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特開2023-175309セルロース-シロキサン複合粒子、その製造方法、及び、化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175309
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】セルロース-シロキサン複合粒子、その製造方法、及び、化粧料
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20231205BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231205BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20231205BHJP
   C08B 15/08 20060101ALI20231205BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L1/02
A61K8/73
A61Q1/12
C08B15/08
C08L83/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087689
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三石 紘史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井口 良範
【テーマコード(参考)】
4C083
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC392
4C083AC422
4C083AD152
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC12
4C083DD17
4C083EE03
4C083EE06
4C083FF01
4C090AA06
4C090BA24
4C090BB12
4C090BB52
4C090BD24
4C090DA26
4J002AB02W
4J002AB03W
4J002CP03X
4J002GB00
(57)【要約】
【課題】
本発明は、生分解性のあるセルロース粒子を、摺動性、撥水性などを付与するシリコーンで被覆し、複合粒子とすることで、生分解性及び触感に優れた微粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子であり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンが前記粒子100質量部に対し3~80質量部のオルガノトリアルコキシシランの重合物であることを特徴とする、前記複合粒子、及びその製造方法、並びに前記複合粒子を含む化粧料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子であり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンが前記粒子100質量部に対し3~80質量部のオルガノトリアルコキシシランの重合物であることを特徴とする、前記複合粒子。
【請求項2】
前記セルロース又はセルロース誘導体の粒子が体積平均粒子径1~300μmを有することを特徴とする、請求項1記載の複合粒子。
【請求項3】
前記オルガノトリアルコキシシランがメチルトリメトキシシランである、請求項1または請求項2記載の複合粒子。
【請求項4】
セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノルセスキオキサンとから成る複合粒子であり、該粒子の表面積の30%以上がポリオルガノシルセスキオキサンで被覆されている、前記複合粒子。
【請求項5】
前記セルロース又はセルロース誘導体の粒子が体積平均粒子径1~300μmを有する、請求項4記載の複合粒子。
【請求項6】
前記ポリオルガノシルセスキオキサンがオルガノトリアルコキシシランの重合物である、請求項4又は5記載の複合粒子。
【請求項7】
前記オルガノトリアルコキシシランがメチルトリメトキシシランである、請求項6記載の複合粒子。
【請求項8】
(A)セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子の製造方法であって、前記(A)粒子の100質量部に対し3~80質量部の(B)オルガノトリアルコキシシランを、前記(A)粒子と、水と、アルカリの存在下で加水分解及び縮合反応させてポリオルガノシルセスキオキサンを形成し該ポリオルガノシルセスキオキサンを前記(A)粒子の表面に付着させる工程を含む、前記複合粒子の製造方法。
【請求項9】
前記工程の後、水を除去する工程をさらに含む、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項記載の複合粒子を含有する化粧料。
【請求項11】
化粧料全量に対し複合粒子を1~50質量%で含む、請求項10記載の化粧料。
【請求項12】
前記複合粒子を含む複合体の静摩擦係数が0.4以下である、請求項1~7のいずれか1項記載の複合粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース-シロキサン複合粒子、その製造方法、及び、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用途に応じた様々な高分子の微粒子が提案されてきた。例えば、化粧品に含有される微粒子としてもその目的は様々である。化粧品に微粒子を含有する目的は、化粧品ののびを向上する、触感に変化を与える、シワぼかし効果を付与する、またファンデーションなどの滑り性を向上すること等である。
【0003】
特に真球度が高い微粒子は、触感に優れ、また、その物性や形状によって光散乱(ソフトフォーカス)効果が得られる。そして、このような微粒子をファンデーションなどに用いた場合には、肌の凹凸を埋めて滑らかにし、光を様々な方向に散乱させることでしわなどを目立ちにくくする(ソフトフォーカス)効果が期待できる。
【0004】
このような化粧品の目的及び効果のため、化粧品に配合する微粒子は、粒度分布が狭く、真球度が高い微粒子であることが必要とされ、このような微粒子として、ナイロン12などのポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリスチレン(PS)等の合成ポリマーからなる微粒子が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの合成ポリマーからなる微粒子は、比重が1以下と軽く、粒子径もあまりに小さすぎることから、水に浮きやすく、排水処理施設では除去できない場合があり、そのまま川やさらに川を通して海に流れ込むことがある。このため海洋等がこれらの合成ポリマーからなる微粒子で汚染されるという問題がある。
【0006】
さらに、これらの合成ポリマーからなる微粒子は、環境中の微量の化学汚染物質を吸着
する性質があるため、その化学汚染物質を吸着した微粒子をプランクトンや魚が飲み込むことで、人体へも悪影響を及ぼす可能性が生じる等、様々な影響を与えることが懸念されている。
【0007】
このような懸念から、多様な用途に用いられている合成ポリマーの微粒子を、生分解性のある粒子に代替しようとする試みがなされている。
【0008】
代表的な生分解性のある樹脂として、セルロースがある。セルロースは、食料や飼料と競合しない、木材や綿花等の天然素材から得ることができる点で優れる。このため、セルロースを含有した微粒子の開発が望まれている。
【0009】
また、シリコーンを主原料とした合成樹脂粉体は、皮膚や毛髪の表面に均一な皮膜を形成して潤いや滑らかさを与えたり、撥水性や耐水性を付与するための重要な成分として、頭髪化粧品、メークアップ化粧品、サンスクリーンなど多くの化粧品等に使用されている。例えば、特開平07-196815号公報(特許文献1)ではシリコーン微粒子が開示され、これらは柔らかい触感を有し、かつ凝集性がなく分散性に優れるとされている。そのため、化粧料として配合するのに適しているが、よりよい樹脂粉体の開発が求められている。
【0010】
WO2020/188698ではセルロースアセテート粒子をシリコーン系成分を含む親油性付与剤で表面処理した粒子を化粧品組成物として配合することを開示している。しかしながらその方法としては、親油性付与剤を湿式処理法でセルロースアセテート粒子に付着させており、n-ヘキサンなどの有機溶剤の使用が必要となるため、より環境に配慮した水系での複合粒子の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07-196815号公報
【特許文献2】WO2020/188698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、生分解性のあるセルロース粒子を、摺動性、撥水性などを付与するシリコーンで被覆し、複合粒子とすることで、生分解性及び触感に優れた微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、セルロース粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した複合粒子を開発し本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子であり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンが前記粒子100質量部に対し3~80質量部のオルガノトリアルコキシシランの重合物であることを特徴とする、前記複合粒子、及びその製造方法、並びに前記複合粒子を含む化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合粒子は、化粧料に配合、使用した場合、摺動性、柔らかな触感、撥水性等を化粧料に持たせることができる。従って、本発明の複合粒子は、頭髪化粧品、メークアップ化粧品、サンスクリーンなど多くの化粧品に配合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例4で得た複合粒子の表面の電子顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例4で得た複合粒子の表面の電子顕微鏡の拡大写真(a)と、ケイ素の元素マッピング画像と炭素の元素マッピング画像を重ね合わせた画像(b)である。
図3図3は、比較例5で得た複合粒子の表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子であり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンが前記粒子100質量部に対し3~80質量部、好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは15~55質量部のオルガノトリアルコキシシランの重合物であることを特徴とする、前記複合粒子である。
以下、詳細に説明する。
【0017】
(A)セルロース又はセルロース誘導体の粒子
セルロース又はセルロース誘導体の粒子(以下、まとめてセルロース粒子という)は、セルロースを含む粒子である。酢酸セルロースや酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース誘導体粒子であってもよい。また、セルロース粒子の形状は球状に限定されないが、通常、セルロース粒子は球状である。本発明においても、球状のセルロース粒子が好ましい。
【0018】
セルロース粒子の体積平均粒子径は1~300μmであることが好ましい。さらに、1~150μmが好ましく、1~50μmがより好ましい。より詳細には、体積平均粒子径3μm、5μm、7μm、10μm、15μm、20μm、及び45μm等があげられる。ここで、セルロース粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、株式会社島津製作所製「SALD2100」)を用いて測定し得られたデータより求めた積算体積50%粒子径である。
【0019】
セルロース粒子またはセルロール誘導体は、例えば、酢酸セルロースが有機溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液を水中に懸濁させ、酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製し、前記懸濁液から前記有機溶媒を除去し、セルロースの質量に対する酢酸の量が0.5ppm以下となるように、前記酢酸セルロース粒子を鹸化して製造することができる。酢酸セルロース粒子を鹸化してセルロース粒子とした後、さらに、固液分離により水を除去し、セルロース粒子を乾燥させてもよい。
【0020】
市販のセルロース粒子としては、例えば、BELLOCIA(登録商標、ダイセル社製、酢酸セルロース)、ビスコパール(登録商標、レンゴー製)、ART PEARL NC-400、NC-800(根上工業製)を使用することができる。
【0021】
(B)オルガノトリアルコキシシラン
本発明の複合粒子は上述したセルロース粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンが付着して成る。該ポリオルガノシルセスキオキサンは、オルガノトリアルコキシシランの重合物である。オルガノトリアルコキシシランは、以下の式で表わされる。
Si(OR
式中、Rは、1~30の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、1~4の炭素原子を有するアルキル基である。最も好ましくはメチル基である。式中、Rは、1~30の炭素原子、好ましくは1~12の炭素原子、より好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキル基を表す。最も好ましくはメチル基である。オルガノトリアルコキシシランは、1種単独でもよいし、または2種以上の併用でもよい。
【0022】
上記オルガノトリアルコキシシランとして、好ましくは、
メチルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、
メチルトリプロポキシシラン、
エチルトリメトキシシラン、
エチルトリエトキシシラン、
エチルトリプロポキシシラン、
エチルトリブトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
プロピルトリエトキシシラン、
イソブチルトリメトキシシラン、
イソブチルトリエトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン、
ブチルトリエトキシシラン、
ヘキシルトリメトキシシラン、
n-オクチルトリエトキシシラン、
n-オクチルトリメトキシシラン、
i-オクチルトリメトキシシラン、
i-オクチルトリエトキシシランである。
【0023】
上記オルガノトリアルコキシシランは、周知であり、市販されている。例えば、米国特許第5,300,327号明細書(1994年4月5日)、米国特許第5,695,551号明細書(1997年12月9日)、および米国特許第5,919,296号明細書(1999年7月6日)に記載されている。
【0024】
上記オルガノトリアルコキシシランとして、特に好ましくは、RおよびRがメチルであるメチルトリメトキシシランである。
【0025】
[製造方法]
本発明は(A)セルロース又はセルロース誘導体の粒子と、該粒子の表面に付着しているポリオルガノシルセスキオキサンとから成る複合粒子の製造方法であって、前記(A)粒子の100質量部に対し3~80質量部の(B)オルガノトリアルコキシシランを、前記(A)粒子と、水と、アルカリの存在下で加水分解及び縮合反応させてポリオルガノシルセスキオキサンを形成し該ポリオルガノシルセスキオキサンを前記(A)粒子の表面に付着させる工程を含む、前記複合粒子の製造方法を提供する。その後、水を除去する工程を含む。ここで、ポリオルガノシルセスキオキサンはRSiO3/2単位からなる重合体である。以下、本発明の製造方法について詳しく説明する。
【0026】
本発明の製造方法における工程(i)は、(A)セルロース粒子と、水と、アルカリの存在下で、(B)オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させてポリオルガノシルセスキオキサンを形成する。加水分解及び縮合反応により得られたポリオルガノシルセスキオキサンは、セルロース粒子に付着した状態で得ることができる。
【0027】
アルカリは、(B)オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させる触媒、又は縮合反応させる触媒として作用する。アルカリは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、アルカリはそのまま添加しても、アルカリ性水溶液として添加してもよい。さらに、アルカリは、セルロース粒子および水を含む水分散液に、オルガノトリアルコキシシランを添加する前に配合しておいてもよいし、オルガノトリアルコキシシラン添加後に添加してもよい。
【0028】
アルカリの添加量は、セルロース粒子及び水を含む水分散液のpHが好ましくは9.0~13.0、より好ましくは9.5~12.5の範囲となる量である。該pHが上記範囲内であれば、オルガノトリアルコキシシランの加水分解及び縮合反応が十分に進行することができ、また、得られるポリオルガノシルセスキオキサンはセルロース粒子表面へ十分に付着することができる。
【0029】
アルカリは特には限定されず、(B)オルガノトリアルコキシシランの加水分解及び縮合反応を進行させるものであればよい。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;又はモノメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン類等を使用することができる。中でも、得られるセルロース粒子の粉末から揮発させることにより容易に除去できることから、アンモニアが最も適している。アンモニアは、市販されているアンモニア水溶液を使用することができる。
【0030】
(B)オルガノトリアルコキシシランの添加量は、(A)セルロース粒子100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサンの量が3~80質量部の範囲となる量、好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは15~55質量部の範囲となる量とする。(B)オルガノトリアルコキシシランが1未満であるとシロキサンの効果が表れず、上記上限を超えると、セルロース粒子に被覆しないシロキサンや凝集粒子が生じる。上記上限を超えると、セルロース粒子に被覆しないシロキサンや凝集粒子が生じ、手触りが悪くなり、化粧料として配合する場合にも硬さや粒感が生じる。
【0031】
(B)オルガノトリアルコキシシランの添加は、プロペラ翼、平板翼等の通常の撹拌機を用いて攪拌下で行うことが望ましい。
【0032】
また、セルロース粒子表面に付着させるポリオルガノシルセスキオキサンの付着性をコントロールする目的で、界面活性剤や水溶性高分子をセルロース水分散液に添加しても良い。
【0033】
水分散液に添加する界面活性剤は、特には限定されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両イオン性界面活性剤が挙げられる。添加する界面活性剤は、2種以上の界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤を添加する場合、その量は、(A)セルロース粒子100質量部に対し、0.01質量部~10質量部の範囲であるとよい。
【0034】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α―スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ジアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0036】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられる。
【0037】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0038】
水分散液に添加する水溶性高分子は、特に限定されず、ノニオン性水溶性高分子、アニオン性水溶性高分子、カチオン性水溶性高分子、および両イオン性水溶性高分子が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。水溶性高分子を添加する場合、その量は、(A)セルロース粒子100質量部に対し、0.01質量部~10質量部の範囲であるとよい。
【0039】
ノニオン性水溶性高分子としては、例えば、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体、アクリルアミドの重合体、ビニルピロリドンの重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ポリエチレングリコール、イソプロピルアクリルアミドの重合体、メチルビニルエーテルの重合体、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0040】
アニオン性水溶性高分子としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの重合体、ビニルイミダゾリンの重合体、メチルビニルイミダゾリウムクロライドの重合体、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、エピクロルヒドリン/ジメチルアミン重合体、エチレンイミンの重合体、エチレンイミンの重合体の4級化物、アリルアミン塩酸塩の重合体、ポリリジン、カチオンデンプン、カチオン化セルロース、キトサン、及びこれらに非イオン性基やアニオン性基を持つモノマーを共重合したこれらの誘導体物が挙げられる。
【0041】
両イオン性水溶性高分子としては、例えば、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体、メタアクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体、アクリルアミドの重合体のホフマン分解物等が挙げられる。
【0042】
本発明の製造方法の一の態様は、(A)セルロース粒子及び水を含む水分散液にアルカリを配合した後に(B)オルガノトリアルコキシシランを添加する。この場合、該オルガノトリアルコキシシランを一度に添加しても良いが、時間を掛けて徐々に添加することが好ましい。オルガノトリアルコキシシランを添加するときの反応温度は0~60℃であることが好ましく、より好ましくは0~40℃の範囲である。温度が上記範囲内にあれば、セルロース粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを上手く付着させることができる。攪拌は、オルガノトリアルコキシシランの添加後、オルガノトリアルコキシシランの加水分解及び縮合反応が完結するまで継続する。加水分解及び縮合反応を完結させるためには、該反応は室温で行っても40~100℃程度の加熱下で行ってもよく、またアルカリを適宜追加しても良い。
【0043】
本発明の製造方法の別の態様では、アルカリを添加する前にオルガノトリアルコキシシランを添加しても良い。この場合は、まず、水にオルガノトリアルコキシシランを添加するのが良い。オルガノトリアルコキシシランは、一度に水に添加しても良いが、時間を掛けて徐々に添加してもよい。また、オルガノトリアルコキシシランに水を添加しても良いし、水とオルガノトリアルコキシシランを同時に槽に入れて混合してもよい。オルガノトリアルコキシシランを水に添加するときの温度は特に限定されず、例えば0~100℃の範囲で行えば良い。その後、オルガノトリアルコキシシランの加水分解反応が進行して、少なくとも水にオルガノトリアルコキシシランが溶解するまでの間、攪拌を続ける。この時、加水分解反応を促進させるために少量の酸を添加してもよい。
【0044】
その後、上記で得られた溶液に、セルロース粒子を含む水分散液を添加し、次いでアルカリを添加する。アルカリを添加すると、オルガノトリアルコキシシランの加水分解物の縮合反応が進行し、ポリオルガノシルセスキオキサンが生成する。但しこの時、ポリオルガノシルセスキオキサンが生成する前に攪拌を停止する、又は非常にゆっくり攪拌する必要がある。ポリオルガノシルセスキオキサン生成時に反応液が高速で流動していると、ポリオルガノシルセスキオキサンがセルロース粒子にうまく付着できない。
【0045】
縮合反応時の温度は0~60℃であることが好ましく、より好ましくは0~40℃の範囲である。該温度が上記範囲内にあると、セルロース粒子にポリオルガノシルセスキオキサンをうまく付着することができる。ポリオルガノシルセスキオキサンが生成(ポリオルガノシルセスキオキサンがセルロース粒子表面に付着)するまでは、反応液を静置又は非常にゆっくりな攪拌状態にしておくのがよい。なお、静置時間は10分~24時間の範囲であるのが好ましい。その後、縮合反応を完結させるために、アルカリをさらに追加したり、40~100℃で加熱しても良い。また通常の攪拌をさらに行っても良い。
【0046】
本発明の製造方法における工程(ii)は、セルロース粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させた後、水分を揮発除去する。
【0047】
水分の揮発除去は、常圧下または減圧下に加熱することにより行うことができる。例えば、分散液を加熱下で静置して水分を除去する方法等が挙げられる。なお、この操作の前処理として、濾過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で分散液を濃縮してもよいし、必要ならば分散液を水や水溶性のアルコール等で洗浄しても良い。
【0048】
水の揮発除去により得られた複合粒子の粉体が凝集している場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機で解砕すればよい。
【0049】
上記方法で得られる複合粒子は、セルロース粒子がポリオルガノシルセスキオキサンで被覆されている。ポリオルガノシルセスキオキサンで被覆されていることは赤外吸収スペクトルで確認することができる。また、被覆状態は電子顕微鏡写真で表面を観察することで確認できる。特には、セルロース粒子表面積の30%以上、好ましくは30%~95%、より好ましくは40~90%、さらに好ましくは40~80%がポリオルガノシルセスキオキサンで被覆されていることが好ましい。セルロース粒子の表面被覆率が30%未満であると、シロキサンの効果が表れない。被覆率が大きい場合、セルロース粒子に被覆しないシロキサンや凝集粒子が生じ、手触りが悪くなり、セルロース粒子の生分解性効果が期待できない場合がある。複合粒子の体積平均粒子径は1~300μmであることが好ましい。さらに、1~150μmが好ましく、1~50μmがより好ましい。
【0050】
複合粒子からなる複合体の静・動摩擦係数は、0.4以下であることが好ましく、なめらかさ、滑りやすさが良好であるといえる。後述の化粧料として配合して使用した際にも、化粧料に同様の効果を与えることができる。なお「複合粒子からなる複合体」とは、例えばバイオスキンプレートなどの基材上に、複合粒子を均一に塗延ばして成るものである。
【0051】
本発明の複合粒子は、化粧料に配合して使用し得るが、化粧料全体に対する複合粒子の配合量は1~50質量%、1~30質量%が好ましい。前記下限値未満であると十分な効果が得られない場合がある。前記上限値を超えると白さが目立つなど好ましくない場合がある。
【0052】
本発明の複合粒子体以外の化粧料配合物として、油剤、溶剤、シリコーン系共重合樹脂粉体以外の粉体等が挙げられる。
【0053】
油剤としては、炭化水素、シリコーン油、トリグリセライド、エステル油、油脂類、ロウ類、炭素数12~20の高級脂肪酸、炭素数8~20の高級アルコール等が挙げられ、特に低沸点シリコーン油、低沸点イソパラフィン系炭化水素、トリグリセライド、エステル油が好ましい。例えば、低沸点シリコーン油としてはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。エステル油としては、炭素数6~20の脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0054】
化粧料中の油剤の含有量は、化粧料の剤型によって異なり、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよい。好ましくは、粉体及び本発明の樹脂粉体成分の総計に対し0.1~95質量%、更に好ましくは1~80質量%であるのがよい。前記下限値未満では油剤の滑り性、保湿性等の効果が発揮できないことがある。前記上限値を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0055】
溶剤としては、中低級アルコール、芳香族アルコール類等を挙げることができるが、イソプロピルアルコール等の炭素数1~4の低級アルコールが好ましい。本発明の化粧料中の溶剤の含有率は化粧料の剤型によって異なり、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、粉体及び本発明の樹脂粉体成分の総計に対して、好ましくは0.1~80質量%、更に好ましくは1~50質量%であるのがよい。
【0056】
粉体は、通常(メークアップ)化粧料に使用可能な材料を示し、特に限定されない。通常、平均粒子径0.1~50μmであり、例えば、無機着色顔料、無機白色顔料、有機顔料等の着色料、パール剤、体質顔料、有機粉末等である。
【0057】
粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、1,2-ナイロン、6-ナイロン、シリコーンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン球状粉体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等; 界面活性剤金属塩粉体としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、ベンガラ、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等のタール系色素をレーキ化したもの、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等の天然色素をレーキ化したもの等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、雲母チタン、酸化鉄処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ステンレス等の金属粉体が挙げられる。
【0058】
更に、本発明の化粧料には、上記の構成成分に加え、目的に応じて本発明の複合粒子の効果を損なわない量的、質的範囲で、界面活性剤、油性成分、高分子化合物、ゲル化剤、アルカリ剤、多価アルコール、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、消炎剤、美肌用成分、及び香料等、通常の化粧品に配合される他の成分を配合することが可能である。
【0059】
本発明の化粧料としては、例えば、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、口紅、ネイルカラー等のメークアップ化粧料、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、アクネ対策化粧料、エッセンス等の基礎化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、養毛料、パーマネント剤等の頭髪化粧料、ボディパウダー、デオドラント、脱毛剤、セッケン、ボディシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。本発明のシリコーン系共重合樹脂粉体は、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイブロー等の粉体化粧料に用いることが好ましい。
【実施例0060】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0061】
[実施例1]
平均粒径7μmの球状セルロース粒子(A-1)100質量部、イオン交換水830質量部、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(カチオンBB、日油製カチオン乳化剤)1.6質量部を500ml反応器に投入し、30分攪拌した。25%アンモニア水22質量部を加え、pH11~12(卓上pHメーターHM-42X(東亜DKK(株)製)にコントロールし、5℃まで冷却した後、メチルトリメトキシシラン(KBM13、信越化学工業製)を22.5質量部、20分かけて投入した。8℃にて1時間熟成した後、55℃に昇温して25%アンモニア水53質量部を投入し1時間熟成し、スラリーを得た。スラリーを吸引ろ過して固液分離し、静置乾燥したところ、単分散で撥水性のある粉体となった。電子顕微鏡により、ポリメチルシルセスキオキサンが粒状セルロース粒子表面に付着している複合粒子であることが確認された。
【0062】
[実施例2]
メチルトリメトキシシランを15質量部とした以外は、実施例1の工程を繰り返して、単分散で撥水性のある粉体を得た。電子顕微鏡により、ポリメチルシルセスキオキサンが粒状セルロース粒子表面に付着している複合粒子であることが確認された。
【0063】
[実施例3]
メチルトリメトキシシランを55質量部とした以外は、実施例1の工程を繰り返して、単分散で撥水性のある粉体を得た。電子顕微鏡により、ポリメチルシルセスキオキサンが粒状セルロース粒子表面に付着している複合粒子であることが確認された。
【0064】
[実施例4]
平均粒径7μmの球状セルロース粒子を平均粒径15μmの球状セルロース粒子(A-2)に替え、メチルトリメトキシシランの量を40質量部とした以外は実施例1の工程を繰り返して単分散で撥水性のある粉体を得た。
この複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に粒径約100nmを有する粒子が確認された。また赤外吸収スペクトルを臭化カリウム錠剤法によりFT-IR測定装置(島津製作所製)で測定したところ、波数2960cm-1、1260cm-1、及び1100~1020cm-1に特性吸収を認めた。これにより、ポリメチルシルセスキオキサンが粒状セルロース粒子表面に付着している複合粒子であることが確認された。上記複合粒子の表面を観察した電子顕微鏡写真を図1に示す。また、上記複合粒子の表面を観察した電子顕微鏡写真(a)と、これに対応する、SwiftED3000(HITACHI製)で分析したケイ素の元素マッピング画像と炭素の元素マッピング画像を重ね合わせた画像(b)を図2に示す。
【0065】
[実施例5]
平均粒径7μmの球状セルロース粒子を平均粒径15μmの球状セルロース粒子(A-2)に替え、メチルトリメトキシシランの量を15質量部とした以外は実施例1の工程を繰り返して複合粒子を得た。
【0066】
[実施例6]
実施例1のセルロース粒子を、平均粒径5μmを有する球状セルロース粒子(A-3)に替えた以外は実施例1の工程を繰り返して複合粒子を得た。
【0067】
[比較例1~3]
セルロース粒子(A-1)、(A-2)、及び(A-3)を、メチルトリメトキシシラン処理を施さずに評価に供した。
【0068】
比較例4では、シランレジンパウダー(平均粒径5μm、X-52-1621、信越化学工業社製、B-2)を評価した。
【0069】
[比較例5]
メチルトリメトキシシランの量を表2に記載の量に変更した以外は実施例1の工程を繰り返して複合粒子を得た。比較例5の粒子表面の画像を図3に示す。
【0070】
上記で得た複合粒子について下記の評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0071】
〈被覆率〉
複合粒子10個の表面の電子顕微鏡写真から目視にて平均被覆率’を算出した。
被覆率=被覆面積/表面積×100
として計算した。
【0072】
<触感及び伸び性の測定方法>
上記粉体試料適量を指に付着させ、黒色カーボン紙上に接触させ紙面上を一気に滑らせる。滑らせた時の感覚を触感、またその滑らせた跡がどれだけ長く伸びているかを伸び性とし、下記の3水準で評価した。
○:特有の良好な滑り感がある
△:やや良好な滑り感がある
×:指に抵抗を感じ滑り感がない
【0073】
<摩擦係数の測定方法>
上記粉体試料約1gをバイオスキンプレート(Beaulax製)上に均一に塗延ばして複合粒子からなる複合体を有する試料片を作成した。HEIDON TYPE-38(新東科学社製)にて100gの重りを載せた圧子を上記試料片の複合体に垂直に接触させ、3cm/分で移動させた時の摩擦力を測定し、摩擦力から摩擦係数を算出した。圧子には接触面が直径12mmで、複合体との接触面に人工皮革サプラーレを装着したものを用いた。
複合粒子からなる複合体の静・動摩擦係数の好ましい範囲は、0.4以下がよく、静摩擦係数、動摩擦係数はいずれも0.01~0.40である。静・動摩擦係数ともに、値が小さいほうが摺動性は良好であることを示しており、特に0.4以下であるとなめらかさ、滑りやすさが良好であり、好ましい。
静摩擦係数は静止状態から動き出すのに必要な力の指標となり、大きいと引っかかりや軋みを感じやすい。
【0074】
<接触角>
接触角の測定は下記のようにして行った。
上記摩擦係数測定と同様の試料片を作成し、その上に10μmの水滴を滴下し、0.3秒後の接触角値を協和界面科学社製接触角計CA-D型を用いて測定した。撥水性剤量として好ましい範囲は、接触角が110°以上である。
【0075】
<光拡散強度(光拡散性評価)>
粉体試料5gをクリアラッカー45gに投入しディスパーミキサー3000rpmで2分間分散した。分散液を黒色カーボン紙上に直径2cm円になるよう垂らし、5MILのコーターで塗布し塗膜化した。風乾の後、グロス計で塗膜上の異なる3点を測定し平均値を採用した。85°の反射光強度が小さいほど、マットな仕上がりとなり、光拡散性が良いといえる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
A-1:平均粒径7μmセルロース粒子
A-2:平均粒径15μmセルロース粒子
A-3:平均粒径5μmセルロース粒子
B-1:メチルトリメトキシシラン(KBM13、信越化学工業社製)
B-2:シランレジンパウダー(平均粒径5μm、X-52-1621、信越化学工業社製)
【0078】
[実施例7]
実施例1で製造した複合粒子を使用し、下記に示す配合でファンデーションを調製した。
ファンデーション
成分 配合量(%)
(1)実施例1のセルロース-シロキサン複合粒子 3.0
(2)アクリルシリコーン処理タルク(注1) 残量
(3)アクリルシリコーン処理セリサイト 10.0
(4)金属石鹸処理マイカ 2.0
(5)合成金雲母 5.0
(6)シリカ球状粉末 5.0
(7)シリコーン処理微粒子酸化チタン 12.5
(8)シリコーン処理ベンガラ 0.6
(9)シリコーン処理黄酸化鉄 2.0
(10)シリコーン処理黒酸化鉄 0.2
(11)シリコーン処理酸化チタン 6.0
(12)リンゴ酸ジイソステアリル 2.0
(13)トリイソステアリン酸グリセリル 0.4
(14)メチルポリシロキサン 3.5
(15)紫外線吸収剤 5.0
(16)防腐剤 適量
(17)香料 適量
(注1)NSタルクJA-46R-3F(株式会社角八鱗箔製)
【0079】
[実施例8~12、比較例6~10]
粉体を実施例2~6及び比較例1~5で得た複合粒子に替えた他は実施例7と同じ配合でファンデーションを調製した。
【0080】
[実施例13]
実施例7で使用した複合粒子の量を20%にした他は実施例7と同じ配合でファンデーションを調製した。
【0081】
上記で得たファンデーションについて、下記の評価を実施した。結果を表3,4に示す。
[触感、滑り性]
20名の専門パネルによる使用テストを行い、化粧料の触感、滑り性に関する評価項目それぞれについて、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各人がつけた評価点を合計し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価点基準)
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
(評価基準)
◎:合計点が80点以上である
○:合計点が60点以上80点未満である
△:合計点が40点以上60点未満である
×:合計点が40点未満である
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
上記表4に示す通り、表面未処理のセルロース粒子又はシランレジンパウダーを用いたファンデーションは、触感及びすべり性に劣る。セルロース粒子に対してメチルトリメトキシシランの量が少なすぎる複合粒子は、得られるファンデーションの触感及びすべり性に劣る。また、セルロース粒子に対してメチルトリメトキシシランの量が多すぎる複合粒子は、得られるファンデーションのすべり性に劣る傾向にある。これに対し、上記表3に示す通り、本発明のセルロース-シロキサン複合粒子は、表面未処理のセルロース粒子と比べて触感及びすべり性に優れるファンデーションを与える。
【0085】
本発明の複合粒子は、化粧料に配合、使用した場合、摺動性、柔らかな触感、撥水性等を化粧料に持たせることができ、頭髪化粧品、メークアップ化粧品、及びサンスクリーンなど多くの化粧品に配合することができる。また、本発明の複合粉体及び該複合粉体を含む化粧料は生分解性効果が期待できる。
図1
図2
図3