(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175484
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/90 20060101AFI20231205BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A01D34/90 N
A01D34/90 E
A01B69/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087946
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(72)【発明者】
【氏名】清野 朗蒼
(72)【発明者】
【氏名】濱田 祥希
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043BA01
2B043BB11
2B043DA05
2B043DC03
2B043EA02
2B083BA12
2B083DA02
2B083HA22
2B083HA26
(57)【要約】
【課題】簡単な片手操作で移動体を左方向又は右方向に移動させることができる操作装置を得る。
【解決手段】操作装置20は、一端側が移動体30に接続可能に構成された長尺棒状の本体部22と、本体部22の他端側の外周面を囲むように設けられると共に手元操作時に把持される把持部50を備え、移動体30に対して把持部50を相対的に移動させることにより操作指示が可能な手元操作部24と、手元操作部24による操作指示に応じて移動体30を左方向又は右方向に移動させる移動制御部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が移動体に接続可能に構成された長尺棒状の本体部と、
該本体部の他端側の外周面を囲むように設けられると共に手元操作時に把持される把持部を備え、前記移動体に対して前記把持部を相対的に移動させることにより操作指示が可能な手元操作部と、
該手元操作部による操作指示に応じて前記移動体を左方向又は右方向に移動させる移動制御部と、
を備えた操作装置。
【請求項2】
前記把持部は、前記本体部の外周面に対して間隙を有して設けられた筒状の枠体で構成され、
前記手元操作部は、前記本体部の外周面に対して前記把持部を水平方向又は垂直方向に移動させることにより前記操作指示を行う請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記手元操作部は、前記把持部を前記本体部の軸周りに回転させることにより前記操作指示を行う請求項1に記載の操作装置。
【請求項4】
前記手元操作部による前記操作指示の移動指示方向を検出する検出部を備えた請求項1に記載の操作装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、前記検出部により前記移動指示方向が検出されている間は、前記移動体を左方向又は右方向に移動させる請求項4に記載の操作装置。
【請求項6】
前記手元操作部は、手元操作されることにより通常状態から前記移動体を左方向又は右方向に移動させる操作指示状態とされ、前記手元操作が解除されると前記通常状態に復帰する請求項1に記載の操作装置。
【請求項7】
前記手元操作部は、反力機構を備えている請求項6に記載の操作装置。
【請求項8】
前記手元操作部による手元操作は、前記把持部を前記本体部の軸周りに回転させることにより行われ、
前記反力機構は、
前記把持部の回転に連動して回転し、かつ断面形状が楕円形である軸体と、
該軸体の前記楕円形の短軸方向に対向して設けられた一対の弾性部材と、を備え、
手元操作により前記把持部が回転されると、前記軸体が前記把持部と同方向に回転して前記弾性部材を外方に向けて押圧し、前記手元操作が解除されると、前記軸体は前記弾性部材によって元の位置に復帰する請求項7に記載の操作装置。
【請求項9】
前記移動制御部は、前記手元操作部の操作量に応じて、前記移動体の速度を制御する請求項1に記載の操作装置。
【請求項10】
前記移動体は、左側駆動部と右側駆動部を有しており、
前記移動制御部は、前記左側駆動部と前記右側駆動部とを別々に駆動させる請求項1に記載の操作装置。
【請求項11】
前記移動体は草刈機である請求項1に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機等の移動体を操作する操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業就業人口の減少、及び高齢化が深刻になっている。このような背景から、農作業を省力化する試みが行われているが、依然として人手に頼る作業や、熟練者でなければできない作業が存在している。その作業のひとつとして、斜面や不整地での草刈り作業がある。特許文献1には、作業者が草刈機本体を前進させる際も後進させる際も、自動的に前輪駆動又は後輪駆動にさせ、操作方向にかかわらず同様の操作感で操作可能にすることにより、操作性を向上させた歩行型草刈機が開示されている。また、特許文献2には、自走可能な移動体において、単一の操作グリップによって進退移動および操舵(または旋回)の各操作を可能にした態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-181440号公報
【特許文献2】特開2018-190303号後方
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の歩行型草刈機は、ハンドル部を一方の手で把持した状態で、受付部(前後進変更ハンドル)を操作する構造となっており、片手での操作が困難である。また、特許文献2に記載の操作グリップは、片手で操作可能な構成ではあるが、操作グリップの軸を有して構成されている。そのため、例えば、移動体から延在する操作棒等に組み付けた際に操作グリップの軸と操作棒の軸との間に距離があるため、操作の方向によっては操作性が低下してしまう場合があり、操作性には改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、簡単な片手操作で移動体を左方向又は右方向に移動させることができる操作装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る操作装置は、一端側が移動体に接続可能に構成された長尺棒状の本体部と、該本体部の他端側の外周面を囲むように設けられると共に手元操作時に把持される把持部を備え、前記移動体に対して前記把持部を相対的に移動させることにより操作指示が可能な手元操作部と、該手元操作部による操作指示に応じて前記移動体を左方向又は右方向に移動させる移動制御部と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る操作装置は、長尺棒状の本体部の他端側の外周面を囲むように設けられると共に手元操作時に把持される把持部を備え、移動体に対して把持部を相対的に移動させることにより操作指示が可能な手元操作部を備えている。そのため、把持部を把持した状態で、把持した側の手で把持部を移動体に対して相対的に移動させることにより操作指示を行うことができる。また、移動制御部は、手元操作部による操作指示に応じて移動体を左方向又は右方向に移動させるので、簡単な片手操作で移動体を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記把持部は、前記本体部の外周面に対して間隙を有して設けられた筒状の枠体で構成され、前記手元操作部は、前記本体部の外周面に対して前記把持部を水平方向又は垂直方向に移動させることにより前記操作指示を行う。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る操作装置では、把持部を水平方向又は垂直方向に移動させることにより、本体部の外周面と把持部である筒状の枠体との間に設けられた間隙の大きさが変化する。これにより、把持部は本体部の外周面に対して相対的に移動することになるので、簡単な片手操作で移動体を移動させることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記手元操作部は、前記把持部を前記本体部の軸周りに回転させることにより前記操作指示を行う。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る操作装置では、把持部を本体部の軸周りに回転させることにより、把持部を移動体に対して相対的に移動させることができるので、簡単な片手操作で移動体を移動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記手元操作部による前記操作指示の移動指示方向を検出する検出部を備えている。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る操作装置では、検出部が、手元操作部による操作指示の移動指示方向を検出するので、移動制御部は検出部に検出された移動指示方向に基づいて移動体を移動させることができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明に係る操作装置は、請求項4に記載の構成において、前記移動制御部は、前記検出部により前記移動指示方向が検出されている間は、前記移動体を左方向又は右方向に移動させる。
【0015】
請求項5に記載の本発明に係る操作装置では、移動制御部が、検出部により移動指示方向が検出されている間、移動体を左方向又は右方向に移動させているので、操作指示が行われている間は移動体を移動させることができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記手元操作部は、手元操作されることにより通常状態から前記移動体を左方向又は右方向に移動させる操作指示状態とされ、前記手元操作が解除されると前記通常状態に復帰する。
【0017】
請求項6に記載の本発明に係る操作装置では、手元操作部は、手元操作されることにより通常状態から移動体を左方向又は右方向に移動させる操作指示状態とされるので、手元操作されている間、移動体を左方向又は右方向に移動させることができる。一方、手元操作部は、手元操作が解除されると通常状態に復帰するので、手元操作が行われていない間は、移動体は左右方向又は右方向に移動されずに直進することができる。
【0018】
請求項7に記載の本発明に係る操作装置は、請求項6に記載の構成において、前記手元操作部は、反力機構を備えている。
【0019】
請求項7に記載の本発明に係る操作装置では、手元操作部が反力機構を備えているので、手元操作が解除された際に、反力機構によって手元操作部を操作指示状態から通常状態に復帰させることができる。
【0020】
請求項8に記載の本発明に係る操作装置は、請求項7に記載の構成において、前記手元操作部による手元操作は、前記把持部を前記本体部の軸周りに回転させることにより行われ、前記反力機構は、前記把持部の回転に連動して回転し、かつ断面形状が楕円形である軸体と、該軸体の前記楕円形の短軸方向に対向して設けられた一対の弾性部材と、を備え、手元操作により前記把持部が回転されると、前記軸体が前記把持部と同方向に回転して前記弾性部材を外方に向けて押圧し、前記手元操作が解除されると、前記軸体は前記弾性部材によって元の位置に復帰する。
【0021】
請求項8に記載の本発明に係る操作装置では、反力機構は、手元操作により把持部が回転されると、軸体が把持部と同方向に回転して弾性部材を外方に向けて押圧し、手元操作が解除されると、軸体は前記弾性部材によって元の位置に復帰する。そのため、操作者は、手元操作により把持部を任意の方向に回転させることにより、簡単な片手操作で移動体を任意の方向に移動させることができる、また、操作者は、手元操作を解除すると把持部が元の位置に復帰するので、簡単な片手操作で移動体を直進させることができる。
【0022】
請求項9に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記移動制御部は、前記手元操作部の操作量に応じて、前記移動体の速度を制御する。
【0023】
請求項9に記載の本発明に係る操作装置では、手元操作部の操作量に応じて、移動体の速度を制御することができる。そのため、操作量が少ない場合には、手元操作部を操作する操作者が力の弱い、例えば高齢者等であることが考えられるので、少しの操作量でも車輪回転数を増加可能にすることによって移動体の速度を早くする。逆に、操作量が多い場合には、手元操作部を操作する操作者が力の強い、例えば若者等であることが考えられるので、少しの操作量では車輪回転数を増加できないようにして移動体の速度を遅くする。
【0024】
請求項10に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記移動体は、左側駆動部と右側駆動部を有しており、前記移動制御部は、前記左側駆動部と前記右側駆動部とを別々に駆動させる。
【0025】
請求項10に記載の本発明に係る操作装置では、移動制御部は、移動体の左側駆動部と右側駆動部とを別々に駆動させるので、移動体の左側駆動部と右側駆動部の車輪回転数を異ならせることにより、移動体を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0026】
請求項11に記載の本発明に係る操作装置は、請求項1に記載の構成において、前記移動体が草刈機である。
【0027】
請求項11に記載の本発明に係る操作装置は、草刈機に接続されるので、簡単な片手操作で草刈機を左方向又は右方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る操作装置は、簡単な片手操作で移動体を左方向又は右方向に移動させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る操作装置が接続された草刈機の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1の操作装置の把持部を分解した状態を示す分解斜視図である。
【
図4】
図3の把持部の主要部の構成を示す分解図及び組立図である。
【
図5】
図3の把持部を組み立てた状態を示す組立斜視図である。
【
図6】
図3の把持部の反力機構を説明する説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る操作装置が接続された草刈機の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図1の草刈機の手元操作の解除状態の駆動態様を示す草刈機の上面図である。
【
図9】
図1の草刈機を左方向へ移動させる際の手元操作による駆動態様を示す草刈機の上面図である。
【
図10】
図1の草刈機が左方向へ移動後の駆動態様を示す草刈機の上面図である。
【
図11】
図1の草刈機を右方向へ移動させる際の手元操作による駆動態様を示す草刈機の上面図である。
【
図12】
図1の草刈機が右方向へ移動した際の駆動態様を示す草刈機の上面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る操作装置の構成を示す斜視図である。
【
図14】
図13の操作装置の草刈機と接続する側の構成を示す拡大斜視図である。
【
図16】操作量に対する車輪回転数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る操作装置20が接続された草刈機10について、図面を参照して説明する。なお、各図に記載された矢印UPは草刈機10の上下方向の上方側を示し、矢印FRは草刈機10の前後方向の前方側を示す。また、矢印LHは草刈機10の車幅方向の左側を示す。以下の説明中の上下方向及び前後方向はそれぞれ、草刈機10の上下方向の上下及び草刈機10の前後方向の前後を、左右方向は草刈機10の車幅方向の左右方向をそれぞれ意味する。
【0031】
(草刈機10の構成)
第1実施形態に係る草刈機10は、斜面対応の四輪駆動式の草刈機であり、一例として不整地等の草刈りを行う。草刈機10は、一例として
図1に示されるように、操作装置20と、移動体としての草刈機本体30とを備えている。草刈機本体30は、左側駆動部32と右側駆動部34とを備えている。本実施形態においては一例として、左側駆動部32は左前側車輪32F及び左後側車輪32Rを、右側駆動部34は右前側車輪34F及び右後側車輪34Rを各々備えている。
【0032】
左側駆動部32及び右側駆動部34は、後述する減速機38から伝達される動力を、各々チェーン(図示省略)やスプロケット(図示省略)により左前側車輪32F及び左後側車輪32R、右前側車輪34F及び右後側車輪34Rに伝達する。本実施形態では一例として、左側駆動部32及び右側駆動部34は、後述する制御部50により各々別々に駆動される。
【0033】
また、草刈機本体30は、エンジン部36を備えており、エンジン部36は前側に搭載された前側エンジン36Lと、後側に搭載された後側エンジン36Rとを備えている。本実施形態においては一例として、前側エンジン36Lにより、左側駆動部32すなわち左前側車輪32F及び左後側車輪32Rが駆動され、後側エンジン36Rにより、右側駆動部34すなわち右前側車輪34F及び右後側車輪34Rが駆動されるように構成されている。
【0034】
また、草刈機本体30は、前側エンジン36Lの後方に、減速機38を備えている。減速機38は、各種歯車(図示省略)を有しており、エンジン部36から伝達された動力を、各種歯車を介して減速して左側駆動部32及び右側駆動部34に伝達する。本実施形態においては、一例として、左側駆動部32と右側駆動部34の車輪回転数が同程度になるように調整される。
【0035】
また、減速機38の左側側面には、ワイヤ制御部40が配設されている。ワイヤ制御部40は、エンジン部36、減速機38、及びエンジン部36のキャブレタ(図示省略)の開閉を制御する。具体的には、ワイヤ制御部40は、一例として、2つのサーボモータ(図示省略)を使用し、各々のサーボモータで前側エンジン36L及び後側エンジン36Rのキャブレタの開度を変更するワイヤを引っ張ることで、キャブレタの開度を任意の角度に制御し、前側エンジン36L及び後側エンジン36Rの回転数を変更する。
【0036】
また、後側エンジン36Rの後方には制御部50が配設されている。制御部50は、草刈機10の全体の駆動を制御する装置であり、後述する刈刃部60等を駆動制御する。本実施形態において制御部50は移動制御部としても機能する。
【0037】
また、草刈機本体30は、底部に、草を刈るための回転刃(図示省略)を有した刈刃部60を備えている。刈刃部60は、回転刃の鉛直軸周りの回転によって、草刈機10が通過した領域の草の刈取が可能とされており、回転刃の鉛直軸は、制御部50からの指示によって駆動される後側エンジン36Rにより回転される。なお、本実施形態の刈刃部60は、一例として、刈高が15mm、刈幅が300mmで草刈りを行う。なお、本実施形態においては一例として、刈刃部60はスイッチ(図示省略)がオンにされると作動して草刈りを開始し、スイッチ(図示省略)がオフにされると作動を停止させて草刈りを停止する。
【0038】
また、草刈機本体30の上面の後方側には、操作装置20が接続されている。ここで操作装置20について詳細に説明する。
【0039】
図1に示されるように、操作装置20は、前方側(一端側)が草刈機本体30に接続可能に構成された長尺棒状の本体部22を備えている。本体部22は円筒状に形成されており、軸方向の中央よりも前方側に伸縮機構22Aが設けられている。伸縮機構22Aは公知の機構を使用することができる。本実施形態においては、一例として、本体部22は、0.8~1.8mの範囲で伸縮可能に構成されている。
【0040】
図1及び
図2に示されるように、本体部22の前方側には、本体部22を固定するための固定部24が設けられている。固定部24は複数の板材により構成されており、底面を構成する板材が、草刈機本体30の上面に固定されている。
【0041】
また、操作装置20は、ユニバーサルジョイント26を備えており、ユニバーサルジョイント26は本体部22の前方側の端部に接続され、本体部22はユニバーサルジョイント26を介して固定部24に固定される。ここで、
図2に示されるように、本体部22の軸方向をX軸、X軸に対して左右方向に直交する軸をY軸、X軸に対して上下方向に直交する軸をZ軸とする。本実施形態においては、一例として、本体部22は、ユニバーサルジョイント26により、Z軸周りの回転角度であるヨー角及びY軸周りの回転角度であるピッチ角に対して各々±90°まで傾けることが可能に構成されている。
【0042】
また、操作装置20は、本体部22の後方側(他端側)すなわち手元側に、手元操作により操作指示を行う手元操作部28と、草刈機本体30の前方向及び後方向への発進、並びに停止を行うための操作スイッチ29とを備えている。操作スイッチ29は、一例として軸方向に延在する矩形状に形成されており、前部が押されることにより、前方向への発進がオンにされ、後部が押されることにより、後方向への発進がオンにされる。また前部及び後部が押されていない状態が、停止がオンにされた状態とされる。
【0043】
手元操作部28は、本体部22の手元側の外周面を囲むように設けられると共に手元操作時に操作者に把持される把持部70を備えている。手元操作部28は、本体部22の外周面22Bに対して把持部70を相対的に移動させることにより操作指示が行われる。
【0044】
図3に示されるように、把持部70は、上下方向の外側から内側に向かって、上ケース71A及び下ケース71Bからなる一対のケース71と、上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bからなる一脚ホルダ72と、を備えている。
【0045】
上ケース71A及び下ケース71Bは、各々板材で構成されている。上ケース71Aは、上壁71A1と、上壁71A1の左右方向の両端部から下方へ略直角に延在する左右の側壁71A2とを有し、上壁71A1の略中央には後述するポテンショ伝達部73の角柱部73Aが嵌合する四角孔71A3が設けられている。下ケース71Bは、下壁71B1と、下壁71B1の左右方向の両端部から上方へ略直角に延在する左右の側壁71B2とを有し、下壁71B1の略中央には後述する支えシャフト78の凸部78Bが嵌合する嵌合孔71B3が設けられている。
【0046】
上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bは、直方体で構成されており、上一脚ホルダ72Aは下側、下一脚ホルダ72Bは上側が開放されており、各々前後方向から見て半楕円形状の貫通孔72A1、72B1が設けられている。すなわち、上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bを組付けた際に、中央に楕円状の貫通孔が形成される。この貫通孔には、本体部22が挿通される。
【0047】
また、把持部70は上方から下方に向かって、ポテンショ伝達部73、楕円シャフト74、左右一対の板バネ部75、一脚内シャフト76、ポテンショメータ77、及び支えシャフト78を備えている。
【0048】
ポテンショ伝達部73は、角柱部73Aと、角柱部73Aの下側に延在し角柱部73Aよりも外径の大きい円柱部73Bとを有している。円柱部73Bは角柱部73Aに対して軸周りに回転可能に構成されている。また、円柱部73Bの下方には、ポテンショメータ77の軸部77Aが嵌合される穴(図示省略)が設けられている。
【0049】
楕円シャフト74は、楕円部74Aと、楕円部74Aの上面から上方に延在する上円柱部74Bと、楕円部74Aの下面から下方に延在し、上円柱部74Bよりも直径が大きい下円柱部74Cとを有している。上円柱部74Bと下円柱部74Cとは同心円となるように構成されており、上円柱部74Bの上面から下円柱部74Cの下面まで、ポテンショ伝達部73の円柱部73Bが挿通する挿通孔74Dが形成されている。楕円部74Aは、後方側は挿通孔74Dの軸を中心とした円弧状に形成され、挿通孔74Dよりも前方側は、後方側よりも径の大きい円弧状に形成されている。また、楕円部74Aの左右方向の両端は前方側の円弧と後方側の円弧とを滑らかに接続する直線で構成されている。
【0050】
左右一対の板バネ部75は、弾性を有する板材で構成された矩形状の板バネ75Aと、板バネ75Aを上ケース71Aに取り付けるために、板バネ75Aの左右方向の外側面に設けられた直方体の取付部75Bを備えている。板バネ75Aと取付部75Bとは、一例として、板バネ75Aに取付孔75Cを設け、取付部75Bに取付孔75Cに対応する取付凸部75Dを設けて、取付凸部75Dを取付孔75Cに嵌合することにより固定されている。
【0051】
一脚内シャフト76は、円筒状すなわち中空構造の本体部22の中に入れ込み、パーツ同士の固定を強化する役割を有する部材である。一脚内シャフト76は前後方向に延在する円柱状に形成されており、直径は本体部22の内径よりも小さく形成されている。また、
図4に示されるように、一脚内シャフト76は、上方に、楕円シャフト74の下円柱部74Cが挿通する上孔部76Aが形成されている。一脚内シャフト76と下円柱部74Cとには、対応する箇所にネジ穴(図示省略)が設けられており、このネジ穴にネジ(図示省略)を螺合することにより楕円シャフト74が一脚内シャフト76に固定され、楕円シャフト74と一脚内シャフト76とが共に回転可能にされている。
【0052】
また、一脚内シャフト76は、下方に、ポテンショメータ77が装着される装着穴76Bが形成されている。上孔部76Aと装着穴76Bの間には、ポテンショメータ77の軸部77Aが挿通する連結孔76Cが形成されている。
【0053】
ポテンショメータ77は、回転角や移動量を電圧に変換する機器であり、手元操作部28による操作指示の移動指示方向を検出する検出部として機能する。ポテンショメータ77は、軸部77Aとネジ部77Bとを有する円柱体で構成されており、公知の構造を使用することができる。
【0054】
図4に示されるように、一脚内シャフト76に下方からポテンショメータ77を装着した状態で、本体部22の中に入れ込まれ、本体部22を介して一脚内シャフト76の上方に楕円シャフト74の下円柱部74Cが装着される。ここで、ポテンショメータ77は、ネジ部77Bに上方からナット(図示省略)を螺合することにより一脚内シャフト76に固定されている。また、本体部22を介して一脚内シャフト76の下方に支えシャフト78が装着される。ここで、本体部22及び一脚内シャフト76は、支えシャフト78に対して回転可能に装着される。
【0055】
図3に示されるように、支えシャフト78は、円柱状に形成された円柱部78Aと、円柱部78Aの下面から下方に向かって円柱状に突出し、円柱部78Aよりも直径の小さい凸部78Bが設けられている。この凸部78Bが下ケース71Bの嵌合孔71B3に嵌合することにより支えシャフト78が下ケース71Bに固定される。
【0056】
図4の下図のように、楕円シャフト74、一脚内シャフト76、及びポテンショメータ77が組付けられた本体部22の左右方向には、
図3及び
図5に示されるように、左右一対の板バネ部75が配設される。ここで、楕円シャフト74Aの左右方向の幅は、左右の板バネ75Aの間の幅よりも若干大きく形成されている。これにより、操作されていない通常状態においても板バネ75Aから楕円シャフト74へ力が加わる構造とされている。また、楕円シャフト74の挿通孔74Dにはポテンショ伝達部73の円柱部73Bが挿通して固定され、円柱部73Bの穴(図示省略)には、ポテンショメータ77の軸部77Aが固定される。
【0057】
そして、楕円シャフト74の前方側に、上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bが接続された状態で配設され、上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bを囲むように上ケース71A及び下ケース71Bが取り付けられる。上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bと、ケース71A及び下ケース71Bには、各々対応する箇所に取り付け用の孔が設けられており、この両方の孔にボルト(図示省略)を通してナット(図示省略)で固定することにより、手元操作部28全体の固定が強化されている。また、この際に、下ケース71Bの嵌合孔71B3に支えシャフト78の凸部78Bが嵌合される。
図5に示されるように上ケース71Aと下ケース71Bとが取り付けられた状態において、ケース71は筒状の枠体とされる。また、ケース71は本体部22の外周面22Bに対して間隙を有して配設される。
【0058】
また、
図2に示されるように、把持部70の後方側(手前側)には、本体部22の外周面22Bよりも大きい直径で形成された円筒部22Cが設けられている。この円筒部22Cは、草刈機10を運ぶ際等に操作者によって把持される。
【0059】
上記のように構成された手元操作部28は、
図6に示されるように、操作スイッチ29により前方向への発進がオンにされた状態で把持部70が操作者によって把持されて本体部22の外周面22Bに対して左方向すなわち黒矢印F1方向に移動される手元操作が行われると、本体部22は相対的に白矢印F2方向に移動される。すなわち、操作者が上記のような手元操作をすることにより、手元操作部28は、通常状態から草刈機本体30を右方向に移動させる操作指示状態となる。
【0060】
そして、本体部22が白矢印F2方向に移動されると本体部22内に入れ込まれた一脚内シャフト76も白矢印F2方向に移動される。一脚内シャフト76が白矢印F2方向に移動されると、一脚内シャフト76に固定された楕円シャフト74が矢印Mの方向に回転(左回転)する。
【0061】
一方、楕円シャフト74の回転に伴って、楕円シャフト74に固定されているポテンショ伝達部73も矢印M方向に回転(左回転)するため、ポテンショ伝達部73に固定されたポテンショメータ77の軸部77Aも矢印M方向に回転(左回転)する。ポテンショメータ77は、この際に回転方向及び回転角度すなわち操作角を検出する。なお、図示は省略しているが、ポテンショメータ77からは配線が延出されており、この配線は本体部22の内部を通って制御部50に接続されている。この配線は、本体部22の外部に露出されている箇所もある。ポテンショメータ77により検出された操作角は、配線を介して制御部50に出力される。
【0062】
また、
図6に示されるように、楕円シャフト74が矢印Mの方向に回転(左回転)されると、楕円シャフト74の前端により板バネ75Aが黒矢印F1方向に押圧される。そして、操作者により把持部70の手元操作が解除されると、楕円シャフト74が白矢印R1で示される反力R1によって矢印Mとは反対方向に回転(右回転)されて、本体部22すなわち把持部70は元の位置に復帰する。つまり、手元操作部28は、手元操作が解除されると操作指示状態から通常状態に復帰する。
【0063】
同様にして、把持部70が右方向すなわち黒矢印F1とは反対方向に移動される手元操作が行われると、本体部22は相対的に白矢印F2方向とは反対方向に移動される。すなわち、操作者が上記のような手元操作をすることにより、手元操作部28は、通常状態から草刈機本体30を左方向に移動させる操作指示状態となる。
【0064】
そして、本体部22の移動に伴い、楕円シャフト74が矢印Mとは反対の方向に回転(右回転)する。楕円シャフト74の回転に伴って、楕円シャフト74に固定されているポテンショ伝達部73も矢印Mとは反対方向に回転(右回転)するため、ポテンショ伝達部73に固定されたポテンショメータ77の軸部77Aも矢印Mとは反対方向に回転(右回転)する。ポテンショメータ77は、この際に回転方向及び回転角度すなわち操作角を検出する。
【0065】
また、楕円シャフト74が矢印Mとは反対の方向に回転(右回転)されると、楕円シャフト74の前端により板バネ75Aが黒矢印F1方向とは反対方向に押圧される。そして、操作者により把持部70の手元操作が解除されると、楕円シャフト74が白矢印R2で示される反力R2によって矢印M方向に回転(左回転)されて、本体部22すなわち把持部70は元の位置に復帰する。つまり、手元操作部28は、手元操作が解除されると操作指示状態から通常状態に復帰する。
【0066】
なお、操作量が大きくなってしまった場合に、楕円シャフト74から、板バネ75Aに許容範囲を超える回転量が与えられてしまうと、板バネ75Aが撓んでしまい、反力を生み出す力が弱まってしまう場合がある。そのため、上一脚ホルダ72A及び下一脚ホルダ72Bは、板バネ75Aの反力が弱まるのを防ぐために本体部22の操作範囲を制限する役割を担っている。
【0067】
(制御部50の構成)
次に、移動制御部としての制御部50について詳細に説明する。
図7に示されるように、草刈機本体30に搭載された制御部50は、プロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、通信インタフェース(通信I/F)50E及び入出力インタフェース(入出力I/F)50Fを含んで構成されている。各構成は、バス50Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0068】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dに記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0069】
ROM50Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラムを含む各種データが記憶されている。また、ストレージ50Dは、一例として予め設定された操作角に対する車輪回転数の関係(以下、操作関数という)が記憶される。本実施形態では、ROM50B又はストレージ50Dには、種々の機能を発揮するためのプログラム、及び各種データ等が格納されている。
【0070】
通信I/F50Eは、草刈機10が図示しないサーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、LTE、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0071】
入出力I/F50Fは、制御部50が草刈機10に搭載された各装置と通信するためのインタフェースとされている。そして、制御部50は、入出力I/F50Fを介して後述する各装置に相互に通信可能に接続されている。なお、これらの装置は、バス50Gに対して直接接続されていてもよい。
【0072】
詳しくは、入出力I/F50Fには、前側エンジン36L、後側エンジン36R、ポテンショメータ77、操作スイッチ29、及び刈刃部60等が接続されている。
【0073】
制御部50は、操作スイッチ29がオンにされたことを示す信号が入力されると、ポテンショメータ77により検出された操作角に基づいて、前側エンジン36L及び後側エンジン36Rの各々に出力させる動力の指令信号を出力する。また、制御部50は、操作スイッチ29がオフにされたことを示す信号が入力されると、前側エンジン36L及び後側エンジン36Rの動力の出力を停止させる指令信号を出力する。
【0074】
前側エンジン36Lは、制御部50から入力された指令信号に基づいた動力を減速機38に出力することにより、制御部50により制御された回転数及び回転方向等で左側駆動部32を駆動させる。
【0075】
後側エンジン36Rは、制御部50から入力された指令信号に基づいた動力を減速機38に出力することにより、制御部50により制御された回転数及び回転方向等で右側駆動部34を駆動させる。
【0076】
本実施形態では、制御部50によって左側駆動部32と右側駆動部34の回転数及び回転方向等がそれぞれ独立して制御されることで、草刈機本体30の進行方向を変更することが可能とされている。なお、本実施形態においては、一例として、操作角と左側駆動部32及び右側駆動部34の回転数の関係は、操作角が大きくなるほど線形的に回転数が減少する関数となっている。
【0077】
(操作装置20の操作指示による草刈機10の駆動)
第1実施形態の草刈機10は、
図8に示されるように、操作スイッチ29がオンにされると、草刈機本体30は直進する。具体的には、制御部50が、左側駆動部32と右側駆動部34を同じ回転数で駆動させることにより、草刈機本体30を直進させる。
【0078】
草刈機本体30が直進している際に、
図9に示されるように、操作者が把持部70を右方向に移動させる手元操作を行うと、手元操作部28は、通常状態から草刈機本体30を左方向に移動させる操作指示状態となる。すると、制御部50が、右側駆動部34の回転数はそのままで、左側駆動部32の回転数を減少させることにより左側駆動部32の回転速度を遅くする。
【0079】
これにより、
図10に示されるように、草刈機本体30は左方向に移動する。すなわち草刈機本体30は左方向へ旋回する。この際に、ユニバーサルジョイント26により手元操作部28に対して草刈機本体30が左方向に回転する。操作者は草刈機本体30の回転に合わせて操作し易い角度に手元操作部28の角度を変更することができる。
【0080】
制御部50は、手元操作部28が手元操作されている間は、草刈機本体30を左方向へ旋回させ続ける。一方、操作者が把持部70の手元操作を解除すると、手元操作部28は板バネ75Aによる反力R2(
図6参照)によって、操作指示状態から
図8に示される通常状態に復帰する。すなわち、制御部50が、左側駆動部32と右側駆動部34を同じ回転数で駆動させることにより、草刈機本体30が直進する。
【0081】
一方、草刈機本体30が直進している際に、
図11に示されるように、操作者が把持部70を左方向に移動させる手元操作を行うと、手元操作部28は、通常状態から草刈機本体30を右方向に移動させる操作指示状態となる。すると、制御部50が、左側駆動部32の回転数はそのままで、右側駆動部34の回転数を減少させることにより右側駆動部34の回転速度を遅くする。
【0082】
これにより、
図12に示されるように、草刈機本体30は右方向に移動する。すなわち草刈機本体30は右方向へ旋回する。この際に、左方向へ旋回する場合と同様に、ユニバーサルジョイント26により手元操作部28に対して草刈機本体30が右方向に回転する。操作者は草刈機本体30の回転に合わせて操作し易い角度に手元操作部28の角度を変更することができる。
【0083】
制御部50は、手元操作部28が手元操作されている間は、草刈機本体30を右方向へ旋回させ続ける。一方、操作者が把持部70の手元操作を解除すると、手元操作部28は板バネ75Aによる反力R1(
図6参照)によって、操作指示状態から
図8に示される通常状態に復帰する。すなわち、制御部50が、左側駆動部32と右側駆動部34を同じ回転数で駆動させることにより、草刈機本体30が直進する。
【0084】
そして、操作者により操作スイッチ29がオフにされると、草刈機本体30は停止する。具体的には、制御部50が、前側エンジン36L及び後側エンジン36Rの動力の出力を停止させることにより、左側駆動部32と右側駆動部34を停止させる。
【0085】
(第1実施形態の作用及び効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果を説明する。
【0086】
第1実施形態の操作装置20は、長尺棒状の本体部22の他端側(前方側)の外周面22Bを囲むように設けられると共に手元操作時に把持される把持部70を備え、本体部22の外周面22Bに対して把持部70を相対的に移動させることにより操作指示が可能な手元操作部28を備えている。そのため、把持部70を把持した状態で、把持した側の手で把持部70を本体部22の外周面22Bに対して相対的に移動させることにより操作指示を行うことができる。また、制御部50は、手元操作部28による操作指示に応じて草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させるので、簡単な片手操作で草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0087】
また、第1実施形態の操作装置20は、把持部70が、本体部22の外周面22Bに対して間隙を有して設けられた筒状の枠体とされるケース71で構成されている。そのため、把持部70を水平方向(左右方向)に移動させることにより、本体部22の外周面22Bとケース71との間に設けられた間隙の大きさが変化する。これにより、把持部70が本体部22の外周面22Bに対して相対的に移動することになるので、簡単な片手操作で草刈機本体30を移動させることができる。
【0088】
また、第1実施形態の操作装置20は、検出部としてのポテンショメータ77が、手元操作部28による操作指示の移動指示方向として操作角を検出するので、制御部50はポテンショメータ77に検出された操作角に基づいて草刈機本体30を移動させることができる。
【0089】
また、第1実施形態の操作装置20は、制御部50が、ポテンショメータ77により移動指示方向すなわち操作角が検出されている間、草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させているので、操作指示が行っている間、草刈機本体30を移動させることができる。
【0090】
また、第1実施形態の操作装置20は、手元操作部28は、手元操作されることにより通常状態から草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させる操作指示状態に変わるので、手元操作されている間、草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させることができる。一方、手元操作部28は、手元操作が解除されると通常状態に復帰するので、手元操作が行われていない間は、草刈機本体30は左右方向又は右方向に移動されずに直進することができる。
【0091】
また、第1実施形態の操作装置20は、手元操作部28が反力機構として板バネ部75を備えているので、手元操作が解除された際に、板バネ部75によって手元操作部28を操作指示状態から通常状態に復帰させることができる。
【0092】
また、第1実施形態の操作装置20は、制御部50が、草刈機本体30の左側駆動部32と右側駆動部34とを別々に駆動させるので、草刈機本体30の左側駆動部32と右側駆動部34の車輪回転数を異ならせることにより、草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0093】
また、第1実施形態の操作装置20は、草刈機本体30に接続されるので、簡単な片手操作で草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0094】
<第2実施形態>
次に第2実施形態に係る操作装置20Aについて説明する。なお、第2実施形態の操作装置20Aにおいて、上述した第1実施形態の操作装置20と同様の箇所は同符号で示して説明は省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0095】
図13に示されるように、第2実施形態の操作装置20Aは手元操作部28Aを備えている。手元操作部28Aは、本体部22の外周面22Bよりも大きい直径で、本体部22の他端側(後方側)すなわち手元側の外周面22Bを囲むように形成された円筒状の把持部70Aを備えている。把持部70Aは、手元操作時に操作者に把持される部位であり、本体部22と共に本体部22の軸周りに回転される。本実施形態においては、把持部70Aに操作スイッチ29が設けられている。
【0096】
また、
図14に示されるように、操作装置20Aは、本体部22の前方側の端部にユニバーサルジョイント26が接続されている。また、操作装置20Aは、ユニバーサルジョイント26から前方側に延在され、本体部22と同軸上に形成された軸部27を備えている。
【0097】
操作装置20Aは、本体部22の前方側に、軸部27を固定するための固定部25が設けられている。固定部25は複数の板材により構成されており、矩形状の第1固定部25Aと、上側及び左右側が開放した断面が略U字状の第2固定部25Bとを備えている。第2固定部25Bは、底壁25B1と、底壁25B1の前後端から各々上方に向かって延出された前壁25B2及び後壁25B3を有しており、底壁25B1は草刈機本体30の上面に固定されている。
【0098】
また、第1固定部25Aの前面と後壁25B3の後面は固定されており、第1固定部25A、及び後壁25B3には、軸部27がベアリング等により回転可能に挿通されている。また、前壁25B2には、後述する先端軸部27Aがベアリング等により回転可能に挿通されている。
【0099】
操作装置20Aは、後壁25B3と前壁25B2との間に反力機構80を備えている。
図14及び
図15に示されるように、反力機構80は、後壁25B3と前壁25B2との間に位置する軸部27の先端に、断面形状が楕円形である軸体82が固定されている。また、軸体82の前側には、前壁25B2から延出される先端軸部27Aが固定されている。軸部27、軸体82、及び先端軸部27Aは各々の中心軸が同軸上に配設されている。
図15に示されるように、軸体82は、長軸が上下方向、短軸が左右方向に位置するように配置される。
【0100】
一方、反力機構80は、一対のホルダ84を備えている。上ホルダ84Aは、下方向及び前後方向が開放された箱状に形成されており、下ホルダ84Bは上方向及び前後方向が開放された箱状に形成されていて、上ホルダ84Aと下ホルダ84Bとは間を空けて配置されている。一対のホルダ84の内部には、軸体82の左右両側に、板材86が縦方向に延在するように配設されており、この板材86と弾性部材88を間に挟んで他の板材86がそれぞれ配設されている。弾性部材88は、一例として硬化ウレタン樹脂等の弾性力を有する部材で構成されている。左右方向の外側に位置する板材86の外側面は、上ホルダ84A及び下ホルダ84Bの内側面に当接されている。
【0101】
他方、
図14に示されるように、前壁25B2から延出された先端軸部27Aには、ポテンショメータ77の軸部77Aが固定されている。すなわち本体部22の回転に伴って、軸部27、先端軸部27A、及び軸部77Aも同方向に回転する。
【0102】
上記のように構成された操作装置20Aは、
図13に示されるように、操作スイッチ29により前方向への発進がオンにされた状態で、操作者によって把持部70Aが把持されて右回りに回転される手元操作が行われると、手元操作部28は、通常状態から草刈機本体30を右方向に移動させる操作指示状態となる。なお、操作角が0°の場合に草刈機本体30は前方向へ直進する。
【0103】
そして、把持部70Aが右回りに回転されると、この回転に伴って本体部22及び軸部27も右回りに回転し、
図15の上図に示されるように、軸体82も右回りに回転する。また、軸体82の回転に伴って、先端軸部27A、及び先端軸部27Aに固定されているポテンショメータ77の軸部77Aも右回りに回転される。ポテンショメータ77は、この際に回転方向及び回転角度すなわち操作角を検出する。なお、図示は省略しているが、ポテンショメータ77からは配線が延出されており、この配線は制御部50に接続されている。ポテンショメータ77により検出された操作角は、配線を介して制御部50に出力される。
【0104】
また、
図15の下図に示されるように、軸体82が右回りに回転されると、軸体82の長軸方向の両端により板材86を介して弾性部材88が左右方向の外方に向けて押圧される。そして、操作者により把持部70Aの手元操作が解除されると、軸体82が白矢印Rで示される反力Rによって左回りに回転されて、軸体82すなわち把持部70は元の位置に復帰する。つまり、手元操作部28は、手元操作が解除されると操作指示状態から通常状態に復帰する。本実施形態においては、操作角が0°になる方向に反力Rが発生する。また、操作角の最大値が大き過ぎると、片手操作が困難となるため、本実施形態においては、操作角は-30~+30°になるように設定されている。
【0105】
同様にして、把持部70が左回りに回転される手元操作が行われると、軸体82は左回りに回転されて、上記と同様に、軸体82の長軸方向の両端により板材86を介して弾性部材88が左右方向の外方に向けて押圧される。そして、操作者により把持部70Aの手元操作が解除されると、軸体82が白矢印Rで示される反力Rによって右回りに回転されて、軸体82すなわち把持部70は元の位置に復帰する。つまり、手元操作部28は、手元操作が解除されると操作指示状態から通常状態に復帰する。
【0106】
(第2実施形態の作用及び効果)
次に、第2実施形態の作用及び効果を説明する。
【0107】
第2実施形態に係る操作装置20Aにおいても、把持部70Aを把持した状態で、把持した側の手で把持部70Aを回転させることにより操作指示を行うことができる。また、制御部50は、手元操作部28による操作指示に応じて草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させるので、上記第1実施形態の操作装置20と同様に、簡単な片手操作で草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させることができる。
【0108】
第2実施形態の操作装置20Aでは、反力機構80は、手元操作により把持部70Aが回転されると、軸体82が把持部70Aと同方向に回転して弾性部材88を外方に向けて押圧し、手元操作が解除されると、軸体82は弾性部材88によって元の位置に復帰する。そのため、操作者は、手元操作により把持部70Aを任意の方向に回転させることにより、簡単な片手操作で草刈機本体30を任意の方向に移動させることができる、また、操作者は、手元操作を解除すると把持部70Aが元の位置に復帰するので、簡単な片手操作で草刈機本体30を直進させることができる。
【0109】
<第3実施形態>
次に第3実施形態に係る操作装置20Bについて説明する。なお、第3実施形態の操作装置20Bにおいて、上述した第1実施形態の操作装置20と同様の箇所は同符号で示して説明は省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0110】
上述した実施形態においては、一例として、操作角と左側駆動部32及び右側駆動部34の回転数の関係は、操作角が大きくなるほど線形的に回転数が減少する関数となっている(
図16の実線参照)。しかしながら、本発明はこれに限られない。
【0111】
第3実施形態の操作装置20Bは、制御部50が手元操作部28の操作量(操作角)に応じて、草刈機本体30の速度を制御する。具体的には、一例として、制御部50は、
図16に一点鎖線で示されるように、手元操作部28の操作量(操作角)が大きくなるほど指数的に車輪回転数が減少する関数を使用する。
【0112】
また、具体的には、一例として、制御部50は、
図16に二点鎖線で示されるように、手元操作部28の操作量(操作角)が大きくなるほど対数的に車輪回転数が減少する関数を使用する。
【0113】
本実施形態においては一例として、制御部50は、
図16に実線で示した操作関数、一点鎖線で示した操作関数、及び二点鎖線で示した操作関数の中から所望する操作関数を選択可能に構成されている。例えば、
図7に示される通信1/F50E、又は入出力I/Fを介して制御部50に、一例として、操作感度レベル(高、中、小)を入力可能に構成しておく。
【0114】
そして、制御部50は、入力された操作感度レベルが「高」である場合には、少しの操作量でも車輪回転数を増加可能なように二点鎖線で示される操作関数を選択する。逆に、制御部50は、操作感度レベルが「小」である場合には、少しの操作量では車輪回転数を増加できないように一点鎖線で示される操作関数を選択する。また、操作感度レベルが「中」である場合には、操作量に応じた車輪回転数となるように実線で示した操作関数を選択する。
【0115】
(第3実施形態の作用及び効果)
次に、第3実施形態の作用及び効果を説明する。
【0116】
第3実施形態に係る操作装置20Bにおいては、操作感度レベルが「高」である場合には、二点鎖線で示される操作関数、すなわち手元操作部28の操作量(操作角)が大きくなるほど対数的に車輪回転数が減少する関数が使用される。そのため、少しの操作量でも車輪回転数を増加可能にできる。
【0117】
逆に、制御部50は、操作感度レベルが「小」である場合には、一点鎖線で示される操作関数、すなわち手元操作部28の操作量(操作角)が大きくなるほど対数的に車輪回転数が減少する関数が使用される。そのため、少しの操作量では車輪回転数を増加できないようにすることができる。
【0118】
また、制御部50は、操作感度レベルが「中」である場合には、実線で示される操作関数、すなわち手元操作部28の操作量(操作角)が大きくなるほど線形的に回転数が減少する関数が使用される。そのため、操作量に応じて車輪回転数を増加させることができる。
【0119】
<第3実施形態の変形例>
制御部50は、操作感度レベルが「高」である場合には、少しの操作量で草刈機本体30を移動させたい場合、すなわち手元操作部28を操作する操作者が力の弱い、例えば高齢者等であることが考えられるので、草刈機本体30の速度を遅くする。これにより、高齢者等の操作者は、草刈機本体30に楽に追従できるようになる。逆に、制御部50は、操作感度レベルが「小」である場合には、多い操作量で草刈機本体30を移動させたい場合、すなわち手元操作部28を操作する操作者が力の強い、例えば若者等であることが考えられるので、草刈機本体30の速度を速くする。これにより草刈機本体30の稼働率を上げることができる。
【0120】
なお、上記実施形態においては、検出部としてポテンショメータ77を採用したが、本発明はこれに限られない。例えば第1実施形態においては、一例として
図6に示される板バネ75Aの本体部22側の面であって、本体部22に対応する位置に接触センサ又は位置検出センサ等のセンサを設けてもよい。この場合、左右の何れのセンサによって検知されたのかに応じて、制御部50が草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させるようにする。この場合、操作角は検出しないので、左側駆動部32及び右側駆動部34の回転数は予め定められた一定の値とする。なお、例えばスイッチ等により左側駆動部32及び右側駆動部34の回転数を一例として3段階に変更可能に構成することもできる。
【0121】
また、上記実施形態において操作スイッチ29は、前部が押されることにより、前方向への発進がオンにされ、後部が押されることにより、後方向への発進がオンにされて、前部及び後部が押されていない状態が、停止がオンにされた状態とされているが本発明はこれに限られない。例えば、草刈機本体30の前方向及び後方向への発進並びに停止を行うための押ボタンを各々設けてもよいし、ダイヤル式のスイッチであってもよいし、操作スイッチの構造は限定されない。
【0122】
また、上記第1実施形態においては、草刈機本体30を左方向又は右方向に移動させるために、本体部22の外周面22Bに対して把持部70を左右方向に移動させたが本発明はこれに限られない。例えば把持部70を上下方向に移動させてもよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、草刈機10は四輪駆動としたが、本発明はこれに限られず二輪駆動であってもよい。
【0124】
また、上記実施形態においては、駆動部として車輪を採用したが、本発明はこれに限られない。駆動部は例えばクローラであってもよい。
【0125】
また、上記実施形態においては、操作装置20、20A、20Bが接続される移動体を草刈機本体30としたが、本発明はこれに限られず、移動体は、人を移動させる手段として、例えば車椅子であってもよいし、シニアカー等であってもよい。また、移動体は、物を運搬する手段として、例えばアウトドア等で使用する車輪の付いたキャリーワゴンやキャリーカート等であってもよい。
【0126】
また、本実施形態で
図7に示されるCPU50Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0127】
また、本実施形態で説明した各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0128】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0129】
10 草刈機
20 操作装置
20A 操作装置
20B 操作装置
22 本体部
22B 外周面
28 手元操作部
28A 手元操作部
30 草刈機本体(移動体)
32 左側駆動部
34 右側駆動部
50 制御部(移動制御部)
70 把持部
70A 把持部
71 ケース(枠体)
77 ポテンショメータ(検出部)
80 反力機構
75A 板バネ(反力機構)
82 軸体
88 弾性部材