(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175717
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20231205BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231205BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231205BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20231205BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L15/00
C08K3/013
C08C19/25
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140079
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2018537433の分割
【原出願日】2017-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016171606
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】香田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩
(72)【発明者】
【氏名】山岸 さとみ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム組成物から得られる架橋物中のフィラーの分散状態が物性向上のためには理想的であり、さらに耐摩耗性及び引張強度等の機械強度等に優れる架橋物が得られるゴム組成物及び該架橋物、ならびに、転がり抵抗性能が向上し、操縦安定性の向上を達成できる該組成物又は該架橋物を一部に用いたタイヤを提供する。
【解決手段】固形ゴム(A)100質量部に対して、下記式(1)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する変性液状ジエン系ゴム(B)を0.1~50質量部、及びフィラー(C)を20~200質量部含有するゴム組成物であり、前記変性液状ジエン系ゴム(B)が、下記(i)~(iii);(i)重量平均分子量(Mw)が15,000~120,000、(ii)ビニル含量が70モル%以下、(iii)変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数が1~30個、を満たす、ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形ゴム(A)100質量部に対して、下記式(1)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する変性液状ジエン系ゴム(B)を0.1~50質量部、及びフィラー(C)を20~200質量部含有するゴム組成物であり、
前記変性液状ジエン系ゴム(B)が、下記(i)~(iii)
(i) 重量平均分子量(Mw)が15,000~120,000、
(ii) ビニル含量が70モル%以下、
(iii) 変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数が1~30個、を満たす、ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1から6の2価のアルキレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を示す。ただし、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。)
【請求項2】
前記変性液状ジエン系ゴム(B)の38℃における溶融粘度が1~4,000Pa・sである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性液状ジエン系ゴム(B)がイソプレン及び/又はブタジエンの単量体単位を含む重合体である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記固形ゴム(A)が、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムから選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記フィラー(C)が、カーボンブラック及びシリカから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋させた架橋物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物又は請求項6に記載の架橋物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム等のゴム成分に対してシリカやカーボンブラック等のフィラーを配合することにより機械強度を向上させたゴム組成物が、耐摩耗性や機械強度を必要とするタイヤ用途などに広く使用されている。このフィラーが配合されたゴム組成物の架橋物中のフィラーの分散状態が、その架橋物の物性(例えば、機械物性、耐摩耗性及び転がり抵抗)に影響している可能性が指摘されている。しかし、このフィラーを配合したゴム組成物は、ゴムとフィラーとの親和性は必ずしも高くないため、またフィラー同士で相互作用が生じるため、フィラーの分散性が十分でない場合、架橋物の物性の向上のための理想的な分散状態でない場合がある。
【0003】
ゴム組成物中のフィラー分散性を向上する手段として、官能基を有する液状ゴムを使用する方法が種々検討されている(例えば特許文献1及び2参照。)。
しかし、ゴム組成物から得られる架橋物の物性には、従来、両立して向上することが困難とされる物性(例えば、耐摩耗性の向上と転がり抵抗の向上)があり、従来技術ではいまだ改善の余地があった。
また、この物性の向上にはその架橋物中のフィラーの分散状態が関与する可能性があるが、例えば、ゴム組成物中のフィラーの分散性向上の指標となるペイン効果の低減を十分に達成するという視点では、従来の技術ではいまだ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-344949号公報
【特許文献2】特開2013-249359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、ゴム組成物から得られる架橋物中のフィラーの分散状態が物性向上のためには理想的であり、さらに耐摩耗性及び引張強度等の機械強度等に優れる架橋物が得られるゴム組成物及び該架橋物、ならびに、転がり抵抗性能が向上し、操縦安定性の向上を達成できる該組成物又は該架橋物を一部に用いたタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、特定の変性液状ジエン系ゴム等をゴム組成物に含有させることにより、そのゴム組成物から得られた架橋物ではフィラーの分散状態が物性向上のためには理想的であり、さらに、引張強度等の機械強度、耐摩耗性等に優れ、また該組成物又は該架橋物を一部に用いたタイヤは操縦安定性、転がり抵抗性能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下〔1〕~〔7〕に関する。
【0007】
〔1〕固形ゴム(A)100質量部に対して、下記式(1)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する変性液状ジエン系ゴム(B)を0.1~50質量部、及びフィラー(C)を20~200質量部含有するゴム組成物であり、
前記変性液状ジエン系ゴム(B)が、下記(i)~(iii)
(i) 重量平均分子量(Mw)が15,000~120,000、
(ii) ビニル含量が70モル%以下、
(iii) 変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数が1~30個、を満たす、ゴム組成物。
【0008】
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1から6の2価のアルキレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を示す。ただし、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。)
【0009】
〔2〕前記変性液状ジエン系ゴム(B)の38℃における溶融粘度が1~4,000Pa・sである、〔1〕に記載のゴム組成物。
〔3〕前記変性液状ジエン系ゴム(B)がイソプレン及び/又はブタジエンの単量体単位を含む重合体である、〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物。
〔4〕前記固形ゴム(A)が、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムから選ばれる1種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0010】
〔5〕前記フィラー(C)が、カーボンブラック及びシリカから選ばれる少なくとも1種である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物を架橋させた架橋物。
〔7〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物又は〔6〕に記載の架橋物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、そのゴム組成物から得られる架橋物では、フィラーの分散状態が物性向上には理想的であり、さらに引張強度等の機械強度、耐摩耗性等に優れる架橋物が得られ、該組成物又は架橋物からは、例えば、操縦安定性、転がり抵抗性能が向上したタイヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[固形ゴム(A)]
本発明のゴム組成物で用いる固形ゴム(A)とは、20℃において固形状で取り扱うことができるゴムをいい、固形ゴム(A)の100℃におけるムーニー粘度ML1+4は通常20~200の範囲にある。上記固形ゴム(A)としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」ともいう。)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、及びウレタンゴム等が挙げられる。これら固形ゴム(A)の中でも、天然ゴム、SBR、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムが好ましく、天然ゴム、及びSBRがさらに好ましい。これら固形ゴム(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記固形ゴム(A)の数平均分子量(Mn)は、得られるゴム組成物及び架橋物における特性を十分に発揮させる観点から、80,000以上であることが好ましく、100,000~3,000,000の範囲内であることがより好ましい。なお、本明細書における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0014】
上記天然ゴムとしては、例えばSMR(マレーシア産TSR)、SIR(インドネシア産TSR)、STR(タイ産TSR)等のTSR(Technically Specified Rubber)やRSS(Ribbed Smoked Sheet)等のタイヤ工業において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。中でも、品質のばらつきが少ない点、及び入手容易性の点から、SMR20、STR20やRSS#3が好ましい。これら天然ゴムは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
SBRとしては、タイヤ用途に用いられる一般的なものを使用できるが、具体的には、スチレン含量が0.1~70質量%のものが好ましく、5~50質量%のものがより好ましく、15~35質量%のものがさらに好ましい。また、ビニル含量が0.1~60質量%のものが好ましく、0.1~55質量%のものがより好ましい。
【0016】
SBRの重量平均分子量(Mw)は100,000~2,500,000であることが好ましく、150,000~2,000,000であることがより好ましく、200,000~1,500,000であることがさらに好ましい。上記の範囲である場合、加工性と機械強度を両立することができる。なお、本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0017】
本発明において使用するSBRの示差熱分析法により求めたガラス転移温度は、-95~0℃であることが好ましく、-95~-5℃であることがより好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、SBRの粘度を取り扱いが容易な範囲とできる。
【0018】
本発明において用いることができるSBRは、スチレンとブタジエンとを共重合して得られる。SBRの製造方法について特に制限はなく、乳化重合法、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、これら製造方法の中でも、乳化重合法、溶液重合法が好ましい。
【0019】
乳化重合スチレンブタジエンゴム(以下、E-SBRともいう。)は、公知又は公知に準ずる通常の乳化重合法により製造できる。例えば、所定量のスチレン及びブタジエン単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合することにより得られる。
【0020】
溶液重合スチレンブタジエンゴム(以下、S-SBRともいう。)は、通常の溶液重合法により製造でき、例えば、溶媒中でアニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、スチレン及びブタジエンを重合する。
【0021】
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は通常、単量体濃度が1~50質量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0022】
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これら活性金属の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。さらにアルカリ金属の中でも、有機アルカリ金属化合物がより好ましく用いられる。
【0023】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量は、要求されるS-SBRの分子量によって適宜決められる。有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
【0024】
極性化合物としては、アニオン重合において、反応を失活させず、ブタジエン部位のミクロ構造やスチレンの共重合体鎖中の分布を調整するために通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0025】
重合反応の温度は、通常-80~150℃、好ましくは0~100℃、さらに好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式は、回分式あるいは連続式のいずれでもよい。また、スチレン及びブタジエンのランダム共重合性を向上させるため、重合系中のスチレン及びブタジエンの組成比が特定範囲になるように、反応液中にスチレン及びブタジエンを連続的あるいは断続的に供給することが好ましい。
【0026】
重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して停止できる。重合反応停止後の重合溶液は、直接乾燥やスチームストリッピング等により溶媒を分離して、目的のS-SBRを回収できる。なお、溶媒を除去する前に、予め重合溶液と伸展油とを混合し、油展ゴムとして回収してもよい。
【0027】
上記SBRとしては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、SBRに官能基が導入された変性SBRを用いてもよい。官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0028】
変性SBRの製造方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N-ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011-132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。この変性SBRにおいて、官能基が導入される重合体の位置については重合末端であってもよく、重合体鎖の側鎖であってもよい。
【0029】
上記ブタジエンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又はS-SBRと同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のブタジエンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたブタジエンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のブタジエンゴムを用いてもよい。
【0030】
ブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%を超えると転がり抵抗性能が悪化する傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましい。
【0031】
ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
【0032】
上記ブタジエンゴムは、本発明の効果を損ねない範囲であれば、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0033】
上記イソプレンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又はS-SBRと同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のイソプレンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたイソプレンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のイソプレンゴムを用いてもよい。
【0034】
イソプレンゴムのビニル含量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%を超えると転がり抵抗性能が悪化する傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましい。
【0035】
イソプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
【0036】
上記イソプレンゴムは、本発明の効果を損ねない範囲であれば、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0037】
[変性液状ジエン系ゴム(B)]
本発明のゴム組成物で用いる変性液状ジエン系ゴム(B)とは、液状の重合体であり、重量平均分子量(Mw)が15,000~120,000の範囲、ビニル含量が70モル%以下であり、前述した式(1)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有し、その官能基の変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数が1~30個の範囲にあるものをいう。本発明のゴム組成物において、変性液状ジエン系ゴム(B)が含まれることにより、ゴム組成物中のフィラー(C)の分散状態が、ゴム組成物から得られる架橋物の物性発現のために理想的であり、例えば、ゴム組成物中のフィラー(C)の分散性向上し、そのゴム組成物の架橋物のペイン効果も十分に低減する場合がある。また、そのゴム組成物から得られる架橋物の、耐摩耗性等の機械強度に優れる。さらに、例えば該架橋物をタイヤ等として用いた場合には、操縦安定性が向上し、転がり抵抗性能も向上する。その詳細なメカニズムは不明であるが、ゴム組成物において変性液状ジエン系ゴム(B)は後述するフィラー(C)との反応性が高いためフィラー(C)と結合しやすく、フィラー(C)の凝集を低減し、ゴム組成物中のフィラー(C)の分散状態が、ゴム組成物から得られる架橋物の物性発現のために理想的であると推定され、例えばゴム組成物中のフィラー(C)の分散性が向上し、そのゴム組成物から得られる架橋物のペイン効果を十分に低減するものと推定される。また固形ゴムに変性液状ジエン系ゴム(B)への絡み合いが大きいため、そのゴム組成物から得られる架橋物の、耐摩耗性等の機械強度に優れるものと推定される。
【0038】
変性液状ジエン系ゴム(B)の原料となる未変性の液状ジエン系ゴム(B')は、その重合体を構成する単量体単位として共役ジエン単位を含む。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン;2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、及びクロロプレン等のブタジエン及びイソプレン以外の共役ジエン(b1)が挙げられる。未変性の液状ジエン系ゴム(B')に含まれる共役ジエン単位としては、ブタジエン及び/又はイソプレンの単量体単位が含まれていることが好ましい。
【0039】
変性液状ジエン系ゴム(B)の原料となる未変性の液状ジエン系ゴム(B')は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、50質量%以上がブタジエン及び/又はイソプレンの単量体単位であることが好ましい一態様である。ブタジエン単位及びイソプレン単位の合計含有量は、液状ジエン系ゴム(B')の全単量体単位に対して60~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましい。
【0040】
上記液状ジエン系ゴム(B')に含まれ得るブタジエン単位及びイソプレン単位以外の他の単量体単位としては、前述したブタジエン及びイソプレン以外の共役ジエン(b1)単位、芳香族ビニル化合物(b2)単位などが挙げられる。
【0041】
芳香族ビニル化合物(b2)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら芳香族ビニル化合物の中では、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンが好ましい。
【0042】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(B')における、ブタジエン単位及びイソプレン単位以外の他の単量体単位の含有量は、50質量%が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。例えば、ビニル芳香族化合物(b2)単位が上記範囲以下であると、ゴム組成物の加工性が向上する傾向にある。
【0043】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(B')としては、共役ジエン及び必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体を、例えば、乳化重合法、又は溶液重合法等により重合して得られる重合体が好ましい。
【0044】
上記乳化重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
【0045】
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩などが挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩などが挙げられる。
【0046】
分散剤としては通常、水が使用され、重合時の安定性が阻害されない範囲で、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
【0047】
得られる未変性の液状ジエン系ゴム(B')の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0048】
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類などにより適宜設定できるが、通常0~100℃の範囲、好ましくは0~60℃の範囲である。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。
【0049】
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、上記液状ジエン系ゴム(B')を凝固させた後、分散溶媒を分離することによって重合体を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、上記液状ジエン系ゴム(B')が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した未変性の液状ジエン系ゴム(B')として回収してもよい。
【0051】
上記溶液重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物を使用して、必要に応じて極性化合物の存在下で、共役ジエンを含む単量体を重合する。
【0052】
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0053】
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。アニオン重合可能な活性金属の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
【0054】
アニオン重合可能な活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これら有機アルカリ金属化合物の中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。
【0055】
有機アルカリ金属化合物の使用量は、未変性の液状ジエン系ゴム(B')及び変性液状ジエン系ゴム(B)の溶融粘度、分子量などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
【0056】
上記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
【0057】
極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン部位のミクロ構造を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物に対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
【0058】
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
【0059】
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、未変性の液状ジエン系ゴム(B')を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記未変性の液状ジエン系ゴム(B')を単離できる。
【0060】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(B')の製造方法としては、上記方法の中でも、溶液重合法が好ましい。
このようにして得られた未変性の液状ジエン系ゴム(B')は、そのまま後述する式(1)で表されるシラン化合物に由来する官能基による変性が行われてもよいが、その液状ジエン系ゴム中に含まれる不飽和結合の少なくとも一部を水素添加した後に変性が行われてもよい。
【0061】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(B')は下記式(1)で表されるシラン化合物(以下、シラン化合物(1)とも称する。)に由来する官能基により変性され、変性液状ジエン系ゴム(B)として用いられる。
【0062】
【化2】
上記式(1)中、R
1は炭素数1から6の2価のアルキレン基である。二価の炭素数1~6のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を示す。ただし、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。
【0063】
上記シラン化合物(1)としては、例えば、メルカプトメチレンメチルジエトキシシラン、メルカプトメチレントリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメトキシジメチルシラン、2-メルカプトエチルエトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。これらシラン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
シラン化合物(1)のメルカプト基(-SH)が、未変性の液状ジエン系ゴム(B')に含まれる炭素-炭素不飽和結合にラジカル付加反応することにより、シラン化合物(1)に由来する官能基、具体的には下記式(2)で示される部分構造を官能基として有する変性液状ジエン系ゴム(B)が得られる。
【0065】
【化3】
上記式(2)中のR
1、R
2、R
3及びR
4の定義及び具体例等は、式(2)中のR
1、R
2、R
3及びR
4の定義及び具体例等と同一である。
【0066】
シラン化合物(1)に由来する官能基の変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数は1~30個であり、1~25個が好ましく、1~20個がより好ましい。平均官能基数が1未満である場合には、フィラー(C)との親和性が低く、ゴム組成物中のフィラー分散性を改善することができず、そのゴム組成物から得られる架橋物では、所望の物性向上がない場合、例えば、ペイン効果の低減が十分に得られない場合がある。一方平均官能基数が30を超える場合には、そのゴム組成物から得られる架橋物でも所望の物性向上がなく悪化する傾向、例えばペイン効果の低減は見られず、また耐摩耗性も悪化する傾向にある。
【0067】
変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数は、変性液状ジエン系ゴム(B)の官能基の当量(g/eq)とスチレン換算の数平均分子量Mnより求めることができる。
(一分子当たりの平均官能基数)=[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×(共役ジエン及び必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/(官能基の当量)
【0068】
なお、変性液状ジエン系ゴム(B)の官能基の当量は、官能基1個当たりに結合しているブタジエン及び必要に応じて含まれるブタジエン以外の他の単量体の質量を意味する。官能基の当量は、1H-NMR又は13C-NMRを用いて官能基由来のピークと重合体主鎖に由来するピークの面積比から算出することができる。なお、官能基由来のピークとは、アルコキシ基由来のピークを指す。
【0069】
変性液状ジエン系ゴム(B)におけるシラン化合物(1)の付加量は、未変性の液状ジエン系ゴム(B')100質量部に対し1~60質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、1~40質量部がさらに好ましい。付加された変性化合物量が60質量部より多い場合には、フィラー(C)への変性液状ジエン系ゴムの反応性に乏しく、フィラー(C)の分散性効果に乏しく、得られる架橋物の所望の物性向上がない傾向、例えば、ペイン効果が十分に小さくならない傾向、また耐摩耗性も低下する傾向にある。1質量部より低い場合には、フィラー(C)の分散性効果に乏しく、フィラー(C)の分散状態が得られる架橋物の物性発現のためには理想的にならない傾向、例えばペイン効果の低減効果が十分に得られない傾向にある。なお、変性液状ジエン系ゴム(B)中に付加されたシラン化合物(1)の付加量は、例えば、核磁気共鳴分光法等の各種分析機器を用いて求めることができる。
【0070】
シラン化合物(1)を、未変性の液状ジエン系ゴム(B')に付加させる方法は特に限定されず、例えば、液状ジエン系ゴム中にシラン化合物(1)、さらに必要に応じてラジカル触媒を加えて、有機溶媒の存在下又は非存在下に加熱する方法を採用することができる。使用するラジカル発生剤には特に制限はなく、通常市販されている有機過酸化物、アゾ系化合物、過酸化水素等が使用できる。
【0071】
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2.5-ヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル及びその置換体、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタトルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシオクタノエート、t-ブチルパーオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。
【0072】
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオンニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0073】
上記方法で使用される有機溶媒としては、一般的には炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。これら有機溶媒の中でも、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
【0074】
さらに、上記方法により変性化合物を付加する反応を行う時には、副反応を抑制する観点等から老化防止剤を添加してもよい。
この時に用いる好ましい老化防止剤としては、例えば、2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(AO-40)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(AO-80)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1520L)、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1726)、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジt-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジt-ペンチルフェニルアクリレート(SumilizerGS)、2-tブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(SumilizerGM)、6-t-ブチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)プロピル]-2-メチルフェノール(SumilizerGP)、亜りん酸トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)(Irgafos168)、ジオクタデシル3,3'-ジチオビスプロピオネート、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(LA-77Y)、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン(Irgastab FS 042)、ビス(4-t-オクチルフェニル)アミン(Irganox5057)などが挙げられる。上記老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
老化防止剤の添加量は、未変性の液状ジエン系ゴム(B')100質量部に対して0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。
この変性液状ジエン系ゴム(B)において、官能基が導入される位置については重合末端であってもよく、重合体鎖の側鎖であってもよいが、複数の官能基を容易に導入できるという観点で、重合鎖の側鎖であることが好ましい。また上記官能基は1種単独で含まれていてもよく2種以上含まれていてもよい。したがって、変性液状ジエン系ゴム(B)は、変性化合物1種により変性されたものであってもよく、また2種以上の変性化合物で変性されていてもよい。
【0076】
未変性の液状ジエン系ゴム(B')とシラン化合物(1)との混合割合は、例えば、変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数が所望の値とになるように適宜設定すればよいが、例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(B')とシラン化合物(1)との質量比(B')/(1)が0.3~300となるように混合すればよい。
【0077】
特定の性状を有する変性液状ジエン系ゴム(B)を製造する手法としては、シラン化合物(1)をラジカル付加する反応を適切な反応温度において、充分な反応時間で反応させることが有効である。例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(B')にシラン化合物(1)を付加させる反応における温度は10~200℃が好ましく、50℃~180℃がより好ましい。また反応時間は1~200時間が好ましく、1~100時間がより好ましく、1~50時間がさらに好ましい。
【0078】
上記変性液状ジエン系ゴム(B)の38℃で測定した溶融粘度は、1~4,000Pa・sが好ましく、1~3,500Pa・sがより好ましく、1~3,000Pa・sがさらに好ましい。変性液状ジエン系ゴム(B)の溶融粘度が前記範囲内であると、得られるゴム組成物の柔軟性が向上するため、加工性が向上する。なお、本発明において液状ジエン系ゴム(B)の溶融粘度は、38℃においてブルックフィールド型粘度計により測定した値である。
【0079】
変性液状ジエン系ゴム(B)の重量平均分子量(Mw)は15,000~120,000であり、15,000~100,000が好ましく、15,000~80,000がより好ましい。本発明において液状ジエン系ゴム(B)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。上記変性液状ジエン系ゴム(B)のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる。また、本発明のゴム組成物の加工性が良好となり、また得られるゴム組成物中の後述するフィラー(C)の親和性が向上するため、ゴム組成物を作製する際にフィラー(C)の近傍に存在しやすくなり、その結果ゴム組成物中のフィラー(C)の分散状態が得られる架橋物の物性発現のためには理想的になる(例えば、フィラー(C)の分散性の向上に寄与する)と推定される。そのため、場合によっては、その架橋物のペイン効果が十分小さくなり、架橋物でのフィラー(C)の分散性に優れる。また、その変性液状ゴム(B)がフィラー(C)の近傍に存在しやすくなる結果、耐摩耗性に優れる架橋物が得られる。これらのことから、例えば、その架橋物からなるタイヤ等は、操縦安定性、転がり抵抗性能などが良好となる。本発明においては、Mwが異なる2種以上の変性液状ジエン系ゴム(B)を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
変性液状ジエン系ゴム(B)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~20.0が好ましく、1.0~15.0がより好ましく、1.0~10.0がさらに好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、得られる変性液状ジエン系ゴム(B)の粘度のばらつきが小さく、より好ましい。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比を意味する。
【0081】
変性液状ジエン系ゴム(B)のビニル含量は70モル%以下であり、65モル%以下が好ましい。変性液状ジエン系ゴム(B)のビニル含量は、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましい。本発明において、「ビニル含量」とは、変性液状ジエン系ゴムに含まれる、イソプレン単位、ブタジエン単位及びイソプレン単位、ブタジエン単位以外の共役ジエン(b1)単位の合計100モル%中、1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位(1,4-結合以外で結合をしている共役ジエン単位)の合計モル%を意味する。ビニル含量は、1H-NMRを用いて1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位由来のピークと1,4-結合で結合をしている共役ジエン単位に由来するピークの面積比から算出することができる。
【0082】
ビニル含量が70モル%を超えると、変性液状ゴム(B)と固形ゴム(A)との相溶性が悪くなるために、フィラー(C)のゴム組成物中の分散状態が得られる架橋物の物性発現のためには理想的とはいえず、例えばゴム組成物中の分散性が悪化してしまう場合もあり、得られる架橋物のペイン効果の低減が見られない傾向にある。また、得られる架橋物の耐摩耗性も悪化する傾向にある。
【0083】
なお、変性液状ジエン系ゴム(B)のビニル含量は、例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(B')を製造する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
【0084】
変性液状ジエン系ゴム(B)のガラス転移温度(Tg)は、イソプレン単位、ブタジエン単位及び共役ジエン(b1)単位のビニル含量、共役ジエン(b1)の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、ゴム組成物から得られる架橋物からなるタイヤの転がり抵抗性能が良好となる。また粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
【0085】
上記変性液状ジエン系ゴム(B)は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記変性液状ジエン系ゴム(B)は、その製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量が、金属換算で0~200ppmの範囲にあることが好ましい。例えば、変性液状ジエン系ゴム(B)の原料となる未変性の液状ジエン系ゴム(B')を製造するための重合触媒として有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属を用いた場合には、触媒残渣量の基準となる金属は、リチウム等のアルカリ金属になる。触媒残渣量が上記範囲にあることにより、加工等する際にタックが低下せず、また本発明のゴム組成物から得られる架橋物の耐熱性、タイヤの転がり抵抗性能が向上する。変性液状ジエン系ゴム(B)の製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量としては、金属換算で、より好ましくは0~150ppm、さらに好ましくは0~100ppmである。なお、触媒残渣量は、例えば偏光ゼーマン原子吸光分光光度計を用いることにより測定できる。
【0086】
液状ジエン系ゴムの触媒残渣量をこのような特定の量とする方法としては、変性液状ジエン系ゴム(B)又は原料となる未変性の液状ジエン系ゴム(B')を精製し、触媒残渣を十分に除去する方法などが挙げられる。精製する方法としては、水若しくは温水、又はメタノール、アセトンなどに代表される有機溶媒若しくは超臨界流体二酸化炭素による洗浄が好ましい。洗浄回数としては、経済的な観点から1~20回が好ましく、1~10回がより好ましい。また、洗浄温度としては、20~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。また重合反応前に、重合の阻害を行うような不純物を蒸留や吸着剤により除去し、単量体の純度を高めた後に重合を行うことによっても、必要な重合触媒量が少なくてすむため、触媒残渣量を低減することができる。また、上記と同様の観点から、本発明の固形ゴム(A)、変性液状ジエン系ゴム(B)及びフィラー(C)を含有するゴム組成物中の触媒残渣量が、金属換算で0~200ppmであることが好ましく、0~150ppmがより好ましく、0~100ppmがさらに好ましい。この場合の触媒残渣量は固形ゴム(A)、変性液状ジエン系ゴム(B)及び/又は該ゴム組成物中に含まれるその他任意成分の製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量であってもよい。
【0087】
本発明のゴム組成物において、固形ゴム(A)100質量部に対する変性液状ジエン系ゴム(B)の含有量は、0.1~50質量部であり、0.1~45質量部が好ましく、0.5~40質量部がより好ましく、1~40質量部がさらに好ましく、2~40質量部がよりさらに好ましい。変性液状ジエン系ゴム(B)の含有量が上記範囲内であると、ゴム組成物中でのフィラー(C)の分散状態が理想的となり(例えば、得られる架橋物でのペイン効果の低減効果)、耐摩耗性の向上が見られ、例えばタイヤ等の操縦安定性、転がり抵抗性能などが良好となる。
【0088】
[フィラー(C)]
本発明のゴム組成物で用いるフィラー(C)としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス繊維、繊維状フィラー、ガラスバルーン等の無機フィラー;樹脂粒子、木粉、及びコルク粉等の有機フィラーなどが挙げられる。このようなフィラーがゴム組成物に含まれることにより、機械強度、耐熱性、又は耐候性等の物性の改善、硬度の調整、ゴムの増量をすることができる。機械強度の向上等の物性の改善などの観点からは、上記フィラー(C)の中でも、カーボンブラック及びシリカが好ましい。
【0089】
上記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラックなどが挙げられる。架橋速度や機械強度向上の観点からは、これらカーボンブラックの中でも、ファーネスブラックが好ましい。これらカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記カーボンブラックの平均粒径としては、分散性、機械強度、硬度などを向上させる観点から5~100nmが好ましく、5~80nmがより好ましく、5~70nmがさらに好ましい。なお、カーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定してその平均値を算出することにより求めることができる。
【0091】
上記ファーネスブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社「ダイヤブラック」、東海カーボン株式会社製「シースト」などが挙げられる。アセチレンブラックの市販品としては、例えば、電気化学工業株式会社製「デンカブラック」などが挙げられる。ケッチェンブラックの市販品としては、例えば、ライオン株式会社製「ECP600JD」などが挙げられる。
【0092】
上記カーボンブラックは、固形ゴム(A)への濡れ性、分散性などを向上させる観点から、硝酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合酸等による酸処理や、空気存在下での熱処理による表面酸化処理を行ってもよい。また、本発明のゴム組成物及びこの組成物から得られる架橋物の機械強度向上の観点から、黒鉛化触媒の存在下に2,000~3,000℃で熱処理を行ってもよい。なお、黒鉛化触媒としては、ホウ素、ホウ素酸化物(例えば、B2O2、B2O3、B4O3、B4O5等)、ホウ素オキソ酸(例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等)及びその塩、ホウ素炭化物(例えば、B4C、B6C等)、窒化ホウ素(BN)、その他のホウ素化合物が好適に用いられる。
【0093】
上記カーボンブラックは、粉砕等により粒度を調整した後、用いることもできる。カーボンブラックの粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。
【0094】
上記シリカとしては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。これらシリカの中でも、加工性、機械強度及び耐摩耗性を一層向上させる観点から、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
シリカの平均粒径は、加工性、転がり抵抗性能、機械強度、及び耐摩耗性を向上する観点から、0.5~200nmが好ましく、5~150nmがより好ましく、10~100nmがさらに好ましい。なお、シリカの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
【0096】
これらカーボンブラック及びシリカの中でも、得られるゴム組成物及びその架橋物の転がり抵抗性能向上等の観点からは、シリカがより好ましい。
本発明のゴム組成物において、固形ゴム(A)100質量部に対するフィラー(C)の含有量は20~200質量部であり、20~180質量部が好ましく、25~150質量部がより好ましい。フィラー(C)の含有量が前記範囲内であると、加工性、転がり抵抗性能、機械強度及び耐摩耗性が向上する。
【0097】
またフィラー(C)として、シリカ及びカーボンブラック以外のフィラーを用いる場合には、その含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して、20~120質量部が好ましく、20~90質量部がより好ましく、20~80質量部がさらに好ましい。
これらフィラー(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
[その他の成分]
本発明のゴム組成物は、そのゴムを架橋するために、さらに架橋剤(D)を含有していてもよい。架橋剤(D)としては、例えば、硫黄、硫黄化合物、酸素、有機過酸化物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、キノン及びキノンジオキシム誘導体、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、エポキシ化合物、金属ハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物、及びシラン化合物などが挙げられる。硫黄化合物としては、例えば、モルホリンジスルフィド、及びアルキルフェノールジスルフィドなどが挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、及び1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。これら架橋剤(D)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記架橋剤(D)は、架橋物の力学物性の観点から、固形ゴム(A)100質量部に対し、通常0.1~10質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.8~5質量部含有される。
【0099】
本発明のゴム組成物は、例えばゴムを架橋(加硫)するための架橋剤(D)として硫黄、硫黄化合物等が含まれている場合には、さらに加硫促進剤(E)を含有していてもよい。加硫促進剤(E)としては、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、及びキサンテート系化合物などが挙げられる。これら加硫促進剤(E)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記加硫促進剤(E)は、固形ゴム(A)100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは0.1~10質量部含有される。
【0100】
本発明のゴム組成物は、例えばゴムを架橋(加硫)するための架橋剤(D)として硫黄、硫黄化合物等が含まれている場合には、さらに加硫助剤(F)を含有していてもよい。加硫助剤(F)としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これら加硫助剤(F)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記加硫助剤(F)は、固形ゴム(A)100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは1~10質量部含有される。
【0101】
本発明のゴム組成物では、フィラー(C)としてシリカを含有する場合は、シランカップリング剤を含有することが好ましい一態様である。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系化合物、メルカプト系化合物、ビニル系化合物、アミノ系化合物、グリシドキシ系化合物、ニトロ系化合物、クロロ系化合物等が挙げられる。
【0102】
スルフィド系化合物としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどが挙げられる。
【0103】
メルカプト系化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、及び2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0104】
ビニル系化合物としては、例えばビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
アミノ系化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0105】
グリシドキシ系化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0106】
ニトロ系化合物としては、例えば、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、及び3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
クロロ系化合物としては、例えば、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、及び2-クロロエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0107】
これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらシランカップリング剤の中でも、添加効果が大きい観点及びコストの観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0108】
上記シランカップリング剤は、シリカ100質量部に対して好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~15質量部含有される。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、分散性、カップリング効果、補強性、耐摩耗性が向上する。
【0109】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、加工性、流動性等の改良を目的とし、必要に応じてシリコンオイル、アロマオイル、TDAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)、MES(Mild Extracted Solvates)、RAE(Residual Aromatic Extracts)、パラフィンオイル、ナフテンオイル等のプロセスオイル、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、C9系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂成分を軟化剤として含有していてもよい。本発明のゴム組成物が上記プロセスオイルを軟化剤として含有する場合には、その含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して50質量部より少ないことが好ましい。
【0110】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、耐候性、耐熱性、耐酸化性等の向上を目的として、必要に応じて老化防止剤、ワックス、酸化防止剤、滑剤、光安定剤、スコーチ防止剤、加工助剤、顔料や色素等の着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料等の添加剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシル系化合物等が挙げられる。老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。これら添加剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、上記各成分を均一に混合できれば特に限定されない。ゴム組成物の製造に用いる装置としては、例えば、ニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式又は噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、及びローラーなどが挙げられる。上記ゴム組成物を製造は、通常70~270℃の温度範囲で行うことができる。
【0112】
[架橋物]
本発明のゴム組成物を架橋することにより、架橋物を得ることができる。ゴム組成物の架橋条件は、その用途等に応じて適宜設定できる。例えば、硫黄又は硫黄化合物を架橋剤とし、ゴム組成物を金型により架橋(加硫)する場合には、架橋温度は通常120~200℃、加圧条件は通常0.5~2.0MPaとし、架橋(加硫)することができる。
【0113】
架橋物中からの、変性液状ジエン系ゴム(B)の抽出率は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
なお、上記抽出率は、架橋物2gをトルエン400mL中に浸漬し、23℃で48時間後にトルエン中に抽出された変性液状ジエン系ゴム(B)の量から算出することができる。
【0114】
本発明のゴム組成物及び該ゴム組成物の架橋物は、タイヤの少なくとも一部として用いることもできる。このようにして得られるタイヤは、フィラ―(C)の分散状態が理想的な状態となっている(例えば、ペイン効果が十分に低減している)ため、転がり抵抗性能に優れ、また耐摩耗性が良好である。
【実施例0115】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
【0116】
<固形ゴム(A)>
溶液重合スチレンブタジエンゴム:HPR355(JSR株式会社製(アルコキシシランでカップリングし末端に導入、R1、R2及びR3=-OCH3、R4及びR5=H、n=3)、スチレン含量:28質量%、ビニル含量56質量%)
ブタジエンゴム:BR01(JSR株式会社製、Mw:55万、シス体含有量95質量%)
天然ゴム:STR20(VON BUNDIT社製)
乳化重合スチレンブタジエンゴム:JSR1500(JSR株式会社製)
<変性液状ジエン系ゴム(B)>
後述の製造例1~11で得られた変性液状ジエン系ゴム及び製造例12~14で得られた液状ジエン系ゴム
<フィラー(C)>
シリカ :ULTRASIL7000GR(エボニック デグサ ジャパン製、湿式シリカ、平均粒径14nm)
カーボンブラック:ダイアブラックI(N220)(三菱化学株式会社製、平均粒径2
0nm))
<架橋剤(D)>
硫黄(微粉硫黄200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製)
<加硫促進剤(E)>
加硫促進剤(1):ノクセラーCZ-G (大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(2):ノクセラーD (大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(3):ノクセラーTBT-N(大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(4):サンセラーNS (三新化学工業株式会社製)
加硫促進剤(5):ノクセラーM (大内新興化学工業株式会社製)
<加硫助剤(F)>
ステアリン酸 :ルナックS-20(花王株式会社製)
亜鉛華 :酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)
<任意成分>
TDAE :VivaTec500(H&R社製)
シランカップリング剤(1):Si-75(エボニック デグサ ジャパン製)
シランカップリング剤(2):A-137(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
老化防止剤(1):ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社製)
老化防止剤(2):アンテージRD(川口化学工業株式会社製)
ワックス :サンタイトS(精工化学株式会社製)
【0117】
製造例1:変性液状ジエン系ゴム(B-1)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1220g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)131gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)を得た。
【0118】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)640gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.5gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン78gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-1)を得た。
【0119】
製造例2:変性液状ジエン系ゴム(B-2)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-2)を得た。
【0120】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-2)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン8.8gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-2)を得た。
【0121】
製造例3:変性液状ジエン系ゴム(B-3)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-3)を得た。
【0122】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-3)650gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.6gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン66gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-3)を得た。
【0123】
製造例4:変性液状ジエン系ゴム(B-4)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1320g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)33gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-4)を得た。
【0124】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-4)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン21gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-4)を得た。
【0125】
製造例5:変性液状ジエン系ゴム(B-5)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1880g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)9.9gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン810gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-5)を得た。
【0126】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-5)710gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン4.2gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-5)を得た。
【0127】
製造例6:変性液状ジエン系ゴム(B-6)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1880g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)7.8gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、イソプレン810gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-6)を得た。
【0128】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-6)690gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)3.9gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン35gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-6)を得た。
【0129】
製造例7:変性液状ジエン系ゴム(B-7)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-7)を得た。
【0130】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-7)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン1.0gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン50gを添加し、105℃で8時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-7)を得た。
【0131】
製造例8:変性液状ジエン系ゴム(B-8)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-8)を得た。
【0132】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-8)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン4.1gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン198gを添加し、105℃で8時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-8)を得た。
【0133】
製造例9:変性液状ジエン系ゴム(B-9)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、ヘキサン50g及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)1565gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン52gと、予め調製したブタジエン、スチレンの混合物(ブタジエン900gとスチレン100gとをボンベ内で混合)1000gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-9)を得た。
【0134】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-9)180gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.2gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン518gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-9)を得た。
【0135】
製造例10:変性液状ジエン系ゴム(B-10)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1400g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)89gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン4.9gと、ブタジエン1215gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-10)を得た。
【0136】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-10)580gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.1gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン133gを添加し、80℃で24時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-10)を得た。
【0137】
製造例11:変性液状ジエン系ゴム(B-11)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-11)を得た。
【0138】
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-11)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン8.2gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン433gを添加し、105℃で8時間反応させて、変性液状ジエン系ゴム(B-11)を得た。
【0139】
製造例12:液状ジエン系ゴム(B-12)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1300g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)52gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、イソプレン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、液状ジエン系ゴム(B-12)を得た。
【0140】
製造例13:液状ジエン系ゴム(B-13)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1220g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)131gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、液状ジエン系ゴム(B-13)を得た。
【0141】
製造例14:液状ジエン系ゴム(B-14)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B-14)を得た。
【0142】
なお、製造例で得られた変性液状ジエン系ゴム等の各物性の測定方法及び算出方法は以下の通りである。
(重量平均分子量の測定方法)
変性液状ジエン系ゴム(B)のMwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0mL/分
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
【0143】
(ビニル含量)
変性液状ジエン系ゴム(B)のビニル含量を、日本電子株式会社製1H-NMR(500MHz)を使用し、サンプル/重クロロホルム=50mg/1mLの濃度、積算回数1024回で測定した。得られたスペクトルのビニル化されたジエン化合物由来の二重結合のピークと、ビニル化されていないジエン化合物由来の二重結合のピークとの面積比から、ビニル含量を算出した。
【0144】
(ガラス転移温度)
変性液状ジエン系ゴム(B)10mgをアルミパンに採取し、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件においてサーモグラムを測定し、DDSCのピークトップの値をガラス転移温度とした。
【0145】
(38℃における溶融粘度の測定方法)
変性液状ジエン系ゴム(B)の38℃における溶融粘度をブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS.INC.製)により測定した。
【0146】
(変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数)
変性液状ジエン系ゴム(B)一分子当たりの平均官能基数は、変性液状ジエン系ゴム(B)の官能基の当量(g/eq)とスチレン換算の数平均分子量Mnより求めることができる。
(一分子当たりの平均官能基数)=[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×((共役ジエン及び必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/(官能基の当量)
【0147】
なお、変性液状ジエン系ゴム(B)の官能基の当量は、官能基1個当たりに結合しているブタジエン及び必要に応じて含まれるブタジエン以外の他の単量体の質量を意味する。官能基の当量は、1H-NMR又は13C-NMRを用いて官能基由来のピークと重合体主鎖に由来するピークの面積比から算出することができる。なお、官能基由来のピークとは、アルコキシ基由来のピークを指す。
以下、製造例1~14で得られた変性液状ジエン系ゴム(B-1)~(B-11)及び液状ジエン系ゴム(B-12)~(B-14)の物性を表1にまとめる。
【0148】
【0149】
実施例1~11及び比較例1~11
表2、3,4に記載した配合割合(質量部)にしたがって、固形ゴム(A)、変性液状ジエン系ゴム(B)、フィラー(C)、TDAE、シランカップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、及び老化防止剤を、それぞれ密閉式バンバリーミキサーに投入して開始温度60℃、樹脂温度が150℃となるように6分間混練した後、ミキサー外に取り出して室温まで冷却した。次いで、この混合物を再度バンバリーミキサーに入れ、加硫剤及び加硫促進剤を加えて開始温度50℃、到達温度100℃となるように75秒混練することでゴム組成物を得た。
【0150】
また、得られたゴム組成物をプレス成形(実施例1~9、11及び比較例1~7、10~11は160℃、30~50分、実施例10及び比較例8~9は145℃、20~30分)して加硫ゴムシート(厚み2mm)を作製し、下記の方法に基づき、ペイン効果、転がり抵抗性能、耐摩耗性を評価した。その結果を表2、3、4に示す。
なお、各評価の測定方法は以下のとおりである。
【0151】
(ペイン効果)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートから縦40mm×横5mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度25℃、歪0.5%の貯蔵弾性率E'(0.5%)と、歪5.0%の貯蔵弾性率E'(5.0%)を測定し、E'(0.5%)とE'(5.0%)の差(絶対値)を算出した。各実施例及び比較例の数値は、表2の比較例1、表3の比較例8、表4の比較例10の値を100とした際の相対値である。数値が小さいほどペイン効果が低減されシリカの分散性が良好であることを示す。
【0152】
(転がり抵抗性能)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートから縦40mm×横5mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度60℃、周波数10Hz、静的歪み10%、動的歪み2%の条件で、tanδを測定し、転がり抵抗性能の指標とした。各実施例及び比較例の数値は、表2の比較例1、表3の比較例8、表4の比較例10の値を100とした際の相対値である。なお、数値が小さいほどゴム組成物の転がり抵抗性能が良好である。
【0153】
(耐摩耗性)
JIS K 6264に準拠して、10N荷重下、摩耗距離40mでのDIN摩耗量を測定した。表2における各実施例及び比較例の数値は、DIN摩耗量の逆数において表2の比較例1、表3の比較例8、表4の比較例10の値を100とした際の相対値である。なお、数値が大きいほど摩耗量が少なく耐摩耗性が良好である。
【0154】
【0155】
【0156】
本発明のゴム組成物は加工性、フィラー分散性に優れるだけでなく、架橋剤を加えるなどして架橋性のゴム組成物とした場合、その組成物から得られる架橋物中のフィラーの分散状態が物性向上のためには理想的であり(例えば、ペイン効果の低減が見られ)、耐摩耗性の向上等が見られる優れる架橋物を与えることから、タイヤ用途、工業用ベルト、工業用ゴムホース等の工業用部材用途などに好適に用いることができる。特に、タイヤ用途等に架橋物を用いた場合には、転がり抵抗性能が向上するだけでなく、操縦安定性の向上を達成できるため有用である。