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特開2023-174784コーティング半導体ナノ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174784
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】コーティング半導体ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/08 20060101AFI20231201BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20231201BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20231201BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20231201BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C01B25/08 A
C09K11/08 G ZNM
C09K11/08 A
C09K11/70
C09K11/88
C09K11/56
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175319
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2020086918の分割
【原出願日】2020-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳶島 一也
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸司
(72)【発明者】
【氏名】野島 義弘
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CC05
4H001CC13
4H001CF01
4H001XA07
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA29
4H001XA30
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA33
4H001XA34
4H001XA47
4H001XA48
4H001XA49
4H001XA51
4H001XA52
(57)【要約】
【課題】蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする工程を含むコーティング半導体ナノ粒子の製造方法であって、金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングすることを特徴とするコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。このとき、前記コーティング工程を前記半導体ナノ粒子と前記金属酸化物前駆体の共存下とし、該共存下の前記金属酸化物前駆体に前記マイクロ波照射処理することで、前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングすることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする工程を含むコーティング半導体ナノ粒子の製造方法であって、
前記コーティングする工程の前に、前記半導体ナノ粒子の表面を表面改質剤で修飾する工程を含み、前記表面改質剤を、6-メルカプト-1-ヘキサノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト安息香酸の中から単独または複数選択されたものとし、
金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングすることを特徴とするコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記コーティング工程を前記半導体ナノ粒子と前記金属酸化物前駆体の共存下とし、該共存下の前記金属酸化物前駆体に前記マイクロ波照射処理することで、前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングすることを特徴とする請求項1に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記コーティング工程で用いられる前記半導体ナノ粒子を、半導体ナノ粒子コア及び該半導体ナノ粒子コアを覆う単独または複数の半導体ナノ粒子シェルを含むものとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記コーティング工程で用いられる半導体ナノ粒子コアを、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AgGaS、AgInS、AgGaSe、AgInSe、CuGaS、CuGaSe、CuInS、CuInS、ZnSiP、ZnGeP、CdSiP、CdGePの中から単独、複数、合金または混晶として選択されたものとすることを特徴とする請求項3に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング工程で用いられる半導体ナノ粒子シェルを、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbの中から単独、複数、合金または混晶として選択されたものとすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング工程を、極性溶媒、非極性溶媒、イオン液体のいずれか1種以上の溶媒中で行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記コーティング工程で用いられる前記溶媒を、体積比で前記非極性溶媒を90%以上含む溶媒とすることを特徴とする請求項6に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング工程で用いられる前記非極性溶媒を、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテルのいずれか1種以上の溶媒とすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記コーティング工程で用いられる前記金属酸化物前駆体を、金属アルコキシド、金属ハライド、金属錯体の中から単独または複数選択されたものとすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング工程を、アルカリ性水溶液存在下において行うことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング工程を、界面活性剤存在下において行うことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記コーティング工程を、アルコール存在下において行うことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング工程におけるマイクロ波照射処理の処理時間を、3~30分の範囲とすることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記コーティング工程におけるマイクロ波照射処理の加熱温度を、40~100℃の範囲とすることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング半導体ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径がナノサイズの半導体粒子は、光吸収により生じた励起子がナノサイズの空間に閉じ込められることによりその半導体ナノ粒子のエネルギー準位が離散的となり、またそのバンドギャップは粒子径に依存する。このため半導体ナノ粒子の蛍光発光は高効率でその発光スペクトルはシャープである。
【0003】
また、粒子径によりバンドギャップが変化するという特性から発光波長を制御できる特徴を有しており、固体照明やディスプレイの波長変換材料としての応用が期待される(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、半導体ナノ粒子は、表面にダングリングボンドのような欠陥が生じやすい。この表面欠陥では酸素や水分による酸化反応が進行し、新たに欠陥準位を形成するため、蛍光発光効率が経時的に劣化する。
【0005】
現在得られている半導体ナノ粒子は、熱や湿度、光励起、さらには粒子同士の凝集などが蛍光発光効率に悪影響を及ぼすことがある。さらにディスプレイに用いるような波長変換材料の用途によっては、樹脂等に分散させて使用されるが、半導体ナノ粒子は樹脂中で凝集や安定性の低下が起こることにより、蛍光発光効率の低下が起こることが知られている。
【0006】
上記の点から、半導体ナノ粒子の蛍光発光効率の劣化を抑制させる方法として、半導体ナノ粒子表面を金属酸化物のような保護層で被覆し、安定性を向上させる手法が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献2では、半導体ナノ粒子表面に金属アルコキシドを段階的に反応させてシリカガラス層を堆積させることで、半導体ナノ粒子をシリカガラスに分散させた複合体の製造方法が開示されている。このような製造方法により蛍光発光効率及び安定性が高い半導体ナノ粒子を含む複合体を提供しうることが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された複合体を、波長変換材料として用いる場合、さらなる蛍光発光効率の改善が必要であった。また、安定性についても、室温大気雰囲気下に加えて、高温高湿条件下において、蛍光発光効率の劣化を抑制させることが必要であった。
【0009】
また、特許文献3では、界面活性剤を溶解させた有機溶媒に半導体ナノ粒子の水分散溶液を添加することで、ナノ粒子水溶液を内包した逆ミセルを形成し、その逆ミセルを金属酸化物前駆体の反応場とした方法を用いて、ナノ粒子が分散固定されたガラス複合体の製造を行っている。
【0010】
特許文献3の方法により、高い蛍光発光効率を示すガラス複合体が提供されうる。しかし、この製造法では反応時間が数日かかり、多量の溶媒と界面活性剤を使用することから、大量生産や低コスト化が困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-022028号公報
【特許文献2】国際公開2011/081037号
【特許文献3】特許第4403270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする工程を含むコーティング半導体ナノ粒子の製造方法であって、
金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングするコーティング半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0014】
このようなコーティング半導体ナノ粒子の製造方法であれば、蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を効率的に製造できる。
【0015】
このとき、前記コーティング工程を前記半導体ナノ粒子と前記金属酸化物前駆体の共存下とし、該共存下の前記金属酸化物前駆体に前記マイクロ波照射処理することで、前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングすることが好ましい。
【0016】
これにより、金属酸化物を半導体ナノ粒子に確実にコーティングすることができ、より蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子をより効率的に製造できる。
【0017】
このとき、前記コーティング工程で用いられる前記半導体ナノ粒子を、半導体ナノ粒子コア及び該半導体ナノ粒子コアを覆う単独または複数の半導体ナノ粒子シェルを含むものとすることが好ましい。
【0018】
これにより、蛍光発光特性及び安定性に優れた半導体ナノ粒子を効率的に製造することができる。
【0019】
このとき、前記コーティング工程で用いられる半導体ナノ粒子コアを、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AgGaS、AgInS、AgGaSe、AgInSe、CuGaS、CuGaSe、CuInS、CuInS、ZnSiP、ZnGeP、CdSiP、CdGePの中から単独、複数、合金または混晶として選択されたものとすることができる。
【0020】
これらの化合物は、蛍光発光特性、安定性に優れているため、半導体ナノ粒子コアに好適に用いることができる。これらの化合物の内、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、InPが、蛍光発光特性、安定性の点から特に好ましい。
【0021】
このとき、前記コーティング工程で用いられる半導体ナノ粒子シェルを、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbの中から単独、複数、合金または混晶として選択されたものとすることが好ましい。
【0022】
このようにすることで、コア材料に対してバンドギャップが大きく、格子不整合性が低い半導体ナノ粒子とすることができる。これらの化合物の内、ZnSe、ZnS、CdSe、CdSが蛍光発光効率の向上及び安定性の点から特に好ましい。
【0023】
このとき、前記コーティング工程を、極性溶媒、非極性溶媒、イオン液体のいずれか1種以上の溶媒中で行うことが好ましい。
【0024】
これらの溶媒は、半導体ナノ粒子及び金属酸化物前駆体の分散媒として好適に用いることができる。
【0025】
このとき、前記コーティング工程で用いられる前記溶媒を、体積比で前記非極性溶媒を90%以上含む溶媒とすることが好ましい。
【0026】
このようにすることで、コーティング時の蛍光発光効率の劣化を抑制するができる。
【0027】
このとき、前記コーティング工程で用いられる前記非極性溶媒を、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテルのいずれか1種以上の溶媒とすることが好ましい。
【0028】
これらの非極性溶媒は、半導体ナノ粒子の分散性をより向上させることができる。
【0029】
このとき、前記コーティング工程で用いられる前記金属酸化物前駆体を、金属アルコキシド、金属ハライド、金属錯体の中から単独または複数選択されたものとすることが好ましい。
【0030】
これらの金属酸化物前駆体は、反応性が高く、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物としてコーティングするのに好適に用いることができる。
【0031】
このとき、前記コーティング工程を、アルカリ性水溶液存在下において行うことが好ましい。
【0032】
このようにすれば、コーティング層の膜厚の制御が容易になる。
【0033】
このとき、前記コーティング工程を、界面活性剤存在下において行うことが好ましい。
【0034】
このようにすれば、金属酸化物前駆体の分散性に優れる。
【0035】
このとき、前記コーティング工程を、アルコール存在下において行うことが好ましい。
【0036】
このようにすれば、金属酸化物前駆体の分散性がより優れる。
【0037】
また、前記コーティング工程におけるマイクロ波照射処理の処理時間を、3~30分の範囲とすることが好ましく、5~15分の範囲がより好ましい。
【0038】
このような処理時間とすれば、蛍光発光効率の低下を防ぐことができる。
【0039】
また、前記コーティング工程におけるマイクロ波照射処理の加熱温度を、40~100℃の範囲とすることが好ましく、50~80℃の範囲がより好ましい。
【0040】
マイクロ波照射処理における反応温度は、溶媒によって異なるが、このような温度にすれば、蛍光発光効率の劣化を防ぐことができる。
【0041】
このとき、前記コーティング工程の前に、前記半導体ナノ粒子の表面を表面改質剤で修飾する工程を含むことが好ましい。
【0042】
このようにすれば、表面改質剤を介して金属酸化物前駆体が半導体ナノ粒子表面で反応するため、より効率的に半導体ナノ粒子表面に金属酸化物層がコーティングされ、マイクロ波照射処理時に蛍光発光効率の劣化が抑制される。
【0043】
このとき、前記表面改質剤を、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、6-メルカプト-1-ヘキサノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト安息香酸の中から単独または複数選択されたものとすることが好ましい。
【0044】
これらの化合物は、表面改質剤として好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明は半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物がコーティングされたコーティング半導体ナノ粒子であって、
前記金属酸化物は前記半導体ナノ粒子の表面にマイクロ波照射処理コーティングされたコーティング半導体ナノ粒子を提供する。
【0046】
このようなコーティング半導体ナノ粒子は、蛍光発光効率の劣化が抑制されたものである。
【0047】
このとき、コーティング半導体ナノ粒子を樹脂中に分散させたものである樹脂組成物とすることが好ましい。
【0048】
このような樹脂組成物は、蛍光発光効率の劣化が抑制された樹脂組成物である。
【0049】
このとき、樹脂組成物の硬化物を用いた波長変換材料とすることが好ましい。
【0050】
このような波長変換材料であれば、信頼性が向上したものとなる。
【0051】
このとき、波長変換材料を用いた発光素子とすることが好ましい。
【0052】
このような発光素子であれば、信頼性の特に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0053】
以上のように、本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法によれば、蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を効率的に製造することができる。また、本発明のコーティング半導体ナノ粒子は、蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子である。また、本発明のコーティング半導体ナノ粒子は、樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物を用いた波長変換材料、及び波長変換材料を用いた発光素子に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明において、半導体ナノ粒子及び金属酸化物の組成や製法は以下の形態のみに制限されない。
【0055】
上述のように、蛍光発光効率の劣化が抑制された半導体ナノ粒子を効率的に製造するという課題がある。本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた。その結果、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする工程を含み、前記コーティング工程がマイクロ波照射処理によって行われる、コーティング半導体ナノ粒子の製造方法により、蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0056】
即ち、本発明は、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする工程を含むコーティング半導体ナノ粒子の製造方法であって、金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで前記半導体ナノ粒子の表面に前記金属酸化物をコーティングするコーティング半導体ナノ粒子の製造方法である。
【0057】
本発明者らは、上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推測している。
ストーバー法や逆ミセル法を用いた、半導体ナノ粒子表面における金属酸化物のコーティング方法では、半導体ナノ粒子が水や酸素と長時間共存するために、粒子表面の酸化反応やリガンド脱離による粒子同士の凝集が起こり、蛍光発光効率が徐々に劣化する。
【0058】
一方、マイクロ波照射処理を用いた方法では、金属酸化物前駆体が内部から選択的に直接加熱され、短時間で反応が進行する。このため温和条件かつ効率的に金属酸化物のコーティングが進行し、半導体ナノ粒子(量子ドット)表面に吸着しているリガンドの脱離や表面酸化反応が緩和され、蛍光発光効率の劣化が抑制される。
【0059】
従って、金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理を行い、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングすることで、リガンドの脱離や表面酸化反応が緩和され、蛍光発光効率の劣化を抑制することが可能となる。
【0060】
以上のメカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0061】
(半導体ナノ粒子)
本発明における半導体ナノ粒子の構造は特に限定されないが、蛍光発光特性及び安定性の観点から、コア/シェル構造の半導体ナノ粒子が好ましい。即ち、半導体ナノ粒子コア及び該半導体ナノ粒子コアを覆う単独または複数の半導体ナノ粒子シェルを含むものとすることが好ましい。ナノサイズの半導体粒子をコアとして、そのコアよりもバンドギャップが大きく、格子不整合性が低い半導体をシェルとした、コア/シェル構造の半導体ナノ粒子では、シェルで生じた励起子がコア粒子の内部に閉じ込められるために、蛍光発光効率は向上し、さらにコア表面がシェルで覆われるために安定性が向上する。
【0062】
コア/シェル半導体ナノ粒子の半導体ナノ粒子コアの材料としては特に限定されないが、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-V族化合物を、単独、複数、合金または混晶として選択されたものを用いることが好ましい。
【0063】
具体的なコア材料は、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AgGaS、AgInS、AgGaSe、AgInSe、CuGaS、CuGaSe、CuInS、CuInS、ZnSiP、ZnGeP、CdSiP、CdGePを含む化合物が挙げられる。これらの化合物は、蛍光発光特性、安定性に優れているため、半導体ナノ粒子コアに好適に用いることができ、これらの化合物の内、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、InPは、蛍光発光特性、安定性の点から特に好ましい。
【0064】
半導体ナノ粒子シェルの材料としては、特に限定されないが、コア材料に対してバンドギャップが大きく、格子不整合性が低いものが好ましく、II-VI族化合物、III-V族化合物を、単独、複数、合金または混晶として選択されたものを用いることが好ましい。
【0065】
具体的なシェル化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbを含む化合物が挙げられ、これらの化合物はコア材料に対してバンドギャップが大きく、格子不整合性が低いものとすることができる。これらの化合物の内、ZnSe、ZnS、CdSe、CdSは蛍光発光効率の向上及び安定性の点から特に好ましい。
【0066】
半導体ナノ粒子の製造法は液相法や気相法等の様々な方法があるが、本発明においては特に限定されない。高い蛍光発光効率を示す観点から、高沸点の非極性溶媒中において高温で前駆体種を反応させる、ホットソープ法やホットインジェクション法を用いて得られる半導体ナノ粒子を用いることが好ましい。
【0067】
なお、半導体ナノ粒子は、表面欠陥を低減するため、表面にリガンドと呼ばれる有機配位子が配位していることが好ましい。リガンドは半導体ナノ粒子の凝集抑制の観点から脂肪族炭化水素を含むことが好ましい。このようなリガンドとしては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリル酸、デカン酸、オクタン酸、オレイルアミン、ステアリル(オクタデシル)アミン、ドデシル(ラウリル)アミン、デシルアミン、オクチルアミン、オクタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、テトラデカンチオール、ドデカンチオール、デカンチオール、オクタンチオール、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィン、トリブチルホスフィンオキシド等が挙げられ、これらを1種単独で用いても複数組み合わせても良い。
【0068】
(コーティング半導体ナノ粒子)
本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法は、金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングする。マイクロ波を用いることで、金属酸化物前駆体が直接内部から加熱され、より短時間で選択的にコーティングが進行する。
【0069】
ここで「マイクロ波」とは、一般的に300MHz~3THzの振動数を有する電磁波を指す。また、マイクロ波の照射方法としては、例えばマイルストーン社製のflexi WAVEを用いる方法が挙げられるが、特に限定されない。
【0070】
また、本発明において、シリコン酸化物は金属酸化物に含まれるものとする。
【0071】
本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法の半導体粒子表面における金属酸化物の「コーティング」は、部分的であっても完全に被覆されている形態であってもよい。またコアシェル構造のような均一な被覆層であっても、不均一な被覆層であってもよく、複数の半導体ナノ粒子を金属酸化物が被覆しているような構造でもよい。金属酸化物の膜厚は特に限定されないが、透光性の観点から100nm以下が好ましい。
【0072】
このとき、コーティング工程を半導体ナノ粒子と金属酸化物前駆体の共存下とし、該共存下の金属酸化物前駆体にマイクロ波照射処理することで、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物をコーティングすることが好ましい。これにより、金属酸化物を半導体ナノ粒子に確実にコーティングすることができ、より蛍光発光効率の劣化が抑制されたコーティング半導体ナノ粒子をより効率的に製造できる。
【0073】
このとき、コーティング工程における半導体ナノ粒子及び金属酸化物前駆体の分散媒としては、極性溶媒、非極性溶媒、イオン液体のいずれか1種以上を選択し、その溶媒中でコーディングを行うことが好ましい。これらの溶媒は、半導体ナノ粒子及び金属酸化物前駆体の分散媒として好適に用いることができる。
【0074】
このとき、溶媒の非極性溶媒の割合を、体積比で90%以上とすることが好ましい。このような溶媒であれば、コーティング時の蛍光発光効率の劣化を抑制することができる。
【0075】
また、このときコーティング工程で用いられる非極性溶媒を、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテルのいずれか1種以上の溶媒とすることが好ましい。これらの非極性溶媒は、半導体ナノ粒子の分散性をより向上させることができる。また溶媒が非極性溶媒の場合、ウェフロンと呼ばれる、マイクロ波を吸収するような加熱素子をコーティング工程時に、任意で使用してもよい。
【0076】
金属酸化物前駆体としては、特に限定されないが、金属アルコキシド、金属ハライド、金属錯体の中から単独または複数選択されたものを使用することが好ましい。これらの金属酸化物前駆体は、反応性が高く、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物としてコーティングするのに好適である。
【0077】
金属アルコキシドの化合物として、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトライソプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラキス(2-エチルへキシルオキシ)シラン、トリメトキシシラン、トリエトキシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、チタニウムエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、テトラキス(2-エチルヘキシル)オルトチタナート、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛tertブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtertブトキシド、アルミニウムsecブトキシド、イットリウムイソプロポキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムtertブトキシド、鉄エトキシド、鉄イソプロポキシドが挙げられる。
【0078】
また、金属ハライド化合物として、塩化チタン、塩化亜鉛、四塩化シリコン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム、塩化イットリウム、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化チタン、臭化亜鉛、臭化ジルコニウム、臭化ハフニウム、臭化アルミニウム、臭化イットリウム、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化チタン、ヨウ化亜鉛、四ヨウ化シリコン、ヨウ化ジルコニウム、ヨウ化ハフニウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化イットリウム、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)などが挙げられる。
【0079】
また、金属錯体化合物として、アルミニウムアセチルアセトナート、チタニルアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0080】
安定性の観点から、金属酸化物前駆体としては、シリコンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシドが好ましい。半導体ナノ粒子と金属酸化物前駆体の混合比率(重量比)は、1:0.4~1:3が好ましい。
【0081】
このとき、コーティング工程時に金属酸化物前駆体の反応を促進させるために触媒を用いることが望ましい。特に、金属アルコキシドを用いる場合、ゾルゲル反応を促進させるために触媒を用いることが望ましい。触媒としては、酸性水溶液または塩基性水溶液が挙げられ、コーティング層の膜厚の観点から塩基性水溶液が特に好ましい。触媒と金属酸化物前駆体の混合比率(モル比)は、1:0.4~1:2が好ましく、金属酸化物前駆体と水の混合比率(モル比)は、1:2~1:10が好ましい。
【0082】
また、コーティング工程時に、金属酸化物前駆体の分散性の観点から界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤は特に限定されないが、例えば、カチオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムブロミドのような4級アンモニウム塩、アニオン性界面活性剤であるカルボン酸塩やスルホン酸塩、ノニオン性界面活性剤であるポリエキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。金属酸化物前駆体分散性の観点からカチオン性界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤は、そのまま添加しても、後述するアルコールのような極性溶媒に溶解させて溶液として添加してもよい。
【0083】
また、コーティング工程を、アルコール存在下において行うことが好ましい。アルコール存在下でコーティングを行えば、金属酸化物前駆体の分散性がより優れる。また、界面活性剤を添加している場合、アルコールのような極性溶媒に溶解させることでより分散性を向上させることができる。
【0084】
また、コーティング工程前に、半導体ナノ粒子の表面を表面改質剤で修飾する工程を含むことが好ましい。この修飾工程により、表面改質剤を介して金属酸化物前駆体が半導体ナノ粒子表面で反応するため、より効率的に半導体ナノ粒子表面に金属酸化物層がコーティングされ、マイクロ波照射処理時に蛍光発光効率の劣化が抑制される。
【0085】
表面改質剤は、分子の片末端が半導体ナノ結晶粒子表面に吸着する置換基である、SH基やNH基等を含み、もう片末端には金属酸化物前駆体と反応する置換基である、-Si(OR)基(R:炭素数が4つ以下のアルキル基)やOH基やCOOH基等を含む化合物が望ましい。表面改質剤としては、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、6-メルカプト-1-ヘキサノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト安息香酸が挙げられ、単独で用いても複数で用いてもよい。表面改質剤による修飾時の雰囲気は特に限定されず、例えば窒素のような不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0086】
このとき、マイクロ波照射処理における反応温度は、溶媒によって異なるが、蛍光発光効率の劣化を防ぐ観点から、40~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。
【0087】
またこのとき、マイクロ波照射処理における処理時間は、蛍光発光効率の低下を防ぐ観点から3~30分が望ましく、5~15分がより好ましい。
【0088】
また、本発明は、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物がコーティングされたコーティング半導体ナノ粒子であって、
前記金属酸化物は前記半導体ナノ粒子の表面にマイクロ波照射処理コーティングされたものであるコーティング半導体ナノ粒子を提供する。
【0089】
本発明のコーティング半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物がマイクロ波処理コーティングされたものである。このような本発明のコーティング半導体ナノ粒子は、蛍光発光効率の劣化が抑制されたものである。半導体ナノ粒子及び金属酸化物は、例えば上述の半導体ナノ粒子、金属酸化物が挙げられる。
【0090】
本発明のマイクロ波照射処理コーティングとは、マイクロ波照射された金属酸化物で半導体ナノ粒子の表面をコーティングすることである。マイクロ波は上述の通りである。
【0091】
また、上記コーティング半導体ナノ粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物として使用することが好ましい。このようにすれば、蛍光発光効率の劣化が抑制された樹脂組成物とすることができる。
【0092】
樹脂材料は特に限定されないが、コーティング半導体ナノ粒子が凝集、蛍光発光効率の劣化が起きないものが好ましく、例えば、シリコーン樹脂やアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの材料は波長変換材料として蛍光発光効率を高めるために、透過率が高いことが好ましく、透過率が80%以上であることが特に好ましい。
【0093】
また、上記樹脂組成物の硬化物を用いた波長変換材料とすることが好ましい。このような波長変換材料であれば、信頼性が向上したものとなる。波長変換材料は、そのまま用いられても、加工されてもよい。例えば、一つの形態としてシート状に加工してから硬化させることで、複合体が樹脂に分散した波長変換フィルムが挙げられる。
【0094】
波長変換材料の作成方法は特に限定されないが、例えば、コーティング半導体ナノ粒子を樹脂に分散させた樹脂組成物をPETやポリイミドなどの透明フィルムに塗布し硬化させ、ラミネート加工することで波長変換材料を得ることができる。
【0095】
透明フィルムへの塗布はスプレーやインクジェットなどの噴霧法、スピンコートやバーコーター、ドクターブレード法を用いることができ、塗布により樹脂層を形成する。また、樹脂層及透明フィルムの厚みは特に限定されず用途に応じ適宜選択できる。
【0096】
樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を塗布したフィルムを60℃で2時間加熱、その後150℃で4時間加熱することで行うことができる。
【0097】
さらに、上記波長変換材料を用いたものである発光素子として用いることが好ましい。発光素子としては特に限定されないが、発光ダイオード等が挙げられる。このような波長変換材料を用いる発光素子であれば、信頼性の特に優れたものとなる。
【実施例0098】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
(発光特性評価)
製造例及び実施例において、半導体ナノ粒子の蛍光発光特性評価としては、大塚電子株式会社製:量子効率測定システム(QE-2100)用いて、励起波長450nmにおける蛍光発光効率(内部量子効率)を測定した。
【0100】
(半導体ナノ粒子の製造)
(製造例1)
フラスコ内に酢酸インジウム0.070g(0.24mmol)、パルミチン酸を0.256g(0.72mmol)、1-オクタデセン4.0mLを加え、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコを室温まで冷却した後に窒素をパージし、10vol%(トリス)トリメチルシリルホスフィン/オクタデセン溶液0.50mL(0.17mmol)をフラスコへ添加した。フラスコを300℃まで加熱し、撹拌を20分間行うことで、InP半導体コア粒子を合成した。
【0101】
次いで、フラスコを200℃まで冷却した後に、0.30Mステアリン酸亜鉛/オクタデセン溶液を4.0mL(1.2mmol)添加し30分間撹拌した。さらに、セレン/トリオクチルホスフィン溶液1.5Mを0.60mL(0.90mmol)をフラスコに添加し、30分間撹拌した。次にフラスコを室温まで冷却した後に、酢酸亜鉛を0.22g(1.1mmol)添加し、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコに窒素をパージした後に230℃まで加熱し、1-DDT(ドデカンチオール)を0.48mL(2.0mmol)添加し、30分間撹拌した。
【0102】
得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、半導体ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらに沈殿物にトルエンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離を行い、上澄み液を除去してトルエンに再分散させることで、InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液を調製した。溶液の蛍光発光効率は76%であった。
【0103】
(製造例2)
フラスコ内に酢酸インジウム0.070g(0.24mmol)、パルミチン酸を0.256g(0.72mmol)、1-オクタデセン4.0mLを加え、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコを室温まで冷却した後に窒素をパージし、10vol%(トリス)トリメチルシリルホスフィン/オクタデセン溶液0.50mL(0.17mmol)をフラスコへ添加した。フラスコを300℃まで加熱し、撹拌を20分間行うことで、InP半導体コア粒子を合成した。
【0104】
次いで、フラスコを200℃まで冷却した後に、0.30Mステアリン酸亜鉛/オクタデセン溶液を4.0mL(1.2mmol)添加し30分間撹拌した。さらに、セレン/トリオクチルホスフィン溶液1.5Mを0.60mL(0.90mmol)をフラスコに添加し、30分間撹拌した。次にフラスコを室温まで冷却した後に、酢酸亜鉛を0.22g(1.1mmol)添加し、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコに窒素をパージした後に230℃まで加熱し、1-DDTを0.48mL(2.0mmol)添加し、30分間撹拌した。さらに、フラスコに(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン0.70mL(3.0mmol)を添加して30分間撹拌した。
【0105】
得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、半導体ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらに沈殿物にトルエンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離を行い、上澄み液を除去してトルエンに再分散させることで、InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液を調製した。溶液の蛍光発光効率は75%であった。
【0106】
(製造例3)
フラスコ内に酢酸インジウム0.070g(0.24mmol)、パルミチン酸を0.256g(0.72mmol)、1-オクタデセン4.0mLを加え、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコを室温まで冷却した後に窒素をパージし、10vol%(トリス)トリメチルシリルホスフィン/オクタデセン溶液0.50mL(0.17mmol)をフラスコへ添加した。フラスコを300℃まで加熱し、撹拌を20分間行うことで、InP半導体コア粒子を合成した。
【0107】
次いで、フラスコを200℃まで冷却した後に、0.30Mステアリン酸亜鉛/オクタデセン溶液を4.0mL(1.2mmol)添加し30分間撹拌した。さらに、セレン/トリオクチルホスフィン溶液1.5Mを0.60mL(0.90mmol)をフラスコに添加し、30分間撹拌した。次にフラスコを室温まで冷却した後に、酢酸亜鉛を0.22g(1.1mmol)添加し、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコに窒素をパージした後に230℃まで加熱し、1-DDTを0.48mL(2.0mmol)添加し、30分間撹拌した。さらに、フラスコに(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン0.72mL(3.0mmol)を添加して30分間撹拌した。
【0108】
得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、半導体ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらに沈殿物にトルエンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離を行い、上澄み液を除去してトルエンに再分散させることで、InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液を調製した。溶液の蛍光発光効率は74%であった。
【0109】
(製造例4)
フラスコ内に酢酸インジウム0.070g(0.24mmol)、パルミチン酸を0.256g(0.72mmol)、1-オクタデセン4.0mLを加え、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコを室温まで冷却した後に窒素をパージし、10vol%(トリス)トリメチルシリルホスフィン/オクタデセン溶液0.50mL(0.17mmol)をフラスコへ添加した。フラスコを300℃まで加熱し、撹拌を20分間行うことで、InP半導体コア粒子を合成した。
【0110】
次いで、フラスコを200℃まで冷却した後に、0.30Mステアリン酸亜鉛/オクタデセン溶液を4.0mL(1.2mmol)添加し30分間撹拌した。さらに、セレン/トリオクチルホスフィン溶液1.5Mを0.60mL(0.90mmol)をフラスコに添加し、30分間撹拌した。次にフラスコを室温まで冷却した後に、酢酸亜鉛を0.22g(1.1mmol)添加し、減圧下、100℃で加熱撹拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行った。フラスコに窒素をパージした後に230℃まで加熱し、1-DDTを0.48mL(2.0mmol)添加し、30分間撹拌した。さらに、フラスコに(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン0.35mL(1.5mmol)及び(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン0.36mL(1.5mmol)を添加して30分間撹拌した。
【0111】
得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、半導体ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらに沈殿物にトルエンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離を行い、上澄み液を除去してトルエンに再分散させることで、InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液を調製した。溶液の蛍光発光効率は74%であった。
【0112】
以上の製造例1~4を、表1にまとめて示す。
【0113】
【表1】
【0114】
(コーティング半導体ナノ粒子の製造)
以下、製造例1~4で製造した半導体ナノ粒子を用いて、本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法を実施した。また、マイクロ波照射は、マイクロ波合成反応装置(マイルストーンゼネラル社製、flexi WAVE)を用いて行った。
【0115】
(実施例1)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア(NH)水溶液50μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は72%であった。コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は5.3%であった。
【0116】
(実施例2)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド0.010gを混合して、高圧反応容器に添加した。混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は70%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は7.9%であった。
【0117】
(実施例3)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は70%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は7.9%であった。
【0118】
(実施例4)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、アルミニウムイソプロポキシド0.092g、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:アルミニウムイソプロポキシド(重量比)=1:0.92、NH:アルミニウムイソプロポキシド(モル比)=1:0.89、アルミニウムイソプロポキシド(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は68%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は10.5%であった。
【0119】
(実施例5)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、チタンテトラブトキシド0.153g、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:チタンテトラブトキシド(重量比)=1:1.5、NH:チタンテトラブトキシド(モル比)=1:0.89、チタンテトラブトキシド(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は65%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は14.5%であった。
【0120】
(実施例6)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、ジルコニウムプロポキシド0.147g、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:ジルコニウムプロポキシド(重量比)=1:1.5、NH:ジルコニウムプロポキシド(モル比)=1:0.89、ジルコニウムプロポキシド(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は67%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は11.8%であった。
【0121】
(実施例7)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート50μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。この時、混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.47、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は3.9%であった。
【0122】
(実施例8)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート200μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。この時、それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:1.9、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は70%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は7.9%であった。
【0123】
(実施例9)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート300μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。この時、それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:2.8、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は68%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は10.5%であった。
【0124】
(実施例10)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液25μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。この時、それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.45、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:2.3であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は3.9%であった。
【0125】
(実施例11)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液100μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。この時、それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:1.8、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:9.2であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は68%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は10.5%であった。
【0126】
(実施例12)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH3:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて40℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は3.9%であった。
【0127】
(実施例13)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて50℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は72%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は5.3%であった。
【0128】
(実施例14)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて80℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は67%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は11.8%であった。
【0129】
(実施例15)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて100℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は62%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は18.4%であった。
【0130】
(実施例16)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、3分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は3.9%であった。
【0131】
(実施例17)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、5分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は3.9%であった。
【0132】
(実施例18)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、15分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は70%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は7.9%であった。
【0133】
(実施例19)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、20分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は69%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は9.2%であった。
【0134】
(実施例20)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、30分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は67%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は11.8%であった。
【0135】
(実施例21)
製造例2で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は74%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は1.3%であった。
【0136】
(実施例22)
製造例3で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は73%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は1.4%であった。
【0137】
(実施例23)
製造例4で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、高圧反応容器に添加した。それぞれの混合比は、半導体ナノ粒子:テトラエチルオルトシリケート(重量比)=1:0.94、NH:テトラエチルオルトシリケート(モル比)=1:0.89、テトラエチルオルトシリケート(モル比):HO=1:4.6であった。その後、上記マイクロ波合成反応装置を用いて、2450MHzにおいて60℃、10分間加熱を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は74%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は1.3%であった。
【0138】
以上、実施例1~23の製造方法を表2にまとめて示す。
【0139】
【表2】
【0140】
(比較例1)
製造例1で得られた、1.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液10g、テトラエチルオルトシリケート100μL、25%アンモニア水溶液50μL、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/エタノール溶液0.010g/100μLを混合して、フラスコ容器に添加した。その後、マントルヒーターで60℃、6時間加熱撹拌を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は56%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は35.7%と、マイクロ波照射処理を用いた製造法と比較して、蛍光発光効率の大幅な低下が確認された。
【0141】
(比較例2)
シクロヘキサン50mL、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル(ローディア社製IGEPAL-CO520)1.2g、テトラエチルオルトシリケート100μLを加えて後に、製造例1で得られた2.0wt%InP/ZnSe/ZnS半導体ナノ粒子トルエン溶液5gを添加し、室温25℃で撹拌を行った。撹拌したまま、10%アンモニア水溶液1mLを少量ずつ添加して、48時間撹拌を行い、金属酸化物コーティングを行った。得られたコーティング半導体ナノ粒子を遠心分離により沈降させて上澄み液を除去し、トルエンを加えて超音波照射処理を行うことで再分散させた。得られたコーティング半導体ナノ粒子の蛍光発光効率は26%であり、コーティング工程前に対する蛍光発光効率の減少率は65.8%と、マイクロ波照射処理を用いた製造法と比較して、蛍光発光効率の大幅な低下が確認された。
【0142】
以上のように、比較例1はマイクロ波照射処理の代わりにマントルヒーターで加熱を行ったところ、長時間を要した上、蛍光発光効率が大幅に低下した。また、比較例2では、室温で48時間と比較例1より長時間を要した上、比較例1より蛍光発光効率が大幅に低下した。
【0143】
一方、本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法の実施例である実施例1~23は、マイクロ波照射処理を用いて半導体ナノ粒子の表面に金属酸化物を短時間でコーティングすることで、コーティング工程における蛍光発光効率の劣化が抑制され、高い蛍光発光効率を示すコーティング半導体ナノ粒子が効率的に製造されることを確認した。
【0144】
(波長変換材料の製造方法)
実施例1~23、比較例1、2で得られたコーティング半導体ナノ粒子及び製造例1で得られた半導体ナノ粒子をコーティングせずにそのまま用いたものを比較例3として用いて波長変換材料を作製した。上記半導体ナノ粒子またはコーティング半導体ナノ粒子の1.0wt%トルエン溶液1.0gをシリコーン樹脂(信越化学工業(株)社製 LPS-5547)10.0gと混合し撹拌したまま60℃で加熱しながら減圧下で溶媒除去を行った。その後、真空脱気を行い厚み50μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上に塗布し、バーコーターにより厚さ100μmの半導体ナノ粒子樹脂層を形成した。さらにこの樹脂層上にPETフィルムを貼り合わせラミネート加工した。このフィルムを60℃で2時間加熱、150℃で4時加熱し、半導体ナノ粒子樹脂層を硬化させ、波長変換材料を作製した。
【0145】
得られた波長変換材料を85℃、85%RH(相対湿度)条件で100時間処理を行い、処理後の波長変換材料の蛍光発光効率を測定することで、その信頼性を評価した。表3に波長変換材料作製後の蛍光発光効率及び信頼性評価後の蛍光発光効率の値を示す。
【0146】
【表3】
【0147】
表3の結果より、信頼性評価後の波長変換材料の蛍光発光効率について、比較例1は17%、比較例2は9%、比較例3は17%と信頼性評価後の蛍光発光効率が全ての比較例で20%を下回る結果となった。
【0148】
一方、本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法により製造したコーティング半導体ナノ粒子(実施例1~23)は、信頼性評価後の蛍光発光効率が20%以上であった。以上のように、本発明コーティング半導体ナノ粒子の製造方法により製造したコーティング半導体ナノ粒子は、高い安定性を示し、これを用いた波長変換材料は、高温高湿条件において蛍光発光効率の劣化が抑制され、信頼性が高いものであることが確認された。このように、本発明のコーティング半導体ナノ粒子の製造方法により製造されたコーティング半導体ナノ粒子は、物として物性が従来より良く、明らかに従来の物と異なるものである。
【0149】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。