(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175418
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】摩擦材形成用組成物、摩擦材、摩擦部材及び自動車用ディスクブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20231205BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20231205BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09K3/14 520C
C09K3/14 520L
C09K3/14 520J
C09K3/14 520G
F16D65/092 B
F16D69/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087849
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】真柄 暁仁
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058BA41
3J058BA76
3J058CA42
3J058CA47
3J058FA01
3J058GA02
3J058GA13
3J058GA15
3J058GA22
3J058GA26
3J058GA28
3J058GA33
3J058GA35
3J058GA37
3J058GA39
3J058GA45
3J058GA55
3J058GA82
3J058GA92
(57)【要約】
【課題】低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制を両立可能な摩擦材を作製可能な摩擦材形成用組成物の提供。
【解決手段】チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレンと、酸化ジルコニウムとを含み、銅を含まないか、あるいは、銅の含有率が元素基準にて0質量%を超えて0.5質量%以下であり、前記チタン酸塩の含有率が20質量%以上35質量%未満であり、前記ポリテトラフルオロエチレンの含有率が0.5質量%以上5質量%未満であり、前記酸化ジルコニウムの体積平均粒径が8.0μmよりも大きい摩擦材形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレンと、酸化ジルコニウムとを含み、
銅を含まないか、あるいは、銅の含有率が元素基準にて0質量%を超えて0.5質量%以下であり、
前記チタン酸塩の含有率が20質量%以上35質量%未満であり、
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有率が0.5質量%以上5質量%未満であり、
前記酸化ジルコニウムの体積平均粒径が8.0μmよりも大きい摩擦材形成用組成物。
【請求項2】
金属硫化物を含まない請求項1に記載の摩擦材形成用組成物。
【請求項3】
鉄に対して犠牲防食作用を有する金属粉末をさらに含む請求項1に記載の摩擦材形成用組成物。
【請求項4】
前記酸化ジルコニウムが脱珪ジルコニアを含む請求項1に記載の摩擦材形成用組成物。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレンの体積平均粒径が0.5μm~8.0μmである請求項1に記載の摩擦材形成用組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の摩擦材形成用組成物を成形して得られる摩擦材。
【請求項7】
請求項6に記載の摩擦材と、裏金とを備える摩擦部材。
【請求項8】
請求項6に記載の摩擦材を備える自動車用ディスクブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦材形成用組成物、摩擦材、摩擦部材及び自動車用ディスクブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車の制動装置としてディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。繊維基材、摩擦調整材、結合材等を配合した摩擦材組成物を用い、予備成形、熱成形、仕上げ等の工程からなる製造プロセスによって摩擦材は製造される。
【0003】
自動車用ディスクブレーキパッドに用いられる摩擦材組成物としては、例えば、繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含み、該摩擦材組成物中の銅の含有量が0.5質量%以下であり、平均粒子径が0.5~8μmのフッ素系ポリマー粒子を含有することを特徴とする摩擦材組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車用ディスクブレーキパッド(以下、「ブレーキパッド」ともいう。)に使用される摩擦材としては、ブレーキパッドの摩耗、使用環境による摩擦特性の変化、使用時のブレーキ鳴き、ブレーキパッドと接触するローターの摩耗等を抑制可能であることが望ましい。
【0006】
例えば、ブレーキパッドの使用環境による摩擦特性の変化としては、高湿条件下等に放置する前後の摩擦係数(μ)の変化率(例えば、高湿条件下に放置する前の摩擦係数に対する高湿条件下に放置した後の摩擦係数の比、以下、「放置後μ比」ともいう。)によって評価することが可能である。例えば、放置後μ比が1よりも大きくなる場合、高湿条件によって摩擦係数が増加することで、使用時のブレーキの鳴きが発生しやすくなる。そのため、放置後μ比の上昇を抑制可能であることが望ましい。
【0007】
放置後μ比の上昇を抑制する手法としては、摩擦材組成物に含まれる繊維基材、摩擦調整材、研削材等の各成分を調整することが考えられる。しかし、ブレーキパッドに求められる所望の摩擦係数を維持しながら、各成分の組成を調整して放置後μ比の上昇を抑制することを試みた場合、ブレーキパッドと接触するローターの摩耗が発生しやすくなる。そのため、低い放置後μ比と、ローター摩耗の抑制とはトレードオフの関係にあり、両立させることが難しい。
【0008】
本開示は上記事情に鑑みてなされたのであり、低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制を両立可能な摩擦材を作製可能な摩擦材形成用組成物、これを成形して得られる摩擦材、並びに当該摩擦材を備える摩擦部材及び自動車用ディスクブレーキパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレンと、酸化ジルコニウムとを含み、
銅を含まないか、あるいは、銅の含有率が元素基準にて0質量%を超えて0.5質量%以下であり、
前記チタン酸塩の含有率が20質量%以上35質量%未満であり、
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有率が0.5質量%以上5質量%未満であり、
前記酸化ジルコニウムの体積平均粒径が8.0μmよりも大きい摩擦材形成用組成物。
<2> 金属硫化物を含まない<1>に記載の摩擦材形成用組成物。
<3> 鉄に対して犠牲防食作用を有する金属粉末をさらに含む<1>又は<2>に記載の摩擦材形成用組成物。
<4> 前記酸化ジルコニウムが脱珪ジルコニアを含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の摩擦材形成用組成物。
<5> 前記ポリテトラフルオロエチレンの体積平均粒径が0.5μm~8.0μmである<1>~<4>のいずれか1つに記載の摩擦材形成用組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の摩擦材形成用組成物を成形して得られる摩擦材。
<7> <6>に記載の摩擦材と、裏金とを備える摩擦部材。
<8> <6>に記載の摩擦材を備える自動車用ディスクブレーキパッド。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制を両立可能な摩擦材を作製可能な摩擦材形成用組成物、これを成形して得られる摩擦材、並びに当該摩擦材を備える摩擦部材及び自動車用ディスクブレーキパッドが提供される。
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を1種のみ含んでいてもよく、複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0013】
<摩擦材形成用組成物>
本開示の摩擦材形成用組成物は、チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレンと、酸化ジルコニウムとを含み、銅を含まないか、あるいは、銅の含有率が元素基準にて0質量%を超えて0.5質量%以下であり、前記チタン酸塩の含有率が20質量%以上35質量%未満であり、前記ポリテトラフルオロエチレンの含有率が0.5質量%以上5質量%未満であり、前記酸化ジルコニウムの体積平均粒径が8.0μmよりも大きい組成物である。本開示の摩擦材形成用組成物では、各成分の組成を調整することで低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制を両立可能な摩擦材を作製可能である。
【0014】
本開示の摩擦材形成用組成物は、チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、酸化ジルコニウムとを含み、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。以下、本開示の摩擦材形成用組成物に含まれ得る各成分について具体的に説明する。
【0015】
(チタン酸塩)
摩擦材形成用組成物に含まれるチタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等のチタン及びカリウムを含む塩が挙げられる。中でも、摩擦材のμレベルを高める観点から、6チタン酸カリウムを含むことが好ましい。
6チタン酸カリウムの含有率は、μレベルを所望の範囲に調整しやすい観点から、チタン酸塩全量に対して、50質量%~100質量%であってもよく、80質量%~100質量%であってもよい。
【0016】
チタン酸塩(好ましくは6チタン酸カリウム)の含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、20質量%以上35質量%未満であり、放置後μ比をより低下させ、かつパッド摩耗を抑制する観点から、23質量%以上30質量%であってもよく、25質量%~30質量%であってもよい。
【0017】
(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))
ポリテトラフルオロエチレンの体積平均粒径は、0.5μm~8.0μmであってもよく、1.0μm~7.0μmであってもよく、2.0μm~6.0μmであってもよい。摩擦材形成用組成物に含まれるポリテトラフルオロエチレンは、一次粒子が凝縮した二次粒子の状態であってもよい。前述のポリテトラフルオロエチレンの体積平均粒径は、二次粒子の体積平均粒径であってもよい。
【0018】
ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子の体積平均粒径は、100nm~200nmであってもよく、100nm~150nmであってもよい。ポリテトラフルオロエチレンの一次粒径を小さくする観点から、直接重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましい。
【0019】
本開示において、粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの積算が50%となるときの値(メジアン径(D50))を意味する。
【0020】
ポリテトラフルオロエチレンの含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、0.5質量%以上5質量%未満であり、低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制の両立の観点から、0.7質量%以上3質量%以下であってもよく、0.8質量%以上2質量%以下であってもよい。
【0021】
(酸化ジルコニウム)
酸化ジルコニウムの体積平均粒径は、8.0μmよりも大きく、フェード時のトルク振動の抑制、低い放置後μ比及びローター摩耗の抑制の両立の観点から、8.0μm以上20μm以下であってもよく、8.5μm以上15μm以下であってもよく、9.0μm以上13μm以下であってもよい。
【0022】
摩擦材形成用組成物に含まれる酸化ジルコニウムは、μレベルを所望の範囲に調整しやすい観点から、脱珪ジルコニアを含むことが好ましい。脱珪ジルコニアは、珪素濃度が低く、酸化ジルコニウムの純度が高いものであればよく、例えば、SiO2量が粒子全体に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
脱珪ジルコニアの含有率は、μレベルを所望の範囲に調整しやすい観点から、酸化ジルコニウム全量に対して、50質量%~100質量%であってもよく、80質量%~100質量%であってもよい。
【0024】
摩擦材形成用組成物では、酸化ジルコニウムの含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、10質量%以上30質量%以下であってもよく、13質量%以上25質量%以下であってもよく、15質量%以上23質量%以下であってもよい。
【0025】
(銅)
摩擦材形成用組成物は、銅を含まないか、あるいは、銅の含有率が元素基準にて0質量%を超えて0.5質量%以下である。これにより、摩擦材からの銅の流出を防止あるいは抑制することができる。
【0026】
(金属硫化物)
摩擦材形成用組成物は、金属硫化物を含まないことが好ましい。これにより、温度変化による金属酸化物の発生、金属酸化物による摩擦係数(μ)の変動等を抑制でき、さらに、メタルピックアップと呼ばれるブレーキパッド表面における鉄成分の発生、ローター摩耗の増大等の使用中の特性変化を抑制できる。
【0027】
(特定の金属粉末)
摩擦材形成用組成物は、鉄に対して犠牲防食作用を有する金属粉末(以下、特定の金属粉末とも称する。)をさらに含むことが好ましい。これにより、摩擦材のさび抑制が可能となる。特定の金属粉末は、鉄よりもイオン化傾向が高い金属の粉末であることが好ましい。特定の金属粉末の具体例としては、亜鉛粉末が好ましい。
【0028】
(他の成分)
摩擦材形成用組成物は、本発明の効果を奏する範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、結合材、結着材等の樹脂、摩擦調整材、研削材、繊維基材、pH調整剤、充填材などが挙げられる。
【0029】
結合材、結着材等の樹脂としては、ストレートフェノール樹脂、カシューオイル変性フェノール樹脂、アクリルゴム変性フェノール樹脂、シリコーンゴム変性フェノール樹脂、ニトリルゴム(NBR)変性フェノール樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、フルオロポリマー分散フェノール樹脂、シリコーンゴム分散フェノール樹脂等が挙げられる。
【0030】
摩擦材形成用組成物では、樹脂の含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、5質量%~20質量%であってもよく、6質量%~15質量%であってもよく、8質量%~12質量%であってもよい。
【0031】
摩擦調整材、研削材等(但し、チタン酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び酸化ジルコニウムを除く)としては、タイヤトレッドゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム、フリクションダスト、黒鉛、バーミキュライト、金雲母、白雲母、四三酸化鉄、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ジルコン、γアルミナ、αアルミナ、炭化ケイ素、ウォラストナイト、セピオライト等が挙げられる。
【0032】
摩擦材形成用組成物では、摩擦調整材及び研削材(但し、チタン酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び酸化ジルコニウムを除く)の合計含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、10質量%~50質量%であってもよく、15質量%~40質量%であってもよく、20質量%~35質量%であってもよい。
【0033】
繊維基材としては、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維、ロックウール等が挙げられる。
【0034】
摩擦材形成用組成物では、繊維基材の含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、5質量%~20質量%であってもよく、6質量%~15質量%であってもよく、8質量%~12質量%であってもよい。
【0035】
pH調整剤としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0036】
摩擦材形成用組成物では、pH調整剤の含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、1質量%~10質量%であってもよく、2質量%~8質量%であってもよく、3質量%~6質量%であってもよい。
【0037】
充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0038】
摩擦材形成用組成物では、充填材の含有率は、摩擦材形成用組成物全量に対して、5質量%~20質量%であってもよく、6質量%~15質量%であってもよく、8質量%~12質量%であってもよい。
【0039】
<摩擦材>
本開示の摩擦材は、前述の本開示の摩擦材形成用組成物を成形して得られる。摩擦材は、摩擦材形成用組成物を従来公知の方法で成形することで得られる。例えば、チタン酸塩と、ポリテトラフルオロエチレンと、酸化ジルコニウムと、必要に応じて前述のその他の成分と、を混合して摩擦材形成用組成物を調製し、調製した摩擦材形成用組成物を加熱成形することで摩擦材を作製できる。摩擦材形成用組成物の調製に結合材、結着材等の樹脂を用いる場合には、結合材、結着材等の樹脂を熱硬化させてもよい。
【0040】
摩擦材形成用組成物を加熱成形する際、他の部材(例えば、後述の裏金)とともに摩擦材形成用組成物を加熱成形してもよい。摩擦材形成用組成物を加熱成形して摩擦材を作製した後に、必要に応じて摩擦材の表面を研磨してもよい。
【0041】
<摩擦材の用途>
本開示の摩擦材の用途としては、摩擦部材、自動車用ディスクブレーキパッド等が挙げられる。摩擦部材は、本開示の摩擦材と、裏金とを備える構成が挙げられる。摩擦材形成用組成物を用いて摩擦部材、自動車用ディスクブレーキパッド等を作製する方法としては、従来公知の方法が挙げられる。
【実施例0042】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
[ディスクブレーキパッドの作製]
<実施例1~3及び比較例1~7>
表1に示す配合比率(質量%)に従って各材料を配合し、各摩擦材形成用組成物を得た。表1中の空欄は、未配合を意味する。なお、樹脂、酸化ジルコニウム、チタン酸塩及びPTFEとしては以下の成分を用いた。
-各材料-
・樹脂(シリコーンゴム変性フェノール樹脂)
・酸化ジルコニウム1(体積平均粒径3.4μmの脱珪ジルコニア)
・酸化ジルコニウム2(体積平均粒径6.1μmの脱珪ジルコニア)
・酸化ジルコニウム3(体積平均粒径8.2μmの脱珪ジルコニア)
・酸化ジルコニウム4(体積平均粒径10.2μmの脱珪ジルコニア)
・酸化ジルコニウム5(体積平均粒径12.2μmの脱珪ジルコニア)
・チタン酸塩(6チタン酸カリウム)
・PTFE(体積平均粒径(二次粒子)4.0μm±2.0μm)
【0044】
摩擦材形成用組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲ(登録商標)ミキサーM20)で撹拌混合し、得られた混合物を、成形プレス(株式会社テクノマルシチ製)を用いて鉄製の裏金(厚さ6mm)と共に加熱加圧成形した。得られた成形品を、200℃で3.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨した。次いで、成形品に対して500℃で3分間のスコーチ処理を行い、厚さ10mm、投影面積60cm2の摩擦材を備えるディスクブレーキパッドを作製した。
【0045】
(放置後μ比、フェード時トルク振動、パッド摩耗及びローター摩耗)
各実施例及び各比較例にて作製したディスクブレーキパッドを用い、表2の試験条件に準拠して実施した試験によって放置後μ比、フェード時トルク振動、パッド摩耗及びローター摩耗を求めた。放置後μ比は、No.6及びNo.9の1制動目平均μ比([No.9でのμ(放置後μ 2回目 0.5MPa5km/h)/No.6でのμ(放置後μ 1回目 0.5MPa5km/h)]×100)より算出した。フェード時トルク振動は、No.14及びNo.18における1制動中トルク変動の最大値をフェード時トルク振動とした。パッド摩耗は試験前と試験後のブレーキパッドの厚み差より算出し、ローター摩耗は試験前と試験後のローターの厚み差より算出した。
表2中の初速度の単位はkm/h、減速度の単位はm/s2、液圧の単位はMPaである。
【0046】
放置後μ比、フェード時トルク振動、パッド摩耗及びローター摩耗の結果を表1に示す。これらの各項目の評価基準は以下の通りである。それぞれの項目について評価B以上であれば、結果は良好である。
-放置後μ比の評価基準-
A:120%未満
B:120%以上130%未満
C:130%以上
-フェード時トルク振動の評価基準-
A:400Nm未満
B:400Nm以上600Nm未満
C:600Nm以上
-パッド摩耗の評価基準-
A:2.20mm未満
B:2.20mm以上2.80mm未満
C:2.80mm以上
-ローター摩耗の評価基準-
A:0.020未満
B:0.020以上0.025未満
C:0.025以上
【0047】
【0048】
【0049】
表1に示すように、各実施例では、放置後μ比、フェード時トルク振動、パッド摩耗及びローター摩耗の評価結果がいずれもB以上であった。
一方、各比較例では、放置後μ比、フェード時トルク振動、パッド摩耗及びローター摩耗の評価結果の少なくともいずれか1つがCであった。より詳細には、各比較例では、放置後μ比及びローター摩耗の評価結果の少なくとも一方がCであった。