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特開2023-174986飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174986
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20231201BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231201BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20231201BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20231201BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20231201BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 A
A23L2/00 B
A23D9/00 514
A23L29/262
A23L29/256
A23F5/24
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181937
(22)【出願日】2023-10-23
(62)【分割の表示】P 2020523207の分割
【原出願日】2019-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2018110479
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018198558
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松浦 傳史
(72)【発明者】
【氏名】増子 朝貞
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
【テーマコード(参考)】
4B026
4B027
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC03
4B026DC06
4B026DK01
4B026DK03
4B026DK10
4B026DL03
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP10
4B026DX01
4B027FB24
4B027FC05
4B027FE08
4B027FK01
4B027FK03
4B027FK04
4B027FK10
4B027FK18
4B027FQ06
4B027FQ17
4B027FQ19
4B027FQ20
4B027FR05
4B041LC01
4B041LC07
4B041LD10
4B041LH10
4B041LH11
4B117LC03
4B117LC15
4B117LK06
4B117LK13
4B117LL06
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されかつ風味の好ましい乳飲料において、長期保管時の乳化安定性を改善する。
【解決手段】トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料。ショ糖脂肪酸エステル(A)は、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有することが好ましい。ショ糖脂肪酸エステル(A)は、モノエステル含有量が70.0質量%以上で、ジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下であることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、飲料。
【請求項2】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、飲料。
【請求項3】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、飲料。
【請求項4】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項1~5のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項7】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項8】
さらに乳成分を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項9】
前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1~8のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項10】
前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、請求項1~9のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項11】
油脂と、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、乳化油脂組成物。
【請求項12】
油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化油脂組成物。
【請求項13】
油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射
する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、乳化油脂組成物。
【請求項14】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、請求項11~13のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項15】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、請求項11~14のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項16】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項11~15のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項17】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項11~16のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項18】
さらに乳成分を含有する、請求項11~17のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項19】
前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項11~17のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項20】
前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、請求項11~19のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物。
【請求項21】
トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、乳化剤組成物。
【請求項22】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化剤組成物。
【請求項23】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、乳化剤組成物。
【請求項24】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、請求項21~23のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項25】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、請求項21~24のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項26】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項21~25のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項27】
前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、請求項21~26のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項28】
前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項21~27のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項29】
前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、請求項21~28のいずれか1項に記載の乳化剤組成物。
【請求項30】
トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、飲料の製造方法。
【請求項31】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる飲料の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、飲料の製造方法。
【請求項32】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる飲料の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、飲料の製造方法。
【請求項33】
油脂と、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項34】
油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化油脂組成物の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項35】
油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化油脂組成物の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項36】
トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、乳化剤組成物の製造方法。
【請求項37】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化剤組成物の製造方法あって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化剤組成物の製造方法。
【請求項38】
ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化剤組成物の製造方法あって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、乳化剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物に関する。詳しくは、芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されかつ風味の好ましい乳飲料において、長期保管時の乳化安定性を改善した乳飲料を提供することができる飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
嗜好飲料として大きな市場を持つ乳飲料において、芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されかつ風味の好ましい密封容器入り乳飲料を提供する技術が知られている。
例えば、ショ糖脂肪酸エステルは静菌作用を有する乳化剤として知られている(非特許文献1)。
しかし、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を多くすると、特有の苦みが生じることがある。
【0003】
これを改善する技術として下記1),2)の乳飲料などが提案されている。
1) ショ糖及び脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含む混合物にマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルを添加し、乳固形分を1.2質量%以上含有する密封容器入り乳飲料(特許文献1)
2) ショ糖及び脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含む混合物にマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルを添加し、乳成分とL値が24以下のコーヒー豆の抽出液を含有し、コーヒー固形分を1重量%以上とする密封容器入り乳飲料(特許文献2)
【0004】
マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルはモノエステルの選択率が高く、ショ糖脂肪酸エステル特有の苦みが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-225400号公報
【特許文献2】特開2017-225401号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本食品工業学会誌35巻(1988)10号p.706-708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルを用いた乳飲料は、芽胞形成耐熱性細菌の増殖は抑制されているが、以下の問題がある。
実際に密封容器入り乳飲料として市場で流通、販売される場合は、常温温度帯における長期保存において、賞味期限中、充分な乳化安定性を維持していることが必須であるが、従来技術では乳化安定性が不足し、その結果、実用的な条件下においては、保存中に乳化破壊が起こり、外観や味質においても好適な乳飲料を提供することが困難であった。
【0008】
本発明は、芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されかつ風味の好ましい乳飲料において、長期保管時の乳化安定性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定のショ糖脂肪酸エステルとともに、特定の乳化剤及び/又は多糖類を添加することにより、上記課題を解決できることがわかり本発明に到達した。
本発明は以下を要旨とする。
【0010】
[1] トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、飲料。
【0011】
[2] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、飲料。
【0012】
[3] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、飲料。
【0013】
[4] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
【0014】
[5] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
【0015】
[6] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
【0016】
[7] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
【0017】
[8] さらに乳成分を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
【0018】
[9] 前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]~[8]のいずれかに記載の飲料。
【0019】
[10] 前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、[1]~[9]のいずれかに記載の飲料。
【0020】
[11] 油脂と、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、乳化油脂組成物。
【0021】
[12] 油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化油脂組成物。
【0022】
[13] 油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、乳化油脂組成物。
【0023】
[14] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、[11]~[13]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0024】
[15] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、[11]~[14]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0025】
[16] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[11]~[15]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0026】
[17] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[11]~[16]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0027】
[18] さらに乳成分を含有する、[11]~[17]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0028】
[19] 前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[11]~[17]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0029】
[20] 前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、[11]~[19]のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
【0030】
[21] トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する、乳化剤組成物。
【0031】
[22] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化剤組成物。
【0032】
[23] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである、乳化剤組成物。
【0033】
[24] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のモノエステル含有量が70.0質量%以上である、[21]~[23]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0034】
[25] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)のジエステル含有量が18.5質量%以上25.0質量%以下である、[21]~[24]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0035】
[26] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[21]~[25]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0036】
[27] 前記ショ糖脂肪酸エステル(A)と多糖類(C)の含有質量比率が、100:1~1:100である、[21]~[26]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0037】
[28] 前記乳化剤(B)が、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、及びポリグリセリンステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[21]~[27]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0038】
[29] 前記多糖類(C)が、微結晶セルロース及び/又はカラギーナンである、[21]~[28]のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0039】
[30] トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、飲料の製造方法。
【0040】
[31] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる飲料の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、飲料の製造方法。
【0041】
[32] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる飲料の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、飲料の製造方法。
【0042】
[33] 油脂と、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、乳化油脂組成物の製造方法。
【0043】
[34] 油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化油脂組成物の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化油脂組成物の製造方法。
【0044】
[35] 油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化油脂組成物の製造方法であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、乳化油脂組成物の製造方法。
【0045】
[36] トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる、乳化剤組成物の製造方法。
【0046】
[37] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化剤組成物の製造方法あって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する、乳化剤組成物の製造方法。
【0047】
[38] ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを原料として用いる乳化剤組成物の製造方法あって、ショ糖脂肪酸エステル(A)をマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得る、乳化剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されかつ風味の好ましい乳飲料において、長期保管時の乳化安定性を改善した乳飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、ショ糖(スクロース)の構造式を示す。
図2図2は、製造例1及び参考例1のショ糖パルミチン酸エステルのガスクロマトグラフィーチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0051】
本発明の第1の飲料は、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものである。
本発明の第2の飲料は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有するものである。
本発明の第3の飲料は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する飲料であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルであるものである。
本発明の飲料は更に乳成分を含有する乳飲料であってもよい。
【0052】
本発明の第1の乳化油脂組成物は、油脂と、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものである。
本発明の第2の乳化油脂組成物は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有するものである。
本発明の第3の乳化油脂組成物は、油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化油脂組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルであるものである。
本発明の乳化油脂組成物は更に乳成分を含有する乳化油脂組成物であってもよい。
【0053】
本発明の第1の乳化剤組成物は、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下であるショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものである。
本発明の第2の乳化剤組成物は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有するものである。
本発明の第3の乳化剤組成物は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有する乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する乳化剤組成物であって、ショ糖脂肪酸エステル(A)が、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルであるものである。
【0054】
[ショ糖脂肪酸エステル(A)]
本発明の第1の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物に用いるショ糖脂肪酸エステル(A)は、トリエステルの含有割合が1.4質量%以下、好ましくは1.3質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下、さらに好ましくは1.1質量%以下で、通常0質量%より多く、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。トリエステルの含有割合が1.4質量%を超える場合、相対的にモノエステル含有量が低下するため、単位質量あたりの静菌性が低下する。
【0055】
ショ糖脂肪酸エステル(A)中のトリエステル、モノエステル、ジエステルの含有割合は、Residue Monograph prepared by the meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA), 84th meeting 2017 “Sucrose Esters of Fatty Acids”に記載されるMETHOD OF ASSAYの方法によって測定することができる。
【0056】
具体的には、一定量の100%テトラヒドロフラン(HPLCグレード)に対し、精秤したサンプルを溶解した後、0.5μmのメンブランフィルターで不溶物を取り除いた溶液を試料とし、下記条件での高速液体クロマトグラフィーを実施し、モノエステル、ジエステル、トリエステルそれぞれのピーク面積を個別に算出し、50分間の測定の結果検出された全てのピークの合計ピーク面積に対する比率を算出する。
ピーク面積は各ピークの開始点(立ち上がり位置)から終了点(立ち下がり位置)までの面積に該当する。
2つ以上のピークが隣接しており、開始点や終了点が不明な場合は、ピークとピークの間のデータが最小となった地点を開始点及び終了点として、面積を算出する。
【0057】
<測定条件>
装置 :Chromaster(日立製作所社製)
検出器 :示差屈折計 Detecter-5450(日立製作所社製)
カラム :TSK gel G2500HXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液 :テトラヒドロフラン(100%) 0.8ml/min
注入量 :10μl
【0058】
本発明の第2の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物に用いるショ糖脂肪酸エステル(A)は、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有する。6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体が少ない場合、特有の苦みが生じる場合がある。
【0059】
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖(スクロース)の持つ8個の水酸基に、脂肪酸をエステル型に結合させたものである。6位にエステル結合を有するショ糖脂肪酸エステルのモノエステル体とは、ショ糖の6位(図1を参照)に脂肪酸をエステル結合させたものである。6’位にエステル結合を有するショ糖脂肪酸エステルのモノエステル体とは、ショ糖の6’位(図1を参照)に脂肪酸をエステル結合させたものである。
【0060】
6位にエステル結合を有するモノエステル体と6’位にエステル結合を有するモノエステル体の含有量は、サンプルをピリジン中に溶解した後、HMDS(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)、TMCS(トリメチルクロロシラン)の順に加えて、トリメチルシリル誘導体化した試料を用いたガスクロマトグラフィー(GC)等の方法で測定することができる。
【0061】
具体的には、以下の測定条件で、得られた各チャートのから、6位にエステル結合を有するモノエステル体と6’位にエステル結合を有するモノエステル体のそれぞれのピーク面積を比較することで測定できる。
GCで検出されるピークの内、6位にエステル結合を有するモノエステル体のピーク面積に対する、6’位にエステル結合を有するモノエステル体のピーク面積比(6’/6)は、通常1より大きく、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.15以上である。このピーク面積比(6’/6)の上限は特に制限されないが、通常10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。
【0062】
<測定条件>
装置 :GC-2010Plus(島津製作所)
カラム :Ultra ALLOYキャピラリーカラム
UA±5 0.53mmφ×30m,膜厚0.15μm
キャリヤ:ヘリウム
検出器 :FID
【0063】
GCで検出される各ピークは、下記の方法で同定できる。
GCで検出される各成分を分取し、ガスクロマトグラフ質量分析、フーリエ変換赤外分析、有機元素分析、及び核磁気共鳴分析を実施し、構造を決定する。
【0064】
本発明の第3の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物に用いるショ糖脂肪酸エステル(A)は、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステルである。例えば、特許第5945756号公報に記載されているような、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により、トリエステル含有割合が高度に制御されたショ糖脂肪酸エステル(A)を得ることができる。
【0065】
ショ糖脂肪酸エステル(A)中のモノエステル含有割合は特に制限されないが、通常70.0質量%以上、好ましくは75.0質量%以上、より好ましくは78.0質量%以上、最も好ましくは79.0質量%以上で、通常98.6質量%以下、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下である。モノエステルの含有割合が上記範囲内であれば、単位質量あたりの静菌性を十分に発揮できる傾向がある。
【0066】
ショ糖脂肪酸エステル(A)中のジエステル含有割合は特に制限されないが、通常0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、さらに好ましくは15.0質量%以上、特に好ましくは18.5質量%以上、最も好ましくは19.0質量%以上で、通常30.0質量%未満、好ましくは25.0質量%以下、さらに好ましくは23.0質量%以下、特に好ましくは21.0質量%以下である。ジエステルの含有割合が上記範囲内であれば、モノエステル含有量を低下させず、単位質量あたりの静菌性が低下することを防ぐことができる傾向がある。
【0067】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12~18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が飲料中での乳化安定性と風味の観点から好ましく、特にパルミチン酸が好ましい。
【0068】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、ショ糖脂肪酸エステル(A)中の構成脂肪酸の70質量%以上が上記の好適な構成脂肪酸であればよい。特に、ショ糖脂肪酸エステル(A)中の構成脂肪酸の75質量%以上がパルミチン酸であることが、単位質量あたりの静菌性が高いため、好ましい。
【0069】
上記特性を有するショ糖脂肪酸エステル(A)は、例えば、特許第5945756号公報に記載されているような、マイクロ波を照射する工程を含む製造方法により得ることができる。マイクロ波を照射する工程を含む製造方法で製造することによりトリエステル含有割合が高度に制御されたショ糖脂肪酸エステル(A)を得ることができる。
【0070】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の別の製造方法としては、市販されているショ糖脂肪酸エステルをGPC,HPLCや各種抽出方法により精製する方法や、酵素反応で得る方法が挙げられる。
【0071】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の市販品としては、例えば、「リョートーシュガーエステルS-1670」、「リョートーシュガーエステルP-1670」、「リョートーシュガーエステルS-1570」、「リョートーシュガーエステルM-1695」、「リョートーシュガーエステルL-1695」、「リョートーシュガーエステルP-1570」、「リョートーシュガーエステルO-1570」、「リョートーシュガーエステルS-1170」、「リョートーシュガーエステルS-970」、「リョートーシュガーエステルS-770」、「リョートーシュガーエステルS-570」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「DKエステルSS」、「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」、「DKエステルF-90」、「DKエステルF-70」、「DKエステルF-50」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物には、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)の1種のみが含まれていてもよく、構成脂肪酸の種類や製造方法等の異なるものの2種以上が含まれていてもよい。
【0073】
[乳化剤(B)]
本発明の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物で用いる乳化剤(B)は、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なる乳化剤で且つ構成脂肪酸としてステアリン酸を有するものであれば特に限定されない。
【0074】
乳化剤(B)としては、例えばショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0075】
飲料に添加した際の風味への悪影響が少ないという点から、乳化剤(B)としては、ショ糖ステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルが好ましい。
【0076】
乳化剤(A)とは親水基構造が異なる構造を持つ乳化剤(B)を組合わせる方が効率的に乳化安定化を図ることができるという点で好ましいことから、乳化剤(B)としては、モノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムが好ましく、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウムがより好ましく、モノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルが最も好ましい。
【0077】
特定のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)とを併用することにより、保存時の乳化安定性が改善される。
【0078】
<ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステル>
乳化剤(B)としてのショ糖ステアリン酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるものであれば特に限定されないが、トリエステルの含有割合が通常1.5質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは10.0質量%以上で、通常90質量%以下、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下、さらに好ましくは30.0質量%以下のショ糖脂肪酸エステルである。トリエステルの含有割合が上記範囲であれば、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れる。
【0079】
ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステルは、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を少なく含有することが、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れる点から好ましい。
【0080】
ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステル中のモノエステル含有割合は特に制限されないが、通常10.0質量%以上、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは25.0質量%以上で、通常98.5質量%以下、好ましくは80.0質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。モノエステルの含有割合が上記範囲内であれば、乳飲料への溶解性を維持しつつ、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れる傾向がある。
【0081】
ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステル中のジエステル含有割合は特に制限されないが、通常0質量%以上、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは25.0質量%以上、さらに好ましくは30.0質量%以上で、通常88.5質量%以下、好ましくは70.0質量%以下、さらに好ましくは50.0質量%以下、最も好ましくは40.0質量%以下である。ジエステルの含有割合が上記範囲内であれば、ジエステルが不溶化することなく、また、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れる傾向がある。
【0082】
ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステルの構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、ショ糖脂肪酸エステル(A)とは異なるショ糖ステアリン酸エステル中の構成脂肪酸の通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上がステアリン酸であればよい。
【0083】
<モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル>
乳化剤(B)としてのモノグリセリン有機酸ステアリン酸エステルとしては、モノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル、モノグリセリンジアセチル酒石酸ステアリン酸エステルなどが挙げられる。中でも乳飲料への溶解性を維持しつつ、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れるという点からモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル(コハク酸ステアリン酸モノグリセリド)が好ましい。
【0084】
モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステルの構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、モノグリセリン有機酸ステアリン酸エステル中の構成脂肪酸の通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上がステアリン酸であればよい。
【0085】
<ポリグリセリンステアリン酸エステル>
乳化剤(B)としてのポリグリセリンステアリン酸エステルとしては、ジグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、テトラグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステルが挙げられる。中でも乳飲料への溶解性を維持しつつ、ショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れるという点で、トリグリセリンステアリン酸エステル、テトラグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステルが好ましく、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステルがさらに好ましく、デカグリセリンステアリン酸エステルが最も好ましい。
【0086】
ポリグリセリンステアリン酸エステルの構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、ポリグリセリンステアリン酸エステル中の構成脂肪酸の通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上がステアリン酸であればよい。
【0087】
[多糖類(C)]
本発明の飲料、乳化油脂組成物及び乳化剤組成物で用いる多糖類(C)としては、特に制限はないが、例えば、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、カシアガム、ウェランガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン、コンニャク等の可食性多糖類が挙げられる。
【0088】
これらのうち、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、カシアガム、ウェランガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン、コンニャク等の可食性高分子多糖類が好ましい。中でもショ糖脂肪酸エステル(A)と組み合わせた際の保存時の乳化安定性の改善効果に優れるという点から微結晶セルロース、カラギーナン、アラビアガムがさらに好ましく、微結晶セルロースが最も好ましい。
【0089】
多糖類(C)の重量平均分子量は通常300以上であり、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が最も好ましく、通常5000000以下であり、4000000以下が好ましく、3000000以下が最も好ましい。
【0090】
多糖類(C)の重量平均分子量(Mw)は、以下の測定条件によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の結果から、Mw=ΣHi×Mi/Σ(Hi)(Hi:ピーク高さ、Mi:分子量)により求められる。
【0091】
GPC条件:
カラム:TSKgelG2500PWXL、GMPWXL(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
移動相:0.2M 硝酸ナトリウム水溶液
流速:1.0ml/min
検出器:示差屈折率計
サンプル注入量:200μl
検量線:プルラン標準品(分子量2,350,000~5,900の間の9種類)、及びグルコース(分子量180)
【0092】
カラギーナンとしては、ユーケマ・スピノサム、ユーケマ・コトニ等の藻類を原料として、例えば次のような製造方法によって製造されるものがある。
まず、原料である紅藻類を水洗し、必要に応じて、塩酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の無機酸あるいは有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリで前処理を行った後、pH8~10程度の中性ないしは弱アルカリ性の水に浸漬して50~100℃程度の温度で1~8時間程度加熱を行い抽出する。次いで、抽出液に珪藻土等の濾過助剤を添加して濾過を行った後、濾液をゲルプレス法、ドラム乾燥法あるいはアルコール沈澱法等の方法により脱水し、乾燥することによって得られる。また、必要に応じて、得られたカラギーナン粉体を、衝撃粉砕法、剪断法、摩擦法等の粉砕法によって微粉砕することもできる。
【0093】
カラギーナンの種類は、特に限定されるものではないが、中では、κ-カラギーナン、ι-カラギーナンが、乳化安定化効果が高いため好ましい。
【0094】
カラギーナンに結合しているカチオンについて、ナトリウム、カルシウム、カリウムの含有量を比較した際、相対的にカルシウムが多いカルシウムタイプや、カリウムが多いカリウムタイプが、カルシウムを介した乳タンパク質との結合形成による乳化安定化効果が高いため、好ましい。
【0095】
多糖類(C)としては、予め殺菌処理によって、耐熱性芽胞菌の芽胞が殺菌されたものが好ましい。その殺菌処理の方法は特に限定されないが、粉体の多糖類に対する紫外線照射装置による殺菌処理;多糖類の抽出、精製等の製造過程における酸化系殺菌剤による殺菌処理;多糖類を貧溶媒中に分散させ、実質的に溶解しない状態下で、酸化系殺菌剤と接触させて加熱処理を施すことによる殺菌処理;が好ましい。
これらのうち、特に、カラギーナン等の多糖類を貧溶媒中に分散させ、実質的に溶解しない状態下で、酸化系殺菌剤と接触させて加熱処理を施すことによる殺菌処理が、最も好ましい。
【0096】
[油脂]
本発明の乳化油脂組成物に用いる油脂としては、特に制限されるものではないが、魚油、牛脂、豚脂、乳脂(バターや無水バター)、馬油、蛇油、卵油、卵黄油、タートル油、ミンク油などの動物性油脂類;大豆油、とうもろこし油、綿実油、なたね油、ごま油、シソ油、こめ油、ひまわり油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、米胚芽油、小麦胚芽油、玄米胚芽油、ハトムギ油、ガーリックオイル、マカデミアンナッツ油、アボガド油、月見草油、フラワー油、つばき油、ヤシ油、ひまし油、あまに油、カカオ油などの植物性油脂類:およびこれらを水素添加又はエステル交換したもの、例えば、これら植物性油脂又は動物性油脂の液状又は固体状物を精製や脱臭、分別、硬化、エステル交換といった油脂加工した、MCT(中鎖脂肪酸油)、硬化ヤシ油、硬化パーム核油などの硬化油脂や加工油脂、更にこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等;中鎖脂肪酸トリグリセライド等が挙げられる。
【0097】
本発明の乳化油脂組成物には、これらの油脂の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0098】
[乳成分]
本発明の飲料及び乳化油脂組成物は、更に乳成分を含んでいてもよい。
【0099】
本発明の飲料及び乳化油脂組成物に含まれる乳成分としては、乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼインおよびカゼイン塩、ホエー、チーズ、乳清ミネラルなどの乳成分が挙げられる。
【0100】
本発明の飲料及び乳化油脂組成物は、これらの乳成分の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0101】
[その他の成分]
本発明の飲料には、ショ糖脂肪酸エステル(A)、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)、乳成分の他、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
【0102】
本発明の乳化油脂組成物には、上記の油脂、ショ糖脂肪酸エステル(A)、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)、乳成分の他、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
【0103】
本発明の乳化剤組成物には、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の他、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
【0104】
その他の成分としては、例えば、コーヒー、茶及びそのエキス、豆類・穀物またはその粉末やペースト、果汁・果肉またはその粉砕物やペースト、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル(A)および乳化剤(B)以外のもの)、pH調整剤、糖類(多糖類(C)以外のもの)、糖アルコール、甘味料、タンパク質またはその分解物、香料、風味付け素材、ミネラル素材、栄養素材、酸化防止剤、保存料、二酸化炭素、酒類、エタノールなどが挙げられる。具体的には以下のとおりである。
【0105】
<コーヒー、茶及びそのエキス>
コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶など)およびそのエキス
【0106】
<豆類・穀物またはその粉末やペースト>
カカオ豆、大豆、小豆、アーモンド、ピーナッツ、胡桃、杏仁、コメ、麦などの豆類・穀物、またはその粉末やペースト
【0107】
<果汁・果肉またはその粉砕物やペースト>
ココナッツミルク、ココナッツジュースなどの果汁や果肉、またはその粉砕物やペースト
【0108】
<乳化剤>
レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどの乳化剤
【0109】
<pH調整剤>
有機酸およびその塩、重曹、リン酸塩等のpH調整剤
【0110】
<糖類>
砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖等の単糖やオリゴ糖
【0111】
<糖アルコール>
エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール
【0112】
<甘味料>
スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料
【0113】
<タンパク質またはその分解物>
カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質またはその分解物
【0114】
<香料>
レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、バター香料、クリーム香料、ミルク香料等の香料
【0115】
<風味付け素材>
β-カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素、食塩、などの風味付け素材
【0116】
<ミネラル素材>
カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウムなどのミネラル素材
【0117】
<栄養素材>
ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド、DHA、EPA等のような栄養素材
【0118】
<酸化防止剤>
ビタミンC、ビタミンCナトリウム、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤
【0119】
<保存料>
カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤、ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料
【0120】
<酒類>
リキュール、ウォッカ、焼酎などの酒類
【0121】
本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、油脂や前述の乳化油脂組成物を飲料成分として含有していてもよい。
【0122】
[飲料]
本発明の飲料は、前述のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものであり、更に前述の乳成分、その他の成分を含んでいてもよい。
【0123】
本発明の飲料中のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率(ショ糖脂肪酸エステル(A)の質量:乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の質量)は、特に限定されないが、通常100:1~1:100であり、好ましくは50:1~1:50であり、より好ましくは20:1~1:20であり、さらに好ましくは10:1~1:10であり、最も好ましくは5:1~1:5である。ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率が上記範囲であれば、コストや味質の面での悪影響なく、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを組み合わせることによる保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0124】
本発明の飲料中のショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、特に限定されないが、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上で、通常10質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が上記範囲であれば、飲料の味質を損なわずに、静菌性を十分に発揮することができる。
【0125】
本発明の飲料中の乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量は、特に限定されないが通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上で、通常10質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量が上記範囲であれば、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを組み合わせたことによる保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0126】
本発明の飲料が乳成分を含有する場合、本発明の飲料中の乳固形分の含有量は、特に限定されないが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05、質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上で、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは8質量%以下である。飲料中の乳固形分の含有量が上記範囲であれば、乳の風味が好ましい範囲にあり、かつ、長期保管時の乳化安定性を維持できるので、好適である。
【0127】
本発明の飲料としては、例えば、乳飲料、スープ飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、茶飲料(紅茶、緑茶、中国茶など)、豆類・穀物飲料、酸性飲料、粉末飲料、粉末スープ等が挙げられる。中でも、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、中国茶飲料、豆類・穀物飲料が好ましく、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、中国茶飲料、豆類・穀物飲料がより好ましく、コーヒー飲料、紅茶飲料が特に好ましい。
【0128】
本発明の飲料は、ショ糖脂肪酸エステル(A)、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)、及び必要に応じて添加される乳成分、その他の成分を混合して製造してもよいし、前述の油脂、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有する本発明の乳化油脂組成物にその他の成分を混合して製造しても良い。
本発明の飲料の製造方法については後述する。
【0129】
[乳化油脂組成物]
本発明の乳化油脂組成物は、前述の油脂と、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものであり、更に前述の乳成分、その他の成分を含んでいてもよい。
本発明の乳化油脂組成物は、乳飲料の製造に好適に使用される。
【0130】
本発明の乳化油脂組成物中の油脂の含有量は通常0.1~99質量%であり、特に1~90質量%であることが好ましく、とりわけ10~85質量%であることが好ましい。油脂の含有量が上記範囲であれば、油脂あたりのコスト競争力や、飲料に用いた際の味質の面で好適となる。
【0131】
本発明の乳化油脂組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率(ショ糖脂肪酸エステル(A)の質量:乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の質量)は、特に限定されないが、通常100:1~1:100であり、好ましくは50:1~1:50であり、より好ましくは20:1~1:20であり、さらに好ましくは10:1~1:10であり、最も好ましくは5:1~1:5である。ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率が上記範囲であれば、コストや味質の面での悪影響なく、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを組み合わせることによる保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0132】
本発明の乳化油脂組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、特に限定されないが通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上で、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が上記範囲であれば、乳化油脂組成物の安定性を損なわず、乳化油脂組成物を添加した飲料での静菌性を十分に発揮することができる。
【0133】
本発明の乳化油脂組成物中の乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量は、特に限定されないが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上で、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量が上記範囲であれば、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを組み合わせることによる保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0134】
本発明の乳化油脂組成物が乳成分を含有する場合、本発明の乳化油脂組成物中の乳固形分の含有量は、特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上で、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。乳化油脂組成物中の乳固形分の含有量が上記範囲であれば、乳化油脂組成物としての製造が容易で、コストが抑えられる上、飲料に用いた場合、乳の風味が好ましい範囲にあり、かつ、長期保管時の乳化安定性を維持できるので、好適である。
【0135】
<乳化油脂組成物の製造方法>
本発明の乳化油脂組成物は、常法に従って、配合成分を乳化処理することにより製造される。
【0136】
乳化処理は、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)と、必要に応じて配合される他の成分と水を含む水相部に対して、油脂を徐々に添加して、市販の乳化機を用いて行えばよい。
【0137】
乳化機としては、例えば、パドルミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ニーダー、インラインミキサー、スタティックミキサー、オンレーター、コンビミックス、アヂホモミキサー等を用いることができる。
【0138】
乳化処理時の温度は、用いる油脂の上昇融点によっても異なるが、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。乳化処理は、通常0.005~20時間、好ましくは0.01~10時間行われる。
【0139】
乳化処理は1回のみ行っても、2回以上(複数回)を行ってもよい。
乳化処理を複数回行うとは、乳化機に被処理物を導入して所定の条件下で乳化処理した後、乳化油脂組成物を取り出す操作を複数回行うことをさす。複数回の乳化処理に用いる乳化機は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0140】
乳化処理時の被処理物のpHは、用いる乳化剤が水に充分分散し、効率良く油脂を乳化するという点から好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上で、通常9.0以下、好ましくは8.0以下である。被処理物のpHは、被処理物に重曹、リン酸塩等のpH調整剤、その他の添加剤を添加することにより調整することができる。
【0141】
殺菌処理を行う場合には、乳化処理を殺菌処理の前で行ってもよいし、殺菌処理の後で行ってもよい。殺菌処理は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上で、通常160℃以下、好ましくは150℃以下で、通常0.01分以上、好ましくは0.03分以上で、通常60分以下、好ましくは30分以下程度で行う。殺菌方法は特に制限はない。
【0142】
[乳化剤組成物]
本発明の乳化剤組成物は、前述のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを含有するものであり、更に前述のその他の成分を含んでいてもよい。
本発明の乳化剤組成物は、乳飲料の製造に好適に使用される。
【0143】
本発明の乳化剤組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率(ショ糖脂肪酸エステル(A)の質量:乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の質量)は、特に限定されないが、通常100:1~1:100であり、好ましくは50:1~1:50であり、より好ましくは20:1~1:20であり、さらに好ましくは10:1~1:10であり、最も好ましくは5:1~1:5である。ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有比率が上記範囲であれば、コストや味質の面での悪影響なく、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)とを組み合わせることにより、乳飲料の製造に使用した際、飲料の保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0144】
本発明の乳化剤組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、特に限定されないが通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上で、通常99質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が上記範囲であれば、乳化剤組成物の安定性を損なわず、乳化剤組成物を添加した飲料での静菌性を十分に発揮することができる。
【0145】
本発明の乳化剤組成物中の乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量は、特に限定されないが通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上で、通常99質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)の含有量が上記範囲であれば、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)とを組み合わせることによる保存時の乳化安定性の改善効果を十分に得ることができる。
【0146】
<乳化剤組成物の製造方法>
本発明の乳化油脂組成物は、常法に従って、前述のショ糖脂肪酸エステル(A)と、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)と、必要に応じて配合される前述のその他の成分とを混合することにより製造される。
【0147】
[飲料の製造方法]
本発明の飲料は、上述のようにして製造された本発明の乳化油脂組成物又は乳化剤組成物に、飲料として必要な成分を混合して製造してもよいし、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、乳化剤(B)及び/又は多糖類(C)等とを混合して直接本発明の飲料を製造してもよい。
【0148】
本発明の飲料は、公知の方法で製造すればよいが例えば以下の方法で製造することができる。
【0149】
まず、上記飲料に含まれていてもよいものとして例示した材料を、必要に応じて水などと共に混合して混合液を調製する。
【0150】
次いで、得られた混合液を撹拌して乳化する。乳化方法としては、通常食品に用いられる均質乳化方法であれば特に制限なく使用することができる。乳化方法としては、例えば、ホモジナイザーを用いる方法や、コロイドミルを用いる方法、ホモミキサーを用いる方法などいずれも用いることができる。均質乳化処理は、通常40~80℃の加温条件下で行われる。
【0151】
ホモジナイザーを用いた均質乳化処理として、高圧乳化処理を適用することも好ましい。1段式であればその高圧乳化時点の処理圧が、2段式等の多段式であれば、少なくとも1段の高圧乳化時点の処理圧が、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、最も好ましくは25MPa以上で、通常200MPa以下、好ましくは100MPa以下の高圧乳化処理を行うことで、安定な飲料を得ることができる。高圧乳化処理の回数は1回以上、好ましくは2回以上である。
【0152】
均質乳化処理後には、UHT殺菌、レトルト殺菌などの殺菌処理を行う。通常レトルト殺菌は、110~140℃、例えば121℃で、10~40分の条件で行われる。PETボトル用飲料などに用いられるUHT殺菌は、より高温、例えば殺菌温度120~150℃で、且つ121℃での殺菌価(Fo)が10~50に相当する超高温殺菌である。UHT殺菌は飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や、飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法で行うことができる。例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
【0153】
製造された本発明の飲料は、容器詰め飲料に好適であり、例えば、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料、ビン詰飲料などに適用することができる。
【実施例0154】
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0155】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で乳化油脂組成物の調製に用いた原料は次の通りである。
ショ糖ステアリン酸エステル:リョートーシュガーエステルS-570(三菱ケミカルフーズ社製、モノエステル含有量29質量%、ジエステル含有量36質量%、トリエステル含有量24質量%)
コハク酸ステアリン酸モノグリセリド:ポエムB-30(理研ビタミン社製)
デカグリセリンステアリン酸エステル:リョートーポリグリエステルSWA-10D(三菱ケミカルフーズ社製、デカグリセリンステアリン酸エステルの含有量:40質量%)
微結晶セルロース:セオラスSC-900S(旭化成ケミカル社製)
カゼインナトリウム:Tatua100(タツアジャパン社製)
【0156】
[製造例1]
特許第5945756号に記載のマイクロ波を照射する工程を含む製造方法により、モノエステル含有量80質量%、ジエステル含有量19質量%、トリエステル含有量1質量%のショ糖パルミチン酸エステルを得、ショ糖脂肪酸エステル(A)として用いた。
このショ糖パルミチン酸エステルは、6位にエステル結合を有するモノエステル体よりも、6’位にエステル結合を有するモノエステル体を多く含有していた(図2参照)。
【0157】
[実施例1~4、比較例1,2]
コーヒー抽出液(Bx3.3)380gに、予め熱水で溶解した重曹を加えてpH調整後、砂糖50g、牛乳100g、製造例1で製造したショ糖脂肪酸エステル(A)0.3g、及び表1に記載する乳化剤(B)、多糖類(C)又はその他の材料を、表1に記載する量加えて混合、溶解させ(比較例1では乳化剤(B)、多糖類(C)、その他の材料を添加せず)、さらに水を加え全量を1000gとした。本液を65℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて20MPaの圧力で均質化後、缶容器に充填、密封し、121℃、30分間のレトルト殺菌を行い、缶入りミルクコーヒーを調製した。殺菌後の飲料のpHは6.3~6.4であった。
【0158】
[参考例1]
ショ糖脂肪酸エステル(A)の代りに、マイクロ波を照射しない従来の製造方法により得られたショ糖パルミチン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製、リョートーシュガーエステルP-1670、モノエステル含有量80質量%、ジエステル含有量18質量%、トリエステル含有量2質量%、6位にエステル結合を有するモノエステル体の含有量>6’位にエステル結合を有するモノエステル体の含有量)を用いた以外は、比較例1と同様にして、缶入りミルクコーヒーを調製した。
【0159】
[ショ糖脂肪酸エステルの6位にエステル結合を有するモノエステル体及び6’位にエステル結合を有するモノエステル体の含有量の評価]
製造例1及び参考例1のショ糖脂パルミチン酸エステルを用い、上述の方法でガスクロマトグラフィー分析を行い、得られたガスクロマトグラフィーチャートから、6位にエステル結合を有するモノエステル体と6’位にエステル結合を有するモノエステル体のそれぞれのピーク面積を比較した。
得られたガスクロマトグラフィーチャートを図2に示す。
6位にエステル結合を有するモノエステル体のピーク面積に対する、6’位にエステル結合を有するモノエステル体のピーク面積比(6’/6)は、以下の通りであった。
製造例1のショ糖脂肪酸エステル:1.22
参考例1のショ糖脂肪酸エステル:0.68
【0160】
[乳化安定性の評価]
実施例1~4、比較例1,2及び参考例1で得られた缶入りミルクコーヒーを、殺菌後、20℃および35℃で(ただし、実施例4では20℃のみ)8週間保存後に開缶し、乳化安定性について下記評価基準で評価した。
評価結果を表1示す。
【0161】
<評価基準>
開缶後の液面の状態、及び、プラスチックカップに注ぎ、よく撹拌した後の液面の状態を、以下の基準で目視観察して評価した。
◎: オイルオフ、クリーム分離がない。
○: オイルオフやクリーム分離がわずかに認められる。
△: オイルオフやクリーム分離がはっきりと認められる。
×: オイルオフやクリーム分離が多量に認められ、乳化が破壊されている。
【0162】
【表1】
【0163】
表1より、実施例1~4のように、ショ糖脂肪酸エステル(A)と乳化剤(B)又は多糖類(C)とを併用することで、乳飲料の長期保管時の乳化安定性を改善することができることが分かる。この乳飲料はショ糖脂肪酸エステル(A)を含むことで、芽胞形成耐熱性細菌の増殖が抑制されている。
【0164】
これに対して、ショ糖脂肪酸エステル(A)を用いても乳化剤(B)又は多糖類(C)を用いていない比較例1,2では、長期保管時の乳化安定性が悪い。
【0165】
参考例1は、長期保管時の乳化安定性は優れるものであるが、マイクロ波照射工程を経ていないショ糖パルミチン酸エステルを用いているため苦みの問題がある。
【0166】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2018年6月8日付で出願された日本特許出願2018-110479及び2018年10月22日付で出願された日本特許出願2018-198558に基づいており、その全体が引用により援用される。
図1
図2