(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175667
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20231205BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20231205BHJP
A23L 2/68 20060101ALI20231205BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/02 A
A23L2/02 E
A23L2/68
A23L2/54 101
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087923
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022087701
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(71)【出願人】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】日野 由佳子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LG05
4B117LG08
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK08
(57)【要約】
【課題】有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料において、野菜や果実やこれらの搾汁の風味がすでに食べごろを過ぎて、痛んだり、過熟した状態であったり、老化した状態のものの品質(腐熟臭)として認識されることなく、これらが感じられない好ましい新鮮な風味に野菜や果実やこれらの搾汁の風味を修飾する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料を提供する。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【請求項2】
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】
以下(5)をさらに充足する請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
(5)酢酸エチルを0.05ppm以上含有し、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上100GV以下である。
【請求項4】
以下(6)をさらに充足する請求項2又は3に記載の容器詰め炭酸飲料。
(6)アセトアルデヒドを0.01ppm以上含有し、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上500GV以下である。
【請求項5】
高甘味度甘味料を含有する、請求項1に記載の、容器詰め炭酸飲料。
【請求項6】
植物の搾汁を含有する、請求項1に記載の、容器詰め炭酸飲料。
【請求項7】
有機酸1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)が1.25v/v%以上500v/v%以下である、請求項6に記載の、容器詰め炭酸飲料。
【請求項8】
イソ吉草酸エチル及び/又は2,3-ペンタンジオンを含有し、容器詰め炭酸飲料中の含有量が以下である、請求項1に記載の、容器詰め炭酸飲料。
イソ吉草酸エチルの含有量が0.1ppb以上20000ppb以下である。
2,3-ペンタンジオンの含有量が0.01ppb以上2000ppb以下である。
【請求項9】
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料の製造方法。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【請求項10】
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料の腐熟臭を抑制する方法。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【請求項11】
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料の腐熟臭を抑制する方法であって、有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下となるように調整することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸をはじめとする有機酸には血中コレステロールの低減、高血圧、糖尿病、肥満予防といった様々は健康効果が報告されており、ますますその摂取へのニーズが高まっている。近年の健康志向の高まりにより、それら有機酸を含有する清涼飲料も多く市販されている。しかしながら、有機酸特有の刺激(例えば刺激臭)、並びに酢酸をはじめとする有機酸の製造等において発生するエタノール、アセトアルデヒド等の中間代謝物、それら有機酸の刺激的な香味に似た酢酸エチル等の低級脂肪酸エステルといった香気成分が嗜好性を妨げる場合がある。
【0003】
このような香気成分は、野菜や果実などの植物からも発生するため、ヒトはこれらの臭いをかぐと無意識的に植物由来のものと連想してしまうためである。これらの香気成分は、野菜や果実に含まれる糖質その他の成分の酵母や酢酸菌等による代謝、エチレンガスの発生、熟成、追熟、収穫、貯蔵、輸送などの刺激やストレス等によって生成されることが知られている。これは、クライマクテリック型の野菜や果実のみならず、ノンクライマクテリック型の野菜や果実においても認められる。
【0004】
したがって、ヒトはその経験上、酢酸をはじめとする有機酸、それら有機酸の刺激的な香味に似た酢酸エチル等の低級脂肪酸エステル、エタノールやアセトアルデヒド等の中間代謝物等の香味を感じると、食べごろを過ぎて、痛んだり、過熟した状態であったり、老化した状態の野菜や果物の品質からくる臭い(以下、これを腐熟臭という場合がある)として感じてしまい、嗜好性が劣ったものとして認識されてしまうという課題があった。
【0005】
さらに、酢酸をはじめとする有機酸と野菜や果実やこれらの搾汁を含有する清涼飲料も市販されているが、野菜や果実やこれらの搾汁と有機酸が共存すると、野菜や果実やこれらの搾汁が最適な食べごろであって痛んだりストレスを受けたりしていないものであったとしても、上記香気成分により腐熟臭として感じられるため、その野菜や果実の品質が好ましくないものと認識してしまい忌避してしまうという課題があった。
【0006】
植物由来の好ましくない臭いに関し、特許文献1には、アントシアニンを含有する飲料において自然な果実感及び甘味と酸味の最適なバランスを有しながら、経時による内容液の退色及び劣化臭を抑制した容器詰果汁含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰果汁含有飲料における退色、劣化臭の抑制剤及びその抑制方法を提供する技術が開示されている。特許文献2には、柑橘系飲料における経時劣化後の柑橘の劣化臭をマスキングする方法を提供する技術が開示されている。特許文献3には、シコウカ属(Lawsonia)植物の抽出物及び/又はその精製物を含有する、香味又は風味の劣化抑制用組成物を、飲食品に含有させる方法を提供する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、これら開示された技術は、飲料や飲食品の保存中や経時により発生する劣化香味に対して効果を奏する技術であり、製造直後からその香味を制御する技術ではなかった。
【0008】
また、特許文献4には、炭酸飲料における炭酸ガス特有の苦味と刺激が緩和された、より好ましく飲用できる炭酸飲料を提供する技術が開示されている。特許文献5には、原料に酢酸を配合する工程を含む、炭酸飲料の炭酸の刺激を抑制する方法を提供する技術が開示されている。しかしながら、本願の課題やその解決手段を示唆乃至動機づけする記述は何ら認められない。
【0009】
さらに、非特許文献1には、「りんご酢の炭酸割り」が、非特許文献2には、「スッキリりんご」が、本願出願前に上市されていることが記載されている。しかしながら、本願の課題やその解決手段を示唆乃至動機づけする記述は何ら認められない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】伊藤園、プレスリリース、2021年2月18日、「VINEGAR SODA りんご酢の炭酸割り」3月8日(月)新発売https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000059.000046014.html
【非特許文献2】ノエビアグループ、プレスリリース、2017.06.02、「お酢×炭酸がシュワリとおいしい。『スッキリ』シリーズより、りんご酢の「炭酸飲料」発売」https://www.atpress.ne.jp/news/129703
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-214133号公報
【特許文献2】特開2019-37172号公報
【特許文献3】特開2020-156403号公報
【特許文献4】特開2018-99089号公報
【特許文献5】特開2020-31615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明の解決課題は、酢酸をはじめとする有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料において、それら有機酸、酢酸エチル、アセトアルデヒド等の香気成分を腐熟臭として認識されることなく、これらが感じられない好ましい植物の風味として修飾する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、従来の技術にない、炭酸ガスの風味修飾効果に着目し、上記課題を同時に簡易に解決できることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、下記の発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、次の<1>~<11>を提供するものである。
<1>
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
<2>
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種以上である、<1>に記載の容器詰め炭酸飲料。
<3>
以下(5)をさらに充足する<1>又は<2>に記載の容器詰め炭酸飲料。
(5)酢酸エチルを0.05ppm以上含有し、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上100GV以下である。
<4>
以下(6)をさらに充足する<1>~<3>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料。
(6)アセトアルデヒドを0.01ppm以上含有し、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上500GV以下である。
<5>
高甘味度甘味料を含有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料。
<6>
植物の搾汁を含有する、<1>~<5>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料。
<7>
有機酸1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)が1.25v/v%以上500v/v%以下である、<6>に記載の、容器詰め炭酸飲料。
<8>
イソ吉草酸エチル及び/又は2,3-ペンタンジオンを含有し、容器詰め炭酸飲料中の含有量が以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料。
イソ吉草酸エチルの含有量が0.1ppb以上20000ppb以下である。
2,3-ペンタンジオンの含有量が0.01ppb以上2000ppb以下である。
<9>
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料の製造方法。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
<10>
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の容器詰め炭酸飲料の腐熟臭を抑制する方法。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
<11>
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料の腐熟臭を抑制する方法であって、有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下となるように調整することを含む、方法。
【0015】
また、本発明は、次の[1]~[10]を提供するものである。
[1]
酢酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下〔1〕~〔4〕を充足する容器詰め炭酸飲料。
〔1〕酢酸を0.1w/v%以上含有する。
〔2〕酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
〔3〕ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
〔4〕糖酸比が1以上50以下である。
[2]
以下〔5〕をさらに充足する[1]に記載の容器詰め炭酸飲料。
〔5〕酢酸エチルを0.05ppm以上含有し、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上100GV以下である。
[3]
以下〔6〕をさらに充足する[1]又は[2]に記載の容器詰め炭酸飲料。
〔6〕アセトアルデヒドを0.01ppm以上含有し、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上500GV以下である。
[4]
高甘味度甘味料を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の、容器詰め炭酸飲料。
[5]
植物の搾汁を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の、容器詰め炭酸飲料。
[6]
酢酸1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)が1.25v/v%以上500v/v%以下である、[5]に記載の、容器詰め炭酸飲料。
[7]
イソ吉草酸エチル及び/又は2,3-ペンタンジオンを含有し、容器詰め炭酸飲料中の含有量が以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の、容器詰め炭酸飲料。
イソ吉草酸エチルの含有量が0.1ppb以上20000ppb以下である。
2,3-ペンタンジオンの含有量が0.01ppb以上2000ppb以下である。
[8]
酢酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下〔1〕~(4〕を充足する、[1]~[7]のいずれかに記載の容器詰め炭酸飲料の製造方法。
〔1〕酢酸を0.1w/v%以上含有する。
〔2〕酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
〔3〕ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
〔4〕糖酸比が1以上50以下である。
[9]
酢酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下〔1〕~〔4〕を充足する、[1]~[7]のいずれかに記載の容器詰め炭酸飲料の腐熟臭を抑制する方法。
〔1〕酢酸を0.1w/v%以上含有する。
〔2〕酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
〔3〕ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
〔4〕糖酸比が1以上50以下である。
[10]
酢酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料の腐熟臭を抑制する方法であって、
酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下となるように調整することを含む、方法。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、酢酸をはじめとする有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料において、それら有機酸、酢酸エチル、アセトアルデヒド等の香気成分を腐熟臭として認識されることなく、これらが感じられない好ましい新鮮な植物の風味として修飾する技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、数値範囲の規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲の規定が直接的に記載されているものとし、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が直接的に記載されているものとする。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に示されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0018】
本発明において、「w/w%」との記載で表される割合は、「湿潤質量換算」の割合を表す。「湿潤質量換算」とは、試料の水分を含む湿潤質量を分母、試料中の対象成分の含有質量を分子として算出される、試料中の対象成分の含有比率を表し、質量%と読み替えることもできる。また、本発明において、「w/v%」と記載される場合、試料の容量(100ml)における、試料中の対象成分の含有質量(g)を示す。さらに、本発明において、「v/v%」と記載される場合、試料の容量(100ml)における、試料中の対象成分の含有容量(ml)を示す。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「含む」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。用語「含む」を使用する場合、列記された工程又は選択項目は網羅的である必要はない。
【0020】
本明細書中において、「及び(並びに)/又は(若しくは)」なる表現については、「及び(並びに)」と「又は(若しくは)」の両方の意を包含する。例えば「A及び/又はB」は、A及びBとA又はBの両方の意を包含し、A単独、B単独、及びAとBの両方の3つを示す。
【0021】
本発明は、有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料に関する。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【0022】
[有機酸]
本発明の容器詰め炭酸飲料は、有機酸を含有する。有機酸とは、酸性を示す有機化合物の総称を指す。本発明の炭酸飲料に含有される有機酸は、特に制限されないが、例えばカルボン酸等が挙げられ、より具体的には、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸等が挙げられる。なお、本発明において「炭酸」は、無機酸である。さらに具体的には、本発明の容器詰め炭酸飲料は、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種以上、又は2種以上、又は3種以上、又は4種以上を含有することが好ましく、より好ましくは酢酸、クエン酸、乳酸からなる群から選択される少なくとも1種以上、又は2種以上、又は3種を含有してもよい。また、本発明における有機酸が前述する有機酸のいずれかであってもよく、有機酸が酢酸、クエン酸、又は乳酸のいずれかであってもよく、有機酸が酢酸であってもよい。なお、本発明の有機酸含有飲食品におけるこれらの有機酸の含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「有機酸」の測定方法に準じ、高速液体クロマトグラフ法又は酵素法によって測定する。中でも酢酸は後述する高速液体クロマトグラフィー方法によって測定する。
【0023】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、野菜や果実の風味が腐熟臭として感じられ、新鮮な野菜や果実の風味が損なわれる影響がより大きくなる観点から、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸)を含有することが好ましく、特に酢酸を含有することが好ましい。本願明細書において、酢酸とは、酢酸分子(CH3COOH)と酢酸イオン(CH3COO-)を包含するものとし、酢酸の含有量とは、これらを合計した濃度をいうものとする。本発明の容器詰め炭酸飲料中の有機酸の合計含有量は、0.1w/v%以上である限り、特に制限されない。この程度の含有量である場合、さらには下記の好ましい下限値以上の濃度である場合、有機酸により、野菜や果実の風味が腐熟臭として感じられ、新鮮な野菜や果実の風味が損なわれる影響がより大きくなる、すなわち本発明の有機酸による腐熟臭の修飾技術の必要性がより高くなる。本発明の容器詰め炭酸飲料中の有機酸の合計含有量は、前記した課題の発生の観点と、そのまま飲用するために適しているという観点から、下限としては、0.1w/v%以上であればよいが、好ましくは0.125w/v%以上、より好ましくは0.15w/v%以上、さらに好ましくは0.2w/v%以上である。一方で、その上限としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果の奏功の観点から15.0w/v%以下、又は10.0w/v%以下、又は8.0w/v%以下、又は6.0w/v%以下、又は5.5w/v%以下、又は5.0w/v%以下、又は4.5w/v%以下、又は3.0w/v%以下、又は2.5w/v%以下、又は1.5w/v%以下であれば好ましく、より好ましくは1.25w/v%以下、さらに好ましくは1w/v%以下、特に好ましくは0.75w/v%以下である。また、その範囲は、例えば0.10~10w/v%であってもよく、0.15~8.0w/v%であってもよい。また、本発明の一態様によれば、酢酸の含有量が前記有機酸の合計含有量に関する規定を充足してもよい。
【0024】
また、上記合計含有量に関する規定を充足する限りにおいて、個別の有機酸含有量(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸)は特に制限されない。具体的には0.02w/v%以上、又は0.04w/v%以上、又は0.06w/v%以上、又は0.08w/v%以上、又は0.10w/v%以上、又は0.12w/v%以上、又は0.15w/v%以上、又は0.20w/v%以上、又は0.25w/v%以上、又は0.30w/v%以上、又は15.0w/v%以下、又は10.0w/v%以下、又は8.0w/v%以下、又は6.0w/v%以下、又は5.0w/v%以下、又は4.5w/v%以下、又は4.0w/v%以下、又は3.5w/v%以下、又は3.0w/v%以下、又は2.5w/v%以下、又は2.0w/v%以下、又は1.5w/v%以下、又は1.0w/v%以下、又は0.90w/v%以下、又は0.80w/v%以下、又は0.60w/v%以下であってもよい。また、本発明の一態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれる有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸)のうち、最も含有量が多い有機酸が上記規定を充足してもよい。
【0025】
なお、本発明の容器詰め炭酸飲料が2種以上の有機酸を含有する場合、最も含有量が多い有機酸の例としては前記した有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸)が挙げられるが、本発明の容器詰め炭酸飲料は、中でも酢酸、クエン酸、及び乳酸からなる群から選択されるいずれか1種の有機酸を最も多く含有することが好ましく、特に酢酸を最も多く含有することが好ましい。
【0026】
なお、本発明の容器詰め炭酸飲料が酢酸を含有する態様である場合、酢酸の由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、食品添加物由来(本発明の酢酸含有飲食品の酢酸が該食品添加物に含まれる酢酸)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の容器詰め炭酸飲料の酢酸が調味料、食品原料等に含まれる酢酸)であることもできる。
中でも、本発明の容器詰め炭酸飲料における酢酸の由来は、酢酸含有量の調製の簡便性の観点から、調味料である食酢であることが好ましい。上記食酢としては、例えば、米や麦などの穀物や果汁を原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢と、があり、何れも使用することができる。醸造酢としては、例えば、米酢、穀物酢(玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(リンゴ酢、ぶどう酢、レモン酢、カボス酢、梅酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢などが挙げられる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。なお、これらの食酢は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ここで、本発明の容器詰め炭酸飲料における酢酸の由来は、それ自体が酢酸と類似した腐熟臭を生じせしめる成分を含有し、本発明の風味修飾技術の必要性がより高くなるという観点等から、中でも、上記醸造酢であること、さらには野菜や果実の風味により影響を与えにくい(香気成分の種類が少ない)酒精酢が含まれることが好ましい。
なお、ここで、酢酸は食酢以外の他の調味料にも含有される例があるが、本発明の容器詰め炭酸飲料の野菜や果実の風味を阻害する観点から、醤油、味噌、出汁等は使用されないことが好ましく、また、本来、その腐熟臭が品質の特性としてよしとされるアルコール飲料や、容器内発酵を行うアルコール飲料は使用されないことが好ましい。
【0028】
ただし、蒸留酒や醸造アルコールなどの蒸留や精製処理によって腐熟臭の大部分が除去乃至揮散させられたアルコールは本発明の効果を妨げないため、これらを用いることは可能である。その具体的な例としては、ウォッカ、焼酎、泡盛、醸造アルコールなどが挙げられる。この時、本発明の容器詰め炭酸飲料のアルコール濃度は、本願発明の奏功の観点から、8w/v%以下であることが好ましい。なお、目的とする飲料の風味が上記風味の付与を目的とする場合は、その限りではない。
【0029】
ここで、酢酸は以下の方法で定量すればよい。
酢酸の場合、サンプルは酢酸の濃度が100mg%付近になるように超純水で希釈し、以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、酢酸のピーク面積を分析する。一方で、超純水で希釈した100mg%の酢酸を、標品サンプルとして同様に分析し、外部標準法により各サンプルの酢酸の含有量を算出する。
・測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC-10ADVP)
・移動相(1)4mMp-トルエンスルホン酸水溶液、流速0.9mL/min
・移動相(2)4mMp-トルエンスルホン酸、80μMEDTAを含む16mMBis-Tris水溶液、流速0.9mL/min
・カラム:Shodex KC810P+KC-811×2(昭和電工社製)
・カラム温度:50℃
・検出:電気伝導度検出器
【0030】
[酢酸エチル・アセトアルデヒド]
本発明の容器詰め炭酸飲料は、酢酸をはじめとする有機酸と共に、腐熟臭を生じせしめる成分として、酢酸エチル及び/又はアセトアルデヒドを含み得る。本発明の飲食品中の酢酸エチルの含有量は、酢酸エチル由来の腐熟臭を生じせしめる影響がより大きくなる、すなわち本発明の風味修飾技術の必要性がより高くなるという観点等から、下限としては特に制限されるものではないが、本願発明の効果の奏功の観点から、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上、よりさらに好ましくは1ppm以上である。一方で、上限としては特に制限されるものではないが、例えば20000ppm以下、10000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下であることが好ましい。本発明の容器詰め炭酸飲料中のアセトアルデヒドの含有量は、アセトアルデヒド由来の腐熟臭を生じせしめる影響がより大きくなる、すなわち本発明の風味修飾技術の必要性がより高くなるという観点等から、下限としては特に制限されるものではないが、本願発明の効果の奏功の観点から、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上、よりさらに好ましくは0.5ppm以上である。一方で、上限としては特に制限されるものではないが、例えば20000ppm以下、10000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下であることが好ましい。
【0031】
酢酸エチルは以下の方法で定量すればよい。サンプルを酢酸エチルの濃度が0.05~0.20v/v%付近になるように超純水で希釈し、内部標準としてアセトン(純度99.9%以上、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を0.25v/v%になるように添加し、以下の条件に従って、ガスクロマトグラフィー(GC)を用い、酢酸エチルのピーク面積を分析する。一方で、超純水で希釈した酢酸とアセトンの濃度が各0.25%(v/v)である標品サンプルを同様に分析し、内部標準法により各サンプルの酢酸エチルの含有量を算出する。
・測定機器:ガスクロマトグラフィー GC2014、クロマトパック C-R5A(島津製作所社製)
・カラム:パックドカラム(3.1m)充填剤:PEG-1000 25% Shimalite 60/80 BT(信和化工株式会社)
・キャリアガス:Heガス、ガス流量 40ml/min
・温度条件 :105℃(7min)→100℃/min昇温→120℃(2min)
・検出器: FID(150℃)
【0032】
アセトアルデヒドは以下の方法で定量すればよい。サンプルはそのまま、以下の条件に従って、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、アセトアルデヒドのピーク面積を分析する。一方で、アセトアルデヒド(純度99.0%以上、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を100ppmとなるよう超純水で希釈した標品サンプルを同様に分析し、外部標準法により各サンプルのアセトアルデヒドの含有量を算出する。
・測定機器:ガスクロマトグラフィー 6890(Agilent Technologies社製)
・カラム:TC-WAX 0.53mm X 30m 膜厚1.0μm (ジーエルサイエンス社製)
・キャリアガス:Heガス、ガス流量 5ml/min
・温度条件:40℃(5min) →2℃/min昇温→ 100℃(0min) →20℃/min昇温→ 230℃(10min)
・検出器:FID(250℃)
【0033】
[植物風味香料]
本発明において、植物風味香料としては、野菜や果実といった植物の風味をもたらすもので食用に適するものであれば何ら限定されない。例えば、本発明の飲料の調整目的である植物の風味に対応する植物風味香料を使用でき、ぶどうフレーバー、リンゴフレーバー、柑橘フレーバー(レモンフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバー、柚子フレーバー、日向夏フレーバー、カラマンシーフレーバー、すだちフレーバー等)、ブルーベリーフレーバー、ウメフレーバー、カシスフレーバー、ざくろフレーバー、ラズベリーフレーバー、マンゴーフレーバー等や、ヨーグルトフレーバー等の乳フレーバー、その他、ローズヒップフレーバー、カモミールフレーバー、ジャスミンフレーバー、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、シソフレーバー、わさびフレーバー、トマトフレーバー、バジルフレーバー等の風味を有するものが挙げられる。これらの植物風味香料は、本願発明の効果を妨げない範囲において、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で、併用してもよい。ここで、植物風味香料の概念としては、天然成分及び/又は合成成分を適宜組み合わせて調製した食品添加物である香料(粉末状や液状などの態様は問わない)や、野菜や果実から抽出したエッセンシャルオイルや抽出エキス等の概念を包含する。
【0034】
[植物・植物の搾汁]
植物としては、野菜や果実など食用に適するものであれば何ら限定されないが、以下が挙げられる。上記野菜としては、例えば、トマト、ピーマン、パプリカ、キュウリ、ナス、レッドベルペッパー、かぼちゃ、枝豆、等の果菜、タマネギ(オニオン)、ショウガ(ジンジャー)、ニンニク(ガーリック)、大根、ニンジン、ビーツ等の根菜、キャベツ、レタス、ほうれん草、白菜、セロリ、小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤ、ケール、シソ、ニラ、パセリ、ネギ、バジル等の葉菜、ニンニク、アスパラガス、たけのこ等の茎菜、ブロッコリー、カリフラワー等の花菜等、その他きのこ類等に由来する野菜が挙げられる。野菜はこれらに限定されるものではなく、1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。なお、これらの野菜より得られた搾汁(野菜汁)やピューレ、ペースト、さらには清澄化した搾汁等を、本願発明の効果を妨げない範囲において、本発明の飲料に1種又は2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で配合してもよい。
【0035】
また、上記果実としては、例えば、リンゴ、桃、ぶどう、アセロラ、ブルーベリー、梨、杏、オレンジ、レモン、柚子、日向夏、カラマンシー、カボス、スダチ、ライム、みかん、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、バナナ、メロン、キウイフルーツ、パイナップル、カシス、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ、ウメ、ざくろ、アサイー、ピンクグレープフルーツ、ラズベリー、白ぶどう、ベルガモット、パッションフルーツ、八朔等に由来する果実が挙げられる。果実はこれらに限定されるものではなく、本願発明の効果を妨げない範囲において、1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。なお、これらの果実より得られた搾汁(果汁)やピューレ、ペースト、さらには清澄化した搾汁等を、本願発明の効果を妨げない範囲において、本発明の飲料に1種又は2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で配合してもよい。さらには、上記野菜と上記果実の1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができることは言うまでもない。
【0036】
なお、ここで、本発明の植物の搾汁としては、前記野菜や果実の搾汁であることが好ましいが、本発明が容器詰め炭酸飲料である態様である観点から、開封時や容器に注いだ際に泡が発生して、これらとともに不溶性成分が吹き上がり、本願発明の効果を妨げる虞がある観点から、炭酸ガスの泡とともに不溶性成分が目視できるほど吹き上がらない程度に清澄であることが好ましく、実質的にほとんど清澄であることが好ましい。
【0037】
すなわち本発明の容器詰め炭酸飲料は、植物の搾汁由来のみならず、他の原料由来としても、実質的に不溶性成分を含まないことが好ましい。
【0038】
また、この知見から、濃度が高くなると粘度が高くなる(すなわち起泡しやすい)ショ糖やブドウ糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖などの甘味度の低い糖質は、高甘味度甘味料を用いてその一部又は全部を代替し、甘味度は維持しつつ、甘味を有する低甘味度の糖質の濃度を低くすることが好ましい。
【0039】
なお、ここで、前記実質的に不溶性成分を含まないとは、炭酸ガスの起泡が、消泡する速度より速く、内在成分の張力により泡塊を維持又は成長することをさせない程度であることを指す。この程度は、本発明の容器詰め炭酸飲料をグラス等の容器に注ぐことで確認できる。また、この観点においては、後述する炭酸ガス圧を2.5GV以下にすることが好ましい。
【0040】
また、本発明の解決課題は、野菜や果実やこれらの搾汁の風味が腐熟臭として認識されることなく、これらが感じられない好ましい新鮮な風味に野菜や果実やこれらの搾汁の風味を修飾する技術を提供することにあるから、より新鮮で自然な野菜や果実の風味を生じさせるためには、香料のみで風味付けするよりも、野菜や果実の搾汁を含有させて風味付けすることが好ましい。さらには、より嗜好性を向上させる観点から、香料と野菜や果実の搾汁を併用することがより好ましい。特には、香料と野菜や果実の搾汁と高甘味度甘味料を併用することが好ましい。
【0041】
この時、本発明の容器詰め炭酸飲料における植物(野菜や果実)の搾汁の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の風味修飾技術の必要性がより高くなるという観点から、特定の有機酸に対する植物(野菜や果実)の搾汁の含有量が、所定範囲であることが好ましい。その下限としては、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか。特に酢酸)1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)が1.25v/v%以上であることが好ましく、2.5v/v%以上がより好ましく、3.75v/v%以上がさらに好ましい。一方、上限としては、野菜や果実の自然な風味を付与する観点と本発明の効果の奏功の観点から、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか。特に酢酸)1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)が500v/v%以下であることが好ましく、200v/v%以下であることがより好ましく、175v/v%以下がさらに好ましく、150v/v%以下がよりさらに好ましく、50v/v%以下が特に好ましく、25v/v%以下がとりわけ非常に好ましい。また、本発明の一態様によれば、有機酸が、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか1以上の場合に前記規定を充足してもよい。また、本発明の一態様によれば、最も含有量が多い有機酸が上記規定を充足してもよい。また、本発明の一態様によれば、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸の1以上)の合計含有量1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量が上記規定を充足してもよい。
【0042】
本発明の飲料中の植物の搾汁の含有量(ストレート果汁換算)は、特に制限されるものではないが、本発明の飲料の調製の容易さ、果汁添加の利点(爽やかな香りの付加等)を得るという観点から、例えば0.2質量%以上700質量%以下、1質量%以上500質量%以下、2質量%以上300質量%以下である。該含有量の上限又は下限は、上記範囲からさらに低い値又は高い値であることができ、これらの値は、例えば0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、10質量%、30質量%、50質量%、100質量%、200質量%、300質量%、400質量%、500質量%、600質量%である。なお、植物の搾汁の含有量(ストレート果汁換算)とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの質量%濃度をいい、飲料に配合される果汁の含有率(質量%)に、果汁の濃縮倍率を乗じて算出することができる。例えば、濃縮倍率が5倍であるリンゴ果汁を飲料に10質量%で配合した場合には、植物の搾汁の含有量(ストレート換算)は50質量%となる。また、各果汁の濃縮倍率は、例えば、JAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)に示される各種果実のストレート果汁の糖用屈折計示度の基準下限値又は酸度の基準下限値に基づいて、換算することができる。
【0043】
[容器]
本発明の容器詰め炭酸飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、及びスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルや透明瓶が好ましい。飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mLが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~600mLがより好ましい。
【0044】
[炭酸飲料]
本発明の容器詰め炭酸飲料は、炭酸ガスを含有するものである。炭酸ガス圧(ガスボリューム、GV)は、本願発明の効果を奏する範囲に調製される。ここで、炭酸ガスは、本発明の容器詰め炭酸飲料においては、炭酸ガスを含まない状態の飲料ベースに、外部から炭酸ガス(液化炭酸ガス)を充填・溶存させる態様を採る。すなわち、ガス圧を均一に調整することが困難な、容器内発酵による炭酸飲料は除かれる。
【0045】
ここで、本発明の腐熟臭を抑制する風味の修飾効果の観点から、特定の有機酸に対する炭酸ガス圧(GV、0℃、1気圧)は、所定範囲であることが好ましい。その下限としては、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか。特に酢酸)1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常2.5GV以上であってもよく、本発明の効果のより顕著な奏功の観点から、好ましくは5GV以上、より好ましくは7.5GV以上であってもよい。一方で、上限としては、本発明の奏功の観点から、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか。特に酢酸)1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常25GV以下であってもよく、本発明の効果の奏功と全体の風味への影響の観点から、好ましくは20GV以下、より好ましくは17.5GV以下、さらに好ましくは15GV以下、特に好ましくは12.5GV以下であってもよい。
炭酸ガス圧(GV)が上記範囲内であれば、腐熟臭が抑制され、野菜や果実の風味の新鮮さを回復でき、嗜好性が向上できる。また、本発明の一態様によれば、有機酸が、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸のいずれか1以上の場合に前記規定を充足してもよい。また、本発明の一態様によれば、最も含有量が多い有機酸が上記規定を充足してもよい。一態様によれば、有機酸(例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸の1以上)の合計含有量1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が上記規定を充足してもよい。
【0046】
なお、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の腐熟臭を抑制する風味の修飾効果の顕著な奏功の観点から、酢酸エチルを含有する場合、とりわけ0.05ppm以上含有する場合、酢酸エチルに対する炭酸ガス圧(GV、0℃、1気圧)は以下の範囲であることが好ましい。その下限としては、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常0.00003GV以上であれば好ましく、より好ましくは0.0001GV以上、さらに好ましくは0.0005GV以上、さらにより好ましくは0.002GV以上、特に好ましくは0.01GV以上である。一方で、上限としては、本発明の奏功の観点から、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常100GV以下であれば好ましく、例えば、50GV以下、10GV以下、5GV以下等であってもよい。
【0047】
同様に、アセトアルデヒドを含有する場合、とりわけ0.01ppm以上含有する場合、アセトアルデヒドに対する炭酸ガス圧(ガスボリューム、GV、0℃、1気圧)は以下の範囲であることがより好ましい。その下限としては、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常0.00003GV以上であれば好ましく、より好ましくは0.0001GV以上、さらに好ましくは0.0005GV以上、さらにより好ましくは0.002GV以上、特に好ましくは0.01GV以上である。一方で、上限としては、本発明の奏功の観点から、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が、通常500GV以下であれば好ましく、例えば、100GV以下、50GV以下、10GV以下等であってもよい
【0048】
ここで、炭酸ガスの圧入方法は、液化炭酸ガスを用いて、公知の方法で充填することができる。また、炭酸飲料中の炭酸ガス圧は公知の方法で測定することができる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。なお、炭酸ガス圧(ガスボリューム、GV)は、標準状態(1気圧、0℃)において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
なお、本発明の奏功の観点から、充填時の炭酸ガス圧を一定値に調整するため、本発明の容器詰め炭酸飲料は、飲料ベースと炭酸水とを混合して(割って)調製する態様は好ましくない。
【0049】
[甘味度]
本発明の容器詰め炭酸飲料において、本願発明の奏功の観点から、甘味度の下限は通常1以上である。好ましくは1.25以上、より好ましくは1.5以上であればよい。一方で、その上限としては、通常30以下である。好ましくは20以下であればよい。
本発明の容器詰め炭酸飲料において、甘味度が上記範囲内であれば、新鮮で自然な野菜や果実の風味を回復でき、嗜好性が向上できる。
【0050】
ここで、「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)に記載されている値を採用することができる。例えば、代表的な甘味料の甘味度は、ショ糖1、ブドウ糖0.65、果糖1.5、スクラロース600、アセスルファムカリウム200、アスパルテーム200である。
【0051】
本発明におけるショ糖換算の甘味度とは、本発明の容器詰め炭酸飲料の甘味の強さを、ショ糖の水溶液の甘味の強さに換算したものであり、ショ糖1g/100ml含む水溶液と同等の甘味の強さをショ糖換算の甘味度を1とした場合の甘味度とする。ショ糖換算の甘味度は、容器詰め炭酸飲料の容器に成分表示されている甘味成分の甘味度と、分析等により特定した甘味成分の含有量をもとに算出することができる。上記方法で算出できない場合は、訓練された検査員が甘味標準水溶液を用いた評価を行って、当該容器詰め炭酸飲料と同等の甘味を持つショ糖溶液の濃度を特定し、その濃度を甘味度とすることもできる。
【0052】
本発明の容器詰め炭酸飲料は好ましくは高甘味度甘味料を含有する。高甘味度甘味料とは、ソーマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウムをはじめとする甘味度50以上の天然又は合成の甘味料を指す。植物の搾汁(野菜汁や果汁)には、アミノ酸やコハク酸等のうま味成分が含まれており、これらには後味を引き伸ばす効果があるが、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きがこれに近似するため、高甘味度甘味料の配合は、野菜や果実のより自然で新鮮な風味を奏することとなるためである。
【0053】
また、開封時や容器に注いだ際に泡が発生して、これらとともに不溶性成分が吹き上がり、本願発明の効果を妨げる虞がある観点からも、本発明の容器詰め炭酸飲料は、高甘味度甘味料を配合し、甘味度に対する糖質の割合を低くすることが好ましい。
【0054】
ここで、使用できる高甘味度甘味料の種類としては何ら限定されるものではなく、上記高甘味度甘味料やその他の高甘味度甘味料のいずれかを1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。使用する高甘味度甘味料の量についても本明細書にて説明される好ましい甘味度、糖酸比、吹き上がりの抑制が達成できれば限定されない。
【0055】
[糖酸比]
本発明の容器詰め炭酸飲料において、糖酸比は、本願発明の奏功の観点から、糖酸比の下限は通常1以上である。好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であればよい。一方で、その上限としては、通常50以下である。好ましくは40以下であればよい。
本発明の容器詰め炭酸飲料において、糖酸比が上記範囲内であれば、新鮮で自然な野菜や果実の風味を回復でき、嗜好性が向上できる。
【0056】
本発明における糖酸比とは、後述の糖度(Brix)値を、後述の酸度で除して得られる。糖度(Brix)値とは、常法に従って屈折糖度計にて測定することができる。また、本発明における酸度とは、本発明の飲料に含まれる有機酸の滴定酸度(クエン酸換算酸度)のことを指し、当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、市販の自動滴定装置を用い、電位差滴定法に基づいて算出することができる。また、無機酸である炭酸を含有する試料においては、炭酸ガス注入前の試料を測定してもよいし、公知の方法(例えば常温下で物理的振動を加えるなど)で炭酸を除去した試料を測定してもよい。この時、当然ながら、容器詰め炭酸飲料に含有される酢酸もクエン酸酸度に換算される。すなわち、本発明における有機酸の滴定酸度は、本発明の飲料に含まれる有機酸の合計滴定酸度(クエン酸換算酸度)を指す。
【0057】
本発明の一態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料の酸度は、有機酸により、野菜や果実の風味が腐熟臭として感じられ、新鮮な野菜や果実の風味が損なわれる影響がより大きくなる観点から、所定値以上であってもよい。該含有量は、下限としては、0.1w/v%以上であってもよく、0.125w/v%以上、又は0.15w/v%以上、又は0.2w/v%以上であってもよい。一方で、その上限としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果の奏功の観点から15.0w/v%以下、又は10.0w/v%以下、又は8.0w/v%以下、又は6.0w/v%以下、又は5.5w/v%以下、又は5.0w/v%以下、又は4.5w/v%以下、又は3.0w/v%以下、又は2.5w/v%以下、又は1.5w/v%以下、又は1.25w/v%以下、又は1w/v%以下、又は0.75w/v%以下であってもよい。また、その範囲は、例えば0.10~10w/v%であってもよく、0.15~8.0w/v%であってもよい。
【0058】
また、本発明の一態様によれば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フマル酸から選択される少なくとも1種以上の滴定酸度合算値が上記規定を充足してもよい。また、本発明の一態様によれば、酢酸又はクエン酸の滴定酸度合算値が上記規定を充足してもよい。また、本発明の一態様によれば、酢酸の滴定酸度が上記規定を充足する態様であってもよく、これらの場合に糖酸比の規定を充足してもよい。
【0059】
[イソ吉草酸エチル・2,3-ペンタンジオン]
本発明の容器詰め炭酸飲料は有機酸と炭酸を含有するため、特有の喉刺激を感じることがある。この喉刺激が本発明の容器詰め炭酸飲料を摂取することへの抵抗となる場合がある。
この場合、イソ吉草酸エチル(Ethyl isovalerate、CAS No.108-64-5)及び/又は2,3-ペンタンジオン(2,3-Pentanedione、CAS No. 600-14-6)を配合すると、喉刺激が緩和され、摂取の抵抗を低減することができ好ましい。
【0060】
この時の本発明の容器詰め炭酸飲料におけるイソ吉草酸エチルの含有量は、下限としては、0.1ppb以上であることが好ましく、1ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましい。一方で、本成分自体が品質に及ぼす影響の観点から、上限としては、20000ppb以下であることが好ましく、10000ppb以下がより好ましい。
【0061】
同様に、本発明の容器詰め炭酸飲料における2,3-ペンタンジオンの含有量は、下限としては、0.01ppb以上であることが好ましく、0.05ppb以上がより好ましく、0.1ppb以上がさらに好ましい。一方で、本成分自体が品質に及ぼす影響の観点から、上限としては、2000ppb以下であることが好ましく、1000ppb以下がより好ましい。
なお、イソ吉草酸エチルと2,3-ペンタンジオンのどちらかでもよいが、喉刺激の緩和効果の大きさから、双方をともに含有させることが好ましい。また、その含有方法は、特に限定されないが、上記植物の搾汁及び/又は植物風味香料の成分の一部として配合し、これをさらに本発明の容器詰め炭酸飲料に配合して含有させればよい。
【0062】
ここで、イソ吉草酸エチルと2,3-ペンタンジオンは以下の方法で定量すればよい。
(成分の分離濃縮方法)
以下の条件に従って、成分の分離濃縮を行う。
サンプルは100gを1Lバイアルに測り取り、密封した後40℃で30min予備加熱をする。その後、バイアル中の気相をサンプルとして200mlを濃縮装置に導入する。
・揮発性成分濃縮装置 : Entech7200(Entech社製)
・濃縮モード:CTD
・M1(Empty)温度 : Trap -40℃→Desorb 10℃
・M2(Tenax)温度 : Trap -50℃→Desorb 220℃
・M3(CryoFoucus)温度 : Trap -150℃→Desorb 80℃
【0063】
(成分の分析方法)
以下の条件に従ってガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、各成分のピーク面積を分析する。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7980B GC System (Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-1 (Agilent Technologies社製) 長さ60m,口径0.32mm,膜厚1.0μm
・キャリア:Heガス、ガス流量2.68mL/min
・温度条件:35℃(5min)保持→220℃まで3℃/min昇温→5分間保持
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 5977B MSD(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI
・測定モード:SCAN
【0064】
(成分の定量方法(外部標準法))
無水エタノールで希釈した濃度既知の各成分(配合に使用したものと同一のもの)を、標品サンプルとして分析し、検出されたピーク面積をもとに検量線を作成する。分析サンプルの分析結果を検量線にあてはめ、含有量を算出する。
【0065】
また、本発明には、上記した、有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料の製造方法も含まれる。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【0066】
さらに、本発明には、上記した、酢酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、以下(1)~(4)を充足する容器詰め炭酸飲料の腐熟臭を抑制する方法も含まれる。
(1)有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上である。
(2)有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下である。
(3)ショ糖換算の甘味度が1以上30以下である。
(4)糖酸比が1以上50以下である。
【0067】
さらに、本発明には、以下の発明も含まれる。
有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め飲料の腐熟臭を抑制する方法であって、
有機酸の含有量酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下となるように調整することを含む方法。
【0068】
上記製造方法及び腐熟臭を抑制する方法により得られる容器詰め炭酸飲料は、更に以下(5)及び/又は(6)を充足するものであってもよい。
(5)酢酸エチルを0.05ppm以上含有し、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上100GV以下である。
(6)アセトアルデヒドを0.01ppm以上含有し、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が0.00003GV以上500GV以下である。
【0069】
さらに、本発明には、上記した、有機酸と植物の搾汁及び/又は植物風味香料を含有する容器詰め炭酸飲料であって、上記(1)~(4)並びに下記(7)及び/又は(8)を充足する容器詰め炭酸飲料の腐熟臭を抑制しつつ喉刺激を緩和する方法も含まれる。
(7)イソ吉草酸エチルを0.1ppb以上20000ppb以下含有する。
(8)2,3-ペンタンジオンを0.01ppb以上2000ppb以下含有する。
上記腐熟臭を抑制しつつ喉刺激を緩和する方法により得られる容器詰め炭酸飲料は、更に上記(5)及び/又は(6)を充足するものであってもよい。
【0070】
本発明の方法は、下記(i)~(iii)を含む。
(i)飲料中の有機酸の合計含有量が0.1w/v%以上になるよう調整する工程。
(ii)前記飲料の甘味度がショ糖換算で1以上30以下の範囲でありかつ糖酸比が1以上50以下の範囲になるよう調節する工程。
(iii)前記飲料に炭酸ガスを充填し、有機酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧が2.5GV以上25GV以下の範囲になるよう調整する工程。
【0071】
本発明の方法は、更に下記(iv)及び/又は(v)を含んでもよい。
(iv)酢酸エチルの含有量が0.05ppm以上になる場合、前記充填された炭酸ガスが、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧として0.00003GV以上100GV以下の範囲になるよう調整する工程。
(v)アセトアルデヒドの含有量が0.01ppm以上になる場合、前記充填された炭酸ガスが、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧として0.00003GV以上500GV以下の範囲になるよう調整する工程。
【0072】
本発明の方法は、更に下記(vi)及び/又は(vii)を含んでもよい。
(vi)飲料中のイソ吉草酸エチルの含有量が0.1ppb以上20000ppb以下になるよう調整する工程。
(vii)飲料中の2,3-ペンタンジオンの含有量が0.01ppb以上2000ppb以下になるよう調整する工程。
【0073】
より詳細な製造方法及び腐熟臭を抑制する方法は容器詰め炭酸飲料との関係で上に詳述したとおりである。
【実施例0074】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
[試験1:本発明における酢酸含有量の範囲の検証と本発明の解決手段の奏功のあたり付け]
(被験サンプルの調製)
ここでは、酢酸を含有する飲料において、本発明の課題が発生する本発明における酢酸含有量の範囲について検証を行った。酢酸を含有する飲料として、表1に示す各品質指標になるように、酢酸を含有する原料の一例として、醸造酢である市販のリンゴ酢(酢酸含有量5.0w/v%)を用い、果実風味の一例として白ブドウ香料及び/又は白ブドウ果汁を用い、ショ糖及び/又は無水クエン酸を用い、その他の原料として水を用い、適宜これらの配合割合を調整して、酢酸を含有する果実風味飲料を調製した。これを500mL容透明PETボトルに注入し(炭酸ガスの充填量が高圧の場合は小容量の瓶に代替)、必要に応じて、既定のガス圧になるように炭酸ガス(液化炭酸ガス)を充填して容器詰め炭酸飲料を調製し、一晩5℃の冷蔵庫にて静置したのち、翌日常温に戻し、以下の評価基準に従い、品質を評価し、酢酸含有量による本発明の課題の発生と炭酸ガスの含有量による本発明の効果の検証を行った。
【0076】
(結果の評価)
本発明の効果の検証は、上記試料について、以下に記載の評価基準を用いて評価をすることで行った。なお、各評価試験を行う検査員としては、予め食品の味、食感、物性や外観等の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味、食感、物性や外観等の品質についての知識が豊富で、各評価項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員10名を選抜し行った。検査員10名が、何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準試料の評価を行い、評価基準の用語やスコアについて標準化を行った上で、客観性のある評価を行った。評価項目の評価は、5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出し、小数点以下は四捨五入した。さらに、本発明の効果について、特筆すべき特徴がある場合は、これを自由記述させ、検査員の過半数が同様に感じた結果を総合的なコメントとして示した。
【0077】
<評価基準1:腐熟臭の有無>
なお、ここで、腐熟臭とは上記した通り、食べごろを過ぎて、痛んだり、過熟した状態であったり、老化した状態の老化した状態の野菜や果物の品質からくるものとして認識される風味(香りや味)のことを指す。なお、野菜又は果実風味との記載は、試料の調製目的である風味に対応する。
5:腐熟臭が全く感じられず、新鮮な野菜又は果実風味を有する。
4:腐熟臭がほとんど感じられず、やや新鮮な野菜又は果実風味を有する。
3:腐熟臭がやや感じられるものの、新鮮な野菜又は果実風味があり、許容範囲。
2:腐熟臭がやや強く感じられ、野菜又は果実風味の新鮮な風味にやや欠ける。
1:腐熟臭が強く感じられ、野菜又は果実風味の新鮮な風味に欠ける。
【0078】
<評価基準2:総合評価>
ここでは、腐熟臭の有無だけではなく、野菜や果実風味の飲料として、全体的な品質(香りや味=風味)が整っているか否か、新鮮で自然か否か、違和感があるかないかという観点に基づき、これらの感じ方から、嗜好性の高低について判別するものである。
5:野菜又は果実風味の飲料として全体に特に好ましい風味を有し、非常においしい。
4:野菜又は果実風味の飲料として全体に好ましい風味を有し、おいしい。
3:野菜又は果実風味の飲料として全体にやや好ましい風味を有し、許容範囲。
2:野菜又は果実風味の飲料として全体にやや違和感のある風味を有し、ややおいしくない。
1:野菜又は果実風味の飲料として全体に違和感のある風味を有し、おいしくない。
【0079】
試験1の試験系及び評価結果を表1に示す。なお、甘味度は糖酸比から求められる糖度と同値であった。
【0080】
【0081】
結果、有機酸合計含有量(本試験では酢酸含有量)が0.075w/v%以下の場合、本発明の課題(腐熟臭を感じる)が生じないことが分かった。したがって、本発明における有機酸合計含有量(本試験では酢酸含有量)の範囲は、下限としては、0.1w/v%以上であればよいこと、好ましくは0.125w/v%以上、より好ましくは0.15w/v%以上、さらに好ましくは0.2w/v%以上であることが好ましいことが分かった。一方で、その上限としては、特に限定されるものではないが、飲用適性(飲用しやすさ)の観点から、1.5w/v%以下であれば好ましく、1.25w/v%以下であればより好ましく、1w/v%以下であればさらに好ましく、0.75w/v%以下であれば特に好ましいことが分かった。すなわち、上記範囲において本願発明の解決手段の適用可能であることが分かった。
また、本願発明の解決手段である炭酸ガスの充填を試験例1~9の飲料に適用したところ腐熟臭が著しく解消され、総合評価も著しく向上した。そのうち、試験例4に炭酸ガスの充填を適用した結果を実施例1として示す。よって、本発明の解決手段の奏功に目処がついた。
【0082】
[試験2:本発明における炭酸ガス充填量の範囲の検証]
試験1において、酢酸を含有する果実風味飲料に炭酸ガスを含有させたところ、本発明の課題である腐熟臭が解消され、嗜好性が向上した。そこで、試験2では、炭酸ガスを様々な充填量で適用し炭酸ガス充填量の範囲を検証した。なお、試験は、各酢酸含有量毎に炭酸ガスの充填量を変化させたことを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。
【0083】
試験2の試験系及び評価結果を表2、3に示す。
【0084】
【0085】
結果、本発明の効果を奏する容器詰め炭酸飲料における、炭酸ガス圧(GV、0℃、1気圧)の範囲は、有機酸(本試験では酢酸)1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧として、下限としては、2.5GV以上であればよいことが分かった。好ましくは5GV以上、さらに好ましくは7.5GV以上であることが分かった。一方、上限としては、25GV以下であればよいことが分かった。好ましくは20GV以下、より好ましくは17.5GV以下、さらに好ましくは15GV以下、特に好ましくは12.5GV以下であればよいことが分かった。すなわち、炭酸ガス圧が高いと腐熟臭を解消する効果も大きいが、一方で所望する野菜又は果実の新鮮な風味もやや弱くさせてしまうためと考えられた。
【0086】
[試験3:本発明における酢酸エチル、アセトアルデヒド含有量と炭酸ガス充填量の範囲の影響の検証]
試験1、2では、本発明の容器詰め炭酸飲料において含有される酢酸の本発明の課題への影響並びに、炭酸ガスによるその解決効果について検証をおこなった。ここでは、本発明の容器詰め炭酸飲料の原料の種類によっては、これに含有される場合がある、酢酸エチル、アセトアルデヒドによる解決課題の発生とその解消について検証を行った。なお、試験3は、有機酸(本試験では酢酸)に加え、酢酸エチル又はアセトアルデヒドをこれらの純品を用いて含有量を調整したこと、炭酸ガスの充填量を変化させたことを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。なお、表5、表6甘味度は糖酸比から求められる糖度と同値であった。
【0087】
試験3の試験系及び評価結果を表4、5、6に示す。
【0088】
【0089】
結果、酢酸エチル及び/又はアセトアルデヒドが有機酸(本試験では酢酸)と共存することで、本発明の課題(腐熟臭を感じる)がより一層強く現れることが分かった。
一方で、炭酸ガスを含有させることで、これらの課題は解消できることが分かった。
具体的には、酢酸エチルの場合、本発明の効果を奏する容器詰め炭酸飲料における、その含有量としては、下限としては特に制限されるものではないが、本願発明の効果のより顕著な奏功の観点から、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上、よりさらに好ましくは1ppm以上である。なお、酢酸エチルの含有量が0.05ppm未満の場合、酢酸エチルを含まない場合(比較例9)と比べて腐熟臭に認識できる程の差異は生じなかった。一方で、上限としては特に制限されるものではないが、例えば20000ppm以下、10000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下であることが好ましいことが分かった。また、この時、炭酸ガス圧(GV、0℃、1気圧)の範囲は、酢酸エチル1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧として、下限としては、0.00003GV以上であれば好ましいことが分かった。好ましくは0.0001GV以上、より好ましくは0.0005GV以上、さらに好ましくは0.002GV以上、さらにより好ましくは0.01GV以上であることが分かった。一方、上限としては、酢酸エチルによる上記課題解決の観点から、100GV以下であれば好ましく、例えば、50GV以下、10GV以下、5GV以下等であってもよいことが分かった。
また、アセトアルデヒドの場合、本発明の効果を奏する容器詰め炭酸飲料における、その含有量としては、下限としては特に制限されるものではないが、本願発明の効果のより顕著な奏功の観点から、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上、よりさらに好ましくは0.5ppm以上である。なお、アセトアルデヒドの含有量が0.01ppm未満の場合、アセトアルデヒドを含まない場合(比較例9)と比べて腐熟臭に認識できる程の差異は生じなかった。一方で、上限としては特に制限されるものではないが、例えば20000ppm以下、10000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下であることが好ましいことが分かった。また、この時、炭酸ガス圧(GV、0℃、1気圧)の範囲は、アセトアルデヒド1ppmあたりの炭酸ガスの充填時ガス圧として、下限としては、0.00003GV以上であれば好ましいことが分かった。好ましくは0.0001GV以上、より好ましくは0.0005GV以上、さらに好ましくは0.002GV以上、さらにより好ましくは0.01GV以上であることが分かった。一方、上限としては、アセトアルデヒドによる課題解決の観点から、500GV以下であれば好ましく、100GV以下、50GV以下、10GV以下等であってもよいことが分かった。
【0090】
[試験4:本発明における甘味度の範囲の検証]
ここでは、本発明の効果を奏する甘味度の範囲を検証した。なお、試験は、高甘味度甘味料(スクラロース)を用いて甘味度を変化させたことを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。
【0091】
試験4の試験系及び評価結果を表7に示す。
【0092】
【0093】
結果、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の効果の奏功における甘味度の範囲は、新鮮で自然な果実風味を奏する観点から、下限としては、通常、1以上であればよいことが分かった。好ましくは1.25以上、より好ましくは1.5以上であることが分かった。一方で、その上限としては、新鮮で自然な果実風味を奏する観点から、通常30以下であればよいことが分かった。より好ましくは20以下であることが分かった。
【0094】
[試験5:本発明における糖酸比の範囲の検証]
ここでは、本発明の効果を奏する糖酸比の範囲を検証した。なお、試験は、糖酸比を変化させたことを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。なお、甘味度は糖酸比から求められる糖度と同値であった。
【0095】
試験5の試験系及び評価結果を表8に示す。
【0096】
【0097】
結果、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の効果の奏功における糖酸比の範囲は、新鮮で自然な果実風味を奏する観点から、下限としては、通常、1以上であればよいことが分かった。好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であることが分かった。一方で、その上限としては、新鮮で自然な果実風味を奏する観点から、通常50以下であればよいことが分かった。より好ましくは40以下であることが分かった。
【0098】
[試験6:本発明に及ぼす各種条件の検証]
試験1~5では、植物の風味として、代表的に白ぶどうを選択し、このフレーバー(香料)を用いて果汁風味を調整した。そこでここでは、香料以外の植物の搾汁(野菜汁や果汁)や高甘味度甘味料を用いること、さらには酢酸の由来を変えること、アルコールを加えることによる、本発明の効果への影響/効果を検証した。なお、試験は、香料以外の植物の搾汁や高甘味度甘味料を用いること、酢酸の由来を変えることを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。
【0099】
試験6の試験系及び評価結果を表9に示す。
【0100】
【0101】
結果、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の効果は、果実のみならず、野菜をはじめとする植物全般でも奏功することが分かった。
また、香料のみにより風味付けした本発明の容器詰め炭酸飲料において、高甘味度甘味料を使用した場合、総合的な風味の好ましさが向上し、好ましいことが分かった。これは、植物の搾汁(野菜汁や果汁)には、アミノ酸やコハク酸等のうま味成分が含まれており、これらには後味を引き伸ばす効果があるため、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きがこれに近似するため、より自然な植物風味を奏するためと考えられた。なお、高甘味度甘味料の種類によってこの効果に差異は認められなかった。
さらに、風味付けを香料ではなく植物の搾汁(野菜汁や果汁)により行った場合、香料のみの場合よりも総合的な風味の好ましさが向上し、好ましいことが分かった。
酢酸の由来についても、本発明の効果が奏功するにあたって、その由来には何ら限定されることがないことも分かった。
加えて、アルコールを配合しても、本発明の効果は奏されることが分かった。ただし、この場合、エタノールは若干腐熟臭として認識される傾向が認められたものの、エタノールの風味はアルコール飲料として違和感はないと感じられ、全体の風味の好ましさは維持された。
ただし、風味付けのために植物の搾汁(野菜汁や果汁)を用いた場合、これが混濁果汁だった場合、本発明の効果はやや抑制されること、総合的な風味の好ましさがやや低下することが分かった。これは、混濁果汁中の食物繊維などの不溶性成分が炭酸の泡とともに噴き上げられ、植物の風味成分や本発明の効果に関与する成分がそれらとともに一部除かれてしまうためと考えられた。よって、植物の搾汁(野菜汁や果汁)によって風味付けをする場合には、植物の搾汁は清澄であるほうが好ましいことが分かった。
また、本知見から、本発明の容器詰め炭酸飲料に配合する原料は、前記植物の搾汁(野菜汁や果汁)に限らず、不溶性成分を実質的に含まないことが好ましいこと、濃度が高くなると粘度が高くなる(すなわち起泡しやすい)ショ糖やブドウ糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖などの甘味度の低い糖質は、高甘味度甘味料を用いてその一部又は全部を代替し、甘味度は維持しつつ、甘味を有する低甘味度の糖質の濃度を低くすることが好ましいことが分かった。
【0102】
[試験7:本発明における植物の搾汁の含有量の範囲の検証]
試験6において、植物の搾汁(野菜汁や果汁)を用いて植物の風味付けを行ったが、その際、これらの配合量は5v/v%の一定値に設定した。そこでここでは、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の効果を奏する、酢酸1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)の範囲について検証した。
なお、試験は、植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)を変えることを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。なお、甘味度は糖酸比から求められる糖度と同値であった。
【0103】
試験7の試験系及び評価結果を表10に示す。
【0104】
【0105】
結果、本発明の容器詰め炭酸飲料において、本発明の効果を奏する、有機酸(本試験では酢酸)1w/v%あたりの植物の搾汁の含有量(ストレート換算、v/v%)の範囲は、下限としては、1.25v/v%以上であれば好ましいこと、より好ましくは2.5v/v%以上、さらに好ましくは3.75v/v%以上であればよいことが分かった。一方で、その上限としては、500v/v%以下であることが好ましく、200v/v%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは175v/v%以下、よりさらに好ましくは150v/v%以下、特に好ましくは50v/v%以下、とりわけ非常に好ましくは25v/v%以下であることが分かった。
【0106】
[試験8:本発明におけるイソ吉草酸エチル、2,3-ペンタンジオンの含有量の範囲の検証]
試験1~7において、本発明の効果を実証した。しかしながら、炭酸と酢酸の喉刺激を摂取時の抵抗と感じられる場合があった。そこで、試験8では、予備試験(有効成分のスクリーニング試験)の結果、喉刺激の緩和効果が認められた、イソ吉草酸エチル、2,3-ペンタンジオンについて、本発明の容器詰め炭酸飲料への適用とその効果の奏功を検証した。
なお、試験は、香料の一部に上記成分を加えることを除いては、試験1と同様に試料を調製し、評価を行った。また、喉刺激の緩和効果の評価は、上記喉刺激を鋭敏に判定可能な検査員数名を用いて、以下の基準に従って行った。さらに、ここでの総合評価では、喉刺激の緩和効果も含めて評価した。
また、酢酸エチル及びアセトアルデヒドは、それぞれ単体では喉刺激に関与しないこと、さらには酢酸と同時に含有されても喉刺激を増強しないことが分かったため、これらを含有する場合の検討は行わなかった。
【0107】
<評価基準3:喉刺激の緩和効果の有無>
なお、ここで、喉刺激とは、上記した通り、本発明の容器詰め炭酸飲料を摂取した場合に、炭酸や酢酸による嚥下時のピリピリ、チクチクした喉の感覚を抵抗と感じることを指し、この緩和とは、これら刺激が弱く感じられることを指す。
5:喉刺激が著しく緩和され、摂取に抵抗がなく好ましい。
4:喉刺激が緩和され、摂取にほぼ抵抗がなく好ましい。
3:喉刺激が緩和されているものの、摂取にわずかな抵抗があるが、許容範囲。
2:喉刺激があまり緩和されておらず、摂取にやや抵抗がありやや好ましくない。
1:喉刺激が緩和されておらず、摂取に抵抗があり好ましくない。
【0108】
試験8の試験系及び評価結果を表11、12に示す。
【0109】
【0110】
結果、本発明の容器詰め炭酸飲料におけるイソ吉草酸エチルの含有量は、下限としては、0.1ppb以上であることが好ましく、1ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましいことが分かった。一方で、本成分自体が品質に及ぼす影響の観点から、上限としては、20000ppb以下であることが好ましく、10000ppb以下がより好ましいことが分かった。
同様に、本発明の容器詰め炭酸飲料における2,3-ペンタンジオンの含有量は、下限としては、0.01ppb以上であることが好ましく、0.05ppb以上がより好ましく、0.1ppb以上がさらに好ましいことが分かった。一方で、本成分自体が品質に及ぼす影響の観点から、上限としては、2000ppb以下であることが好ましく、1000ppb以下がより好ましく、25ppb以下がさらに好ましいことが分かった。
なお、イソ吉草酸エチルと2,3-ペンタンジオンとを併用するとより好ましいことが分かった。
【0111】
以上の試験によって、本発明の課題に対して、本発明の着想に基づく本発明の効果が奏功されることが実証された。なお、各試験の「酢酸含有量」「酢酸1w/v%あたりの炭酸ガスの充填時ガス圧」における「酢酸」を「クエン酸(レモン果汁使用)」、「乳酸(発酵乳酸使用)」にそれぞれ代替した場合であっても、同様に腐熟臭の改善効果が認められた。
本発明の容器詰め炭酸飲料は、多様な健康機能を有しその継続的な摂取が期待される酢酸をはじめとする有機酸を含有する飲料において、その摂取を忌避させる品質上の課題(腐熟臭による嗜好性の低下)を簡便に解消でき、植物風味を自然で新鮮な品質に向上し、嗜好性を高めることができる技術であり、食品産業において、極めて高い有用性を有する。