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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175202
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20231205BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20231205BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231205BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20231205BHJP
   C01B 39/20 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B01J20/18 D ZAB
B01D53/047
B01D53/62
B01D53/81
C01B39/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087534
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 宏
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002DA45
4D002EA07
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB04
4D002GB08
4D002HA02
4D012BA02
4D012CA03
4D012CA12
4D012CB02
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG02
4G066AA62B
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA02
4G066FA37
4G066GA14
4G073BA02
4G073BA03
4G073BA04
4G073BA17
4G073BA69
4G073BA81
4G073BD21
4G073CZ03
4G073FA12
4G073FB30
4G073FD08
4G073GA01
4G073GA19
4G073UA06
4G073UB60
(57)【要約】
【課題】
二酸化炭素と窒素を含有するガスからのPSAによる二酸化炭素の分離において、従来の二酸化炭素分離剤では得られなかった高い選択性で二酸化炭素を分離することができる二酸化炭素分離剤及びこれを含む二酸化炭素の分離方法の少なくともいずれかを提供する。
【解決手段】
イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有し、かつ、SiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む、二酸化炭素と窒素を含有するガスからの二酸化炭素分離剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有し、かつ、SiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む、二酸化炭素と窒素を含有するガスからの二酸化炭素分離剤。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素分離剤と、二酸化炭素と窒素を含有するガスとを接触させる工程を有する、二酸化炭素の分離方法。
【請求項3】
前記ガスの二酸化炭素分圧が10kPa超である、請求項2に記載の二酸化炭素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素と窒素を含むガスから、二酸化炭素を選択的に分離する二酸化炭素分離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出量を削減するために、火力発電所や溶鉱炉の燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する技術が求められている。燃焼排ガスは、一般的に窒素を主成分として、10~30%の二酸化炭素を含有している。従って、燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するためには、窒素、二酸化炭素を含む混合ガスから、二酸化炭素を選択的に分離する操作が必要となる。
【0003】
二酸化炭素を選択的分離する技術として、アミン溶液に二酸化炭素を吸収させる方法が知られる。しかしながら、この方法は吸収した二酸化炭素をアミン溶液から脱離するための加熱が必要である。廃熱の利用設備等を有する大規模な事業所でない限り、加熱のエネルギーコストが高価となるため、アミン溶液を使用する方法は小規模な事業所で適用できる方法ではなかった。
【0004】
そこで、小規模な事業所に向けて、吸着剤を利用する圧力変動吸着法(PSA)による回収技術が提案されている。吸着剤として、例えば、活性炭を用いた二酸化炭素分離剤(特許文献1)や、X型ゼオライトを使用した二酸化炭素分離剤(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3062759号公報
【特許文献2】特許3983310号公報
【特許文献3】米国特許3130007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、二酸化炭素と窒素を含有するガスからのPSAによる二酸化炭素の分離において、従来の二酸化炭素分離剤では得られなかった高い選択性で二酸化炭素を分離することができる二酸化炭素分離剤及びこれを含む二酸化炭素の分離方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定のSiO/Al比を有し、なおかつ、イオン交換サイトに特定のカチオンを特定の割合で有するフォージャサイトが、二酸化炭素と窒素を含有するガスから高い選択性で二酸化炭素を分離することができることを見出した。すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有し、かつ、SiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む、二酸化炭素と窒素を含有するガスからの二酸化炭素分離剤。
[2] 上記[1]に記載の二酸化炭素分離剤と、二酸化炭素と窒素を含有するガスとを接触させる工程を有する、二酸化炭素の分離方法。
[3] 前記ガスの二酸化炭素分圧が10kPa超である、上記[2]に記載の二酸化炭素の分離方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、二酸化炭素と窒素を含有するガスからのPSAによる二酸化炭素の分離において、従来の二酸化炭素分離剤では得られなかった高い選択性で二酸化炭素を分離することができる二酸化炭素分離剤及びこれを含む二酸化炭素の分離方法、の少なくともいずれかを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について、その実施態様の一例を示して説明する。
【0010】
本実施形態はイオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有し、かつ、SiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む二酸化炭素分離剤である。
【0011】
フォージャサイトとは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)により「FAU」に分類されるゼオライト骨格構造を有するゼオライトを指す。
【0012】
本実施形態の二酸化炭素分離剤が含有するフォージャサイトは、結晶性アルミノシリケートであることが好ましく、ゼオライトYが例示できる。
【0013】
本実施形態の二酸化炭素分離剤が含有するフォージャサイトは、イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオン(以下、「リチウムカチオン等」ともいう。)を含有する。これにより、二酸化炭素と窒素を含有するガスからの二酸化炭素の選択的分離において、二酸化炭素を高い選択率で分離できる。
【0014】
本実施形態におけるイオン交換サイトのカチオン含有量は、以下の式で求められるフォージャサイトのイオン交換サイトに占めるカチオンのモル割合である。
イオン交換サイトのカチオン含有量(%)=
[交換カチオンの含有量(mol)]/[アルミニウムの含有量(mol)]×n×100 (ただしnは交換カチオンの価数)
【0015】
交換カチオンの含有量及びアルミニウムの含有量は、フォージャサイトの組成分析により求めることができる。組成分析は例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)を挙げることができる。
【0016】
フォージャサイトの交換カチオンは、ナトリウムカチオン及びリチウムカチオン等である。リチウムカチオン等は、リチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含み、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンが好ましく、ランタン及びアンモニウムの少なくともいずれかのカチオンがより好ましく、アンモニウムカチオンが更に好ましい。
【0017】
二酸化炭素の高圧有効吸着量と二酸化炭素選択性が高くなりやすいため、イオン交換サイトの20%以上90%以下、更には30%以上80%以下にナトリウムカチオンを含有することが好ましい。一方、二酸化炭素の低圧有効吸着量と二酸化炭素選択性が高くなりやすいため、イオン交換サイトの30%以上90%以下、更には50%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有することが好ましい。
【0018】
本実施形態の二酸化炭素分離剤が含有するフォージャサイトのリチウムカチオン等の含有量は、ナトリウムカチオンとリチウムカチオン等が合計で100%となる量であればよく、10%以上80%以下であればよい。
【0019】
本実施形態おける有効吸着量とは、25℃の吸着等温線における、平衡圧力の異なるガスの吸着量の差分である。
【0020】
二酸化炭素の高圧有効吸着量は、平衡圧力100kPaにおける二酸化炭素の吸着量と、平衡圧力10kPaの二酸化炭素の吸着量との差分であり、また、二酸化炭素の低圧有効吸着量は、平衡圧力20kPaにおける二酸化炭素の吸着量と、平衡圧力10kPaの二酸化炭素の吸着量との差分である。
【0021】
窒素の高圧有効吸着量は、平衡圧力400kPaにおける窒素の吸着量と、平衡圧力10kPaの窒素の吸着量との差分であり、また、窒素の低圧有効吸着量は平衡圧力80kPaにおける窒素の吸着量と、平衡圧力10kPaの窒素の吸着量との差分である。
【0022】
また、本実施形態において、二酸化炭素選択性(高圧)とは、窒素の高圧有効吸着量に対する二酸化炭素の高圧有効吸着量のモル比であり、また、二酸化炭素選択性(低圧)とは、窒素の低圧有効吸着量に対する二酸化炭素の低圧有効吸着量のモル比である。
【0023】
本実施形態の二酸化炭素分離剤が含有するフォージャサイトは、SiO/Al比は4.5以上7以下であり、4.8以上6以下であることが好ましい。SiO/Al比が4.5未満であると二酸化炭素選択性が低下する。一方、SiO/Al比が7を超えると二酸化炭素の有効吸着量が低下する。
【0024】
本実施形態の二酸化炭素分離剤は、所望の形状で使用すればよく、粉末状態で使用することができるが、ビーズ、ペレット、三つ葉状など所望の形状に成形した成形体として使用することも、スラリー化してハニカム状の基材に塗布したハニカム構造体として使用することができる。
【0025】
本実施形態の二酸化炭素分離剤は、二酸化炭素と窒素を含有するガスから二酸化炭素を選択的に吸着し、これを該ガスから分離することができる。本実施形態の二酸化炭素分離剤は、二酸化炭素及び窒素含有ガス用の二酸化炭素吸着剤として供することができ、好ましくは二酸化炭素分圧が10kPaを超える二酸化炭素及び窒素含有ガス用の二酸化炭素分離剤、更には二酸化炭素分圧が60kPa以上の二酸化炭素及び窒素含有ガス用の二酸化炭素分離剤、として適している。
【0026】
次に、本実施形態の二酸化炭素分離剤の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態の二酸化炭素分離剤は、上記の構成を満たしていればその製造方法は任意である。例えば、イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有し、かつ、SiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを二酸化炭素分離剤としてもよい。また、SiO/Al比が4.5以上7以下である原料フォージャサイトを、イオン交換により、そのイオン交換サイトの20%以上90%以下をナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウム、ランタン、アンモニウム及びプロトンの群から選ばれる1種以上のカチオンを含有させる工程、を有する製造方法により製造してもよい。
【0028】
本実施形態の二酸化炭素分離剤の製造に用いるフォージャサイトは、合成フォージャサイトであることが好ましい。合成フォージャサイトとは、天然に産出されるフォージャサイト(天然フォージャサイト)とは区別され、出発原料から人工的に結晶化することで合成されたフォージャサイトをいう。合成フォージャサイトの製造方法は特に限定されず、公知の方法(例えば、特許文献3)で製造することができる。
【0029】
最終的に上記の組成となるならば、ナトリウムカチオンのイオン交換と、リチウムカチオン等のイオン交換は同時に行っても、1種ずつ逐次に行ってもよい。逐次イオン交換を行う場合、イオン交換の順番は任意である。
【0030】
イオン交換に使用するナトリウム源、リチウム源、ランタン源、アンモニウム源及びプロトン源は、各カチオンを含有する水溶性の塩であれば特に限定されず、所望のカチオンを含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、有機酸塩及び無機酸の群から選ばれる1種以上、などが使用できる。
【0031】
イオン交換の方法は特に限定されず、一般的な回分法、流通法などが適用できる。イオン交換時の温度は、室温であってもよいが、イオン交換速度が速くなるため、40℃以上90℃以下で実施することが好ましい。また、アンモニウムイオン交換後に500℃以上600℃以下の温度で焼成することにより、プロトンにイオン交換してもよい。
【0032】
本実施形態の二酸化炭素分離剤を成形体やハニカム構造体として使用する場合には、フォージャサイト粉末を、そのイオン交換サイトの20%以上90%以下をナトリウムカチオン、及び残部にリチウムカチオン等とイオン交換した後に成形体やハニカム構造体としてもよく、一方、フォージャサイト粉末を成形体やハニカム構造体とした後にナトリウムカチオン、リチウムカチオン等のイオン交換を行ってもよい。
【0033】
本実施形態の二酸化炭素分離剤は、本実施形態の二酸化炭素分離剤と、二酸化炭素と窒素を含有するガスとを接触させる工程を有する、二酸化炭素の分離方法により、ガス中の二酸化炭素を分離することができる。
【0034】
該ガスの二酸化炭素分圧は10kPa超が好ましく、60kPa以上がより好ましい。
【0035】
当該工程における、該ガスと本実施形態の二酸化炭素分離剤との接触温度は、好ましくは、-150℃以上200℃以下、さらに好ましくは-100℃以上100℃以下である。
【実施例0036】
以下、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<組成分析>
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られた交換カチオン、Si及びAlの測定値から、試料のSiO2/Al2O3比及び含有するアルミニウム質量を求めた。また、イオン交換サイトのカチオン含有量を以下の通りに算出した。
イオン交換サイトのカチオン含有量(%)=
[交換カチオンの含有量(mol)]/[アルミニウムの含有量(mol)]×n×100 (ただしnは交換カチオンの価数)
【0038】
<二酸化炭素及び窒素の有効吸着量、二酸化炭素選択性>
0.01kPa以下の減圧下、350℃で2時間の前処理を行った二酸化炭素分離剤を測定試料とし、測定装置として定容量式吸着測定装置(BELSORP MINI-X:マイクロトラック・ベル社製)を用いて、二酸化炭素及び窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0039】
二酸化炭素濃度20vol%、窒素濃度80vol%の燃焼排ガスを100kPaで吸着し、10kPaで脱着する圧力スイング吸着分離を想定して、25℃における吸着等温線から、平衡圧力20kPaと10kPaの二酸化炭素の吸着量の差分を求め、これを二酸化炭素の低圧有効吸着量とし、また、平衡圧力80kPaと10kPaの窒素の吸着量の差分を窒素の低圧有効吸着量とした。測定装置として定容量式吸着測定装置(BELSORP HP:マイクロトラック・ベル社製)を使用したこと以外は上記と同様の方法で、当該測定試料の25℃における吸着等温線を測定した。二酸化炭素濃度20vol%、窒素濃度80vol%の燃焼排ガスを500kPaで吸着し、10kPaで脱着する圧力スイング吸着分離を想定して、25℃における吸着等温線から、平衡圧力100kPaと10kPaの二酸化炭素の吸着量の差分を二酸化炭素の高圧有効吸着量とし、また、平衡圧力400kPaと10kPaの窒素の吸着量の差分を窒素の高圧有効吸着量とした。
【0040】
また、窒素の有効吸着量に対する二酸化炭素の有効吸着量の比を「二酸化炭素選択性」とし、以下の通りに算出した。
二酸化炭素選択性(低圧)
=[二酸化炭素の低圧有効吸着量]÷[窒素の低圧有効吸着量]
二酸化炭素選択性(高圧)
=[二酸化炭素の高圧有効吸着量]÷[窒素の高圧有効吸着量]
【0041】
実施例1
SiO/Al比5.6、イオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであるナトリウム型フォージャサイト(商品名:HSZ-320NAA、東ソー株式会社製)1gに対し、100mlの温純水に6.3gの塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、特級試薬)を溶かした溶液を流通させる処理を2回繰り返し、リチウムイオン交換を行った。これを濾過、温純水で洗浄、110℃で乾燥して本実施例の二酸化炭素分離剤を得た。該二酸化炭素分離剤のイオン交換サイトの21%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの79%)がリチウムカチオンであり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0042】
実施例2
500mlのポリ容器に、400mlの温純水に0.6gの塩化アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)を溶かした溶液を入れ、SiO/Al比5.6、イオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであるナトリウム型フォージャサイト(商品名:HSZ-320NAA、東ソー株式会社製)10gを添加して密封し、60℃に保持したウォーターバス中で200rpmで4時間震盪してアンモニウムイオン交換をおこなった。これを濾過、温純水で洗浄、110℃で乾燥して本実施例の二酸化炭素用分離剤を得た。該二酸化炭素用分離剤のイオン交換サイトの76%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの24%)がアンモニウムカチオンであり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0043】
実施例3
1.1gの塩化アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)を溶かした溶液を用いたこと以外は実施例2と同様な方法で、本実施例の二酸化炭素用分離剤を得た。該二酸化炭素用分離剤のイオン交換サイトの66%がナトリウムカチオン、残部がアンモニウムカチオン(イオン交換サイトの34%)であり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0044】
比較例1
SiO/Al比2.5、イオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであるナトリウム型フォージャサイト(商品名:F-9粉末、東ソー株式会社製)を用いて、二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0045】
比較例2
80mlのステンレス製カップに、44.2mlの純水、6.4gの48%水酸化ナトリウム溶液(東ソー株式会社製)を入れ、SiO/Al比5.6、イオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであるナトリウム型フォージャサイト(商品名:HSZ-320NAA、東ソー株式会社製)5gを添加して密封し、95℃に保持した乾燥機中で50rpmで94時間回転させ、フォージャサイトの合成をおこなった。これを濾過、温純水で洗浄、110℃で乾燥して本比較例の二酸化炭素分離剤を得た。該二酸化炭素用分離剤のイオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであり、SiO/Al比は3.5であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0046】
比較例3
SiO/Al比2.5、イオン交換サイトの5%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの95%)がカルシウムカチオンである、カルシウム型フォージャサイト(商品名:SA-600A、東ソー株式会社製)を用いて、二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。該二酸化炭素分離剤は、そのイオン交換サイトの5%がナトリウムカチオン、残部がカルシウムカチオン(イオン交換サイトの95%)であり、SiO/Al比は2.5であった。
【0047】
実施例4
11gの塩化アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)を溶かした溶液を用いたこと以外は実施例2と同様な方法で、本実施例の二酸化炭素分離剤を得た。該二酸化炭素分離剤のイオン交換サイトの30%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの70%)がアンモニウムカチオンであり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0048】
実施例5
SiO/Al比5.6、イオン交換サイトの100%がナトリウムカチオンであるナトリウム型フォージャサイト(商品名:HSZ-320NAA、東ソー株式会社製)1gに対し、100mlの温純水に18gの塩化ランタン7水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)を溶かした溶液を用いた流通法によるランタンイオン交換を2回行った。これを濾過、温純水で洗浄、110℃で乾燥して本実施例の二酸化炭素分離剤を得た。該二酸化炭素分離剤のイオン交換サイトの34%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの66%)がランタンカチオンであり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0049】
実施例6
実施例4で得られたイオン交換サイトの30%がナトリウムカチオン、残部がアンモニウムカチオンであり、SiO/Al比は5.6であるフォージャサイトを、550℃で1時間焼成してプロトン型の本実施例の二酸化炭素分離剤を得た。該二酸化炭素分離剤のイオン交換サイトの30%がナトリウムカチオン、残部(イオン交換サイトの70%)がプロトンであり、SiO/Al比は5.6であった。二酸化炭素、窒素の25℃における吸着等温線を測定した。
【0050】
二酸化炭素及び窒素の低圧有効吸着量、並びに、二酸化炭素選択性(低圧)を表1に、二酸化炭素及び窒素の高圧有効吸着量、並びに、二酸化炭素選択性(高圧)を表2に、それぞれ、示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウムカチオン等を含有し、かつSiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む本実施形態の二酸化炭素分離剤は、高い二酸化炭素有効吸着量と、窒素に対して、高い二酸化炭素選択性を有していた。
【0053】
【表2】
【0054】
表2から明らかなように、イオン交換サイトの20%以上90%以下にナトリウムカチオンを含有し、残部にリチウムカチオン等を含有し、かつSiO/Al比が4.5以上7以下のフォージャサイトを含む本実施形態の二酸化炭素吸着剤は、高い圧力においても、高い二酸化炭素有効吸着量と、窒素に対して、高い二酸化炭素選択性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本実施形態の二酸化炭素分離剤は、例えば、火力発電所や溶鉱炉の燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するなど、二酸化炭素と窒素を含有するガスからのPSAによる二酸化炭素の分離において、高い選択性で二酸化炭素を分離することができる二酸化炭素分離剤及びこれを含む二酸化炭素の分離方法、の少なくともいずれか、として有用である。