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特開2023-174397炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒
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  • 特開-炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174397
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/22 20060101AFI20231130BHJP
   C07C 209/48 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 217/56 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 211/16 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 211/03 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 211/19 20060101ALI20231130BHJP
   C07C 211/09 20060101ALI20231130BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20231130BHJP
   C01B 32/914 20170101ALI20231130BHJP
   C07D 317/58 20060101ALI20231130BHJP
   C07D 307/52 20060101ALI20231130BHJP
   C07D 213/38 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B01J27/22 Z
C07C209/48
C07C211/27
C07C213/02
C07C217/56
C07C211/16
C07C211/03
C07C211/19
C07C211/09
B01J35/02 H
C01B32/914
C07D317/58
C07D307/52
C07D213/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087247
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】水垣 共雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 渉
(72)【発明者】
【氏名】清飛羅 大樹
【テーマコード(参考)】
4C055
4G146
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA27
4C055FA15
4C055FA34
4C055FA38
4G146MA06
4G146MB02
4G146MB07
4G146MB14
4G146MB20A
4G146MB20B
4G146NA12
4G146NA13
4G146NB02
4G146NB15
4G146NB18
4G146PA02
4G146PA06
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BA04B
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA17
4G169BA22A
4G169BB05B
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BB16B
4G169BC10B
4G169BC16B
4G169BC28A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD02A
4G169BD08A
4G169BD09A
4G169BD10A
4G169CB02
4G169CB62
4G169CB70
4G169CB77
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EC25
4G169EC27
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA18
4H006BA55
4H006BB14
(57)【要約】
【課題】本発明は、ニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ大気条件下において安定である炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒を提供すること。
【解決手段】化ニッケルナノ粒子と、担体とを含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、複合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ニッケルナノ粒子と、担体とを含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、複合体。
【請求項2】
前記担体が、ポリマー、カルコゲン化合物、金属化合物、金属及び固体炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
炭化ニッケルナノ粒子を含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、還元触媒。
【請求項4】
さらに、担体を含み、前記炭化ニッケルナノ粒子と、前記担体が複合体を構成する、請求項3に記載の還元触媒。
【請求項5】
前記担体が、ポリマー、カルコゲン化合物、金属化合物、金属及び固体炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の還元触媒。
【請求項6】
有機化合物を、請求項3又は4に記載の還元触媒を用いて水素化し、水素化有機化合物を得る、水素化有機化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物が、ニトリル化合物、アルデヒド化合物、又は不飽和化合物である、請求項6に記載の水素化有機化合物の製造方法。
【請求項8】
前記水素化有機化合物が、第一級アミン化合物、アルコール化合物、又は飽和化合物である、請求項6に記載の水素化有機化合物の製造方法。
【請求項9】
前記有機化合物がニトリル化合物であり、前記水素化有機化合物が第一級アミン化合物であり、水素雰囲気下、かつアンモニア共存下において、水素圧8MPa以下で、水素化を行う、請求項6に記載の水素化有機化合物の製造方法。
【請求項10】
前記還元触媒が、請求項4に記載の還元触媒である、請求項6に記載の水素化有機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトやニッケルを触媒として使用する場合、コバルトやニッケルをスポンジ状にした触媒を使用することが知られている。このようなスポンジ状の触媒はラネー触媒としても知られている(特許文献1、2)。
【0003】
このスポンジ状の触媒(以下、「スポンジ触媒」という)は、コバルトやニッケルとアルミニウムからなる合金(ラネー合金ともいう)から、水酸化ナトリウム水溶液でアルミニウムのみを溶解除去したものである。
【0004】
このようなスポンジ触媒は、スポンジ状金属そのものを触媒として使用することもできるが、触媒の性能向上を目的として更にマンガン、銅、鉄、クロム及びモリブデン等の他の元素を含有させることも知られている(特許文献2)。
【0005】
具体的に、スポンジ触媒を使用する反応としては、二重結合又は三重結合を有する不飽和化合物、アルデヒド化合物、カルボニル化合物、ニトリル化合物、ニトロ化合物等の水素化、芳香族、ヘテロ環の水素化、脱ハロゲン、ラクタム精製、水素化分解、還元アミノ化等の種々の有機化合物の水素化が知られている。
【0006】
上記反応のうち、還元アミノ化、すなわち、カルボニル化合物を原料とするアミン化合物の生成においては、反応物であるカルボニル化合物と可燃性アンモニアガスを高圧条件下で触媒と反応させる必要がある(特許文献1、2、非特許文献1)。
このようなアンモニアガスは一定の空気と混合したときに爆発の危険があるため、取り扱いに注意が必要である。
【0007】
また、このような元素を使用したスポンジ触媒は大気中において非常に不安定で、容易に酸化されて失活し、さらに発火の危険性も知られている(特許文献3)。そのため、触媒の調製及び溶媒の置換、及び反応のすべての過程において嫌気雰囲気にて行う必要があり、保管にあたっても大気に触れることは厳に避け、水又はアルコール中で保存する必要があり、産業的にはコバルト等の触媒活性を有する金属と、その金属が溶解しない酸又はアルカリで溶解除去される金属との合金の状態で保存される。
【0008】
また、スポンジ触媒以外の非貴金属触媒においても、触媒活性を有する金属の種類によっては、大気条件下で不安定であるため、担体に担持された当該金属の前駆体を高温かつ高水素圧下で予備還元し、大気中に暴露せずに触媒反応に用いる必要があった。
【0009】
このような状況下、大気条件下において安定であるニトリル化合物の水素化用のリン化金属触媒も開発されていた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7-188126号公報
【特許文献2】特開2002-179626号公報
【特許文献3】特表平10-511697号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“MOF-derived cobalt nanoparticles catalyze a general synthesis of amines”, R.V. Jagadeesh et al., Science 2017, Vol 358, Issue 6361. pp. 326-332
【非特許文献2】“A cobalt phosphide catalyst for the hydrogenation of nitriles” , T. Mitsudome, M. Sheng, A. Nakata, J. Yamasaki, T. Mizugaki and K. Jitsukawa, Chemical Science, 2020, 11, 6682-6689
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、大気条件下において安定であり、還元前処理が不要である炭化ニッケル粒子を含む複合体及び還元触媒は知られていなかった。
【0013】
本発明は、ニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ大気条件下において安定である炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ニッケルを炭化し、ナノ粒子化した炭化ニッケルナノ粒子を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]炭化ニッケルナノ粒子と、担体とを含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、複合体;
[2]前記担体が、ポリマー、カルコゲン化合物、金属化合物、金属及び固体炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の複合体;
[3]炭化ニッケルナノ粒子を含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、還元触媒;
[4]さらに、担体を含み、前記炭化ニッケルナノ粒子と、前記担体が複合体を構成する、[3]に記載の還元触媒;
[5]前記担体が、ポリマー、カルコゲン化合物、金属化合物、金属及び固体炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[4]に記載の還元触媒;
[6]有機化合物を、[3]又は[4]に記載の還元触媒を用いて水素化し、水素化有機化合物を得る、水素化有機化合物の製造方法;
[7]前記有機化合物が、ニトリル化合物、アルデヒド化合物、又は不飽和化合物である、[6]に記載の水素化有機化合物の製造方法;
[8]前記水素化有機化合物が、第一級アミン化合物、アルコール化合物、又は飽和化合物である、[6]に記載の水素化有機化合物の製造方法;
[9]前記有機化合物がニトリル化合物であり、前記水素化有機化合物が第一級アミン化合物であり、水素雰囲気下、かつアンモニア共存下において、水素圧8MPa以下で、水素化を行う、[6]に記載の水素化有機化合物の製造方法;
[10]前記還元触媒が、[4]に記載の還元触媒である、[6]に記載の水素化有機化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ大気条件下において安定である炭化ニッケルナノ粒子を含む複合体及び還元触媒を提供できる。
本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体並びに還元触媒は大気条件下において安定であるため、安全性及び操作性に優れる。
【0017】
また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体は、還元触媒(例えば、水素化触媒等)として使用する場合、ハーバー・ボッシュ法等の従来技術に比べて緩やかな条件で、還元反応(例えば、水素化反応)を行い、目的の化合物を製造できる。例えば、本発明の炭化ニッケルナノ粒子を、水素化触媒として用いた場合、1気圧の水素下で、目的の化合物(例えば、第一級アミン化合物)を製造できる。
【0018】
さらに、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体は、還元触媒(例えば、水素化触媒等)として使用する場合、低原子価の状態のまま、大気条件下において安定であるため、使用する前に高温での水素による還元処理(還元前処理)が不要であり、コスト面で工業的に有利である。
【0019】
また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体は、還元触媒(例えば、水素化触媒等)として使用した場合にも失活せず、耐久性に優れ、さらに、使用した後の回収も容易であるため、リサイクル性にも優れる。
【0020】
さらに、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体は、還元触媒(例えば、水素化触媒等)として使用する場合、多種の基質を還元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子の粉末X線回折測定の測定結果を表し、下部にNi3Cに相当する結晶面のピーク位置を示す。図1(b)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察の画像を示す。図1(c)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)観察の画像を示す。図1(d)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子の制限視野電子回折(Selected area electron diffraction:SAED)パターンの測定結果を表す。図1(e)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子のNi原子のK吸収端のXANES測定の測定結果を表す。図1(f)は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子のXPSによる測定の測定結果を表す。
図2図2は、FT-EXAFSの測定結果を表す。
図3図3は、実施例1-1に係る炭化ニッケルナノ粒子のXPSの測定結果を表す。
図4図4は、実施例3-2に係る複合体の触媒としての耐久性試験の結果を表す。
図5図5は、実施例3-2に係る複合体の触媒としての使用前後の粉末X線回折測定の測定結果を表す。
図6図6は、実施例3-2に係る複合体の触媒としての使用前後のTEM像を表す。
図7図7は、実施例3-2に係る複合体の触媒としての使用前後の複合体のNiのK吸収端のXANESの測定結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態について説明する。なお、本明細書において、数値範囲(炭化ニッケルナノ粒子のサイズ等、ある成分(化合物等の材料)の使用量、温度、圧力、又は各数値範囲から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
【0023】
本発明のある実施形態は、炭化ニッケルナノ粒子と、担体とを含み、
前記炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する、複合体に関する。
以下、実施形態毎に説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
本発明の複合体に用いる炭化ニッケルナノ粒子は、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有し、
X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する。
【0025】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、ニッケル原子が低原子価の状態(メタリックな状態)であり、かつ大気条件下での安定性に優れる。「原子価」とは、ある元素の原子が、何個の他の元素の原子と結合できるかという能力を表す数である。本発明の炭化ニッケルナノ粒子に含まれるニッケル(Ni)原子は、低原子価の状態である。
【0026】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、39.6°、41.9°及び45.1°の回折角(2θ±0.5°)にピークを有する。前記回折角は、2θ±0.2°であってもよい。
【0027】
CuKα線を使用した粉末X線回折測定法(X‐ray diffraction analysis:XRD)には、公知のX線回折測定装置(X-ray diffractometer)を使用することができる。X線回折測定装置としては、市販品(例えば、全自動多目的X線回折装置(商品名「Philips X'PERT MPD diffractometer」、日本フィリップス株式会社製))を使用できる。
【0028】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、低原子価の状態であり、かつ、大気条件下において安定に化合物の構造を維持できる性質(以下、「大気安定性」とも称する)を有する。そのため、酸素の存在する条件下において、X線回折測定法で結晶構造を測定できる。
【0029】
本明細書において、「大気条件下」とは、大気中の酸素濃度(約21%)程度を意味する。また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、酸素の存在する条件下における安定性に優れる。酸素(O2)の存在する条件としては、酸素の濃度は、特に限定されず、大気中の酸素濃度(約21%)程度であってもよく、約22%~100%であってもよい。本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、大気安定性に優れ、また、酸素濃度によらず、酸素が存在する条件において、低原子価の状態を維持できる。
【0030】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子が、CuKα線を使用したX線回折パターン(以下、「XRDパターン」とも称する)における回折角39.6°、41.9°及び45.1°に有するピークは、それぞれNi3Cの(006)面、(110)面、及び(113)面の結晶面に相当する。
【0031】
前記回折角におけるピークにより、Ni3Cであることが同定できることは、国際回折データセンター(The International Centre for Diffraction Data;ICDD)のデータベース(Powder Diffraction File、レベル4 plus)のJCPDSカード(File 72-1467)からも明らかである。
【0032】
本明細書において、本発明の炭化ニッケルナノ粒子を、「nano-Ni3C」とも表記する。
【0033】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、大気中において、酸化されずに、含まれるニッケル原子が低原子価の状態を維持できる。本発明の炭化ニッケルナノ粒子に含まれるニッケル原子が低原子価であることは、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)による測定で確認できる。XPSの測定結果としては、図1(f)に示されるような結果が得られる。図1(f)において、縦軸は光電子強度を表し、横軸は結合エネルギー(Binding Energy;単位:eV)を表す。
「ニッケル原子が低原子価である」とは、X線光電子分光法(XPS)におけるNi2p3/2スペクトルにおいて、炭化ニッケルナノ粒子に含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有することを意味する。Ni2p3/2スペクトルは、後記する実施例に記載のXPS分析に記載の方法で測定できる。
【0034】
他の好適な実施形態としては、Ni2p3/2スペクトルにおいてニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有することに加えて、前記XPSにおけるNi2p1/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が869.5~870.5eVの範囲内にピークをさらに有する、炭化ニッケルナノ粒子が挙げられる。
【0035】
XPSは、公知のX線光電子分光分析装置を使用できる。X線光電子分光分析装置は市販品(例えば、X線光電子分析装置(商品名「KRATOS ULTRA2」、株式会社島津製作所)、光電子分光装置(型番「JPS-9030」、日本電子株式会社製)、走査型X線光電子分光分析装置(型番「PHI Quantera II」、アルバック・ファイ株式会社)等)であってもよい。励起源としては、AlKα線、MgKα線、AgLα線等を使用できる。
【0036】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、炭化ニッケルナノ粒子に含まれるニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ大気条件下において安定である。すなわち、本発明の炭化ニッケルナノ粒子を構成するニッケル原子は、大気条件下において、経時的に状態が変化することなく、触媒としての活性を有する低原子価の状態で存在し続けることができる。この点で、従来技術と異なる。
【0037】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子におけるニッケル原子の価数は、例えば、X線吸収微細構造(X-ray absorption fine structure:XAFS)により解析することができる。具体的には、金属原子に対し高強度X線、好適にはエネルギーを連続的に変化させた高強度X線を照射することにより、金属原子の内殻電子を非占有軌道以上のエネルギー準位に励起することにより、励起された金属原子は入射X線の励起エネルギーと内殻電子の結合エネルギーとの差に相当する運動エネルギーをもつ光電子を放出し、当該金属原子のX線吸収スペクトルにおける吸収端の近傍に微細構造が現れ、これを解析することによって、金属原子の電子状態を特定することができる。このようなXAFSのエネルギー領域の内、吸収端近傍数10eV程度に現れる微細構造をX線吸収端近傍構造(XANES:X-ray Absorption Near Edge Structure)という。一方、XAFSのエネルギー領域の内、吸収端から約1000eV高エネルギー側まで続く変調構造を広域X線吸収微細構造(EXAFS:Extended X-ray absorption fine structure)という。EXAFSは、励起電子と近接原子からの散乱電子の相互作用に起因して得られる振動構造であり、フーリエ変換により得られる動径分布関数は、金属原子の局所構造(周囲の原子種、配位原子の数、原子間距離)に関する情報を含む。
【0038】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子において、含まれるニッケル原子が低原子価の状態で存在することは、X線吸収端近傍構造(X-ray Absorption Near Edge Structure;XANES)からも確認できる。
【0039】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、含まれるニッケル原子が低原子価の状態で存在するため、Ni原子のK吸収端のXANES測定によって得られるXANESスペクトルにおいて、ピークの立ち上がりがニッケル箔(Ni foil)のピークの立ち上がりと同じである。言い換えると、本発明の炭化ニッケルナノ粒子を構成するニッケル原子が低原子価の状態で存在することは、前記XANES測定によって得られるXANESスペクトルにおいて、ピークの立ち上がりがニッケル箔(Ni foil)のピークの立ち上がりと同じであることで確認できる。ニッケル箔(Ni foil)は、金属としての0価のNiである。
【0040】
また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子と、担体とを含む、複合体(以下、「nano-Ni3C複合体」とも称する)を形成した場合にも、含まれるニッケル原子が低原子価の状態で存在する。そのため、前記XANES測定によって得られるXANESスペクトルにおいて、複合体のピークの立ち上がりは、ニッケル箔(Ni foil)のピークの立ち上がりと同じである。
ある好適な実施形態において、Ni原子のK吸収端のXANES測定によって得られるXANESスペクトルにおいて、(nano-Ni3C複合体の8327eVのスペクトル強度)/(Ni foilの8327eVのスペクトル強度)の比率が、0.910~1.000である炭化ニッケルナノ粒子と、担体とを含む、複合体(nano-Ni3C複合体)が挙げられる。「eV」は結合エネルギーを表す。
【0041】
前記好適な実施形態のnano-Ni3C複合体において、(nano-Ni3C複合体の8327eVのスペクトル強度)/(Ni foilの8327eVのスペクトル強度)の比率は、0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。XANESスペクトルの測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0042】
前記好適な実施形態のnano-Ni3C複合体において、さらに、(nano-Ni3C複合体の8329eVのスペクトル強度)/(Ni foilの8329eVのスペクトル強度)の比率は、0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。XANESスペクトルの測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0043】
前記好適な実施形態のnano-Ni3C複合体において、8327eVのスペクトル強度及び8329eVのスペクトル強度の2点において、いずれも(nano-Ni3C複合体のスペクトル強度)/(Ni foilのスペクトル強度)の比率が0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。前記2点において、nano-Ni3Cのスペクトル強度とNi foilのスペクトル強度との比率がほぼ同じであるということは、炭化ニッケルナノ粒子とNi foilとのピークの立ち上がりが同じといえるものである。炭化ニッケルナノ粒子とNi foilとのピークの立ち上がりが同じということは、炭化ニッケルナノ粒子が低原子価の状態であることを意味する。
【0044】
XPSの測定結果より、炭化ニッケルナノ粒子の表面側が低原子価の状態を維持できているといえ、XANESの測定結果もXPSの測定結果と一致することで、両者の測定結果が正しいことを支持し合っているともいうことができる。これらの結果から、炭化ニッケルナノ粒子の表面のみではなく、炭化ニッケルナノ粒子全体において、含まれるニッケル原子が低原子価の状態を維持できるといえる。
【0045】
Ni原子のK吸収端に関するXANES測定には、公知の測定装置(例えば、X線吸収分光装置(装置名「QuantumLeapH2000」(大気下測定用)、「QuantumLeapV210」(真空下測定用)、以上、キャノン株式会社製))又は公知の測定設備(大型放射光施設「SPring-8」;ビームラインBL01B1、BL14B2、〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1)等を使用することができる。
【0046】
XPSにおけるNi2p3/2スペクトルにおいて低原子価のNi原子は、852.2~853.5eVの範囲内にピークを有する。これは、Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy: A Reference Book of Standard Spectra for Identification and Interpretation of XPS Data (Eds.: J. Chastain), Electronics Division, Perkin-Elmer Corporation, Eden Prairie, MN, 1992のAppendix B. Chemical States Tablesに示されるとおりである。
【0047】
ある好適な実施形態としては、X線光電子分光法(XPS)におけるNi2p3/2スペクトルにおいて、nano-Ni3C及びnano-Ni3C複合体に含まれるニッケル原子が852.2~853.5eVの範囲内にピークを有し、かつ、Ni原子のK吸収端のXANES測定によって得られるXANESスペクトルにおいて、(nano-Ni3C又はnano-Ni3C複合体の8327eVのスペクトル強度)/(Ni foilの8327eVのスペクトル強度)の値(比率)が、0.910~1.000である炭化ニッケルナノ粒子及びnano-Ni3C複合体が挙げられる。XANESスペクトルのスペクトル強度の比率は、0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。
また、前記好適な実施形態において、さらに、(nano-Ni3C又はnano-Ni3C複合体の8329eVのスペクトル強度)/(Ni foilの8329eVのスペクトル強度)の比率は、0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。
さらに、前記好適な実施形態の炭化ニッケルナノ粒子及びnano-Ni3C複合体において、8327eVのスペクトル強度及び8329eVのスペクトル強度の2点において、(nano-Ni3Cのスペクトル強度)/(Ni foilのスペクトル強度)の比率が0.930~1.000であることが好ましく、0.950~1.000であることがより好ましく、0.970~1.000であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の形状は、特に限定されないが、球状粒子であることが好ましい。前記球状粒子は、球状が認識できる程度であればよく、厳密に球の形状を有していないものを含む。前記球状粒子は、例えば、図1(b)で示されるように、TEM観察によって粒子の形態を確認できる。図1(b)は、本発明の炭化ニッケルナノ粒子のTEM像を表す。
【0049】
前記球状粒子において、平均粒子径が150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましい。実施形態によっては、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下であってもよい。前記範囲であることによって、大気中において、低原子価状態で、安定に存在でき、1つの粒子の表面積をより多くし、触媒活性をより高めることができる。ある実施形態においては、例えば、球状粒子の前記平均粒子径は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。
【0050】
本明細書において、球状粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察(例えば、TEM観察)において観察される粒子の断面又は表面の画像を用いた、任意の粒子200個における個数基準の円相当径の算術平均値を意味する。
【0051】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子が球状粒子である場合、断面形状は、特に限定されない。底面の形状は、特に限定されず、平面であってもよく、凹凸を有していてもよく、凸部のみを有してもよい。
【0052】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子におけるサイズは、後述する炭化ニッケルナノ粒子の製造方法における原料化合物の選択及び濃度、加熱温度、加熱条件(撹拌速度等)、反応時間等で調整できる。
【0053】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子における炭素原子とニッケル原子との存在比率は、特に限定されず、ニッケルの炭化の程度を調整することで、調整できる。
【0054】
ニッケルの炭化の程度の調整方法としては、例えば、炭化ニッケルナノ粒子の製造方法における加熱温度等を調整する(例えば、加熱温度を10℃高くする、反応時間を1時間長くする等)ことで、ニッケルの炭化を促進する等の炭化の程度を調整することができる。逆に、炭化を抑制し、炭化の程度の進行をある程度で留める場合は、加熱温度等の条件を逆に調整する(例えば、加熱温度を10℃低くする、1時間反応時間を短くする等)ことによって、炭素原子とニッケル原子との存在比率を調整できる。
【0055】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子において、炭素原子とニッケル原子との存在比率は、元素分析方法(元素マッピング)で評価することができる。元素分析方法(元素マッピング)には、公知のエネルギー分散型X線分析(EDX)を使用できる。EDXには、公知の測定装置を使用できる。測定装置としては、市販品(超Xエネルギー分散型X線分光法(Super-X energy-dispersive X-ray spectroscopy:EDX)検出器を備えた透過電子顕微鏡(単原子分析透過電子顕微鏡、商品名「Titan Cubed G2 60-300」、加速電圧:300kV、FEI社(現:Thermo Fisher Scientific(US)製))など)を用いることができる。
【0056】
また、EDXは、1つの粒子について観察する方法であるのに対して、顕微鏡観察で見られるような複数の(多量の)炭化ニッケルナノ粒子全体を観察して、炭素原子とニッケル原子との存在比率を評価してもよい。このような方法としては、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)が挙げられる。ICP-AESには、公知の測定装置を使用できる。測定装置としては、市販品(ICP発光分光分析装置、商品名「Optima 8300」、パーキンエルマー株式会社製など)を用いることができる。炭素原子とニッケル原子との存在比率のICP-AESによる評価は、例えば、後記する実施例に示される方法で評価できる。
【0057】
ある実施形態において、本発明の炭化ニッケルナノ粒子において、炭素原子とニッケル原子との存在比率は、ICP-AES(例えば、シーケンシャル型)で評価した比率と、EDXで評価した比率が近い範囲になる。両者の値が近いということは、本発明の炭化ニッケルナノ粒子には、余剰の炭素原子がついていないことを意味する。
【0058】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、還元触媒(例えば、水素化触媒)として使用した後、使用後の活性を維持でき、かつ回収可能である。そのため、再度回収して、再利用することができる。回収方法は、特に限定されず、濾過等の公知の方法を使用することができる。また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及びそれを含む複合体は、回収して再利用しても高い触媒活性を有するため、耐久性に優れる。
【0059】
次に、複合体に用いる担体について、説明する。
【0060】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、吸着能に優れるため、担体の種類は限定されず、複合体として、還元反応に使用した場合に還元触媒として効果を奏する。吸着能に優れる理由は、定かではないが、ナノサイズであり、かつ大気条件下で安定であることも理由の一部であると考えられる。
【0061】
本発明の複合体において、炭化ニッケルナノ粒子に含まれるニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ炭化ニッケルナノ粒子が大気条件下において安定である。そのため、従来技術のように、担体の上で触媒活性を有するニッケル粒子を合成し、合成直後に瞬時に触媒として使用されなければならない、或いはニッケル触媒を還元反応に使用するために、高温高圧下における還元前処理が必須となるという事情が、本発明の炭化ニッケルナノ粒子には存在しない。
よって、ニッケル触媒の使用条件によって担体の種類が限定されていた従来技術とは異なり、本発明の複合体において、複合体を触媒として使用する場合、炭化ニッケルナノ粒子と組み合わせて使用される担体の種類が限定されない点が、本発明の有利な効果の一つである。このように、担体が限定されなければならない理由を解消し、担体が限定されなければ触媒活性が得られなくなるという特別な事情が存在しないことから、本発明の複合体において、担体の種類は限定されず、多くの種類を使用することが可能である。
【0062】
本発明の複合体において、担体の種類は、炭化ニッケルナノ粒子を支持できる支持体として使用できるものであれば、限定されない。担体は、常温で液体又は固体であるものが好ましく、固体であるものがより好ましい。また、他の実施形態では、担体は、それ自体が単独では、触媒活性を有しないものが挙げられる。
本発明の複合体において、常温で固体である担体を含め、還元反応で使用する際の加熱温度(例えば、300℃以下、200℃以下等)で固体である担体を用いることで、炭化ニッケルナノ粒子が凝集することを効果的に抑制することができる。そのため、複合体を還元触媒として使用した際に、炭化ニッケルナノ粒子が凝集体(凝集粒子)となってしまうことで、炭化ニッケル粒子の表面積が減少し、触媒活性が低下することを抑制でき、耐久性(経時的な安定性)にも優れる。
また、本発明の複合体では、上記の分散抑制も一因となって、触媒活性の低下を抑制できるのみならず、担体を備えることで、触媒の回収が容易になり、リサイクル性にも優れる。
【0063】
前記担体としては、例えば、ポリマー、カルコゲン化合物、金属化合物、金属及び固体炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。担体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ポリマーとしては、特に限定されない。
カルコゲン化合物としては、第16族元素(酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウム)を含有する化合物を意味する。カルコゲン化合物としては、特に限定されない。
【0065】
金属化合物としては、特に限定されないが、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Si、Zr、Fe、Ti、Al、Mg、Co、Ni、Mn、Cr、Mo、W、V、Zn及びSnの酸化物、これらの固溶体、並びにこれらの複合酸化物等が挙げられる。具体的には、Mg/Al系炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト(HT))、SiO2、TiO2、及びAl23等が挙げられる。本発明において、「Si」等の周期表の半金属は金属に含むものとする。
【0066】
金属としては、Fe及び金属合金(ステンレス鋼等)等が挙げられる。前記金属を金属製の担体として使用できる。
【0067】
固体炭素材料としては、シリコンカーバイド(SiC)、活性炭素(活性炭)、グラファイト、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び非晶質カーボン等が挙げられる。
【0068】
前記担体の形状、サイズは、使用形態に応じて変更でき、特に限定されない。例えば、担体は、シート、フィルム、平板状であってもよい。前記担体のサイズは、ナノサイズであってもよく、1μm以上、1mm以上、又は1cm以上であってもよい。担体としては、例えば、ナノシート(例えば、厚さ1nm~100nm程度)であってもよい。
【0069】
本発明の複合体は、含まれるニッケル原子が低原子価の状態であり、かつ大気条件下において安定であり、還元触媒として触媒活性を有する。
【0070】
本発明の複合体の製造方法は、特に限定されず、複合体は担体の種類に応じて製造できる。ある実施形態としては、例えば、炭化ニッケルナノ粒子を担体上の静置又は固定する、複合体の製造方法が挙げられる。炭化ニッケルナノ粒子を担体上に固定する方法は、特に限定されず、例えば、加熱処理、圧着処理であってもよい。前記加熱温度は、例えば、100℃以下であってもよい。担体は、例えば、炭化ニッケルナノ粒子より十分に大きいサイズの固体の担体(例えば、シート状)を使用してもよい。
【0071】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、吸着能に優れるため、公知の担体への担持方法を特に限定されず、使用することができる。いずれの複合体の製造方法においても、特に限定されず、例えば、加熱処理等を行ってもよい。前記加熱温度は、例えば、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよい。
【0072】
複合体の製造方法に用いる有機溶媒としては、特に限定されず、極性有機溶媒、又は非極性有機溶媒を使用できる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
複合体の製造方法に用いる有機溶媒としては、例えば、
非芳香族炭化水素溶媒(例:n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、イソドデカン、トリデカン等のアルカン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等のシクロアルカン、デカヒドロナフタレン、流動パラフィン);
芳香族炭化水素溶媒(例:ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、インデン、ナフタレン、メチルナフタレン);
ハロゲン化炭化水素溶媒(例:ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン);
アルコール溶媒(例:エタノール、プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、ベンジルアルコール、オレイルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール);
エーテル溶媒(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコール誘導体(例:モノグライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、メチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、ジグライム、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリグライム、テトラグライム、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル)、プロピレングリコール誘導体(例:3-ヘキサノールプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、フェネトール、ベラトロール、ジオキサン、テトラヒドロフラン);
エステル溶媒(例:酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、炭酸ジメチル、マロン酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン);
ケトン溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、イソホロン);
含硫黄溶媒(例:ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルフィド);及び
含窒素溶媒(例:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、メチルピロリドン等のアミド溶媒、トリエタノールアミン等のアミン溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ニトロベンゼン、o-ニトロトルエン等のニトロ溶媒;キノリン、テトラヒドロキノリン、ジメチルイミダゾリジノン)等が挙げられる。
【0074】
本発明の他の実施形態は、炭化ニッケルナノ粒子の製造方法に関する。
【0075】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法としては、例えば、ニッケル化合物と、第一級アミンとを加熱下に混合する工程、得られた混合物を加熱する工程を含む、製造方法が挙げられる。
【0076】
ニッケル化合物としては、例えば、COOH基を除く部分の炭素数が1~12のカルボン酸ニッケル、Ni(acac)2(β-ジケトナト錯体)、ステアリン酸イオン等の有機配位子により構成されるニッケル有機塩、ニッケル無機塩(例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等)のニッケル塩等が挙げられ、COOH基を除く部分の炭素数が1~12のカルボン酸ニッケル、Ni(acac)2(β-ジケトナト錯体)、ステアリン酸イオン等の有機配位子により構成されるニッケル有機塩が好ましい。ニッケル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
COOH基を除く部分の炭素数が1~12のカルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシ基を1つ有するモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシ基を2つ以上する多価カルボン酸(例えば、ジカルボン酸)であってもよい。多価カルボン酸は、価数(1分子中のカルボキシ基の数)が2以上のカルボン酸を意味する。
多価カルボン酸は、特に限定されず、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。
さらに、錯化反応液を加熱して炭化ニッケルナノ粒子を得る際に凝集を防ぐことができる高い分散性を発現する点から、カルボキシ基を3つ以上する多価カルボン酸(例えば、ジカルボン酸)であってもよい。
【0078】
また、前記カルボン酸ニッケルは、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。カルボン酸ニッケルのCOOH基を除く部分の炭素数が1より小さい場合(例えば、ギ酸ニッケル)、得られる炭化ニッケルナノ粒子の形状が不均一であり、また、カルボン酸ニッケルのCOOH基を除く部分の炭素数が12を超える場合、炭化ニッケルナノ粒子の形状が不均一となり好ましくない。
一方、COOH基を除く部分の炭素数が1~12のカルボン酸ニッケルを用いる場合、それ以外のカルボン酸ニッケル(例えばギ酸ニッケル)を併用することもできる。
【0079】
カルボン酸ニッケルのCOOH基を除く部分の炭素数は、1~8であることが好ましい。前記カルボン酸ニッケルとして、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、酪酸ニッケル、イソ酪酸ニッケル、吉草酸ニッケル、イソ吉草酸ニッケル、2-メチル酪酸ニッケルがより好ましく、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、カプロン酸ニッケルがさらに好ましい。
カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
【0080】
また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法において、例えば、酢酸ニッケル(還元温度:250℃以上)に比べて還元温度の低いギ酸ニッケル(還元温度:190~200℃)を併用することによって、還元温度の低温化を図ることができる。還元反応温度を低温化することにより、第一級アミンの副反応(縮合反応)を抑制することができる。
酢酸ニッケルとギ酸ニッケルを併用する場合、ギ酸ニッケルの配合割合は、全カルボン酸ニッケルに対し、例えば5~50mol%の範囲内とすることが好ましい。この範囲内でギ酸ニッケルを併用することによって、カルボン酸ニッケルの還元反応を約200℃で進行させることができる。
【0081】
第一級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。第一級アミンを用いることで、立体障害が小さく、ニッケル錯体を良好に形成できる。
【0082】
第一級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の第一級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。これにより第一級アミンが配位子としてニッケルイオンに配位することで液化し、均一反応溶液を形成することができる点で、常温で液体の第一級アミンであるものが好ましく、加熱工程〔1〕の加熱温度において液体であるものがより好ましい。
なお、常温で固体の第一級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるもの、又は有機溶媒に溶解するものであれば、特に限定されず使用できる。
【0083】
第一級アミンは、分散剤としても機能し、ニッケル錯体を反応液中に良好に分散させることができるため、錯体形成後にニッケル錯体を加熱分解して炭化ニッケルナノ粒子を得る際の粒子同士の凝集を抑えることができる。
第一級アミンは、芳香族第一級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点から、脂肪族第一級アミンが好ましい。
【0084】
脂肪族第一級アミンは、例えばその炭素鎖の長さを調整することによって生成するナノ粒子の粒径を制御することができ、特に平均粒子径が10~150nmの炭化ニッケルナノ粒子を製造する場合において有利である。
【0085】
前記第一級アミンとしては、アルキルアミンを用いる。アルキルアミンとしては、特に限定されないが、炭化ニッケルナノ粒子として球状粒子が得られやすい点から、炭素数1~25のアルキル基を有するものが好ましく、炭化ニッケルナノ粒子の触媒活性がより優れる点から、3~12のアルキル基を有するものがより好ましく、炭化ニッケルナノ粒子の粒径を制御しやすい観点から、6~20のアルキル基を有するものがさらに好ましい。
ある実施形態としては、炭素数6~20のアルキル基を有するアルキルアミンを第一級アミンとして使用する、炭化ニッケルナノ粒子の製造方法が挙げられる。
アルキルアミンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記アルキルアミンが有するアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基(イソヘキシル基)、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、イソノニル基、1-メチルオクチル基、2-エチルヘプチル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、n-ウンデシル基、1,1-ジメチルノニル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-シクロペンチル基、n-シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0087】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基の数は、アルキル基の炭素数に応じて変更でき、1~10であってもよく、1~5であってもよく、1~3であってもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基(ニトリル基)、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、水酸基、ハロ低級アルコキシ基等が挙げられる。
【0088】
前記第一級アミンとしては、具体的には、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族第一級アミンが好ましい。
例えば、オレイルアミンは、ナノ粒子生成過程に於ける温度条件下において液体状態として存在するため均一溶液での反応を効率的に進行できる。
【0089】
第一級アミンは、分散剤としても機能し、ニッケル錯体を反応液中に良好に分散させることができるため、錯体形成後にニッケル錯体を加熱分解して炭化ニッケルナノ粒子を得る際の粒子同士の凝集を抑えることができる。
【0090】
また、第一級アミンは、ニッケル錯体を還元して炭化ニッケルナノ粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。すなわち、脂肪族第一級アミンは、沸点が180℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましい。
また、脂肪族第一級アミンは、炭素数が9以上であることが好ましい。例えば、炭素数が9である脂肪族アミンのC921N(ノニルアミン)の沸点は201℃である。
【0091】
ニッケル化合物と、第一級アミンとを加熱下に混合する工程は、特に限定されず、公知の方法及び装置を用いて行うことができる。混合工程は、真空条件下で行ってもよい。
【0092】
第一級アミンの使用量は、ニッケル化合物1molの使用量に対して、0.1~100molであってもよく、1~80molであってもよく、5~50molであってもよい。
【0093】
ニッケル化合物と、第一級アミンとを加熱下に混合する(以下、加熱工程〔1〕とも称する)。加熱工程〔1〕における加熱温度は、60~280℃であることが好ましく、70~250℃であることがより好ましく、80~220℃であることがさらに好ましい。加熱温度は、より緩やかな条件として、180℃以下であってもよい。加熱温度は、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。
加熱工程〔1〕におけるニッケル化合物と第一級アミンの反応である錯形成反応によって、反応生成液(反応生成物)を得る。反応を確実かつより効率的に行うために、100℃以上の温度で加熱を行う点からは、加熱工程〔1〕における加熱温度は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましい。これにより、ニッケル化合物(例えば、カルボン酸ニッケル)に配位した配位水と第一級アミンとの配位子置換反応が効率よく行われ、この錯体配位子としての水分子を解離させることができ、更にその水を系外に出すことができるので効率よく錯体を形成させることができる。
また、次の加熱工程である加熱工程〔2〕における加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、加熱工程〔1〕における加熱温度は、175℃以下が好ましく、105~175℃の範囲内がより好ましい。
【0094】
また、本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法においては、1-オクタデセンを使用しない。詳細な理由は不明であるが、1-オクタデセンを使用しないことも一因となって、本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、粒子表面及び粒子内部における炭素原子とニッケル原子との存在比率が好適な割合となり、大気条件下において安定であり、ニッケル原子が低原子価の状態を維持し、高い触媒活性を有し、触媒として使用した後も触媒活性を維持できる性質を有するものと推定される。
また、詳細な理由は不明であるが、1-オクタデセンを使用しないことも一因となって、本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法においては、球状の炭化ニッケルナノ粒子を容易に製造することができ、均一な球状の炭化ニッケルナノ粒子を容易に製造できるため、平均粒子径を小さくすることで、触媒活性を高めることもできる。
さらに、このような効果と担体を用いることによって得られる効果が一体となって、担体に分散させた際に、炭化ニッケルナノ粒子の触媒としての利用効率を高めることもできる。
【0095】
前記加熱工程〔1〕は、反応を促進し、本発明の炭化ニッケルナノ粒子をより容易に製造できる点から、撹拌下に行うことが好ましい。また、ある好適な実施形態としては、前記加熱工程〔1〕は、本発明の炭化ニッケルナノ粒子をより容易に製造できる点から、真空条件下又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0096】
前記加熱工程〔1〕における反応時間は、特に限定されず、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。前記反応時間は、例えば、10~120分が好ましく、錯形成反応を確実に完結させるという観点から、15~90分がより好ましく、20~80分がさらに好ましい。
【0097】
均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、第一級アミンとは別の有機溶媒を別途添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をニッケル化合物及び第一級アミンと同時に混合してもよいが、ニッケル化合物及び第一級アミンをまず混合し錯形成した後に有機溶媒を加えた場合、第一級アミンが効率的にニッケルイオンに配位するため、より好ましい。
使用できる有機溶媒としては、第一級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4~30のエーテル系有機溶媒、炭素数7~30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8~18のアルコール系有機溶媒等が挙げられる。
また、使用する有機溶媒は、沸点170℃以上のものが好ましく、沸点200~300℃の範囲内にあるものがより好ましい。前記有機溶媒としては、例えば、テトラエチレングリコール、n-オクチルエーテル等が挙げられる。
【0098】
また、2価のニッケルイオンは配位子置換活性種として知られており、形成する錯体の配位子は温度、濃度によって容易に配位子交換により錯形成が変化する可能性がある。目的の炭化ニッケルナノ粒子を得やすい点から、少なくともニッケルイオンの配位子のうち少なくとも一箇所には第一級アミンが配位していることが好ましい。そのために、第一級アミンが過剰に反応溶液内に存在していることが好ましい。具体的には、ニッケルイオン1molに対して、第一級アミンの量が2mol以上であることが好ましく、2.2mol以上であることがより好ましく、4mol以上であることがさらに好ましい。
【0099】
前記加熱工程〔1〕に続いて、得られた混合物をさらに加熱する(以下、加熱工程〔2〕とも称する)。加熱工程〔2〕は、真空条件下又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0100】
前記加熱工程〔2〕における加熱温度は、加熱工程〔1〕より高い温度であれば特に限定されないが、例えば、90~450℃であることが好ましく、100~400℃であることがより好ましく、120~380℃であることがさらに好ましい。加熱温度は、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。例えば、加熱工程〔2〕における加熱温度は、高温での加熱処理によって、第一級アミンを炭化させやすい点から、200℃以上としてもよく、250℃以上としてもよい。
【0101】
均一な粒径を有する炭化ニッケルナノ粒子を生成させるには、加熱工程〔1〕(ニッケル錯体の生成が行われる工程)でニッケル錯体を均一に、かつ十分に生成させることと、加熱工程〔2〕でニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元により生成するニッケル(低原子価の状態)の核の同時発生及び成長を行う必要がある。
いいかえると、加熱工程〔1〕の加熱温度を上記の特定の範囲内で調整し、加熱工程〔2〕の加熱温度よりも確実に低くしておくことで、粒径及び形状の整った粒子が生成し易い。例えば、加熱工程〔1〕で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(低原子価の状態)への還元反応が同時に進行し、加熱工程〔2〕での粒子形状の整った粒子の生成が困難となるおそれがある。
また、加熱工程〔2〕の加熱温度が低すぎるとニッケル(低原子価)への還元反応速度が遅くなり、核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、炭化ニッケルナノ粒子の収率の点からも好ましくはない。
上記観点から、前記加熱工程〔2〕における加熱温度は、加熱工程〔1〕における加熱温度より5℃以上高い温度としてもよく、10℃以上高い温度としてもよい。
【0102】
前記加熱工程〔2〕における反応時間は、特に限定されず、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。前記反応時間は、例えば、10分以上20時間以下が好ましく、30分以上15時間以下がより好ましく、1時間超12時間以下がさらに好ましく、1.5時間以上10時間以下が特に好ましい。
【0103】
前記加熱工程〔2〕において、加熱方法は、特に限定されず、マントルヒーター、オイルバス、マイクロ波で加熱してもよい。
【0104】
加熱工程〔2〕における加熱によって、加熱工程〔1〕で得られた錯化反応液において、ニッケル錯体のニッケルイオンが還元され、ニッケルイオンに配位しているイオン(例えば、カルボン酸イオン)が同時に分解し、最終的に酸化数が0価のニッケルを含有する炭化ニッケルナノ粒子が生成する。
【0105】
加熱工程〔2〕の加熱によって得られる炭化ニッケルナノ粒子のスラリー(ナノ粒子スラリー)は、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、炭化ニッケルナノ粒子が得られる。
【0106】
加熱工程〔2〕においては、必要に応じ、錯化反応液に、加熱工程〔1〕で例示した有機溶媒(例えばオクタノール(オクチルアルコール)等のアルコールや非極性有機溶媒等)を加えてもよい。なお、前記したように、錯形成反応に使用する第一級アミンを有機溶媒としてそのまま用いることが好ましい。
【0107】
加熱工程〔2〕においては、本発明の効果を損なわない範囲で、錯形成反応液中に還元作用を有する物質が存在していてもよい。
【0108】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法としては、上記工程以外に任意の工程を含むことができる。また、例えば後述するように表面修飾剤の添加、炭化の程度を調整するための再加熱による炭化処理、金属塩を添加する工程(金属塩添加工程)などの任意の処理を行うことができる。
【0109】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法において、炭化ニッケルナノ粒子の粒径を制御すること、かつ、炭化ニッケルナノ粒子の分散性を向上させることを目的として表面修飾剤を添加してもよい。
表面修飾剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等の高分子樹脂、ミリスチン酸、オレイン酸等の長鎖カルボン酸又はカルボン酸塩等を添加することができる。
但し、得られる炭化ニッケルナノ粒子の表面修飾量が多い場合、触媒活性の減少を招く可能性があるため、得られる炭化ニッケルナノ粒子を洗浄した後の表面修飾量は可能な限り少ない方が好ましい。
従って、表面修飾剤の添加量は、金属換算のニッケル100質量部に対して0.1以上100質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
表面修飾剤は、加熱工程〔1〕におけるカルボン酸ニッケル及び第一級アミンの混合物の段階で添加してもよく、加熱工程〔1〕で得られる錯化反応液に添加してもよい。
【0110】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法は、加熱工程〔2〕に続いて、再加熱による炭化処理として、さらに加熱する工程(以下、加熱工程〔3〕とも称する)を含んでいてもよい。
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法は、ニッケル化合物として、Ni(acac)2(β-ジケトナト錯体)等のニッケル塩を、還元剤として作用する第一級アミンと反応させ、加熱工程〔2〕において、200℃以上の温度で、反応時間を1時間超(好適には、1.5時間以上)等に設定することで、平均粒子径が小さい(例えば、50nm以下等)炭化ニッケルナノ粒子を均一に製造できることができる。そのため、平均粒子径がより大きくなる傾向にある再加熱による炭化処理を要しない製造方法で、炭化ニッケルナノ粒子を製造してもよい。
【0111】
ある実施形態においては、加熱工程〔3〕において、前記加熱工程〔2〕で得られた炭化ニッケルナノ粒子を第一級アミン中に投入し、該第一級アミンとともに、混合することが好ましい。
第一級アミンは、加熱工程〔1〕における第一級アミンと同様のものを使用できる。
加熱工程〔3〕によって、炭化ニッケルナノ粒子の表面を被覆する第一級アミンを減少させることができる。これにより、触媒活性をより高めることができる場合がある。
【0112】
前記加熱工程〔3〕における加熱温度は、200~500℃であることが好ましく、220~450℃であることがより好ましく、250~420℃であることがさらに好ましい。加熱温度は、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。
前記加熱工程〔3〕における加熱温度は、前記加熱工程〔2〕の加熱温度よりも高い温度が好ましく、加熱工程〔2〕より5℃以上高い温度がより好ましく、10℃以上高い温度がさらに好ましい。
【0113】
前記加熱工程〔3〕における反応時間は、特に限定されず、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。前記反応時間は、例えば、5分~10時間が好ましく、10分~8時間がより好ましく、15分~6時間がさらに好ましい。
【0114】
第一級アミンの混合後の加熱工程〔3〕の温度まで昇温させる際の昇温速度は、特に限定されず、炭化ニッケルナノ粒子の目的とする炭化の程度に応じて、適宜変更できる。例えば、反応を緩やかに進めるために、昇温速度を低く設定することができる。前記昇温速度は、5~150℃/分が好ましく、10~100℃/分がより好ましく、15~90℃/分がさらに好ましい。
【0115】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法は、加熱工程〔1〕と加熱工程〔2〕との間に、錯化反応液にパラジウム塩、銀塩、白金塩及び金塩からなる群より選択される1又は2以上の金属塩を添加する工程(金属塩添加工程)を含んでいてもよい。
【0116】
金属塩の添加によって、次のニッケルナノ粒子生成工程でニッケルナノ粒子の生成起点となる核を多量に生じさせることが可能になり、目的とするニッケルナノ粒子の粒子径を小さくすることができる。金属塩は、いずれも塩の種類を特に限定するものではない。
塩を構成する酸(酸基)として、例えば、塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸を用いることは好適な実施の形態である。白金塩及び金塩については、例えば、塩化白金酸、又は塩化金酸を用いることも好ましい。
【0117】
錯化反応液に加える金属塩の量は特に限定するものでないが、ニッケル化合物中に含まれる金属換算のニッケル100質量部に対して金属塩を金属換算で0.01質量部以上であることが好ましい。
金属塩の量の上限は特にないが、例えば発明の効果とコストのバランス等を考慮して、ニッケル化合物中に含まれる金属換算のニッケル100質量部に対して、金属塩の添加量を金属換算で10質量部以下に設定することが好ましい。
別の観点から、ニッケル化合物中に含まれる金属換算のニッケル100molに対して、金属塩を0.01mol以上10mol以下の範囲内で加えることが好ましい。
【0118】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子の製造方法としては、さらに、洗浄工程を含むことが好ましい。洗浄工程に用いる洗浄液としては、有機溶媒を使用できる。有機溶媒としては、特に限定されず、前記した複合体の製造方法に用いる有機溶媒と同様のものが挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、混合比率は特に限定されないが、例えば、クロロホルムとアセトンを体積比で、1:1で使用することができる。洗浄工程としては、前記有機溶媒を用いて、加熱工程〔3〕の後に得られた生成物を遠心分離する方法が挙げられる。
【0119】
洗浄工程後に、必要に応じて、真空乾燥させて粉末状の炭化ニッケルナノ粒子を得てもよい。
【0120】
本発明の他の実施形態は、前記したいずれかの炭化ニッケルナノ粒子を含む、還元触媒に関する。還元触媒を用いる還元反応としては、例えば、窒素酸化物(NOx)の還元反応、有機化合物の水素化反応等が挙げられる。
【0121】
ある実施形態においては、本発明の還元触媒は、炭化ニッケルナノ粒子のみを含むものであってもよい。還元触媒として、炭化ニッケルナノ粒子をそのまま使用してもよい。他の実施形態においては、本発明の還元触媒は、炭化ニッケルナノ粒子と、担体を含み、前記炭化ニッケルナノ粒子と、前記担体が複合体を構成するものであってもよい。
【0122】
本発明の還元触媒を水素化触媒として使用する場合を例に挙げて以下に説明する。本明細書において、特に言及されている場合を除いて、「還元触媒」を「水素化触媒」に読み替えることができる。なお、還元触媒は水素化触媒に限定されるものではない。
【0123】
ある実施形態としては、有機化合物を、前記した還元触媒を用いて水素化し、水素化有機化合物を得る、水素化有機化合物の製造方法が挙げられる。
【0124】
前記有機化合物としては、ニトリル化合物、アルデヒド化合物、不飽和化合物等が挙げられる。
【0125】
水素化により製造される水素化有機化合物としては、第一級アミン化合物、アルコール化合物、飽和化合物等が挙げられる。
【0126】
水素化有機化合物の製造方法としては、具体的には、ニトリル化合物を、前記した還元触媒を用いて水素化し、第一級アミン化合物を得る、第一級アミン化合物の製造方法;アルデヒド化合物を、前記した水素化触媒を用いて水素化し、アルコール化合物を得る、アルコール化合物の製造方法;不飽和化合物を、前記した還元触媒を用いて水素化し、飽和化合物を得る、飽和化合物の製造方法が挙げられる。
【0127】
前記有機化合物がニトリル化合物である場合を例として、ニトリル化合物を、前記した還元触媒(炭化ニッケルナノ粒子又は複合体)を用いて水素化し、第一級アミン化合物を得る、第一級アミン化合物の製造方法について、以下に説明する。
【0128】
前記ニトリル化合物としては、シアノ基を1個有するニトリル化合物(モノニトリル化合物)、シアノ基を2個有するニトリル化合物(ジニトリル化合物)、シアノ基を3個有するニトリル化合物(トリニトリル化合物)、シアノ基を4個以上有するニトリル化合物等が挙げられる。
【0129】
シアノ基を1個有するニトリル化合物としては、脂肪族ニトリル化合物、置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物等が挙げられる。本明細書において、ニトリル化合物が、芳香環又は複素環を有する場合、芳香族ニトリル化合物に包含される。
【0130】
脂肪族ニトリル化合物としては、シアノ基を除く炭素数が1~30である脂肪族ニトリル化合物が挙げられる。シアノ基を除く炭素数が1~30である脂肪族ニトリル化合物は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよい。シアノ基を除く炭素数が1~30である脂肪族ニトリル化合物は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、無置換であってもよい。前記脂肪族ニトリル化合物が有するシアノ基を除いた炭素数は、特に限定されないが、1~20であってもよく、1~15であってもよい。
【0131】
モノニトリル化合物としての脂肪族ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ペンタンニトリル(バレロニトリル)、イソバレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、デカンニトリル、ラウロニトリル、オクタデカンニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2-フルオロプロピオニトリル、3-フルオロプロピオニトリル、2,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3,3-ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3’-オキシジプロピオニトリル、3,3’-チオジプロピオニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ニトリル;シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、1-アダマンチルカルボニトリル等の環状の脂肪族ニトリル等が挙げられる。
【0132】
モノニトリル化合物としての置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環を有する芳香族ニトリル化合物が有する芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル等が挙げられる。置換基を有していてよい1個又は2個の複素環を有する芳香族ニトリル化合物が有する複素環としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール等の5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員環等のヘテロ原子として窒素原子のみを含む複素環;フラン等のヘテロ原子として酸素原子のみを含む複素環;チオフェン等のヘテロ原子として硫黄原子のみを含む複素環;オキサゾール等のヘテロ原子として窒素原子と酸素原子を含む複素環;チアゾール、イソチアゾール等のヘテロ原子として窒素原子と硫黄原子を含む複素環;ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリン、キノオキサリン、クロマン、インドール等の縮合複素環などが挙げられる。
【0133】
置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、炭素数7~10のフェニルアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1~6のアルキル基の置換アミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、炭素数1~6のアルキル基のアルキルチオ基、アゾ基、アジド基等が挙げられる。置換基の数は、化合物の構造に応じて適宜選択でき、例えば、1~6個であってもよく、1~4であってもよく、1~3であってもよい。
【0134】
置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物としては、例えば、ベンゾニトリル;p-トリニトリル、メチルベンゾニトリル(2-メチルベンゾニトリル、3-メチルベンゾニトリル、4-メチルベンゾニトリル)、4-エチルベンゾニトリル、4-t-ブチルベンゾニトリル、4-(アミノメチル)ベンゾニトリル等のアルキルベンゾニトリル;メトキシベンゾニトリル(o-メトキシベンゾニトリル、m-メトキシベンゾニトリル、p-メトキシベンゾニトリル)等のアルコキシベンゾニトリル;メルカプトベンゾニトリル、2,5-ジメルカプトベンゾニトリル等のメルカプトベンゾニトリル;4-(メチルチオ)ベンゾニトリル等のアルキルチオベンゾニトリル;ブロモベンゾニトリル(o-ブロモベンゾニトリル、m-ブロモベンゾニトリル、p-ブロモベンゾニトリル)、クロロベンゾニトリル(o-クロロベンゾニトリル、m-クロロベンゾニトリル、p-クロロベンゾニトリル)、ジクロロベンゾニトリル(2,3-ジクロロベンゾニトリル、2,4-ジクロロベンゾニトリル、2,5-ジクロロベンゾニトリル、2,6-ジクロロベンゾニトリル、3,4-ジクロロベンゾニトリル、3,5-ジクロロベンゾニトリル)、トリクロロベンゾニトリル(2,3,4-トリクロロベンゾニトリル、2,3,5-トリクロロベンゾニトリル、2,3,6-トリクロロベンゾニトリル、2,4,6-トリクロロベンゾニトリル)、フルオロベンゾニトリル(o-フルオロベンゾニトリル、m-フルオロベンゾニトリル、p-フルオロベンゾニトリル)、ジフルオロベンゾニトリル(2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,4-ジフルオロベンゾニトリル、2,5-ジフルオロベンゾニトリル、2,6-ジフルオロベンゾニトリル、3,4-ジフルオロベンゾニトリル、3,5-ジフルオロベンゾニトリル)、トリフルオロベンゾニトリル(2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,5-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2,4,6-トリフルオロベンゾニトリル)、トリフルオロメチルベンゾニトリル、4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)ベンゾニトリル等のハロゲン化ベンゾニトリル;アセトキシベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フェニルブチロニトリル、3-フェニルプロピオニトリル、4-フェニルベンゾニトリル、フェノキシベンゾニトリル(2-フェノキシベンゾニトリル、3-フェノキシベンゾニトリル、4-フェノキシベンゾニトリル)、4-(4-メチルフェニル)ベンゾニトリル、2-(p-トリル)ベンゾニトリル、2-ナフタレンカルボニトリル、6-メトキシ-2-ナフタレンカルボニトリル、2-ピリジンカルボニトリル、3-ピリジンカルボニトリル、4-ピリジンカルボニトリル、6-クロロ-2-ピリジンカルボニトリル、6-メトキシ-3-ピリジンカルボニトリル、ピロール-2-カルボニトリル、1H-インドール-3-カルボニトリル、1H-インドール-6-カルボニトリル、ピペロニロニトリル、2-フランカルボニトリル、3-フランカルボニトリル、2-チオフェンカルボニトリル、3-チオフェンカルボニトリル、3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル、チオフェン-2-アセトニトリル、チオフェン-3-アセトニトリル等が挙げられる。
【0135】
ジニトリル化合物としての脂肪族ニトリル化合物としては、例えば、マロノニトリル、ペンタンジニトリル、ヘキサンジニトリル(アジポニトリル)、ヘプタンジニトリル、オクタンジニトリル、デカンジニトリル等のシアノ基を除く炭素数が1~30である直鎖状又は分岐鎖状のアルキルジニトリル;1,4-シクロヘキサンジカルボニトリル等のシアノ基を除く炭素数3~30のシクロアルキルジニトリル等が挙げられる。前記脂肪族ニトリル化合物が有するシアノ基を除いた炭素数は、特に限定されないが、1~20であってもよく、1~15であってもよい。
【0136】
ジニトリル化合物としての置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物としては、1,2-ベンゼンジカルボニトリル、1,3-ベンゼンジカルボニトリル、1,4-ベンゼンジカルボニトリル(1,4-ジシアノベンゼン)、2,5-ジフルオロ-1,4-ベンゼンジカルボニトリル等の1個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物;2-ベンズヒドリルシクロヘキサン-1,1-ジカルボニトリル等の2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物等が挙げられる。
【0137】
還元触媒の使用量としては、ニトリル化合物100mol%に対して、十分な触媒活性を有する点から、Niの量に換算して、0.01~15mol%が好ましく、0.05~12mol%がより好ましく、0.1~10mol%がさらに好ましい。
上記範囲であれば、十分に水素化反応が進行する。本発明の還元触媒は、非常に微量であっても触媒として機能し、触媒活性に極めて優れる。
【0138】
第一級アミン化合物の製造方法は、加熱して行うことが好ましい。加熱温度としては、特に限定されないが、80~350℃が好ましく、90~280℃がより好ましく、100~250℃がさらに好ましい。反応をより緩やかな条件で行う場合には200℃以下としてもよい。
【0139】
反応時間は、特に限定されず、5分~60時間程度であってもよく、10分~30時間程度であってもよく、20分~15時間程度であってもよい。目的に応じて、8時間以下等に設定してもよい。
【0140】
第一級アミン化合物の製造方法において、水素圧は8MPa以下であり、より緩やかな条件で行う場合、5MPa以下であってもよく、4.5MPa以下であってもよく、3.0MPa以下であってもよく、1.5MPa以下であってもよく、1.0MPa以下であってもよい。
【0141】
第一級アミン化合物の製造方法において、アンモニア源は、気体であってもよいが、特に限定されないが安全性等の観点からアンモニア水などの水溶液(液体)、又は酢酸アンモニウム等の固体が好ましい。
【0142】
ある好適な実施形態としては、前記した水素化触媒(炭化ニッケルナノ粒子又は複合体)を用いて、ニトリル化合物を、水素雰囲気下、かつアンモニア共存下において、水素圧8MPa以下で水素化する、水素化有機化合物の製造方法が挙げられる。
【0143】
本発明の製造方法においては、ニトリル化合物が溶媒を兼ねることができるため、必ずしも、別途溶媒を使用しなくてもよい。基質の種類等に応じて、溶媒の有無及び種類を選択できる。
【0144】
溶媒としては、例えば、複合体の製造方法に用いる有機溶媒として例示したものが使用でき、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;1,2-ジメトキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテルが好ましく、アルコールがより好ましい。
【0145】
第一級アミン化合物の製造方法において、塩基の存在下に水素化反応を行ってもよい。
【0146】
塩基としては、有機塩基((a)3級アミン、(b)含窒素芳香族複素環式化合物、(c)イミン骨格(-C=N-C-)を有する化合物(なお、本明細書で、この化合物を「イミン系塩基」とも称する))、(d)無機塩基、(e)水酸化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。塩基は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
(a)三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2-エチルへキシル)アミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、N-ブチルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N′-ジメチルピペラジン、N-メチルピロリドン、N-ビニル-ピロリドン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N,N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N',N',N''-ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、テトラメチルイミノ-ビス(プロピルアミン)、N-ジエチル-エタノールアミン等が挙げられる。
【0148】
(b)含窒素芳香族複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、3-(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H-インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6-ジ-t-ブチルピリジン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、5,5'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、6,6'-t-ブチル-2,2'-ジピリジル、4,4'-ジフェニル-2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン、2,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンなど。チル-エタノールアミン等が挙げられる。
【0149】
(c)イミン系塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(ジアザビシクロウンデセン)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン等が挙げられる。
【0150】
(d)無機塩基としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物(フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化セシウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシド)等が挙げられる。
【0151】
(e)水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-プロピルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0152】
塩基の使用量は、ニトリル化合物1molに対して、0.01~10molが好ましく、0.02~8molがより好ましく、0.05~4molがさらに好ましい。上記範囲であれば、十分に水素化反応が進行する。
【0153】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例0154】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0155】
[実施例1:炭化ニッケルナノ粒子]
<実施例1-1>
標準的なシュレンク法に基づいて、炭化ニッケルナノ粒子を以下の方法で製造した。
まず、Ni(acac)2(0.257g、1.0mmol)とオレイルアミン(8.025g、30mmol)をシュレンク管に入れ、真空中120℃で1時間撹拌した。
次に反応温度を320℃に上げ、3時間一定に保ち、黒色のコロイド溶液を得た。
室温まで冷却した後、黒色のコロイド溶液に含まれる黒色生成物をヘキサンで回収し、遠心分離器を用いて固体及び液体成分を分離した。
得られた固体成分をエタノール-ヘキサン混合液でさらに数回洗浄し、一晩真空乾燥させて、nano-Ni3C(0.045g)を得た。
【0156】
得られた炭化ニッケルナノ粒子(以下、「nano-Ni3C」とも称する)について、以下の方法で評価した。
【0157】
<炭化ニッケルナノ粒子の粉末X線回折測定>
実施例1-1で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、大気条件下において、全自動多目的X線回折装置(商品名「Philips X'PERT MPD diffractometer」、日本フィリップス株式会社製)を用いて、CuKα線(λ:1.5405Å)を使用し、45kV、40mAの条件でX線回折測定を行った。結果を図1(a)に示す。
【0158】
図1(a)に示されるように、実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、酸素の存在する条件下のCuKα線を使用した粉末X線回折測定において、Ni3Cの(113)面に相当するピーク(回折角(2θ):45.1°)の強度が最大強度として観察された。
また、Ni3Cの(006)面、及び(110)面に相当する特徴的なピークも観察された。
【0159】
<炭化ニッケルナノ粒子の電子顕微鏡観察>
実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、透過電子顕微鏡(冷陰極電界放出型、商品名「HF-2000」、加速電圧:200kV、株式会社日立ハイテク社製)を用いて観察を行った。結果を図1(b)に示す。実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、平均粒子径は36.4nmであった。
同様に、実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、電解放出型走査電子顕微鏡(商品名「JSM-7600F」、加速電圧:5.0kV、日本電子株式会社製)を用いて観察を行った。結果を図1(c)に示す。
また、実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、制限視野電子回折(Selected area electron diffraction:SAED)パターンの測定を行った。結果を図1(d)に示す。図1(d)から、Ni3C相の形成を示しており、X線回折の結果と一致していることが確認された。
【0160】
<炭化ニッケルナノ粒子のNi原子のK吸収端のXANES測定>
実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、Ni原子のK吸収端に関するXANES測定は、型放射光施設「SPring-8」(ビームラインBL01B1、BL14B2、〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1)にて以下の条件で行った。結果を図1(e)に示す。対照としてニッケル箔(Ni foil)を使用した。また、参考例として、NiOを使用した。
〔測定条件〕
SPring-8のSi(111)モノクロメーターを用いて、室温で測定を行った。
測定時間:
Ni foil、及びNiO = 120sec
nano-Ni3= 600sec
【0161】
図1(e)の8327~8330eVあたりのスペクトル強度からわかるように、NiOのみピークの立ち上がりが、ニッケル箔(Ni foil)及び炭化ニッケルナノ粒子のピークの立ち上がりと異なっていた。
図1(e)に示されるように、炭化ニッケルナノ粒子のピークの立ち上がりがニッケル箔(Ni foil)のピークの立ち上がりと同じであった。
XANES測定の結果は、XPSで評価される表面に比べて、より深部まで評価できることから、図1(e)の結果から、炭化ニッケルナノ粒子及び複合体に含まれるニッケル原子が、表面に存在するニッケル原子のみではなく、より内側に存在するニッケル原子においても、大気条件下で安定であり、低原子価の状態で存在していることが確認された。
【0162】
<炭化ニッケルナノ粒子のX線光電子分光法(XPS)>
実施例で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、XPS(X線光電子分光装置、ESCA1700R、アルバック・ファイ株式会社製)を用いて、XPSによる測定を行った。結果を図1(f)に示す。図1(f)に示されるように、Ni2p3/2スペクトルにおいて、含まれるニッケル原子が852.9eVの位置にピークを有することが確認された。XPSの結果から、炭化ニッケルナノ粒子の表面(深さ約10nm程度まで)において、低原子価の状態であることが確認された。
また、C1sスペクトルにおいて、炭化ニッケルナノ粒子のカーバイドの炭素原子に対応する283.5eVの位置にピークを有することが確認された。結果を図3に示す。
【0163】
<炭化ニッケルナノ粒子及び複合体のNi原子のK吸収端のFT-EXAFS測定>
実施例1-1で得られた炭化ニッケルナノ粒子について、FT-EXAFS測定を行った。
〔測定条件〕
SPring-8のSi(111)モノクロメーターを用いて、室温で測定を行った。
測定時間:
Ni foil、及びNiO = 120sec
nano-Ni3C、= 600sec
EXAFS振動をフーリエ変換することで,原子間距離に応じたピークを示すスペクトルを得た。結果を図2に示す。得られた結果から、Ni-Niの原子間距離は、Ni foilにおけるNi-Niの原子間距離と近いことが確認できた。
【0164】
[実施例2:複合体]
<実施例2-1:炭化ニッケルナノ粒子とAl23との複合体>
実施例1-1で製造した炭化ニッケルナノ粒子と担体としてAl23を用いて複合体を製造した。
具体的には、実施例1-1で製造した炭化ニッケルナノ粒子の粉末(0.040g)をn-ヘキサン(30mL)に溶解させた。
そこに、Al23粉末(0.70g)を加えて室温で5時間撹拌した。
得られた粉末を一晩真空乾燥し、nano-Ni3C/Al23複合体を灰色の粉末(0.74g)として得た。
【0165】
<実施例2-2:炭化ニッケルナノ粒子とHTとの複合体>
Al23の代わりに担体としてハイドロタルサイト(HT)を使用した以外は実施例2-1と同様にして、nano-Ni3C/HT複合体を灰色の粉末として得た。
【0166】
<実施例2-3:炭化ニッケルナノ粒子とTiO2との複合体>
Al23の代わりに担体としてTiO2を使用した以外は実施例2-1と同様にして、nano-Ni3C/TiO2複合体を灰色の粉末として得た。
【0167】
<実施例2-4:炭化ニッケルナノ粒子とSiO2との複合体>
Al23の代わりに担体としてSiO2を使用した以外は実施例2-1と同様にして、nano-Ni3C/SiO2複合体を灰色の粉末として得た。
【0168】
<実施例2-5:炭化ニッケルナノ粒子とカーボンとの複合体>
Al23の代わりに担体としてカーボン(商品名「活性炭素(粉末)」、富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用した以外は実施例2-1と同様にして、nano-Ni3C/AC複合体を黒色の粉末として得た。
【0169】
[実施例3:ベンジルアミンの製造]
<実施例3-1>
実施例1-1の炭化ニッケルナノ粒子を触媒として用いて、ベンゾニトリルを水素化してベンジルアミンを製造した。
具体的には、テフロン(登録商標)内筒付きの50mLステンレス鋼オートクレーブに、3.2mgの実施例1-1の炭化ニッケルナノ粒子(ベンゾニトリル100mol%に対してNiの量が10mol%)、3mlの2-プロパノール、基質として0.5mmolのベンゾニトリル、アンモニア源として1.2mlの25wt%のNH3水溶液を加えた。その後、10bar(1MPa)の水素雰囲気に切り替えて130℃に加熱し、激しく撹拌し、1時間反応を行った。反応後、オートクレーブを氷水浴で冷却し、H2ガスを注意深く放出した。続いて、反応混合物を遠心分離によって分離した後、GC-MSによって分析した。結果を下記表1に示す。
【化1】
【0170】
<実施例3-2~3-8>
使用する触媒の種類を実施例2-1~2-5で製造した複合体に変更し、触媒の使用量を0.058g(ベンゾニトリル100mol%に対してNiの量が10mol%)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、ベンジルアミンを製造した。実施例3-7~3-8の複合体は、実施例2-1で得られた複合体を使用し、反応条件又は複合体を下記するように変更した。収率の測定は、実施例3-1と同様に行った。結果を下記表1に示す。
【0171】
<比較例3-1>
使用する触媒の種類を下記表1の記載のとおりに変更する以外は、実施例3-1と同様の方法で、ベンジルアミンを製造した。実施例3-1と同様に行った。結果を下記表1に示す。
【0172】
【表1】
1)GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)によって分析し、内部標準としてジエチレングリコールジメチルエーテルを使用し、転化率及び収率を算出した。
2)1bar(0.1MPa)の水素雰囲気下、1.5mlの2-プロパノール、0.6mlの25wt%のNH3水溶液を加え、反応温度を150℃に変更し、反応時間を14時間に変更した点以外は実施例3-1と同様に行った。
3)空気中で1週間保管したnano-Ni3C/Al23複合体を用いた点以外は実施例3-1と同様に行った。
【0173】
<実施例3-9>
使用する触媒の量を、ベンゾニトリル100mol%に対してNiの量0.1mol%になるように変更し、2-プロパノールを使用せず有機溶媒を含まない条件とし、基質として20mmolのベンゾニトリル(2.1g)、アンモニア源を2.4mlの25wt%のNH3水溶液に変更し、45bar(4.5MPa)の水素雰囲気に変更し、150℃で40時間反応を行うように変更した以外は、実施例3-2と同様の方法で、ベンジルアミンを製造した。実施例3-1と同様に行った。
2.1gの1aが効率的に2aに変換され、Turn Over Number (TON) 900を超える90%の単離収率が得られた。
【化2】
【0174】
<実施例3-10>
使用する触媒の量を、1,4-ジシアノベンゼン100mol%に対してNiの量1mol%になるように変更し、基質として10mmolのベンゾニトリル(1.3g)、アンモニア源を2.4mlの25wt%のNH3水溶液に変更し、45bar(4.5MPa)の水素雰囲気に変更し、150℃で40時間反応を行うように変更した以外は、実施例3-2と同様の方法で、1,4-ビス(アミノメチル)-ベンゼンを製造した。実施例3-1と同様に行った。
ジニトリルである1,4-ジシアノベンゼン(1x)の水素化反応も進行し、79%の単離収率でジアミン生成物が得られた。
【化3】
【0175】
表1に示されるように、実施例1-1で製造した炭化ニッケルナノ粒子が水素化触媒としての優れた触媒活性を有することが確認された。本発明の炭化ニッケルナノ粒子は、大気安定性を有し、かつ低原子価の状態を粒子表面においても維持できるため、触媒活性を有するものと考えられる。
また、表1に示されるように、本発明の複合体も水素化触媒としての触媒活性が優れていた。
さらに、これらの実施例で示されるように、本発明の炭化ニッケルナノ粒子及び複合体は、水素圧を1MPaとした緩やかな条件でも十分な触媒活性を有することが確認された。
さらに、これらの実施例で示されるように、本発明の複合体は、様々な担体に空気中で固定化することができ、十分な触媒活性を有することが確認された。
また、実施例3-8のように、1週間空気中に放置した場合にも、活性を維持することができ、触媒活性について、優れた耐久性を有することが確認できた。
さらに、これらの実施例で示されるように、第一級アミンへのニトリル水素化に対する本発明の複合体の多様性を確認できた。
【0176】
[耐久性の評価(再使用実験)]
実施例2-1で製造した炭化ニッケルナノ粒子とAl23との複合体を用いて触媒としての耐久性を評価した。
実施例3-2で使用した複合体(nano-Ni3C/Al23)を濾過して回収したのち、以下の反応条件で、ベンジルアミンを製造する反応を3回繰り返した。
結果を図4に示す。
〔反応条件〕
ベンゾニトリル(基質):0.5mmol
nano-Ni3C/Al23(触媒):0.058g(ベンゾニトリル100mol%に対してNiの量が10mol%)
2-プロパノール:3ml
25wt%のNH3水溶液:1.2ml
水素圧:10bar(1MPa)
反応時間:90分又は40分
【0177】
図4において、白のダイヤの数値が反応時間40分の場合の収率を示す。図4において、例えば、実施例3-2の後、濾過して回収したのち、再度反応時間を90分として上記条件で反応に使用した場合、収率は100%であった(図4の1サイクル後の収率)。
【0178】
図4の結果から、本発明の還元触媒は、回収して再利用した場合にも高い触媒活性を有し、耐久性に優れることが確認された。そのため、本発明の炭化ニッケルナノ粒子、複合体及び還元触媒は、廃棄を減らす、回収して再利用できる等の有利な効果を奏するといえる。
【0179】
<複合体の粉末X線回折測定>
ベンジルアミンを製造する反応について、前記耐久性の評価で使用した後の複合体(nano-Ni3C/Al23)について、上記した方法で粉末X線回折測定を行った。結果を図5に示す。図5では、実施例3-2で使用する前の複合体のnano-Ni3Cの結果を「Flesh nano-Ni3C」で表示し、ベンジルアミンを製造する反応を前記耐久性の評価で使用した後の複合体(nano-Ni3C/Al23)のnano-Ni3Cの結果を「Spent nano-Ni3C」で表示した。
図5に示されるように、炭化ニッケルナノ粒子について、使用前と同様に、Ni3Cの(113)面に相当するピーク(回折角(2θ):45.1°)の強度が最大強度として観察された。
このことから、触媒として使用した際に、炭化ニッケルナノ粒子の構造が破壊されず、維持できることが確認された。
【0180】
<複合体のICP-AES>
実施例3-2で使用した炭化ニッケルナノ粒子とAl23との複合体に対して、触媒として使用した際の使用の前後の変化について、ICP発光分光分析装置(商品名「Optima 8300」、パーキンエルマー株式会社製など)を用いてICP-AESで観察を行った。結果を表2に示す。
【0181】
【表2】
【0182】
ICP-AESによる観察結果では、使用後においても、ニッケル原子がわずか0.7質量%だけ減少していた。
ICP-AESによる観察結果と、収率の測定結果の両方の結果を考慮すると、複合体に含まれる炭化ニッケルナノ粒子が活性を維持しているものと考えられる。
【0183】
さらに、前記複合体について、触媒としての使用前後について電子顕微鏡観察を炭化ニッケルナノ粒子の同様の方法で行った。結果を図6に示す。図6(a)は水素化反応に使用前の複合体のTEM像を示し、図6(b)は水素化反応に1回使用後の複合体のTEM像を示す。図6(a)と図6(b)のTEM像との対比からも、使用の前後により形態の変化は見受けられなかった。
【0184】
また、ベンジルアミンを製造する反応について、前記耐久性の評価で使用した後の複合体(nano-Ni3C/Al23)について、上記した方法でNi原子のK吸収端のXANES測定を行った。結果を図7に示す。図7では、実施例3-2で使用する前の複合体を、「Flesh nano-Ni3C/Al23」で表示し、ベンジルアミンを製造する反応について、前記耐久性の評価で使用した後の複合体(nano-Ni3C/Al23)を「Spent nano-Ni3C/Al23」で表示した。
図7から、複合体において、触媒としての使用後も、大気条件下で安定であり、低原子価の状態を維持できていることが確認された。
【0185】
[実施例4:第一級アミンの製造]
<実施例4-1>
実施例2-1で製造した複合体(nano-Ni3C/Al23)を触媒として用いて、ベンゾニトリルを水素化してベンジルアミン(表4での2a)を製造した。
具体的には、テフロン(登録商標)内筒付きの50mLステンレス鋼オートクレーブに、0.058gの実施例2-1のnano-Ni3C/Al23複合体(ベンゾニトリル100mol%に対してNiの量が10mol%)、3mlの2-プロパノール、基質として0.5mmolのベンゾニトリル、アンモニア源として1.2mlの25wt%のNH3水溶液を加えた。その後、10bar(1MPa)の水素雰囲気に切り替えて130℃に加熱し、激しく撹拌し、90分反応を行った。
反応後、オートクレーブを氷水浴で冷却し、H2ガスを注意深く放出した。続いて、反応混合物を遠心分離によって分離した後、GC-MSによって分析した。収率は99%以上であった。収率の測定は、実施例3-1と同様に行った。
【化4】
【0186】
<実施例4-2~4-26>
使用する基質のニトリル化合物の種類を下記表3及び表4の記載のとおりに変更する以外は、実施例4-1と同様の方法で、第一級アミンを製造した。収率の測定方法は、実施例4-1と同様である。
得られた第一級アミンと収率を表3及び表4に示す。
なお、表3及び表4において、以下のように、一部の実施例については、条件を変更した。
c)反応時間を90分から3時間に変更した。
d)10bar(1MPa)の水素雰囲気を40bar(4MPa)の水素雰囲気に変更し、反応時間を90分から6時間に変更した。
e)反応温度を130℃から150℃に変更し、10bar(1MPa)の水素雰囲気を40bar(4MPa)の水素雰囲気に変更し、反応時間を90分から12時間に変更した。
また、収率の欄に括弧内で表示された収率は、実施例4-1の条件を以下のように、変更した場合の収率を意味する。
1.5mlの2-プロパノール、アンモニア源として0.6mlの25wt%のNH3水溶液を使用し、1bar(0.1MPa)の水素雰囲気に切り替えて150℃で14時間に変更した。
【0187】
【表3】
【0188】
【表4】
【0189】
電子供与性基(-CH、-tBu、-OMe及び-OPh)及び電子求引性基(-F、-Cl、-Br、-CF3及び-acetyl)を有するベンゾニトリル誘導体を用いた場合では、対応する1級アミン類(2a~2n)が高収率で得られた(実施例4-1~4-14)。nano-Ni3C/Al23触媒はまた、高い化学選択性を示した。
ヘテロ原子を有する芳香環化合物である2-フランカルボニトリル(1o)、4-シアノピリジン(1p)は対応するアミン2o及び2pを高収率で与えた(実施例4-15及び4-16)。
さらに、脂肪族ニトリル1q~1vの水素化においても、nano-Ni3C/Al23は有効に作用し、対応するアミン類を高収率で与えた(実施例4-17~4-22)。立体障害の大きいニトリル1wも効率的にアミン(2w)へと変換され、95%の収率が得られた(実施例4-23)。
nano-Ni3C/Al23は広い基質一般性を示し、様々な芳香族及び脂肪族ニトリル1a、1b、1f、1i~1k、1m、1n、1r及び1vを、対応する1級アミンへと高収率で変換可能であった(表3及び表4)。
これまでに報告されている非貴金属触媒を用いたニトリル水素化が高い水素圧下で実施されていたことから、本触媒は非常に高い活性を有することがわかる。
【0190】
各実施例で製造した第一級アミンについて、塩酸塩を得るために、反応混合物に塩化水素溶液(1.25M、1,4-ジオキサン中)を加え、溶媒を除去し純粋な塩酸塩を得た後、NMR分析を行った。
【0191】
NMR分析装置(商品名「JEOL JNM-ESC400」、日本電子株式会社製)によるNMR分析の結果を以下に示す。
Benzylamine hydrochloride (2a)
【化5】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.45 (s, 3H), 7.51-7.36 (m, 5H), 4.01 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 134.1, 128.9, 128.5, 128.3, 42.1.
【0192】
4-Methylbenzylamine hydrochloride (2b)
【化6】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.38 (s, 3H), 7.36 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 3.95 (s, 2H) 2.31 (s, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 137.6, 131.0, 129.0, 128.9. 41.8, 20.7.
【0193】
3-Methylbenzylamine hydrochloride (2c)
【化7】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.45 (s, 3H), 7.32-7.28 (m, 3H), 7.20-7.18 (m, 1H), 3.96 (s, 2H), 2.51-2.47 (m, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 137.7, 134.0, 129.4, 128.9, 128.5, 125.9, 42.1, 20.9.
【0194】
2-Methylbenzylamine hydrochloride (2d)
【化8】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.55 (s, 3H), 7.44-7.42 (m, 1H), 7.27-7.23 (m, 3H), 3.99 (s, 2H), 2.35 (s, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 136.6, 132.3, 130.3, 129.2, 128.4, 126.0, 39.4, 18.8.
【0195】
4-(1,1-dimethylethyl)benzenemethanamine hydrochloride (2e)
【化9】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.36 (s, 3H), 7.45-7.40 (m, 4H), 3.96 (s, 2H), 1.28 (s, 9H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 151.0, 131.2, 128.7, 125.3, 41.8, 34.3, 31.0.
【0196】
4-Methoxybenzylamine hydrochloride (2f)
【化10】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.40 (s, 3H), 7.44-7.42 (m, 2H), 6.99-6.92 (m, 2H), 3.93 (s, 2H), 3.77 (s, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 159.2, 130.4, 125.9, 113.8, 55.1, 41.5.
【0197】
Benzo[d][1,3]dioxol-5-ylmethanamine hydrochloride (2g)
【化11】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.29 (s, 3H), 7.10 (s, 1H), 6.95 (s, 2H), 6.03 (s, 2H), 3.90 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 147.4, 127.6, 122.8, 109.6, 108.2, 101.2, 42.3.
【0198】
(4-Phenoxyphenyl)methanamine hydrochloride (2h)
【化12】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.43 (s, 3H), 7.52 (d, J = Hz, 2H), 7.43-7.39 (m, 2H), 7.19-7.15 (m, 1H), 7.05-7.00 (m, 4H), 3.99 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 147.4, 127.6, 122.8, 109.6, 108.2, 101.2, 42.3.
【0199】
(4-Fluorophenyl)methanamine hydrochloride (2i)
【化13】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ = 8.55 (s, 3H), 7.56 (s, 2H), 7.25 (s, 2H), 4.00 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 163.3, 160.8, 131.4, 131.3, 130.40, 130.38, 115.4, 115.2, 41.3.
【0200】
(4-Chlorophenyl)methanamine hydrochloride (2j)
【化14】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.55 (s, 3H), 7.58-7.53 (m, 2H), 7.52-7.47 (m, 2H), 4.01 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 133.1, 131.0, 128.5, 41.4.
【0201】
4-Bromobenzylamine hydrochloride (2k)
【化15】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.53 (s, 3H), 7.64 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.47 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 3.99 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 133.5, 131.4, 131.2, 121.7, 41.4.
【0202】
(3,5-Dichlorophenyl)methanamine hydrochloride (2l)
【化16】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.52 (s, 3H), 7.64 (s, 3H), 4.05 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 138.2, 134.0, 1127.9, 41.0.
【0203】
4-Trifluoromethylbenzylamine hydrochloride (2m)
【化17】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.68 (s, 3H), 7.80-7.74 (m, 4H), 4.12 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 138.8, 129.71, 129.67, 125.31, 125.27, 41.5.
【0204】
1-[4-(Aminomethyl)phenyl]ethan-1-one hydrochloride (2n)
【化18】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.60 (s, 3H), 8.00 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.66 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 4.10 (s, 2H), 2.59 (s, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 199.5, 139.1, 136.6, 129.0, 128.3, 41.7, 26.8.
【0205】
Furan-2-ylmethanamine hydrochloride (2o)
【化19】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ = 8.59 (s, 3H), 7.73 (s, 1H), 6.55-6.50 (d, J = 30 Hz, 2H), 4.05 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz): δ = 148.2, 144.0, 111.4, 110.7, 35.41.
【0206】
4-Picolylamine hydrochloride (2p)
【化20】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 9.02 (s, 3H), 8.90 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 8.05 (d, J= 4.5 Hz, 2H), 4.30 (s, 2H). 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz): δ = 152.1, 143.7, 126.3, 41.5.
【0207】
1-Cyclohexylmethanamine hydrochloride (2q)
【化21】
1H NMR ((DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.09 (s, 3H), 2.61 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 1.77-1.67 (m, 3H), 1.63-1.60 (m, 2H), 1.21-1.16 (m, 3H), 0.92-0.87 (m, 2H).13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 44.3, 35.3, 29.7, 25.6, 25.0.
【0208】
n-Pentylamine hydrochloride (2r)
【化22】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.04 (s, 3H), 2.75-2.71 (m, 2H), 1.56 (s, 2H), 1.30-1.28 (m, 4H), 0.88-0.86 (m, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.5, 27.9, 26.5, 21.5, 13.6.
【0209】
Octan-1-amine hydrochloride (2s)
【化23】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.05 (s, 3H), 2.75-2.70 (m, 2H), 1.55 (s, 2H), 1.26 (s, 10H), 0.87-0.85 (m, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.6, 31.1, 28.4, 26.8, 25.8, 22.0, 13.9.
【0210】
Dodecan-1-amine hydrochloride (2t)
【化24】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 7.94 (s, 3H), 2.72 (s, 2H), 1.52 (s, 2H), 1.26 (s, 18H), 0.84 (m, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.7, 31.3, 29.0, 28.9, 28.8, 28.7, 28.5, 26.9, 25.8, 22.1, 13.9.
【0211】
Octadecan-1-amine hydrochloride (2u)
【化25】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 7.78 (s, 3H), 2.76-2.73 (m, 2H), 1.24 (s, 32H), 0.86-0.84 (m, 3H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.6, 31.0, 28.8, 28.74, 28.69, 29.6, 28.4, 28.3, 26.7, 25.6, 21.8, 13.7.
【0212】
2-Phenylethylamine hydrochloride (2v)
【化26】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.05 (s, 3H), 7.35-7.31 (m, 2H), 7.27-7.25 (m, 3H), 3.04-3.00 (m, 2H), 2.91-2.88 (m, 2H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ = 137.3, 128.53, 128.51, 126.6, 32.9.
【0213】
1-Adamantylmethylamine hydrochloride (2w)
【化27】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 7.96 (s, 3H), 2.46 (s, 2H), 1.96 (s, 3H), 1.69 (d, J = 12.0 Hz, 3H), 1.61 (d, J = 11.6 Hz, 3H), 1.52 (s, 6H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 49.8, 38.8, 36.0, 31.5, 27.3.
【0214】
1,4-Bis(aminomethyl)benzene dihydrochloride (2x)
【化28】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.60 (s, 6H), 7.53 (s, 4H), 4.01 (s, 4H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 134.2, 129.0, 41.7.
【0215】
Octanediamine dihydrochloride (2y)
【化29】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 8.01 (s, 6H), 2.73 (s, 4H), 1.55 (s, 4H), 1.28 (s, 8H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.6, 28.2, 26.8, 25.6.
【0216】
Decanediamine dihydrochloride (2z)
【化30】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ = 7.97 (s, 6H), 2.75-2.72 (m, 4H), 1.53 (m, 4H), 1.26 (s, 12H). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ = 38.8, 28.8, 28.7, 27.1, 26.0.
【0217】
上記結果から、本発明の還元触媒(例えば、水素化触媒)は、多くの基質に対して、幅広く触媒活性を有し、基質の多様性に優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の炭化ニッケルナノ粒子及び複合体は、還元反応(例えば、水素化反応)における還元触媒として有用である。特に、アミン化合物の製造方法における水素化触媒として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7