(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174643
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】オートファジー活性化剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20231201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231201BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20231201BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231201BHJP
A61K 36/15 20060101ALI20231201BHJP
A61K 8/9767 20170101ALI20231201BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231201BHJP
A61K 129/00 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P43/00 107
A61K36/185
A61K8/9789
A61K36/15
A61K8/9767
A61Q19/08
A61K129:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010466
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022087288
(32)【優先日】2022-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520165766
【氏名又は名称】株式会社AutoPhagyGO
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】萩野 輝
(72)【発明者】
【氏名】石堂 美和子
(72)【発明者】
【氏名】庄司 志咲子
(72)【発明者】
【氏名】建部 恒
(72)【発明者】
【氏名】福田 かな子
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
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4C083EE12
4C088AB03
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4C088AC06
4C088CA03
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、生体内でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤を提供することである。
【解決手段】サラシア属植物の抽出物には、優れたオートファジー活性化作用があり、オートファジー活性化剤の有効成分として使用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物を有効成分として含む、オートファジー活性化剤。
【請求項2】
前記サラシア属植物が、サラシア・キネンシスである、請求項1に記載のオートファジー活性化剤。
【請求項3】
前記松樹皮が、フランス海岸松である、請求項1に記載のオートファジー活性化剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の飲食品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の医薬品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体内でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジーとは、細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれてオートファゴソームとよばれる膜構造を形成し、このオートファゴソームがリソソームと融合してオートリソソームとなって、老廃物や不要な蛋白質等を分解する細胞内分解機構である。近年、オートファジーが、生体において生理学的又は病理学的機能に重要な役割を担っており、オートファジー活性の低下が一因となっている疾患や症状が多数報告されている。このような疾患や症状としては、例えば、神経変性疾患、感染症、炎症性疾患、免疫疾患、腎疾患、呼吸器疾患、眼疾患、筋疾患、ミトコンドリア病、生活習慣病、皮膚老化、その他の各種疾患又は症状等がある。
【0003】
そこで、従来、オートファジー活性の低下が一因となっている疾患や症状の予防又は治療のために、オートファジーを活性化する有効成分を配合した医薬や食品が種々開発されている。例えば、特許文献1には、環状グルコオリゴ糖をオートファジー誘導剤として使用できることが報告されている。また、特許文献2には、ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物には、オートファジー活性化作用があり、抗老化用組成物の有効成分として使用し得ることが記載されている。特許文献3には、メマンチン、クレマスチン及びそれらの塩をオートファジー誘導剤として使用できることが報告されている。特許文献4には、梅肉エキスの疎水性有機溶媒抽出物又は梅肉エキスの中和処理物は、オートファジー誘導用飲食品として使用できることが開示されている。しかしながら、製剤処方の多様化、オートファジー活性化作用の更なる向上等に対応するために、オートファジーを活性化させる新たな有効成分の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/173653号
【特許文献2】国際公開第2019/188491号
【特許文献3】特開2019-94304号公報
【特許文献4】特開2007-143452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、生体内でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、サラシア属植物の抽出物、及び松樹皮の抽出物には、優れたオートファジー活性化作用があり、オートファジー活性化剤の有効成分として使用できることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物を有効成分として含む、オートファジー活性化剤。
項2. 前記サラシア属植物が、サラシア・キネンシスである、項1に記載のオートファジー活性化剤。
項3. 前記松樹皮が、フランス海岸松である、項1に記載のオートファジー活性化剤。
項4. 項1~3のいずれかに記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の飲食品。
項5. 項1~3のいずれかに記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の医薬品。
項6. 項1~3のいずれかに記載のオートファジー活性化剤を含む、オートファジー活性化用の化粧料。
項7. オートファジー活性化剤の製造のための、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物の使用。
項8. オートファジー活性化のために使用される、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物。
項9. オートファジー活性化のための、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物の非医薬的使用。
項10. オートファジー活性化のための、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物の化粧的使用(Cosmetic use)。
項11. オートファジー活性化が求められる者に、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物を適用する、オートファジーの活性化方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示のオートファジー活性化剤は、優れたオートファジーの活性化作用を有しており、更に飲食品、医薬品、化粧料等の様々な形態で提供できるので、オートファジーの活性低下が一因となって生じる疾患や症状を予防又は改善できる様々な製品の提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、数値範囲に関する記載「X~Y」は、X以上Y以下であることを指す。
【0010】
本開示のオートファジー活性化剤は、サラシア属植物の抽出物、及び/又は松樹皮の抽出物を有効成分とすることを特徴とする。以下、本開示のオートファジー活性化剤について詳述する。
【0011】
[有効成分]
本開示のオートファジー活性化剤では、オートファジーを活性化させるための有効成分として、サラシア属植物の抽出物、及び松樹皮の抽出物の中の少なくとも1つを使用する。以下、各抽出物について説明する。
【0012】
・サラシア属植物の抽出物
サラシア属植物の抽出物とは、サラシア属植物を抽出原料として抽出処理を行うことにより得られる成分である。
【0013】
抽出原料として使用されるサラシア属植物の種類については、特に制限されないが、例えば、サラシア・キネンシス(Salacia chinnensis)、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・ラフォティリア(Salacia latifolia)、サラシア・ブルノニアーナ(Salacia burunoniana)、サラシア・グランディフローラ(Salacia grandiflora)、サラシア・マクロスペルマ(Salacia macroeperma)等が挙げられる。これらのサラシア属植物の中でも、好ましくはサラシア・キネンシスが挙げられる。
【0014】
抽出原料として使用されるサラシア属植物の抽出対象部位については、特に制限されないが、例えば、幹、根、葉、果実、樹皮等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは幹、根、樹皮、より好ましくは幹が挙げられる。また、抽出処理に供されるサラシア属植物の抽出対象部位は、抽出効率を高めるために、必要に応じて、乾燥、裁断、粉砕等の処理が施されていてもよい。
【0015】
抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶媒抽出処理が挙げられる。
【0016】
溶媒抽出処理で使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等の親水性溶媒;これらの混合溶媒等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは水、低級アルコール、及びこれらの混合溶媒、より好ましくは水、エタノール、及びこれらの混合溶媒、特に好ましくは水が挙げられる。
【0017】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中に、サラシア属植物の抽出対象部位を浸漬させて、必要に応じて撹拌することによって行えばよく、例えば、サラシア属植物の抽出対象部位100g当たり抽出溶媒1~50L程度に浸漬させて、例えば1~24時間程度行えばよい。
【0018】
また、溶媒抽出処理は、加熱(例えば、60~110℃、好ましくは80~98℃)条件下で行うことが好ましい。特に、抽出溶媒として水を使用する場合には、加熱条件下でサラシア属植物の抽出処理を行うことが好ましい。即ち、本開示で使用されるサラシア属植物の抽出物の好適な一例として、サラシア属植物の熱水抽出処理物が挙げられる。なお、本開示において、「サラシア属植物の熱水抽出処理物」とは、具体的には、60~110℃、好ましくは80~98℃の熱水を用いて抽出処理されたサラシア属植物の抽出物を指す。
【0019】
抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、サラシア属植物の抽出物(抽出液)が得られる。抽出処理により得られた抽出液は、必要に応じて、濾過処理;ポリスチレンゲル(ポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体等)、イオン交換樹脂、活性炭等の担体を充填したカラムを用いた各種クロマトグラフィー等の吸着処理に供して精製処理に供してもよい。また、得られた抽出液は、非濃縮エキスとしてそのまま使用してもよいが、必要に応じて濃縮工程に供して軟エキスとして使用したり、更に乾燥工程に供してエキス末として使用したりしてもよい。
【0020】
・松樹皮の抽出物
松樹皮の抽出物とは、松樹皮を抽出原料として抽出処理を行うことにより得られる成分である。
【0021】
抽出原料として使用される松樹皮の由来となる松の種類については、特に制限されないが、例えば、フランス海岸松(Pinus pinaster)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはフランス海岸松が挙げられる。
【0022】
抽出原料として使用される松樹皮は、抽出効率を高めるために、必要に応じて、乾燥、裁断、粉砕等の処理が施されていてもよい。
【0023】
抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶媒抽出処理が挙げられる。
【0024】
溶媒抽出処理で使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等の親水性溶媒;これらの混合溶媒等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは水、低級アルコール、及びこれらの混合溶媒、より好ましくは水、エタノール、及びこれらの混合溶媒、特に好ましくは含水エタノールが挙げられる。
【0025】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒に松樹皮を浸漬させて、必要に応じて撹拌することによって行えばよく、抽出溶媒に浸漬させる松樹皮の量、抽出時間等については適宜設定すればよい。また、溶媒抽出処理は、加熱条件下で行ってもよい。
【0026】
抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、松樹皮の抽出物(抽出液)が得られる。抽出処理により得られた抽出液は、必要に応じて、濾過処理;ポリスチレンゲル(ポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体等)、イオン交換樹脂、活性炭等の担体を充填したカラムを用いた各種クロマトグラフィー等の吸着処理に供して精製処理に供してもよい。また、得られた抽出液は、非濃縮エキスとしてそのまま使用してもよいが、必要に応じて濃縮工程に供して軟エキスとして使用したり、更に乾燥工程に供してエキス末として使用したりしてもよい。
【0027】
[用途・適用量等]
本開示のオートファジー活性化剤は、生体内でオートファジーの活性を向上させる用途に使用される。生体内でオートファジーの活性を向上させることによりオートファジーの活性低下が一因となって生じる疾患や症状を予防又は改善できるので、本開示のオートファジー活性化剤は、当該疾患又は症状の予防又は改善剤として使用することができる。
【0028】
オートファジー活性の低下が一因となって生じる疾患及び症状としては、例えば、神経変性疾患、感染症、炎症性疾患、免疫疾患、腎疾患、呼吸器疾患、眼疾患、筋疾患、ミトコンドリア病、生活習慣病、皮膚老化、その他の各種疾患又は症状等が挙げられる。
【0029】
当該疾患及び症状として、具体的には、筋委縮症、ミオパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病(神経セロイドリポフスチン症、多系統萎縮症(MSA)等を含む)、ハンチントン病、リー症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB)、クロイツフェルト-ヤコブ病、特発性急速眼球運動睡眠行動障害等の神経変性疾患;クローン病、膵炎、鼻副鼻腔炎等の炎症性疾患;グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、1型糖尿病、重症筋無力症、グッドパスチャー病、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、乾癬、アトピー性皮膚炎、シェーグレン症候群等の免疫疾患;糸球体硬化症、腎不全等の腎疾患;嚢胞性線維症、喘息、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症等の呼吸器疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性症等の眼疾患;筋肉減退、筋肉萎縮、悪液質、サルコペニア、筋ジストロフィー、ミオペニア等の筋疾患;糖尿病難聴症候群(DAD)、レーベル遺伝性視神経萎縮症、ニューロパシー,運動失調,網膜色素変性症候群(NARP)、ミトコンドリア神経胃腸管性脳症症候群(MNGIE)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)等のミトコンドリア病;動脈硬化、高脂血症、肥満等の生活習慣病;皺等の皮膚老化;脳腫脹、ライソゾーム病、ダウン症、心不全、疲労、睡眠不足、冷え性、便秘、筋肉低下、創傷治癒遅延等のその他の疾患及び症状等が挙げられる。
【0030】
本開示のオートファジー活性化剤の適用方法については、経口、経皮、経腸、経静脈、経肺、皮下、経粘膜、筋肉内等のいずれであってもよく、予防又は治療対象となる疾患や症状等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
本開示のオートファジー活性化剤の適用量については、剤形、製剤形態、付与すべきオートファジー活性化作用の程度等に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
例えば、本開示のオートファジー活性化剤としてサラシア属植物の抽出物を使用し、経口投与又は経口摂取される場合であれば、成人1日当たりサラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で1~5000mg程度で、1日当たり1回、又は1日当たり複数回に分けて経口投与又は経口摂取すればよい。また、本開示のオートファジー活性化剤として松樹皮の抽出物を使用し、経口投与又は経口摂取される場合であれば、成人1日当たり松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で60~120mg程度で、1日当たり1回、又は1日当たり複数回に分けて経口投与又は経口摂取すればよい。
【0033】
また、例えば、本開示のオートファジー活性化剤としてサラシア属植物の抽出物を使用し、経皮適用される場合であれば、1回当たり、皮膚1cm2当たり、サラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で1~50000μg程度となる量で、1日1~数回程度の頻度で経皮適用すればよい。また、本開示のオートファジー活性化剤として松樹皮の抽出物を使用し、経皮適用される場合であれば、1回当たり、皮膚1cm2当たり、松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で1~50000μg程度となる量で、1日1~数回程度の頻度で経皮適用すればよい。
【0034】
[使用対象となる製品]
本開示のオートファジー活性化剤が使用される製品の剤型については、特に制限されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよく、オートファジー活性化剤の適用方法等に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
本開示のオートファジー活性化剤が使用される製品については、特に制限されないが、例えば、具体的には、飲食品、医薬品、化粧料等が挙げられる。
【0036】
本開示のオートファジー活性化剤を飲食品に使用する場合(即ち、オートファジー活性化用の飲食品として提供する場合)、サラシア属植物の抽出物及び/又は松樹皮の抽出物を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。飲食品としては、一般の飲食品の他、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品を含む)、病者用食品等の食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に限定されないが、具体的には、茶飲料、栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;グミ、キャンディー、ゼリー等の嗜好品等が挙げられる。これらの飲食品の中でも、好ましくはサプリメントが挙げられる。
【0037】
本開示のオートファジー活性化剤としてサラシア属植物の抽出物を用いて飲食品に使用する場合、飲食品におけるサラシア属植物の抽出物の含有量については、飲食品の種類、1日当たりのサラシア属植物の抽出物の摂取量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、サラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~100重量%、好ましくは0.001~90重量%、より好ましくは0.003~80重量%が挙げられる。また、本開示のオートファジー活性化剤として松樹皮の抽出物を用いて飲食品に使用する場合、飲食品における松樹皮の抽出物の含有量については、飲食品の種類、1日当たりの松樹皮の抽出物の摂取量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~100重量%、好ましくは0.001~90重量%、より好ましくは0.003~80重量%が挙げられる。
【0038】
本開示のオートファジー活性化剤を医薬品(医薬部外品を含む)に使用する場合(即ち、オートファジー活性化用の医薬品として提供する場合)、サラシア属植物の抽出物及び/又は松樹皮の抽出物を、そのまま又は他の添加剤等と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。医薬品としては、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセルを含む)、トローチ剤、チュアブル剤、エキス剤(軟エキス剤、乾燥エキス剤等を含む)、ゼリー剤、シロップ剤、酒精剤、エリキシル剤、リポソーム製剤等の内服用医薬品;軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、噴霧剤、貼付剤、乳液剤、懸濁液剤、パップ剤、リニメント剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤、吸入剤、坐剤等の外用医薬品;注射剤等が挙げられる。
【0039】
本開示のオートファジー活性化剤としてサラシア属植物の抽出物を用いて医薬品に使用する場合、医薬品におけるサラシア属植物の抽出物の含有量については、医薬品の種類、1日当たりのサラシア属植物の抽出物の投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、内服用医薬品の場合であれば、サラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~100重量%、好ましくは0.001~90重量%、より好ましくは0.003~80重量%が挙げられ、外用医薬品の場合であれば、サラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~5重量%、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.003~1重量%が挙げられる。また、本開示のオートファジー活性化剤として松樹皮の抽出物を用いて医薬品に使用する場合、医薬品における松樹皮の抽出物の含有量については、医薬品の種類、1日当たりの松樹皮の抽出物の投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、内服用医薬品の場合であれば、松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~100重量%、好ましくは0.001~90重量%、より好ましくは0.003~80重量%が挙げられ、外用医薬品の場合であれば、松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~5重量%、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.003~1重量%が挙げられる。
【0040】
本開示のオートファジー活性化剤を化粧料に使用する場合(即ち、オートファジー活性化用の化粧料として提供する場合)、サラシア属植物の抽出物及び/又は松樹皮の抽出物を、そのまま又は他の添加剤等と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。化粧料としては、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、軟膏剤、パック剤等が挙げられる。
【0041】
本開示のオートファジー活性化剤としてサラシア属植物の抽出物を用いて化粧料に使用する場合、化粧料におけるサラシア属植物の抽出物の含有量については、化粧料の種類、1日当たりのサラシア属植物の抽出物の適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、サラシア属植物の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~5重量%、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.003~1重量%が挙げられる。また、本開示のオートファジー活性化剤として松樹皮の抽出物を用いて化粧料に使用する場合、化粧料における松樹皮の抽出物の含有量については、化粧料の種類、1日当たりの松樹皮の抽出物の適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、松樹皮の抽出物が乾燥重量換算で、0.0001~5重量%、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.003~1重量%が挙げられる。
【実施例0042】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の試験で使用したサラシア抽出物は、商品名「サラシアエキスパウダーK」(日本新薬株式会社製)(サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)の幹を熱水抽出した抽出物の乾燥粉末)である。また、以下の試験で使用した松樹皮の抽出物は、商品名「ピクノジェノール」(スイス、ホファー・リサーチ社製)(フランス海岸松の樹皮を含水エタノールで抽出した抽出物の乾燥粉末)である。
【0043】
試験例1:tfLC3アッセイによるオートファジー活性の測定
表1に示す植物抽出物について、tfLC3アッセイによりオートファジー活性化効果を測定した。具体的には、先ず、mRFP(monomeric red fluorescent protein)とGFP(green fluorescent protein)をLC3へタンデムに融合したtfLC3を、pMXs-IRES-puro-tfLC3プラスミドとエンベロープエンコードプラスミドpVSVGに組み込むことによりレトロウイルスベクターを作製した。得られたレトロウイルスベクターをHela細胞に導入し、tfLC3安定発現株を作製した。tfLC3安定発現株を2500 cells/wellとなるように96wellプレートに播種し、37℃、5%CO
2で24時間培養した。その後、表1に示す濃度となるように、各ウェルに表1に示す植物抽出物を添加し、37℃、5%CO
2で24時間培養した。培養後、PBS(-)で細胞を2回洗浄した後、ヘキスト色素(Hoechst333342)入り4%PFA/PBS(4% paraformaldehyde in PBS)を用いて、室温(20~25℃)で15分間、細胞を固定化した。固定化後、PBS(-)で細胞を洗浄した後,共焦点定量イメージサイトメーターCQ1(横河電機社)を用いてRFP及びGFPの蛍光強度を含む細胞画像データを取得した。CQ1で取得した細胞画像データをソフトウエアCellPathfinder(横河電機社)により解析し、各蛍光強度を数値化し、以下の式に従って、オートファジー活性値を求めた。
【数1】
【0044】
また、コントロールとして、植物抽出物を添加しないこと以外は、前記と同条件で試験を行ってオートファジー活性値を求め、以下の式に従って、オートファジー活性相対値を算出した。
【数2】
【0045】
結果を表1に示す。サラシア抽出物及び松樹皮の抽出物以外の植物抽出物では、オートファジー活性の向上が認められなかったが、サラシア抽出物及び松樹皮の抽出物では、濃度依存的にオートファジー活性を向上させていた。
【0046】
【0047】
試験例2:LC3ターンオーバーアッセイによるオートファジー活性の測定
松樹皮の抽出物について、LC3ターンオーバーアッセイによりオートファジー活性化効果を測定した。具体的には、6ウェルプレートの各ウェルにヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)3.0×10
5 cellsとなるように播種し、Endothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地を用いて24時間、37℃でインキュベートした。次いで、各ウェルの上清を除去した後に、ドキソルビン12.5 ng/mlを含むEndothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地(ドキソルビン含有培地)2 mlを添加し、48時間に1回の頻度で上清を除去して新鮮なドキソルビン含有培地に交換しつつ、37℃で5日間インキュベートすることにより、細胞老化を誘導した。ドキソルビン含有培地で5日間インキュベートした後に、各ウェルの上清を除去し、松樹皮の抽出物を0.00001 wt/v%又は0.00002 wt/v%を含むEndothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地(松樹皮の抽出物含有培地)2 mlを添加し、37℃で24時間インキュベートした。次いで、ウェル中の細胞を回収して、RIPA buffer(182-02451, 富士フィルム)によってタンパク質を抽出してウエスタンブロッティングを行い、ImageJを用いてオートファジーのマーカーであるLC3の発現量(CQ未処理)を定量した。また、オートファジーフラックスを求めるために、ウェル中の細胞を回収する4時間前に各ウェルにクロロキン二リン酸塩(CQ)を40 μMとなるように添加したこと以外は、前記と同条件で試験を行い、LC3の発現量(CQ処理)を定量した。また、松樹皮の抽出物含有培地の代わりにEndothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地を用いたこと以外は、前記と同条件で試験を行い、LC3の発現量(コントロール)を定量した。更に、ドキソルビン含有培地の代わりにEndothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地を用いて細胞老化を誘導せず、且つ松樹皮の抽出物含有培地の代わりにEndothelial Cell Media2(Cat. No: C-22211, Promo Cell)培地を用いたこと以外は、前記と同条件で試験を行い、LC3の発現量(細胞老化の誘導なし)を定量した。LC3の発現量は、ウエスタンブロッティングを行った後に、LC3のバンドをImageJにて定量した。求めたLC3の発現量から、以下の式に従って、オートファジーフラックスを算出した。
【数3】
【0048】
結果を表2に示す。表2には、「細胞老化の誘導なし」の条件でのオートファジーフラックスの値を100として、各条件でのオートファジーフラックスの相対値を示す。細胞老化の誘導によってオートファジーフラックスが低下していたが、松樹皮の抽出物の添加によってオートファジーフラックスの回復が認められた。即ち、本結果からも、松樹皮の抽出物にはオートファジーを活性化させる作用があることが確認された。
【0049】