(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175264
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】作業支援装置、作業支援システム、作業支援プログラム、及び作業支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20231205BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20231205BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/04815
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087622
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和世
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA27
5E555BA02
5E555BA03
5E555BA05
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA10
5E555CA41
5E555CB21
5E555CB45
5E555DA11
5E555DA24
5E555DB53
5E555DC09
5E555DC35
5E555DC61
5E555DD01
5E555EA06
5E555EA11
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を使用する場合と同様の感覚で、作業訓練・作業シミュレーションを行うための作業支援装置、作業支援システム、作業支援プログラム、及び作業支援方法を提供すること。
【解決手段】空間情報生成手段と、指令処理手段と、を有する作業支援装置。空間情報生成手段は、対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、作業での取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を生成する。指令処理手段は、力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が仮想部材に接触したとき、作業ツールを通じての力覚の提示が可能な力覚提示装置へ、力覚の提示を指示する力覚指令を送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、作業での取扱対象となる仮想部材と、を含み、前記対象領域に対応づけられた力覚空間を生成する空間情報生成手段と、
前記力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が前記仮想部材に接触したとき、前記作業ツールを通じての力覚の提示が可能な力覚提示装置へ、力覚の提示を指示する力覚指令を送信する指令処理手段と、を有する、作業支援装置。
【請求項2】
前記空間情報生成手段は、
作業での取扱対象で前記実物体に含まれる実部材の取扱部位、及び前記仮想部材の取扱部位のうちの少なくとも一方に対応づけて、前記作業ツールの作用部を当該取扱部位に誘導するためのガイドを、前記力覚空間に生成するものである、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記空間情報生成手段は、
作業での取扱対象で前記実物体に含まれる実部材の移動先、及び前記仮想部材の移動先のうちの少なくとも一方に対応づけて、前記作業ツールの作用部を当該移動先に誘導するためのガイドを、前記力覚空間に生成するものである、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記指令処理手段は、
前記作用部が前記ガイドの内側に入ると、前記ガイドの外側への前記作用部の移動に制限を加えるための誘導指令を前記力覚提示装置へ送信するものである、請求項2又は3に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記指令処理手段は、
前記ツール画像が前記仮想部材に接触したとき、前記仮想部材の硬さの情報を含む仮想部材データと、前記作業ツールの速度に係る情報を含むツールデータとに基づいて、前記作業ツールが受けると予測される反力を求め、求めた反力を示す情報を前記力覚指令に含めて前記力覚提示装置へ送信するものである、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記対象領域を撮像した画像に前記仮想部材を組み込んで表示用の拡張現実画像を生成する画像生成手段をさらに有する、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記画像生成手段は、
前記作業ツールに前記仮想部材を捕捉させるための捕捉条件を満たしてから、前記作業ツールが前記仮想部材を捕捉している状態が解除される解除条件を満たすまでの間、生成する前記拡張現実画像における前記仮想部材を前記作業ツールの移動に追従させるものである、請求項6に記載の作業支援装置。
【請求項8】
前記画像生成手段は、
前記作業ツールに前記仮想部材を捕捉させるための捕捉条件を満たしたとき、前記仮想部材の移動先に強調画像を表示させるものである、請求項6に記載の作業支援装置。
【請求項9】
請求項6に記載の作業支援装置と、
前記対象領域を撮像する撮像装置と、
前記拡張現実画像を表示する表示装置と、
前記表示装置に表示された前記拡張現実画像を反射する調整ミラーと、
前記調整ミラーにおいて反射した像を写す視認用ミラーと、を有する、作業支援システム。
【請求項10】
右目用に設けられる前記撮像装置、前記表示装置、前記調整ミラー、及び前記視認用ミラーと、左目用に設けられる前記撮像装置、前記表示装置、前記調整ミラー、及び前記視認用ミラーと、を有し、
右目用の前記表示装置、前記調整ミラー、及び前記視認用ミラーと、左目用の前記表示装置、前記調整ミラー、及び前記視認用ミラーとは、前記対象領域を中心として左右対称に配置されている、請求項9に記載の作業支援システム。
【請求項11】
対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を生成する空間情報生成手段、
及び、前記力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が前記仮想部材に接触したとき、前記作業ツールを介しての力覚の提示が可能な力覚提示装置へ、力覚の提示を指示する力覚指令を送信する指令処理手段、として作業支援装置に搭載されたコンピュータを機能させるための、作業支援プログラム。
【請求項12】
対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を支援処理部が生成し、
前記力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が前記仮想部材に接触したとき、前記作業ツールを介しての力覚の提示が可能な力覚提示装置へ、力覚の提示を指示する力覚指令を支援処理部が送信する、作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の訓練等を支援する作業支援装置、作業支援システム、作業支援プログラム、及び作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業、機器のメンテナンス業、医療などの現場では、熟練の作業者等と、比較的経験の浅い作業者等との間の熟練度に大きな開きがある。そのため、熟練者不足を解消すべく、従来から、未習熟の作業者の作業習熟を支援するデバイスが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の作業支援装置は、振動や音の強弱、あるいは矢印の態様などにより、作業の実情を作業者へ伝達し、熟練作業者の習熟度に近づけようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実物体だけを用いた作業訓練では、実物体又はこれと組み合わせる機器等を消耗する可能性がある。また、実物体を用い、訓練を兼ねて種々の作業を行うと、品質の不十分な製品の製造や、質の伴わないメンテナンスなどに繋がるおそれがある。したがって、部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を用いる場合と同様の感覚で、仮想的な部材を用いた作業訓練・作業シミュレーションを実現できる環境が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業支援装置は、対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、作業での取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を生成する空間情報生成手段と、力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が仮想部材に接触したとき、作業ツールを通じての力覚の提示が可能な力覚提示装置へ、力覚の提示を指示する力覚指令を送信する指令処理手段と、を有するものである。
【0006】
本発明の一態様に係る作業支援システムは、上記の作業支援装置と、対象領域を撮像する撮像装置と、拡張現実画像を表示する表示装置と、表示装置に表示された拡張現実画像を反射する調整ミラーと、調整ミラーにおいて反射した像を写す視認用ミラーと、を有し、作業支援装置は、対象領域を撮像した画像に仮想部材を組み込んで表示用の拡張現実画像を生成する画像生成手段をさらに有するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る作業支援プログラムは、対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を生成する空間情報生成手段、及び、力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が仮想部材に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を力覚提示装置へ送信する指令処理手段、として作業支援装置に搭載されたコンピュータを機能させるためのものである。
【0008】
本発明の一態様に係る作業支援方法は、対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、取扱対象となる仮想部材と、を含み、対象領域に対応づけられた力覚空間を支援処理部が生成し、力覚空間において、実物体としての作業ツールが画像化されたツール画像が仮想部材に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を支援処理部が力覚提示装置へ送信するようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、力覚空間において、作業ツールに対応するツール画像が仮想部材に接触したとき、力覚提示装置へ力覚指令を送信する。そのため、ユーザが作業ツールを操作している状況下で、ツール画像が仮想部材に接触したとき、実在する部材と同様の反力等をユーザに伝達することができる。したがって、部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を使用する場合と同様の感覚で、作業訓練・作業シミュレーションを行うことのできる環境の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る作業支援システム及びその周辺構成の概要を例示した模式図である。
【
図2】
図1の作業支援装置の機能的構成及び周辺構成を例示したブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1の実施例に係り、視認用ミラーに映る拡張現実画像と現実世界とがシームレスに繋がっている様子を例示した説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態1の実施例に係る、作業対象の実物体及びその周辺を例示した斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1の実施例に係り、力覚提示装置及び作業対象の外観例と共に、力覚提示装置の座標系と作業対象の座標系とを例示した説明図である。
【
図6】
図3のように捕捉した実部材を、作業ツールによって移動させている様子を例示した説明図である。
【
図7】
図6の状態から、実部材が移動先の穴に差し込まれた様子を例示した説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1の実施例に係り、作業ツールによって仮想部材を捕捉した状態を例示した説明図である。
【
図9】
図8のように捕捉した仮想部材を、作業ツールによって移動させている様子を例示した説明図である。
【
図10】
図9の状態から、仮想部材が移動先の穴に差し込まれた様子を例示した説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る作業支援方法のうち、指令処理手段による処理を中心に例示したフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態2における力覚空間に生成される出現領域を例示した説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態2における力覚空間に生成される、実部材対応の捕捉ガイドを例示した説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態2における力覚空間に生成される、実部材対応の裁置ガイドを例示した説明図である。
【
図15】本発明の実施の形態2における力覚空間に生成される、仮想部材対応の捕捉ガイドを例示した説明図である。
【
図16】本発明の実施の形態2における力覚空間に生成される、仮想部材対応の裁置ガイドを例示した説明図である。
【
図17】本発明の実施の形態2に係る作業支援方法のうち、指令処理手段による処理を中心に例示したフローチャートである。
【
図18】
図17の処理に紐付く、実部材又は仮想部材が捕捉される前の誘導処理を例示したフローチャートである。
【
図19】
図17の処理に紐付く、実部材が穴に差し込まれる前の誘導処理を例示したフローチャートである。
【
図20】
図17の処理に紐付く、仮想部材が穴に差し込まれる前の誘導処理を例示したフローチャートである。
【
図21】本発明の実施の形態3に係る作業支援装置の機能的構成及び周辺構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1~
図10に基づき、本発明の実施の形態1における作業支援システム100及びその周辺構成について説明する。なお、各図では、煩雑化を避けるため、適宜符号の一部を省略している。まず、
図1を参照し、作業支援システム100の全体的な構成例について説明する。
【0012】
図1に示すように、作業支援システム100は、作業支援装置10と、ユーザの右目1Rに画像を提供するための撮像表示ユニット20Rと、ユーザの左目1Lに画像を提供するための撮像表示ユニット20Lと、により構成されている。作業支援装置10は、ユーザによる作業訓練又は作業シミュレーションなどを支援するものであり、PC(Personal Computer)などにより構成される。PCには、デスクトップ型PCの他、ノートPC、タブレットPCなども含まれる。
【0013】
撮像表示ユニット20Rと撮像表示ユニット20Lとは、同様の構成部材の組み合わせからなり、
図1の例のように、これらの各構成部材は、対象領域を中心として対称的に配置される。撮像表示ユニット20R及び撮像表示ユニット20Lは、それぞれ、撮像用ミラー21と、撮像装置22と、表示装置25と、調整ミラー26と、視認用ミラー27と、を有している。すなわち、右目用の撮像用ミラー21と、左目用の撮像用ミラー21とは、対象領域を中心として左右対称に配置される。また、右目用の表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27と、左目用の表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27とは、対象領域を中心として左右対称に配置される。また、
【0014】
撮像用ミラー21は、撮像装置22に撮像させたい領域の像を反射させ、撮像装置22に提供するよう配置された鏡である。撮像装置22は、例えばデジタルハイビジョンビデオカメラからなり、撮像用ミラー21で反射した像を撮像するよう配置されている。すなわち、撮像装置22は、撮像用ミラー21を介して、作業対象80を含む対象領域の画像を撮像するように配置されている。撮像装置22は、撮像した画像の情報である実画像データを作業支援装置10へ送信するようになっている。
【0015】
表示装置25は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、作業支援装置10により制御され、種々の情報を表示するものである。調整ミラー26は、表示装置25に表示された画像を視認用ミラー27に向けて反射するよう配置されている。視認用ミラー27は、調整ミラー26において反射した像を写す全反射ミラーである。かかる構成により、表示装置25に表示された画像が調整ミラー26と視認用ミラー27とで反射される。ユーザは、視認用ミラー27を見ることにより、表示装置25に表示された画像を間接的に視認することができる。
【0016】
作業支援システム100は、ユーザの目線の位置を定めるための位置決め具(図示せず)を有している。ユーザは、額を位置決め具に当てる等により、右目1Rが撮像表示ユニット20Rの視認用ミラー27に対向し、かつ左目1Lが撮像表示ユニット20Lの視認用ミラー27に対向するように位置決めを行う。なお、
図1では、ユーザの右目1R及び左目1Lを模式的に例示している。
【0017】
図1では、作業対象80として、ユーザにより作業ツール58を介して取り扱われる実在の部材である実部材81と、実部材81をもとに作られる仮想的な部材であり、作業ツール58を介しての取扱が可能な仮想部材82と、実部材81及び仮想部材82に係る作業に関連する実在の部材である関連部材85と、を例示している。関連部材85は、例えば、実部材81又は仮想部材82が取り外されたり取り付けられたりするものである。仮想部材82は、実在するものではなく、表示装置25に表示される拡張現実画像に含まれ、視認用ミラー27を介して視認されるものである。そのため、作業対象80を直接的に見た場合、ユーザ等は仮想部材82を視認することができない。
【0018】
図1に例示する力覚提示装置50は、本体部51と、水平駆動部52と、駆動機構部53と、制御部54と、アーム部55と、関節部56と、作業ツール58と、検出処理部59(
図2参照)と、を有している。本体部51は、力覚提示装置50の土台となる部分である。水平駆動部52は、本体部51に連結されており、本体部51を中心とした水平方向の回転が可能となっている。アーム部55は、水平駆動部52に連結されており、その連結箇所を中心として回動可能となっている。
図1等では、1つの関節部分をもつアーム部55を例示しているが、これに限らず、アーム部55の構造は、作業の種類や与えたい力覚などに応じ、適宜変更するとよい。
【0019】
駆動機構部53は、例えばモータを含んで構成され、制御部54の指令により、水平駆動部52、アーム部55、及び作業ツール58を介してユーザに、仮想部材82に係る力覚を提示するものである。制御部54は、作業支援装置10との連携により、駆動機構部53の動作を制御するものである。より具体的に、制御部54は、支援処理部12からの指令に応じて、あるいは自身の判定処理に基づいて駆動機構部53を動作させる。制御部54は、メモリなどの記憶手段と、CPUなどの演算手段とを含んで構成される。記憶手段には、演算手段の動作用のプログラムが格納される。関節部56は、アーム部55の先端部に作業ツール58を連結するものである。
【0020】
作業ツール58は、ユーザの手で操作される部材であり、実部材81に対する作業、及び仮想部材82に対する仮想的な作業を行うためのツールである。作業ツール58は、関節部56を支点とした自在な動きが可能となっている。作業ツール58には、作業での取扱対象となる実部材81の取扱部位、及び作業での取扱対象となる仮想部材82の取扱部位に作用する作用部5が設けられている。取扱部位とは、作業ツール58によって取り扱われる部位である。
【0021】
作用部5は、実部材81又は仮想部材82を捕捉したり、移動させたり、穴などから取り外したり、取り付けたり、他の部材と連結させたりするための構成であり、作業内容に応じて、動作内容及び先端部の構造等を変更することができる。検出処理部59は、例えばエンコーダからなり、6軸力覚センサなどの検出手段と、検出手段によって検出した情報を電気信号として出力する出力処理手段と、を含む。
【0022】
本実施の形態1において、検出処理部59は、作業ツール58の先端近傍又は関節部56などに配設され、作業ツール58の位置及び向き(姿勢・角度)などを示すツールデータを制御部54へ出力する。制御部54は、検出処理部59から出力されたツールデータを作業支援装置10へ送信する。なお、力覚センサとは、複数の向きに作用する力やトルクの大きさを検出するセンサであり、6軸力覚センサとは、垂直な3軸方向に働く力と、各軸周りのモーメントとを検出するセンサである。
【0023】
次に、
図2を参照して、作業支援装置10の機能的構成を中心に、作業支援装置10と力覚提示装置50との連携処理等について説明する。
図2に示すように、作業支援装置10は、通信部11と、支援処理部12と、記憶部13と、を含む。通信部11は、撮像装置22、表示装置25、及び力覚提示装置50などとの間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。通信部11は、撮像装置22、表示装置25、及び力覚提示装置50などとの間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。
【0024】
記憶部13には、作業支援プログラム13pなどの支援処理部12の動作プログラムの他、ツールデータなどの種々の情報が記憶される。記憶部13には、現実世界に存在する対象領域に配置される実物体の情報である実物体データ、及び仮想現実空間に存在させる仮想物体の情報である仮想物体データが、予め格納される。実物体データは、実部材81及び関連部材85の形状、硬さ、重さ、位置などの情報を含む。仮想物体データは、仮想部材82の形状、硬さ、重さ、位置などの情報を含む。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、SSD(Solid State Drive)、又はHDD(Hard Disk Drive)などにより構成することができる。
【0025】
支援処理部12は、取得処理手段12aと、空間情報生成手段12bと、指令処理手段12cと、画像生成手段12dと、表示処理手段12eと、を有している。取得処理手段12aは、通信部11を介して、撮像装置22から送信される実画像データを取得し、記憶部13に記憶させる。取得処理手段12aは、通信部11を介して、力覚提示装置50からツールデータを取得し、記憶部13に記憶させる。
【0026】
空間情報生成手段12bは、対象領域に配置される実物体を画像化した実画像と、取扱対象となる仮想部材82と、を含み、対象領域に対応づけられた仮想的な空間の情報である力覚空間を生成するものである。より具体的に、空間情報生成手段12bは、実画像データから所定の実物体を抽出し、抽出した実物体に基づく三次元画像(3D画像)である実物体画像を生成する。空間情報生成手段12bは、予め記憶された実物体データをもとに、実物体画像に実物体の硬さや重さ等の情報を付加してもよい。そして、空間情報生成手段12bは、生成した実物体画像と、仮想物体データに基づく仮想物体の三次元画像と、を組み合わせた力覚提示用の力覚空間を生成する。空間情報生成手段12bは、実物体としての作業ツール58の三次元画像であるツール画像を、力覚空間内に、ツールデータに基づいて生成してもよく、実画像データをもとに生成してもよく、両者を用いて生成してもよい。
【0027】
空間情報生成手段12bは、実画像データ内の実物体の位置変化に応じて、実物体画像の位置を変化させる。空間情報生成手段12bは、指令処理手段12cからの通知又は指令処理手段12cによるモード切替処理に応じ、適宜、力覚空間における仮想物体を移動させる機能を有している。
【0028】
指令処理手段12cは、力覚空間を監視し、実物体と仮想物体との接触や衝突などを管理する。指令処理手段12cは、力覚空間において、作業ツール58が画像化されたツール画像が仮想部材82に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を力覚提示装置50へ送信する。指令処理手段12cは、ツール画像が仮想部材82に接触したとき、仮想部材82の硬さの情報を含む仮想部材データと、作業ツール58の速度に係る情報を含むツールデータとに基づいて、作業ツール58が受けると予測される反力を求めでもよい。仮想部材データは、仮想部材82の表面粗さの情報を含んでいてもよい。そして、指令処理手段12cは、求めた反力を示す情報を力覚指令に含めて力覚提示装置50へ送信してもよい。
【0029】
指令処理手段12cは、作業ツール58の作用部5が実部材81を捕捉するための実捕捉条件を満たしたとき、実捕捉条件を満たした旨の実捕捉通知を力覚提示装置50へ送信する。力覚提示装置50は、実捕捉通知に応じて、実部材81を捕捉するための処理を実行する。指令処理手段12cは、作業ツール58の作用部5が仮想部材82を捕捉するための仮想捕捉条件を満たしたとき、仮想捕捉条件を満たした旨の仮想捕捉通知を力覚提示装置50へ送信すると共に、ツール画像の移動に合わせて仮想部材82を移動させる追従モードに設定する。また、指令処理手段12cは、作業ツール58が仮想部材82を捕捉している状態が解除される解除条件を満たしたとき、解除条件を満たした旨の解除通知を力覚提示装置50へ送信すると共に、追従モードを解除して通常モードに設定する。
【0030】
指令処理手段12cは、仮想捕捉条件を満たした旨の仮想捕捉通知を空間情報生成手段12b及び画像生成手段12dのうちの少なくとも一方へ出力するようにしてもよい。指令処理手段12cは、解除条件を満たした旨の解除通知を空間情報生成手段12b及び画像生成手段12dのうちの少なくとも一方へ出力するようにしてもよい。指令処理手段12cは、通常モードと追従モードとの切替処理の代わりに、上記各通知の出力処理を行ってもよい。
【0031】
画像生成手段12dは、対象領域を撮像した画像、つまり実画像データに、1又は複数の仮想部材82を組み込んで表示用の拡張現実画像を生成するものである。例えば、画像生成手段12dは、仮想部材82が作業ツール58によって捕捉されている状態であれば(例えば追従モードに設定されていれば)、生成する拡張現実画像における仮想部材82を作業ツール58の移動に追従させる。
【0032】
画像生成手段12dは、撮像表示ユニット20Rの撮像装置22から取得した実画像データをもとに、撮像表示ユニット20Rの表示装置25に表示させる拡張現実画像を生成する。画像生成手段12dは、撮像表示ユニット20Lの撮像装置22から取得した実画像データをもとに、撮像表示ユニット20Lの表示装置25に表示させる拡張現実画像を生成する。表示処理手段12eは、撮像表示ユニット20R及び撮像表示ユニット20Lのそれぞれの表示装置25に、画像生成手段12dにおいて生成された拡張現実画像を表示装置25に表示させる。
【0033】
支援処理部12は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各機能を実現させる作業支援プログラム13pとにより構成することができる。つまり、作業支援プログラム13pは、取得処理手段12a、空間情報生成手段12b、指令処理手段12c、画像生成手段12d、及び表示処理手段12eとして、作業支援装置10に搭載されたコンピュータを機能させるためのものである。なお、作業支援装置10は、例えば、キーボードと、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスとにより構成される入力部を含んでいてもよい。
【0034】
<実施例>
次に、
図3~
図10に基づき、作業支援システム100の具体的な実施例について説明する。
図3は、
図1に示した状況下で、ユーザの右目1Rがとらえる画像を例示したものである。なお、
図3には、作業ツール58によって実部材81を捕捉した状態(実部材81を捕捉可能な状態)を例示している。本実施例の構成は、
図1の模式図に対応しており、ユーザ(オペレータ)は、全反射鏡である視認用ミラー27の向こう側を見ることができない。
【0035】
ただし、表示装置25に表示され、調整ミラー26を介して視認用ミラー27に反射される画像と、撮像装置22とは、光学的に共役な位置関係にあるため、視認用ミラー27が透明なガラスであるかのような感覚で、ユーザに拡張現実画像(AR画像)を視認させることができる。つまり、表示装置25に表示された拡張現実画像は、調整ミラー26と視認用ミラー27とでの反射により、システム中央のエリアに表示され、その周囲に現実世界が見える状況となる。そして、
図3に示すように、視認用ミラー27と現実世界との境界において、視認用ミラー27に映る画像と周囲の現実世界とがシームレスに接続されるよう調整されている。ユーザは、視認用ミラー27において、自身の手と実物体の作業オブジェクトだけでなく、仮想オブジェクトも見ることができる。
【0036】
本実施例では、作業対象80として、
図3のような構成を採用している。すなわち、作業対象80は、円柱状のペグである実部材81と、実部材81と同型状のペグである仮想部材82と、ブロック状に形成され、実部材81又は仮想部材82の挿入用の穴85hが形成された2つの関連部材85とにより構成されている。本実施例の実部材81は、少なくとも上端部が磁石につく材料により形成されている。本実施例において、実部材81の取扱部位は、その上端部であり、仮想部材82の取扱部位も、その上端部である。もっとも、
図4及び
図5に例示するように、現実世界に仮想部材82は現れない。
【0037】
本実施例で紹介する作業は、右側の関連部材85の穴85hに挿入されている実部材81及び仮想部材82の全てを左側の関連部材85の穴85に移す、というものである。本実施例で用いた2つの関連部材81は、何れも、幅60mm、奥行き40mm、高さ10mmのブロックであり、直径5.5mmの穴85hが20mm間隔で6つ設けられている。初期状態において、右側の関連部材81には、3つの実部材81と3つの仮想部材82が刺さっている。実部材81は、直径は5mm、長さ20mmのペグであり、仮想部材82は、実部材81と同サイズに設定されている。
【0038】
図5等に例示する作業ツール50は、先端部に作用部5としての電磁石が取り付けられており、コイル5bに電流が流れると作用部5の捕捉部5aに磁力が発生する。作用部5は、導線などにより制御部54に接続されている。作用部5は、磁力が発生するオン状態のとき、捕捉部5aに実部材81を吸着させて捕捉することができる。また、作用部5は、実部材81が捕捉部5aに吸着されている状態で、オフ状態になると、捕捉部5aから実部材81を解放することができる。これにより、ユーザは、右側の関連部材85の穴85hに挿入された実部材81を作業ツール50の作用部5に吸着させ、左側の関連部材85の穴85hに挿入する、という作業を繰り返すことができる。
【0039】
また、作業支援装置10による画像処理により、ユーザは、仮想部材82についても視覚上、実部材81と同様に、右側の関連部材85から左側の関連部材85に移すことができる。そして、作業支援装置10は、力覚提示装置50との連携により、仮想部材82の移動作業時にも、実部材81の移動作業時と同様の力覚を作業ツール50に発生させることができる。
【0040】
ここで、本変形例における支援処理部12の一部の機能構成について具体的に説明する。指令処理手段12cは、ツールデータと、実画像データと、仮想物体データとをもとに、少なくとも関連部材85に対応する関連部材データと、実部材81に対応する実部材データと、仮想部材82に対応する仮想部材データとを含む情報である力覚空間を生成する。
【0041】
より具体的に、指令処理手段12cは、撮像装置22から送信される実画像データに画像処理を施し、関連部材85の周囲に配置された複数のマーカー95を検出する。そして、指令処理手段12cは、各マーカー95の位置及び向きを演算する。ここで、関連部材85と複数のマーカー95との相対位置は固定されているため、指令処理手段12cは、複数のマーカー95の位置及び向きに基づいて、関連部材85の位置及び向きの情報を求める。上記同様、指令処理手段12cは、複数のマーカー95の位置及び向きに基づいて、あるいは関連部材85の位置及び向きに基づいて、実部材81の位置及び向きの情報を求める。本実施例において、指令処理手段12cは、
図5に例示する対象座標系(x-y-z)により、実部材81及び関連部材85のそれぞれの位置及び向きを特定する。指令処理手段12cは、撮像装置22から実画像データを随時取得し、実部材81の移動に合わせ、リアルタイムで実部材81の位置及び向きの情報を更新する。
【0042】
また、指令処理手段12cは、力覚提示装置50から送信されるツールデータに基づいて、作業ツール58の特定箇所の位置及び向きの情報である特定位置データを求める。特定箇所としては、捕捉部5aの箇所、あるいは関節部56に対応する箇所などが想定される。ここで、力覚提示装置50は、
図5に例示する力覚座標系(x’-y’-z’)で作業ツール58の特定箇所の位置及び向きを管理している。そのため、指令処理手段12cは、ツールデータにおける特定箇所の位置及び向きの情報に、回転や平行移動等の座標変換処理を施すことにより、対象座標系(x-y-z)に変換した特定位置データを求める。指令処理手段12cは、力覚提示装置50からツールデータを随時取得し、作業ツール58の移動に合わせ、リアルタイムで特定位置データを更新する。
【0043】
指令処理手段12cは、ツール画像と仮想部材82との位置関係に基づいて、作業ツール58の作用部5が仮想部材82を捕捉するための仮想捕捉条件を満たすか否かを判定する。指令処理手段12cは、仮想捕捉条件を満たしたとき、ツール画像の移動に合わせて仮想部材82を移動させる追従モードに設定する。指令処理手段12cは、解除条件を満たしたとき、追従モードの設定を解除する。例えば、指令処理手段12cは、追従フラグを立てることにより追従モードの設定を行い、追従フラグを解除することにより通常モードに切り替える。
【0044】
画像生成手段12dは、追従モードに設定されている場合、生成する拡張現実画像における仮想部材82を作業ツール58の移動に追従させる。したがって、ユーザは、作業ツール58によって仮想部材82を捕捉した後、仮想部材82の移動が終わるまで、あるいは仮想部材82の解放を指示するまでの間、作業ツール58の移動と共に移動する仮想部材82を視認することができる。
【0045】
本実施例では、仮想部材82を目的の場所へ移動させる作業を例示している。かかる作業の場合、画像生成手段12dは、目的の場所の目印となる強調画像Kを拡張現実画像に含めてもよい。
図3の例において、画像生成手段12dは、仮想部材82の移動先(目的地)となる左側の関連部材85の穴85hの近傍に配置される強調画像Kを含む拡張現実画像を生成するとよい。強調画像Kとしては、後述する
図6等のように、穴85hの周囲に合わせた形状など、種々の態様が考えられる。いずれにせよ、強調画像Kは、関連部材85とは異なる色彩を採用する等により、視覚的に目立つようにするとよい。このように、表示処理手段12eが強調画像Kを含む拡張現実画像を表示装置25に表示させると、移動先の位置を強調することができるため、ユーザの作業性の向上を図ることができる。
【0046】
続いて、
図3、
図6~
図10、及び
図11のフローチャートを参照し、本実施の形態1の作業支援方法に係る作業支援装置10及び力覚提示装置50の動作について説明する。ここでは、実施例の構成を用い、支援処理部12が随時、ツールデータに基づく特定位置データと、実画像データに基づく実部材81及び関連部材85それぞれの位置及び向きの情報と、仮想物体データに基づく仮想部材82の位置及び向きの情報とを更新しているものとする。また、支援処理部12は随時、実部材81に対応する三次元画像と、仮想部材82に対応する三次元画像と、作業ツール58に対応する三次元画像であるツール画像とを含む力覚空間を更新しているものとする。以下、説明を簡略化するため、力覚空間に存在する実物体及び仮想物体の三次元画像についても、実部材81、仮想部材82、関連部材85、作業ツール58のように、そのものの名称を用いることがある。
【0047】
支援処理部12は、力覚空間における、作業ツール58と、実部材81、仮想部材82、及び関連部材85との位置関係を監視する(ステップS101)。支援処理部12は、実捕捉条件を満たすか、あるいは作業ツール58が仮想部材82に接触するまで待機する(ステップS102/No、ステップS106/No)。
【0048】
実捕捉条件は、例えば、捕捉部5aの先端と実部材81の上端との接触面積などを基準として設定される。接触面積を基準とする場合、接触面積が設定割合を超えたときに、実捕捉条件を満たすことになる。設定割合は任意に設定し、適宜変更することができる。例えば
図3のように、実部材81の上端面の大部分と、捕捉部aの先端面の大部分とが重なったとき、支援処理部12はステップS103の処理へ移行する。
図3では、実捕捉条件を具備したときに強調画像Kが表示される動作例を示している。これにより、ユーザは、一見して移動先を把握することができる。
【0049】
支援処理部12は、実捕捉条件を満たしたとき(ステップS102/Yes)、力覚提示装置50へ捕捉指令を送信する。力覚提示装置50の制御部54は、捕捉指令に応じて電磁石である作用部5に電流を流し、捕捉部5aに磁力を発生させる。これにより、実部材81が捕捉部5aに捕捉される。これにより、ユーザは、作業ツール58を上方へ移動させることにより、実部材81を穴85hから抜くことができ、
図6のように、作業ツール58と共に実部材81を移動させることができる。なお、
図6では、実部材81の移動中、強調画像Kが継続的に表示される例を示している(ステップS103)。
【0050】
支援処理部12は、実部材81に対する作業が終了となる実終了条件を満たすまで待機する(ステップS104/No)。実終了条件は、実部材81が関連部材85の指定の穴85hに挿入された、という条件に設定される。
【0051】
支援処理部12は、
図7のような状態となり、実終了条件を満たしたとき(ステップS104/Yes)、力覚提示装置50へ解除指令を送信する。力覚提示装置50の制御部54は、解除指令に応じて電磁石である作用部5への電流供給を停止し、実部材81が捕捉部5aから解放される。すなわち、作業ツール58を移動させても、実部材81が移動しない状態となる。したがって、ユーザは、次の作業に移ることができる(ステップS105)。
【0052】
支援処理部12は、力覚空間の監視を継続し(ステップS101)、右側の関連部材85に実部材81が残っている限り、ステップS102~S105の一連の処理を、ユーザによる作業ツール58を用いた作業に応じて実行する。例えば、支援処理部12は、左側へ移動させた実部材81の数を示すN(初期値=0)と、左側へ移動させた仮想部材82の数を示すM(初期値=0)とを管理する機能を有していてもよい。この場合、支援処理部12は、力覚提示装置50へ解除指令を送信したとき(ステップS105)、Nをインクリメントし(ステップS106)、Nが作業対象の実部材81の数であるSに到達したか否かを判定するとよい(ステップS107)。支援処理部12は、NがSに到達していなければ(ステップS107/No)、ステップS101の処理へ移行し、NがSに到達していれば(ステップS107/Yes)、Mが作業対象の仮想部材82の数であるTに到達したか否かを判定する(ステップS108)。支援処理部12は、MがTに到達していなければ(ステップS108/No)、ステップS101の処理へ移行し、MがTに到達していれば(ステップS108/Yes)、作業の終了を記録する(ステップS109)。
【0053】
支援処理部12は、作業の開始から終了までの時間を計時する機能を有していてもよく、この場合、支援処理部12は、作業の開始から終了までの経過時間を記録するようにしてもよい。作業支援装置10が音又は音声を報知する報知部を有する場合、支援処理部12は、作業が終了した際(ステップS108/Yes)、作業の終了を示す情報を報知部に報知させてもよい。
【0054】
一方、支援処理部12は、作業ツール58が仮想部材82に接触したとき(ステップS110/Yes)、力覚提示装置50へ力覚指令を送信する。力覚提示装置50の制御部54は、力覚指令に応じて駆動機構部53を動作させ、作業ツール58が実部材81に接触したときと同様の力覚を発生させる。これにより、ユーザは、作業ツール58が実部材81に接触したような感覚を覚える(ステップS111)。
【0055】
支援処理部12は、仮想部材82に接触した状態の作業ツール58が、仮想部材82の表面をスライドするように動作している場合、力覚指令を継続的に力覚提示装置50へ送信するようにしてもよい。支援処理部12は、作業ツール58が仮想部材82に接触した瞬間と、作業ツール58が仮想部材82に接触した状態でスライドしている場合とで、異なる反力データを含む力覚指令を送信してもよい。このようにすれば、より現実に近い力覚を、力覚提示装置50を介してユーザに提示することができる。
【0056】
支援処理部12は、作業ツール58の作用部5が仮想部材82を捕捉するための仮想捕捉条件を満たすか否かを判定する(ステップS112)。仮想捕捉条件は、例えば、捕捉部5aの先端面と仮想部材82の上端面との仮想的な接触面積などを基準として設定される。支援処理部12は、力覚空間におけるツール画像と仮想部材82の三次元画像とに基づいて、仮想的な接触面積を演算する。判定基準の閾値となる設定割合は、実捕捉条件と同様に設定され、適宜変更することができる。例えば
図8のような状態が、仮想捕捉条件を満たした状態に相当する。
図8では、仮想捕捉条件を具備したときに強調画像Kが表示される動作例を示している。
【0057】
支援処理部12は、仮想捕捉条件を満たさずに、作業ツール58が仮想部材82から離れた場合(ステップS112/No)、ステップS101の処理へ移行する。一方、支援処理部12は、仮想捕捉条件を満たしたとき(ステップS112/Yes)、作業ツール58の移動に合わせて仮想部材82を移動させる追従モードに設定する。このとき、支援処理部12は、力覚提示装置50に捕捉通知を送信し、力覚提示装置50の報知部(図示せず)から音又は音声を報知させるようにしてもよい。なお、仮想部材82の捕捉に磁力は必要ないため、制御部54は、作用部5のオフ状態を継続する。支援処理部12は、追従モードにおいて、拡張現実画像における仮想部材82を作業ツール58の移動に追従させる。より具体的に、支援処理部12は、ユーザが
図8のような状態から作業ツール58を上方へ移動させると、
図9のように、視認用ミラー27に映る仮想部材82が作業ツール58と共に移動するように拡張現実画像を生成する。支援処理部12は、力覚空間における仮想部材82も作業ツール58と共に移動させる。なお、
図9では、仮想部材82の移動中、強調画像Kが継続的に表示される例を示している(ステップS113)。
【0058】
なお、作業ツール58が仮想部材82に接触すると同時に仮想捕捉条件を満たした場合(ステップS110/Yes、ステップS112/Yes)、支援処理部12は、力覚指令を力覚提示装置50へ送信すると共に、追従モードに設定する。
【0059】
支援処理部12は、解除条件を満たすまで追従モードの状態を維持し(ステップS114/No)、解除条件を満たしたとき(ステップS114/Yes)、解除条件を満たした旨の解除通知を力覚提示装置50へ送信すると共に追従モードを解除する(ステップS115)。
【0060】
支援処理部12は、力覚空間の監視を継続し(ステップS101)、右側の関連部材85に仮想部材82が残っている限り、ステップS110~S115の一連の処理を、ユーザによる作業ツール58を用いた作業に応じて実行する。すなわち、例えば支援処理部12は、追従モードを解除したとき(ステップS115)、Mをインクリメントし(ステップS116)、ステップ107の処理へ移行する。
【0061】
上記の動作説明は、
図11に示すステップ番号の順に説明したが、各工程の順序は、作業支援方法の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。本実施例では、実部材81が3つ(S=3)で、仮想部材82も3つ(T=3)の場合を例示したが、これらはあくまでも例示である。つまり、実部材81の数と仮想部材82の数とは異なっていてもよく、実部材81は、2つ以下又は4つ以上であってもよく、仮想部材82は、1つ、2つ、又は4つ以上であってもよい。なお、支援処理部12は、上述した種々の条件を満たしたときに、該条件の具備を示す音又は音声を報知部に報知させてもよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態1における作業支援装置10は、力覚空間において、作業ツール58に対応するツール画像が仮想部材82に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を力覚提示装置50へ送信する。そのため、ユーザが作業ツール58を操作している状況下で、ツール画像が仮想部材82に接触したとき、実在する部材と同様の反力等をユーザに伝達することができる。したがって、部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を使用する場合と同様の感覚で、作業訓練・作業シミュレーションを行うことのできる環境の提供が可能となる。
【0063】
すなわち、ある製品等について、全ての部品が揃っていない状況下であっても、作業支援装置10及び作業支援システム100によれば、仮想部材82で部品を代用することにより、早期のタスク訓練を行うことができる。また、製品の部品等の設計段階であっても、作業支援装置10及び作業支援システム100によれば、部品等の代用として仮想部材82を用いることにより、例えば、製品の組み立てやすさや、メンテナンスのしやすさ等を確認しつつ、適宜設計変更することが可能となる。
【0064】
また、作業支援装置10は、対象領域を撮像した画像に仮想部材82を組み込んで表示用の拡張現実画像を生成する画像生成手段12eを有している。そのため、画像生成手段12eが生成した画像を撮像表示ユニット20R及び撮像表示ユニット20Lに適用することにより、視認用ミラー27に映る画像と周囲の現実世界とがシームレスに接続された視認環境を提供することができる。よって、ユーザは、円滑な作業を実施することができる。
【0065】
ところで、実施例の構成により、ペグインホールタスクを複数人に実行してもらった結果、取扱対象が実部材81であっても、仮想部材82であっても、オペレーターがこれらを区別なく取り扱えることが確認できた。具体的な実験は、実物体と仮想物体とが混在する環境下で、右側のブロック(関連部材85)の6つのペグ(実部材81・仮想部材82)を所定の順序で左側のブロック(関連部材85)へ移す作業により行った。その際、1つ目のペグを吸着してから6つ目のペグの挿入が完了するまでの経過時間を、ペグごとの吸着から挿入までの時間(個別時間)と共に計時した。複数人による複数回の実験結果によると、実部材81のペグの個別時間と、仮想部材82のペグの個別時間とにほとんど差がないことを確認できた。このことから、実部材81と仮想部材82との双方が、高解像度の立体画像によって正しい位置に提示され、オペレーターがそれらの位置と姿勢を正確に認識していることがわかる。すなわち、実部材81と仮想部材82に対する作業のしやすさは、ほぼ同じであると推認される。
【0066】
したがって、本実施の形態1の作業支援システム100を用いれば、仮想物体を用いた作業訓練及び作業シミュレーションを、実物体を用いた場合と同様に行うことができる。そして、作業訓練又は作業シミュレーションのときの力覚と、実物体を用いて作業を行うときの力覚とが同程度となるよう調整されているため、実際の作業への移行も円滑に行うことができる。
【0067】
画像生成手段12eは、捕捉条件を満たしてから解除条件を満たすまでの間、生成する拡張現実画像における仮想部材82を作業ツール58の移動に追従させる。すなわち、拡張現実画像では、作業ツール58によって捕捉された仮想部材82が、実部材81が捕捉された場合と同様に移動するため、ユーザは、視覚上、仮想部材82を実部材81と同様に移動させることができる。
【0068】
画像生成手段12eは、実捕捉条件を満たしたとき、実部材81の移動先に強調画像Kを表示させるようにしてもよい。同様に、画像生成手段12eは、仮想捕捉条件を満たしたとき、仮想部材82の移動先に強調画像Kを表示させるようにしてもよい。このようにすれば、実部材81又は仮想部材82を捕捉したタイミングで、移動先の位置を一見して把握することができるため、ユーザの作業性の向上を図ることができる。
【0069】
作業支援システム100は、右目用に設けられる撮像用ミラー21、撮像装置22、表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27と、左目用に設けられる撮像用ミラー21、撮像装置22、表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27と、を有している。そして、右目用の表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27と、左目用の表示装置25、調整ミラー26、及び視認用ミラー27とは、対象領域を中心として左右対称に配置されている。右目用の撮像用ミラー21及び撮像装置22の光軸と、左目用の撮像用ミラー21及び撮像装置22の光軸とも、対象領域を中心として左右対称に配置されている。すなわち、作業支援システム100は、AR技術に基づく両眼立体映像提示ディスプレイシステムを採用することにより、画像の奥行きをリアルに表現することができるため、ユーザの操作性を高めることができる。もっとも、作業支援システム100は、撮像用ミラー21と、撮像装置22と、表示装置25と、調整ミラー26と、視認用ミラー27とを、1つずつ有する構成を採ってもよいが、ユーザの視認性の観点からは、右目用と左目用とを別々に設ける方が好ましい。
【0070】
実施の形態2.
図12~
図20を参照して、本発明の実施の形態2に係る作業支援装置及び作業支援システムの構成例及び動作例について説明する。作業支援システム及びその周辺構成は、
図1~
図10に例示する実施の形態1の構成と同様であるため、同等の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明は省略する。
【0071】
本実施の形態2における空間情報生成手段12bは、実部材81の取扱部位、及び仮想部材82の取扱部位のうちの少なくとも一方に対応づけて、作業ツール58の作用部5を当該取扱部位に誘導するためのガイドを力覚空間に生成するようになっている。また、空間情報生成手段12bは、実部材81の移動先、及び仮想部材82の移動先のうちの少なくとも一方に対応づけて、作業ツール58の作用部5を当該移動先に誘導するためのガイドを力覚空間に生成するようになっている。そして、指令処理手段12は、作用部5がガイドの内側に入ると、ガイドの外側への作用部5の移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信するようになっている。
【0072】
図12~
図16を参照し、本実施の形態2のガイドに関する構成について具体的に説明する。
図12~
図16は、力覚空間の各部材を例示した説明図である。
図12に例示するように、空間情報生成手段12bは、取扱対象の実部材81又は仮想部材82の端部から一定の長さ延伸させた柱状の出現領域Eを力覚空間に生成する。出現領域Eは、後述する捕捉ガイドG1又は捕捉ガイドG2を出現させる契機となるものである。また、空間情報生成手段12bは、力覚空間における、実部材81又は仮想部材82の挿入対象となる穴85hの延長線上に、柱状の出現領域Fを生成する。出現領域Fは、後述する裁置ガイドH1又は裁置ガイドH2を出現させる契機となるものである。
図12には、円柱状の出現領域E及び出現領域Fを例示したが、出現領域E及び出現領域Fの形状としては、角柱状など、種々の形状を採用することができる。
【0073】
空間情報生成手段12bは、捕捉部5aが実部材81に紐付く出現領域Eと交わったとき、
図13の例のように、実部材81の取扱部位に向けて先細りとなるように形成された漏斗状の捕捉ガイドG1を生成して力覚空間に出現させる。本実施の形態2において、捕捉ガイドG1は、捕捉部5aが出現領域Eと交わると、捕捉部5aが必然的に内側に入るよう形成されている。そして、指令処理手段12cは、捕捉ガイドG1の外側への捕捉部5aの移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。
【0074】
空間情報生成手段12bは、捕捉部5aが実部材81に紐付く出現領域Fと交わったとき、
図14の例のように、移動先である穴85hに向けて先細りとなるように形成された漏斗状の裁置ガイドH1を生成して力覚空間に出現させる。本実施の形態2において、裁置ガイドH1は、捕捉部5aが出現領域Fと交わると、捕捉部5aが必然的に内側に入るよう形成されている。そして、指令処理手段12cは、裁置ガイドH1の外側への捕捉部5aの移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。
【0075】
空間情報生成手段12bは、捕捉部5aが仮想部材82に紐付く出現領域Eと交わったとき、
図15の例のように、仮想部材82の取扱部位に向けて先細りとなるように形成された漏斗状の捕捉ガイドG2を生成して力覚空間に出現させる。本実施の形態2において、捕捉ガイドG2は、捕捉部5aが出現領域Eと交わると、捕捉部5aが必然的に内側に入るよう形成されている。そして、指令処理手段12cは、捕捉ガイドG2の外側への捕捉部5aの移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。
【0076】
空間情報生成手段12bは、捕捉部5aが仮想部材82に紐付く出現領域Fと交わったとき、
図16の例のように、移動先である穴85hに向けて先細りとなるように形成された漏斗状の裁置ガイドH2を生成して力覚空間に出現させる。本実施の形態2において、裁置ガイドH2は、捕捉部5aが出現領域Fと交わると、捕捉部5aが必然的に内側に入るよう形成されている。そして、指令処理手段12cは、裁置ガイドH2の外側への捕捉部5aの移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。なお、各出現領域及び各ガイドの形状、位置、及びサイズを示す情報は、記憶部13に格納されている。
【0077】
次いで、
図17~
図20のフローチャートを参照し、本実施の形態2の作業支援方法に係る作業支援装置10及び力覚提示装置50の動作について説明する。
図11の各工程と同様の工程については同一のステップ番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。支援処理部12は、力覚空間に、出現領域E及び出現領域Fを生成しているものとする。もっとも、支援処理部12は、実部材81又は仮想部材82が捕捉された以降の任意のタイミングで出現領域Fを生成してもよい。
【0078】
支援処理部12は、力覚空間を監視し(ステップS101)、捕捉部5aが、実部材81もしくは仮想部材82に紐付く出現領域Eと交わるまで待機する(ステップS201/No、ステップS204/No)。支援処理部12は、捕捉部5aが実部材81に紐付く出現領域Eと交わると(ステップS201/Yes)、捕捉ガイドG1を出現させる(ステップS202)。そして、支援処理部12は、例えば、捕捉ガイドG1の位置、形状、及び大きさを示すガイド情報を含む誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。力覚提示装置58は、該誘導指令に応じて、捕捉ガイドG1の外郭の外側に、捕捉部5aが現状以上に移動しないよう、作業ツール58の動きに制限をかける。したがって、捕捉部5aの下端部は、必然的に実部材81の先端部に当接する(ステップS203)。すなわち、支援処理部12は、ステップS102の処理へ移行する。
【0079】
支援処理部12は、捕捉部5aが仮想部材82に紐付く出現領域Eと交わると(ステップS204/Yes)、捕捉ガイドG2を出現させる(ステップS205)。そして、支援処理部12は、例えば、捕捉ガイドG2の位置、形状、及び大きさを示すガイド情報を含む誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。力覚提示装置58は、該誘導指令に応じて、捕捉ガイドG2の外郭の外側に、捕捉部5aが現状以上に移動しないよう、作業ツール58の動きに制限をかける。したがって、捕捉部5aの下端部は、必然的に仮想部材82の先端部に当接する状態となる(ステップS206)。すなわち、支援処理部12は、ステップS112の処理へ移行する。
【0080】
ステップS103の処理を経て待機した後(ステップS301/No)、支援処理部12は、捕捉部5aが、実部材81に対応する穴85hに紐付く出現領域Fと交わると(ステップS301/Yes)、裁置ガイドH1を出現させる(ステップS302)。そして、支援処理部12は、例えば、裁置ガイドH1の位置、形状、及び大きさを示すガイド情報を含む誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。力覚提示装置58は、該誘導指令に応じて、裁置ガイドH1の外郭の外側に、捕捉部5aが現状以上に移動しないよう、作業ツール58の動きに制限をかける。したがって、実部材81の下端部は、必然的に穴85hの位置に収束し、挿入される(ステップS303)。
【0081】
ステップS113の処理を経て待機した後(ステップS401/No)、支援処理部12は、捕捉部5aが、仮想部材82に対応する穴85hに紐付く出現領域Fと交わると(ステップS401/Yes)、裁置ガイドH2を出現させる(ステップS402)。そして、支援処理部12は、例えば、裁置ガイドH2の位置、形状、及び大きさを示すガイド情報を含む誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。力覚提示装置58は、該誘導指令に応じて、裁置ガイドH2の外郭の外側に、捕捉部5aが現状以上に移動しないよう、作業ツール58の動きに制限をかける。したがって、仮想部材82の下端部は、必然的に穴85hの位置に収束し、挿入された状態となる(ステップS403)。
【0082】
ところで、各図では、捕捉ガイドG1及び裁置ガイドH1が四角錐状又は四角錐台状に形成される例を示したが、これに限定されない。例えば、捕捉ガイドG1及び裁置ガイドH1は、他の角錐状または角錐台状に形成されてもよく、円錐状または円錐台状に形成されてもよい。また、各図では、捕捉ガイドG2及び裁置ガイドH2が円錐状又は円錐台状に形成される例を示したが、これに限定されない。例えば、捕捉ガイドG2及び裁置ガイドH2は、角錐状または角錐台状に形成されてもよい。上記の説明では、捕捉部5aが出現領域と交わったとき、対応するガイドの内側に必然的に入る例を示したが、これに限定されない。捕捉部5aが出現領域と交わったとき、指令処理手段12cもしくは制御部54が、対応するガイドの内側に捕捉部5aを移動させるための処理を行ってもよい。出現領域E及び出現領域Fの位置、形状、及び大きさは、
図12の例に限定されない。出現領域E及び出現領域Fは、各ガイドとの関係で適切な位置、形状、及び大きさとなるように調整するとよい。他の構成、代替構成、及び動作内容は、実施の形態1及び2と同様である。
【0083】
以上のように、本実施の形態2における作業支援装置10は、力覚空間において、作業ツール58に対応するツール画像が仮想部材82に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を力覚提示装置50へ送信する。そのため、ユーザが作業ツール58を操作している状況下で、ツール画像が仮想部材82に接触したとき、実在する部材と同様の反力等をユーザに伝達することができる。よって、部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を使用する場合と同様の感覚で、作業訓練・作業シミュレーションを行うことのできる環境の提供が可能となる。
【0084】
また、本実施の形態2における空間情報生成手段12bは、実部材81及び仮想部材82の取扱部位のそれぞれに対応づけて、作業ツール58の作用部5を当該取扱部位に誘導するためのガイドを力覚空間に生成する。そして、指令処理手段12は、ガイドの外側への作用部5の移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。よって、力覚提示装置58による動作誘導により、作用部5が実部材81又は仮想部材82を必然的に捕捉する状態となるため、ユーザの作業容易性を高めると共に、作業効率の向上を図ることができる。
【0085】
また、空間情報生成手段12bは、実部材81の移動先、及び仮想部材82の移動先のそれぞれに対応づけて、作業ツール58の作用部5を当該移動先に誘導するためのガイドを力覚空間に生成する。そして、指令処理手段12は、ガイドの外側への作用部5の移動に制限を加えるための誘導指令を力覚提示装置58へ送信する。よって、力覚提示装置58による動作誘導により、関連部材85における移動目的の箇所に、実部材81又は仮想部材82を裁置することができるため、ユーザの作業容易性を高めると共に、作業効率の向上を図ることができる。
【0086】
上記の通り、本実施の形態2の作業支援装置10及び作業支援システム100によれば、作業対象が仮想物体であるか、実物体であるかの区別なく、ユーザの好適な動作を誘導することができるため、ユーザビリティーの向上を図ることができる。上記の例では、空間情報生成手段12bが、捕捉ガイドG1、捕捉ガイドG2、裁置ガイドH1、及び裁置ガイドH2の全てを生成する例を示したが、これに限定されない。例えば、空間情報生成手段12bは、これら全てのうちの任意の3つ、2つ、又は1つを生成してもよい。指令処理手段12cは、空間情報生成手段12bによって生成されたガイドに係る誘導指令を力覚提示装置58へ送信するとよい。他の効果等については、前述した実施の形態1と同様である。
【0087】
ところで、上記の説明では、各ガイドの出現の契機となる出現領域が生成される例を示したが、これに限定されない。支援処理部12は、出現領域の代わりに、各ガイドをそのまま用いてもよい。つまり、支援処理部12は、捕捉部5aが各ガイドと交わったときに、該ガイドに係る誘導指令を力覚提示装置58へ送信してもよい。なお、上記説明では、各ガイドが拡張現実画像に表示されない前提となっているが、支援処理部12は、例えば、機能を発揮しているガイドについては、強調画像Kと同様、拡張現実画像に表示させてもよい。
【0088】
実施の形態3.
図21に基づき、本発明の実施の形態3に係る作業支援システム200の構成例及び動作例について説明する。作業支援システム及びその周辺構成は、
図1~
図10に例示する実施の形態1の構成と同様であるため、同等の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明については省略する。
【0089】
本実施の形態3の作業支援システム200は、上述した作業支援装置10と同様の構成をもつ作業支援装置10A及び作業支援装置10Bを有している。作業支援装置10Aは、撮像表示ユニット20Rに紐付けられており、作業支援装置10Bは、撮像表示ユニット20Lに紐付けられている。作業支援装置10Aの画像生成手段12dは、撮像表示ユニット20Rの撮像装置22から取得した実画像データをもとに、撮像表示ユニット20Rの表示装置25に表示させる拡張現実画像を生成する。作業支援装置10Bの画像生成手段12dは、撮像表示ユニット20Lの撮像装置22から取得した実画像データをもとに、撮像表示ユニット20Lの表示装置25に表示させる拡張現実画像を生成する。
【0090】
図20では、作業支援装置10Aがシステム全体を統括的に制御する例を示しており、作業支援装置10Aと作業支援装置10Bとは通信可能に接続されている。作業支援装置10Aは、空間情報生成手段12bと、指令処理手段12cと、を有しており、力覚提示装置50との間で有線又は無線による通信を行うようになっている。もっとも、統括制御を行う作業支援装置は、撮像表示ユニット20Lに紐付けられてもよい。作業支援システム200は、力覚提示装置50を含むものであってよく、含まないものであってもよい。他の構成、代替構成、及び動作内容は、実施の形態1及び2と同様である。つまり、実施の形態2の構成についても、本実施の形態3の構成に適用することができる。
【0091】
以上のように、本実施の形態2における作業支援システム200は、力覚空間において、作業ツール58に対応するツール画像が仮想部材82に接触したとき、力覚の提示を指示する力覚指令を力覚提示装置50へ送信する。そのため、ユーザが作業ツール58を操作している状況下で、ツール画像が仮想部材82に接触したとき、実在する部材と同様の反力等をユーザに伝達することができる。よって、部材等の消耗を抑制しつつ、実在する部材を使用する場合と同様の感覚で、作業訓練・作業シミュレーションを行うことのできる環境の提供が可能となる。
【0092】
また、作業支援システム100は、撮像表示ユニット20Rに係る画像処理と、撮像表示ユニット20Lに係る画像処理とを、別々の作業支援装置が行うように構成されている。よって、各画像処理の迅速化を図ることができることから、現実世界の各部材の動きに対する、拡張現実画像の各部材の動きの遅延を抑制することができるため、ユーザの違和感を低減させ、作業性の向上を図ることができる。他の効果等については、上述した実施の形態1及び2と同様である。
【0093】
ここで、上述した各実施の形態は、作業支援装置、作業支援システム、作業支援プログラム、及び作業支援方法における具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、上記の各実施の形態では、作業支援システム100及び200が撮像用ミラー21を有する例を示したが、これに限らず、作業支援システム100及び200は、撮像用ミラー21を設けず、撮像装置22が対象領域を直接的に撮像するよう構成してもよい。この場合、支援処理部12は、撮像装置22から送信される実画像データに座標変換処理を施して、表示装置25への表示用の拡張現実画像及び力覚空間を生成するようにしてもよい。
【0094】
上記の各実施の形態で例示した実部材81、仮想部材82、及び関連部材85の構造及びサイズは、あくまでも例示であり、各部材の構造及びサイズの他、作業対象80における部材の組み合わせについても、適宜変更することができる。上記の実施例では、電磁石のオンオフにより実部材81の捕捉と解放を行う例を示したが、実部材81を捕捉する手法は、これに限定されない。例えば、作業ツール58が物体を把持する作用部5を有する場合、所定位置に到達した捕捉部5aが、実部材81を把持して捕捉するようにしてもよい。この場合、仮想部材82の捕捉に関しては、実部材81を把持するときと同様に、捕捉部5aを動作させ、力覚を提示するとよい。
【0095】
上記の実施例では、実部材81又は仮想部材82が所定位置に到達したとき、操作ツール58によって自動的に捕捉される場合について説明したが、これに限定されない。実部材81又は仮想部材82が所定位置に到達し、ユーザによるキー操作などを受け付けたときに、作用部5が実部材81又は仮想部材82を捕捉するようにしてもよい。この場合、ユーザによるキー操作などによって、実捕捉条件又は仮想捕捉条件を満たすことになる。ユーザが捕捉を指示するための操作手段は、操作ツール58に設けられてもよく、作業支援装置10(10A・10B)に設けられてもよく、作業支援装置10(10A・10B)又は力覚提示装置50と通信可能な別の機器に設けられてもよい。
【0096】
実部材81、仮想部材82、及び関連部材85の形状、構造、及び大きさは、作業の内容によって変更される。操作ツール58の形状及び大きさは、実部材81及び仮想部材82と、作業の内容に応じて変更される。例えば、仮想部材82がネジやボルト等に基づく場合、操作ツール58の作用部5は、ドライバー状又はラチェットレンチ状のものとなる。そして、作業支援装置10(10A)は、操作ツール58の回転動作に応じた力覚を、力覚提示装置50を通じてユーザに提示することになる。
【0097】
力覚提示装置50は、制御部54を設けずに構成し、支援処理部12が種々の判定処理の後、駆動機構部53を直接的に制御し、力覚を提示するようにしてもよい。この場合、駆動機構部53は、支援処理部12からの力覚指令及び誘導指令などの指令に応じて動作する。作業支援システム100及び200は、支援処理部12が力覚提示装置50に力覚空間の情報を随時送信するよう構成してもよい。この場合、力覚提示装置50の制御部54が、支援処理部12の指令処理手段12cが行う種々の判定処理を行った上で、操作ツール58を介してのユーザへの力覚の提示を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
5 作用部、5a 捕捉部、5b コイル、10 作業支援装置、11 通信部、12 支援処理部、12a 取得処理手段、12b 空間情報生成手段、12c 指令処理手段、12d 画像生成手段、12e 表示処理手段、13 記憶部、13p 作業支援プログラム、20R、20L 撮像表示ユニット、21 撮像用ミラー、22 撮像装置、25 表示装置、26 調整ミラー、27 視認用ミラー、50 力覚提示装置、51 本体部、52 水平駆動部、53 駆動機構部、54 制御部、55 アーム部、56 関節部、58 作業ツール、59 検出処理部、80 作業対象、81 実部材、82 仮想部材、85 関連部材、85h 穴、95 マーカー、100、200 作業支援システム、E、F 出現領域、G1、G2 捕捉ガイド、H1、H2 裁置ガイド。