(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017484
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】表面処理剤、表面処理方法及び基板表面の領域選択的製膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20230131BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20230131BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/02
C23C16/455
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121790
(22)【出願日】2021-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】関 健司
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA38
4K030BA43
4K030BB14
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030EA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030LA02
4K030LA15
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BE10
5F058BF04
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
(57)【要約】
【課題】近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、絶縁体領域の撥水化を抑制でき、金属領域をより選択的に撥水化できる表面処理剤、表面処理方法及び基板表面の領域選択的製膜方法を提供する。
【解決手段】基板の表面を処理するために用いられる表面処理剤であって、前記表面が、2以上の領域を含み、2以上の前記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、2以上の前記領域のうちの、少なくとも1つの前記金属領域と、少なくとも1つの前記絶縁体領域とが近接し、
下記一般式(P-1):
HO-P(=O)R1R2 ・・・(P-1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、リン原子に結合し、且つ水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、但し、R1及びR2は、同時に、水素原子ではない。]
で表される化合物(P)及び、
有機溶剤(S)と、
を含有する、表面処理剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を処理するために用いられる表面処理剤であって、
前記表面が、2以上の領域を含み、
2以上の前記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、
2以上の前記領域のうちの、少なくとも1つの前記金属領域と、少なくとも1つの前記絶縁体領域とが近接し、
下記一般式(P-1):
HO-P(=O)R1R2 ・・・(P-1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、リン原子に結合し、且つ水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、但し、R1及びR2は、同時に、水素原子ではない。]
で表される化合物(P)及び、
有機溶剤(S)と、
を含有する、表面処理剤。
【請求項2】
前記有機溶剤(S)の比誘電率が35以下である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
前記有機溶剤(S)の比誘電率が20以下である、請求項2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
前記金属が、銅、コバルト、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、金、クロム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、窒化チタン、及び窒化タンタルからなる群より選ばれる1種以上であり、前記絶縁体が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、炭素含有酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び酸炭窒化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項5】
基板の表面に対する表面処理方法であって、
前記表面が、2以上の領域を含み、
2以上の前記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、
2以上の前記領域のうちの、少なくとも1つの前記金属領域と、少なくとも1つの前記絶縁体領域とが近接し、
前記表面を、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理剤に曝露することを含み、
前記化合物(P)と、前記領域との反応によって、前記金属領域の水の接触角を、前記金属領域に近接する前記絶縁体領域の水の接触角よりも10°以上高くする、表面処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の表面処理方法により前記基板の前記表面を処理することと、
表面処理された前記基板の表面に、原子層成長法により膜を形成することとを含み、
前記絶縁体領域上に、前記金属領域上よりも前記膜の材料を多く堆積させる、前記基板表面の領域選択的製膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、表面処理方法及び基板表面の領域選択的製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の傾向が高まっている。これにともない、マスクとなるパターニングされた有機膜やエッチング処理により作製されたパターニングされた無機膜の微細化が進んでいる。このため、半導体基板上に形成する有機膜や無機膜については、原子層レベルの膜厚制御が求められている。
基板上に原子層レベルで薄膜を形成する方法として原子層成長法(ALD(Atomic Layer Deposition)法;以下、単に「ALD法」ともいう。)が知られている。ALD法は、一般的なCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比較して高い段差被覆性(ステップカバレッジ)と膜厚制御性とを併せ持つことが知られている。
【0003】
ALD法は、形成しようとする膜を構成する元素を主成分とする2種類のガスを基板上に交互に供給し、基板上に原子層単位で薄膜を形成することを複数回繰り返して所望の厚さの膜を形成する薄膜形成技術である。
ALD法では、原料ガスを供給している間に1層又は数層の原子層が形成される程度の原料ガスの成分だけが基板表面に吸着される一方で、余分な原料ガスは成長に寄与しないという、成長の自己制御機能(セルフリミット機能)を利用する。
例えば、基板上にAl2O3膜を形成する場合、TMA(TriMethyl Aluminum)からなる原料ガスとOを含む酸化ガスが用いられる。また、基板上に窒化膜を形成する場合、酸化ガスの代わりに窒化ガスが用いられる。
【0004】
近年、ALD法を利用して基板表面での領域選択的な製膜が試みられてきている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
これにともない、ALD法による基板上での領域選択的な製膜に好適に適用し得るように領域選択的に改質された表面を有する基板が求められてきている。
このような領域選択的に改質された表面を有する基板を得る方法としては、例えば、ドデシルホスホン酸又はオクタデシルホスホン酸を用いて、金属基板と絶縁体基板のうち、前者を選択的に撥水化する方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、絶縁体基板に対して金属基板をより選択的に撥水化することについては、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-508897号公報
【特許文献2】特開2021-014631号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Phys.Chem.C 2014,118,10957-10962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、絶縁体領域の撥水化を抑制でき、金属領域をより選択的に撥水化できる表面処理剤、表面処理方法及び基板表面の領域選択的製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、基板の表面を処理するために用いられる表面処理剤であって、前記表面が、2以上の領域を含み、2以上の前記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、2以上の前記領域のうちの、少なくとも1つの前記金属領域と、少なくとも1つの前記絶縁体領域とが近接し、特定の構造のリン化合物である化合物(P)及び有機溶剤(S)とを含有する表面処理剤を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の第1の態様は、基板の表面を処理するために用いられる表面処理剤であって、
上記表面が、2以上の領域を含み、
2以上の上記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、
2以上の上記領域のうちの、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが近接し、
下記一般式(P-1):
HO-P(=O)R1R2 ・・・(P-1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、リン原子に結合し、且つ水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、但し、R1及びR2は、同時に、水素原子ではない。]
で表される化合物(P)及び、
有機溶剤(S)と、
を含有する、表面処理剤である。
【0010】
本発明の第2の態様は、基板の表面に対する表面処理方法であって、
上記表面が、2以上の領域を含み、
2以上の上記領域が、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含み、
2以上の上記領域のうちの、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが近接し、
上記表面を、第1の態様に係る表面処理剤に曝露することを含み、
上記化合物(P)と、上記領域との反応によって、上記金属領域の水の接触角を、上記金属領域に近接する上記絶縁体領域の水の接触角よりも10°以上高くする、表面処理方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に係る表面処理方法により上記基板の上記表面を処理することと、
表面処理された上記基板の表面に、原子層成長法により膜を形成することとを含み、
上記絶縁体領域上に、上記金属領域上よりも上記膜の材料を多く堆積させる、上記基板表面の領域選択的製膜方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、絶縁体領域の撥水化を抑制でき、金属領域をより選択的に撥水化できる表面処理剤、当該表面処理剤を用いる表面処理方法、及び当該表面処理方法を用いる基板表面の領域選択的製膜方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<表面処理剤>
表面処理剤は、基板の表面を処理するために用いられる。
基板の表面は、2以上の領域を含む。2以上の上記領域は、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含む。2以上の上記領域のうちの、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが近接している。ここで、近接とは、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが境界線を共有して隣接する場合、又は、境界線を共有せず隣や離間した位置に構成される場合を含む。
表面処理剤は、下記一般式(P-1):
HO-P(=O)R1R2 ・・・(P-1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、リン原子に結合し、且つ水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、但し、R1及びR2は、同時に、水素原子ではない。]
で表される化合物(P)及び、有機溶剤(S)と、を含有する。
上記の表面処理剤を用いて基板の表面を表面処理することにより、近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、絶縁体領域の撥水化を抑制でき、金属領域をより選択的に撥水化することができる。
【0014】
(基板及び基板表面)
表面処理の対象となる「基板」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示される。かかる基板としては、例えば、ケイ素(Si)基板、窒化ケイ素(SiN)基板、シリコン酸化膜(Ox)基板、タングステン(W)基板、コバルト(Co)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、アルミニウム(Al)基板、ニッケル(Ni)基板、ルテニウム(Ru)基板、銅(Cu)基板、窒化チタン(TiN)基板、窒化タンタル(TaN)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板等が挙げられる。
「基板の表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられたパターン化された無機層及びパターン化されていない無機層の表面が挙げられ、パターン化された無機層の表面として、実質、パターンの側面も表面に含まれるものとする。
【0015】
基板上に設けられたパターン化された無機層としては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成されたパターン化された無機層、原子層成長法(ALD法)により基板の表面に形成されたパターン化された無機層が例示される。なお、当該ALD法により基板の表面に形成されたパターン化された無機層を得る場合においても、本実施形態の表面処理剤を用いることができる。本実施形態の表面処理剤を用いることで、無機層として金属領域に相当する領域と絶縁体領域に相当する領域との選択性を確保できる。無機層としては、基板自体の他、基板を構成する元素の酸化膜、基板の表面に形成した窒化ケイ素(SiN)、シリコン酸化膜(SiOx)、タングステン(W)、コバルト(Co)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、金(Au)、クロム(Cr)モリブデン(Mo)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、酸化ケイ素(SiO2)等の無機物の膜ないし層等が例示される。
このような膜や層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において形成される無機物の膜や層等が例示される。
基板上に設けられたパターン化されていない無機層としては、基板上に設けられたパターン化された上記無機層と同じ材質からなる無機物の膜ないし層等が例示される。
【0016】
(基板表面の前処理)
基板表面は、前処理されていることが好ましい。
基板表面を前処理する処理剤(以下、「前処理剤」という場合がある。)としては、基板表面に存在する自然酸化膜を除去し、基板表面に水酸基を付与しうるものであれば特に限定されない。あらかじめ水酸基を付与することにより、本発明に係る表面処理剤で処理した後の基板表面の撥水性が向上する。前処理剤としては、具体的には、過酸化水素等の過酸化物、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸、硝酸や次亜塩素酸等のオキソ酸、リン酸、クエン酸、酢酸又はフッ化水素酸(HF)等が挙げられる。前処理剤は、用いる基板の種類により適宜選択すればよく、例えば、WやRuを含む基板の場合、過酸化水素及び過ハロゲン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、過酸化水素及び過ハロゲン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種は、SiO2、Al2O3等の無機物が基板表面に併存している場合、該無機物へダメージを与えずに金属表面を処理する観点からも好ましい。一方、Cuを含む基板の場合、自然酸化膜除去性と基板表面の親水性向上の点から、前処理剤としてはHF水溶液、酢酸、クエン酸、リン酸又は硝酸等を用いることが好ましい。
前処理剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0017】
(金属領域及び絶縁体領域)
金属領域は金属又は導電性の含金属化合物からなる。金属領域は後述の絶縁体領域に対し導電体領域と定義してもよい。金属としては、上記無機物のうち、銅(Cu)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、クロム(Cr)モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)等が好ましい。
絶縁体領域は、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物、及び絶縁性樹脂からなる群より選択される1種以上の絶縁性の化合物からなり、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物又は酸炭窒化物が好ましい。酸化物としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiOx(1≦X≦2))、フッ素含有酸化ケイ素(SiOF)、炭素含有酸化ケイ素(SiOC)が好ましい。窒化物としては、例えば、窒化ケイ素(SiN)、窒化ホウ素(BN)が好ましい。炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)が好ましい。炭窒化物としては、炭窒化ケイ素(SICN)が好ましい。酸窒化物としては、酸窒化ケイ素(SiON)、が好ましい。酸炭窒化物としては、酸炭窒化ケイ素(SiOCN)が好ましい。絶縁性樹脂としては、ポリイミド、ポリエステル、プラスチック樹脂等が挙げられる。
【0018】
(基板表面が2つの領域からなる態様)
2つの領域からなる基板表面の態様としては、例えば、上記2つの領域のうちの1つの領域を第1の領域である金属領域とし、それに近接する領域を第2の領域である絶縁体領域とする態様が挙げられる。ここで、第1の領域及び第2の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
第1の領域及び第2の領域の例としては、例えば、基板自体の表面を第1の領域である金属領域とし、基板の表面に形成した絶縁体からなる層を第2の領域である絶縁体領域とする態様、基板自体の表面を第1の領域である絶縁体領域とし、基板の表面に形成した金属からなる層を第2の領域である金属領域とする態様、基板の表面に形成した金属からなる層を第1の領域である金属領域とし、基板の表面に形成した絶縁体からなる層を第2の領域である絶縁体領域とする態様、絶縁体である基板の表面の一部を第1の領域である金属領域とし、当該金属領域でない基板の表面の少なくとも一部に形成した絶縁体からなる層及び/又は当該金属領域でない基板表面の少なくとも一部(又は金属領域でない基板表面全部)を第2の領域である絶縁体領域とする態様等が挙げられる。
【0019】
(基板表面が3つ以上の領域からなる態様)
3つ以上の領域からなる基板表面の態様としては、例えば、上記2以上の領域のうちの1つの領域を第1の領域である金属領域とし、それに近接する領域を第2の領域である絶縁体領域とし、更に第2の絶縁体領域に近接する領域を第3の領域である金属領域とする態様、上記2以上の領域のうちの1つの領域を第1の領域である絶縁体領域とし、それに近接する領域を第2の領域である金属領域とし、更に第2の金属領域に近接する領域を第3の領域である絶縁体領域とする態様、上記2以上の領域のうちの1つの領域を第1の領域である金属領域とし、それに近接する領域を第2の領域である金属領域とし、更に第2の金属領域に近接する領域を第3の領域である絶縁体領域とする態様が挙げられる。
ここで、第1の領域と第3の領域とでは材質が相違する。
また、第1の領域、第2の領域及び第3の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
第1の領域、第2の領域及び第3の領域の例としては、例えば、基板自体の表面を第1の領域である金属領域とし、該基板に近接し、該基板の表面に形成した絶縁体領域の表面を第2の領域とし、第2の領域に近接し、該基板の表面に形成した金属領域の表面を第3の領域とする態様、基板自体の表面を第1の領域である絶縁体領域とし、該基板に近接し、該基板の表面に形成した金属領域の表面を第2の領域とし、第2の領域に近接し、該基板の表面に形成した絶縁体領域の表面を第3の領域とする態様等が挙げられる。
第4以上の領域が存在する場合についても同様の考え方が適用し得る。
材質が相違する領域数の上限値としては本発明の効果が損なわれない限り特に限定されないが、例えば、7以下又は6以下であり、典型的には5以下である。
【0020】
(化合物(P))
化合物(P)は、ホスフィン酸誘導体である。化合物(P)は、部位[HO-P(=O)-]が親水性であり、部位[-R1]、及び部位[-R2]がそれぞれ疎水性である。そのため、近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、部位[HO-P(=O)-]が金属領域への吸着基として機能する一方、部位[-R1]、及び部位[-R2]は撥水基として機能すると推測される。そのため、化合物(P)は、自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)を形成する材料(SAM剤)として機能する。
【0021】
式(P-1)で表される化合物(P)において、R1及びR2としてのアルキル基の少なくとも一方が、炭素原子数8以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であるのが好ましい。R1及びR2としてのアルキル基の炭素原子数の上限は特に限定されないが、典型的には、50以下であってよく、30以下であってもよい。
【0022】
R1及びR2としてのアルキル基の好適な具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ヘンイコシル基、及びn-ドコシル基、並びにこれらのアルキル基と構造異性の関係にあるアルキル基が挙げられる。
R1及びR2としてのアルキル基の少なくとも一方が、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ヘンイコシル基、及びn-ドコシル基、並びにこれらのアルキル基と構造異性の関係にあるアルキル基から選択される基であるのが好ましい。
【0023】
式(P-1)表される化合物(P)において、R1及びR2のフッ素化アルキル基としては、炭素原子数8以上の直鎖又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0024】
R1及びR2としてのフッ素化アルキル基の好適な具体例としては、上記で例示されたR1及びR2のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0025】
式(P-1)で表される化合物(P)において、R1及びR2の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p-メチルフェニル基、p-tert-ブチルフェニル基、p-アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6-ジエチルフェニル基、2-メチル-6-エチルフェニル基が挙げられる。
【0026】
なかでも、R1及びR2のうち、一方が水素原子であり、他方が炭素原子数8以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。炭素原子数8以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコンチル基がより好ましい。
【0027】
化合物(P)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
化合物(P)の含有量は、絶縁体領域の撥水化を抑制し、金属領域をより選択的に撥水化する観点から、表面処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.005質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上3質量%以下が更に好ましく、0.03質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
【0029】
(有機溶剤(S))
有機溶剤(S)は、化合物(P)による金属領域への撥水化を向上させる機能を有する。
有機溶剤(S)としては、例えば、スルホキシド類、スルホン類、アミド類、ラクタム類、イミダゾリジノン類、ジアルキルグリコールエーテル類、モノアルコール系溶媒、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、他のエーテル類、ケトン類、他のエステル類、ラクトン類、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類等が挙げられる。
【0030】
スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0031】
スルホン類としては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホンが挙げられる。
【0032】
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミドが挙げられる。
【0033】
ラクタム類としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0034】
イミダゾリジノン類としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
【0035】
ジアルキルグリコールエーテル類としては、例えば、ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテルが挙げられる。
【0036】
モノアルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ぺンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ぺンタノール、tert-ぺンタノール、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチル-1-ブタノール、sec-へプタノール、3-へプタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-へプタノール、n-デカノール、sec-ヴンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-へプタデシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールが挙げられる。
【0037】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0038】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0039】
他のエーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0040】
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-へプタノン、3-へプタノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンが挙げられる。
【0041】
他のエステル類としては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-へプチル、酢酸n-オクチル、ギ酸n-ぺンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテートが挙げられる。
【0042】
ラクトン類としては、例えば、プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、6-ペンチロラクトンが挙げられる。
【0043】
直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、メチルオクタン、n-デカン、n-ヴンデカン、n-ドデカン、2,2,4,6,6-ぺンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0044】
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ベンゾトリフルオリド、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン、デカヒドロナフタレンが挙げられる。
【0045】
テルペン類としては、例えば、p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナンが挙げられる。
【0046】
有機溶剤(S)の比誘電率は、金属領域をより選択的に撥水化する観点から、35以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
このような低比誘電率を有する有機溶剤(S)としては、例えば、メタノール(比誘電率:33)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)(比誘電率:13.70)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PE)(比誘電率:12.71)、ベンジルアルコール(比誘電率:13.70)、2-ヘプタノン(比誘電率:11.74)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(比誘電率:8.66)、tert-ブタノール(比誘電率:12.5)、1-オクタノール(比誘電率:10.21)、イソブタノール(比誘電率:18.22)、ベンゾトリフルオリド(比誘電率:9.18)、デカヒドロナフタレン(比誘電率:2.16)、シクロヘキサン(比誘電率:1.99)、デカン(比誘電率:1未満)、乳酸エチル(EL)(比誘電率:13.22)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(比誘電率:15.76)、1-ノナノール(比誘電率:9.13)、トルエン(比誘電率:2.37)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PM)(比誘電率:9.4)、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)(比誘電率:10.47)、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール(比誘電率:2.98)、2-エチル-1-ブタノール(比誘電率:12.6)、2-ブタノンオキシム(比誘電率:2.9)、n-ジブチルエーテル(比誘電率:3.33)、酪酸ブチル(比誘電率:4.55)、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(比誘電率:9.82)等が挙げられる。
【0047】
有機溶剤(S)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0048】
(他の成分)
表面処理剤に配合し得る他の成分としては、近接する金属領域と絶縁体領域とを含む基板表面に対して、絶縁体領域の撥水化を抑制でき、金属領域をより選択的に撥水化する効果を向上させ、又は妨げない範囲で用いることができ、例えば、化合物(P)以外の酸、塩基性含窒素化合物、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調製剤、消泡剤等が挙げられる。
【0049】
(化合物(P)以外の酸)
酸としては、上記化合物(P)以外であれば、有機酸及び無機酸のいずれであってもよい。
【0050】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸などのカルボン酸;アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸等の糖酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。
無機酸としては、フッ酸(HF)、ホスホン酸(HP(=O)(OH)2)、リン酸(H3PO4)、塩酸、硝酸、ホウ酸等が挙げられる。
なかでも、酸としては、カルボン酸又は無機酸が好ましく、酢酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、ホスホン酸(HP(=O)(OH)2)又はフッ酸(HF)がより好ましく、ホスホン酸(HP(=O)(OH)2)又はフッ酸(HF)が更に好ましく、フッ酸が特に好ましい。
【0051】
(塩基性含窒素化合物)
塩基性含窒素化合物とは、化合物(P)による絶縁体領域の撥水化を抑制する化合物を意味する。塩基性含窒素化合物のこのような性質は、定かではないものの、塩基性含窒素化合物のカチオン種が絶縁体領域に吸着し、化合物(P)の絶縁体領域への吸着を阻害することに起因するものと推測される。塩基性含窒素化合物としてはこのような性質を有する限り特に限定されないが、例えば、第四級アンモニウム化合物、ピリジニウムハロゲン化物、ピロリジニウムハロゲン化物、ビピリジニウムハロゲン化物、又はpKbが2.5以下のアミン若しくはその塩(以下、「低pKbアミン」とも称する。)が挙げられる。
【0052】
第四級アンモニウム化合物としては、例えば、下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【化1】
【0053】
式(b1)中、Ra1~Ra4は、それぞれ独立に炭素数1~16のアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、又は炭素数1~16のヒドロキシアルキル基を示す。Ra1~Ra4の少なくとも2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよく、特に、Ra1とRa2との組み合わせ及びRa3とRa4との組み合わせの少なくとも一方は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
式(b1)中、X-は、水酸化物イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン、フッ素を有していてもよい有機カルボン酸イオンを示す。フッ素を有していてもよい有機カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等が挙げられる。
【0054】
式(b1)で表される化合物の中でも、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリプロピルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、及びスピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムの、水酸化物、塩化物、又はフッ化物が、入手しやすさの点から好ましく、本発明の効果の点で、水酸化物又はフッ化物がより好ましく、テトラメチルアンモニウム、及びベンジルトリメチルアンモニウムの、水酸化物又はフッ化物がさらに好ましい。
ピリジニウムハロゲン化物としては、ピリジニウムの塩化物又はフッ化物が挙げられ、フッ化物が好ましい。
ピロリジニウムハロゲン化物としては、ピロリジニウムの塩化物又はフッ化物が挙げられ、フッ化物が好ましい。
ビピリジニウムハロゲン化物としては、ビピリジニウムの塩化物又はフッ化物が挙げられ、フッ化物が好ましい。
【0055】
低pKbアミンのpKbとしては、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。低pKbアミンとしては、例えば、グアニジン誘導体が挙げられる。なお、pKbは、25℃において測定される値である。
【0056】
グアニジン誘導体としては、例えば、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン又はそれらの塩化物塩若しくはフッ化物塩が挙げられる。これらの中では、テトラメチルグアニジン又はそのフッ化物塩が好ましい。
【0057】
表面処理剤は、前述した化合物(P)、有機溶剤(S)、必要に応じて他の成分を公知の方法で混合して得られる。
【0058】
<表面処理方法>
次に、前述した表面処理剤を用いた表面処理方法について説明する。
表面処理方法は、基板の表面に対する表面処理方法である。基板の表面は、2以上の領域を含む。2以上の領域は、少なくとも1つの金属領域と、少なくとも1つの絶縁体領域とを含む。2以上の上記領域のうちの、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが近接している。ここで、近接とは、少なくとも1つの上記金属領域と、少なくとも1つの上記絶縁体領域とが境界線を共有して隣接する場合、又は、境界線を共有せず隣や離間した位置に構成される場合を含む。
表面処理方法は、上記表面を、前述した表面処理剤に曝露することを含む。表面処理方法において、前述した化合物(P)と、上記領域との反応によって、上記金属領域の水の接触角を、上記金属領域に近接する上記絶縁体領域の水の接触角よりも10°以上高くする。
【0059】
表面処理方法の対象となる基板及び基板表面、金属領域及び絶縁体領域、及び表面処理方法に用いる表面処理剤は、前述した<表面処理剤>における基板及び基板表面、金属領域及び絶縁体領域、及び表面処理剤と同様である。
【0060】
表面処理方法では、上記金属領域の水の接触角が、上記金属領域に近接する上記絶縁体領域の水の接触角よりも10°以上高められる。このことは、金属領域が撥水化され、絶縁体領域の撥水化が抑制されることを示している。
【0061】
(曝露)
基板の表面を表面処理剤に曝露させる方法としては、表面処理剤を、例えば浸漬法、又はスピンコート法、ロールコート法及びドクターブレード法などの塗布法等の手段によって基板の表面に適用(例えば、塗布)して曝露する方法が挙げられる。
【0062】
曝露温度としては、例えば、10℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上70℃以下、更に好ましくは20℃以上30℃以下である。
上記曝露時間としては、金属領域を撥水化し、絶縁体領域の撥水化を抑制する観点から、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、45秒以上が更に好ましい。
上記曝露時間の上限値としては特に限定されないが、例えば、2時間以下等であり、典型的には1時間以下であり、15分以下が好ましく、5分以下が更に好ましく、2分以下が特に好ましい。
上記曝露後に必要に応じ洗浄、及び/又は乾燥を行ってもよい。洗浄は、例えば、水リンス、活性剤リンス等により行われる。乾燥は窒素ブロー等により行われる。
【0063】
上記曝露により、近接する金属領域及び絶縁体領域のうち、金属領域に対して選択的に化合物(P)を吸着させることができる。その結果、金属領域の水に対する接触角を、上記金属領域に近接する上記絶縁体領域の水に対する接触角よりも10°以上、好ましくは15°以上、より好ましくは20°以上、更に好ましくは25°以上高くすることができる。
表面処理剤に曝露した後の基板表面の水に対する接触角は、例えば、50°以上140°以下とすることができる。
基板表面の材質、表面処理剤の種類及び使用量、並びに曝露条件等を制御することにより、水に対する接触角は50°以上とすることができ、60°以上が好ましく、70°以上がより好ましく、90°以上が更に好ましい。上記接触角の上限値としては特に限定されないが、例えば、140°以下、典型的には130°以下である。
より具体的には、金属領域の水接触角は、70°以上が好ましく、80°以上がより好ましく、90°以上がより好ましく、100°以上が更に好ましい。上記接触角の上限値としては特に限定されないが、例えば、140°以下である。
絶縁体領域の水接触角は、70°以下が好ましく、65°以下がより好ましく、60°以下がより好ましい。上記接触角の下限値としては特に限定されないが、例えば、50°以上である。
【0064】
<基板表面の領域選択的製膜方法>
次に、上記の表面処理方法を用いた基板表面の領域選択的製膜方法について説明する。
基板表面の領域選択的製膜方法は、上記表面処理方法により上記基板の上記表面を処理することと、表面処理された上記基板の表面に、原子層成長法(ALD法)により膜を形成することとを含み、上記絶縁体領域上に、上記金属領域上よりも上記膜の材料を多く堆積させる。
【0065】
上記表面処理の結果、金属領域の水の接触角を、上記金属領域に近接する上記絶縁体領域の水の接触角よりも10°以上高くすることができる。水の接触角が、絶縁体領域よりも大きい金属領域には、ALD法による膜形成材料が、基板表面上の上記領域に吸着し難くなる。その結果、ALDサイクルを繰り返すことにより、上記絶縁体領域上を選択的に厚膜化することができる。
【0066】
(ALD法による膜形成)
ALD法による膜形成方法としては特に限定されないが、少なくとも2つの気相反応物質(以下単に「前駆体ガス」という。)を用いた吸着による薄膜形成方法であることが好ましい。前駆体ガスを用いた吸着は、好ましくは化学吸着である。
具体的には、下記工程(a)及び(b)を含み、所望の膜厚が得られるまで下記工程(a)及び(b)を少なくとも1回(1サイクル)繰り返す方法等が挙げられる。
(a)上記第2の態様に係る方法による表面処理された基板を、第1前駆体ガスのパルスに曝露する工程、及び
(b)上記工程(a)に次いで、基板を第2前駆体ガスのパルスに曝露する工程。
【0067】
上記工程(a)の後上記工程(b)の前に、プラズマ処理工程、第1前駆体ガス及びその反応物をキャリアガス、第2前駆体ガス等により除去ないし排気(パージ)する工程等を含んでいてもいなくてもよい。
上記工程(b)の後、プラズマ処理工程、第2前駆体ガス及びその反応物をキャリアガス等により除去ないしパージする工程等を含んでいてもいなくてもよい。
キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが挙げられる。
【0068】
各サイクル毎の各パルス及び形成される各層は自己制御的であることが好ましく、形成される各層が単原子層であることがより好ましい。
上記単原子層の膜厚としては、例えば、5nm以下とすることができ、好ましくは3nm以下とすることができ、より好ましくは1nm以下とすることができ、更に好ましくは0.5nm以下とすることができる。
【0069】
第1前駆体ガスとしては、有機金属、金属ハロゲン化物、金属酸化ハロゲン化物等が挙げられ、具体的には、タンタルペンタエトキシド、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、コッパーヘキサフルオロアセチルアセトネートビニルトリメチルシラン、Zn(C2H5)2、Zn(CH3)2、TMA(トリメチルアルミニウム)、TaCl5、WF6、WOCl4、CuCl、ZrCl4、AlCl3、TiCl4、SiCl4、HfCl4等が挙げられる。
【0070】
第2前駆体ガスとしては、第1前駆体を分解させることができる前駆体ガス又は第1前駆体の配位子を除去できる前駆体ガスが挙げられ、具体的には、H2O、H2O2、O2、O3、NH3、H2S、H2Se、PH3、AsH3、C2H4、又はSi2H6等が挙げられる。
【0071】
工程(a)における曝露温度としては特に限定されないが、例えば、25℃以上800℃以下であり、好ましくは50℃以上650℃以下であり、より好ましくは100℃以上500℃以下であり、更に好ましくは150℃以上375℃以下である。
【0072】
工程(b)における曝露温度としては特に限定されないが、工程(a)における曝露温度と実質的に等しいか又はそれ以上の温度が挙げられる。
ALD法により形成される膜としては特に限定されないが、純元素を含む膜(例えば、Si、Cu、Ta、W)、酸化物を含む膜(例えば、SiO2、GeO2、HfO2、ZrO2、Ta2O5、TiO2、Al2O3、ZnO、SnO2、Sb2O5、B2O3、In2O3、WO3)、窒化物を含む膜(例えば、Si3N4、TiN、AlN、BN、GaN、NbN)、炭化物を含む膜(例えば、SiC)、硫化物を含む膜(例えば、CdS、ZnS、MnS、WS2、PbS)、セレン化物を含む膜(例えば、CdSe、ZnSe)、リン化物を含む膜(GaP、InP)、砒化物を含む膜(例えば、GaAs、InAs)、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【実施例0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0074】
[実施例1及び比較例1]
(表面処理剤の調製)
下記有機溶剤(S)に、下記化合物(P)を下記表1に記載の含有量で均一に混合して、実施例1及び比較例1の表面処理剤を調製した。
化合物(P)として、下記P1~P2を用いた。
P1:オクタデシルホスフィン酸
P2:オクタデシルホスホン酸
有機溶剤(S)として、下記S1を用いた。
S1:イソブタノール
【0075】
(前処理、表面処理)
得られた実施例1及び比較例1の表面処理剤を用いて、以下の方法にしたがって、Cu基板、W基板、TaN基板、及びSiO2基板の表面処理を行った。
具体的には、各基板を濃度25ppmのHF水溶液に25℃で1分間浸漬させて前処理を行った。上記前処理後、各基板を脱イオン水で1分間洗浄した。水洗後の各基板を窒素気流により乾燥させた。
乾燥後の各基板を上記各表面処理剤に25℃で1分間浸漬させて、各基板の表面処理を行った。表面処理後の各基板を、イソプロパノールで1分間洗浄した後、脱イオン水による洗浄を1分間行った。洗浄された各基板を、窒素気流により乾燥させて、表面処理された各基板を得た。
【0076】
(水の接触角の測定)
上記表面処理後の各基板、及び上記前処理のみを行った各基板について、水の接触角を測定した。
水の接触角の測定は、Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、各基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下2秒後における接触角として測定した。結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
表1中の「参考比較例1」は、上記前処理及び表面処理のうち、前処理のみを行った試験例を示す。表1から、実施例1の表面処理剤で表面処理した場合、比較例1の表面処理剤で表面処理した場合と比較して、金属基板であるCu基板、W基板、TaN基板上の水接触角が増大した。これらの実験結果から、実施例1で使用したオクタデシルホスフィン酸は、比較例1で使用したオクタデシルホスホン酸と比較して、これらの金属基板をより強力に撥水化できることが分かる。
一方、実施例1と比較例1との間で、絶縁体基板であるSiO2基板上の水接触角は同程度であった。また、実施例1の表面処理剤で表面処理した場合と参考比較例1との間でも、SiO2基板上の水接触角は同程度であった。これらの実験結果から、実施例1で使用したオクタデシルホスフィン酸は、上記絶縁体基板を撥水化しないことが分かる。
以上の実験結果をまとめると、オクタデシルホスフィン酸は、オクタデシルホスホン酸よりも、金属基板をより選択的に撥水化できるといえる。
【0079】
(Cu基板上でのAl2O3のALD成膜試験)
実施例1及び比較例1の表面処理剤を用いて、下記手順で、Cu基板に対する表面処理と、Al2O3のALD成膜試験を行った。
(手順)
1.Cu基板を濃度25ppmのHF水溶液に25℃で1分間浸漬させて前処理を行った。
2.前処理後のCu基板を脱イオン水で1分間洗浄した。水洗後のCu基板を窒素気流により乾燥させた
3.乾燥後のCu基板を表面処理剤に1分間浸漬した後、イソプロパノールで1分間攪拌洗浄し、脱イオン水でリンスした後、窒素ブローした。
4.以下の条件で、91回、ALDサイクル処理を行った。
・原子層堆積(ALD)装置:AT-410(Anric Technologies社製)
・チャンバー温度:150℃
・プレカーサー:トリメチルアルミニウム及びH2O
【0080】
0回、45回、91回、ALDサイクル処理を行った後のCu基板について、それぞれ、蛍光X線分析により、Al2O3の膜厚を測定した。
【0081】
上記手順1~4のうち、手順1~3の表面処理剤による処理を行わず、手順4のALD成膜のみを行った試験例を「参考比較例2」とし、上記と同様の方法でAl2O3の膜厚を測定した。そして、実施例1及び比較例1の表面処理剤で表面処理して得られたAl2O3の膜厚と、参考比較例2で得られたAl2O3の膜厚から、下記式に従い、ALD阻害率を算出した。結果を表2に示す。
【0082】
ALD阻害率(%)=[1-(表面処理剤で表面処理した時のAl2O3膜厚)/(参考比較例2のAl2O3膜厚)]×100
【0083】
【0084】
参考比較例2の結果から、表面処理剤でCu基板を表面処理することなくALD成膜を行った場合、91サイクル後にAl2O3の膜厚は約10nmとなった。比較例1の表面処理剤でCu基板を表面処理した場合、91サイクル後では、Al2O3の膜厚が低減したものの、2.6nmにとどまり、ALD阻害率も74.0%にとどまった。一方、実施例1の表面処理剤で表面処理した場合、91サイクル後では、Al2O3の膜厚が0.7nmへ大きく低減し、ALD阻害率も92.7%と、大きく増大した。
【0085】
(SiO2基板上でのAl2O3のALD成膜試験)
Cu基板上でのAl2O3の上記ALD成膜試験において、Cu基板の代わりにSiO2基板を用いたこと以外は、上記と同じ手順により、45回のALDサイクル処理数でALD成膜試験を行った。結果を表3に示す。
【0086】
【0087】
参考比較例2の結果から、表面処理剤でSiO2基板を表面処理することなくALD成膜を行った場合、45サイクル後にAl2O3の膜厚は約5.0nmとなった。実施例1及び比較例1の表面処理剤でSiO2基板を表面処理した場合、45サイクル後では、参考比較例とほぼ同じAl2O3の膜厚となった。これらの実験結果から、オクタデシルホスフィン酸は、オクタデシルホスホン酸と同様に、SiO2基板上のALD成膜を阻害しないことが分かる。
【0088】
[実施例1~10及び比較例2]
(表面処理剤の調製)
下記化合物(P)と、下記溶剤とを混合し、室温における飽和溶液として、実施例1~10及び比較例2の表面処理剤を調製した。
化合物(P)として、下記P1を用いた。
P1:オクタデシルホスフィン酸
溶剤として、有機溶剤(S)に該当する下記S1~S10、及び下記S11を用いた。
S1:イソブタノール(比誘電率:18.22)
S2:トルエン(比誘電率:2.37)
S3:酪酸ブチル(比誘電率:4.55)
S4:ベンゾトリフルオリド(比誘電率:9.18)
S5:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(比誘電率:9.40)
S6:1-オクタノール(比誘電率:10.21)
S7:メチルイソブチルカルビノール(比誘電率:10.47)
S8:プロピレングリコールモノメチルエーテル(比誘電率:12.71)
S9:ベンジルアルコール(比誘電率:13.70)
S10:γ-ブチロラクトン(比誘電率:42.10)
S11:水(比誘電率:78.36)
【0089】
(Cu基板上でのAl2O3のALD成膜試験)
実施例1~10及び比較例2の表面処理剤を用いて、下記手順で、Cu基板に対する表面処理と、Al2O3のALD成膜試験を行った。
(手順)
1.Cu基板を濃度25ppmのHF水溶液に25℃で1分間浸漬させて前処理を行った。
2.前処理後のCu基板を脱イオン水で1分間洗浄した。水洗後のCu基板を窒素気流により乾燥させた
3.乾燥後のCu基板を表面処理剤に1分間浸漬した後、イソプロパノールで1分間攪拌洗浄し、脱イオン水でリンスした後、窒素ブローした。
4.以下の条件で、45回、ALDサイクル処理を行った。
・原子層堆積(ALD)装置:AT-410(Anric Technologies社製)
・チャンバー温度:150℃
・プレカーサー:トリメチルアルミニウム及びH2O
【0090】
45回のALDサイクル処理を行った後のCu基板について、それぞれ、蛍光X線分析により、Al2O3の膜厚を測定した。結果を表4に示す。
【0091】
(水の接触角の測定)
上記ALD成膜試験において、手順3の窒素ブロー終了後のCu基板と、手順4のALDサイクル処理後のCu基板について、水の接触角を測定した。
水の接触角の測定は、Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、各基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下2秒後における接触角として測定した。結果を表4に示す。
【0092】
【0093】
表4中の「参考比較例3」は、上記ALD成膜試験の手順1~4のうち、手順3の表面処理を行わなかった試験例を示す。参考比較例3の結果から、表面処理剤でCu基板を表面処理することなくALD成膜を行った場合、45サイクル後にAl2O3の膜厚は約5.0nmとなった。比較例2の表面処理剤でCu基板を表面処理した場合、Al2O3の膜厚は約4.7nmとなり、Al2O3の膜厚がほとんど低減しなかった。一方、実施例1~10の表面処理剤で表面処理した場合、いずれもAl2O3の膜厚も低減した。実施例1~10のうち、低比誘電率の有機溶剤を配合した表面処理剤で表面処理した場合に、Al2O3膜厚の低減効果が大きくなることが分かった。
前記導電体が、銅、コバルト、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、金、クロム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、窒化チタン、及び窒化タンタルからなる群より選ばれる1種以上であり、前記絶縁体が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、炭素含有酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び酸炭窒化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤。