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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174657
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231201BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231201BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231201BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231201BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
C09J7/38
C09J201/00
B32B7/023
B32B27/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147967
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2018246119の分割
【原出願日】2018-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2017254272
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中村 大地
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149AB12
2H149AB13
2H149AB23
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA02Y
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA12X
2H149FA13X
2H149FA24Y
2H149FA26Y
2H149FA63
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA69
2H149FD18
2H149FD31
2H149FD35
2H149FD47
2H149FD48
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC24
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC43
3K107EE26
3K107FF02
3K107FF07
3K107FF15
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK25G
4F100AT00
4F100BA04
4F100CB05A
4F100CB05C
4F100CB05G
4F100JD04
4F100JK01
4F100JN10
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】高温、高湿の環境においても、偏光板のしわの発生を抑制することのできる耐久性の高い偏光板を提供すること。
【解決手段】偏光子11と、第1の粘着剤層12と、位相差層14と、第2の粘着剤層13と、をこの順に含む偏光板であって、第1の粘着剤層12の貯蔵弾性率をE(Pa)、第1の粘着剤層12の厚みをT(μm)とし、第2の粘着剤層13の貯蔵弾性率をE(Pa)、第2の粘着剤層13の厚みをT(μm)とするとき、8.0≧Log(E/T)+Log(E/T)≧6.4を満たし、第1の粘着剤層12および第2の粘着剤層13は、温度40℃、湿度90%での水蒸気透過度がそれぞれ1000g/m・24hr~10000g/m・24hrである偏光板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、
第1の粘着剤層と、
位相差層と、
第2の粘着剤層と、
をこの順に含む偏光板であって、
前記第1の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第1の粘着剤層の厚みをT(μm)とし、前記第2の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第2の粘着剤層の厚みをT(μm)とするとき、8.0≧Log(E/T)+Log(E/T)≧6.4を満たし、前記Eおよび前記Eは、以下に示す粘着剤層の貯蔵弾性率の測定に記載される方法により測定され、
前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層は、温度40℃、湿度90%での水蒸気透過度がそれぞれ1000g/m・24hr~10000g/m・24hrであり、
前記位相差層は1層であり、
前記位相差層は、液晶化合物が硬化した層であり、かつ配向層を含んでいてもよく、
前記位相差層の厚みは5μm以下である偏光板。
[粘着剤層の貯蔵弾性率の測定]
粘着剤層を厚さ0.2mmになるように複数枚積層し、得られた粘着剤層から、直径8mmの円柱体を打ち抜き、これを貯蔵弾性率G’の測定用サンプルとする。
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,MCR300)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(Pa)を測定する。
〔測定条件〕
ノーマルフォースFN:1N
歪みγ:1%
周波数:1Hz
温度:25℃
【請求項2】
偏光子と、
第1の粘着剤層と、
位相差層と、
第2の粘着剤層と、
をこの順に含む偏光板であって、
前記第1の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第1の粘着剤層の厚みをT(μm)とし、前記第2の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第2の粘着剤層の厚みをT(μm)とするとき、8.0≧Log(E/T)+Log(E/T)≧6.4を満たし、前記Eおよび前記Eは、以下に示す粘着剤層の貯蔵弾性率の測定に記載される方法により測定され、
前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層は、温度40℃、湿度90%での水蒸気透過度がそれぞれ1000g/m・24hr~10000g/m・24hrであり、
前記位相差層は、第1の位相差層と第2の位相差層との2層からなり、
前記第1の位相差層と前記第2の位相差層とは接着剤層のみを介して積層され、
前記接着剤層の厚みは5μm以下であり、
前記位相差層は、液晶化合物が硬化した層であり、かつ配向層を含んでいてもよく、
前記第1の位相差層および前記第2の位相差層の厚みは5μm以下である偏光板。
[粘着剤層の貯蔵弾性率の測定]
粘着剤層を厚さ0.2mmになるように複数枚積層し、得られた粘着剤層から、直径8mmの円柱体を打ち抜き、これを貯蔵弾性率G’の測定用サンプルとする。
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,MCR300)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(Pa)を測定する。
〔測定条件〕
ノーマルフォースFN:1N
歪みγ:1%
周波数:1Hz
温度:25℃
【請求項3】
前記位相差層は、以下に示す突刺し強度の測定に記載される方法により測定される突刺し強度が100gf以下である請求項1又は2に記載の偏光板。
[突刺し強度の測定]
突刺し試験は、先端が球形(先端径1mmφ、0.5R)のニードルを装着したカトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機“KES-G5 ニードル貫通力測定仕様”を使用し、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.0033cm/秒の測定条件下で行う。突刺し試験で測定される突刺し強度は、試験片12個に対して突刺し試験を行い、その平均値とする。
【請求項4】
以下の(1)及び(2)のいずれか一方を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板。
(1)前記Log(E/T)が3.1以上。
(2)前記Log(E/T)が3.0以上。
【請求項5】
前記第1の粘着剤層、及び前記第2の粘着剤層の少なくとも一方の貯蔵弾性率が20,000Pa以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記第1の粘着剤層、及び前記第2の粘着剤層の少なくとも一方の厚みが40μm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記位相差層として、少なくとも第1の位相差層と、第2の位相差層と、を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記位相差層として、少なくとも第1の位相差層と、第2の位相差層と、が接着剤層を介して積層された積層体である請求項7に記載の偏光板。
【請求項9】
前記積層体は突刺し強度が100gf以下である請求項8に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機ELともいう。)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、偏光子及び位相差層を備える偏光板が広く用いられている。
【0003】
最近、有機ELの台頭により、画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴って、偏光板についても薄型化が求められている。また、フレキシブル用途を見据えて、従来の位相差フィルムから、位相差層の原料としてより靱性の高い重合性の液晶化合物を使用する研究が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-54093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、偏光板の薄型化を試みると偏光板の耐久性が不十分になるという問題がある。特に偏光板が、高温、高湿の環境にさらされたとき、偏光板にしわが発生するといった不具合が生じる。
【0006】
偏光板のしわは有機ELをはじめとした画像表示装置の画像を歪める。そのため、前記偏光板のしわは、画像表示装置の視認性を著しく損ねるという問題がある。携帯電話等の防水技術の進歩に伴い、携帯電話等を高温、高湿の環境の風呂場、サウナ等で使用する人々が増えている。そのため、高温、高湿の環境において耐久性を有する偏光板に対するニーズが高まっている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高温、高湿の環境においても、偏光板のしわの発生を抑制することのできる耐久性の高い偏光板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の偏光板が、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1]偏光子と、第1の粘着剤層と、位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順に含む偏光板であって、
前記第1の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第1の粘着剤層の厚みをT(μm)とし、前記第2の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、前記第2の粘着剤層の厚みをT(μm)とするとき、Log(E/T)+Log(E/T)≧6.4を満たす偏光板。
[2]前記位相差層は突刺し強度が100gf以下である[1]に記載の偏光板。
[3]以下の(1)及び(2)のいずれか一方を満たす[1]又は[2]に記載の偏光板。
(1)前記Log(E/T)が3.1以上。
(2)前記Log(E/T)が3.0以上。
[4]前記第1の粘着剤層、及び前記第2の粘着剤層の少なくとも一方の貯蔵弾性率が20,000Pa以上である[1]~[3]のいずれか1に記載の偏光板。
[5]前記第1の粘着剤層、及び前記第2の粘着剤層の少なくとも一方の厚みが40μm以下である[1]~[4]のいずれか1に記載の偏光板。
[6]前記位相差層として、少なくとも第1の位相差層と、第2の位相差層と、を含む[1]~[5]のいずれか1に記載の偏光板。
[7]前記位相差層として、少なくとも第1の位相差層と、第2の位相差層と、が接着剤層を介して積層された積層体である[6]に記載の偏光板。
[8]前記積層体は突刺し強度が100gf以下である[7]に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温、高湿の環境においても、偏光板のしわの発生を抑制することのできる耐久性の高い偏光板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。
図2】第2実施形態に係る2層の位相差層を含む偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。
図3】第2実施形態に係る3層の位相差層を含む偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る偏光板の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0012】
[第1実施形態]
<偏光板>
本明細書において「偏光板」とは、偏光子及び位相差層を備える光学フィルムである。 第1実施形態の偏光板は、偏光子と、第1の粘着剤層と、位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順で備える。
図1は、第1実施形態に係る偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。図1に示すように、偏光板100は、偏光子11と、第1の粘着剤層12と、位相差層14と、第2の粘着剤層13とがこの順で積層されている。
【0013】
ここで、位相差層14は、例えばλ/2の位相差を与える層、λ/4の位相差を与える層、及びポジティブC層、並びにこれらの層の組合せを積層して得られる層である。組合せて得られる積層体としては、λ/2の位相差を与える層とλ/4の位相差を与える層との積層体、λ/4の位相差を与える層とポジティブC層との積層体などが例として挙げられる。
本明細書において、「λ/2の位相差を与える層」とは、ある特定の波長の直線偏光の偏光方位を90°変換する位相差層である。本明細書において、「λ/4の位相差を与える層」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する位相差層である。位相差層14がλ/4の位相差を与える層である場合、偏光子11と、位相差層14を備える偏光板100は、円偏光板として機能し得る。本明細書において、「ポジティブC層」とは、面内における遅相軸方向の屈折率をNx、その面内における進相軸方向の屈折率をNy、その厚み方向における屈折率をNzとしたときに、Nz>Nx≧Nyの関係を満足する層である。Nxの値とNyの値との差は、Nyの値の0.5%以内であることが好ましく、0.3%以内であることがより好ましい。0.5%以内であれば、実質的にNx=Nyと見なすことができる。
【0014】
上述のような構成の偏光板を、高温、高湿環境で保存すると、偏光板にしわが生じることがある。発明者らが検討を進めたところ、高温、高湿環境に保存した後にしわが生じた偏光板は、位相差層が変形していることを別途確認した。このような現象は、高温、高湿環境下においては、位相差層を変形させる応力が働くことを示唆している。位相差層を変形させる応力は、位相差層に接する粘着剤の影響が大きいと考えられる。
【0015】
発明者らがさらに検討した結果、上述のような構成の偏光板においては、位相差層に接する粘着剤層の構成を制御することにより、偏光板を高温、高湿環境に保存した後のしわを抑制できることが見出された。すなわち、上述のような構成の偏光板において、位相差層に接する粘着剤の構成を制御することにより、位相差層に加わる応力を抑制できるとの着想を得、発明を完成させた。
【0016】
以下、本実施形態の偏光板100を構成する各層について詳細に説明する。
【0017】
<偏光子>
本実施形態の偏光板100は偏光子11を有する。本明細書において「偏光子」とは、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する光学フィルムのことである。
【0018】
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層フィルムであってもよい。偏光子は、重合性液晶化合物に二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜であってもよい。
【0019】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体的な例としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略すこともある。)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、及び延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子を用いることが好ましい。
【0020】
PVA系フィルムの原料であるポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用可能である。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。
【0022】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、PVA系フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。PVA系フィルムの膜厚は、例えば10~100μm程度、好ましくは10~50μm程度である。
【0023】
偏光子の厚みは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、前記偏光子の厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
偏光子の厚みが薄くなると、高温、高湿の環境下において偏光子端部のヨウ素が抜けやすくなる。そのため、偏光子の厚みは5μm以上であることが好ましい。また、偏光子の厚みが厚い場合には、冷熱交換試験において偏光子のワレが発生しやすくなる。そのため、偏光子の厚みは15μm以下であることが好ましい。
【0024】
本明細書において「層の厚み」は、偏光板における層の積層方向の寸法を意味する。本実施形態における「層」としては、例えば、偏光子、粘着剤層、接着剤層、位相差層、保護フィルム等が挙げられる。層の厚みは、例えば、白色干渉式の非接触膜厚計を用いたり、接触式の膜厚計を用いたりして層の任意の点を測定し、その平均値を算出することにより得ることができる。非接触式の膜厚計を用いる場合、測定する対象に触れることなく精緻な測定が可能であり、測定する対象が積層体の一部の層であっても、各層を剥離する事なく対象の膜厚を測定することができる。
なお、偏光子の片面、又は両面に後述する保護フィルムが積層されている場合、前記偏光子の厚みに、前記保護フィルムの厚みは含めない。
【0025】
前記偏光子は片面又は両面に後述する粘着剤層、又は接着剤層を介して保護フィルムが積層されていてもよい。偏光子の片面又は両面に積層することができる保護フィルムとしては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう)、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
偏光子の両面に保護フィルムが積層されている場合、二つの保護フィルムの樹脂組成は同一でもよいし、異なっていてもよい。
熱可塑性樹脂から形成されたフィルムは、PVA系樹脂及び二色性物質からなる偏光子との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(下塗り層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0026】
保護フィルムは、温度40℃、湿度90%RHでの透湿度が1~1500g/m・24hrであることが好ましい。保護フィルムの透湿度が1500g/m・24hrを超えると、高温高湿環境において、前記保護フィルムを含む偏光板にシワが発生しやすくなることがある。保護フィルムの透湿度が低いほど、前記保護フィルムを含む偏光板のシワの防止効果は顕著であり、温度40℃、湿度90%RHでの透湿度は、1000g/m・24hr以下であることがより好ましく、100g/m・24hr以下であることがさらに好ましい。透湿度は、JIS Z 0208:1976に準拠して測定をすることができる。
【0027】
前記保護フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、前記保護フィルムの厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
偏光子の片面又は両面に保護フィルムを有する場合、偏光子を十分に補強できるため、偏光板の各種耐久性が向上する。
【0028】
<第1の粘着剤層>
偏光子と位相差層とは、第1の粘着剤層を介して積層されている。
本明細書において、「粘着剤」とは、柔軟なゴム状であり、それ自体を前記偏光子、前記保護フィルム等の被着体に張り付けることで接着性を発現するものとする。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線を照射することにより、接着力を調整することができる。
【0029】
第1の粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(以下、リワーク性ともいう。)、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。本実施形態において、第1の粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂(1)、架橋剤(2)、シラン化合物(3)を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましい。
【0030】
[(メタ)アクリル系樹脂(1)]
本実施形態において、第1の粘着剤層を構成する粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂(1)は、下記式(I)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう。)を主成分(例えば、これを50質量%以上含む。)とする重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル重合体」ともいう。)であることが好ましい。
本明細書において「由来」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の化合物が重合するために、化学構造が変化することを意味する。
【0031】
【化1】
【0032】
式(I)中、R10は、水素原子又はメチル基を表し、R20は、炭素数1~20のアルキル基を表し、前記アルキル基は直鎖状、分岐状又は環状のいずれの構造を有していてもよく、前記アルキル基の水素原子は、炭素数1~10のアルコキシ基で置き換わっていてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレートなどの「(メタ)」も同様の意味である。
【0033】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、i-へキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-及びi-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキルアクリレートの具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、特にn-ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、構造単位(I)以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構造単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が含み得る他の単量体としては、極性官能基を有する単量体、芳香族基を有する単量体、アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0035】
極性官能基を有する単量体としては、極性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。極性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換アミノ基、無置換アミノ基などが挙げられる。極性官能基としては、エポキシ基などの複素環基なども挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
【0037】
芳香族基を有する単量体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環など)を有し、フェニル基、フェノキシエチル基、又はベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの構造単位を含むことで、高温、高湿環境において発生する偏光板の白抜け現象を抑制することができる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の芳香族基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは4質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは4質量部以上25質量部以下である。
【0039】
アクリルアミド系単量体としては、N-(メトキシメチル)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの構造単位を含むことで、後述する帯電防止剤等の添加物のブリードアウトを抑制することができる。
【0040】
さらに、構造単位(I)以外の他の単量体に由来する構造単位として、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位、などが含まれていてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル系樹脂(1)の重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、50万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万以上であると、高温、高湿の環境下における第1の粘着剤層の耐久性を向上させることができる。重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤組成物を含有する塗工液を塗工する際の操作性が良好となる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(以下、単に「Mn」ともいう。)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~10である。本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂(1)は、酢酸エチルに溶解させて濃度20質量%の溶液としたとき、25℃における粘度が、20Pa・s以下であることが好ましく、0.1~15Pa・sであることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂(1)の25℃における粘度が前記範囲内であると、前記樹脂により形成された第1の粘着剤層を含む偏光板の耐久性の向上や、リワーク性に寄与する。前記粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定できる。
【0043】
粘着性、及び耐久性の両立の観点から、(メタ)アクリル系樹脂(1)のガラス転移温度は、好ましくは、-60℃~-10℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂(1)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体を含んでもよい。そのような(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(I)を主成分とするものであって、重量平均分子量が5万~30万の範囲にあるような比較的低分子量の(メタ)アクリル酸エステル重合体が挙げられる。
【0045】
[架橋剤(2)]
第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、架橋剤(2)を含むことが好ましい。架橋剤(2)としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物など)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ、架橋速度、及び偏光板の耐久性などの観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。
【0046】
イソシアネート系化合物としては、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物が好ましく、例えば、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族イソシアネート系化合物(例えばイソホロンジイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、芳香族イソシアネート系化合物(例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等)などが挙げられる。また架橋剤(2)は、前記イソシアネート化合物の多価アルコール化合物による付加体(アダクト体)[例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンなどによる付加体]、イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物などの誘導体であってもよい。架橋剤(2)は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐久性の観点からトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びこれらの多価アルコール化合物又はこれらのイソシアヌレート化合物が好ましい。
【0047】
架橋剤(2)の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(1)100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部であってもよい。上記上限値以下であると、耐久性の向上に有利であり、上記下限値以上であると、ガスの発生を抑制し、リワーク性の向上に有利である。
【0048】
[シラン化合物(3)]
粘着剤組成物は、シラン化合物(3)を含有することができる。シラン化合物(3)を含有することにより第1の粘着剤層と、前記第1の粘着剤層に積層される層との密着性を高めることができる。2種以上のシラン化合物(3)を使用してもよい。
【0049】
シラン化合物(3)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
また、シラン化合物(3)は、上記シラン化合物(3)に由来するオリゴマーを含むことができる。
【0051】
粘着剤組成物におけるシラン化合物(3)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(1)100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.03~5質量部であり、より好ましくは0.05~2質量部であり、さらに好ましくは0.1~1質量部である。シラン化合物(3)の含有量が0.01質量部以上であると、第1の粘着剤層と被着体との密着性が向上しやすい。含有量が10質量部以下であると、第1の粘着剤層からのシラン化合物(3)のブリードアウトを抑制することができる。
【0052】
[その他の成分(4)]
第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、紫外線吸収剤、帯電防止剤、溶媒、架橋触媒、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤等の添加剤を単独又は2種以上含むことができる。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、第1の粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
【0053】
第1の粘着剤層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、第1の粘着剤層の厚みは、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
第1の粘着剤層の厚みが前記下限値以上であると、偏光子と位相差層とを十分に貼合することができる。第1の粘着剤層の厚みが前記上限値以下であると、位相差層のずれが生じにくく、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
【0054】
本実施形態の積層体を製造する際に、強い圧力で偏光子と位相差層を第1の粘着剤を介して貼合した場合、弱い圧力で貼合した時に比べて第1の粘着剤層の厚みが薄くなることがある。これは第1の粘着剤層が伸縮性を有するために起こるが、偏光子と位相差層を貼合後、しばらく放置すると、第1の粘着剤層の厚みは元通りとなる。そのため、強い圧力で偏光子と位相差層を第1の粘着剤を介して貼合した時には、例えば5分間放置したのちに第1の粘着剤層の厚みを測定することによって一定の値を得ることができる。
【0055】
第1の粘着剤層の貯蔵弾性率は、20,000Pa以上であることが好ましく、25,000Pa以上であることがより好ましく、50,000Pa以上であることがさらに好ましい。また、第1の粘着剤層の貯蔵弾性率は、150,000Pa以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
「貯蔵弾性率」は、粘着剤層の硬さを示す指標である。第1の粘着剤層の貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、第1の粘着剤層は十分な硬さを有するため偏光子と位相差層との間にずれが生じにくく、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。第1の粘着剤層の貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、粘着剤層と位相差層とを貼合したときに前記粘着剤層と位相差層との間に気泡が発生しづらくなり、気泡発生に伴う位相差層の変形が抑制され、偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
【0056】
本明細書において、「第1の粘着剤層の貯蔵弾性率」は、市販の粘弾性測定装置により測定することができる。粘弾性測定装置としては、例えば後述する実施例に示すように、Physica社製,MCR300を用いることができる。「第1の粘着剤層の貯蔵弾性率」は、JIS K7244-6に準拠し、25℃で測定した値を採用する。
【0057】
第1の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)とし、第1の粘着剤層の厚みをT(μm)とするときLog(E/T)は、通常3.1以上であり、3.3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、3.8以上であることがさらに好ましい。また、前記Log(E/T)は、5.0以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
前記Log(E/T)が前記下限値以上であると、第1の粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とのバランスが取れ、偏光子と位相差層とを強固に貼合することができる。そのため、結果として位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
前記Log(E/T)が前記上限値以下であると、粘着剤層と位相差層とを貼合したときに前記粘着剤層と位相差層との間に気泡が発生しづらくなり、気泡発生に伴う位相差層の変形が抑制され、偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
【0058】
<第2の粘着剤層>
第2の粘着剤層は、位相差層における第1の粘着剤層と接する面とは反対側の面に積層されている。偏光板は、第2の粘着剤層を介して例えば表示パネル等に積層される。
【0059】
位相差層と、例えば表示パネル等との積層に用いる第2の粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができる。第2の粘着剤層を構成する粘着剤として、上述した第1の粘着剤層を構成する粘着剤として例示したものと同様のものを使用することができる。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とは、貯蔵弾性率、厚みがそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
また、第2の粘着剤層の粘着剤としても、活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いることができる。「活性エネルギー線硬化型粘着剤」は、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、フィルムなどの被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する粘着剤である。本実施形態においては、第2の粘着剤層に用いられる粘着剤としては、活性エネルギー線硬化型粘着剤が好ましく、その中でも紫外線硬化型粘着剤がより好ましい。
【0061】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分として含む。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤などを配合することもできる。
【0062】
活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いて、位相差層と、例えば表示パネルとを貼合する場合は、まず、活性エネルギー線硬化型粘着剤を介して位相差層を、表示パネル上に積層する。次いで、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層を硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましく、この場合の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0063】
第2の粘着剤層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、第2の粘着剤層の厚みは、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
第2の粘着剤層の厚みが前記下限値以上であると、位相差層と、例えば表示パネル等とを十分に貼合することができる。第2の粘着剤層の厚みが前記上限値以下であると、第2の粘着剤層を介して積層される位相差層と、例えば表示パネルとのずれが生じにくい。そのため、位相差層が強固に固定され、偏光子と位相差層とがずれにくくなる。結果として、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生の抑制効果が高まる。
【0064】
本実施形態の積層体を製造する際に、強い圧力で位相差層と、例えば表示パネル等とを第2の粘着剤を介して貼合した場合、弱い圧力で貼合した時に比べて第2の粘着剤層の厚みが薄くなることがある。これは第2の粘着剤層が伸縮性を有するために起こるが、位相差層と、例えば表示パネル等とを貼合後、しばらく放置すると、第2の粘着剤層の厚みは元通りとなる。そのため、強い圧力で位相差層と、例えば表示パネル等とを第2の粘着剤を介して貼合したときには、例えば5分間放置したのちに第2の粘着剤層の厚みを測定することによって一定の値を得ることができる。
【0065】
第2の粘着剤層の貯蔵弾性率は、20,000Pa以上であることが好ましく、25,000Pa以上であることがより好ましく、50,000Pa以上であることがさらに好ましい。また、第2の粘着剤層の貯蔵弾性率は、150,000Pa以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
前述した通り、貯蔵弾性率とは粘着剤層の硬さを示す指標である。第2の粘着剤層の貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、第2の粘着剤層は十分な硬さを有するため位相差層と、例えば表示パネルとのずれが生じにくく、位相差層が強固に固定されるため、結果として偏光子と位相差層とがずれにくくなり、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。第2の粘着剤層の貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、被着体基材との密着性及び耐衝撃性が高まる。具体的には、粘着剤層と位相差層とを貼合したときに前記粘着剤層と位相差層との間に気泡が発生しづらくなり、気泡発生に伴う位相差層の変形が抑制され、偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。第2の粘着剤が活性エネルギー線硬化型粘着剤である場合は、エネルギー線を照射して、目的の硬さに第2の粘着剤を硬化させた後に貯蔵弾性率を測定することができる。
【0066】
本明細書において、「第2の粘着剤層の貯蔵弾性率」の測定は、すでに説明した「第1の粘着剤層の貯蔵弾性率」の測定と同様に行うことができる。
【0067】
第2の粘着剤層の貯蔵弾性率をE(Pa)、第2の粘着剤層の厚みをT(μm)とするときLog(E/T)は、3.0以上であることが好ましく、3.3以上であることがより好ましく、3.5以上であることがさらに好ましい。また、前記Log(E/T)は、通常7.0以下であり、5.0以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
前記Log(E/T)が前記下限値以上であると、第2の粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とのバランスが取れ、位相差層と、例えば表示パネルとのずれが生じにくく、位相差層が強固に固定される。そのため、結果として偏光子と位相差層とがずれにくくなり、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
前記Log(E/T)が前記上限値以下であると、粘着剤層と位相差層を貼合したときに前記粘着剤層と位相差層との間に気泡が発生しづらくなり、気泡発生に伴う位相差層の変形が抑制され、偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
【0068】
本実施形態では、Log(E/T)+Log(E/T)の値は、6.4以上であり、6.8以上であることが好ましく、7.0以上であることがより好ましい。
Log(E/T)+Log(E/T)の値が、前記下限値以上であると、偏光子と位相差層、及び位相差層と例えば表示パネルを強固に貼合することができるため、結果として位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
また、Log(E/T)+Log(E/T)は、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であってもよい。
Log(E/T)+Log(E/T)の値が、前記範囲内であると、粘着剤層と位相差層とを貼合したときに前記粘着剤層と位相差層との間に気泡が発生しづらくなり、気泡発生に伴う位相差層の変形が抑制され、偏光板のしわの発生を抑制する効果が高まる。
上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0069】
本実施形態では、以下の(1)及び(2)のいずれか一方を満たすことが好ましく、以下の(1-1)及び(2-1)のいずれか一方を満たすことがより好ましい。さらに、以下の(1)及び(2)の両方を満たすことが好ましく、以下の(1-1)及び(2-1)の両方を満たすことがより好ましい。
(1)Log(E/T)が3.1以上。
(2)Log(E/T)が3.0以上。
(1-1)Log(E/T)が3.8以上。
(2-1)Log(E/T)が3.5以上。
【0070】
温度40℃、湿度90%での第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の水蒸気透過度はそれぞれ1,000~10,000g/m・24hであることが好ましく、2,000~9,000g/m・24hであってもよい。前記水蒸気透過度は、Systech ILLINOIS社製のLyssy水蒸気透過度計L80シリーズにより測定することができる。粘着剤層の水蒸気透過度が高いと、粘着剤が高温、高湿環境の影響を強く受ける為、位相差層の変形に伴う偏光板のしわが発生しやすくなる。粘着剤単体で水蒸気透過度を測定するのが難しい場合は、透湿性の高い基材に粘着剤を貼合した上で透湿性の高い基材との比から、水蒸気透過度を算出してもよい。
【0071】
<位相差層>
位相差層14は、液晶化合物を含む液晶材料(液晶組成物ともいう)から構成される層を有する。液晶化合物を含む液晶材料から構成される層とは、具体的には、液晶化合物が硬化した層を意味する。本明細書において、λ/2の位相差を与える層、λ/4の位相差を与える層及びポジティブC層等を総称して、位相差層ということがある。さらに、位相差層は後述の透明基材、配向層を含んでいてもよい。
【0072】
液晶化合物が硬化した層は例えば、透明基材に設けられた配向層上に形成される。「透明基材」とは、光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する基材である。本明細書において、「透明性」とは、波長380~780nmに渡る可視光領域の光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。
【0073】
前記透明基材は、配向層を支持する機能を有し、長尺に形成されている基材であってもよい。この透明基材は、離型性支持体として機能し、転写用の位相差層を支持することができる。さらに、その表面が剥離可能な程度の接着力を有するものが好ましい。
【0074】
前記透明基材としては、例えば、ガラス基材及びプラスチック基材を挙げることができ、好ましくはプラスチック基材である。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン、環状オレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドが挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルが挙げられる。透明基材としては、これらの材料からなる単層でもよいが、2種以上を積層させた積層体としてもよい。また、複数の層の積層体とする場合には、同一組成の層が積層されてもよい。
【0075】
透明基材の厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。透明基材の厚さが20μm以上であると、強度が付与される。一方で、厚さが200μm以下であると、透明基材を裁断加工して枚葉の透明基材とするにあたり、加工屑の増加、裁断刃の磨耗を抑制できる。
【0076】
透明基材は、種々のブロッキング防止処理が施されていてもよい。ブロッキング防止処理としては、易接着処理、フィラー等を練り込ませる処理、エンボス加工(ナーリング処理)等が挙げられる。このようなブロッキング防止処理を透明基材に対して施すことによって、透明基材を巻き取る際の基材同士の張り付き、いわゆるブロッキングを効果的に防止することができ、生産性高く光学フィルムを製造することが可能となる。
【0077】
液晶化合物が硬化した層は、配向層を介して透明基材上に形成される。すなわち、位相差層は、透明基材、配向層の順で積層され、液晶化合物が硬化した層は前記配向層上に積層される。
【0078】
配向層は、垂直配向層に限らず、液晶化合物の分子軸を水平配向させる配向層であってもよく、液晶化合物の分子軸を傾斜配向させる配向層であってもよい。配向膜としては、後述する液晶化合物を含む塗工液の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜が挙げられる。配向膜の厚さは、通常10nm~10000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm~200nmの範囲である。
【0079】
配向層に用いる樹脂としては、公知の配向膜の材料として用いられる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来公知の単官能又は多官能の(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤下で硬化させた硬化物等を用いることができる。具体的に、(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、ウレタンアクリレート等を例示することができる。配向層に用いる樹脂は、これらの1種類を硬化させた硬化物であってもよいし、2種類以上の混合物を硬化させた硬化物であってもよい。
【0080】
本実施形態で使用される液晶化合物の種類は、限定されない。その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。なお、高分子とは、一般に重合度が100以上のものを言う(高分子物理・相転移ダイナミクス、土井 正男著、2頁、岩波書店、1992)。
【0081】
本実施形態では、何れの液晶化合物を用いることもできる。2種以上の棒状液晶化合物や、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0082】
棒状液晶化合物としては、特表平11-513019号公報の請求項1、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]等に記載の液晶化合物を好適に用いることができる。円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]等に記載の液晶化合物を好適に用いることができる。
【0083】
前記液晶化合物が硬化した層は、重合性基を有する棒状液晶化合物、又は重合性基を有する円盤状液晶化合物を用いて形成することがより好ましい。これにより、光学特性の温度変化や湿度変化を小さくすることができる。
【0084】
液晶化合物として、2種類以上を併用してもよい。その場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有していることが好ましい。すなわち、前記液晶化合物が硬化した層は、重合性基を有する棒状液晶化合物又は重合性基を有する円盤状液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることが好ましい。この場合、層となった後は、もはや液晶性を示す必要はない。
【0085】
棒状液晶化合物又は円盤状液晶化合物が重合性基を有する場合、その重合性基の種類は、特に制限されるものではない。重合性基としては、例えば、重合性エチレン性不飽和基や環重合性基などの付加重合反応が可能な官能基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などを挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基及びアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0086】
液晶化合物が硬化した層は、後述するように、液晶化合物を含む塗工液を、例えば配向層上に塗工することによって形成することができる。前記塗工液には、上述した液晶化合物以外の成分が含まれていてもよい。例えば、前記塗工液には、重合開始剤が含まれていてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が選択される。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、前記塗工液中の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0087】
前記塗工液には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。その中でも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。
【0088】
重合性モノマーとしては、上述した重合性基を有する液晶化合物(以下、重合性液晶化合物ともいう。)と共重合することができるものが好ましい。具体的な重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載のものが挙げられる。重合性モノマーの使用量は、液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましい。
【0089】
前記塗工液には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられる。その中でも特に、フッ素系化合物が好ましい。具体的な界面活性剤としては、例えば、特開2001-330725号公報中の段落[0028]~[0056]に記載の化合物、特願2003-295212号明細書中の段落[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0090】
前記塗工液には、溶媒が含まれていてもよく、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、アミド(N,N-ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環化合物(ピリジン等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン等)、アルキルハライド(クロロホルム、ジクロロメタン等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等)が挙げられる。その中でも、アルキルハライド、ケトンが好ましい。前記塗工液として2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0091】
前記塗工液には、偏光子界面側垂直配向剤、空気界面側垂直配向剤などの垂直配向促進剤、並びに、偏光子界面側水平配向剤、空気界面側水平配向剤などの水平配向促進剤といった各種配向剤が含まれていてもよい。前記塗工液には、上記成分以外にも、密着改良剤、可塑剤、ポリマーなどが含まれていてもよい。
【0092】
本実施形態において位相差層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。前記位相差層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
位相差層の厚みが前記下限値以上であると、十分な耐久性が得られる。位相差層の厚みが前記上限値以下であると、偏光板の薄層化に貢献し得る。
位相差層の厚みは、λ/4の位相差を与える層、λ/2の位相差を与える層、又はポジティブC層の所望の面内位相差値、及び厚み方向の位相差値が得られるよう調整され得る。
【0093】
本実施形態において、位相差層の突刺し強度は、特に限定されない。突刺し強度の弱い位相差層を用いると、高温、高湿の環境下において、偏光板にしわが生じやすい。本実施形態によれば、突刺し強度が弱い位相差層を含む偏光板であっても、しわが生じるのを抑制することができる。
本願発明において、偏光板が複数の位相差層を含む積層体を含む場合は、位相差層の突刺し強度として、この積層体に対する突刺し強度を採用する。上記積層体が、位相差層同士を貼合するための接着層及び配向層を含む場合、これらの層も含めた積層体に対する突刺し強度を採用する。
【0094】
位相差層の突刺し強度は、100gf以下であってもよいし、95gf以下であってもよいし、90gf以下であってもよいし、80gfであってもよい。位相差層の突刺し強度は、10gf以上であることが好ましく、30gf以上であってもよいし、50gf以上であってもよい。
偏光板に含まれる位相差層が1層である場合、このような突刺し強度の位相差層は、例えば、位相差層を構成する層の厚みを小さくすることにより得ることができる。
偏光板に含まれる位相差層が複数の位相差層の積層体である場合、このような突刺し強度の位相差層は、例えば、接着剤の種類や厚み、位相差層の厚みにより得ることができる。
【0095】
突刺し強度は、位相差層に対して突刺し治具を垂直に突き刺し、位相差層が裂けるときの強さのことである。突刺し強度は、例えば、ロードセルを備えた圧縮試験機で測定することができる。圧縮試験機の例としては、カトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機“KES-G5型”、株式会社島津製作所製の小型卓上試験機“EZ Test(登録商標)”などが挙げられる。
【0096】
測定は、突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の穴の開いた2枚のサンプル台の間に位相差層を挟んで行われる。突刺し治具は、円柱状の棒であり、その位相差層に接する先端が球形又は半球形である突刺し針を備える。先端の球形部又は半球形部は、直径が1mmφである。また、その曲率は0.5Rである。圧縮試験機の突刺し速度は、0.0033cm/秒である。12個の位相差層の試験片について突刺し強度の測定を行い、その平均値を突刺し強度として求めることができる。
【0097】
位相差層の温度40℃湿度90%RHにおける透湿度比としては、0.5~1.0の範囲が好ましい。透湿度比は以下の方法により算出した値のことをいう。位相差層単体では厚みや機械特性が低いため、透湿度の測定が困難である。そのため透湿性の高い基材と粘着剤を介して位相差層を貼りあわせ、透湿度を測定する。透湿度の測定は、保護フィルムの透湿度の測定と同様の方法で行うことができる。透湿度比は、測定した透湿度を基材の透湿度との比で算出する。
透湿度比が低いほど、高温、高湿環境下でのシワの抑制に効果的である。
【0098】
本明細書において「偏光板の総厚み」とは、偏光板の積層方向の寸法を意味する。すなわち、「第1実施形態における偏光板の総厚み」とは、偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層、粘着剤層、接着剤層の厚みを合計した厚みを意味する。最終的に表示装置に残らない部材は、偏光板の総厚みには含めない。最終的に表示装置に残らない部材としては、偏光板における表示パネルとは反対側の面に積層される表面保護フィルム、第2の粘着剤層上に積層されるセパレートフィルムが挙げられる。これらの層は、表示装置の製造過程で剥離除去され、最終的に表示装置に残らない。
【0099】
偏光板の総厚みは、例えば、マイクロメーターにより偏光板の任意の5点において測定し、その平均値を算出することにより得ることができる。
【0100】
偏光板の総厚みは、偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層、粘着剤層、接着剤層の厚みをそれぞれ測定し、その値を合計することによっても得ることができる。
【0101】
偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層、粘着剤層、接着剤層の厚みは、本明細書記載の方法で測定することができる。
【0102】
第1実施形態における偏光板の総厚みは、30μm以上であることが好ましい。また前記偏光板の総厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
偏光板の総厚みが前記上限値以下であると、偏光板の薄層化に貢献し得る。偏光板の総厚みが前記下限値以上であると、偏光板の強度が向上する。
【0103】
[第2実施形態]
第2実施形態の偏光板は少なくとも2層の位相差層を含む。第2実施形態の偏光板に含まれる位相差層の層数としては、特に限定されないが、2層、3層が例として挙げられる。
2層の位相差層を含む第2実施形態の偏光板は、偏光子と、第1の粘着剤層と、第1の位相差層と、第1の接着層と、第2の位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順で備える偏光板である。
図2は、2層の位相差層を含む第2実施形態に係る偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。図2に示すように、偏光板101は、偏光子11と、第1の粘着剤層12と、第1の位相差層15と、第1の接着層17と、第2の位相差層16と、第2の粘着剤層13とがこの順で積層されている。
3層の位相差層を含む第2実施形態の偏光板は、偏光子と、第1の粘着剤層と、第1の位相差層と、第1の接着層と、第2の位相差層と、第2の接着層と、第3の位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順で備える偏光板である。
図3は、3層の位相差層を含む第2実施形態に係る偏光板の構成を示す概略断面図の一例である。図3に示すように、偏光板102は、偏光子11と、第1の粘着剤層12と、第1の位相差層15と、第1の接着層17と、第2の位相差層16と、第2の接着層18と、第3の位相差層19と、第2の粘着剤層13とがこの順で積層されている。
【0104】
なお、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素(偏光子11、第1の粘着剤層12、第2の粘着剤層13)については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
<複数の位相差層を含む積層体>
偏光板が2層の位相差層を含む場合、第1の位相差層15と、第2の位相差層16とは、第1の接着層17を介して積層される。
【0106】
偏光板が3層の位相差層を含む場合、第1の位相差層15と、第2の位相差層16とは、第1の接着層17を介して積層され、第2の位相差層16と、第3の位相差層19とは、第2の接着層18を介して積層される。
【0107】
第1の位相差層15、第2の位相差層16、及び第3の位相差層19は、位相差層であり、それぞれ例えばλ/2の位相差を与える層、λ/4の位相差を与える層、又はポジティブC層であることができる。
【0108】
本実施形態の1つの側面としては、偏光板が2層の位相差層を含む場合、第1の位相差層15及び第2の位相差層16のいずれか一方がλ/4の位相差を与える層として機能し、他方がλ/2の位相差を与える層として機能すること、又は第1の位相差層15及び第2の位相差層16のいずれか一方がλ/4の位相差を与える層として機能し、他方がポジティブC層として機能することが好ましい。
【0109】
偏光板が3層の位相差層を含む場合、第1の位相差層15、第2の位相差層16、及び第3の位相差層19のいずれか一つがλ/4の位相差を与える層として機能し、他の二つがポジティブC層として機能することが好ましい。
【0110】
第1の位相差層15、第2の位相差層16、及び第3の位相差層19の厚み、及び構成する材料は、λ/4の位相差を与える層、λ/2の位相差を与える層、又はポジティブC層の所望の面内位相差値、厚み方向の位相差値が得られるよう調整され得る。
【0111】
2層の位相差層を含む偏光板において、第1の位相差層15がλ/2の位相差を与える層として機能し、第2の位相差層16がλ/4の位相差を与える層として機能する場合、第1の位相差層15の厚みは例えば、1μm以上10μm以下であり、第2の位相差層16の厚みは例えば、1μm以上10μm以下である。2層の位相差層を含む偏光板において、第1の位相差層15がλ/4の位相差を与える層として機能し、第2の位相差層16がポジティブC層として機能する場合、第1の位相差層15の厚みは例えば、1μm以上10μm以下であり、第2の位相差層16の厚みは例えば、1μm以上10μm以下である。
【0112】
第1の位相差層、第2の位相差層、及び第3の位相差層の各々における透明基材、配向層、液晶化合物は、第1実施形態で例示したものと同様のものを使用することができる。第1の位相差層と、第2の位相差層と、第3の位相差層の組成は同様であってもよいし、異なっていてもよい。第1の位相差層、第2の位相差層、及び第3の位相差層の各厚みは、それぞれ第1実施形態で説明した層の厚みの測定方法により得ることができる。
【0113】
第1の位相差層、第2の位相差層、及び第3の位相差層はそれぞれ、第1実施形態の位相差層と同様の構成であり、透明基材、配向層、位相差層の順で積層されている。透明基材、及び配向層は剥離されてもよい。
【0114】
偏光板が2層の位相差層を含む場合、第1の位相差層と第2の位相差層とは第1の接着層を介して積層される。すなわち、2層の位相差層を含む積層体は、第1の位相差層、第1の接着層、第2の位相差層の順番で積層された積層体であってもよい。
【0115】
偏光板が3層の位相差層を含む場合、例えば、第1の位相差層と第2の位相差層とは第1の接着層を介して積層され、第2の位相差層と第3の位相差層とは第2の接着層を介して積層される。すなわち、3層の位相差層を含む積層体は、第1の位相差層、第1の接着層、第2の位相差層、第2の接着層、第3の位相差層の順番で積層された積層体であってもよい。
【0116】
本明細書において、「接着層」は、接着剤層又は粘着剤層を意味する。粘着剤層としては、前述のものが適宜使用できる。本実施形態においては、しわの発生を防止する観点から、接着層として接着剤層を使用することが好ましい。接着剤層を構成する「接着剤」は、基材に塗工した時は液状で基材に塗ることができ、固化する事で接着性を発現する(すなわち、固化するまでは、接着性を発現しない)ものとする。
【0117】
<接着剤層>
第1の位相差層と第2の位相差層、及び第2の位相差層と第3の位相差層とを貼合する接着剤としては、例えば、水系接着剤、又は活性エネルギー線硬化性接着剤が挙げられる。水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解又は分散させた接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する接着剤が挙げられる。硬化後の活性エネルギー線硬化性接着剤の貯蔵弾性率は、水系接着剤の貯蔵弾性率よりも高い場合が多い。位相差層間の接着剤層の貯蔵弾性率が高いと位相差層間のずれが生じにくいため、活性エネルギー線硬化性接着剤を使用することが好ましい。
【0118】
活性エネルギー線硬化性接着剤としては、良好な接着性を示すことから、カチオン重合性の硬化性化合物、及びラジカル重合性の硬化性化合物のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤、及びラジカル重合開始剤のいずれか一方又は両方をさらに含むことができる。
【0119】
カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えばエポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0120】
ラジカル重合性の硬化性化合物としては、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0121】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0122】
接着剤を用いて第1の位相差層と第2の位相差層、及び第2の位相差層と第3の位相差層とを貼合する場合は、まず、接着剤を第1の位相差層及び第2の位相差層におけるいずれか一方の接合面又は両方の接合面、及び第2の位相差層及び第3の位相差層におけるいずれか一方の接合面又は両方の接合面に塗工する。
【0123】
接着剤を上記接合面に塗工する方法としては、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、エアドクターコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよい。
【0124】
水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0125】
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた場合は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましく、この場合の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0126】
接着剤層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
接着剤層の厚みが前記上限値以下であると、第1の位相差層と第2の位相差層、及び第2の位相差層と第3の位相差層との間に浮きや剥がれを生じにくい。
【0127】
「第2実施形態における偏光板の総厚み」とは、偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、第1の位相差層の厚み、第1の接着層の厚み、第2の位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層(第3の位相差層等)、粘着剤層、接着剤層(第2の接着層等)の厚みを合計した厚みを意味する。上記同様に、最終的に表示装置に残らない部材は、偏光板の総厚みには含めない。
【0128】
本実施形態における偏光板の総厚みは、例えば、マイクロメーターにより偏光板の任意の5点において測定し、測定値の平均値を算出することにより得ることができる。
【0129】
偏光板の総厚みは、例えば、偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、第1の位相差層の厚み、接着層の厚み、第2の位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層、粘着剤層、接着剤層の厚みをそれぞれ測定し、その値を合計することによっても得ることができる。
【0130】
偏光子の厚み、第1の粘着剤層の厚み、第1の位相差層の厚み、接着層の厚み、第2の位相差層の厚み、第2の粘着剤層の厚み、その他偏光板に含まれる全ての光学フィルム層、粘着剤層、接着剤層の厚みは、本明細書記載の方法で測定することができる。
【0131】
第2実施形態における偏光板の総厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。第2実施形態における偏光板の総厚みは、30μm以上であることが好ましい。
偏光板の総厚みが前記上限値以下であると、偏光板の薄層化に貢献し得る。偏光板の総厚みが前記下限値以上であると、偏光板の強度が向上する。
【0132】
<<偏光板の製造方法>>
本発明に係る偏光板を製造する方法の例について以下に説明する。
【0133】
[偏光子の製造方法]
偏光子は、通常、PVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理して架橋させる工程、及びホウ酸水溶液による架橋処理後に水洗する工程(以下、ホウ酸処理ともいう。)を経て、製造される。
【0134】
PVA系フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、PVA系フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0135】
PVA系フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、PVA系フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
【0136】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常0.01~1質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒間程度である。
【0137】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常0.0001~10質量部程度であり、好ましくは0.001~1質量部である。この染料水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性有機染料水溶液の温度は、通常20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1,800秒間程度である。
【0138】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により、行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒間程度であり、好ましくは150~600秒間、さらに好ましくは200~400秒間である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0139】
ホウ酸処理後のPVA系フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系フィルムを水に浸漬する方法により、行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒間程度である。
【0140】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒間程度であり、好ましくは120~600秒間である。乾燥処理により、偏光子中の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、偏光子の総質量に対して通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%以上であると、偏光子は十分な可撓性を有するため、乾燥後に損傷したり、破断したりすることを抑制することができる。また水分率が20質量%以下であると、偏光子は、十分な熱安定性を有する。
【0141】
以上のようにして、PVA系フィルムに二色性色素が吸着配向した偏光子を製造することができる。
【0142】
また、上記で得られた偏光子は、さらにその片面又は両面に、上記接着剤を介して保護フィルムが貼合されていてもよい。
【0143】
[第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の製造方法]
前述した通り、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層は、アクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤により形成されることが好ましい。
【0144】
前述した(メタ)アクリル系樹脂(1)は、通常、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂(1)の製造においては、通常、重合開始剤の存在下に重合が行われる。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂(1)を構成する全ての単量体の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部である。(メタ)アクリル系樹脂(1)は、紫外線などの活性エネルギー線によって重合する方法により製造することもできる。
【0145】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトンが挙げられる。熱重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメ
チルプロピオニトリル)等のアゾ化合物、ラウリルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物が挙げられる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤も、重合開始剤として使用することができる。
【0146】
(メタ)アクリル系樹脂(1)は、好ましくは、溶液重合法により製造される。具体的には、所望の単量体と有機溶媒とを混合し、窒素雰囲気下で、得られた溶液に、熱重合開始剤を添加する。得られる混合物を、40℃~90℃程度、好ましくは60℃~80℃程度で3~10時間程度攪拌することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得ることができる。重合反応を制御するために、単量体、熱重合開始剤又はその両方を重合反応中に連続的又は間欠的に反応系内に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒が挙げられる。
【0147】
このようにして得られた(メタ)アクリル系樹脂(1)、前記架橋剤(2)、前記シラン化合物(3)、さらに必要に応じて有機溶媒を混合し、粘着剤組成物の塗工溶液を得ることができる。有機溶媒としては、上述の液相重合で用いられた溶液と同様のものを使用することができる。前記塗工溶液を例えば被着体に塗工し、乾燥を行う事で粘着剤層を形成することができる。また、前記塗工溶液を例えば、セパレートフィルム上に塗工し、乾燥を行う事でセパレートフィルム上に粘着剤層を形成することもできる。
【0148】
前記粘着剤組成物の塗工溶液を被着体又はセパレートフィルム上に塗工する方法としては、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、エアドクターコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよい。
【0149】
セパレートフィルムは、プラスチックフィルムと剥離層とから構成されることが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離層は、例えば剥離層形成用組成物から形成することができ、剥離層形成用組成物を構成する主な成分(樹脂)としては、限定されるもではないが、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び長鎖アルキル樹脂等が挙げられる。
【0150】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の各貯蔵弾性率は、粘着剤組成物の種類によって調整することができる。
【0151】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の各厚みは、粘着剤組成物を含む溶液の塗工条件によって調節をすることができる。粘着剤層の厚みを薄くするためには塗工厚みを小さくする事が効果的である。
【0152】
[位相差層の製造方法]
位相差層は、前述した通り、液晶化合物が硬化した層を有し、さらに透明基材、及び配向層を有していてもよい。
【0153】
配向層は、上述したような樹脂からなる層であり、前記樹脂を形成するモノマーを含む配向層用組成物を透明基材に塗工して乾燥させ、その後、所定の硬化処理を施すことにより形成される。このようにして形成された硬化物により配向層が構成される。
【0154】
配向層用組成物中に用いる溶媒(希釈溶媒)としては、配向材料を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒を例示することができる。溶媒は、1種類であってもよいし、2種類以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0155】
前記配向層用組成物を透明基材に塗工する方法としては、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、エアドクターコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよい。
【0156】
液晶化合物が硬化した層は、重合性液晶化合物を含む塗工液を前記配向層に塗工して乾燥させ、その後、所定の硬化処理を施すことにより形成される。このようにして形成された硬化物により位相差層が構成される。
【0157】
前記重合性液晶化合物を含む塗工液の総質量に対する、前記重合性液晶化合物の含有量は、特に限定はされないが、5~40質量%の範囲内とすることができる。配向層上に塗工する塗工方法に応じて、粘度等を調整したいときは、前記重合性液晶化合物の含有量を調整すればいい。重合性液晶化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0158】
上述した重合性液晶化合物を含む塗工液は、通常、すでに説明したような溶媒(希釈溶媒)に溶かされており、前記重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶媒であることが好ましい。
【0159】
重合性液晶化合物を含む塗工液を塗工する方法としては、公知の方法、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及びダイコーティング法等を採用すればいい。
【0160】
配向層上に形成させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させることにより、位相差層が得られる。重合方法は、重合性液晶化合物の重合性基の種類に応じて選択すればよい。前記重合性基が光重合性基であれば光重合法により重合することができる。また、重合性基が熱重合性基であれば熱重合法により重合することができる。本実施形態の位相差層の製造方法においては、光重合法が好ましい。光重合法は、必ずしも透明基材を高温に加熱する必要がないため、耐熱性の低い透明基材を使用することができる。光重合法は、重合性液晶化合物を含む液晶組成物からなる膜に可視光、又は紫外光を照射することにより行う。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。
【0161】
[複数の位相差層を含む積層体の製造方法]
第2実施形態における複数の位相差層を含む積層体の製造方法の一例として、2層の位相差層を含む積層体の製造方法について説明する。第1の位相差層と第2の位相差層とは第1の接着層を介して積層される。
【0162】
第1の位相差層と第2の位相差層とを第1の接着層を介して積層する場合、上述の粘着剤層、水系接着剤、又は活性エネルギー線硬化性接着剤を第1の位相差層及び第2の位相差層のいずれか一方又は両方に塗工し、第1の位相差層と第2の位相差層とを貼合する。
【0163】
水系接着剤を使用した場合は、その後前記した乾燥方法により接着剤を固化させることにより、2層の位相差層を含む積層体を得ることができる。一方、活性エネルギー線硬化性接着剤を使用した場合は、紫外線をはじめとするエネルギー線を接着剤に照射することにより、複数の位相差層を含む積層体を得ることができる。
【0164】
複数の位相差層を含む積層体は、透明基材、配向層、第1の位相差層、第1の接着層、第2の位相差層、配向層、透明基材の順で積層された積層体であることができる。透明基材及び配向層は、位相差層を偏光板に貼り合わせる前に、剥離することができる。
また、3層の位相差層を含む積層体は、上述の第1の位相差層と第2の位相差層を第1の接着層を介して積層するのと同様に、さらに第2の位相差層と第3の位相差層を第2の接着層を介して積層することにより得ることができる。
【0165】
[第1実施形態に係る偏光板の製造方法]
位相差層が1層である、第1実施形態に係る偏光板100の製造方法の例を以下で説明する。本実施形態で使用される偏光子、粘着剤層、及び位相差層は上述の方法によって製造されたものを使用することができる。
【0166】
粘着剤としては、前述した粘着剤組成物又はセパレートフィルム上に形成された粘着剤層を使用することができる。以下では例として、第1の粘着剤層、及び第2の粘着剤層として、セパレートフィルム上に形成された粘着剤を使用した場合を説明する。
【0167】
偏光子11と第1の粘着剤層12とを積層する。具体的には、第1の粘着剤層12のセパレートフィルムが積層された面と反対に位置する粘着剤層の面と偏光子11の片面とを貼合することにより、偏光子11と第1の粘着剤層12とを積層することができる。
【0168】
続いて、第1の粘着剤層12と位相差層14とを積層する。
【0169】
第1の粘着剤層12のセパレートフィルムを剥がして露出した面に位相差層14を貼合することにより、第1の粘着剤層12と位相差層14とを積層することができる。なお、第1の粘着剤層12に接する位相差層14の面は、透明基材を剥がして露出した配向層の面、又は透明基材及び配向層を剥がして露出した位相差層の面である。
【0170】
続いて、位相差層14と第2の粘着剤層13を積層する。
【0171】
第2の粘着剤層13におけるセパレートフィルムが積層された面と反対に位置する面と位相差層14とを貼合することにより、位相差層14と第2の粘着剤層13とを積層することができる。なお、第2の粘着剤層13に接する位相差層14の面は、位相差層14の第1の粘着剤層12と接している面の反対側に位置する面である。
【0172】
こうして得られた第1実施形態に係る偏光板100は、第2の粘着剤層13を介して表示パネル等に積層されてもよい。
【0173】
[第2実施形態に係る偏光板の製造方法]
位相差層を少なくとも2層含む、第2実施形態に係る偏光板101及び偏光板102の製造方法の例を以下で説明する。なお、本実施形態で使用される偏光子、粘着剤層、及び位相差層は上述の方法によって製造されたものを使用することができる。
【0174】
粘着剤層としては、前述した粘着剤組成物又はセパレートフィルム上に形成された粘着剤層を使用することができる。以下では例として、第1の粘着剤層、及び第2の粘着剤層として、セパレートフィルム上に形成された粘着剤層を使用した場合を説明する。
【0175】
偏光子11と第1の粘着剤層12とを積層する。具体的には、第1の粘着剤層12におけるセパレートフィルムが積層された面と反対に位置する面と偏光子11の片面とを貼合することにより、偏光子11と第1の粘着剤層12とを積層することができる。
【0176】
続いて、第1の粘着剤層12と複数の位相差層を含む積層体(以下、該積層体を「位相差層の積層体」と称することがある。)を積層する。
【0177】
第1の粘着剤層12のセパレートフィルムを剥がして露出した面に位相差層の積層体を貼合することにより、第1の粘着剤層12と位相差層の積層体とを積層することができる。なお、第1の粘着剤層12に接する位相差層の積層体の面は、位相差層の積層体の両端に位置する透明基材のいずれか一方を剥がして露出した配向層の面又は位相差層の積層体の両端に位置する透明基材及び配向層のいずれか一方を剥がして露出した位相差層の面である。
【0178】
続いて、位相差層の積層体と第2の粘着剤層13とを積層する。
【0179】
第2の粘着剤層13におけるセパレートフィルムが積層された面と反対に位置する面と前記位相差層の積層体を貼合することにより、位相差層の積層体と第2の粘着剤層13とを積層することができる。なお、第2の粘着剤層13に接する位相差層の積層体の面は、位相差層の積層体が第1の粘着剤層12に接している面の反対側に位置する面であり、透明基材を剥がして露出した配向層の面、又は透明基材及び配向層を剥がして露出した位相差層の面である。
【0180】
こうして得られた第2実施形態に係る偏光板101は第2の粘着剤層13を介して、表示パネル等に積層されてもよい。
【0181】
以上のような構成の偏光板によれば、高温、高湿の環境においても、位相差層の変形に伴う偏光板のしわの発生を抑制することができる。
【0182】
<用途>
本偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(以下、無機ELともいう)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FEDともいう)、表面電界放出表示装置(SEDともいう))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLVともいう)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMDともいう)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
本偏光板は、特に有機EL表示装置又は無機EL表示装置に特に有効に用いることができる。
【実施例0183】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。種々の測定及び評価は以下のようにして行った。
【0184】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
粘着剤層形成用の(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
〔測定条件〕
・GPC測定装置:東ソー株式会社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー株式会社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0185】
[粘着剤の貯蔵弾性率の測定]
粘着剤層の貯蔵弾性率は、以下の方法により測定した。
粘着剤層を厚さ0.2mmになるように複数枚積層した。得られた粘着剤層から、直径8mmの円柱体を打ち抜き、これを貯蔵弾性率G’の測定用サンプルとした。
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,MCR300)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(Pa)を測定した。
〔測定条件〕
ノーマルフォースF:1N
歪みγ:1%
周波数:1Hz
温度:25℃
【0186】
[粘着剤層の厚みの測定]
粘着剤層の厚みは、株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーターMH-15Mにより測定した。
【0187】
[突刺し強度の測定]
突刺し試験は、先端が球形(先端径1mmφ、0.5R)のニードルを装着したカトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機“KES-G5 ニードル貫通力測定仕様”を使用し、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.0033cm/秒の測定条件下で行った。突刺し試験で測定される突刺し強度は、試験片12個に対して突刺し試験を行い、その平均値とした。
【0188】
[透湿度比の測定]
位相差層の透湿度比は、以下のように測定した。
後述する粘着剤組成物Aを基材上にバーコーターを使用して塗布して、厚さが2~3μmの粘着剤組成物層を形成し、基材の透湿度評価用積層体を得た。基材には、コニカミノルタ株式会社製のトリアセチルセルロースフィルムを使用した。
前記基材の透湿度評価用積層体における粘着剤組成物層に位相差層をさらに積層し、位相差層の透湿度評価用積層体を得た。
得られた評価用積層体の透湿度を、JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠し、温度40℃、湿度90%RHにて測定した。
使用したトリアセチルセルロースフィルムの厚さは、20μmであった。また、上記と同様にして求めたトリアセチルセルロースフィルム透湿度は、1200g/m・24hであった。
前記基材の透湿度評価用積層体の透湿度は、1000g/m・24hであった。
位相差層の透湿度評価用積層体の透湿度を測定し、前記基材の透湿度評価用積層体の透湿度で除すことにより、透湿度比を算出した。
【0189】
[水蒸気透過度の測定]
温度40℃、湿度90%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy-L80-5000」)を用いて、粘着剤層の水蒸気透過度を測定した。
【0190】
[粘着剤の製造]
粘着剤は以下の方法により製造した。
【0191】
[粘着剤A~Dの製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル95.0質量部、アクリル酸4.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
【0192】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)1.5質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部と、紫外線硬化性化合物としてエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業株式会社製:品名「A-9300」)7.5質量部と、光重合開始剤として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製:イルガキュア(登録商標)907)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さがそれぞれ5μm(粘着剤A)、15μm(粘着剤B)、20μm(粘着剤C)、又は25μm(粘着剤D)となるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合した。この粘着剤層にベルトコンベア付き紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ社製、ランプはDバルブを使用)を用いて剥離シート越しに紫外線(照射強度500mW/cm、積算光量500mJ/cm)を照射し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤A~Dの貯蔵弾性率G‘は、25℃において125,000Paであった。
粘着剤A、粘着剤B、粘着剤C、粘着剤Dの水蒸気透過度はそれぞれ、7600g/m・24h、5500g/m・24h、5000g/m・24h、4200g/m・24hであった。
【0193】
[粘着剤E、Fの製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル3.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
【0194】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、商品名「タケネート(登録商標)D-110N」)1.0質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さがそれぞれ15μm(粘着剤E)、又は20μm(粘着剤F)となるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤E、Fの貯蔵弾性率G‘は、25℃において45,200Paであった。
粘着剤E、Fの水蒸気透過度はそれぞれ、8200g/m・24h、4400g/m・24hであった。
【0195】
[粘着剤G~Kの製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸1.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
【0196】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)0.30質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さがそれぞれ6μm(粘着剤H)、10μm(粘着剤I)、20μm(粘着剤J)、15μm(粘着剤G)、又は25μm(粘着剤K)となるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤G~Kの貯蔵弾性率G‘は、25℃において25500Paであった。
粘着剤G、粘着剤H、粘着剤I、粘着剤J、粘着剤Kの水蒸気透過度はそれぞれ、6300g/m・24h、8200g/m・24h、6800g/m・24h、4700g/m・24h、3600g/m・24hであった。
【0197】
調製した粘着剤A~Kの厚み、及び25℃における貯蔵弾性率を表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
[偏光子(1)の製造]
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素:ヨウ素カリウム:水の質量比が0.02:2:100である30℃の水溶液に浸漬してヨウ素染色を行った(以下、ヨウ素染色工程ともいう。)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム:ホウ酸:水の質量比が12:5:100である56.5℃の水溶液に浸漬してホウ酸処理を行った(以下、ホウ酸処理工程ともいう)。ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子(延伸後の厚さ12μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸における総延伸倍率は5.3倍であった。
得られた偏光子の両面に、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ株式会社製 KC4UYTAC 厚み40μm)を、水系接着剤を介してニップロールでそれぞれ貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、両面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光子(1)を得た。尚、前記水系接着剤は水100部に、カルボキシ基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 クラレポバール KL318)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製 スミレーズレジン(登録商標)650 固形分濃度30%の水溶液)1.5部を添加して調製した。
得られた偏光子(1)について、分光光度計(V7100、日本分光株式会社製)を使用して光学特性の測定を行った。得られた偏光子(1)の視感度補正単体透過率は42.1%であり、視感度補正偏光度は99.996%であり、単体色相aは-1.1であり、単体色相bは3.7であった。
【0200】
[第1の位相差層の製造]
第1の位相差層として、ネマチック液晶化合物が硬化した層、配向膜、及び透明基材からなるλ/4の位相差を与える層を準備した。なお、ネマチック液晶化合物が硬化した層と、配向層との合計の厚みは2μmであった。また、第1の位相差層の透湿度比は0.48であった。
【0201】
[第2の位相差層の製造]
厚み38μmのポリエチレンテレフタレート基材を透明基材として用い、その片面に垂直配向層用組成物を膜厚3μmになるようにコーティングし、20mJ/cmの偏光紫外線を照射して配向層を作製した。なお、その垂直配向層用組成物としては、2-フェノキシエチルアクリレートと、テトラヒドロフルフリルアクリレートと、ジペンタエリスリトールトリアクリレートと、ビス(2-ビニルオキシエチル)エーテルとを1:1:4:5の割合で混合し、重合開始剤としてLUCIRIN(登録商標)TPOを4%の割合で添加した混合物を用いた。
【0202】
続いて、形成した配向層上に、光重合性ネマチック液晶化合物(メルク社製,RMM28B)を含有する液晶組成物をダイコーティングにより塗工した。ここで、液晶組成物中、溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)と、メチルイソブチルケトン(MIBK)と、沸点が155℃であるシクロヘキサノン(CHN)とを、質量比(MEK:MIBK:CHN)で35:30:35の割合で混合させた混合溶媒を用いた。そして、固形分が1~1.5gとなるように調製した液晶組成物を塗工量が4~5g(wet)となるように配向層上に塗工した。
【0203】
配向層上に液晶組成物を塗工した後、乾燥温度を75℃とし、乾燥時間を120秒間として乾燥処理を施した。その後、紫外線(UV)照射により液晶化合物を重合させて、光重合性ネマチック液晶化合物が硬化した層、配向層、透明基材からなるポジティブC層を得た。光重合性ネマチック液晶化合物が硬化した層と、配向層との合計の厚みは4μmであった。また、第2の位相差層の透湿度比は0.60であった。
【0204】
[位相差層の積層体(1)の製造]
第1の位相差層2枚を紫外線硬化型接着剤により、それぞれの位相差層面(透明基材とは反対側の面)が貼合面となるように貼り合わせた。次いで、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させた。このようにして、2枚の第1の位相差層を有する位相差層の積層体(以下、該積層体を「位相差層の積層体(1)」と称する。)を作製した。位相差層の積層体(1)の厚みは5μmであった。また、位相差層の積層体(1)の透湿度比は0.24であった。
【0205】
[位相差層の積層体(2)の製造]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、紫外線硬化型接着剤により、それぞれの位相差層面(透明基材とは反対側の面)が貼合面となるように貼り合わせた。次いで、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させた。このようにして、第1の位相差層及び第2の位相差層を有する位相差層の積層体(以下、該積層体を「位相差層の積層体(2)」と称する。)を作製した。位相差層の積層体(2)の厚みは8μmであった。この位相差層の積層体(2)の両面から、それぞれ透明基材を剥離した後、位相差層の積層体(2)の突刺し強度を測定した。位相差層の積層体(2)の突刺し強度は、70gfであった。
【0206】
[位相差層の積層体(3)の製造]
位相差層の積層体(1)と第2の位相差層とを、紫外線硬化型接着剤により、それぞれの位相差層面(透明基材とは反対側の面)が貼合面となるように貼り合わせた。次いで、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させた。このようにして、2枚の第1の位相差層、及び第2の位相差層を有する位相差層の積層体(以下、該積層体を「位相差層の積層体(3)」と称する。)を作製した。位相差層の積層体(3)の厚みは10μmであった。この位相差層の積層体(3)の両面から、それぞれ透明基材を剥離した後、位相差層の積層体(3)の突刺し強度を測定した。位相差層の積層体(3)の突刺し強度は、85gfであった。
【0207】
[実施例1]
前記偏光子(1)の片面に第1の粘着剤層として粘着剤Bを移着した。粘着剤Bに積層されたセパレートフィルムを剥がし、位相差層の積層体(2)の第1の位相差層側の透明基材を剥がした面に積層した。位相差層の積層体(2)における偏光子に積層されている面とは反対側の面に、第2の粘着剤層として粘着剤Fを積層した。このようにして、保護フィルム、偏光子(1)、保護フィルム、第1の粘着剤層、第1の位相差層、接着層、第2の位相差層、及び第2の粘着剤層をこの順に含む偏光板を作製した。
【0208】
[実施例2~20、比較例1~2]
第1の粘着剤及び第2の粘着剤として表2及び表3に記載したものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製した。
【0209】
[実施例21~40及び比較例3~4]
位相差層の積層体(2)の代わりに位相差層の積層体(3)を用いる以外は実施例2~20及び比較例1~2と同様の手順で偏光板を作製した。なお、第1の粘着剤層は、位相差層の積層体(3)の第1の位相差層側の透明基材を剥がした面に積層し、第2の粘着剤は、位相差層の積層体(3)の第2の位相差層側の透明基材を剥がした面に積層した。
【0210】
<高温、高湿の環境下での偏光板の評価>
上述の通り作製した偏光板の第2の粘着剤層のセパレートフィルムを剥がし無アルカリガラス板〔コーニング社製の“Eagle-XG”〕に貼合し、評価サンプルとした。前記評価サンプルをオートクレーブ中、温度50℃で圧力5MPaの条件下で20分間加圧処理を行ない、その後、温度23℃で相対湿度60%の雰囲気下で1日放置した。その後、65℃、湿度90%の環境に放置した。65℃、湿度90%の環境に評価サンプルを入れてから、336時間後、504時間後、672時間後、及び840時間後にサンプルの外観を目視にて確認した。
【0211】
表2~表5中、840時間の時点で偏光板にしわが発生していなかったサンプルについては「A」、840時間の時点で偏光板にしわが発生していたサンプルは「B」、672時間の時点で偏光板にしわが発生していたサンプルは「C」、504時間の時点で偏光板にしわが発生していたサンプルは「D」、336時間の時点で偏光板にしわが発生していたサンプルは「E」と表記した。表2~表5中、Log(E/T)は第1の粘着剤層の貯蔵弾性率Eを厚みTで除し、常用対数を取った値を示し、Log(E/T)は第2の粘着剤層の貯蔵弾性率Eを厚みTで除し、常用対数を取った値を示す。
【0212】
【表2】
【0213】
【表3】
【0214】
【表4】
【0215】
【表5】
【0216】
表2~表5に示す通り、Log(E/T)とLog(E/T)との和が6.4以上の実施例の偏光板は、65℃、湿度90%という高温、高湿の環境に336時間さらしても、偏光板にしわは確認されなかった。
【0217】
以上の結果から、本発明が有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の偏光板は、高温、高湿の環境においても、偏光板のしわが発生しないため、高温、高湿の環境で使用される可能性のある画像表示装置に適用可能であるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0219】
11…偏光子、12…第1の粘着剤層、13…第2の粘着剤層、14…位相差層、15…第1の位相差層、16…第2の位相差層、17…第1の接着層、18…第2の接着層、19…第3の位相差層、100…偏光板、101…偏光板、102…偏光板
図1
図2
図3