(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175564
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ユニット
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 129
B41J2/01 107
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088067
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松木 佑典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC06
2C056EC69
2C056EC73
2C056EC74
2C056FA11
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】塗膜の割れのない、光沢感のある印刷方法を提供すること。
【解決手段】液体吐出装置は、ヘッドユニットと照射部と駆動部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、複数の吐出部のうち副走査方向の上流に位置する第1吐出部から吐出される第1光沢剤に対し、第1吐出部の下流に位置する前記照射部の第1ブロックを消灯することにより活性エネルギー線を照射しない第1制御と、前記第1ブロックより下流の第2ブロックを点灯することにより前記活性エネルギー線を照射する第2制御と、を実行することにより第1膜を形成し、前記複数の吐出部のうち前記第1吐出部より下流に位置する第2吐出部から前記第1膜上に吐出される第2光沢剤に対し、前記第1制御および前記第2制御を実行することにより第2膜を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置であって、
活性エネルギー線硬化型の液体を吐出するヘッドユニットと、
前記液体に活性エネルギー線を照射して前記液体を硬化させる照射部と、
前記ヘッドユニットと前記照射部とを固定するキャリッジの主走査方向への移動と、前記主走査方向に直交する副走査方向へ吐出対象を前記キャリッジに対して相対的に移動させる前記副走査方向への移動と、を交互に実行する駆動部と、
前記ヘッドユニットと前記照射部と前記駆動部とを制御する制御部と、を備え、
前記ヘッドユニットは、前記液体として光沢剤の吐出が可能であって、前記副走査方向に沿って前記照射部と対向して配置される複数の吐出部、を備え、
前記照射部は、前記副走査方向に沿って複数のブロックに分割され、前記複数のブロックのそれぞれが点灯または消灯することにより前記ブロックごとの前記活性エネルギー線の照射が可能であり、
前記制御部は、
前記複数の吐出部のうち前記副走査方向の上流に位置する第1吐出部から吐出される第1光沢剤に対し、前記第1吐出部の下流に位置する第1ブロックを消灯することにより前記活性エネルギー線を照射しない第1制御と、前記第1ブロックより下流の第2ブロックを点灯することにより前記活性エネルギー線を照射する第2制御と、を実行することにより第1膜を形成し、
前記複数の吐出部のうち前記第1吐出部より下流に位置する第2吐出部から前記第1膜上に吐出される第2光沢剤に対し、前記第1制御および前記第2制御を実行することにより第2膜を形成する、
液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1膜及び前記第2膜から形成される印字物の膜厚は20μm以上である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1膜及び前記第2膜から形成される印字物の最表面の光沢は、測定角60度における光沢値が90度以上である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記複数の吐出部のそれぞれは、前記液体としてプライマーインクを含む2種類以上の吐出が可能である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1制御の実行がなされる間に吐出される光沢剤の吐出量と、前記第2制御の実行がなされる間に吐出される光沢剤の吐出量とが異なる、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1膜及び前記第2膜から形成される印字物の表面粗さが6μm以内である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1光沢剤及び前記第2光沢剤を吐出後、前記第1制御の実行前に、前記第1ブロックより上流の第3ブロックを点灯させることにより前記活性エネルギー線を照射する第3制御を実行する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
液体吐出装置で実行される液体吐出方法であって、
前記液体吐出装置は、
活性エネルギー線硬化型の液体を吐出するヘッドユニットと、
前記液体に活性エネルギー線を照射して前記液体を硬化させる照射部と、
前記ヘッドユニットと前記照射部とを固定するキャリッジの主走査方向への移動と、前記主走査方向に直交する副走査方向へ吐出対象を前記キャリッジに対して相対的に移動させる前記副走査方向への移動と、を交互に実行する駆動部と、
前記ヘッドユニットと前記駆動部とを制御する制御部と、を備え、
前記ヘッドユニットは、前記液体として光沢剤の吐出が可能であって、前記副走査方向に沿って前記照射部と対向して配置される複数の吐出部、を備え、
前記照射部は、前記副走査方向に沿って複数のブロックに分割され、前記複数のブロックのそれぞれが点灯または消灯することにより前記ブロックごとの前記活性エネルギー線の照射が可能であり、
前記ヘッドユニットと前記駆動部とを制御する制御ステップ、を含み、
前記制御ステップは、
前記複数の吐出部のうち前記副走査方向の上流に位置する第1吐出部から吐出される第1光沢剤に対し、前記第1吐出部の下流に位置する第1ブロックを消灯することにより前記活性エネルギー線を照射しない第1制御と、前記第1ブロックより下流の第2ブロックを点灯することにより前記活性エネルギー線を照射する第2制御と、を実行することにより第1膜を形成する第1膜形成ステップと、
前記複数の吐出部のうち前記第1吐出部より下流に位置する第2吐出部から前記第1膜上に吐出される第2光沢剤に対し、前記第1制御および前記第2制御を実行することにより第2膜を形成する第2膜形成ステップと、
を含む、
液体吐出方法。
【請求項9】
液体吐出ユニットであって、
活性エネルギー線硬化型の液体を吐出するヘッドユニットと、
前記液体に活性エネルギー線を照射して前記液体を硬化させる照射部と、を備え、
前記ヘッドユニットと前記照射部は、主走査方向への移動と、前記主走査方向に直交する副走査方向へ吐出対象を、前記ヘッドユニットと前記照射部を固定するキャリッジに対して相対的に移動させる前記副走査方向への移動と、が交互に実行され、
前記ヘッドユニットは、前記液体として光沢剤の吐出が可能であって、前記副走査方向に沿って前記照射部と対向して配置される複数の吐出部、を備え、
前記複数の吐出部は、
前記副走査方向の上流に配置され、第1光沢剤を吐出する第1吐出部と、
前記第1吐出部より下流に配置され、前記第1光沢剤が硬化されることにより形成された第1膜上に第2光沢剤を吐出する第2吐出部と、
を備える、
液体吐出ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化型インク(例えば、UV硬化型インク)に対して、活性エネルギー線(例えば、UV光)を照射し、活性エネルギー線硬化型インクを硬化させる活性エネルギー線硬化型インクジェット方式が広く知られている。活性エネルギー線硬化型インクジェット方式では積層印刷が可能であるため、立体感のある印字物の提供が可能になる。そのため、積層印刷の新しい作像方式として、インクジェットプリンターに印刷モードを搭載することも今では少なくない。
【0003】
また、活性エネルギー線硬化型インクのうち、特色インクを用いた印刷方法、特に着色剤を含まないクリアインクについては、着色剤を含む着色インクの上層にクリアインクのコーティングを施すことで、印字物に平滑性、透明感、光沢感等を付与できることが知られている。
【0004】
そこで、平滑性、透明感、及び光沢感を付与する目的で、積層印刷の上層にクリアインクのコーティングを施す手法が採用されてきた。しかしながら、1層目を積層印刷で2層目をコーティングにする場合、塗膜内で凹凸が生じるために光の乱反射が発生し、塗膜が濁って見え、透明感が得られない。
【0005】
このため、従来技術では、塗膜内での光の乱反射を低減するため、クリアインクの種類や、クリアインクの重ね順を制御する技術が提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クリアインクのコーティング膜厚を厚くするほど印字物の光沢感が得られやすい。しかしながら、クリアインクの膜厚を厚くすると、クリアインクの硬化収縮の影響により塗膜が割れやすくなる。塗膜の割れを抑制するためには、クリアインクの吐出量を制御して割れが発生しない薄膜にする、あるいは、インク自体を柔軟性のある処方配合に変更する等の必要がある。即ち、塗膜の割れ抑制を優先すると、光沢感、及び透明感が制限されることになる。
【0007】
このように、従来技術のみで、立体感のある印字物に、平滑性、透明感、及び光沢感を付与することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、塗膜の割れのない、光沢感のある印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液体吐出装置であって、活性エネルギー線硬化型の液体を吐出するヘッドユニットと、前記液体に活性エネルギー線を照射して前記液体を硬化させる照射部と、前記ヘッドユニットと前記照射部とを固定するキャリッジの主走査方向への移動と、前記主走査方向に直交する副走査方向へ吐出対象を前記キャリッジに対して相対的に移動させる副走査方向への移動と、を交互に実行する駆動部と、前記ヘッドユニットと前記駆動部とを制御する制御部と、を備え、前記ヘッドユニットは、前記液体として光沢剤の吐出が可能であって、前記副走査方向に沿って前記照射部と対向して配置される複数の吐出部、を備え、前記照射部は、前記副走査方向に沿って複数のブロックに分割され、前記複数のブロックのそれぞれが点灯または消灯することにより前記ブロックごとの前記活性エネルギー線の照射が可能であり、前記制御部は、前記複数の吐出部のうち前記副走査方向の上流に位置する第1吐出部から吐出される第1光沢剤に対し、前記第1吐出部の下流に位置する第1ブロックを消灯することにより前記活性エネルギー線を照射しない第1制御と、前記第1ブロックより下流の第2ブロックを点灯することにより前記活性エネルギー線を照射する第2制御と、を実行することにより第1膜を形成し、前記複数の吐出部のうち前記第1吐出部より下流に位置する第2吐出部から前記第1膜上に吐出される第2光沢剤に対し、前記第1制御および前記第2制御を実行することにより第2膜を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗膜の割れのない、光沢感のある印刷方法を提供することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる液体吐出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかる液体吐出装置を模式的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態にかかる液体吐出装置を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態にかかるヘッドユニット及び照射ユニットの構成の詳細を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態にかかる液体吐出装置のコントローラユニットが発揮する機能的構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる層形成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7-1】
図7-1は、実施の形態にかかる層形成処理が実行される際のヘッドユニット及び照射ユニットの動作の一例、及び形成されるクリアインク層の一例を示す模式図である。
【
図7-2】
図7-2は、実施の形態にかかる層形成処理が実行される際のヘッドユニット及び照射ユニットの動作の一例、及び形成されるクリアインク層の一例を示す模式図である。
【
図7-3】
図7-3は、実施の形態にかかる層形成処理が実行される際のヘッドユニット及び照射ユニットの動作の一例、及び形成されるクリアインク層の一例を示す模式図である。
【
図8-1】
図8-1は、実施の形態にかかる印字物の形成処理の一例について模式的に示す図である。
【
図8-2】
図8-2は、実施の形態にかかる印字物の形成処理の際に実行されるプロセスについて説明する図である。
【
図9】
図9は、従来の画像形成方法の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、従来の画像形成方法の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、従来の画像形成方法の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ユニットの実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、ヘッドからUV硬化型インク(液体)を吐出し、媒体に画像形成する画像形成装置を液体吐出装置として適用するが、これに限るものではなく、ヘッドからUV硬化型インクを吐出し、媒体に造形する立体造形装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0013】
(実施の形態)
図1は本実施形態にかかる液体吐出装置1のハードウェア構成を示すブロック図、
図2は液体吐出装置1を模式的に示す正面図、
図3は液体吐出装置1を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出装置1は、コントローラユニット3と、検知群4と、搬送部である搬送ユニット100と、キャリッジ200と、ヘッドユニット300と、照射ユニット400と、メンテナンスユニット500と、を備える。
【0015】
コントローラユニット3は、コンピュータ構成であって、ユニット制御回路31と、各種データを記憶するメモリ32と、制御主体であるCPU(CentralProcessingUnit)33と、インタフェース(I/F)34と、を備える。
【0016】
ユニット制御回路31は、CPU33からの指示に従い、液体吐出装置1の各ユニット(搬送ユニット100、キャリッジ200、ヘッドユニット300、照射ユニット400、メンテナンスユニット500)の動作を制御する。
【0017】
I/F34は、液体吐出装置1を外部のPC(PersonalComputer)2と接続するためのインタフェースである。液体吐出装置1とPC2との接続形態はどのようなものであってもよく、例えば、ネットワークを介した接続や通信ケーブルで両者を直接接続する形態などが挙げられる。
【0018】
検知群4は、例えば、
図2、及び
図3に示す高さセンサ41などの液体吐出装置1に備えられている各種センサである。
【0019】
メモリ32は、CPU33が実行可能な各種プログラムやデータを格納する。なお、メモリ32としては、例えば、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM等の光学的、磁気的、電気的な記録媒体を用いることができる。
【0020】
各種プログラムは、CPU33が読み取り可能なデータ形態でメモリ32に格納されている。
【0021】
また、本実施形態の液体吐出装置1で実行される各種プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(DigitalVersatileDisk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0022】
また、本実施形態の液体吐出装置1で実行される各種プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の液体吐出装置1で実行される各種プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0023】
コントローラユニット3のCPU33は、メモリ32を作業領域に用いて、液体吐出装置1の各ユニット(搬送ユニット100、キャリッジ200、ヘッドユニット300、照射ユニット400、メンテナンスユニット500)の動作を、ユニット制御回路31を介して制御する。
【0024】
具体的には、CPU33は、PC2から受信する記録データ及び検知群4により検知されたデータに基づいて、各ユニット(搬送ユニット100、キャリッジ200、ヘッドユニット300、照射ユニット400、メンテナンスユニット500)の動作を制御し、
図2に示すように、吐出対象となる基材101上に液体塗布面102を形成する。
【0025】
なお、PC2には、プリンタドライバがインストールされており、このプリンタドライバにより画像データから、液体吐出装置1に送信される記録データが生成される。記録データは、液体吐出装置1の搬送ユニット100などを動作させるコマンドデータと、画像(液体塗布面102)に関する画素データと、を含む。画素データは、画素ごとに2ビットのデータで構成されており、4階調で表現される。
【0026】
搬送ユニット100は、
図2に示すように、ステージ130及び吸着機構120を有する。吸着機構120は、ファン110及びステージ130に設けられた複数の吸着孔100aを有する。吸着機構120は、ファン110を駆動して吸着孔100aから基材101を吸着することにより、基材101を搬送ユニット100に一時的に固定する。なお、吸着機構120は、静電吸着を用いて用紙を吸着してもよい。
【0027】
搬送ユニット100は、ユニット制御回路31を介したCPU33からの駆動信号に基づく制御によって、Y軸方向(副走査方向Y)への移動が制御される。
【0028】
搬送ユニット100は、
図3に示すように、搬送制御部210、ローラ105、及びモータ104を有する。搬送制御部210は、モータ104を駆動してローラ105を回転することで、基材101をY軸方向(副走査方向Y)に移動する。より具体的には、搬送制御部210は、キャリッジ200と基材101とのいずれか一方が主走査方向に移動されたのちに、基材101をY軸方向(副走査方向Y)に移動するよう制御する。
【0029】
なお、搬送ユニット100は、基材101ではなく、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向Y)に移動してもよい。すなわち、搬送ユニット100は、基材101とキャリッジ200とをY軸方向(副走査方向Y)に相対的に移動してもよい。
【0030】
搬送ユニット100は、
図3の右側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向X)に案内する二本のガイド201を支持する側板407bと、側板407bを支持する台406と、台406に固定されたベルト404と、ベルト404が掛け回された駆動プーリ403及び従動プーリ402と、駆動プーリ403を回転駆動するモータ405とを有する。
【0031】
更に、搬送ユニット100は、
図3の左側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向X)に案内する二本のガイド201を支持する側板407aと、側板407aをスライド移動可能に支持する台408と、台408に形成され、側板407aを副走査方向Yに案内する溝409と、を有する。
【0032】
搬送ユニット100は、搬送制御部210でモータ405を駆動することにより、駆動プーリ403を回転させ、ベルト404をY軸方向(副走査方向Y)に移動する。キャリッジ200が支持された台406がベルト404の移動と共にY軸方向(副走査方向Y)に移動することで、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向Y)に移動することができる。側板407aは、台406のY軸方向(副走査方向Y)への移動に伴い、台408の溝409に沿ってY軸方向(副走査方向Y)に移動する。
【0033】
キャリッジ200は、ユニット制御回路31を介したCPU33からの駆動信号に基づく制御によって、Z軸方向(高さ方向Z)及びX軸方向(主走査方向X)の移動が制御される。
【0034】
キャリッジ200は、ヘッドユニット300と照射ユニット400とを固定する。また、キャリッジ200は、ガイド201に沿って主走査方向X(X軸方向)に走査移動する。走査部206は、駆動プーリ203、従動プーリ204、駆動ベルト202、及びモータ205を有する。キャリッジ200は、駆動プーリ203及び従動プーリ204の間に掛け回された駆動ベルト202に固定されている。モータ205で駆動ベルト202を駆動することにより、キャリッジ200は主走査方向Xに左右に走査移動する。ガイド201は、装置本体の側板211A及び211Bに支持されている。高さ調整部207はモータ209及びスライダ208を有する。高さ調整部207は、モータ209を駆動してスライダ208を上下動させることで、ガイド201を上下させる。ガイド201が上下移動することによりキャリッジ200が上下動し、キャリッジ200の基材101に対する高さを調整することができる。
【0035】
ヘッドユニット300は、キャリッジ200の下面に備えられている。ヘッドユニット300は、UV硬化型インクを吐出する。詳細は後述するが、ヘッドユニット300は、例えば、ホワイトW、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローY、透明であるクリアCL、プライマPrのUV硬化型インクをそれぞれ吐出するヘッドにより構成されている。
【0036】
ヘッドユニット300の各ヘッドは、ピエゾ素子(圧電素子)を備えている。ピエゾ素子(圧電素子)は、CPU33(ユニット制御回路31)により駆動信号が印加されると、収縮運動を起こし、収縮運動による圧力変化が生じることにより、UV硬化型インクを基材101上に吐出する。これにより、基材101上には、液体塗布面102が形成される。
【0037】
照射ユニット400は、キャリッジ200の側面(X軸方向(主走査方向X)の面)に備えられている。詳細は後述するが、照射ユニット400は、CPU33の駆動信号に基づく制御によって、UV光(活性エネルギー線)を照射する。これにより、基材101上に吐出されたUV硬化型インクが硬化される。
【0038】
図4は、ヘッドユニット300、及び照射ユニット400の構成の詳細を示す図である。
【0039】
ヘッドユニット300は、千鳥格子状に配置された12個のヘッドから構成される。
【0040】
図4において、最も右側には、後述する照射部410、及び420と対向して、副走査方向Yに沿って連なるように3個のヘッドが配置される。3個のヘッドのうち、ヘッド300CL1、300CL2のそれぞれは光沢剤であるクリアCL用のヘッドであり、ヘッド300PrはプライマPr用のヘッドである。
【0041】
ヘッド300CL1は、副走査方向Yの上流側に設けられ、ヘッド300CL2は、副走査方向Yの上流側から見てヘッド300CL1の斜め後方(下流側)に連なるように設けられる。これによりヘッド300CL1による処理が完了した後でも、ヘッド300CL2を用いて継続してクリアCLインクを吐出することができる。なお、本実施形態において、ヘッド300CL1は、第1吐出部に相当し、ヘッド300CL2は、第2吐出部に相当する。また、ヘッド300CL1から吐出されるクリアCLインクを、第1光沢剤に相当するクリアCL1と称し、ヘッド300CL2から吐出されるクリアCLインクを、第2光沢剤に相当するクリアCL2と称する。また、クリアCL1、及びクリアCL2をそれぞれ区別しない場合は、クリアCLインクと称する。
【0042】
また、
図4において、ヘッドユニット300の左側から中央部に配置された9個のヘッドのうち、300Wh1、300Wh2、300Wh3はホワイトWのヘッドであり、300CM1、300CM2、300CM3はシアンCとマゼンタMのヘッドであり、300YK1、300YK2、300YK3はイエローYとブラックKのヘッドである。ヘッドユニット300は、このような各種ヘッドを駆使し、プライマPrを含む2種類以上のUV硬化型インクを吐出する。
【0043】
照射ユニット400は、UV光を照射するUV照射ランプにより構成されている二つの照射部410、420を備える。
図4に示すように、照射部410、420のそれぞれは、副走査方向Yに沿って18個の照射ブロックR-1~R-18(副走査方向Yに9列)に分割される。これらの照射ブロックR-1~R-18のそれぞれは、ヘッドユニット300に備わる12個のヘッドと主走査方向Xに対応するように配置される。照射ブロックR-1~R-18のそれぞれは、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて点灯または消灯できるため、ブロックごとのUV光の照射、及び照射の中断が可能である。なお、照射ブロックR-1~R-18をそれぞれ区別しない場合は、照射ブロックRと称する。
【0044】
次に、液体吐出装置1のコントローラユニット3のCPU33がメモリ32に格納されたプログラムを実行することによって、液体吐出装置1が発揮する機能について説明する。なお、液体吐出装置1のコントローラユニット3が発揮する機能の一部または全部をIC(IntegratedCircRit)などの専用の処理回路を用いて構成してもよい。
【0045】
図5は、液体吐出装置1のコントローラユニット3が発揮する機能的構成例を示すブロック図である。
【0046】
図5に示すように、液体吐出装置1のコントローラユニット3は、CPU33がメモリ32に格納されたプログラムを実行することにより、制御部35として機能する。
【0047】
制御部35は、液体吐出装置1の各部を制御することにより、層形成処理を実行する。本実施形態おける層形成処理とは、カラー印刷等の基材101上にクリアインク層を形成する処理をいう。
【0048】
制御部35は、搬送ユニット100、キャリッジ200、ヘッドユニット300、及び照射ユニット400等を制御することにより、層形成処理を実行する。即ち、制御部35は、搬送ユニット100、及びキャリッジ200を制御して、キャリッジ200を主走査方向Xに往復移動させる処理、及び主走査方向Xに直交する副走査方向Yに1走査分移動させる処理を実行する。具体的には、キャリッジ200は、照射ユニット400の照射ブロックRのブロック1つ分の距離を1走査として、副走査方向Yに移動する。また、制御部35は、キャリッジ200の主走査方向Xへの往復移動に際し、ヘッドユニット300を制御して、クリアCLインクを吐出する処理を実行する。また、制御部35は、照射ユニット400を制御して、照射ブロックRを点灯または消灯し、UV光を照射する処理を実行する。
【0049】
具体的には、制御部35は、ヘッドユニット300のうち、副走査方向Yの上流に位置するヘッド300CL1からクリアCL1が吐出されると、ヘッド300CL1の下流に位置する第1ブロックを消灯して、UV光の照射を中断する制御を実行する。当該制御を第1制御と称する場合がある。ここで、本実施形態における第1ブロックに相当する照射ブロックRの一例が
図4に示されている。即ち、制御部35は、ヘッド300CL1からクリアCL1が吐出されると、ヘッド300CL1の下流に位置する照射ブロックR9~12を消灯する。これにより、基材101上に吐出されたクリアCL1は、基材101上で濡れ広がり、平滑化(レベリング)される。
【0050】
次いで、制御部35は、第1ブロックより下流に位置する第2ブロックを点灯して、UV光を照射する制御を実行する。当該制御を第2制御と称する場合がある。即ち、制御部35は、
図4に示すように、第1ブロックとしての照射ブロックR9~12より下流に位置する照射ブロックR7~8を、第2ブロックとして点灯する。これにより、クリアCL1が硬化され、基材101上に第1膜としてのクリアインク層が形成される。
【0051】
また、制御部35は、ヘッド300CL1の下流に位置するヘッド300CL2から第1膜上に吐出されるクリアCL2に対しても、上述の第1制御及び第2制御を実行することにより第2膜を形成する。即ち、制御部35は、ヘッド300CL2からクリアCL2が吐出されると、ヘッド300CL2の下流に位置する第1ブロックとして、照射ブロックR3~6を消灯する(すなわち第1制御を行う)。そして、制御部35は、第1ブロックより下流に位置する照射ブロックR1~2を、第2ブロックとして点灯する(すなわち第2制御を行う)。これにより、クリアCL2が硬化され、第2膜としてのクリアインク層が形成される。
【0052】
また、制御部35は、クリアCLインクを吐出後、第1制御の実行前に、第1ブロックより上流の第3ブロックを点灯させることによりUV光を照射する制御を実行する。当該制御を第3制御と称する場合がある。即ち、制御部35は、クリアCL1、及びクリアCL2のそれぞれの吐出後、
図4に示すように、第1ブロックとしての照射ブロックR9~12、及びR3~6より上流に位置する照射ブロックR13~14、及びR7~8を、それぞれ第3ブロックとして点灯する(すなわち第3制御を行う)。具体的には例えば、制御部35は、ヘッド300CL2からクリアCL2が吐出されると、照射ブロックR7~8を点灯する。これにより、クリアCL2は、第1制御の実行前に、仮硬化される。ここで仮硬化(「ピニング」とも称する)とは、一般に、UV硬化型インクに微弱なUV光を照射し、密着性を改善させる目的等で用いられる。本実施形態では、クリアCLインクの吐出後、仮硬化(ピニング)することで、上層に吐出するクリアインク層との密着性を改善させることができる。
【0053】
次に、本実施形態にかかる層形成処理の流れについて説明する。
図6は、実施形態にかかる層形成処理の一例を示すフローチャートである。また、
図7-1~7-3は、層形成処理が実行される際のヘッドユニット300、及び照射ユニット400の1走査ごとの動作の一例、及び形成されるクリアインク層の一例を示す図である。
【0054】
以下、
図7-1~7-3を参照して、
図6のフローチャートを説明する。また、説明の便宜上、
図7-1~7-3には、ヘッドユニット300のうち、ヘッド300CL1、ヘッド300CL2のみ、また照射ユニット400のうち、照射部410及び420のみを抽出して記載するものとする。
【0055】
なお、1走査あたり吐出されるクリアCLインクの量は一定であり、吐出量は、1走査あたり「吐出量a」とする。
【0056】
図7-1(a-1)に示すように、1走査目において、制御部35は、クリアCL1を吐出させる。そして、制御部35は、照射ブロックR13~R14を点灯させる(すなわち第3制御を行う)(ステップS101)。これにより、
図7-1(a-2)に示すように、領域Pに仮硬化(ピニング)されたクリアインク層601が形成される。
【0057】
図7-1(b-1)に示すように、2走査目において、制御部35は、クリアCL1を吐出する。そして、制御部35は、照射ブロックR11~R12を消灯し、クリアCL1の硬化を中断する(すなわち、第1制御を行う)(ステップS102)。これにより、
図7(b-2)に示すように、平滑化(「レベリング」とも称する)されたクリアインク層602が形成される。
【0058】
図7-1(c-1)に示すように、3走査目において、制御部35は、クリアCL1を吐出する。そして、制御部35は、照射ブロックR9~R10を消灯し、クリアCL1の硬化を中断させる(すなわち、第1制御を行う)(ステップS102)。これにより、
図7-1(c-2)に示すように、平滑化(レベリング)されたクリアインク層603が形成される。
【0059】
図7-2(d-1)に示すように、4走査目において、制御部35は、クリアCL2を吐出する。そして、制御部35は、照射ブロックR7~R8を点灯する(すなわち第2制御を行う)(ステップS103)。これにより、
図7-2(d-2)に示すように、クリアインク層601~603が本硬化され、第1膜としてのクリアインク層610が形成される。また照射ブロックR7~R8の点灯により、クリアインク層610の形成と同時に、クリアCL2が仮硬化(ピニング)される。これによりクリアインク層701が形成される。
【0060】
ここで、ステップS102における、第1制御の実行がなされる間に吐出されるクリアCL1の吐出量Aと、ステップS103に、第2制御の実行がなされる際に吐出されるクリアCL2の吐出量Bとは異なる。具体的には、ステップS102の第1制御の間に吐出されるクリアCL1の吐出量Aは、クリアインク層602及び603に相当する吐出量aの2倍量であるのに対し、ステップS103の第2制御の間に吐出されるクリアCL2の吐出量Bは、クリアインク層701に相当するaのみである。このように、吐出量A>吐出量Bである場合、仮硬化(ピニング)の対象となるクリアCLインクよりも、平滑化(レベリング)の対象となるクリアCLインクの量が多くなるため、クリアインク層全体の平滑性が改善されるようになる。結果として、本実施形態においては、クリアインク層の最表面における表面粗さが6μm以内といった平滑性の高い印字物を得ることができる。
【0061】
図7-2(e-1)に示すように、5走査目において、制御部35は、クリアCL2を吐出する。そして、制御部35は、照射ブロックR5~R6を消灯し、クリアCL2の硬化を中断する(すなわち第1制御を行う)(ステップS104)。これにより、
図7-2(e-2)に示すような、平滑化(レベリング)されたクリアインク層702が形成される。
【0062】
図7-2(f-1)に示すように、6走査目において、制御部35は、クリアCL2を吐出する。そして、制御部35は、照射ブロックR5~R6を消灯し、クリアCL2の硬化を中断する(すなわち第1制御を行う)(ステップS104)。これにより、
図7-2(f-2)に示すような、平滑化(レベリング)されたクリアインク層703が形成される。
【0063】
図7-3(g-1)に示すように、7走査目において、制御部35は、照射ブロックR1~R2を点灯する(すなわち第2制御を行う)(ステップS105)。これにより、
図7-3(g-2)に示すように、クリアインク層701~703が本硬化され、第2膜としてのクリアインク層710が形成される。
【0064】
本実施形態において形成されるクリアインク層610、及びクリアインク層710の膜厚t1、及びt2は、それぞれ15μm程度であり、積層によって少なくとも20μm以上の膜厚の印字物を得ることができる。一般に、印字物の光沢度は、クリアインク層の膜厚が20~35μmの範囲である場合に高いといわれている。このような本実施形態における液体吐出装置1によれば、最表面において、測定角60度における光沢値が90度以上となるような高い光沢感のある印字物を得ることができる。
【0065】
次に、上述の層形成処理によって形成される印字物について説明する。
図8-1は、印字物の形成方法の一例を模式的に示す図である。また、
図8-2は、印字物の形成において実行されるプロセスの概要について説明する図である。
【0066】
なお、本実施形態において、印字物とは、カラー印刷等の基材101上にクリアインク層が形成された印刷物をいう。
【0067】
本実施形態においては、印字物の形成方法として、説明の便宜上、1ジョブのモードを想定するが、これに限定されるものではなく、2ジョブで行われてもよい。その場合は、1ジョブ目でカラー印刷501を作成し、2ジョブ目でクリアインク用のヘッド300CL1とクリアインク用のヘッド300CL2を用いてクリアインク層を形成すればよい。
【0068】
図8-1に示すように、まず、基材101としてのカラー印刷501が形成される(ステップST1)。
【0069】
次に、ヘッド300CL1によって、カラー印刷501上にクリアCL1が吐出される。そして、照射部410及び420によりUV光が照射され、クリアCL1が仮硬化(ピニング)される。次いで、UV光の照射が中断され、クリアCL1は、カラー印刷501上で平滑化(レベリング)される(ステップST2)。
【0070】
次いで、平滑化(レベリング)されたクリアCL1の上に、クリアCL2が吐出される。そして、照射部410及び420によってUV照射がされると、クリアCL1の本硬化、及びクリアCL2の仮硬化(ピニング)が同時に実行される。その後、UV光の照射が中断され、吐出されたクリアCL2は、クリアインク層502の上で平滑化(レベリング)される(ステップST3)。
【0071】
最後に、照射部410及び420によりUV光が照射されると、クリアインク層503が本硬化され(ステップST4)、印字物Qが形成される(ステップST5)。
【0072】
ここで、
図8-2の枠Cに示すように、クリアCL1、及びクリアCL2から成るクリアインク層のそれぞれは、「吐出→ピニング→本硬化」といった同一のプロセスを経て形成される。このような同一のプロセスで処理されることにより、膜質の等しいクリアインク層が形成される。
【0073】
また、
図8-2の枠Dに示すように、ステップST3において、クリアCL1の上にクリアCL2が吐出されるが、このとき、クリアCL1は、未硬化である。即ち、未硬化のクリアCL1上にクリアCL2が吐出される。これによりクリアCL1とクリアCL2とが層間でミキシングされ、クリアCL1とクリアCL2の層間の境界が曖昧になる。結果として、膜の層間で生じやすい光の乱反射を抑制することができる。
【0074】
このように、クリアインク層のそれぞれを同一プロセスで形成し、そして下層のクリアインク層の本硬化前に上層のクリアCLインクを吐出して上層のクリアインク層の仮硬化と下層のクリアインク層の本硬化とを同時に実行するよう制御することで、クリアインク層内の光の乱反射を抑制し、透明感のある印字物Qを形成することができる。
【0075】
次に
図9~
図11を用いて従来の画像形成方法について説明する。
図9は、従来の画像形成方法のうち、積層印刷の一例を模式的に示す図である。また、
図10、11は、従来の画像形成方法のうち、コーティングの一例を模式的に示す図である。
【0076】
図9に示すように、従来、積層印刷では、ホワイトWまたはクリアCLインクを用いて下地800を形成し、形成された下地800に着色インク(
図9の例ではシアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックK)を印刷し、加飾する方法が採用されてきた。このような印刷方法によれば、凹凸感のある画像に仕上げることができ、制限なく積層(マシンの限界値まで)することができるという利点がある。コーティングが施されていないため、透明感、及び光沢感はないが、硬化収縮の影響が小さく、層の割れのリスクがないという利点がある。
【0077】
一方で、従来、コーティング技術は、印字物に平滑性や光沢感等を付与するために用いられてきた。
図10に示すように、カラー印刷501の上層に、クリアCLインクのコーティングでクリアインク層502を形成すると、平滑性、及び光沢感のある、また高級感のある印字物Qを提供することが可能となる。また、コーティング技術は、均一な単膜を形成することができ、膜の屈折率が均一で乱反射しないため、平滑性及び光沢感だけでなく、透明感を得られると期待されていた。
【0078】
またコーティング技術に対し、昨今では、立体感というニーズも生まれている。例えば、スポットでコーティングを行い、局所的に立体感を表現することで、視覚と触覚の変化を生み出すというものである。しかしながら、コーティング技術に積層印刷を取り入れた場合、立体感と、平滑性及び透明感の両立は困難となる。なぜならば、1層目を積層印刷、2層目をコーティングにすると、層の凹凸が生じ、乱反射することでクリアインク層が濁って見えてしまうからである。
【0079】
そこで例えば、
図11(A)に示すように、クリアインク層の凹凸を減らすため、吐出量を増やして厚膜のクリアインク層503を形成すると、硬化収縮の影響が大きくなり、クリアインク層の割れのリスクが大きくなる。またこの場合、均一な単膜が形成できているかも不明であり、十分な透明感を得られない可能性が高い。
【0080】
また例えば、
図11(B)に示すように、クリアインク層の割れのリスクを低減するため、薄膜のクリアインク層504及び505を積層して厚みを持たせる場合、クリアインク層504とクリアインク層505との膜質の差によって層間で光が乱反射し、透明感を得ることができない。
【0081】
このように従来の画像形成方法では、立体感、平滑性、光沢感、及び透明感を両立させることは困難であった。
【0082】
これに対して、本実施形態にかかる液体吐出装置1は、副走査方向Yの上流に位置するヘッド300CL1から吐出されるクリアCL1に対し、ヘッド300CL1の下流に位置する照射ブロックRを消灯してUV光の照射を中断する第1制御と、下流の照射ブロックRを点灯する第2制御とを実行して第1膜を形成する。そして、ヘッド300CL1の下流に位置するヘッド300CL2によって第1膜の上に吐出されたクリアCL2に対しても同様の制御を実行することにより第2膜を形成する。
【0083】
これにより、平滑化(レベリング)された塗膜の割れのリスクのないクリアインク層を積層して厚塗りのクリアインク層を形成できるため、割れのない光沢感のある印字物を得ることができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる液体吐出装置1で形成される第1膜及び第2膜から構成される印字物の膜厚は20μm以上である。また、本実施形態にかかる液体吐出装置1で形成される印字物の最表面の光沢は、測定角60度における光沢値が90度以上である。
る。
【0085】
割れのリスクが少ないといわれる15μmのクリアインク層を積層することで、20μm以上の厚みのある高光沢性のあるクリアインク層を形成できる。本実施形態では、測定角60度における光沢値が90度以上の印字物を得ることができる。このように、インクの処方を変更等しなくても、割れのない印字物を得ることができるため、カラー印刷等の画像等に制限を与えず、高光沢の印字物を提供できる。
【0086】
また、本実施形態にかかる液体吐出装置1によれば、ヘッドユニット300に備わるヘッドは、液体としてプライマーインクを含む2種類以上の吐出が可能である。
【0087】
これにより、1ジョブでカラー印刷と層形成処理とが実行できるため、短時間で容易に割れのない高光沢の印字物を得ることができる。
【0088】
また、本実施形態にかかる液体吐出装置1において、第1制御の実行がなされる間に吐出されるクリアCLインクの吐出量と、第2制御の実行がなされる間に吐出されるクリアCLの吐出量とが異なる。
【0089】
例えば、平滑化(レベリング)対象のクリアCLの量を、硬化対象のクリアCLインクの量よりも多めにすることで、クリアインク層全体としての平滑性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態にかかる液体吐出装置1によれば、印字物の表面粗さは6μm以内である。
【0091】
吐出されたクリアCLインクが十分に平滑化(レベリング)されるため、平滑性の高い印字物を得ることができる。
【0092】
また、本実施形態にかかる液体吐出装置1によれば、制御部35は、第1制御の実行前に、第1ブロックより上流、即ち、第3ブロックを点灯することにより、クリアCLインクにUV光を照射する第3制御を実行する。
【0093】
これにより、下層のクリアインク層の本硬化と、吐出したクリアCLインクの仮硬化(ピニング)を同時に実行することができる。即ち、未硬化のクリアインク層の上に、クリアCLインクが吐出されることになるため、上下のクリアインク層の境界をわかりにくくすることができる。これにより、層間の屈折率の変化を抑制し、透明感を向上させることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0095】
例えば、本実施形態において、ヘッドユニット300には、クリアCL用のヘッドとして、ヘッド300CL1、300CL2が備わると説明したが、ヘッドの数はこれに限定されない。即ち、クリアCL用のヘッドが副走査方向Yに沿って3個連なるように配置されていてもよい。
【0096】
また、本実施形態においては、第1制御の実行がなされる間に吐出されるクリアCLインクの吐出量と、第2制御の実行がなされる間に吐出されるクリアCLの吐出量は、2:1の割合であるが、これに限定されない。制御部35によって照射ブロックRの消灯範囲が変更されることにより、上述の割合は任意に変更される。
【0097】
また、
図5に示す機能ブロックは、例示に過ぎず特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が液体吐出装置に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは、特に
図5の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、
図5に限定されず、任意でよい。また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
35 制御部
100 搬送ユニット
200 キャリッジ
300 ヘッドユニット
400 照射ユニット
410、420 照射部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】