(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175398
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ポリマー及びポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/20 20060101AFI20231205BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08F8/20
C08F214/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087821
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 未央
(72)【発明者】
【氏名】古城 侑也
(72)【発明者】
【氏名】民辻 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】仁平 敏史
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA06P
4J100AC22P
4J100AC27P
4J100AC28P
4J100BB07H
4J100BB12H
4J100BB13H
4J100BB18H
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA05
4J100CA06
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA25
4J100HA21
4J100HB03
4J100HE14
4J100JA20
(57)【要約】
【課題】金属(特に、銅)に対する接着性に優れたポリマーの提供、及び、簡便な方法でフッ素原子を含むポリマーを製造できるポリマーの製造方法の提供。
【解決手段】本発明のポリマーは、式(1-1)又は式(1-2)で表される繰り返し単位を含むポリマーであって、上記単位の含有量がポリマーの全単位に対して50モル%以上であり、ポリマーに含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満である。X
11a~X
15aはH又はF、Y
1aはF又はFが置換していてもよいアルキル基である。ただし、Y
1aがFである場合、X
11a及びX
12aはいずれもHか、いずれもFである。X
21a~X
24aはH又はF、X
25aはFが置換していてもよいアルキル基、Y
2aはH又はFを表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-1)で表される繰り返し単位、又は、式(1-2)で表される繰り返し単位を含むポリマーであって、
前記式(1-1)で表される繰り返し単位、又は、前記式(1-2)で表される繰り返し単位の含有量が、前記ポリマーの全単位に対して、50モル%以上であり、
前記ポリマーに含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満である、ポリマー。
【化1】
【化2】
前記式(1-1)中、X
11a~X
15aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、Y
1aは、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。ただし、Y
1aがフッ素原子である場合、X
11a及びX
12aはいずれも水素原子を表すか、いずれもフッ素原子を表す。
前記式(1-2)中、X
21a~X
24aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、X
25aは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表し、Y
2aは、水素原子又はフッ素原子を表す。
【請求項2】
前記ポリマーが、要件1及び要件2を満たす繰り返し単位、又は、要件3及び要件4を満たす繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
要件1:X11a~X15aの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
要件2:X11a~X15aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、Y1aがフッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表す。
要件3:X21a~X24aの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2aが水素原子を表す。
要件4:X21a~X24aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、X25aが少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表すか、Y2aがフッ素原子を表す。
【請求項3】
ガラス転移温度が40℃以上である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
アモルファスポリマーである、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーからなる膜の水接触角が90度以上である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーの重量平均分子量が3000~1000000である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項7】
前記原子量比が0超0.10未満である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項8】
式(2-1)で表されるモノマーに基づく単位又は式(2-2)で表されるモノマーに基づく単位を含み、水素原子を含む原料ポリマーに対して液相にてフッ素化処理を施して、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満であるポリマーを製造する、ポリマーの製造方法。
式(2-1) CX11bX12b=C(Y1b)-CX13bX14bX15b
式(2-2) CX21bX22b=C(Y2b)-CX23bX24bX25b
前記式(2-1)中、X11b~X15bはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、Y1bは、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
前記式(2-2)中、X21b~X24bはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、X25bは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表し、Y2bは、水素原子又はフッ素原子を表す。
【請求項9】
前記原料ポリマーに含まれる水素原子量に対するフッ素原子量の原子量比が0以上6.7未満である、請求項8に記載のポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記原料ポリマーが、要件5を満たすモノマーに基づく単位、又は、要件6を満たすモノマーに基づく単位を含み、
前記ポリマーが、前記要件5を満たすモノマーに基づく単位中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位、又は、前記要件6を満たすモノマーに基づく単位中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位を含む、請求項8又は9に記載のポリマーの製造方法。
要件5:X11b~X15bの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1bが水素原子、又は、少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
要件6:X21b~X24bの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25bが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2bが水素原子を表す。
【請求項11】
前記要件5を満たす単位において、X11b~X12bのいずれも水素原子を表すか、X13b~X15bのいずれもが水素原子を表す、請求項10に記載のポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー及びポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子を含むポリマーは、耐候性、耐熱性及び耐薬品性等の性質に優れるので、多様な分野で用いられている。
このようなフッ素原子を含むポリマーとして、特許文献1には、テトラフルオロエチレンと環状パーフルオロエーテルとの共重合体である非晶質フッ素樹脂が開示されており、非晶質フッ素樹脂を反射防止層の形成に使用することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、フッ素原子を含むポリマーは更なる性能の向上が求められており、例えば、金属に対する接着性に優れることが求められる。
本発明者らが、特許文献1に記載の上記共重合体を評価したところ、これを用いて得られる膜の金属(特に、銅)に対する接着性について、改善の余地があることを見出した。
また、フッ素原子を含むポリマーは、工業上容易に大量生産できること、すなわち簡便な方法で製造できることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、金属(特に、銅)に対する接着性に優れたポリマーの提供を課題とする。また、本発明は、簡便な方法でフッ素原子を含むポリマーを製造できるポリマーの製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] 後述の式(1-1)で表される繰り返し単位、又は、後述の式(1-2)で表される繰り返し単位を含むポリマーであって、上記式(1-1)で表される繰り返し単位、又は、上記式(1-2)で表される繰り返し単位の含有量が、上記ポリマーの全単位に対して、50モル%以上であり、上記ポリマーに含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満である、ポリマー。
後述の式(1-1)中、X11a~X15aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、Y1aは、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。ただし、Y1aがフッ素原子である場合、X11a及びX12aはいずれも水素原子を表すか、いずれもフッ素原子を表す。
後述の式(1-2)中、X21a~X24aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、X25aは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表し、Y2aは、水素原子又はフッ素原子を表す。
[2] 上記ポリマーが、要件1及び要件2を満たす繰り返し単位、又は、要件3及び要件4を満たす繰り返し単位を含む、[1]に記載のポリマー。
要件1:X11a~X15aの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
要件2:X11a~X15aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、Y1aがフッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表す。
要件3:X21a~X24aの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2aが水素原子を表す。
要件4:X21a~X24aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、X25aが少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表すか、Y2aがフッ素原子を表す。
[3] ガラス転移温度が40℃以上である、[1]又は[2]に記載のポリマー。
[4] アモルファスポリマーである、[1]~[3]のいずれかに記載のポリマー。
[5] 上記ポリマーからなる膜の水接触角が90度以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリマー。
[6] 上記ポリマーの重量平均分子量が3000~1000000である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリマー。
[7] 上記原子量比が0超0.10未満である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリマー。
[8] 式(2-1)で表されるモノマーに基づく単位又は式(2-2)で表されるモノマーに基づく単位を含み、水素原子を含む原料ポリマーに対して液相にてフッ素化処理を施して、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満であるポリマーを製造する、ポリマーの製造方法。
式(2-1) CX11bX12b=C(Y1b)-CX13bX14bX15b
式(2-2) CX21bX22b=C(Y2b)-CX23bX24bX25b
上記式(2-1)中、X11b~X15bはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、Y1bは、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
上記式(2-2)中、X21b~X24bはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表し、X25bは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表し、Y2bは、水素原子又はフッ素原子を表す。
[9] 上記原料ポリマーに含まれる水素原子量に対するフッ素原子量の原子量比が0以上6.7未満である、[8]に記載のポリマーの製造方法。
[10] 上記原料ポリマーが、要件5を満たすモノマーに基づく単位、又は、要件6を満たすモノマーに基づく単位を含み、上記ポリマーが、上記要件5を満たすモノマーに基づく単位中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位、又は、上記要件6を満たすモノマーに基づく単位中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位を含む、[8]又は[9]に記載のポリマーの製造方法。
要件5:X11b~X15bの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1bが水素原子、又は、少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
要件6:X21b~X24bの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25bが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2bが水素原子を表す。
[11] 上記要件5を満たす単位において、X11b~X12bのいずれも水素原子を表すか、X13b~X15bのいずれもが水素原子を表す、[10]に記載のポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属(特に、銅)に対する接着性に優れたポリマーを提供できる。また、本発明によれば、簡便な方法でフッ素原子を含むポリマーを製造できるポリマーの製造方法も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
「単位」とは、モノマーが重合して直接形成された、上記モノマー1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。「モノマーに基づく単位」は、以下、単に「単位」ともいう。なお、ポリマーが含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、1H-NMR及び19F-NMRによりポリマーを分析して求められる。
ポリマーに含まれる「フッ素原子量」は、19F-NMRによりポリマーを分析して求められるフッ素原子の物質量(mol)を意味する。また、ポリマー含まれる「水素原子量」は、1H-NMRによりポリマーを分析して求められる水素原子の物質量(mol)を意味する。したがって、「ポリマーに含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比」は、上記のようにして求めたフッ素原子の物質量に対する水素原子の物質量の割合(水素原子の物質量/フッ素原子の物質量)を意味し、以下において「H/F」と略記する場合がある。また、「ポリマーに含まれる水素原子量に対するフッ素原子量の原子量比」は、上記のようにして求めた水素原子の物質量に対するフッ素原子の物質量の割合(フッ素原子の物質量/水素原子の物質量)を意味し、以下において「F/H」と略記する場合がある。なお、19F-NMRによりポリマーに含まれるフッ素原子の物理量を算出する際には、測定対象であるポリマーと、所定量の構造がわかっているフッ素原子を含む参照試料とを含む測定サンプルを用いて19F-NMRの分析を行い、物質量がわかっている参照試料由来のピークの大きさとの対比により、ポリマーに含まれるフッ素原子の物理量を算出できる。また、1H-NMRによりポリマーに含まれるフッ素原子の物理量を算出する際には、測定対象であるポリマーと、所定量の構造がわかっている水素原子を含む参照試料とを含む測定サンプルを用いて1H-NMRの分析を行い、物質量がわかっている参照試料由来のピークの大きさとの対比により、ポリマーに含まれる水素原子の物理量を算出できる。
「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。「重量平均分子量」は「Mw」ともいう。
「ガラス転移温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される中間点ガラス転移温度である。「ガラス転移温度」は、「Tg」ともいう。
【0009】
[ポリマー]
本発明のポリマー(以下、「ポリマー1」ともいう。)は、後述の式(1-1)で表される繰り返し単位(以下、「単位1-1」ともいう。)、又は、式(1-2)で表される繰り返し単位(以下、「単位1-2」ともいう。)を含むポリマーであって、単位1-1又は単位1-2の含有量がポリマー1の全単位に対して50モル%以上であり、ポリマー1に含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満である。
【0010】
ポリマー1は、金属(特に銅)に対する接着性に優れる。この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、以下の理由によると推測される。ポリマー1は、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満である。これにより、ポリマー1中の水素原子と金属との相互作用が高まり、金属に対するポリマーの接着性が向上したと推測される。
【0011】
<単位1-1>
単位1-1は、下記式(1-1)で表される。
【0012】
【0013】
式(1)中、X11a~X15aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。
Y1aは、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
【0014】
フッ素原子が置換していてもよいアルキル基とは、アルキル基を構成する全ての水素原子がフッ素原子で置換されていないアルキル基、又は、アルキル基を構成する水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基(すなわち、フルオロアルキル基)を意味する。
アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0015】
式(1)中、Y1aがフッ素原子である場合には、X11a及びX12aはいずれも水素原子を表すか、いずれもフッ素原子を表す。これにより、本発明の効果がより優れる。
【0016】
ポリマー1は、本発明の効果がより優れる点から、下記要件1及び下記要件2を満たす単位1-1を含むことが好ましい。換言すれば、ポリマー1は、水素原子及びフッ素原子を含む単位1-1を含むことが好ましい。
要件1:X11a~X15aの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
要件2:X11a~X15aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、Y1aがフッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表す。
【0017】
ポリマー1は、単位1-1に該当する繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよく、単位1-1に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。
【0018】
ポリマー1は、水素原子を含まない単位1-1を含んでいてもよく、フッ素原子を含まない単位1-1を含んでいてもよい。
ただし、ポリマー1が水素原子を含まない単位1-1を含む場合には、ポリマー1は、水素原子を含む単位1-1を更に含むか、又は、単位1-1以外の単位であって、水素原子を含む単位を更に含む。
また、ポリマー1がフッ素原子を含まない単位1-1を含む場合には、ポリマー1は、フッ素原子を含む単位1-1を更に含むか、又は、単位1-1以外の単位であって、フッ素原子を含む単位を更に含む。
【0019】
ポリマー1は、本発明の効果がより優れる点から、単位1-1に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含むことが好ましく、水素原子を含む単位1-1と、フッ素原子を含み水素原子を含まない単位1-1との両方を含むことがより好ましく、下記式(1-1A)で表される構造、又は、下記式(1-1B)で表される構造を含むことが更に好ましい。
なお、下記式(1-1B)で表される構造中の中央に記載の単位は、後述する他の単位に該当する。
下記構造において、各単位の結合順序は任意である。すなわち、各単位は、交互に配置されてもよく、種類毎に連続して配置されてもよく(すわなち、ブロックに配置されること)、ランダムに配置されてもよい。
【0020】
【0021】
【0022】
式(1-1A)で表される構造を含むポリマー1は、後述のポリマーの製造方法(具体的には態様A)によって製造できる。
式(1-1B)で表される構造を含むポリマー1は、後述のポリマーの製造方法(具体的には態様B)によって製造できる。
【0023】
ポリマー1が単位1-1を含む場合、単位1-1の含有量は、ポリマー1の全単位に対して、50モル%以上であり、本発明の効果がより優れる点から、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
単位1-1の含有量の上限は、100モル%である。
なお、単位1-1の含有量とは、ポリマー1に含まれる単位1-1が1種類のみの場合には、1種類の単位1-1の含有量を指し、ポリマー1に含まれる単位1-1が2種類以上である場合には、それらの合計量を指す。
【0024】
<単位1-2>
単位1-2は、下記式(1-2)で表される。
【0025】
【0026】
式(1-2)中、X21a~X24aはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。
X25aは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
Y2aは、水素原子又はフッ素原子を表す。
【0027】
X25aにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様は、上述の式(1-1)のY1aにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様と同様である。
【0028】
ポリマー1は、本発明の効果がより優れる点から、下記要件3及び下記要件4を満たす単位1-2を含むことが好ましい。換言すれば、ポリマー1は、水素原子及びフッ素原子を含む単位1-2を含むことが好ましい。
要件3:X21a~X24aの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25aが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2aが水素原子を表す。
要件4:X21a~X24aの少なくとも1つがフッ素原子を表すか、X25aが少なくとも1つのフッ素原子が置換されたアルキル基を表すか、Y2aがフッ素原子を表す。
【0029】
ポリマー1は、単位1-2に該当する繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよく、単位1-2に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。
【0030】
ポリマー1は、水素原子を含まない単位1-2を含んでいてもよく、フッ素原子を含まない単位1-2を含んでいてもよい。
ただし、ポリマー1が水素原子を含まない単位1-2を含む場合には、ポリマー1は、水素原子を含む単位1-2を更に含むか、又は、単位1-2以外の単位であって、水素原子を含む単位を更に含む。
また、ポリマー1がフッ素原子を含まない単位1-2を含む場合には、ポリマー1は、フッ素原子を含む単位1-2を更に含むか、又は、単位1-2以外の単位であって、フッ素原子を含む単位を更に含む。
【0031】
ポリマー1は、本発明の効果がより優れる点から、単位1-2に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含むことが好ましく、水素原子を含む単位1-2と、フッ素原子を含み水素原子を含まない単位1-2との両方を含むことがより好ましい。
水素原子を含む単位1-2の好適例としては、式(1-2A)で表される単位、式(1-2B)で表される単位、式(1-2C)で表される単位、式(1-2D)で表される単位、式(1-2E)で表される単位が挙げられる。
フッ素原子を含み水素原子を含まない単位1-2の好適例としては、式(1-2F)で表される単位が挙げられる。
中でも、ポリマー1は、本発明の効果がより優れる点から、式(1-2G)で表される構造を有することが好ましい。なお、下記式(1-2G)で表される構造中の右端に記載の単位は、後述する他の単位に該当する。下記式(1-2G)で表される構造において、各単位の結合順序は任意である。すなわち、各単位は、交互に配置されてもよく、種類毎に連続して配置されてもよく(すわなち、ブロックに配置されること)、ランダムに配置されてもよい。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
ポリマー1が単位1-2を含む場合、単位1-2の含有量は、ポリマー1の全単位に対して、50モル%以上であり、本発明の効果がより優れる点から、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
単位1-2の含有量の上限は、100モル%である。
なお、単位1-2の含有量とは、ポリマー1に含まれる単位1-2が1種類のみの場合には、1種類の単位1-2の含有量を指し、ポリマー1に含まれる単位1-2が2種類以上である場合には、それらの合計量を指す。
【0036】
<他の単位>
ポリマー1は、単位1-1及び単位1-2以外の単位(以下、「他の単位」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の単位の具体例としては、テトラフルロエチレンに基づく単位、上記式(1)におけるYaがフッ素原子、X1aが水素原子、X2aがフッ素原子である繰り返し単位、接着性官能基を有するモノマーに基づく単位が挙げられる。
接着性官能基の具体例としては、カルボニル基含有基(例えば、酸無水物基、カルボキシ基)、ヒドロキシ基、アミド基、アミノ基が挙げられ、安定性の点で、カルボニル基含有基が好ましい。
接着性官能基を有するモノマーの具体例としては、CF2=CF(CH2)2COOH、無水イタコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水シトラコン酸が挙げられる。
【0037】
ポリマー1が他の単位を含む場合、他の単位の含有量は、ポリマー1の全単位に対して、0.01~15モル%が好ましく、0.01~10モル%がより好ましく、0.01~1モル%が更に好ましい。
【0038】
<原子量比>
ポリマー1に含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比(H/F)は、0超0.30未満であり、本発明の効果がより優れる点から、0超0.10未満が好ましく、0超0.05未満がより好ましい。
原子量比は、例えば、後述のポリマーの製造方法によってポリマー1を製造することで、上記範囲内になるように調整できる。
【0039】
<物性等>
ポリマー1のTgは、常温での耐久性の点から、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。
ポリマー1のTgは、加工性の点から、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、260℃以下が更に好ましい。
【0040】
ポリマー1のMwは、溶解性の点から、3000~1000000が好ましく、3000~50000がより好ましく、3000~15000が更に好ましい。
【0041】
ポリマー1は、溶解性の点から、アモルファスポリマーであるのが好ましい。
ここで、アモルファスポリマーとは、ポリマー1からなる膜がアモルファスになるポリマーを意味する。
ポリマーがアモルファスポリマーであるかどうかは、示差走査熱量計測定(DSC)法によって測定されるポリマーの結晶化ピークの有無に基づいて判断でき、明確な結晶化ピークが確認できない場合をアモルファスポリマーであると判断する。測定方法の詳細は、後述の実施例欄に示す通りである。
【0042】
ポリマー1からなる膜の水接触角は、耐溶剤性の点から、90度以上が好ましく、95度以上がより好ましく、100度以上が更に好ましい。
ポリマー1からなる膜の水接触角は、通常、110度以下である。
水接触角の測定に用いるポリマー1からなる膜の製造方法、及び、水接触角の測定方法は、後述の実施例欄に示す通りである。
【0043】
[ポリマーの製造方法]
本発明のポリマーの製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、後述の式(2-1)で表されるモノマーに基づく単位(以下、「単位2-1」ともいう。)又は後述の式(2-2)で表されるモノマーに基づく単位(以下、「単位2-2」ともいう。)を含み、水素原子を含む原料ポリマーに対して液相にてフッ素化処理を施して、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満であるポリマー(以下、「ポリマー2」ともいう。)を製造する方法である。
【0044】
上記原料ポリマーのフッ素化処理を常温常圧の条件下で気相にて行った場合、フッ素化率が高いポリマーを得ることが困難な場合があった。
また、フッ素化率の高いモノマーを重合して、フッ素化率が高いポリマーを製造しようとした場合(例えば、全モノマー中、ヘキサフルオロプロペンを50モル%以上含むような重合の場合)、高温(例えば200℃以上)及び高圧(90MPa以上)の条件が必要となる。
これに対して、本製造方法では、液相でフッ素化処理を施すことによって、フッ素化率が高い(すなわち、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満であること)ポリマー2を製造できる。このように、本製造方法によれば、簡便な方法でポリマー2を製造できる。
【0045】
<原料ポリマー>
原料ポリマーは、単位2-1又は単位2-2を含み水素原子を含むポリマーである。
【0046】
(単位2-1)
単位2-1は、下記式(2-1)で表されるモノマーに基づく単位である。
式(2-1) CX11bX12b=C(Y1b)-CX13bX14bX15b
【0047】
X11b~X15bは、それぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。
Y1bは、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
【0048】
Y1bにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様は、上述の式(1-1)のY1aにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様と同様である。
【0049】
原料ポリマーは、要件5を満たす単位2-1を含むことが好ましい。換言すれば、原料ポリマーは、水素原子を含む単位2-1を含むことが好ましい。
要件5:X11b~X15bの少なくとも1つが水素原子を表すか、Y1bが水素原子、又は、少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表す。
【0050】
ポリマー2の製造がより簡便になる点から、要件5を満たす単位2-1において、X11b~X12bのいずれも水素原子を表すか、X13b~X15bのいずれもが水素原子を表すことが好ましい。
【0051】
原料ポリマーは、単位2-1に該当する繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよく、単位2-1に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。
【0052】
原料ポリマーは、水素原子を含まない単位2-1を含んでいてもよく、フッ素原子を含まない単位2-1を含んでいてもよい。
ただし、原料ポリマーが水素原子を含まない単位2-1を含む場合には、原料ポリマーは、水素原子を含む単位2-1を更に含むか、又は、単位2-1以外の単位であって、水素原子を含む単位を更に含む。
【0053】
原料ポリマーが単位2-1を含む場合、単位2-1の含有量は、原料ポリマーの全単位に対して、本発明の効果がより優れる点から、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、70モル%以上が更に好ましい。
単位2-1の含有量の上限は、100モル%である。
なお、単位2-1の含有量とは、原料ポリマーに含まれる単位2-1が1種類のみの場合には、1種類の単位2-1の含有量を指し、原料ポリマーに含まれる単位2-1が2種類以上である場合には、それらの合計量を指す。
【0054】
(単位2-2)
単位2-2は、下記式(2-2)で表されるモノマーに基づく単位である。
式(2-2) CX21bX22b=C(Y2b)-CX23bX24bX25b
【0055】
X21b~X24bは、それぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。
X25bは、フッ素原子が置換していてもよいアルキル基を表す。
Y2bは、水素原子又はフッ素原子を表す。
【0056】
X25bにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様は、上述の式(1-1)のY1aにおけるフッ素原子が置換していてもよいアルキル基の定義及び好適態様と同様である。
【0057】
原料ポリマーは、要件6を満たす単位2-2を含むことが好ましい。換言すれば、原料ポリマーは、水素原子を含む単位2-2を含むことが好ましい。
要件6:X21b~X24bの少なくとも1つが水素原子を表すか、X25bが少なくとも1つの水素原子を含むアルキル基を表すか、Y2bが水素原子を表す。
【0058】
原料ポリマーは、単位2-2に該当する繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよく、単位2-2に該当するが互いに構造の異なる繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。
【0059】
原料ポリマーは、水素原子を含まない単位2-2を含んでいてもよく、フッ素原子を含まない単位2-2を含んでいてもよい。
ただし、原料ポリマーが水素原子を含まない単位2-2を含む場合には、原料ポリマーは、水素原子を含む単位2-2を更に含むか、又は、単位2-2以外の単位であって、水素原子を含む単位を更に含む。
【0060】
原料ポリマーが単位2-2を含む場合、単位2-2の含有量は、原料ポリマーの全単位に対して、本発明の効果がより優れる点から、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、65モル%以上が更に好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
単位2-2の含有量の上限は、100モル%である。
なお、単位2-2の含有量とは、原料ポリマーに含まれる単位2-2が1種類のみの場合には、1種類の単位2-2の含有量を指し、原料ポリマーに含まれる単位2-2が2種類以上である場合には、それらの合計量を指す。
【0061】
(他の単位)
原料ポリマーは、単位2-1及び単位2-2以外の単位(以下、「他の単位」ともいう。)を含んでいてもよい。他の単位の具体例としては、テトラフルオロエチレンに基づく単位、上述の接着性官能基を有するモノマーに基づく単位が挙げられる。
【0062】
原料ポリマーが他の単位を含む場合、他の単位の含有量は、原料ポリマーの全単位に対して、0.01~15モル%が好ましく、0.01~10モル%がより好ましく、0.01~1モル%が更に好ましい。
【0063】
(原子量比)
原料ポリマーに含まれる水素原子量に対するフッ素原子量の原子量比(F/H)は、フッ素化処理後に得られるポリマーの耐熱性の点から、0以上6.7未満が好ましく、0超4.0以下が好ましく、0超2.5以下がより好ましい。
【0064】
<製造条件>
本製造方法における液相でのフッ素化処理の具体例としては、原料ポリマーを有機溶媒に分散させた溶液と、フッ素ガスと、を接触させる方法が挙げられる。これにより、原料ポリマーに含まれる水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されて、ポリマー2が得られる。
【0065】
フッ化処理時の温度(反応温度)は、-20℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましく、また、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
中でも、原料ポリマーのフッ素処理が良好に進行する点からは、反応温度は80℃以上が好ましい。また、加熱エネルギーを低減できる点からは、反応温度は20~40℃が好ましい。
フッ化処理時の圧力(反応圧力)は、0MPaG以上が好ましく、また、0.5MPaG以下が好ましく、0.3MPaG以下がより好ましく、0.2MPaG未満が更に好ましく、0.15MPaG以下が特に好ましい。
中でも、原料ポリマーのフッ素化処理が良好に進行する点からは、反応圧力は0.3MPaG以上であるのが好ましい。また、より簡便な装置でポリマー2を製造できる点からは、反応圧力は0.2MPaG未満が好ましい。
フッ化処理の時間(反応時間)は、特に限定されないが、2~48時間が好ましく、6~24時間がより好ましい。
【0066】
フッ素化処理に用いる有機溶媒は、原料ポリマーを溶解可能であれば特に限定されないが、フッ素系有機溶媒が好ましい。
中でも、原料ポリマーの溶解性に優れる点から、フロリナート(登録商標) FC-77(ペルフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)と炭素数5~18の直鎖のペルフルオロアルキル化合物との混合物)、FC-75(ペルフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン))、FC-770(C3F7NC4F8O、ペルフルオロモルホリン構造)、FC-43(主成分 ペルフルオロトリブチルアミン)(以上、全て3M社製)、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、オクタデカフルオロオクタン、ClCF2CFClCF2OCF2CF2Cl(以下、「CFE-419」ともいう。)が好ましい。
【0067】
<ポリマー2>
ポリマー2は、本製造方法によって得られ、フッ素原子量に対する水素原子量の原子量比が0超0.30未満であるポリマーである。ポリマー2は、原料ポリマーに含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された構造を有する。
【0068】
ポリマー2は、本発明の効果がより優れる点から、上述の要件5を満たす単位2-1又は上述の要件6を満たす単位2-2を含む原料ポリマーを用いて得られたポリマーであって、要件5を満たす単位2-1中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位、又は、要件6を満たす単位2-2中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された単位を含むことが好ましい。
【0069】
ポリマー2は、金属(特に、銅)に対する接着性に優れる点から、ポリマー1であることが好ましい。
【0070】
(原子量比)
ポリマー2に含まれるフッ素原子量に対する水素原子量の原子量比(H/F)は、0超0.30未満であり、0超0.10未満が好ましく、0超0.05未満がより好ましい。
ポリマー2の原子量比(H/F)の値は、例えば、フッ素化処理における反応温度、反応圧力、および、反応時間を上記範囲内にすることにより調整できる。
【0071】
<本製造方法の好適態様>
以下に示す態様A及び態様Bは、本製造方法の好適態様の一例である。
【0072】
(態様A)
態様Aは、下記式(2-1a)で表される繰り返し単位を含む原料ポリマー(以下、「原料ポリマー2-1a」ともいう。)を液相にてフッ素化処理して、下記式(2-1A)で表されるポリマー(以下、「ポリマー2-1A」ともいう。)を得る方法である。
具体的には、下記スキームAに示すように、原料ポリマー2-1aを液相にてフッ素化処理することによって、下記式(2-1a)で表される繰り返し単位のメチル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換される。このようにして得られたポリマー2-1Aは、式(2-1A)に示すように、フッ素原子の数が互いに異なる繰り返し単位を複数含む。
式(2-1A)において、各単位の結合順序は任意である。すなわち、各単位は、交互に配置されてもよく、種類毎に連続して配置されてもよく(すわなち、ブロックに配置されること)、ランダムに配置されてもよい。
【0073】
【0074】
(態様B)
態様Bは、下記式(2-1b)で表されるモノマーに基づく単位を含む原料ポリマー(以下、「原料ポリマー2-1b」ともいう。)を液相にてフッ素化処理して、下記式(2-1B)で表されるポリマー(以下、「ポリマー2-1B」ともいう。)を得る方法である。
具体的には、下記スキームBに示すように、原料ポリマー2-1bを液相にてフッ素化処理することによって、下記式(2-1b)で表される繰り返し単位のメチレン基に含まれる水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換される。このようにして得られたポリマー2-1Bは、式(2-1B)に示すように、フッ素原子の数が互いに異なる繰り返し単位を複数含む。
式(2-1B)において、各単位の結合順序は任意である。すなわち、各単位は、交互に配置されてもよく、種類毎に連続して配置されてもよく(すわなち、ブロックに配置されること)、ランダムに配置されてもよい。
【0075】
【実施例0076】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例1~5は実施例であり、例6~7は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。
【0077】
[例1]
オートクレーブ(内容積200ml、材質:HC-22)中に、原料ポリマーとしてのCH2=CFCF3(以下、「1234yf」ともいう。)のホモポリマーを0.2g、フロリナート(登録商標) FC-77(3M社製、フッ素系有機溶媒)を70g入れて密閉した。
オートクレーブ内の各成分の攪拌を開始した後、系内の酸素濃度が1%未満になるまで窒素を流通させて、上記ホモポリマーがフッ素系有機溶媒に溶解したポリマー溶液を得た。
その後、内温80℃になるまでオートクレーブを昇温し、所定温度に達した段階で、50ml/分で20体積%のフッ素ガスの流通を開始し、ホモポリマーのフッ素化処理を15時間行った。なお、フッ素化処理におけるオートクレーブ内の圧力は、0MPaG(ゲージ圧)とした。
フッ素化処理の終了後、再び系内のフッ素濃度が十分下がるまでオートクレーブ内を窒素流通した後、オートクレーブを開放して内容液(フッ素化処理されたポリマーを含む溶液)を取り出した。
得られた内容液を乾固させて、ポリマーAを得た。
【0078】
<NMR分析>
原料ポリマーをヘキサフルオロベンゼンに溶解させ、内標準物質として1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを添加し、1H-NMR、19F-NMR、13C-NMRによって分析した。
NMRによる分析結果に基づいて、原料ポリマー中に含まれる水素原子量及びフッ素原子量を算出して、F/Hの値を求めた。数値を表1に示す。
【0079】
ポリマーAをヘキサフルオロベンゼンに溶解させ、1H-NMR及び19F-NMRによって分析した。
NMRによる分析結果に基づいて、ポリマーA中に含まれる水素原子量及びフッ素原子量を算出して、H/Fの値を求めた。数値を表1に示す。
また、主鎖中のCH2量及びCF2量の測定、又は、側鎖中のCF3量を定量して、ポリマーAに含まれる各単位の含有量(モル%)を算出した。
NMR分析の結果、ポリマーAは、下記式(A)で表される構造であることがわかった。なお、式中の各繰り返し単位に付した文字(m11、m12、m13)は、各単位の含有量(モル%)を表す。
【0080】
【0081】
m11=0.010(モル%)
m12=0.490(モル%)
m13=99.500(モル%)
【0082】
<DSC分析>
原料ポリマー及びポリマーAについて、示差走査熱量計(製品名「DSC 204F1 Phoenix」、Netzsch社製)を用いて、10℃/分で-20~250℃の範囲の昇温及び冷却を3サイクル実施して、DSC曲線を得た。
得られたDSC曲線に基づいて、結晶化ピークの有無を判定した。明確な結晶化ピークが認められた場合には、ポリマーがアモルファスポリマーであると判断した。判定結果を表1に示す。
【0083】
<Tg測定>
示差走査熱量計(製品名「DSC 204F1 Phoenix」、Netzsch社製」を用いて、原料ポリマー及びポリマーAのTgを測定した。測定結果を表1に示す。
【0084】
[例2]
原料ポリマーとして、CF2=CFCH3(以下、「1243yc」ともいう。)と、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)とのコポリマー(1243ycに基づく単位:TFEに基づく単位=60:40(モル比))を0.1g用い、フッ素化処理の各条件を表1に記載の通りに変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーB(下記式(B))を得た。
例2で使用した原料ポリマー及びポリマーBを用いた以外は、例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
m21=0.100(モル%)
m22+m23=1.100(モル%)
m24=58.800(モル%)
m25=40.000(モル%)
【0087】
[例3]
溶媒として、ClCF2CFClCF2OCF2CF2Cl(以下、「CFE-419」ともいう。)を200g用い、フッ素化処理の各条件を表1に記載の通りに変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーC(下記式(C))を得た。
例3で使用した原料ポリマー及びポリマーCを用いた以外は、例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
m31=22.000(モル%)
m32=11.000(モル%)
m33=67.000(モル%)
【0090】
[例4]
原料ポリマーとして、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロー1-へキセン(以下、「C4オレフィン」ともいう。)と、TFEとのコポリマー(C4オレフィンに基づく単位:TFEに基づく単位=70:30(モル比))を0.1g用い、溶媒として、フロリナート(登録商標) FC-43(3M社製)を用い、フッ素化処理の各条件を表1に記載の通りに変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーD(下記式(D))を得た。
例4で使用した原料ポリマー及びポリマーDを用いた以外は、例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0091】
【0092】
m41=19.8(モル%)
m42=6.7(モル%)
m43=6.8(モル%)
m44=1.2(モル%)
m45=1.3(モル%)
m46=34.2(モル%)
m47=30.0(モル%)
【0093】
[例5]
原料ポリマーとしてポリイソブチレンを用い、フッ素化処理の各条件を表1に記載の通りに変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーE(下記式(E))を得た。
例5で使用した原料ポリマー及びポリマーEを用いた以外は、例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0094】
【0095】
ポリマーEには、互いに構造の異なる2種以上の(CF2-CX1X2)、及び、互いに構造の異なる2種以上の(CHF-CX3X4)が含まれていた。
ここで、式(E)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、-CH3、-CH2F、-CHF2、又は、-CF3を表す。ただし、X1及びX2のうち、一方が-CF3である場合、他方は-CH3、-CH2F、又は、-CHF2である。
また、式(E)中、X3及びX4はそれぞれ独立に、-CH3、-CH2F、-CHF2、又は、-CF3を表す。
【0096】
m51=13.0(モル%)
m52=18.0(モル%)
m53=10.0(モル%)
m54=59.0(モル%)
【0097】
[例6]
フッ化ビニリデンポリマー(商品名「Kynar」、アルケマ社製)(以下、「PVDF」ともいう。)をポリマーFとして用いた。
ポリマーFを用いた以外は例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0098】
[例7]
テフロン(登録商標) AF(三井・ケマーズフロロプロダクツ社製、TFEと環状パーフルオロエーテルとのコポリマー)(以下、「TeflonAF」ともいう。)をポリマーGとして用いた。
ポリマーGを用いた以外は例1と同様にして、各種分析及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0099】
[接着性の評価]
各例で得られたポリマーの濃度が1~2質量%となるようにフロリナート(登録商標) FC-77(3M社製、フッ素系有機溶媒)に溶解させた。
得られた溶液を銅板上にスピンコートし、各溶媒の沸点に応じて100~150℃でコート基板を乾燥させて、塗膜付き銅板を得た。塗膜のサイズは、縦50mm、横50mm、厚さ1μmであった。
カーターを用いて塗膜を6mm四方の間隔で格子状にカットした後、セロハンテープ(商品名「CT405AP-12」、ニチバン社製)を強く圧着させた後、引き剥がした。
塗膜付き銅板を目視にて確認して、下記基準にて接着性を評価した。
5:剥離無し
4:角剥離(カットされた塗膜の角が剥離していること)が確認されるが、線剥離(カットされた塗膜の縁に沿って剥離していること)は確認されない
3:角剥離とともに、線剥離も確認され、全体で20%未満の剥離が確認される
2:全体で20%以上100%未満の剥離が確認される
1:全ての剥離が確認される(銅板上に塗膜が残っていない)
【0100】
[水接触角]
接着性の評価で作製した塗膜の表面に、2μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計(協和界面化学社製:自動接触角計 DropMaster701)を用いて、水に対する接触角を異なる5箇所で測定し、その算術平均値を水接触角とした。測定結果を表1に示す。
【0101】
【0102】
表1に示す通り、本発明のポリマーは、金属に対する接着性に優れることが確認できた(例1~5)。
また、本発明のポリマーの製造方法によれば、高温及び高圧の条件下でフッ素化処理を行わなくとも、所望のポリマーを製造できることが確認できた(例1~5)。したがって、本発明のポリマーの製造方法は、簡便な方法であるといえる。