中心の第1エリアを含む複数のエリアを、他のエリアの圧力よりも高く加圧するようにしてもよい。なお、ここでは、中心部加圧ステップで第1エリア205を他のエリアより高い圧力で加圧する範囲(メンブレンの中心部)としたが、メンブレン204の中心部をメンブレン204の半径を基準に定義する場合、メンブレン204の中心(中心点)から、半径の50%以下の半径方向長さまでの範囲に含まれるエリアを、メンブレンの中心部として加圧するようにすることができる。より好ましくは、メンブレン204の中心から、半径の40%から50%の間の半径方向長さまでの範囲に含まれるエリアを、メンブレンの中心部として加圧するようにすることができる。例えば、
図3において、合計4つのエリア205、206、207、208のうち、第1エリア205、第2エリア206をメンブレンの中心部として他のエリアより高い圧力で加圧するようにすることができる。
【0064】
上述した通り、メンブレンは中心側ほど膨張し易いので、各エリアを同一の圧力で加圧した場合には、メンブレンの中心側のエリアが若干突出するように膨張するが、本実施形態の中心部加圧ステップは、これとは異なり、メンブレンの中心側のエリアを他のエリアの圧力よりも高くして、メンブレンの中心側を積極的に突出させるものである。これにより、メンブレン-ウエハ間の接触箇所の面積を十分に低減させ、ウエハリリースを促進する。
【0065】
また、少なくとも中心部加圧ステップの実行中、リリースノズル153より加圧流体Fをメンブレン-ウエハの接触箇所に向けて噴射する(
図8C)。これにより、ウエハWがメンブレン204からリリースされる(
図8D)。メンブレン204からリリースされたウエハWは、プッシュステージ152上に落下し、プッシュステージ152上の1又は複数の着座センサ154(
図4、
図5参照)により検出される。着座センサ154が、ウエハWを検出することにより、ウエハWのリリースを検出する。例えば、
図4及び
図5に示すように、3個の着座センサ154が設けられる場合、すべての着座センサ154がウエハを検出したときに、ウエハリリースを検出するようにしてもよい。なお、
図8A~
図8Dでは、中心部加圧ステップ(
図8C)において加圧流体の噴射を開始しているが、後述するように、全体加圧ステップ開始時(
図8B)から所定の遅延時間後に全体加圧ステップの途中で、加圧流体の噴射を開始してもよい。
【0066】
1回の中心部加圧ステップでウエハリリースを検出できない場合には、ウエハリリースを検知するまで、メンブレン204の全エリアの圧力をリセットするリセットステップを挟んで中心部加圧ステップを実施することを、繰り返してもよい。なお、所定回数(1以上)の中心部加圧ステップの間にウエハリリースを検知しない場合には、メンブレン204の全エリアをリセットして、再度、全体加圧ステップから制御サイクル(
図8A~C)
を繰り返してもよい。制御サイクルの繰り返し回数が所定の上限回数に達した場合に、アラームを発報し、ウエハリリース処理を終了(エラー処理)してもよい。
【0067】
[ウエハリリースの制御サイクル]
図9Aは、比較例に係るウエハリリース処理シーケンスの1制御サイクルを示すタイムチャートである。
図9Bは、本実施形態に係るウエハリリース処理シーケンスの1制御サイクルを示すタイムチャートである。本明細書において、加圧流体Fの噴射開始時期は、メンブレン204の膨張開始時(リリース処理開始、
図9A、Bのt=0)を基準とした加圧流体Fの噴射開始時期(=噴射遅延時間)とする。
【0068】
比較例(
図9A)では、リリースノズル153の向きを
図7のD1の向きとし、加圧流体FとしてDIW及び窒素ガスを供給し(DIW及び窒素ガスのバルブを同時に開放)、加圧流体Fの噴射開始時期を0.5秒とし、メンブレン204を全体加圧ステップのみで膨張させた。
【0069】
本実施形態(
図9B)では、リリースノズル153の向きを
図7のD1の向きとし、加圧流体FとしてDIWのみを供給し、加圧流体Fの噴射開始時期を0.5秒とし、メンブレン204を全体加圧ステップ(All)及び中心部加圧ステップ(Cent.)で膨張させた。なお、ウエハリリース時間の短縮は、主に、2段階加圧(全体加圧+中心部加圧)によるものと考えられるので、本実施形態(
図9B)において、加圧流体FとしてDIWと窒素ガスの混合流体を噴射する場合、並びに、加圧流体Fとして窒素ガスのみ噴射する場合も、加圧流体FとしてDIWのみ噴射する場合と同様の結果になることが予想される。
【0070】
図9Aに示すように、比較例に係るウエハリリース処理のシーケンスの1制御サイクルは、メンブレン204の全体加圧ステップ(All)と、加圧流体F(DIW、窒素ガス)を噴射するリリースシャワーステップ(SW)を含む。ウエハリリースを検出するまで、この1制御サイクルを繰り返し実行する。ウエハリリースを検出した場合には、ウエハリリース処理を終了し、メンブレン204の全エリアを大気圧に開放してリセットし、加圧流体F(DIW、窒素ガス)の噴射を停止する(同図中、t=5.1秒)。
【0071】
図9Aの例では、時刻t=0でメンブレン204の膨張(全体加圧ステップ)を開始し(同図中、メンブレンの曲線でOFFからON)、噴射開始時期t=td=0.5秒でリリースノズル153からの加圧流体Fの噴射を開始する(同図中、DIW、N2の曲線でOFFからON)。着座センサ154によりウエハのリリースが検出されると(同図中、ウエハ検出センサの曲線でOFFからON)、メンブレン204の加圧を終了し(同図中、メンブレンの曲線でONからOFF)、メンブレン204の全エリアが大気圧に開放される(reset)と共に、加圧流体Fの噴射が停止される(同図中、DIW、N2の曲線でONからOFF)。
図9Aの例では、1回目の制御サイクル中にウエハリリースを検出し、ウエハリリース時間は、約5.1秒である。ウエハリリース時間は、ウエハのリリースに要する時間を示し、メンブレン204の加圧の開始時点からウエハリリースが検出されるまでの時間と定義する。
【0072】
図9Bに示すように、本実施形態に係るウエハリリース処理のシーケンスの1制御サイクルは、メンブレン204の全体加圧ステップ(All)と、所定回数(1又は複数回)のメンブレン204の中心部加圧ステップ(Cent.)とを含むと共に、加圧流体F(DIW)を噴射するリリースシャワーステップ(SW)を含む。ウエハリリースを検出するまで、この1制御サイクルを繰り返し実行する。ウエハリリースを検出した場合には、ウエハリリース処理を終了し、メンブレン204の全エリアを大気圧に開放してリセットし(reset)、加圧流体F(DIW)の噴射を停止する(同図中、t=1.7秒)。
【0073】
図9Bの例では、時刻t=0でメンブレン204の全体加圧ステップ(All)を開始し(同図中、メンブレンの曲線でOFFからON)、噴射開始時期t=td=0.5秒でリリースノズル153からの加圧流体Fの噴射を開始する(同図中、DIWの曲線でOFFからON)。メンブレン204の全体加圧ステップ(All)の終了後、メンブレン204の全エリアを大気開放してメンブレン204の全エリアの圧力を大気圧にリセットするリセットステップ(reset)を実施する。その後、メンブレン204の中心部加圧ステップ(Cent.)を開始する。このとき、メンブレン204の中心部(第1エリア205)が加圧されつつ、リリースノズル153からメンブレン-ウエハ間の接触箇所に加圧流体Fが噴射され、ウエハWがメンブレン204からリリースされる(同図中、ウエハ検出センサの曲線でOFFからON)。ウエハのリリースは、着座センサ154により検出される。着座センサ154によりウエハのリリースが検出されると、メンブレン204の中心部加圧ステップ(Cent.)を終了し(同図中、メンブレンの曲線(実線)でONからOFF)、メンブレン204の全エリアが大気圧に開放されると共に、加圧流体Fの噴射が停止される(同図中、DIWの曲線(実線)でONからOFF)。
図9Bの例では、1回目の制御サイクル中にウエハリリースを検出し、ウエハリリース時間は、1.7秒程度である。なお、同図中、DIWの曲線、メンブレンの曲線の破線部分は、ウエハリリースが検出されない場合の制御を示す。
【0074】
[ウエハリリースのフローチャート]
図10は、本実施形態に係るウエハリリース処理のフローチャートである。
ステップS10では、研磨動作完了後に、ウエハを保持するトップリング31Aが受け渡し位置(プッシャ150上方)に移動する。
【0075】
ステップS20では、プッシャ150を上昇させてプッシャ150をトップリング31Aに係合させ、ウエハリリース処理開始の準備が完了する。
【0076】
ステップS30では、
図9Bを参照して上述したウエハリリース処理シーケンスの1制御サイクルを開始し、実行する。即ち、
図9Bに示すメンブレン204に対する全体加圧ステップ、所定回数の中心部加圧ステップを実施すると共に、メンブレン-ウエハ間の接触箇所に対する加圧流体Fを噴射するリリースシャワーステップを実施する。
【0077】
ステップS40では、所定の時間ごとにウエハがリリースされたか否かを判定する。ウエハのリリースは、例えば、複数の着座センサ154の全てがウエハを検出したか否かによって行う。ウエハのリリースを検出した場合には、加圧流体Fの噴射を終了する(ステップS50)と共に、メンブレン204の加圧を停止してメンブレン204の全エリアを大気圧にリセットして、ウエハリリース処理を終了する(ステップS60)。その後、プッシャ150が下降してトップリング31Aから離脱し、洗浄位置(洗浄部4に受け渡すための位置)に移動する(ステップS70)。
【0078】
ステップS40においてウエハのリリースが検出されない場合には、ステップS80に移行する。ステップS80では、ウエハリリース処理シーケンスの1制御サイクルが終了したか否かを判定する。ステップS80において1制御サイクルが終了していないと判定した場合には、ステップS30に戻り現在継続中の1制御サイクルを継続する。一方、ステップS80において1制御サイクルが終了したと判定した場合には、ステップS90に移行する。
【0079】
ステップS90では、1制御サイクルの繰り返し回数が上限回数に達したか否かを判定する。1制御サイクルの繰り返し回数が上限回数に達していない判定する場合には、ステップS110に移行する。ステップS110では、メンブレン204の全エリアを大気圧に開放する全エリアフリー設定(
図9Bのリセットステップに相当)を実施する。その後、ステップS30に移行し、次の1制御サイクルを開始し、実行する。
【0080】
ステップS90において、1制御サイクルの繰り返し回数が上限回数に達したと判定する場合には、アラームを発報し、エラー処理を行う(ステップS100)。
【0081】
[リリースシャワー噴射開始時期によるウエハリリース時間の違い]
図11は、加圧流体の噴射開始時期によるウエハリリース時間の違いを測定した測定例である。同図中、最上段の各数値(0.0、0.2、0.5)は、リリースシャワー(加圧流体)の噴射開始時期であり、メンブレン204の全体加圧ステップの開始時期から加圧流体Fの噴射開始時期までの遅延時間に一致する。この測定例では、全10回測定を実施し(N=10)、MAXは、全10回の測定値のうちの最大値を示し、MINは、全10回の測定値のうちの最小値を示し、RANGEはMAXとMINの差、即ち測定値のばらつきの範囲を示す。AVERAGEは、全10回の測定値の平均値を示す。各測定では、
図9Bに示すメンブレンの2段階加圧(全体加圧、中心部加圧)とし、リリースノズルの向きを
図7のD0とし、加圧流体の噴射開始時期(遅延時間)td1を0.0秒、0.2秒、0.5秒に変化させて、ウエハリリース時間を測定した。また、何れの場合も、加圧流体Fは、DIW及び窒素ガスの混合流体とした(DIWを窒素ガスで押し出して噴射した)。
【0082】
図11に示す測定結果から、ウエハリリース時間の平均AVERAGEは、リリースシャワーの噴射開始時期(遅延時間)が0.0秒の場合に、最も短いが、測定値のばらつき(RANGE)が最も大きくウエハリリース処理の安定性(再現性)が低いことが分かる。そのため、ウエハリリース時間の安定性を考慮し、本実施形態では、遅延時間=0.5秒を採用する。
【0083】
また、液体を気体で押し出して加圧流体Fを噴射する場合、遅延時間0.0秒の場合には、ウエハがリリースされる前に流路に充填されたDIWがリリースノズルから出尽くして、後は窒素ガスのみがウエハに吹き付けられることになり、ウエハが乾燥する可能性がある。一方、遅延時間0.5秒を採用した場合には、窒素ガスにより押し出されるDIWの勢いを有効かつ効率的にウエハリリースに作用させることができ、DIW噴射期間内にウエハをリリースさせることができる。また、DIW噴射期間内にウエハリリースを完了できるため、ウエハの乾燥を抑制してディフェクトの発生を抑制できる。
【0084】
[リリースノズルの向きによるウエハリリース時間の違い]
図12は、リリースノズルの向きによるウエハリリース時間の違いを測定した測定例である。同図において、NozzleD1は、
図7において本実施形態として示した線D1で示すリリースノズルの向きを採用した例である。NozzleD0は、
図7において比較例として示した線D0で示すリリースノズルの向きを採用した例である。但し、両者は、リリースノズルの向きのみ異なり、他の条件は同一とする。即ち、NozzleD1及びNozzleD0の何れにおいても、
図9Bに示すメンブレンの2段階加圧(全体加圧、中心部加圧)とし、加圧流体の噴射開始時期td1=0.5秒とし、加圧流体Fは、DIW及び窒素ガスの混合流体とした(DIWを窒素ガスで押し出して噴射した)。この測定例でも、
図11の測定例と同様に、全10回測定を実施し(N=10)、MAX、MIN、RANGE、AVERAGEの意味も、
図11と同様である。
【0085】
図12に示す測定結果から、リリースノズルの向きをD1(リリースシャワー/加圧流体がウエハの中心を向く向き)とすることで、向きをD0(リリースシャワー/加圧流体がウエハの中心に集中しない向き)とする場合よりも、ウエハリリース時間を大幅に短縮でき、ウエハリリース時間のばらつきも抑制できることが分かる。
【0086】
以上説明した実施形態によれば、メンブレンの中心部を加圧してメンブレン-ウエハ間の接触箇所の面積が小さくされた状態で、加圧流体をメンブレン-ウエハ間の接触箇所に吹き付けるので、ウエハリリース時間を短縮することができる。ウエハリリース時間を短縮できるため、加圧流体によってウエハ面が乾燥してディフェクトが生じることを抑制することができる。
【0087】
また、メンブレン中心部の加圧に先立って、メンブレン全体を加圧するためウエハに与えるストレスを低減することができる。
【0088】
上記実施形態において、加圧流体として液体(例えば、DIW)のみを噴射する場合には、ウエハ面の乾燥及びディフェクトの発生を効果的に抑制/防止することができる。なお、加圧流体として液体(例えば、DIW)のみを噴射する場合には、加圧流体の圧力が低くなり、ウエハリリース時間が長くなるという懸念があるが、上述したメンブレンの全体加圧及び中心部加圧の組み合わせにより、メンブレンを速やかに膨張させることができ、また、メンブレン-ウエハ間の接触面積を小さくした状態で液体を噴射することで、ウエハリリース時間を短縮することができる。従って、ウエハリリース時間の増大の問題を回避しつつ、加圧流体として液体のみを噴射して、ウエハ面の乾燥を効果的に抑制/防止することができる。
【0089】
上記実施形態において、液体(例えば、DIW)をリリースノズルの流路に充填し、気体(例えば、窒素ガス)で液体をリリースノズルから押し出して噴射する場合には、ウエハがリリースされる前に充填されていた液体が出尽くして気体のみが噴射される虞があるが、メンブレンの膨張開始時から適切な遅延時間後にリリースノズルからの噴射(気体による液体の噴射)を開始することにより、充填した液体がなくなる前に液体の噴射期間中にウエハをリリースさせることができる。これにより、ウエハの乾燥を抑制してディフェクトの発生を抑制できる。
【0090】
また、上述したメンブレンの全体加圧及び中心部加圧の組み合わせ、並びに加圧流体噴射の遅延時間により、ウエハリリース時間を再現性良く短縮することができるため、加圧流体として気体のみを噴射する場合でも、ウエハ面が乾燥してディフェクトが生じることを抑制することができる。
【0091】
上記実施形態によれば、リリースノズルの向きをウエハ中心に向けるため、メンブレン-ウエハ間の接触箇所に加圧流体を集中させることができ、ウエハリリース時間を更に短縮することができる。
【0092】
上記実施形態によれば、リリースシャワー(加圧流体)の噴射開始時期/遅延時間を適切な値とすることにより、ウエハリリース処理の安定性/再現性の低下を回避しつつ、ウエハリリース時間を短縮することができる。
【0093】
上記実施形態によれば、リリースノズルが液体供給源と気体供給源とに切り替え可能に接続されているので、ユーザの要求に応じて、液体のみ、気体のみ、液体+気体を加圧流体として噴射することができる。
【0094】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、基板受渡し装置がプッシャである場合を例に挙げて説明したが、基板受渡し装置は、トップリングに係合する環状部材からなるリテーナリングステーションを基板受渡し装置として使用してもよい。リテーナリングステーションは、
図5に示すプッシャ150のトップリングガイド151の環状部分に概ね相当する形状を有する
。プッシャ150のトップリングガイド151の場合と同様に、リリースシャワーノズル153は、リテーナリングステーションの内周面に設けることができる。リテーナリングステーションを使用する場合、ウエハは、トランスポータが有する搬送ステージ又はハンドにより受け取られるようにすることができる。
【0095】
(2)上記実施形態に係るウエハリリース処理の方法は、ウエハ及び研磨装置に限定されず、メンブレンの面に任意の基板を保持する機構を有する任意の基板処理装置に適用することが可能である。
【0096】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
[1]一形態によれば、 研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、 弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が、同心状に配置された複数のエリアを有し、前記圧力室内の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する基板保持部材と、 前記基板保持部材の前記圧力室に供給するガスの圧力を調節する圧力レギュレータと、 加圧流体を噴射可能な1又は複数のリリースノズルと、 前記圧力レギュレータを制御して、前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧した後に、前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧すると共に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するように前記1又は複数のリリースノズルを制御することにより、前記基板を前記弾性膜からリリースさせる基板リリース処理を実行する制御装置と、を備える研磨装置が提供される。
前記基板保持部材は、前記基板保持面で基板を保持する。
加圧流体の噴射開始時期は、弾性膜全体の加圧開始時又は加圧中とすることができる。
「圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリア」は、圧力室(弾性膜、基板保持面)の中心から、圧力室の半径の50%以下の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリア(但し、圧力室の中心にあるエリアを含む)とすることができる。より好ましくは、圧力室の中心から、圧力室の半径の40%から50%の間の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリア(但し、圧力室の中心にあるエリアを含む)とすることができる。例えば、半径rの圧力室(弾性膜、基板保持面)であれば、中心から0.5r以下(又は、例えば0.45r以下)の半径を有する円形の範囲に含まれる1又は複数のエリアを圧力室(弾性膜、基板保持面)中心部として加圧する。なお、加圧する1又は複数のエリアは、連続するエリアであっても、離散的なエリアであってもよい。
【0097】
この形態によれば、弾性膜の中心部を加圧して弾性膜-基板間の接触箇所の面積が小さくされた状態で、加圧流体が弾性膜-基板間の接触箇所に噴射されるので、基板リリース時間を短縮することができる。基板リリース時間を短縮できるため、加圧流体によって基板面が乾燥してディフェクトが生じることを抑制することができる。また、弾性膜中心部の膨張に先立って、弾性膜全体を均等に膨張させるため基板に与えるストレスを低減することができる。
【0098】
この形態によれば、膨張し易いメンブレン(圧力室)の中心側のエリアを、膨張し難い外側のエリアよりも高い圧力に加圧することにより、メンブレンの中心部を積極的に突出させて、メンブレン-ウエハ間の接触箇所の面積を効果的に低減することができる。なお、エリア数が多い場合、中心エリアを含む複数のエリアを他のエリアより加圧することで、メンブレンの中心部の突出の程度を調整し、ウエハのストレスを低減可能である。
【0099】
[2]一形態によれば、 前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出する検出装置を更に備え、 前記制御装置は、前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップを実施した後に、前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップを所定回数実施するように構成さ
れており、前記検出装置が前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出した時点で、前記基板リリース処理を終了する。検出装置は、例えば、着座センサ等の接触センサ、メンブレン内の圧力を監視して基板リリースを検知する構成とすることができる。
【0100】
この形態によれば、1回の中心部加圧ステップで基板がリリースされない場合に、弾性膜の加圧をリセット(弾性膜の圧力室を大気開放)した後に中心部加圧ステップを行う処理を繰り返すことにより基板をリリースすることができる。
【0101】
[3]一形態によれば、 前記制御装置は、前記全体加圧ステップの後に前記中心部加圧ステップを前記所定回数実施することを1制御サイクルとして、前記1制御サイクルを所定の上限回数になるまで繰り返し実施するように構成されており、前記検出装置により前記基板の前記弾性膜からのリリースを検出した時点で、前記基板リリース処理を終了する。
【0102】
この形態によれば、1回の制御サイクルで基板がリリースされない場合に、制御サイクルを繰り返すことにより、基板をリリースすることができる。
【0103】
[4]一形態によれば、 前記制御装置は、前記弾性膜全体の加圧を開始した時点の後、所定の遅延時間後であって前記弾性膜全体を加圧している間に、前記加圧流体の噴射を開始するように前記リリースノズルを制御する。
【0104】
この形態によれば、弾性膜の加圧を開始した後、適切な遅延時間を設けて加圧流体の噴射を開始することにより、基板リリース時間のばらつきを抑止することができ、基板リリース処理の安定性(再現性)を向上させることができる。また、液体をリリースノズルの流路に充填し、気体で液体をリリースノズルから押し出して噴射する場合には、メンブレンの膨張開始時から適切な遅延時間後にリリースノズルからの噴射(気体による液体の噴射)を開始する。このため、ウエハがリリースされる前に充填されていた液体が出尽くして気体のみが噴射されることがなく、液体の噴射期間中にウエハをリリースさせることができる。これにより、ウエハの乾燥を抑制してディフェクトの発生を抑制できる。
【0105】
[5]一形態によれば、 前記制御装置は、前記圧力室の中心にあるエリアが他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで、前記弾性膜の中心部を加圧する。
【0106】
この形態によれば、圧力室中心の単一エリアのみ他のエリアより高い圧力になるように加圧するため、弾性膜-基板間の接触面積を効果的に低減することができ、基板リリース時間をより短縮することができる。
【0107】
[6]一形態によれば、 前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアは、前記圧力室の中心から、前記圧力室の半径の50%以下の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリアである。
【0108】
この形態によれば、弾性膜-基板間の接触面積の低減と、基板へのストレスの抑制とを効果的にバランスさせることができる。
【0109】
[7]一形態によれば、 前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアは、前記圧力室の中心から、前記圧力室の半径の40%から50の間の半径方向長さまでの範囲に含まれる1又は複数のエリアである。
【0110】
この形態によれば、弾性膜-基板間の接触面積の低減と、基板へのストレスの抑制とを
さらに効果的にバランスさせることができる。
【0111】
[8]一形態によれば、 前記1又は複数のリリースノズルの噴射方向は、前記基板の中心を向いている。
【0112】
この形態によれば、中心部加圧により弾性膜/基板の中心に縮小した弾性膜-基板の接触箇所に加圧流体を集中させることができるので、基板リリース時間をより短縮することができる。
【0113】
[9]一形態によれば、前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、液体である。前記液体として、例えば、DIW等の純水、その他半導体製造プロセスに影響を与えない液体を使用することができる。
【0114】
この形態によれば、弾性膜-基板の接触箇所に当てる加圧流体として液体を用いることにより、基板面の乾燥、乾燥によるディフェクトをより効果的に抑制することができる。
【0115】
[10]一実施形態によれば、前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、気体である。前記気体として、例えば、窒素ガス等の不活性ガス、その他半導体製造プロセスに影響を与えない気体を使用することができる。
【0116】
弾性膜の中心部を加圧して加圧流体を当てることにより基板リリース時間を短縮できるため、加圧流体として気体を用いても、基板面の乾燥、乾燥によるディフェクトを抑制することができる。
【0117】
[11]一実施形態によれば、 前記リリースノズルから噴射される前記加圧流体は、液体及び気体である。
【0118】
弾性膜の中心部を加圧して加圧流体を当てることにより基板リリース時間を短縮できるため、加圧流体として液体及び気体を用いても、基板面の乾燥、乾燥によるディフェクトを抑制することができる。
【0119】
[12]一実施形態によれば、 前記リリースノズルは、液体供給源及び気体供給源に接続されており、前記加圧流体として液体及び/又は気体を噴射可能である。
【0120】
この形態によれば、ユーザの所望に応じて加圧流体として、液体、気体、又は、液体及び気体の混合流体を選択することができる。
【0121】
[13]一実施形態によれば、 弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材を用いて基板を研磨する方法であって、 前記圧力室内の圧力により前記基板を研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行うステップと、 研磨後の前記基板を前記基板保持部材の前記基板保持面上に保持するステップと、 前記基板を前記基板保持部材から基板受渡し装置に受け渡す際に、前記基板を前記弾性膜からリリースするステップと、を含み、 前記受け渡すステップは、 前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップと、 前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップと、 少なくとも前記弾性膜の中心部を加圧する間に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するステップとを含む、を含む研磨方法が提供される。
【0122】
この形態によれば、[1]に関して上述した作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0123】
[14]一実施形態によれば、 弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材を用いて基板を研磨する研磨装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶する不揮発性の記憶媒体であって、 前記圧力室内の圧力により前記基板を研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行うステップと、 研磨後の前記基板を前記基板保持部材の前記基板保持面上に保持するステップと、 前記基板を前記基板保持部材から基板受渡し装置に受け渡す際に、前記基板を前記弾性膜からリリースするステップと、を含み、 前記リリースするステップは、 前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップと、 前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップと、 少なくとも前記弾性膜の中心部を加圧する間に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するステップとを含む、 プログラムを記憶する不揮発性の記憶媒体が提供される。
【0124】
この形態によれば、[1]に関して上述した作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0125】
一形態によれば、弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が、同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材と、 前記基板保持部材の前記圧力室に供給するガスの圧力を調節する圧力レギュレータと、 加圧流体を噴射可能な1又は複数のリリースノズルと、 前記圧力レギュレータを制御して、前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧した後に、前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧すると共に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するように前記1又は複数のリリースノズルを制御することにより、前記基板を前記弾性膜からリリースさせる基板リリース処理を実行する制御装置と、を備える基板処理装置が提供される。また、[2]から[12]で上述した特徴を含むことができる。
【0126】
一形態によれば、 弾性膜で構成された基板保持面及び圧力室を有し、前記圧力室が同心状に配置された複数のエリアを有する基板保持部材を用いて基板を処理する方法であって、 処理後の前記基板を前記基板保持部材の前記基板保持面上に保持するステップと、
前記基板を前記基板保持部材から基板受渡し装置に受け渡す際に、前記基板を前記弾性膜からリリースするステップと、を含み、 前記受け渡すステップは、 前記圧力室の全エリアを加圧することで前記弾性膜全体を加圧する全体加圧ステップと、 前記圧力室の中心にあるエリアを含む1又は複数の中心側のエリアの圧力が他のエリアの圧力より高くなるように前記圧力室を加圧することで前記弾性膜の中心部を加圧する中心部加圧ステップと、 少なくとも前記弾性膜の中心部を加圧する間に、前記加圧流体を前記弾性膜と前記基板との接触箇所に噴射するステップとを含む、を含む基板処理方法が提供される。また、[2]から[12]で上述した特徴を含むことができる。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 ハウジング
2 ロード/アンロード部
3 研磨部
3A,3B,3C,3D 研磨ユニット
4 洗浄部
5 制御装置
6 第1リニアトランスポータ
7 第2リニアトランスポータ
10 研磨パッド
10a 研磨面
11 リフタ
12 スイングトランスポータ
20 フロントロード部
21 走行機構
22 搬送ロボット
30A,30B,30C,30D 研磨テーブル
31A,31B,31C,31D トップリング(基板保持部)
32A,32B,32C,32D 研磨液供給ノズル
33A,33B,33C,33D ドレッサ
34A,34B,34C,34D アトマイザ
30Aa テーブル軸
51 記憶部
100 基板処理装置
102 研磨液供給ノズル
111 トップリングシャフト
112 回転筒
113 タイミングプーリ
114 トップリング用回転モータ
115 タイミングベルト
116 タイミングプーリ
117 トップリングヘッドシャフト
124 上下動機構
125 ロータリージョイント
126 軸受
128 ブリッジ
129 支持台
130 支柱
131,231 真空源
132 ボールねじ
132a ねじ軸
132b ナット
138 サーボモータ
140 エンコーダ
150 基板受渡し装置(プッシャ)
151 トップリングガイド
152 プッシュステージ
153 リリースノズル
154 着座センサ
202 トップリング本体
203 リテーナリング
204 弾性膜(メンブレン)
204a 隔壁
205 第1エリア
206 第2エリア
207 第3エリア
208 第4エリア
209 リテーナリング加圧室
211、212、213、214、215、221、223、224、226 流路
225 ロータリジョイント
230 圧力調整部
235 気水分離槽
311、321、331 流路
313、323 バルブ
314 流量計
324 逆止弁
312 液体供給源
322 気体供給源