(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174536
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】エッチャント組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L21/306 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069433
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】111119483
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】張 原嘉
(72)【発明者】
【氏名】周 柏廷
(72)【発明者】
【氏名】鍾 明諺
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA21
5F043AA40
5F043BB14
5F043DD07
5F043DD13
5F043FF01
5F043FF06
5F043GG02
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】限られた領域での窒化チタンの横方向のエッチングを抑制できるエッチャント組成物を提供する。
【解決手段】酸化剤と、下記式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンと、塩基性化合物と、溶媒とを含み、pH値が7以上である、エッチャント組成物。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤と、下記式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンと、塩基性化合物と、溶媒とを含み、
pH値が7以上である、エッチャント組成物。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又は-(C
2H
4O)
nHで表される基であり、nは、1又は2を表し、且つR
1、R
2は、互いに結合して窒素原子と一緒に窒素含有複素環を形成してもよく、R
3は、末端にヒドロキシ基又はアミノ基で置換してもよい炭素数4~18の直鎖アルキル基であり、且つ該アルキル基に含まれるメチレン基は、酸素原子に置き換わっていてもよい。)
【請求項2】
前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項1に記載のエッチャント組成物。
【請求項3】
前記有機第三級アミン又は第四級アミンが、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(Bis(2-morpholinoethyl)Ether)、ココナッツアミンエトキシレート(Coconut amine ethoxylate)、トリブチルアミン(Tributylamine)、ラウリルジメチルアミンオキシド(Lauryldimethylamine oxide)、牛脂アミンエトキシレート(Tallow amine ethoxylate)、N-ラウリルジエタノールアミン(N-Lauryldiethanolamine)及びステアリルジエタノールアミン(Stearyldiethanolamine)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のエッチャント組成物。
【請求項4】
前記塩基性化合物が、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のエッチャント組成物。
【請求項5】
前記塩基性化合物が、水酸化アンモニウムである、請求項1に記載のエッチャント組成物。
【請求項6】
さらにキレート剤を含む、請求項1に記載のエッチャント組成物。
【請求項7】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及び(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CDTA)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のエッチャント組成物。
【請求項8】
前記酸化剤の含有量が10~20重量%であり、前記有機第三級アミン又は第四級アミンの含有量が0.5~2重量%であり、前記塩基性化合物の含有量が0.01~0.5重量%であり、前記キレート剤の含有量が0.01~0.5重量%である、請求項6に記載のエッチャント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチャント組成物に関するものである。
本願は、2022年5月25日に台湾に出願された、台湾特許出願第111119483号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスには様々な材料が用いられており、各種化学気相成長法(以下CVD法)により成膜された窒化チタン(TiN)膜や各種CVD法で成膜されたシリコン(Si)膜が用いられている。半導体素子の製造工程にはエッチング工程があり、特定の材料を他の材料に対して選択的に除去する工程を含んでいる。
一例ではあるものの、TiNをエッチングする際、限られた領域での窒化チタンの横方向のエッチング(lateral etch)を低減して底部にある窒化チタンを除去しなければならないことがある。しかし、窒化チタンをエッチングするために従来使用されてきた市販品SC-1溶液(水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と水(H2O)との混合溶液)には、窒化チタンへのオーバーエッチングという問題が存在している。
【0003】
窒化チタンをエッチングするための組成物の例として、特許文献1には、PVD窒化チタンと、(Cu、Co、CVD窒化チタン、誘電体材料、低-k誘電体材料、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される)第2の材料とを含む半導体デバイスから、PVD窒化チタンを選択的に除去するための組成物が開示され、特許文献2には、マスク膜または有機膜のエッチングを防止して窒化チタンを選択的にエッチングすることができるエッチング組成物が開示され、特許文献3には、ハードマスク材料(例えば窒化チタン)を有するマイクロ電子デバイスから該ハードマスクを洗浄するための、水性洗浄組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特許第I616516号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0238478号明細書
【特許文献3】台湾特許第I428442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、特許文献1~3に記載されるような組成物は、窒化チタンを高い選択性でエッチングすることができるが、限られた領域での窒化チタンのエッチング、特に窒化チタンの横方向のエッチングを抑制することはできない。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、限られた領域での窒化チタンの横方向のエッチングを抑制できるエッチャント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、バルキーな構造(bulky structure)を有する特定の有機第三級アミン又は第四級アミンを含むエッチャント組成物にて窒化チタンへのエッチングを行うと、上述有機第三級アミン又は第四級アミンが、TiO2+表面に吸着して一時的な複合体を形成することにより、横方向のエッチングを低減できることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明は具体的に以下のようなものを提供する。
【0008】
<1> 酸化剤と、下記式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンと、塩基性化合物と、溶媒とを含み、
pH値が7以上である、エッチャント組成物。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又は-(C
2H
4O)
nHで表される基であり、nは、1又は2を表し、且つR
1、R
2は、互いに結合して窒素原子と一緒に窒素含有複素環を形成してもよく、R
3は、末端にヒドロキシ基又はアミノ基で置換してもよい炭素数4~18の直鎖アルキル基であり、且つ該アルキル基に含まれるメチレン基は、酸素原子に置き換わっていてもよい。)
【0009】
<2> 前記酸化剤が、過酸化水素である、上記<1>に記載のエッチャント組成物。
【0010】
<3> 前記有機第三級アミン又は第四級アミンが、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(Bis(2-morpholinoethyl)Ether) 、ココナッツアミンエトキシレート(Coconut amine ethoxylate)、トリブチルアミン(Tributylamine)、ラウリルジメチルアミンオキシド(Lauryldimethylamine oxide)、牛脂アミンエトキシレート(Tallow amine ethoxylate)、N-ラウリルジエタノールアミン(N-Lauryldiethanolamine)及びステアリルジエタノールアミン(Stearyldiethanolamine)からなる群から選択される少なくとも1つである、上記<1>に記載のエッチャント組成物。
【0011】
<4> 前記塩基性化合物が、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)からなる群から選択される少なくとも1つである、上記<1>に記載のエッチャント組成物。
【0012】
<5> 前記塩基性化合物が、水酸化アンモニウムである、上記<4>に記載のエッチャント組成物。
【0013】
<6> さらにキレート剤を含む、上記<1>に記載のエッチャント組成物。
【0014】
<7> 前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及び(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CDTA)からなる群から選択される少なくとも1つである、上記<6>に記載のエッチャント組成物。
【0015】
<8> 前記酸化剤の含有量が10~20重量%であり、前記有機第三級アミン又は第四級アミンの含有量が0.5~2重量%であり、前記塩基性化合物の含有量が0.01~0.5重量%であり、前記キレート剤の含有量が0.01~0.5重量%である、上記<6>に記載のエッチャント組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、窒化チタン(TiN)への良好なエッチング速度を維持しながら、限られた領域での窒化チタンの横方向のエッチングを抑制することができるエッチャント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪エッチャント組成物≫
本発明のエッチャント組成物は、酸化剤と、下記式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンと、塩基性化合物と、溶媒とを含み、且つpH値が7以上である。
以下、エッチャント組成物が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0018】
<酸化剤>
本発明のエッチャント組成物に含まれる酸化剤としては、窒化チタンを酸化可能であれば、特に限定されない。例えば、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸、過炭酸塩、過酸化尿素、及び過塩素酸;過塩素酸塩;並びに過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられ、そのうち、過酸化水素が特に好ましい。酸化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明のエッチャント組成物における酸化剤の含有量は、好ましくは7~25重量%、より好ましくは10~20重量%である。前記範囲内であれば、窒化チタンへのエッチング速度を適度に保つのと同時に、窒化チタンへのオーバーエッチングが発生しない。
【0020】
<式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミン>
本発明のエッチャント組成物は、バルキーな構造(bulky structure)を有する特定な有機第三級アミン又は第四級アミンを含むことにより、窒化チタンへのオーバーエッチングを抑制することができる。該作用機構については、明確にはなっていないが、前記有機第三級アミン又は第四級アミンが、酸化剤と窒化チタンとから形成されたTiO2+の表面に吸着して一時的な複合体を形成し、酸化剤のさらなる作用を抑制することにより、窒化チタンの横方向のエッチングを低減できると考えられる。
該有機第三級アミン又は第四級アミンは、次の式(1)、式(2)で表されるものである。
【0021】
【0022】
式(1)及び式(2)中、R1、R2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又は-(C2H4O)nHで表される基であり、nは、1又は2を表し、且つR1、R2は、互いに結合して窒素原子と一緒に窒素含有複素環を形成してもよく、R3は、末端にヒドロキシ基又はアミノ基で置換してもよい炭素数4~18の直鎖アルキル基であり、且つ該アルキル基に含まれるメチレン基は、酸素原子に置き換わっていてもよい。
【0023】
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0024】
窒素含有複素環の炭素数は特に限定されていないが、好ましくは1~6であり、具体例としては、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、ヘキサヒドロアゼピノ、ピペラジノ等が挙げられ、そのうち、モルホリノが特に好ましい。
【0025】
炭素数4~18の直鎖アルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。
【0026】
炭素数4~18の直鎖アルキル基の末端に置換できるアミノ基の炭素数は特に限定されていないが、好ましくは1~6であり、且つ直鎖状、分岐状または環状のいずれかであってもよく、そのうち、環状アミノ基が好ましい。環状アミノ基の具体例としては、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、ヘキサヒドロアゼピノ基、ピペラジノ基等が挙げられ、そのうち、モルホリノ基が特に好ましい。
【0027】
本発明で用いられる式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンとしては、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(Bis(2-morpholinoethyl)Ether)、ココナッツアミンエトキシレート(Coconut amine ethoxylate)、トリブチルアミン(Tributylamine)、ラウリルジメチルアミンオキシド(Lauryldimethylamine oxide)、牛脂アミンエトキシレート(Tallow amine ethoxylate)、N-ラウリルジエタノールアミン(N-Lauryldiethanolamine)及びステアリルジエタノールアミン(Stearyldiethanolamine) が挙げられる。式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のエッチャント組成物における式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンの含有量は、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%である。前記範囲内であれば、酸化剤のさらなる作用を効果的に抑制し、窒化チタンの横方向のエッチングを低減することができる。
【0029】
<塩基性化合物>
本発明のエッチャント組成物に含まれる塩基性化合物としては、酸化剤と窒化チタンとの反応により形成された酸化層を分解可能であれば、特に限定されない。好ましくは、第4級アンモニウム塩及び無機塩基からなる群より選択される少なくとも1つであり、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等が挙げられ、そのうち、水酸化アンモニウムが特に好ましい。塩基性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明のエッチャント組成物における塩基性化合物の含有量は、好ましくは0.01~0.5重量%である。かかる範囲内であれば、、窒化チタンへのエッチング速度を適度に保つのと同時に、窒化チタンへのオーバーエッチングが発生しない。
【0031】
<溶媒>
本発明のエッチャント組成物に用いられる溶媒としては、組成物に含まれる各成分を均一に溶解できるものであれば、特に限定されない。水、有機溶媒及び有機溶媒水溶液のいずれかを使用することができる。
【0032】
溶媒として使用できる有機溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸4-メトキシブチル、酢酸2-メチル-3-メトキシブチル、酢酸3-メチル-3-メトキシブチル、酢酸3-エチル-3-メトキシブチル、酢酸2-エトキシブチル、酢酸ジエチレングリコールエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールブチルエーテル等が挙げられ、そのうち、好ましくは、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)である。
【0033】
<キレート剤>
酸化剤の安定性を向上し、エッチャント組成物の使用寿命を延長するために、本発明のエッチャント組成物は、好ましくは、キレート剤をさらに含む。
【0034】
本発明のエッチャント組成物に含まれるキレート剤としては、特に限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及び(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CDTA)が挙げられる。キレート剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明のエッチャント組成物におけるキレート剤の含有量は、好ましくは0.01~0.5重量%である。前記範囲内であれば、酸化剤を含むエッチャント組成物を安定させ、組成物の使用寿命を延長することができる。
【0036】
<その他の成分>
エッチャント組成物は、上記の成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、pH調整剤、及び金属防食剤等が挙げられる。
【0037】
<pH>
本発明において、エッチャント組成物のpHは、7以上、好ましくは8以上9以下に調整される。エッチャント組成物のpHが前記範囲内にある場合、窒化チタンへのエッチング速度を維持することができる。
【0038】
≪エッチャント組成物の調製方法≫
本発明のエッチャント組成物は、上記説明した酸化剤、式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミン、塩基性化合物、溶媒、および必要に応じて添加されたキレート剤又はその他の成分などを混合して、pHを7以上の範囲に調整することにより調製される。混合方法は特に限定されないが、例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、エッチャント組成物を構成する各成分を混合すればよい。
【0039】
≪エッチング方法≫
上記説明したエッチャント組成物は、限られた領域での窒化チタンの横方向のエッチング(lateral etch)を低減して底部にある窒化チタンを除去するのに適している。具体的には、本発明のエッチャント組成物は、例えば、50~60℃の温度範囲で、スプレー法、浸漬法、スピンコート法、スリットコート法、ローラーコート法等によって、限られた領域での窒化チタンと約0.5~10分間、好ましくは約1~5分間接触させることで、底部にある窒化チタンを適度に除去できる。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[参考例、実施例1~21、比較例1~4]
表1、2に示す種類及び含有量の各成分を混合し、残部を水で構成して組成物全体の総質量が100重量%になるようにエッチャント組成物を調製した。また、各成分の含有量を表す数値の単位は重量%である。
【0042】
表1、2に示される略語は次の通りである。
NE-240:下記構造で表されるものである。
【化3】
CCS-80:ポリオキシエチレンヤシアルキルアミン
TETA:トリエチレンテトラミン
MDEA:N-メチルジエタノールアミン
HEDP:ヒドロキシエチリデンジホスホン酸
DPM:ジプロピレングリコールメチルエーテル
【0043】
<窒化チタン(TiN)のエッチング速度の評価>
エッチング対象物として、CVD法により表面に膜厚500ÅのTiN膜を形成したシリコン基板から1cm×1cmに切断した試験片を使用する。試験片を、50℃に加熱した表1、2に記載される各エッチャント組成物に浸漬し、浸漬時間が3~5分である(エッチャント組成物のエッチング速度に応じて浸漬時間をそれぞれ調整した)。次に試験片を取り出して500mLの水に浸漬し、試験片に付着したエッチャント組成物を取り除いた。その後、表面に残った水は乾燥窒素ガスを吹き付けて除去した。XRF(X-Ray Fluorescence)により、エッチャント組成物に浸漬する前後の窒化チタン(TiN)の膜厚を測定して膜厚の変化と浸漬時間からエッチャント組成物の窒化チタン(TiN)のエッチング速度を算出した。
【0044】
<窒化チタン(TiN)の横方向のエッチングの評価>
サンプルとして特定の構造を有するStructure 1を使用する。サンプルを、50℃に加熱した表1、2に記載される各エッチャント組成物に浸漬し、浸漬時間が0.5~2分である(エッチャント組成物のエッチング速度に応じて浸漬時間をそれぞれ調整した)。次にサンプルを取り出して500mLの水に浸漬し、サンプルに付着したエッチャント組成物を取り除いた。その後、表面に残った水は乾燥窒素ガスを吹き付けて除去した。TEM(Transmission electron microscope)を使用してエッチングされたサンプルの表面を観察し、窒化チタン(TiN)の横方向のエッチング程度を評価する。
Structure 1は、基板の上に膜厚が約3nmであるTiN膜が形成され、該TiN膜に、パターンマスクとして下部反射防止コーティング(BARC)が形成されているという構造を有するものである。また、BARCが覆っていないTiNの部分が最初にエッチングされており、横方向のエッチングはBARCの下で発生した。
【0045】
【0046】
【0047】
実施例1~21から、式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンを含み、且つpH値が7以上であるエッチャント組成物の場合、窒化チタン(TiN)への良好なエッチング速度を維持しながら、窒化チタンの横方向のエッチングを抑制できることが確認された。一方、比較例1~2、4から、式(1)、式(2)で表される有機第三級アミン又は第四級アミンを含まないエッチャント組成物を使用すると、一定の窒化チタン(TiN)のエッチング速度を維持できるが、横方向のオーバーエッチングの問題があることが確認された。また、比較例3から、エッチャント組成物のpH値が7未満の場合、窒化チタン(TiN)のエッチング速度が劣ることが確認された。
【0048】
[実施例2-1~2-5]
表3に示す種類及び含有量の各成分を混合し、残部を水で構成して組成物全体の総質量が100重量%になるようにエッチャント組成物を調製した。また、各成分の含有量を表す数値の単位は重量%である。
【0049】
表3に示される略語は次の通りである。
HEDP:ヒドロキシエチリデンジホスホン酸
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
DTPA:ジエチレントリアミン五酢酸
CDTA:(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸
【0050】
<エッチャント組成物のエッチング速度の経時安定性の評価>
エッチング対象物として、CVD法により表面に膜厚500ÅのTiN膜を形成したシリコン基板から1cm×1cmに切断した試験片を使用する。試験片を、50℃に加熱した表3に記載される各エッチャント組成物を入れた開放式カップ(約9:7アスペクト比の容器)に浸漬し、浸漬時間が3~5分(初期エッチング速度、エッチャント組成物のエッチング速度に応じて浸漬時間をそれぞれ調整した)である窒化チタン(TiN)へのエッチング速度を測定する。次にエッチャント組成物を入れた開放式カップを、50℃で加熱し続け、加熱時間が1時間、3時間、6時間であるエッチャント組成物の窒化チタン(TiN)へのエッチング速度を測定する(試験片の浸漬時間が3~5分)。そして、加熱時間が1時間、3時間、6時間での窒化チタン(TiN)のエッチング速度を、それぞれ窒化チタン(TiN)の初期エッチング速度で割って、エッチャント組成物のエッチング速度の経時安定性を評価した。
【0051】
【0052】
上表の実施例2-1~2-5の比較から、本発明のエッチャント組成物においてキレート剤をさらに含む実施例2-2~2-5では、キレート剤を含まない実施例2-1に対して、長期間を経っても一定のエッチング速度を維持することができ、即ち、エッチャント組成物の使用寿命を延長できることが確認できた。