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特開2023-175630ウェットワイプスの包装体及びウェットワイプス用の薬液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175630
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ウェットワイプスの包装体及びウェットワイプス用の薬液
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20231205BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231205BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20231205BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20231205BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20231205BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20231205BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
D06M13/224
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/10
A01N37/02
A01N37/06
A01N33/12 101
D06M13/463
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055516
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2022088101
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】那須 謙悟
(72)【発明者】
【氏名】岡本 美澄
(72)【発明者】
【氏名】泉保 眞一郎
【テーマコード(参考)】
4H011
4L033
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BC03
4H011DA07
4H011DF04
4L033AB07
4L033AC10
4L033BA21
4L033BA86
(57)【要約】
【課題】グリセリン脂肪酸モノエステルが分解しにくく、ウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤において、清拭面に抗菌性能を発揮することができるウェットワイプスの包装体を提供すること。
【解決手段】布帛と、薬液とを含むウェットワイプスの包装体であって、前記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、前記薬液が、7.30未満のpHを有することを特徴とするウェットワイプスの包装体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛と、薬液とを含むウェットワイプスの包装体であって、
前記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、
前記薬液が、7.30未満のpHを有する、
ことを特徴とする、前記ウェットワイプスの包装体。
【請求項2】
前記薬液が、3.00以上且つ7.00未満のpHを有する、請求項1に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項3】
前記薬液が、製造直後及び製造1ヶ月後の両方において、前記pHの要件を満たす、請求項1に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項4】
前記薬液が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項5】
前記薬液が前記カチオン性界面活性剤を含み、前記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩を含む、請求項4に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項6】
前記薬液が前記カチオン性界面活性剤を含み、前記カチオン性界面活性剤が、塩化ベンザルコニウムを含む、請求項4に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項7】
前記ウェットワイプスが、抗菌性能試験において、黄色ブドウ球菌及び大腸菌のそれぞれに対して、2.0以上の抗菌活性値を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項8】
前記グリセリン脂肪酸モノエステルが、C8~C18の炭素数を有するヒドロキシ脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項9】
前記グリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルが、リシノレイン酸グリセリルである、請求項8に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項10】
前記グリセリン脂肪酸モノエステルが、ウンデシレン酸グリセリル及びカプリル酸グリセリルの少なくとも一方をさらに含む、請求項9に記載のウェットワイプスの包装体。
【請求項11】
ウェットワイプス用の薬液であって、
前記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、
前記薬液が、7.30未満のpHを有する、
ことを特徴とする、前記ウェットワイプス用の薬液。
【請求項12】
前記薬液が、3.00以上且つ7.00未満のpHを有する、請求項11に記載のウェットワイプス用の薬液。
【請求項13】
上記薬液が、製造直後及び製造1ヶ月後の両方において、前記pHの要件を満たす、請求項11又は12に記載のウェットワイプス用の薬液。
【請求項14】
前記薬液が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項11又は12に記載のウェットワイプス用の薬液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェットワイプスの包装体及びウェットワイプス用の薬液に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤として、グリセリン脂肪酸モノエステルを含む薬液を含むウェットワイプスの包装体が知られている。
例えば、特許文献1には、セルロ-ス系繊維を10~100重量%含む不織布に、ポリリジンおよび/またはその塩とグリセリン脂肪酸エステルとを含有する水溶液を、上記不織布に対して0.5~5倍重量含浸させたことを特徴とする除菌ウェットティッシュ(請求項1)が開示されている。
【0003】
また、特許文献1の段落[0022]には、「またポリリジンやグリセリン脂肪酸エステルは、容易に空中に揮散するものではないので、拭き取った後も人体や物品上に残って抗菌効果を発揮し、除菌性が持続することとなる。すなわち、拭き取り除菌後に再度細菌が付着しても抗菌作用が働き、細菌に再度汚染されることがない。」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-113779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者が確認したところ、特許文献1に係る水溶液は、グリセリン脂肪酸エステルの粒子が経時で分解し、沈降することが判明した。それにより、特許文献1に係る水溶液は、除菌ウェットティッシュの包装体の製造直後と、使用終盤とでは、ウェットティッシュに含まれるグリセリン脂肪酸エステルの量が異なり、ひいては、除菌ウェットティッシュの包装体の製造直後と、使用終盤とで、清拭面に残存するグリセリン脂肪酸エステルの量が異なり、清拭面の抗菌保持性に問題があることが分かった。
【0006】
従って、本開示は、グリセリン脂肪酸モノエステルが分解しにくく、ウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に抗菌性を付与することができるウェットワイプスの包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示者らは、布帛と、薬液とを含むウェットワイプスの包装体であって、上記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、上記薬液が、7.30未満のpHを有することを特徴とするウェットワイプスの包装体を見出した。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るウェットワイプスの包装体は、グリセリン脂肪酸モノエステルが分解しにくく、ウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に抗菌性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
布帛と、薬液とを含むウェットワイプスの包装体であって、
上記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、
上記薬液が、7.30未満のpHを有する、
ことを特徴とする、上記ウェットワイプスの包装体。
【0010】
上記ウェットワイプスの包装体では、薬液が所定のpHを有することから、薬液中のグリセリン脂肪酸モノエステルが分解しにくくなる。その結果、ウェットワイプスの包装体の製造直後、ひいてはウェットワイプスの包装体の開封直後から、使用終盤に至るまで、ウェットワイプスにグリセリン脂肪酸モノエステルが含まれやすくなり、ひいては上記ウェットワイプスを用いて清拭面を清拭した場合に、グリセリン脂肪酸モノエステルが清拭面に残存しやすくなり、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルに基づく抗菌性を付与することができる。
【0011】
なお、薬液が所定のpHを有することにより、グリセリン脂肪酸モノエステルが分解しにくくなるメカニズムは、以下の通りと考えられる。
グリセリン脂肪酸モノエステルは、グリセリンと、脂肪酸との間のエステル結合を有する。エステル結合の加水分解は、アルカリ性条件下における加水分解、すなわち、鹸化(アルカリ加水分解)が、実質的に不可逆的反応である一方、酸性条件下における加水分解、すなわち、酸加水分解が平衡反応であることから、鹸化は、酸加水分解よりも迅速に進行する。
【0012】
従って、薬液のpHがアルカリ性(特に、7.30超のpH)である場合には、グリセリン脂肪酸モノエステルが迅速に鹸化され、脂肪酸塩を生成する。また、薬液中にカチオン性物質が存在する場合には、脂肪酸塩が、カチオン性物質との間で凝集体を形成し、沈殿すると考えられる。なお、薬液中にカチオン性物質が存在しない場合には、脂肪酸塩は凝集体を形成せず、薬液中に浮遊することになるが、脂肪酸塩は、グリセリン脂肪酸モノエステルと比較して、抗菌性が弱い。
【0013】
一方、薬液のpHが7.30未満(特に、酸性pH)である場合には、グリセリン脂肪酸モノエステルの酸加水分解が平衡反応であることから、グリセリン脂肪酸モノエステルの分解により生成する脂肪酸の量が一定に留まり、グリセリン脂肪酸モノエステルの分解を経てそれらが凝集、沈殿等しにくくなるとともに、その抗菌性能を発揮しやすくなると考えられる。
なお、当該観点からは、上記薬液、ひいては上記ウェットワイプスの包装体は、グリセリン脂肪酸モノエステルに由来する沈殿を有しないことが好ましい。
【0014】
[態様2]
上記薬液が、3.00以上且つ7.00未満のpHを有する、態様1に記載のウェットワイプスの包装体。
上記ウェットワイプスの包装体では、薬液が所定のpHを有することから、薬液がウェットワイプスの使用者の皮膚に刺激を与えることを抑制しつつ、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に抗菌性を付与することができる。
【0015】
[態様3]
上記薬液が、製造直後及び製造1ヶ月後の両方において、上記pHの要件を満たす、態様1に記載のウェットワイプスの包装体。
上記ウェットワイプスの包装体では、薬液が所定の時期に所定のpHの要件を満たすことから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に抗菌性をより付与しやすくなる。
【0016】
[態様4]
上記薬液が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、態様1に記載のウェットワイプスの包装体。
【0017】
上記ウェットワイプスの包装体では、薬液が、所定の界面活性剤をさらに含む。所定の界面活性剤を含む上記薬液は、薬液の表面張力が低くなっている。その結果、上記ウェットワイプスが清拭面を清拭する際、上記薬液が、清拭面に薄く濡れ拡がりやすくなるため、薬液中のグリセリン脂肪酸モノエステルが、清拭面に残存しやすくなるとともに、所定の界面活性剤も、清拭面に残存しやすくなる。従って、上記ウェットワイプスの包接体は、その製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルに基づく抗菌性と、所定の界面活性剤に基づく抗菌性とを付与することができる。
【0018】
また、上記薬液において、グリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在している場合には、所定の界面活性剤が、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子を分散する分散剤として機能することができることから、薬液中で、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子の分散性を保持し、経時で、グリセリン脂肪酸モノエステルが分離することを抑制する。
【0019】
従って、グリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在している場合には、ウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤に至るまで、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が、布帛とともに取り出され、そしてウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤に至るまで、ウェットワイプスを用いて清拭面を清拭した際に、ウェットワイプスからグリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が清拭面に移行しやすくなる。以上より、上記ウェットワイプスの包装体は、ウェットワイプスの包装体の製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子に基づく抗菌性及び所定の界面活性剤に基づく抗菌性を付与することができる。
【0020】
[態様5]
上記薬液が上記カチオン性界面活性剤を含み、上記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩を含む、態様4に記載のウェットワイプスの包装体。
【0021】
上記ウェットワイプスの包装体では、上記薬液が、上記カチオン性界面活性剤として、第4級アンモニウム塩を含むことから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルに基づく抗菌性及び第4級アンモニウム塩に基づく抗菌性を付与することができる。
【0022】
[態様6]
上記薬液が上記カチオン性界面活性剤を含み、上記カチオン性界面活性剤が、塩化ベンザルコニウムを含む、態様4に記載のウェットワイプスの包装体。
【0023】
上記ウェットワイプスの包装体では、上記薬液が、上記カチオン性界面活性剤として、塩化ベンザルコニウムを含むことから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルに基づく抗菌性及び塩化ベンザルコニウムに基づく抗菌性を付与することができる。
【0024】
[態様7]
上記ウェットワイプスが、抗菌性能試験において、黄色ブドウ球菌及び大腸菌のそれぞれに対して、2.0以上の抗菌活性値を有する、態様1~6のいずれか一項に記載のウェットワイプスの包装体。
【0025】
上記ウェットワイプスの包装体では、ウェットワイプスが、抗菌性能試験において、所定の抗菌活性値を有することから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗菌性を確実に付与することができ、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する抗菌性を付与することが期待される。
【0026】
[態様8]
上記グリセリン脂肪酸モノエステルが、C8~C18の炭素数を有するヒドロキシ脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルを含む、態様1~6のいずれか一項に記載のウェットワイプスの包装体。
【0027】
上記ウェットワイプスの包装体では、グリセリン脂肪酸モノエステルがグリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルであることから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する高い抗菌性を付与することができる。
【0028】
[態様9]
上記グリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルが、リシノレイン酸グリセリルである、態様8に記載のウェットワイプスの包装体。
【0029】
上記ウェットワイプスの包装体では、グリセリンヒドロキシ脂肪酸モノエステルが、リシノレイン酸グリセリルであることから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対するより高い抗菌性を付与することができる。
【0030】
[態様10]
上記グリセリン脂肪酸モノエステルが、ウンデシレン酸グリセリル及びカプリル酸グリセリルの少なくとも一方をさらに含む、態様9に記載のウェットワイプスの包装体。
【0031】
上記ウェットワイプスの包装体では、グリセリン脂肪酸モノエステルが、ウンデシレン酸グリセリル及びカプリル酸グリセリルの少なくとも一方をさらに含むことから、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対するより高い抗菌性を付与することができる。
【0032】
[態様11]
ウェットワイプス用の薬液であって、
上記薬液が、抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステルを含み、
上記薬液が、7.30未満のpHを有する、
ことを特徴とする、上記ウェットワイプス用の薬液。
上記ウェットワイプス用の薬液は、態様1と同様の効果を有する。
【0033】
[態様12]
上記薬液が、3.00以上且つ7.00未満のpHを有する、態様11に記載のウェットワイプス用の薬液。
上記薬液は、態様2と同様の効果を有する。
【0034】
[態様13]
上記薬液が、製造直後及び製造1ヶ月後の両方において、上記pHの要件を満たす、態様11又は12に記載のウェットワイプス用の薬液。
上記薬液は、態様3と同様の効果を有する。
【0035】
[態様14]
上記薬液が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、態様11又は12に記載のウェットワイプス用の薬液。
上記ウェットワイプス用の薬液は、態様4と同様の効果を有する。
【0036】
本開示のウェットワイプスの包装体(以下、単に「包装体」と称する場合がある。)及びウェットワイプス用の薬液(以下、単に「薬液」と称する場合がある。)について、以下、詳細に説明する。なお、上記薬液については、包装体の箇所で併せて説明する。
【0037】
本開示に係る包装体は、布帛と、薬液とを含む。
上記薬液は、以下を含む。
・抗菌剤としての、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであるグリセリン脂肪酸モノエステル
【0038】
上記グリセリン脂肪酸モノエステルは、C8~C18の炭素数を有する脂肪酸と、グリセリンとのモノエステルであれば、特に制限されない。
上記脂肪酸は、C8~C18の炭素数を有するヒドロキシ脂肪酸であることが好ましく、例えば、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシウンデカン酸、9-ヒドロキシウンデカン酸、8-ヒドロキシウンデカン酸、5-ヒドロキシドデカン酸、5-ヒドロキシウンデカン酸、5-ヒドロキシデカン酸、4-ヒドロキシドデカン酸、4-ヒドロキシウンデカン酸、4-ヒドロキシデカン酸、9-ヒドロキシ-2-デセン酸、5-ヒドロキシ-7-デセン酸等が挙げられ、リシノレイン酸グリセリルであることが好ましい。抗菌性の観点からである。
【0039】
なお、本明細書では、「抗菌」は、一定時間、例えば、24時間、菌の増殖を抑制することを意味し、「除菌」は、菌を取り除くことを意味する。
【0040】
上記脂肪酸は、好ましくはC8~C18の炭素数を有する不飽和脂肪酸、より好ましくはC8~C12の炭素数を有する中鎖不飽和脂肪酸であることができる。抗菌性の観点からである。C8~C18の炭素数を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、抗菌性の観点から、ウンデシレン酸が好ましい。
【0041】
上記脂肪酸は、C8~C18の炭素数を有する飽和脂肪酸、より好ましくはC8~C12の炭素数を有する中鎖飽和脂肪酸であることができる。抗菌性の観点からである。C8~C18の炭素数を有する飽和脂肪酸としては、例えば、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)が挙げられ、オクタン酸(カプリル酸)が好ましい。抗菌性の観点からである。
【0042】
上記グリセリン脂肪酸モノエステルは、C8~C18の炭素数を有するヒドロキシ脂肪酸と、C8~C18の炭素数を有する不飽和脂肪酸及びC8~C18の炭素数を有する飽和脂肪酸の一方とを含むことが好ましく、そしてC8~C18の炭素数を有するヒドロキシ脂肪酸と、C8~C18の炭素数を有する不飽和脂肪酸と、C8~C18の炭素数を有する飽和脂肪酸とを含むことがより好ましい。グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対するより高い抗菌性を付与する観点からである。
【0043】
上記薬液は、上記グリセリン脂肪酸モノエステルを、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.04質量%以上、そしてさらに好ましくは0.05質量%以上の量で含む。また、上記薬液は、上記グリセリン脂肪酸モノエステルを、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、そしてさらにいっそう好ましくは0.5質量%以下の量で含む。それにより、本開示の包装体が、清拭面に抗菌性を付与することができるとともに、ウェットワイプスの触感に優れる。
【0044】
上記薬液は、7.30未満のpHを有する。また、上記薬液は、好ましくは7.20以下、より好ましくは7.00未満、さらに好ましくは6.79以下、そしてさらにいっそう好ましくは6.50以下のpHを有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
また、上記薬液は、より好ましくは3.00以上、さらに好ましくは3.50以上、そしてさらにいっそう好ましくは3.80以上のpHを有する。それにより、ウェットワイプスの使用者が、皮膚に刺激を受けにくくなる。
なお、薬液のpHの下限は、使用者の皮膚の保護の観点からであって、上記薬液はpH3.00未満であっても抗菌性に優れる。
【0045】
本明細書では、薬液のpHは、東亜ディケーケー株式会社製のHM-21Pを用いて、25℃で測定する。
具体的には、アズワン社製メスシリンダー 高精度 100mL(1-8561-06)に、25℃に調整した薬液を100mL投入した後、メスシリンダーに25℃で校正したHM-21Pの電極部を投入してpHを測定する。
【0046】
また、上記薬液は、好ましくは製造1ヶ月後に上述のpHを有し、そしてより好ましくは製造直後及び製造1ヶ月後の両方において上述のpHを有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
なお、本願発明者は、本開示にかかる薬液は、製造から1ヶ月経過すると、薬液のpHが概ね変化しない傾向があることを見いだした。
【0047】
上記薬液は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される界面活性剤をさらに含むことができる。それにより、ウェットワイプスが、界面活性剤に基づく抗菌性能を発揮することができる。
【0048】
また、グリセリン脂肪酸モノエステルが薬液中に粒子として存在する場合には、上記界面活性剤により、当該粒子の分散性が保持されやすくなる。上記薬液は、カチオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
【0049】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩が好ましい。抗菌性の観点からである。
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、セトリモニウムクロリド、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェン、ラウリルトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド等が挙げられ、塩化ベンザルコニウムであることが好ましい。
【0050】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩を挙げることができる。上記カルボン酸塩としては、例えば、C12~C18の飽和及び不飽和脂肪酸、例えば、ヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等のカリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩、並びにアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩などを挙げることができる。上記硫酸塩としては、例えば、高級アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩等を挙げることができる。
【0051】
上記リン酸塩としては、例えば、アルキルリン酸塩(モノラウリルリン酸トリエタノールアミン、モノラウリルリン酸ジカリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩等を挙げることができる。上記スルホン酸塩としては、例えば、N-アシルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスルホコハク酸塩などを挙げることができる。
【0052】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン系、モノ又はジエタノールアミド系、糖系、グリセリン系等を挙げることができる。
上記両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウムベタイン系、アミノプロピオン酸系、アミノ酸系の両性イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0053】
上記薬液は、上記界面活性剤を、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上、そしてさらに好ましくは0.013質量%以上の量で含む。また、上記薬液は、上記界面活性剤を、好ましくは1.000質量%以下、より好ましくは0.500質量%以下、さらに好ましくは0.300質量%以下、そしてさらにいっそう好ましくは0.100質量%以下の量で含む。それにより、薬液中でグリセリン脂肪酸モノエステルを分散させやすくなり、薬液中でグリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在する場合には、薬液中にグリセリン脂肪酸モノエステルの粒子を分散させやすくなる。また、使用者が、ウェットワイプスにベタベタ感を覚えにくくなる。さらに、ウェットワイプスが、界面活性剤に基づく抗菌性能を発揮することができる。
【0054】
薬液中でグリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在する場合には、上記薬液内で、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が、好ましくは100~40,000nm、そしてより好ましくは500~1,500nmの範囲にピークを有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、ウェットワイプスにグリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が含まれやすくなり、ひいては上記ウェットワイプスを用いて清拭面を清拭した場合に、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が清拭面に残存しやすくなり、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に、グリセリン脂肪酸モノエステルに基づく抗菌性を付与しやすくなる。
【0055】
また、薬液中でグリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在する場合には、上記薬液では、上記範囲(好ましくは100~40,000nm、そしてより好ましくは500~1,500nmの範囲)におけるグリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が、全体の、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、そしてさらに好ましくは80質量%以上の占拠率を占める。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
【0056】
また、薬液中でグリセリン脂肪酸モノエステルが粒子として存在する場合には、上記薬液は、好ましくは静置1時間後、より好ましくは静置6時間後、さらに好ましくは静置24時間後に、上述のピーク及び/又は占拠率を有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
【0057】
本明細書では、グリセリン脂肪酸モノエステルの粒子の粒径は、以下の通り測定される。
(1)25℃の恒温室に、大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-2000ZSを準備する。
(2)アズワン社製のガラスセル GS-10(3.5mL)に薬液を3mL投入して洗浄し、薬液で共洗いしたシリンジを用いて、新たな薬液3mLをガラスセルに投入し、粒度分布を測定する。
【0058】
上記薬液は、好ましくは正のゼータ電位を有する。また、上記薬液は、より好ましくは0.0mV超、さらに好ましくは1.0mV以上、そしてさらにいっそう好ましくは2.0mV以上のゼータ電位を有する。さらに、上記薬液は、より好ましくは20.0mV以下、さらに好ましくは15.0mV以下、そしてさらにいっそう好ましくは10.0mV以下のゼータ電位を有する。それにより、薬液に分散しているグリセリン脂肪酸モノエステルの粒子が沈降しにくくなり、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
【0059】
本明細書では、薬液のゼータ電位は、以下の通り測定される。
(1)25℃の恒温室に、大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-2000ZSを準備する。
(2)アズワン社製のガラスセル GS-10(3.5mL)に薬液を3mL投入して洗浄し、薬液で共洗いしたシリンジを用いて、新たな薬液3mLをガラスセルに投入し、ゼータ電位を測定する。
【0060】
上記薬液は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにいっそう好ましくは60%以上、そしてさらにいっそう好ましくは70%以上の平行光線透過率を有する。また、上記薬液は、好ましくは100%以下の平行光線透過率を有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
また、上記薬液は、好ましくは静置1時間後、より好ましくは静置6時間後、さらに好ましくは静置24時間後に、上述の平行光線透過率を有する。
【0061】
本明細書では、薬液の平行光線透過率は、以下の通り測定される。
(1)25℃の恒温室に、日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH 7000SPIIを準備する。
(2)アズワン社製のガラスセル GS-40(14mL)にイオン交換水を12mL投入し、校正を行った後、薬液12mLをガラスセルに投入し、25℃で平行光線透過率を測定する。
【0062】
本開示に係る包装体では、ウェットワイプスが、抗菌性能試験において、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.3以上、そしてさらに好ましくは2.5以上の抗菌活性値を有する。また、上記薬液は、抗菌性能試験において、好ましくは6.0以下、そしてより好ましくは4.0以下の抗菌活性値を有する。それにより、ウェットワイプスの包装体が、その製造直後から使用終盤に至るまで、清拭面に抗菌性を付与しやすくなる。
上記抗菌活性値は、好ましくは黄色ブドウ球菌及び大腸菌の少なくとも一方、そしてより好ましくは黄色ブドウ球菌及び大腸菌の両方に対して有することが好ましい。
【0063】
また、上記包装体は、好ましくは包装体を1時間静置した後、より好ましくは包装体を6時間静置した後、さらに好ましくは包装体を24時間静置した後に取り出したウェットワイプスが、上述の抗菌活性値を有する。本開示の効果の観点からである。
さらに、上記包装体は、好ましくは包装体の開口部側の1割のウェットワイプスと、包装体の底側の1割のウェットワイプスが、上述の抗菌活性値を有する。本開示の効果の観点からである。
【0064】
本明細書では、上記抗菌性能試験は、以下の通り実施される。
<抗菌加工>
(1)一般社団法人日本衛生材料工業連合会におけるウェットワイパー類の「除菌自主基準」である「ウエットワイパー類の除菌性能試験方法」(令和3年5月13日改正,https://www.jhpia.or.jp/standard/wet_wiper/img/wetwiper_standard05-3.pdf)に記載の「3.4 拭取り装置」を準備し、「3.5 試験担体」に従って、拭取り装置を洗浄する。
(2)ウェットワイプスを用いて、「5.5 拭取り操作」を実施する。なお、試験担体に、菌液を接種しない。
次いで、プレートをシャーレに移し、蓋をし、24時間室温で静置する。
【0065】
<抗菌試験>
JIS Z2801:2010 「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に従って、抗菌性能試験を実施する。
なお、上記プレートを、試験片として用いる。
【0066】
上記薬液は、グリセリン脂肪酸モノエステル及び界面活性剤以外の抗菌剤、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等を含むことができる。
【0067】
上記薬液は、ウェットワイプス、化粧料、清拭剤等の薬液に通常用いられる添加剤を含むことができる。
上記添加剤としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィンなどの炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油などの天然油脂類;トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルなどの合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル油;ミツロウ、カルナウバロウなどのロウ類;直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチンなどの油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルカノールアミドなどの本発明の成分以外の非イオン性界面活性剤;石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩などの両性界面活性剤;アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドなどの半極性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどの本発明の成分以外の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミンまたはアミドアミンの塩酸塩および酢酸塩;タルク、カオリン、セリサイト、雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックスなどの無機物の粉末;結晶セルロース、ポリエチレン、ポリ四フッ化エチレンなどの有機物の粉末;酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄(ベンガラ)、黄土、カーボンブラック、コバルトバイオレット、酸化クロム、群青などの無機顔料;酸化チタン被覆雲母、魚燐箔、着色酸化チタン被覆雲母などのパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダーなどの金属粉末顔料;赤色201号、赤色227号、橙色204号、黄色205号、青色404号などの化粧品用色素;赤色3号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号などの食品添加物用色素;ジルコニウム、クロロフィル、β-カロチンなどの天然色素;アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸などの水溶性高分子;硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの無機または有機塩類;酸およびアルカリなどのpH調整剤;本発明の成分以外の殺菌剤;キレート剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;動植物由来の天然エキス;香料が挙げられる。
【0068】
上記薬液は、溶媒として、水を任意の比率で含むことができ、溶媒の100質量%が水であってもよい。
上記薬液は、溶媒として、水以外の成分をさらに含むことができる。上記水以外の成分としては、例えば、アルコール、例えば、エタノールが挙げられる。上記薬液が、溶媒としてアルコールをさらに含むことにより、ウェットワイプスに除菌性能を付与することができるとともに、グリセリン脂肪酸モノエステルの溶媒への溶解性が向上する。
なお、グリセリン脂肪酸モノエステルは、溶媒中の水の比率が高いほど、溶媒中に粒子として存在する傾向が高くなり、溶媒中のアルコールの比率が高いほど、溶媒中に溶解して存在する傾向が高くなる。
【0069】
上記薬液が、溶媒として、水及びアルコールを含む場合には、水:アルコールの比率は、それらの計100質量部を基準として、好ましくは30~100未満(30以上且つ100未満):70~0超(70以下且つ0超)、より好ましくは30~90:70~10、さらに好ましくは40~80:60~20、そしてさらにいっそう好ましくは50~70:50~30である。それにより、他の成分の存在にもよるが、グリセリン脂肪酸モノエステルが、溶媒中に溶解しやすくなる傾向がある。
【0070】
上記薬液は、水溶性の低い成分である低水溶性成分を水に溶解させるための溶解助剤、例えば、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油等を含むことができる。
上記薬液は、水溶性の低い成分である低水溶性成分を水に溶解させるための溶解助剤、例えば、水溶性溶媒、例えば、グリコール、フェノキシエタノール等を、例えば、グリセリン脂肪酸モノエステルの200質量%以下、100質量%以下、50質量%以下等の量で含むことができる。
また、上記薬液は、水溶性溶媒、例えば、グリコール、フェノキシエタノール等を含まないことができる。それにより、本開示のウェットワイプスが、人に安心感を付与することができ、そしてペット等に対して安全性を有する。
【0071】
上記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0072】
本開示のウェットワイプスの包装体では、布帛は、ウェットワイプスの基材として用いられるものであれば、特に制限されず、不織布、織物、編物等が挙げられる。
上記布帛は、疎水性繊維を含むことができる。本開示に係るウェットワイプスが、布帛を構成する繊維として疎水性繊維を含むことにより、ウェットワイプスが、嵩高さ、へたりにくさ等を有することができる。
【0073】
上記疎水性繊維としては、例えば、当技術分野で通常用いられているものが挙げられ、合成繊維であることが好ましい。上記合成繊維としては、単一の成分を含むもの、例えば、単一繊維、又は複数の成分を含むもの、例えば、複合繊維が挙げられる。
【0074】
上記成分としては、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン;ポリエステル系ポリマー、例えば、テレフタラート系ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET),ポリブチレンテレフタラート,ポリペンチレンテレフタラート;ポリアミド系ポリマー、例えば、ナイロン6及びナイロン6,6;アクリル系ポリマー;ポリアクリロニトリル系ポリマー;及びそれらの変性物が挙げられる。
【0075】
上記布帛は、親水性繊維を含むことができる。
上記親水性繊維としては、セルロース系繊維、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。
【0076】
上記天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、パルプ繊維、種子毛繊維(例えば、コットン繊維)、じん皮繊維(例えば、麻)、葉脈繊維(例えば、マニラ麻)、果実繊維(例えば、やし)が挙げられる。
【0077】
上記パルプ繊維としては、当技術分野で、パルプ繊維として公知のものが含まれ、例えば、木材パルプ繊維及び非木材パルプ繊維が挙げられる。上記木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維が挙げられる。上記非木材パルプ繊維としては、例えば、ワラパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ヨシパルプ繊維、ケナフパルプ繊維、クワパルプ繊維、竹パルプ繊維、麻パルプ繊維、綿パルプ繊維(例えば、コットンリンター繊維)等が挙げられる。
【0078】
上記コットン繊維としては、ヒルスツム種コットン繊維(例えば、アップランドコットン)、バルバデンセ種コットン繊維、アルボレウム種コットン繊維及びヘルバケウム種コットン繊維が挙げられる。
また、上記コットン繊維は、オーガニックコットン繊維、プレオーガニックコットン(商標)繊維であることができる。
オーガニックコットン繊維は、GOTS(Global Organic Textile Standard)による認証を受けたコットンを意味する。
【0079】
上記再生セルロース繊維としては、レーヨン、例えば、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)等の繊維が挙げられる。
【0080】
上記精製セルロース繊維としては、リヨセル、具体的には、パルプを、N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N-メチルモルホリンN-オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが挙げられる。上記精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。
上記半合成繊維としては、半合成セルロース、例えば、アセテート繊維、例えば、トリアセテート及びジアセテート等の繊維が挙げられる。
【0081】
上記不織布としては、例えば、乾式法、湿式法、ウォータージェット法、スパンボンド法、エアレイド法、ニードルパンチ法、フェルト法などの公知の方法で製造された任意の不織布(例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等)を採用することができ、湿潤強度が高いスパンレース不織布が好ましい。
【0082】
上記ウェットワイプスの包装体では、上記薬液を、布帛に、当技術分野で通常用いられる含浸率にて含浸されることができ、上記含浸率(質量%)[=100×(薬液の質量)/(布帛の質量)]は、例えば、100~500質量%が挙げられる。
【実施例0083】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[製造例1]
グリセリン脂肪酸モノエステルとしてのRUC-20(大洋香料株式会社製、カプリル酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル及びリシノレイン酸グリセリルの混合物)を0.2質量部と、塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業株式会社製、カチオンG50)を0.03質量部(成分量換算,投入量として0.06質量部)と、ポリアミノプロピルビグアニド(日光ケミカルズ株式会社製、COSMOCIL CQ,PAPB)を0.01質量部(成分量換算、投入量として0.05質量部)とを混合し、混合物No.1を形成した。イオン交換水59.69質量部及びエタノール40.00質量部の混合溶液No.1を攪拌しながら、混合物No.1を混合溶液No.1に添加し、薬液No.1を製造した。
【0084】
[製造例2]
RUC-20を0.2質量部と、塩化ベンザルコニウムを0.03質量部(成分量換算,投入量として0.06質量部)と、ポリアミノプロピルビグアニドを0.01質量部(成分量換算、投入量として0.05質量部)と、溶解助剤としてのHCO-40(日光ケミカルズ株式会社製、PEG-40水添ヒマシ油)を0.30質量部とを混合し、混合物No.2を形成した。イオン交換水59.39質量部及びエタノール40.00質量部の混合溶液No.2を攪拌しながら、混合物No.2を混合溶液No.2に添加し、薬液No.2を製造した。
【0085】
[製造例3~5]
配合を表1に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様にして、薬液No.3~No.5を製造した。
【0086】
[比較製造例1]
グリセリン脂肪酸モノエステルとしてのカプリル酸グリセリル(太陽化学株式会社製、サンソフトNo.700P-2-C,Gly-Cap)1.00質量部と、ε-ポリリジン(JNC株式会社製)0.25質量部とを混合し、混合物No.6を形成した。混合物No.6を、攪拌しているイオン交換水98.75質量部に添加し、混合物No.6をイオン交換水と混合し、薬液No.6を製造した。
なお、薬液No.6は、特許文献1の実施例1に相当する。
【0087】
[比較製造例2及び3]
配合を表1に示す通りに変更した以外は、比較製造例1と同様にして、薬液No.7及びNo.8を製造した。
なお、表1のPGは、プロピレングリコールを意味する。
薬液No.7及びNo.8は、それぞれ、特許文献1の実施例5及び6に相当する。
【0088】
[実施例1~実施例5,及び比較例1~比較例3]
<pH>
本明細書に記載の方法に従って、薬液No.1~No.8のpHを測定した。なお、pHは、各種薬液を製造直後及び製造から1時間後の2種を測定した。測定されたpHを表1に示す。
なお、実施例2~5については、製造直後と、製造1時間後のpHがほぼ変化しないことから、表1には、製造1時間後のデータのみを載せている。
また、比較例2及び3については、比較例1と同様に、製造直後の高いpHが時間とともに低くなる傾向にあった。
【0089】
<抗菌活性値>
本明細書に記載の方法に従って、製造1時間後の薬液を用いて、薬液No.1~No.8の抗菌活性値(大腸菌及び黄色ブドウ球菌)を測定した。各薬液の抗菌活性値を表1に示す。なお、抗菌活性値は、2.00を超えると合格である。
抗菌活性値の測定に当たり、布帛として、市販の不織布(坪量:38g/m2)を用いた。また、ウェットワイプスの包装体における、薬液の含浸率は、236質量%であった。
【0090】
【表1】
【0091】
薬液No.1~No.5は、製造直後及び製造1時間後の両方において、pHが7.00未満であった。薬液No.1~No.5は、pHが7.00未満、すなわち酸性条件にあるため、グリセリン脂肪酸モノエステルが鹸化しにくく、グリセリン脂肪酸モノエステルが凝集及び沈殿しにくく、グリセリン脂肪酸モノエステルが、その抗菌性能を発揮できたものと考えられる。
その結果、薬液No.1~No.5は、表1に示すように、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性が高いものであった。
なお、薬液No.1~No.5は、製造後24時間においてpH及び粒度分布を測定しても、概ね、製造直後と同様のpHを有していた。
【0092】
薬液No.6~No.8は、製造直後のpHが7超と高く、時間とともに中性であるpH7に近づくものであった。これは、グリセリン脂肪酸モノエステルの鹸化(アルカリ加水分解)に起因するものと思われる。また、薬液No.6~No.8では、沈殿が発生した。当該沈殿は、グリセリン脂肪酸モノエステルの鹸化(アルカリ加水分解)に伴い、脂肪酸が生成するとともに、脂肪酸がポリリジンと凝集したことに起因すると思われる。
【0093】
また、以下のメカニズムにより、グリセリン脂肪酸モノエステル及びポリリジンの抗菌性能が低下したと考えられる。
(i)ポリリジンが水と反応して、薬液中に水酸化物イオンを放出することにより、薬液がアルカリ性になり、高いpHを示す。
(ii)それに伴い、グリセリン脂肪酸モノエステルの鹸化(アルカリ加水分解)が生じ、グリセリンと、脂肪酸塩とが形成される。
(iii)ポリリジンと、脂肪酸塩とが凝集体を形成し、ポリリジン及びグリセリン脂肪酸モノエステルの両方とも、抗菌性能を発揮しにくくなる。
その結果、薬液No.6~No.8は、表1に示すように、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性に劣るものであったと考えられる。
【0094】
[製造例6]
配合を表2に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様にして、薬液No.9~No.22を製造した。
なお、表2において、塩化ベンザルコニウムは、三洋化成工業株式会社製のカチオンG50を用い、そしてポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)は、日光ケミカルズ社製のCOSMOCIL-CQ(商品名)を用いた。また、HClは、1.0%の塩酸水溶液(林純薬工業株式会社製,研究実験用)であり、NaOHは、1.0%の水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)であった。
【0095】
[実施例6~実施例14,比較例4~比較例6,並びに参考例1及び2]
<pH>
本明細書に記載の方法に従って、薬液No.9~No.22のpHを経時で追跡した。なお、pHは、各種薬液に関して、製造直後及び製造1ヶ月後の2種を測定した。なお、各種薬液は、25℃で保管した。測定されたpHを表2に示す。
【0096】
<抗菌活性値>
本明細書に記載の方法に従って、25℃で1ヶ月保管した薬液No.9~No.22の抗菌活性値(大腸菌及び黄色ブドウ球菌)を測定した。各薬液の抗菌活性値を表2に示す。
抗菌活性値の測定に当たり、布帛として、市販の不織布(坪量:38g/m2)を用いた。また、ウェットワイプスの包装体における、薬液の含浸率は、236質量%であった。
【0097】
【表2】
【0098】
薬液No.9~16において、塩酸又は水酸化ナトリウムを添加することにより薬液のpHを調整すると、薬液のpHを酸性側に保持することにより抗菌活性に優れることが分かる。また、薬液No.15及びNo.16より、薬液のpHをアルカリ性とすることにより、沈殿が生じ、抗菌活性に劣ることが分かる。
また、薬液No.17~No.20において、薬液のpHを酸性側に保持すると、薬液No.17と比較して、抗菌活性が向上することが分かる。
なお、薬液No.9~14、薬液No.18~No.20は、製造3ヶ月後も、製造1ヶ月後と概ね同様のpHを有することを確認した。
【0099】
薬液No.21及びNo.22から、塩酸そのものは、大腸菌に対する抗菌活性が低く、そして水酸化ナトリウムそのものは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が低いことが分かる。
【0100】
[実施例15]
以下の化合物1質量部と、イオン交換水99部とを混合し、混合直後に、本明細書に記載の方法に従って、pHを測定した。結果を以下に示す。
-クエン酸:4.38
-フェノキシエタノール:4.44
-ジプロピレングリコール:4.63
-ポリエチレングリコール水添ヒマシ油(日光ケミカルズ社製,HCO-60):
4.26
-ポリヘキサメチレンビグアニド:5.00
-塩化ベンザルコニウム:8.18
-塩化セチルピリジニウム:5.71
-ラウリル硫酸ナトリウム:9.77