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  • 特開-導電性積層体及び導電性積層テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174758
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】導電性積層体及び導電性積層テープ
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20231201BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B7/025
B32B27/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173489
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2023090799の分割
【原出願日】2020-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】袴田(白石) 奈々
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
(72)【発明者】
【氏名】宮田 義彦
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB17
4F100AB17A
4F100AB33
4F100AB33A
4F100AK01C
4F100AK25
4F100AK51
4F100AK52
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA13
4F100CA19
4F100CA23
4F100DC11E
4F100DE01
4F100GB41
4F100JG01
4F100JG01A
4F100JG01E
4F100JG04
4F100JG04C
4F100JG04E
4F100JK06
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JL10
4F100JL10B
4F100JL10D
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JN21
4F100JN21C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、総厚が小さく薄型でありながら、導電性ならびに、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能な導電性積層体および導電性積層テープを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、導電性積層体であって、対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層と、上記導電層の上記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層と、上記黒色粘着剤層上に設けられた絶縁部と、を有し、上記導電層は、金属箔であり、上記絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有し、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下である、導電性積層体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性積層体であって、
対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層と、
前記導電層の前記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層と、
前記黒色粘着剤層上に設けられた絶縁部と、
を有し、
前記導電層は、金属箔であり、
前記絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有し、
前記導電層の前記第1の主面側に位置する前記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下である、導電性積層体。
【請求項2】
前記黒色粘着剤層側から前記絶縁性樹脂層と前記黒色インキ層とがこの順で積層されている、請求項1に記載の導電性積層体。
【請求項3】
前記導電層の前記第1の主面側に位置する前記導電性積層体の表面の、60°グロス値が1以上5以下である、請求項1又は2に記載の導電性積層体。
【請求項4】
前記金属箔が銅箔である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項5】
前記銅箔が電解銅箔である、請求項4に記載の導電性積層体。
【請求項6】
前記導電層の十点平均表面粗さRzが2.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項7】
前記黒色インキ層の厚みが1μm以上3μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項8】
前記絶縁性樹脂層の厚みが1μm以上5μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項9】
前記黒色粘着剤層の隠蔽率が20%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項10】
前記導電性積層体の総厚が20μm以上40μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性積層体と、導電性粘着剤層とを有し、
前記導電性粘着剤層は、前記導電性積層体を構成する前記導電層の前記第2の主面上に設けられている、導電性積層テープ。
【請求項12】
前記導電性粘着剤層が、前記導電層の前記第2の主面上にパターン状に設けられており、
前記第2の主面上の前記導電性粘着剤層が配置されていない領域に、絶縁性粘着剤層が配置されている、請求項11に記載の導電性積層テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性積層体及び導電性積層テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性積層体、及び該積層体に導電性粘着剤層を設けた導電性積層テープ(以下、導電性積層体及び導電性積層テープのことを、総じて導電性積層体等と称する場合がある。)は、その取扱いの容易さから、電気・電子機器等から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、他の電気、電子機器より発生する有害な空間電磁波のシールド用、静電気帯電防止の接地用などに用いられている。
【0003】
導電性積層体等は、電気・電子機器の小型化及び薄型化に伴い、総厚が小さく薄型であることが求められている。また、導電性積層体等は、高導電性であることに加えて、電磁波シールド性が高いこと、及び他の部材との接触によるショートの発生等を防ぐために、一方の表面に絶縁性を有することが求められている。
【0004】
さらに近年、電気・電子機器は、外観及び内部の意匠性、表示画像の品質、画像視認性等の向上が図られており、特に該機器の内部に内蔵される電子部品の色を黒色に統一させて、内部意匠性の向上を図る試みがなされている。このため、このような内部意匠性が要求される部分に用いられる導電性積層体は、黒色電子部品の黒色と同調して一体感が出るように、漆黒性やマット感等の黒色意匠性や遮蔽性等の表面黒色性が高いことが求められている。なお、本明細書において、導電性積層体等の表面黒色性とは、主に導電性積層体等の絶縁性を有する面側から視認される物性である。
【0005】
例えば特許文献1には、樹脂フィルムの両面に金属層が形成されたベース基材と、該ベース基材の第1の主面に設けられた遮光性絶縁層と、該ベース基材の第2の主面に設けられた導電性粘着層と、を有する導電性シートが開示されている。特許文献1に開示される導電性シートは、遮光性絶縁層として、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂で形成された黒色樹脂層が用いられている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に着色層を有し、他方の面に透明粘着剤層を有する粘着テープが、軟質アルミニウム基材の第1の主面に貼合され、軟質アルミニウム基材の第2の主面に別の透明粘着剤層が設けられたシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-58108号公報
【特許文献2】特開2017-8262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で開示される導電性シートは、ベース基材が2つの金属層の間に樹脂フィルムを介した構造であり、金属層の1層あたりの厚みが小さい。このため、上記導電性シートは、導電性及び電磁波シールド性、特に電磁波シールド性が十分に得られにくい。そして、これらの特性を向上させるためには、金属層の厚みを大きくしなければならならず、導電性及び電磁波シールド性の向上と導電性シートの薄型化との両方を達成することが困難であるという課題がある。また、特許文献1で開示される導電性シートは、遮光性絶縁層である黒色樹脂層が金属層上に直接形成されている。しかし、高い絶縁性及び表面黒色性を有するためには、黒色樹脂層の厚みを大きくしなければならず、表面の絶縁性及び表面黒色性の向上と導電性シートの薄型化との両方を達成することが困難であるという課題がある。
【0009】
特許文献2で開示されるシートは、着色層のみで表面黒色性を担保しており、その厚みが薄いため、表面黒色性が十分に得られにくい。また、上記特性を向上させるためには、着色層の厚みを大きくしなければならず、表面黒色性の向上と導電性シートの薄型化との両方を達成することが困難であるという課題がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、総厚が小さく薄型でありながら、導電性及び電磁波シールド性、ならびに、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能な導電性積層体および導電性積層テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性積層体であって、対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層と、上記導電層の上記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層と、上記黒色粘着剤層上に設けられた絶縁部と、を有し、上記導電層は、金属箔であり、上記絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有し、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下である、導電性積層体を提供する。
【0012】
また本発明は、上述の導電性積層体と、導電性粘着剤層とを有し、上記導電性粘着剤層は、上記導電性積層体を構成する上記導電層の上記第2の主面上に設けられている、導電性積層テープを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、総厚が小さく薄型でありながら、導電性、電磁波シールド性、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能な、導電性積層体及び導電性積層テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の導電性積層体の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の導電性積層体の他の例を示す概略断面図である。
図3】本発明の導電性積層テープの一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の導電性積層テープの他の例を示す概略断面図である。
図5】電磁波シールド特性の測定方法に使用する試料の概要を示す図である。
図6】電磁波シールド特性の測定方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の導電性積層体及び導電性積層テープについて、それぞれ説明する。
【0016】
I.導電性積層体
本発明の導電性積層体は、対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層と、上記導電層の上記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層と、上記黒色粘着剤層上に設けられた絶縁部と、を有し、上記導電層は、金属箔であり、上記絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有する。
【0017】
本発明の導電性積層体は、黒色インキ層及び絶縁性樹脂層を有する絶縁部と、黒色粘着剤層と、導電層として金属箔と、がこの順に積層された層構成を有することで、総厚が小さく薄型でありながら、高い導電性、高い電磁波シールド性、及び高い表面絶縁性を示すことができる。更に本発明によれば、導電性積層体が上記積層構成を有することで、導電性積層体の絶縁部側表面の明度L、色度a及びbをそれぞれ所定の範囲内とすることができ、黒色性高めることができる。
【0018】
換言すれば、本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下である。
【0019】
本発明によれば、総厚が小さく薄型でありながら、導電性、電磁波シールド性、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能な、導電性積層体を提供することができる。
【0020】
さらに詳述すると、本発明の導電性積層体によれば、上述した層構成を有することで、最表層となる絶縁部における黒色インキ層及び黒色粘着剤層が呈する黒色が平面視上重なることにより、導電性積層体の総厚が小さくても表面黒色性を高く発揮することができる。特に、導電層として金属箔を用いる場合、金属箔の色目により導電性積層体表面が呈する黒色の色濃度や色相が影響を受けやすく、漆黒性やマット感等の黒色意匠性を発現することが困難となる。これに対し、本発明によれば、黒色インキ層及び黒色粘着剤層の2つの層で黒色性を担保し、2つの層の黒色が重なることで、金属箔の色目による影響を抑えることができ、表面黒色性、特に漆黒性やマット感等の黒色意匠性を高めることができる。また、本発明の導電性積層体によれば、絶縁部が、表面黒色性に寄与する黒色インキ層と絶縁性に寄与する絶縁性樹脂層とが別層であることで、表面黒色性を高めつつ、高い絶縁性を担保することができ、更に、導電層として金属箔を用いることにより、総厚が小さくても良好な電磁波シールド性を発揮することができる。
【0021】
ここで、本発明においては、導電性積層体全体での表面黒色性を、黒色インキ層と黒色粘着剤層との2つの層の重なりにより発現させているが、表面黒色性を発現させる方法として、例えば、導電層に黒色インキ層を直接形成して、黒色インキ層単層で発現させる方法も考えられる。しかしこの方法では、黒色インキ層により表面黒色性のみならず表面絶縁性も担保しなければならず、導電性積層体の総厚を小さくして表面黒色性を高めることができても、所望の表面絶縁性を示すことが困難な場合がある。また、絶縁性を高めるためには、黒色インキ層の厚みを大きくしなければならず、導電性積層体の総厚を小さくすることが困難になる場合がある。
【0022】
表面黒色性を発現させる別の方法として、黒色インキ層や黒色粘着剤層を設けずに、絶縁性を担保する絶縁性樹脂層内に黒色の着色剤を添加する方法も考えられる。しかし、この方法では、表面黒色性を発現させるために黒色着色剤の添加量を多くする必要があり、着色剤が有する導電性により絶縁性樹脂層の絶縁性が低下する場合がある。また、大量の着色剤を添加すると、絶縁性樹脂層を所望の薄さに延伸することが困難となり、絶縁性樹脂層の厚みが大きくなるため、導電性積層体の総厚を小さくすることが困難になる場合がある。
【0023】
このように、表面黒色性を発現させる方法によっては、積層体全体の薄型化が阻害される場合や、導電性、絶縁性、シールド特性等の物性が低下する場合があり、一方、薄型化や導電性、絶縁性、シールド特性等の要求特性を満たそうとすると、十分な表面黒色性が得られないという弊害がある。このような弊害を解消するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、黒色インキ層及び絶縁性樹脂層を有する絶縁部と、黒色粘着剤層と、導電層として金属箔と、がこの順に積層された層構成にすることで、総厚が小さく薄型で、且つ導電性、電磁波シールド性、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能となる導電性積層体を完成するに至ったのである。
【0024】
本発明の導電性積層体は、黒色インキ層及び絶縁性樹脂層を有する絶縁部と、黒色粘着剤層と、導電層とをこの順に有する。以下、各層について説明する。
【0025】
なお、本発明の導電性積層体において、上記導電層の上記第1の主面側に位置する導電性積層体の表面のことを、導電性積層体の絶縁部側表面と称する場合がある。また、上記導電層の上記第2の主面側に位置する導電性積層体の表面のことを、導電性積層体の導電層側表面と称する場合がある。
【0026】
(導電層)
本発明における導電層は、導電性積層体の導電性を担う層である。本発明においては、上記導電層は、金属箔である。ここで金属箔とは、金属で構成された層であり、金属をマイクロレベルの厚みにした箔である。本発明の導電性積層体は、導電層が金属箔であることで、グラファイトシートや金属蒸着膜等と比較して、高い電磁波シールド性を発揮することができる。
【0027】
金属箔は、所望の金属材料で構成される箔であれば特に限定されず、例えば銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。中でも導電性及び電磁波シールド特性に優れる観点から、銅箔が最も好ましい。
【0028】
また銅箔は、電解銅箔であってもよく、圧延銅箔でもよいが、導電層と貼合される黒色粘着剤層や、後述する導電性積層テープとしたときの接着性に優れることから、電解銅箔が最も優れている。
【0029】
導電層の厚みは、本発明の導電性積層体が所望の導電性を発揮することが可能な大きさであればよく、具体的には、導電層の厚みは15μm以上が好ましく、20μm以上が好ましく、また、上記厚みは40μm以下が好ましく、35μm以下が好ましい。より具体的には、導電層の厚みは15μm以上40μm以下が好ましく、20μm以上35μm以下が好ましい。導電層の厚みを上記の範囲内とすることで、導電性積層体の総厚が小さくても、導電性及び電磁波シールド性を良好に発揮することができるからである。なお、導電層の厚みが上記の範囲を超過すると、導電性積層体の薄型化が困難になる場合があり、一方上記の範囲に満たないと、導電性や電磁波シールド性が得られにくくなる場合がある。
【0030】
導電層の十点平均表面粗さRzは、2.0μm以下であることが好ましい。導電層の表面粗さRzが上記の範囲内にあることで、導電層と貼合される黒色粘着剤層や、後述する導電性積層テープとする際に導電層の第2の主面に貼合される薄膜の導電性粘着剤層や絶縁性粘着剤層に対して接着性を十分に発揮できるからである。導電層の十点平均表面粗さRzとして、より好ましくは、0.01μm以上、0.1μm以上であり、また上記Rzは、2.0μm以下、1.5μm以下、1.3μm以下、1.1μm以下、0.9μm以下である。
【0031】
また、導電層の算術平均粗さRaは、0.01μm以上1.0μm以下が好ましく、0.01μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.3μm以下が更に好ましい。導電層の算術平均粗さRaを上記の範囲内とすることで、導電層と貼合される黒色粘着剤層や、後述する導電性積層テープとする際に導電層の第2の主面に貼合される薄膜の導電性粘着剤層や絶縁性粘着剤層に対して接着性を十分に発揮できるからである。
【0032】
導電層の十点平均表面粗さRz及び算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に規定された値をいい、東京精密社製HANDYSURF+を用い、導電層の表面の任意の3箇所(それぞれ縦50μm×横50μmの範囲)に対して表面測定を行い、測定で得られた3点の平均値を導電層の十点平均表面粗さRz及び算術平均粗さRaとする。
【0033】
(黒色粘着剤層)
本発明における黒色粘着剤層は、導電層と絶縁部との間に配置され、導電層と絶縁部とを貼合する層である。本発明の導電性積層体は、絶縁部が有する黒色インキ層に加えて、導電層と粘着剤層とを貼合する粘着剤層が黒色を呈しており、平面視において黒色インキ層と黒色粘着剤層とが重なることで、絶縁部側表面から視認される表面黒色性、特に黒色意匠性を高めることができる。これにより、表面黒色性の向上に伴う導電性積層体の総厚の増大を抑えることができる。
【0034】
黒色粘着剤層は、黒色顔料と粘着剤成分とを少なくとも含む。粘着剤成分は特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤組成物、ポリアミド系粘着剤組成物、フッ素系粘着剤組成物、クリ-プ特性改良型粘着剤組成物、放射線硬化型粘着剤組成物などの公知の粘着剤組成物を適宜選択して用いることができる。粘着剤成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
中でも粘着剤成分としてアクリル系粘着剤組成物を含むことが好ましく、上記アクリル系粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル系共重合体)をベースポリマーとし、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤が含まれている(メタ)アクリル系粘着剤組成物であることが、接着信頼性が高いことから好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とするポリマーであり、必要に応じて(メタ)アルキルエステルに対して共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより調製される。すなわち、アクリル系ポリマーは、単独重合体であってもよく、共重合体であっても良い。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。アクリル酸ブチルを30%以上含有するものが接着性・耐熱性に優れるため好ましい。
【0038】
また、上記(メタ)アルキルエステルに対して共重合可能な共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体の他、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性の共重合性単量体(多官能モノマー)などが挙げられる。共重合性単量体は、1種単独用いても良く、2種以上組み合わせて用いてもよい。共重合性単量体としては、カルボキシル基などの官能基を有する改質用モノマーを好適に用いることができる。アクリル酸を0.5~4.0%含有するものが接着性・耐熱性に優れるため好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、50万以上、60万以上であり、又、上記重量平均分子量(Mw)は、好ましくは120万以下、100万以下、90万以下である。より具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、30万~120万の範囲内が好ましく、50万~100万の範囲内が更に好ましく、60万~90万の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあることで、上記黒色粘着剤層は、薄厚であっても導電層及び絶縁部に対して良好な接着性及び耐熱性を発揮することができる。
【0040】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H」
・検出器:示差屈折
【0041】
なお、本明細書内における重量平均分子量(Mw)は、特筆しない限り上記の方法及び条件により測定された値とする。
【0042】
本発明における黒色粘着剤層は、黒色着色剤を含むことで黒色を呈する。黒色着色剤としては、有機系黒色顔料、無機系黒色顔料、黒色染料等が挙げられる。黒色着色剤は、1種単独または2種以上を組合せて使用することができる。また、黒色着色剤は、絶縁性又は導電性が低いことが好ましい。黒色粘着剤層の導電性を低くして、導電性積層体の表面絶縁性を高めることができるからである。
【0043】
無機系黒色顔料としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブテン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素等が挙げられる。また、有機系黒色顔料としては、例えばアニリンブラック、アゾ系顔料、アントラキノン系有機黒色色素等が挙げられる。中でも、遮光性及び分散性に優れ、黒色インキ層と黒色粘着剤層との重なりによる高い隠蔽性を発現することが可能となることから、上記黒色着色剤は、カーボンブラックが好ましい。
【0044】
黒色粘着剤層中の黒色着色剤の含有量は特に限定されず、黒色インキ層との重なりにより所望の表面黒色性を発揮可能な量とすることができ、例えば黒色粘着剤層の全量(100質量%)中、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。黒色粘着剤層中の黒色着色剤の含有量が上記範囲にあることで、薄厚であっても黒色粘着剤層の絶縁性、絶縁部や導電層に対する接着性を発揮でき、更に黒色インキ層との重なりによる表面黒色性を高めることができる。
【0045】
黒色粘着剤層は、粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を含有することも好ましい。黒色粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することで、引張強度や引張破断強度を高くできるため、使用する(メタ)アクリル系ポリマーに応じて粘着付与樹脂を適宜添加することで、本発明の導電性積層体の引張強度や引張破断強度を調整できる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンやロジンのエステル化合物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα-ピネン-フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0046】
なかでも、上記黒色粘着剤層が、n-ブチル(メタ)アクリレート(換言すれば(メタ)アクリル酸n-ブチル)を主たるモノマー成分とする(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、ロジン系樹脂とスチレン系樹脂とを混合して含むことが好ましい。これらの2種類の粘着付与樹脂を併用することで、黒色粘着剤層の薄厚化と粘着力との両立がより達成しやすくなるからである。
【0047】
上記黒色粘着剤層は、初期接着力を上げるため、常温で液状の粘着付与樹脂を含むことが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、常温で固体の粘着付与樹脂の液状樹脂や、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。特にテルペンフェノール樹脂が好ましい。市販品としてはヤスハラケミカル社製YP-90L等がある。粘着付与樹脂の添加量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して1~20質量部を添加するのが好ましい。
【0048】
上記粘着付与樹脂は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し10質量部~70質量部の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは20質量部~60質量部の範囲である。粘着付与樹脂の量を上記の範囲とすることで、黒色粘着剤層の粘着力を向上させることができる。
【0049】
黒色粘着剤層のゲル分率は特に制限されるものではないが、5~95質量%の範囲であることが好ましい。黒色粘着剤層が薄厚であっても充分な接着性を発現しやすいからである。中でも、黒色粘着剤層のゲル分率は、10~70質量%の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは15~50質量%の範囲である。
【0050】
ゲル分率は、養生後の黒色粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
ゲル分率(質量%)=[(黒色粘着剤層のトルエン浸漬後質量)/(黒色粘着剤層のトルエン浸漬前質量)]×100
【0051】
黒色粘着剤層の、25℃での貯蔵弾性率は、1×10以上5×10Pa以下であることが好ましく、3×10以上1×10Pa以下であることがさらに好ましい。黒色粘着剤層の貯蔵弾性率を上記の範囲とすることで、薄膜であっても濡れ性(初期タック)及び接着性と加工性とを高度に両立しやすくなるからである。
【0052】
黒色粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、粘弾性試験機により測定することができる。より具体的には、粘弾性試験機として、ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製粘弾性試験機(アレス2kSTD)を用いて、次の測定条件で測定して求めることができる。
・試験片厚み:2mm
・周波数:1Hz
・圧縮荷重:40~60g
【0053】
なお、本明細書内において、黒色粘着剤層及びそれ以外の粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、特筆しない限り上記の方法及び条件で測定される値とする。
【0054】
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線照射重合法等の慣用の重合方法により調製することができる。
【0055】
黒色粘着剤層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上であり、また、上記厚みは、好ましくは5μm以下、3μm以下、2.5μm以下である。より具体的には、黒色粘着剤層の厚みは、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることが好ましく、1.5μm以上2.5μm以下であることが最も好ましい。黒色粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、黒色粘着剤層単体での黒色性が向上し、また、導電性積層体としての接着強度と薄さとを両立しやすくなるからである。特に本発明の導電性積層体を、電子部品用電磁波シールド用として用いる際に、要求される接着強度と薄さを両立しやすくなる。
【0056】
黒色粘着剤層は、導電性が低い、若しくは、絶縁性を示すことが好ましい。黒色粘着剤層の導電性を低くすることで、導電性積層体の絶縁部側表面の絶縁性を高めることができるからである。具体的には、黒色粘着剤層の表面抵抗率が、1×10Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。黒色粘着剤層の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、黒色粘着剤層が高い絶縁性を示すことができ、絶縁部により発揮される絶縁性を更に高めることができる。これにより、本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面においてより高い絶縁性を示すことが可能となる。なお、黒色粘着剤層の表面抵抗率は大きいほどよいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以下、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0057】
黒色粘着剤層の表面抵抗率は、JIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(アドバンテスト製 デジタル超高抵抗/微小電流計R8340、TR42ボックス)を用いて、黒色粘着剤層に500Vの電圧をかけて測定することができる。
【0058】
黒色粘着剤層の隠蔽率は、後述する黒色インキ層との重なりにより、所望の表面黒色性を発揮できる大きさであれば特に限定されないが、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、黒色粘着剤層の上記遮蔽率は、高いほど好ましく、その上限は100%とすることできる。黒色粘着剤層の隠蔽率を上記の範囲とすることで、導電層の色目による導電性積層体表面の黒色性が低下することを抑制できるためである。
【0059】
黒色粘着剤層の隠蔽率は下記の方法で測定することができる。黒色粘着剤層を隠蔽率試験紙(日本テストパネル工業社製)の白色面および黒色面に貼付し、JIS-Z-8722に規定される色の測定方法で、白色面および黒色面に貼付した黒色粘着剤層の三刺激値のうち明るさを示すY値をそれぞれ測定する。測色光沢計「CM-3500d」(ミノルタ社製)を使用し、2度視野における標準光Cについて測定する。測定したY値を下記式に当てはめ、隠蔽率を測定することができる。
隠蔽率(%)=(黒色面に貼付した黒色粘着剤層のY値/白色面に貼付した黒色粘着剤層のY値)×100%
【0060】
黒色粘着剤層は、導電層または樹脂フィルム上に、黒色着色剤を分散させた粘着剤を塗工することで形成させることができる。塗工方法としては、グラビアコーティング、コンマコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、リップコーティング、スクリーンコーティング等を挙げることができる。中でも薄膜の塗工をするために好ましいのはグラビアコーティングであり、その中でもマイクログラビアコーティングが最も好ましい。
【0061】
(絶縁部)
本発明における絶縁部は、黒色粘着剤層を介して導電層の第1の主面上に設けられる層である。また、上記絶縁部は、本発明の導電性積層体の一方の最表層を担う。本発明における絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有する。
【0062】
本発明の導電性積層体において、絶縁部が有する絶縁性樹脂層及び黒色インキ層の積層順は限定されず、上記黒色粘着剤層側から上記黒色インキ層と上記絶縁性樹脂層とがこの順で積層されていても良く、上記黒色粘着剤層側から上記絶縁性樹脂層と上記黒色インキ層とがこの順で積層されていても良い。
【0063】
図1は、本発明の導電性積層体の一例を表す概略断面図であり、黒色粘着剤層側から上記絶縁性樹脂層と上記黒色インキ層とがこの順で積層されている例を示している。図1に例示する本発明の導電性積層体10は、対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層1と、導電層1の第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層2と、黒色粘着剤層2上に設けられ、絶縁性樹脂層4及び黒色インキ層5を有する絶縁部3と、を有し、導電層1は、金属箔であり、黒色粘着剤層2側から絶縁性樹脂層4と黒色インキ層5とがこの順で積層されている。
【0064】
また、図2は、本発明の導電性積層体の他の例を表す概略断面図であり、黒色粘着剤層側から上記黒色インキ層と上記絶縁性樹脂層とがこの順で積層されている例を示している。図2に例示する本発明の導電性積層体10は、対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層1と、導電層1の上記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層2と、黒色粘着剤層2上に設けられ、絶縁性樹脂層4及び黒色インキ層5を有する絶縁部3と、を有し、導電層1は、金属箔であり、黒色粘着剤層2側から絶縁性樹脂層4と黒色インキ層5とがこの順で積層されている。
【0065】
中でも、上記絶縁部は、黒色粘着剤層側から上記絶縁性樹脂層と上記黒色インキ層とがこの順で積層されていることが好ましい。黒色インキ層が絶縁性樹脂層の導電層側とは反対側の面に配置されることで、黒色インキ層が導電性積層体の最外に位置することになり、黒色粘着剤層との重なりによる導電性積層体の表面黒色性の更なる調整を黒色インキ層により可能となるからである。
【0066】
本発明における絶縁部を構成する絶縁性樹脂層としては、特に限定されるものではないが、公知の絶縁性を示す樹脂フィルムがあげられる。具体的には、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリオレフィンフィルム等があげられる。そのなかでも、薄厚で絶縁性を維持しながら、破れにくく強度が発揮しやすいことから、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムが好ましく、より薄厚化が可能であり絶縁性に優れることからポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0067】
絶縁性樹脂層の厚みは、所望の絶縁性を発揮できる大きさであれば特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上、1.5μm以上、2μm以上とすることができる。また、上記厚みは、好ましくは5μm以下、4.5μm以下、4μm以下、3.5μm以下、3μm以下、2.5μm以下とすることができる。より具体的には、上記絶縁性樹脂層の厚みは1μm以上5μm以下が好ましく、なかでも1μm以上3μm以下が更に好ましく、1.5μm以上2.5μm以下が最も好ましい。絶縁性樹脂層の厚みを上記範囲内にあることで、高い絶縁性を発揮しやすいからである。
【0068】
また、本発明における絶縁部を構成する黒色インキ層は、黒色顔料及びバインダー樹脂を少なくとも含む。黒色インキ層は、公知の黒色顔料を樹脂ワニスに分散させた黒色インキにより形成される。
【0069】
黒色顔料は、1種単独または2種以上を組合せて使用することができる。また、黒色顔料は、絶縁性又は導電性が低いことが好ましい。黒色インキ層の導電性を低くして、導電性積層体の表面絶縁性を高めることができるからである。
【0070】
黒色顔料としては、公知の材料を用いることができ、有機系黒色顔料であってもよく、無機系黒色顔料であってもよい。無機系黒色顔料としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、金属酸化物(酸化クロム、酸化鉄、酸化銅等、二酸化マンガン等)、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、二硫化モリブテン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素等が挙げられる。また、有機系黒色顔料としては、例えばアニリンブラック、アゾ系顔料、アントラキノン系有機黒色色素等が挙げられる。
【0071】
中でも、黒色インキ層は、カーボンブラック及びアゾ系顔料の少なくとも一方の黒色顔料を含むことが好ましくい。カーボンブラックは黒色性を高めることができるため好ましいからである。また、アゾ系顔料は絶縁性を高くすることができるため好ましいからである。中でもカーボンブラック及びアゾ系顔料の両方を含むことがより好ましい。
【0072】
黒色顔料の含有量は、黒色インキ層と黒色粘着剤層との重なりにより所望の黒色性、特に黒色意匠性を発揮可能な量であればよく、例えば黒色インキ層の全量(100質量%)中、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることが好ましい。黒色顔料の含有量を上記の範囲とすることで、黒色インキ層が所望の表面黒色性を発現することができるからである。
【0073】
バインダー樹脂は、インキに用いられる公知の樹脂が適用でき、1種単独で用いても良く2種以上を組み合わせて用いても良い。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられる。そのなかでもポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂は、密着性に優れるため好ましく、柔軟性及び絶縁性樹脂層に対する密着性が良好であることから、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0074】
ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物及び低分子量の鎖伸長剤等の縮重合反応により得られ、分子内にウレタン結合を多数持った柔軟性、弾性に富んだ樹脂である。バインダー樹脂として用いられるポリウレタン系樹脂は、重量平均分子量が1,000~500,000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30,000~100,000の範囲内である。
【0075】
ポリウレタン樹脂を形成するためのジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に置換したダイマージイソシアネートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイ
ソシアネートなどの環状脂肪族ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネートなどのジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネートなどのテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;リジンジイソシアネートなどのアミノ酸ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物をはじめとする上記ポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0076】
ポリウレタン樹脂を形成するためのポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンポリオール類等が挙げられる。ポリエーテルポリオール類としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合したポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等の飽和または不飽和の低分子量グリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物等を脱水縮合して得られる化合物等が挙げられる。
【0077】
黒色インキ層は、上述した黒色顔料及びバインダー樹脂の他に、汎用のインキ組成物に用いられる公知の材料を含むことができる。公知の材料としては、例えば、セルロース系樹脂等の分散剤;各種のイソシアネート系硬化剤;シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ等の粒子系ブロッキング防止剤や、ポリエチレンワックス(PEワックス)、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤等のブロッキング防止剤;等が挙げられる。
【0078】
黒色インキ層の厚みは、黒色粘着剤層との重なりにより所望の黒色意匠性を発揮することが可能となる大きさであればよく、具体的には黒色インキ層の厚みは、好ましくは1μm以上、1.2μm以上、1.5μm以上であり、また、上記厚みは好ましくは3μm以下、2.5μm以下、2μm以下である。より具体的には、上記黒色インキ層の厚みは、1μm以上3μm以下が好ましく、そのなかでも1μm以上2μm以下がさらに好ましく、1.2μm以上2μm以下がより好ましい。黒色インキ層の厚みを上記範囲内とすることで、薄厚と表面黒色性との両方を達成することができるからである。
【0079】
黒色インキ層の隠蔽率は、上述した黒色粘着剤層との重なりにより所望の表面黒色性を発揮できる大きさであれば特に限定されないが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、黒色インキ層の遮蔽率は高いほど好ましく、その上限は100%とすることできる。黒色インキ層の隠蔽率を上記の範囲とすることで、導電層の色目の影響が導電性積層体の表面に出るのを抑制し、黒色性を制御しやすくなる。
【0080】
黒色インキ層の隠蔽率は黒色粘着剤層の隠蔽率の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0081】
本発明における絶縁部は、上述した黒色インキ層及び絶縁性樹脂層の他に、艶消し層を設けることができる。艶消し層を設けることで、明度L、色度a、及び色度b、ならびに60°グロス値の各物性を調整することができる。特に60°グロス値を調整するうえで艶消し層を設けることが好ましい。
【0082】
艶消し層は、樹脂バインダー及び微粒子を含む層である。微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の汎用の微粒子が挙げられる。また、樹脂バインダーとしては、艶消し層に汎用される樹脂を用いることができる。中でも上記艶消し層は、ウレタン系樹脂にシリカ粒子を分散させたものが好ましい。
【0083】
艶消し層の厚みは、所望の機能を発揮することが可能な大きさであれば特に限定されず、好ましくは0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上である。また、艶消し層の厚みは、導電性積層体の総厚に大きく影響しない大きさであればよく、好ましくは3μm以下、2μm以下、1.5μm以下である。より具体的には、艶消し層の厚みは0.3μm以上3μm以下が好ましく、なかでも0.5μm以上1.5μm以下が好ましい。
【0084】
上記絶縁部が艶消し層を更に有する場合、上記絶縁部は、上記黒色粘着剤層側から上記絶縁性樹脂層と上記黒色インキ層と上記艶消し層とがこの順で積層されていても良く、上記黒色粘着剤層側から上記黒色インキ層と上記絶縁性樹脂層と上記艶消し層とがこの順で積層されていても良い。中でも、上記絶縁部は、黒色粘着剤層側から上記絶縁性樹脂層と上記黒色インキ層と上記艶消し層とがこの順で積層されていることが好ましい。黒色粘着剤層との重なりによる導電性積層体の表面黒色性の更なる調整を、上記黒色インキ層及び上記艶消し層とで行うことができるからである。
【0085】
本発明における絶縁部の総厚は、3μm以上10μm以下が好ましく、なかでも4μm以上8μm以下がさらに好ましく、5μm以上7μm以下がより好ましい。絶縁部の総厚を上記範囲内とすることで、絶縁部による絶縁性及び黒色性の各物性をバランス良く発揮することができるからである。
【0086】
本発明における絶縁部は、表面抵抗率が1×10Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。絶縁部の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面においてより高い絶縁性を維持することが可能となる。なお、絶縁部の表面抵抗率は大きいほどよいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以上、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0087】
絶縁部の表面抵抗率は、JIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(アドバンテスト製 デジタル超高抵抗/微小電流計R8340、TR42ボックス)を用いて、黒色粘着剤層に500Vの電圧をかけて測定することができる。
【0088】
本発明における絶縁部は、黒色顔料をバインダー樹脂に分散させた黒色インキを、絶縁性樹脂層としての樹脂フィルムの表面に塗工して黒色インキ層を形成することで得られる。塗工方法は、公知慣用の塗工方法を用いることができ、特に限定されないが、なかでもグラビア塗工方法が最も好ましい。
【0089】
本発明における絶縁部が、黒色インキ層の上に更に艶消し層を有する場合は、上記艶消し層は、シリカ等の微粒子を樹脂バインダー中に分散させたマット剤(艶消し剤)を含有する表面処理剤を、黒色インキ層の表面に塗工することで形成することができる。
【0090】
(導電性積層体)
本発明の導電性積層体は、総厚が20μm以上であることが好ましく、25μm以上が更に好ましく、30μm以上がより好ましい。また上記総厚は40μm以下であることが好ましく、38μm以下であることが更に好ましく、36μm以下であることがより好ましい。より具体的には、本発明の導電性積層体は、総厚が20μm以上40μm以下であることが好ましく、25μm以上38μm以下であることが更に好ましく、30μm以上36μm以下であることがより好ましい。導電性積層体の総厚を上記の範囲内とすることで、総厚が小さく薄型でありながら、導電性及び電磁波シールド性、ならびに、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することができる。
【0091】
本発明の導電性積層体は、上述の層構成を有し、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面(すなわち導電性積層体の絶縁部側表面)の、CIE L表色系で規定される明度L、色度a、及び色度bがそれぞれ所定の値を示すことで、導電層の色目が抑えられ、導電性積層体の絶縁部側表面において色濃度及び色相に優れ、質感の高い黒色を呈することができる。これにより、本発明の導電性積層体は、薄型でありながら、導電性、絶縁性及び電磁波シールド性等を良好に満たしつつ、更に、優れた表面黒色性、特に黒色意匠性を発揮することができる。
【0092】
本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上であればよく、好ましくは21以上、21.5以上、22以上、22.5以上である。また、明度Lは27以下であればよく、好ましくは25以下、24以下、23以下である。より具体的には、明度Lは20以上27以下であればよく、中でも21以上25以下が好ましく、21.5以上24以下が更に好ましく、22以上23以下がより好ましい。本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面から測定される明度Lが上記の範囲内にあることで、導電性積層体として漆黒性に優れた黒色意匠性を発現でき、黒色部品と併用した際に黒色部品が呈する黒色と一体感を出すことができる。
【0093】
本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される色度aが-2以上であればよく、好ましくは-1.5以上、-1以上、-0.5以上、0以上である。また、色度aは2以下であればよく、好ましくは1.5以下、1以下、0.5以下である。より具体的には、色度aは-2以上2以下であればよく、中でも-1以上1以下であることが好ましく、-0.5以上0.5以下であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面から測定される色度aが上記の範囲内にあることで、導電性積層体としての優れた黒色意匠性を発現でき、黒色部品と併用した際に黒色部品が呈する黒色と一体感を出すことができる。
【0094】
本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される色度bが-2以上であればよく、好ましくは-1.5以上、-1以上である。また、色度bは2以下であればよく、好ましくは1.5以下、1以下、0.5以下、0以下である。より具体的には、色度bが-2以上2以下であればよく、好ましくは-2以上0以下、-1.5以上0.5以下、-1.5以上0以下、-1以上0以下である。本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面から測定される色度bが上記の範囲内にあることで、導電性積層体としての優れた黒色意匠性を発現でき、黒色部品と併用した際に黒色部品が呈する黒色と一体感を出すことができる。
【0095】
本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下であればよいが、中でも明度Lが21以上25以下であり、色度aが-1以上1以下であり、色度bが-1.5以上0.5以下であることが好ましく、明度Lが21.5以上24以下であり、色度aが-0.5以上0.5以下であり、色度bが-1以上0以下であることがより好ましい。
【0096】
本発明の導電性積層体のCIEカラー値(L、a、b)は、それぞれJIS Z 8722に従って測定することができる。具体的には、KONICA MINOLTA製 SPECTROPHOTOMETER CM-5を使用して、Cスペクトルが2°の測定基準JIS Z 8722に従って、導電性積層体の絶縁部側表面から測定した値とする。
【0097】
また、本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面の60°グロス値が、1以上5以下であることが好ましく、1以上4以下であることが好ましく、さらに好ましくは1以上3以下である。本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面から測定される60℃グロス値が上記範囲内にあることで、光沢感が抑えられ導電性積層体としてマット調の優れた意匠性を発現でき、黒色部品と併用した際に光沢感による目立ちを抑え、黒色部品が呈する黒色と一体感を出すことができる。
【0098】
60°グロス値は、導電性積層体の絶縁部側表面に対し、JIS Z 8741に従って60°の設定角度で測定される光沢度である。測定は、市販の測定装置(例えば、BYK社製 Cat No.4563マイクロ-TRI-グロスメーター)を用いて測定することができる。
【0099】
また、本発明の導電性積層体は、上述の層構成を有することで、薄型でありながら、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面(すなわち絶縁部側表面)においては高い絶縁性を示し、一方、上記導電層の上記第2の主面側に位置する上記導電性積層体の表面(すなわち導電層側表面)においては高い導電性を示すことができる。
【0100】
本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面(すなわち絶縁部側表面)の表面抵抗率が1×10Ω/□以上であることが好ましく、1×10Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、絶縁部側表面の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、絶縁部側表面においてより高い絶縁性を発揮することが可能となる。なお、導電性積層体の絶縁部側表面の表面抵抗率は大きいほど好ましいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以下、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0101】
また、本発明の導電性積層体は、上記導電層の上記第2の主面側に位置する上記導電性積層体の表面(すなわち導電層側表面)の表面抵抗率が10mΩ/□以下であることが好ましく、1mΩ/□以下であることがさらに好ましく、0.6mΩ/□以下であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、導電層側表面の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、導電層側表面においてより高い導電性を発揮することが可能となる。なお、導電性積層体の導電層側表面の表面抵抗率は、小さいほど好ましいが、一般に、0.001mΩ/□以上とすることができる。
【0102】
導電性積層体の絶縁部側表面および導電層側表面の表面抵抗率は、それぞれJIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、導電性積層体の絶縁部側表面又は導電層側表面に4端子のプローブを当てて測定することができる。
【0103】
(導電性積層体の製造方法)
本発明の導電性積層体の製造方法は、特に限定されるものではない。中でも、黒色インキ及び黒色粘着剤を調製する工程、絶縁性樹脂層の一方の面に黒色インキを塗工して、黒色インキ層及び絶縁性樹脂層を有する絶縁部を形成する絶縁部形成工程と、上記絶縁部の上記黒色インキ層とは反対側の面に上記黒色粘着剤を塗工して、黒色粘着剤層を形成する黒色粘着剤層形成工程と、上記黒色粘着剤層上に導電層として金属箔を貼合する導電層形成工程と、を有する製造方法は、皺の発生を抑えて導電性積層体を製造することができ、生産性に優れるために好ましい。
【0104】
絶縁部形成工程において、絶縁性樹脂層に黒色インキを塗工する方法は、乾燥後の黒色インキ層の厚みが所望の大きさとなれば特に限定されず、例えばグラビアコート法等を用いることができる。
【0105】
また、黒色粘着剤層形成工程において、黒色粘着剤を塗工する方法は、乾燥後の黒色粘着剤層の厚みが所望の大きさとなれば特に限定されず、例えばマイクログラビアコート法、ダイコート法、リップコート法等の公知の方法を用いることができる。
【0106】
(導電性積層体の用途)
本発明の導電性積層体は、薄型で導電性、絶縁性、表面黒色性に優れるため、単体若しくは後述するように導電層の第2の主面上に導電性粘着剤層を設けることで、これらの特性が求められる用途に広く適用することができる。中でも薄型のモバイル機器等のシールドやアース用途で好適に使用することができる。
【0107】
II.導電性積層テープ
本発明の導電性積層テープは、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体と、導電性粘着剤層とを有し、上記導電性粘着剤層は、上記導電性積層体を構成する上記導電層の上記第2の主面上に設けられている。
【0108】
本発明の導電性積層テープによれば、総厚が小さく薄型でありながら、導電性、電磁波シールド性、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することが可能である。
【0109】
(導電性積層体)
本発明における導電性積層体については、上記「I.導電性積層体」の項で説明した詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0110】
(導電性粘着剤層)
本発明における導電性粘着剤層は、粘着剤成分及び導電フィラーを含有するものである。
【0111】
導電フィラーとしては、ニッケル粉、銅粉、銀粉、金粉、導電性カーボンブラック、金属メッキしたガラスや樹脂粉等が使用できる。そのなかでも、ニッケル粉は、導電性積層体における導電層である金属箔に対する導電性、特に銅箔やステンレス箔に対する導電性に優れるため、より好ましい。
【0112】
導電性粘着剤層中の導電フィラーの含有量としては、所望の導電性を発揮可能な量とすることができ、特に限定されるものではないが、導電性粘着剤層の全量(100質量%)中、0.1質量%~80質量%の範囲内であることが好ましく、0.5質量%~40質量%の範囲内が好ましく、0.8質量%~10質量%の範囲内が最も好ましい。導電フィラーの含有量が上記範囲内であると、薄型であっても導電性と接着性とを両立しやすいからである。
【0113】
導電性粘着剤層を構成する粘着剤成分としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤、クリ-プ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤などの公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。粘着剤成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0114】
中でも粘着剤成分としては、特にアクリル系粘着剤が、接着信頼性が高いことから好適に用いることができる。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを粘着性成分又は主剤とし、これに必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤が含まれている。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするポリマーであり、必要に応じて(メタ)アルキルエステルに対して共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより調製されている。
【0115】
アクリル系共重合体としては、炭素数1~14の(メタ)アクリレートモノマーを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体を好ましく使用でき、炭素数1~14の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノマーがあげられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでも、アルキル基の炭素数が4~12の(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4~9の直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。なかでもn-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを好ましく使用でき、これらは各々単独で使用しても併用してもよい。
【0116】
アクリル系共重合体中の炭素数1~14の(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の80質量%~98.5質量%であることが好ましく、90質量%~98.5質量%であることがより好ましい。
【0117】
また、アクリル系共重合体は、高極性ビニルモノマーを共重合することも好ましく、高極性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基を有するビニルモノマー、水酸基を有するビニルモノマー、アミド基を有するビニルモノマー等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでもカルボキシル基含有モノマーは粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすいため好ましく使用できる。
【0118】
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等を使用でき、なかでもアクリル酸を共重合成分として使用することが好ましい。
【0119】
カルボキシル基を有するビニルモノマーを使用する場合には、その含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0120】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等などの水酸基含有(メタ)アクリレートを使用できる。
【0121】
また、アミド基を有するモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、等が挙げられる。
【0122】
その他の高極性ビニルモノマーとして、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレートがあげられる。
【0123】
高極性ビニルモノマーの含有量は、その総量がアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0124】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50万以上、60万以上、70万以上である。また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200万以下であり、180万以下であり、160万以下であり、120万以下であり、100万以下である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることで、導電性粘着剤層は、導電性積層体における導電層に対し、良好な初期接着性を有することができる。より具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、50万~120万の範囲内が好ましく、50万~100万の範囲内がより好ましい。
【0125】
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線照射重合法等の慣用の重合方法により調製することができる。
【0126】
導電性粘着剤層は、粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加しても良い。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンやロジンのエステル化合物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα-ピネン-フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;メタクリル系樹脂等が挙げられる。そのなかでも薄型で粘着力を向上させるために、ロジン系樹脂を含むことが好ましく、中でも重合ロジン系樹脂を含むことがより好ましい。また、ロジン系樹脂に加えてスチレン系樹脂を混合して含んでいても良い。
【0127】
また初期接着力を上げるため、常温で液状の粘着付与樹脂を混合して使用することが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、上述した粘着付与樹脂の液状樹脂や、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。特にテルペンフェノール樹脂が好ましい。市販品としてはヤスハラケミカル社製YP-90L等がある。
【0128】
粘着付与樹脂の添加量としては、アクリル系共重合体100質量部に対し10質量部~70質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは20質量部~60質量部の範囲内である。粘着付与樹脂を上記の範囲内で添加することにより粘着力を向上させることができる。
【0129】
導電性粘着剤層のゲル分率は、特に制限されるものではないが、10~60質量%であることが薄厚であっても充分な接着性を発現しやすいため好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは25~45質量%である。
【0130】
導電性粘着剤層のゲル分率は、養生後の導電性粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
ゲル分率(質量%)=[(導電性粘着剤層のトルエン浸漬後質量)/(導電性粘着剤層のトルエン浸漬前質量)]×100
【0131】
導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、1×10以上5×10Pa以下であることが好ましく、2×10以上1×10Pa以下であることがさらに好ましい。導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率が上記範囲にあることで、薄膜の導電性粘着剤層であっても接着性と加工性を高度に両立しやすいからである。なお、導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、上述した黒色粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率の測定方法と同じ方法及び条件により測定される値である。
【0132】
上記導電性粘着剤層は、単層構造であってもよく、導電性基材の両面にそれぞれ導電性粘着剤層が設けられた多層構造であってもよい。
【0133】
導電性粘着剤層が多層構造である場合の上記導電性基材としては、金属箔基材や湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された基材等が挙げられる。金属箔の材質としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫やこれらの合金が挙げられる。また、上記湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された基材としては、当該メッキとして無電解金属メッキを使用したものが挙げられる。メッキする金属としては、銅、ニッケル、銀、白金、アルミニウムが挙げられるが、そのなかでも、導電性やコストの点から銅又はニッケルが好ましい。なお、上記導電性基材の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上~50μm以下とすることができる。
【0134】
導電性粘着剤層の厚みは、導電性及び粘着剤を発揮できる大きさとすることができ、2μm以上60μm以下が好ましく、そのなかでも3μm以上10μm以下が好ましい。導電性粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、本発明の導電性積層テープの総厚を小さくしながら、導電性を更に高めることができる。
【0135】
また、導電性粘着剤層が多層構造である場合、多層構造全体の厚みが、3μm以上60μm以下であることが好ましく、そのなかでも5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0136】
上記導電性粘着剤層は、導電性積層体における導電層の第2の主面上に設けられる。図3で例示されるように、導電性粘着剤層11は、導電性積層体10における導電層1の第2の主面上の全域に設けられても良く、図4で例示されるように、導電性粘着剤層11は、導電性積層体10における導電層1の第2の主面上にパターン状に設けられてもよい。後者の場合、導電層1の第2の主面上の導電性粘着剤層11が配置されていない領域に、絶縁性粘着剤層12が配置されていること、すなわち、導電層10の第2の主面上に、導電性粘着剤層11と絶縁性粘着剤層12とがそれぞれ交互にパターン状に配置されていてもよい。導電性粘着剤層と絶縁性粘着剤層とが交互にパターン状に配置された態様は、接着性を向上できるため好ましい。
【0137】
導電層の第2の主面上に、導電性粘着剤層と絶縁性粘着剤層とがそれぞれ交互にパターン状に配置されている場合、上記絶縁性粘着剤層は、導電性粘着剤層の導電フィラーを含まないこと以外は、導電性粘着剤層と同様とすることができる。
【0138】
(任意の構成)
本発明の導電性積層テープは、上述した導電性積層体及び導電性粘着剤層を少なくとも構成に含むが、他の構成を含んでいても良い。例えば、導電性粘着剤層の上記導電性積層体とは反対側の面に、更に剥離層が設けられていても良い。剥離層を設けることで、導電性積層テープを保護することができるからである。
【0139】
剥離層としては、公知の剥離層を適宜選択して使用すればよい。樹脂フィルムに離形処理したものが平滑性に優れ、好ましい。そのなかでも耐熱性に優れる観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0140】
剥離層は、易剥離性を付与するために、表面が剥離処理されていることが好ましい。具体的には、剥離層の表面は、剥離処理層が設けられていることが好ましい。剥離処理層としては、両面粘着テープの剥離層用に使用される汎用の剥離処理剤により形成することができる。このような剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系剥離処理剤等が挙げられる。剥離処理層は、ラミネートやコーティングにより形成されていてもよい。
【0141】
剥離層の剥離力は、使用態様等に応じて適宜調整すればよいが、導電性積層テープに対する剥離力が0.01N/20mm~2N/20mm、好ましくは0.05N/20mm~0.15N/20mmとすることができる。剥離層を剥離する際に、導電性積層テープの変形を抑制しやすくなるからである。剥離力は、導電性積層テープの導電性粘着剤層の露出面に、剥離層として50μm厚みのPETフィルムを裏打ちして、0.3m/min~10m/minの速度で180°方向に剥離して測定することができる。
【0142】
(導電性積層テープ)
本発明の導電性積層テープは、総厚が22μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることが更に好ましく、30μm以上45μm以下であることがより好ましい。導電性積層テープの総厚を上記の範囲内とすることで、総厚が小さく薄型でありながら、導電性及び電磁波シールド性、ならびに、表面の絶縁性及び黒色性の各特性の両立を達成することができる。なお、本明細書内でいう導電性粘着テープの総厚みには、剥離層の厚みは含まないものとする。
【0143】
本発明の導電性積層テープは、導電性積層体側の表面から測定される、CIE L表色系で規定される明度L、色度a、色度bが、それぞれ上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の絶縁部側表面から測定されるCIE L表色系で規定される明度L、色度a、色度bの範囲内にあることが好ましい。
【0144】
また、本発明の導電性積層テープは、導電性積層体側の表面から測定される60°グロス値が、上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の絶縁部側表面から測定される60°グロス値の範囲内にあることが好ましい。
【0145】
本発明の導電性積層テープのCIEカラー値(L、a、b)及び、60°グロス値は、それぞれ上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体のCIEカラー値(L、a、b)及び、60°グロス値の測定方法と同じ方法及び条件で測定される値である。
【0146】
本発明の導電性積層テープは、導電性積層体側の表面から測定される隠蔽率が、上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の絶縁部側表面から測定される隠蔽率の範囲内にあることが好ましい。導電性積層テープの隠蔽率は、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体の絶縁部側表面から測定される隠蔽率の測定方法と同じ方法及び条件で測定される値である。
【0147】
本発明の導電性積層テープは、導電性積層体側の表面から測定される表面抵抗率が、上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の絶縁部側表面から測定される表面抵抗率の範囲内にあることが好ましい。
【0148】
また、本発明の導電性積層テープは、導電性粘着剤側表面から測定される表面抵抗率が、10mΩ/□以下であることが好ましく、1mΩ/□以下であることがさらに好ましく、0.6mΩ/□以下であることがより好ましい。なお、導電性積層テープの導電性粘着剤側表面から測定される表面抵抗率は小さいほど好ましいが、一般に0.001mΩ/□以上とすることができる。
【0149】
なお、導電性積層テープの導電性積層体側表面および導電性粘着剤層側表面の表面抵抗率は、それぞれJIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、導電性積層テープの導電性積層体側表面又は導電性粘着剤層側表面に4端子のプローブを当てて測定することができる。
【0150】
(導電性積層テープの製造方法)
本発明の導電性接着シートの製造方法は、特に限定されない。本発明の導電性接着シートは、例えば、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体を準備する工程、導電性フィラーおよび粘着剤成分を含む導電性粘着剤を調製する工程、上記導電性積層体における導電層の第2の主面上に、乾燥後厚みが所望の大きさとなるように導電性粘着剤を塗工して、導電性粘着剤層を形成する工程、を有する製造方法を用いて製造することができる。
【0151】
また、本発明の導電性接着シートは、例えば、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体を準備する工程、導電性フィラーおよび粘着剤成分を含む導電性粘着剤を調製する工程、導電性基材の両面に、乾燥後厚みが所望の大きさとなるように導電性粘着剤を塗工して、導電性両面粘着テープを形成する工程、上記導電性積層体における導電層の第2の主面と、導電性両面粘着テープの一方の粘着剤層とを貼合する工程と、を有する製造方法を用いて製造することができる。
【0152】
本発明の導電性接着シートの用途は、上記「I.導電性積層体」の項で説明した用途と同様とすることができる。
【0153】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0154】
以下に実施例を及び比較例について具体的に説明する。
【0155】
(ポリウレタン樹脂溶液A)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコに、アジピン酸/テレフタル酸=50/50なる酸成分及び3-メチル-1,5ペンタンジオールを反応させて得られる数平均分子量(以下Mnという)2,000のポリエステルポリオール192.9質量部と、1,4-ブタンジオールを15.8質量部と、イソホロンジイソシアネートを77.9質量部と、を仕込み、窒素気流下で90℃5時間反応させた。次いで、イソホロンジアミンを11.0質量部と、ジ-n-ブチルアミンを2.4質量部と、メチルエチルケトンを700質量部と、を更に添加し、攪枠下に50℃で4時間反応させ、樹脂固形分濃度30.0質量%、ガードナー粘度U(25℃)、アミン価=0、重量平均分子量30,000のポリウレタン樹脂溶液Aを得た。
【0156】
(黒色インキ)
調製したポリウレタン樹脂溶液Aを55質量部(N.V.30%)と、有機黒色顔料として(1-{4-[(4,5,6,7‐テトラクロロ‐3‐オキソイソインドリン‐1‐イリデン)アミノ]フェニルアゾ}‐2‐ヒドロキシ-N-(4’-メトキシ‐2’‐メチルフェニル)‐11H-ベンゾ[a]カルバゾール‐3-カルボキサミド)(大日精化株式会社製 近赤外反射顔料「クロモファインブラックA1103」(CAS番号:103621-96-1))を10質量部と、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部と、球状シリコーン樹脂ビーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 「トスパール2000B」:コールターカウンター法による平均粒子径6μm)を2質量部と、ポリエチレン微粉末ワックス(BASF社製 「Luwax AF29 Micropowder」を2質量部と、分散剤(ルーブリゾール社製「ソルスパーズ 24000GR」)を1質量部と、メチルエチルケトンを13質量部と、酢酸エチルを9質量部と、イソプロピルアルコールを5質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルを5質量部と、をそれぞれ添加して、サンドミルで約1時間、湿式分散して混合物を得た。この混合物に、ヘキサメチレンジイソシアネートタイプイソシアヌレート(住化バイエルウレタン社製 ポリイソシアネート硬化剤「スミジュールN3300」)を5質量部と、希釈剤(DICグラフィックス社製 「NH-NT DC溶剤」)を40質量部とをそれぞれ添加して黒色インキを調製した。
【0157】
(黒インキコートフィルムA(絶縁部A))
ポリエステルフィルム(東レ社製 F53ルミラー #2.0、厚さ:2.0μm)を絶縁性樹脂層として、上記ポリエステルフィルムの一方の面に、黒色インキを、乾燥後厚みが1.0μmとなるようにグラビアコートで塗工し、100℃で1分乾燥して、黒インキ層を得た。
【0158】
次に、黒インキ層上に、大日精化株式会社製 OS-MスエードOPニスを艶消し剤として用いて、マットインキ層(艶消し層)の厚さが0.5μmとなるようグラビアコートし、100℃で1分乾燥し、40℃で2日エージングした。これにより、ポリエステルフィルム(絶縁性樹脂層)の片面に黒インキ層が形成され黒インキ層上にマットインキ層(艶消し層)が形成された、黒インキコートフィルムA(絶縁部A)を得た。黒インキコートフィルムAの総厚さは3.5μmであった。なお、黒色インキ層の厚さは、黒インキコートフィルムAをカミソリで切断し、断面をマイクロスコープで2500倍に拡大して測定した。
【0159】
(黒インキコートフィルムB(絶縁部B))
ポリエステルフィルム(東レ社製 「F53ルミラー #2.0」、厚さ:2.0μm)の代わりにポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製 「カプトン20EN」、厚さ:5.0μm)を絶縁性樹脂層として用いたこと以外は、黒インキコートフィルムAと同様にして、ポリイミドフィルム(絶縁性樹脂層)の片面に黒色インキ層が形成され黒色インキ層上にマットインキ層(艶消し層)が形成された黒インキコートフィルムB(絶縁部B)を得た。黒インキコートフィルムBの総厚さは6.5μmであった。
【0160】
(透明粘着剤Aの調製)
冷却管、撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレートを97.98質量部と、アクリル酸を2質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレートを0.02質量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.2質量部とを、酢酸エチル溶液に添加し、溶液中で、80℃で8時間溶液重合を行って、重量平均分子量が90万のアクリル系ポリマーAを得た。
【0161】
次に、アクリル系ポリマーA100質量部に、重合ロジンエステル(荒川化学社製 商品名「D-135」)を5質量部と、不均化ロジンエステル(荒川化学社製 商品名「KE-100」)を20質量部と、石油樹脂(商品名「FTR6100」)を25質量部と、を加えて、更に酢酸エチルを加えて、固形分40質量%のアクリル系粘着剤溶液Aを調整した。
【0162】
アクリル系粘着剤溶液A(固形分40質量%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(商品名「NC40」DIC社製、固形分40質量%)を0.8質量部加えて、均一になるように撹拌して混合することにより、透明粘着剤Aを調製した。透明粘着剤Aのゲル分率は20質量%、25℃の貯蔵弾性率は9×10Paであった。
【0163】
(黒色粘着剤Bの調製)
上記アクリル系粘着剤溶液A(固形分40質量%)100質量部に、黒色着色剤(DIC社製 「DICTONクロAR8555」、カーボンブラック含有量:45%(固形分比)、樹脂固形分濃度49%)を10質量部添加し、攪拌機で均一に混合し、さらにイソシアネート系架橋剤(商品名「NC40」DIC社製)を1.2質量部加えて、均一になるように撹拌して混合することにより、黒色粘着剤Bを調製した。黒色粘着剤Bのゲル分率は20質量%、25℃の貯蔵弾性率は9×10Paであった。
【0164】
(黒色接着剤Cの調製)
ポリエステル系接着剤(DICグラフィックス社製 ドライラミネート用接着剤「ディックドライLX-703VL」、固形分62%)を15質量部と、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス社製 硬化剤「KR-90」、固形分90%)を1質量部と、黒色着色剤(DIC社製 「DICTONクロAR8555」、カーボンブラック含有量:45%(固形分比)、樹脂固形分濃度49%)を1質量部添加し、均一になるように撹拌して混合することにより、黒色接着剤Cを調製した。黒色粘着剤Cのゲル分率は90質量%、25℃の貯蔵弾性率は2×10Paであった。
【0165】
なお、各種粘着剤のゲル分率は、各種粘着剤をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
ゲル分率(質量%)=[(粘着剤のトルエン浸漬後質量)/(粘着剤のトルエン浸漬前質量)]×100
【0166】
(導電性粘着剤Aの調製)
冷却管、撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレートを75.0質量部と、2-エチルヘキシルアクリレートを19.0質量部と、酢酸ビニルを3.9質量部と、アクリル酸を2.0質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレートを0.1質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.1質量部と、を酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換した後、80℃で12時間重合することによって、重量平均分子量60万のアクリル系重合体Bを得た。
【0167】
次にアクリル系重合体Bの固形分100質量部に、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業株式会社製 「ペンセルD-135」、軟化点135℃)を10質量部、及び不均化ロジングリセリンエステル(荒川化学工業株式会社製 「スーパーエステルA-100」、軟化点100℃)を10質量部配合し、酢酸エチルを用いて、アクリル系重合体の固形分濃度を40質量%に調整することによってアクリル系粘着剤溶液Bを得た。
【0168】
アクリル系粘着剤溶液B(固形分濃度40質量%)を100質量部と、ニッケル粉(福田金属箔粉工業社製 「NI255T」数珠状導電性粒子、d50:26.0μm)を0.4質量部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(DIC株式会社製 「バーノックNC40」、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤Aを調製した。
【0169】
(絶縁性粘着剤Aの調製)
アクリル系粘着剤溶液B(固形分濃度40質量%)を100質量部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(DIC株式会社製 「バーノックNC40」、固形分40質量%)を2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって絶縁性粘着剤Aを調製した。
【0170】
(導電性粘着テープAの製造)
剥離フィルムA(ニッパ社製 商品名「PET38×1K0」)に導電性粘着剤Aを、乾燥後厚みが5μmとなるようコートし、100℃で2分乾燥して導電性粘着剤層Aを形成し、導電性粘着テープAを得た。
【0171】
(絶縁性粘着テープAの製造)
剥離フィルムA(ニッパ社製 商品名「PET38×1K0」)に絶縁性粘着剤Aを乾燥後厚みが5μmとなるようコートし、100℃で2分乾燥して、絶縁性粘着剤層Aを形成し、絶縁性粘着テープAを得た。
【0172】
(粘着剤Cの調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレートを60質量部と、2-エチルヘキシルアクリレートを35.95質量部と、アクリル酸を4.0質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレートを0.05質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部とを、酢酸エチル50質量部及びn-ヘキサン20質量部の混合溶剤に溶解し、それらを70℃で8時間重合させることによって、重量平均分子量70万のアクリル共重合体Cを得た。
【0173】
次に、アクリル共重合体Cの固形分100質量部に対し、重合ロジンエステル系樹脂(荒川化学工業株式会社製 「D-125」)を20質量部と、不均化ロジンエステル(荒川化学工業株式会社製 「A100」)を10質量部とを添加し、酢酸エチルを用いて固形分濃度を45質量%に調整することによって、アクリル系粘着剤溶液Cを得た。
【0174】
次にアクリル系粘着剤溶液C100質量部(固形分45質量部)と、イソシアネート系架橋剤(DIC株式会社製 「バーノックNC-40」、固形分40質量%、酢酸エチル溶液)を1.7質量部とを混合し、分散攪拌機を用いてそれらを10分間混合することによって、アクリル系粘着剤Cを得た
【0175】
(実施例1)
黒インキコートフィルムAのポリエステルフィルム面に、黒色粘着剤Bを乾燥後厚みが1.5μmとなるようグラビアコートし、70℃で2分乾燥して黒色粘着剤層Bを形成した後、厚み30μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業製 「CF-PLFA-30」)のケシ面に貼り合せ、さらに40℃で2日エージングして、導電性積層体を得た。電解銅箔のツヤ面のRzは0.72μmで、Raは0.11μmであった。また電解銅箔のケシ面のRzは1.4μmで、Raは0.23μmであった。
【0176】
(実施例2)
厚み30μmの電解銅箔の代わりに、厚み33μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業製 「CF-PLFA-33」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を得た。電解銅箔のツヤ面のRzは0.78μmで、Raは0.12μmであった。また電解銅箔のケシ面のRzは1.5μmで、Raは0.25μmであった。
【0177】
(実施例3)
黒インキコートフィルムAの代わりに、黒インキコートフィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を得た。
【0178】
(実施例4)
黒色粘着剤Bの代わりに、黒色接着剤Cを用いて乾燥後厚みが1.5μmの黒色粘着剤層Cを形成したこと以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を得た。
【0179】
(実施例5)
厚み30μmの電解銅箔「CF-PLFA-30」の代わりに、厚み30μmの圧延銅箔(福田金属箔粉工業製 「TCu-O-30」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を得た。電解銅箔の表面粗さは表裏がなく、Rzは0.6μmで、Raは0.1μmであった。
【0180】
(実施例6)
導電性粘着テープAの導電性粘着剤層Aを、実施例1の導電性積層体の電解銅箔面に貼り合せ、さらに40℃で2日エージングして、導電性積層テープを得た。導電性粘着テープAの剥離フィルムAは、評価の際は剥離され、又、上記剥離フィルムAは、導電性積層テープの総厚には含まれないものとする。
【0181】
(実施例7)
実施例1の導電性積層体の電解銅箔面に、導電性粘着テープAと絶縁性粘着テープAとを5mm幅で交互に貼り合せ、さらに40℃で2日エージングして、導電性積層テープを得た。導電性粘着テープA及び絶縁性粘着テープAの剥離フィルムAは、評価の際は剥離され、又、上記剥離フィルムAは、導電性積層テープの総厚には含まれないものとする。
【0182】
(比較例1)
アクリル系粘着剤Cを、剥離ライナー(ニッパ株式会社製 「PET38×1A3」)上に、乾燥後厚みが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥器中で3分間乾燥させて透明粘着剤層Cを形成し、それを40℃環境下で48時間養生した。
【0183】
次に、上記粘着剤層を、厚さ35μmの電解銅箔基材の一方の面に貼り合わせた。次に、総厚みが10μmの粘着テープ(DIC株式会社製 「IL-10BMF」、黒色着色層(厚み:1.5μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:4.5μm)/透明粘着剤層(厚み:4μm)の積層構成(「/」は積層界面を示す)を有する。)を、電解銅箔基材の他方の面に貼り合せることによって、導電性積層テープを作製した。
【0184】
(比較例2)
厚み5μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製 「マイラー」)の片面に、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)社製 「コロネートL」)を使用したポリエステル樹脂(ユニチカ(株)社製 「UE3220」)を3g/m(乾燥塗布量換算)で塗布し、厚み7μmの軟質アルミニウム箔(日本製箔(株) 1030N-0材)を積層した。同様にPETフィルムの他面に厚み7μmの軟質アルミニウム箔(1030N-0材、日本製箔(株))を積層し、ベース基材を作成した。
【0185】
剥離PETフィルムに、カーボンブラックを10質量%含有するアクリル系接着剤を乾燥厚みが5μmとなるようとなるように塗布し乾燥することにより導電性の黒色粘着層を形成し、この導電性の黒色粘着層に、先に作成したベース基材を積層した。
【0186】
続いて、このベース基材上に絶縁黒インク(アニリンブラックをポリエステル樹脂に分散させたインク)を、乾燥厚みが3μmとなるように塗布し乾燥し、黒色インキ層を形成することによって、導電性積層テープを得た。
【0187】
(比較例3)
黒色粘着剤Bの代わりに、透明粘着剤Aを用い、乾燥後厚みが1.5μmの透明粘着剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様に導電性積層体を得た。
【0188】
(比較例4)
厚み35μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業製 「CF-T8G-DK-35」の銅箔ツヤ面に、黒色インキAを4.5μmの厚みでグラビアコートし、100℃で1分間乾燥させて黒色インキ層Aを形成した。次に、黒色インキ層上に大日精化株式会社製OS-MスエードOPニスを用いて、マットインキ層(艶消し層)層の厚さが0.5μmとなるようグラビアコートし、100℃で1分乾燥した。これにより、マットインキ層(艶消し層)/黒色インキ層/電解銅箔の層構成(/は積層界面を表す)を有する導電性積層体を得た。電解銅箔のツヤ面のRzは1.4μmで、Raは0.18μmであった。また電解銅箔のケシ面のRzは10.2μmで、Raは1.6μmであった。
【0189】
なお、実施例及び比較例において用いた導電層の十点平均表面粗さRz及び算術平均粗さRaはそれぞれ、JIS B0601に規定に準拠して、東京精密社製HANDYSURF+を用い、導電層の表面の任意の3箇所に対して表面測定を行い、測定で得られた3点の平均値とした。
【0190】
[評価]
下記の測定方法にて、実施例及び比較例の導電性積層体、ならびに実施例及び比較例の導電性積層テープの性能を評価した。
【0191】
(厚み)
厚み計(NIKON社製 DIGIMICRO MFC-101)を用いて、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープにおける導電性積層体部分の総厚を測定した。また、実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープについては、導電層の第2の主面に設けられた粘着剤層を含めた総厚も測定した。
【0192】
(薄さ)
実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープにおける導電性積層体部分の厚みについて、下記評価基準で評価した。
〇:40μm以下
×:40μmを超える
【0193】
(L、a、b
分光測色計(KONICA MINOLTA製 SPECTROPHOTOMETER CM-5)を使用して、Cスペクトルが2°の測定基準JIS Z 8722に従って、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープの絶縁部側の表面からCIEカラー値(L、a、b)をそれぞれ測定した。
【0194】
(60°グロス値)
JIS Z 8741に従って、60°の設定角度で、KONICA MINOLTA製 MINOLTA Multi-Gloss 268を用いて、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープの絶縁部側の表面からグロス値(光沢度Gu)を測定した。
【0195】
(黒色粘着剤層の隠蔽率)
実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープにおける黒色粘着剤層の隠蔽率を下記方法で測定した。剥離フィルム(ニッパ社製 商品名「PET38×1K0」)の片面に、実施例で使用した黒色粘着剤B及びCを、それぞれ乾燥後厚みが1.5μmとなるようにコートし、70℃で2分間乾燥させて黒色粘着剤層を形成し、黒色粘着テープを得た。次に、隠蔽率試験紙(日本テストパネル工業社製)の白色面および黒色面に、黒色粘着テープを貼付し、離型フィルムを剥離してJIS-Z-8722に規定される色の測定方法で、白色面および黒色面に貼付した黒色粘着剤層の三刺激値のうち明るさを示すY値をそれぞれ測定した。測色光沢計「CM-3500d」(ミノルタ社製)を使用し、2度視野における標準光Cについて測定し、測定したY値を下記式に当てはめ、隠蔽率を測定した。
隠蔽率(%)=(黒色面に貼付した黒色粘着剤層のY値/白色面に貼付した黒色粘着剤層のY値)×100%
【0196】
(絶縁性)
抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体の絶縁部側の表面(導電層側表面とは反対側の表面)、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープの絶縁部側の表面(導電性粘着層側表面とは反対側の表面)に4端子のプローブを当て、絶縁部側表面の表面抵抗率を測定した。下記評価基準で評価した。
〇:9.9×10Ω/□以上の表面抵抗率(オーバーロード)
×:9.9×10Ω/□未満の表面抵抗率
【0197】
(導電性)
抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体の導電層側表面に4端子のプローブをあて、導電層側表面の表面抵抗率を測定した。また、実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープにおいては、導電性粘着剤層側表面で表面抵抗率を測定した。下記評価基準で評価した。
◎:0.6mΩ/□以下
〇:0.6mΩ/□を超え、10mΩ/□を以下
×:10mΩ/□を超える
【0198】
(電磁波シールド性)
実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体、ならびに実施例6~7及び比較例1~2の導電性積層テープから、それぞれ20mm幅×40mm長さの試験片25を切り出し、中央に5mm×20mmのスリット26が空いた厚さ0.5mm×20cm×20cmのアルミ板27の中央にスリットを塞ぐように設置してサンプルを作成した(図5)。導電性積層体の試験片25はアルミ板の上に静置し、導電性積層テープの試験片25はアルミ板27に貼り付けた。次に、関西電子工業振興センター(KEC)法に準拠した磁界用シールドボックス28(シールドルーム社製)に、前述のサンプルを設置した。スペクトルアナライザー29(アンリツ社製 MS2661C)をシールドボックスに設置し、3GHzの周波数の電磁波に対するシールド特性を下記評価基準で評価した(図6)。
◎:45db以上
○:40db以上45db未満
×:40db未満
【0199】
(接着性)
導電性粘着テープAの導電性粘着剤Aに厚み25μmのPETフィルム(東レ社製 ルミラーS10#25)を貼り合わせて、剥離フィルムA/導電性粘着剤層A/PETフィルムの構成を有するシートを作成した。次にこのシートを20mm幅×100mm長さにカットし、剥離フィルムAを剥離して、実施例1~5及び比較例3~4の導電性積層体の導電層側(銅箔)の面に導電性粘着剤層Aを貼り合わせて、2kgローラーで1往復加圧後、23℃50%RHで1時間放置し、180°方向に300mm/minの速度で剥がした際の接着力を測定した。下記評価基準で評価した。
◎:3N/20mm以上
〇:1N/20mm以上且つ、3N/20mm未満
×:1N/20mm未満
【0200】
(導電性積層体粘着テープの接着力)
実施例1~5及び比較例3及び4の導電性積層体の導電層面に導電性粘着テープAを貼り合わせたサンプルを23℃50%RH1日間放置した後、25mm幅×100mm長さにカットし、SUS板に貼付し、2kgローラーで1往復加圧後、23℃50%RHで1時間放置し、180°方向に300mm/minの速度で剥がした際の接着力を測定した。また、実施例6、7の導電性積層体テープについてはそのまま25mm幅×100mm長さにカットし、SUS板に貼付し、2kgローラーで1往復加圧後、23℃50%RHで1時間放置し、180°方向に300mm/minの速度で剥がした際の接着力を測定した。下記評価基準で評価した。
◎:8N/25mm以上
〇:4N/25mm以上且つ、8N/25mm未満
×:4N/25mm未満
【0201】
結果を表1~4に示す。
【0202】
【表1】



【0203】
【表2】



【0204】
【表3】


【0205】
【表4】


【0206】
表1~4より、実施例1~5の導電性積層体、及び実施例6~7の導電性積層テープは、黒色インキ層及び絶縁性樹脂層を有する絶縁部と、黒色粘着剤層と、導電層として金属箔と、がこの順に積層された層構成を有することで、総厚が小さく薄型でありながら、高い導電性、高い電磁波シールド性、及び高い表面絶縁性を示すことができ、更に上記積層構成を有することで、導電性積層体の絶縁部側表面の明度L、色度a及びbをそれぞれ所定の範囲内とすることができ、表面黒色性、特に黒色意匠性を高めることが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0207】
1…導電層(金属箔)、2…黒色粘着剤層、3…絶縁部、4…絶縁性樹脂層、5…黒色インキ層、10…導電性積層体、11…導電性粘着剤層、12…絶縁性粘着剤層、20…導電性積層テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性積層体であって、
対向する第1の主面及び第2の主面を有する導電層と、
前記導電層の前記第1の主面上に設けられた黒色粘着剤層と、
前記黒色粘着剤層上に設けられた絶縁部と、
を有し、
前記導電層は、金属箔であり、
前記絶縁部は、絶縁性樹脂層及び黒色インキ層を有し、
前記導電層の前記第1の主面側に位置する前記導電性積層体の表面の、CIE L表色系で規定される明度Lが20以上27以下であり、色度aが-2以上2以下であり、色度bが-2以上2以下である、導電性積層体。
【請求項2】
前記黒色粘着剤層側から前記絶縁性樹脂層と前記黒色インキ層とがこの順で積層されている、請求項1に記載の導電性積層体。
【請求項3】
前記金属箔が銅箔である、請求項1又は2に記載の導電性積層体。
【請求項4】
前記銅箔が電解銅箔である、請求項に記載の導電性積層体。
【請求項5】
前記導電層の十点平均表面粗さRzが2.0μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項6】
前記黒色インキ層の厚みが1μm以上3μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項7】
前記絶縁性樹脂層の厚みが1μm以上5μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項8】
前記黒色粘着剤層の隠蔽率が20%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項9】
前記導電性積層体の総厚が20μm以上40μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項10】
前記黒色インキ層上に艶消し層を有する、請求項1~9の何れか1項に記載の導電性積層体。
【請求項11】
前記絶縁部の総厚が3μm以上10μm以下である、請求項1~10の何れか1項に記載の導電性積層体。
【請求項12】
前記導電層の上記第1の主面側に位置する上記導電性積層体の表面抵抗率が1×10 Ω/□以上である、請求項1~11の何れか1項に記載の導電性積層体。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の導電性積層体と、導電性粘着剤層とを有し、
前記導電性粘着剤層は、前記導電性積層体を構成する前記導電層の前記第2の主面上に
設けられている、導電性積層テープ。