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特開2023-175737シリコンウェハの表面の研削修復装置及び研削修復方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175737
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】シリコンウェハの表面の研削修復装置及び研削修復方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231205BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20231205BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231205BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20231205BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20231205BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20231205BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
B23K26/354
B23K26/064 A
B23K26/03
B24B9/00 601H
B24B1/00 Z
B24B49/10
B24B49/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144059
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2019037309の分割
【原出願日】2019-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
(57)【要約】
【課題】シリコンウェハの表面の研削加工を行うと共に、その加工変質層の修復と粗さの平坦化をパルスレーザーを使用して効率良く効果的に行い得る装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の研削修復装置(1)は、シリコンウェハ(W)を回転、移動及び/又は傾動可能なように保持するウェハ送りユニット(20)と、シリコンウェハの表面を研削する研削ユニット(10)と、研削されたシリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置(100)と、を備え、前記レーザー照射修復装置(100)は、シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定する計測装置(102)と、シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射するレーザー照射ユニット(101)と、その変位機構(120)と、前記計測装置の測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールする制御装置(103)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハの表面を研削する研削ユニットと、
前記シリコンウェハの表面を修復するために研削された前記シリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置と、を備え、
前記レーザー照射修復装置は、前記シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定した測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールし、研削後の前記シリコンウェハの面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部にレーザー照射する、ことを特徴とするシリコンウェハの表面の研削修復装置。
【請求項2】
前記測定データは、画像測定手段、静電容量変化測定手段、液滴接触角度測定手段、ラマン分光測定手段、表面粗さ計、音響測定手段、渦電流特性測定手段、反射率測定手段、X線ラング法測定手段、電子線回析測定手段、SEM測定手段のうちから選ばれたいずれか1種又は2種以上の組合せにより測定されることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェハの表面の研削修復装置。
【請求項3】
前記レーザー照射修復装置は、レーザー光源に加えて、ミラー、ガルバノミラー、レンズ、プリズム、コリメーター、偏光子、ビームスプリッター、マスクのうちの少なくとも1種を含む光学機構を有し、前記光学機構によりレーザーの照射条件を変更可能である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェハの表面の研削修復装置。
【請求項4】
シリコンウェハの表面を研削する研削ユニットと、前記シリコンウェハの表面を修復するために研削された前記シリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置と、を備える、シリコンウェハの表面の研削修復装置に適用される研削修復方法であって、
前記シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定した測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールし、
研削後の前記シリコンウェハの面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部にレーザー照射する、ことを特徴とするシリコンウェハの表面の研削修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン、サファイア、ジルコニア、ガラス等の様々な素材、特に半導体ウェハ、ガラスパネル等の板状被加工材(本願においてこれらを「シリコンウェハ」と称する。)の表面を研削すると共に、その研削後の表面の研削痕による粗さを修復、平坦化し、加工変質層の修復(単結晶への復帰等)を行う装置に関し、特にその修復操作をレーザー照射により効率よく行い得るようにした装置に関する。特に、シリコンウェハの外周エッジ部やノッチ部の研削後の表面にレーザー照射を行い、粗さの修復、加工変質層の修復等の表面改善を行うことにより後工程での亀裂の進展等の破損を抑制するのに好適な技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェハの品質向上の要求が強く、ウェハ端面(エッジ部)やノッチ部の加工状態が重要視され、半導体デバイス等の作製に使用されるシリコンウェハ等の半導体ウェハは、ハンドリングによるチッピングを防止するため、エッジ部等を研削することで面取り加工が行われ、研磨による鏡面面取り加工が行われている。つまり、半導体製造工程において、ウェハ製造からデバイス製造に至るまで、エッジ特性の品質改善は必要不可欠なプロセスとなっている。
【0003】
シリコン等は固くてもろく、ウェハのエッジ部がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、その断片がウェハ表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、切り出されたウェハのエッジ部やノッチ部をダイヤモンドでコートされた面取り砥石で面取りする。
【0004】
また、スマートフォンやタブレット用の薄型化、軽量化されたガラス基板にマスキング印刷、センサー電極を形成し、その後に切断することが行われており、その際、面取りの加工品質、加工面粗さ、マイクロクラックの発生などがガラス基板の端面強度に直接影響する。
【0005】
下記特許文献1、2及び3には、このようなウェハの面取り加工についての改良技術が開示されている。即ち、特許文献1には、シリコンウェハ等の外周エッジを、研磨テープを用いて高精度に形状加工可能なウェハエッジ加工装置等が開示されている。また、特許文献2には、ウェハの外周エッジをヘリカル研削加工する際に生じるウェハの曲げ変形を無くし、加工精度を向上させ得る面取り加工装置が開示されている。また、特許文献3には、ノッチ付きウェハのノッチ部の面取り加工において、良好な加工面粗さを得ることが可能な面取り方法が開示されている。
【0006】
上記の如きシリコンウェハの外周エッジ部の研削後やノッチ部の研削後には、その表面の研削痕を取り除き、平滑化するため、従来、その表面のバフ研磨を行っているが、研削後の表面はクラックや加工歪を有していたり、非晶質となった表面部分を除去しきれないため、後工程において、ウェハのそのような部分から亀裂等が進展することによる破損で歩留まりが悪くなる。また、バフ研磨時の研磨圧(荷重)により加工歪や結晶転移を拡大するおそれもある。
【0007】
また、バフ研磨は、素材の除去による研磨加工(除去加工)であるため、研削直後の寸法とその後のバフ研磨後の寸法を比較すると、バフ研磨後の寸法がある程度変化する。また、バフ研磨には、研磨糸、研磨液、薬品等の消耗品や、研磨後の洗浄(異物の除去)、乾燥等のプロセスが必要で、コストがかかる。
【0008】
上記のような機械的な表面修復加工とは異なり、特許文献4には、単結晶ウェハの研削によって生じた表面の加工変質層にレーザー照射を行うことによって、その表面欠陥を修復する方法が開示されている。しかしながら、既存のレーザー照射による表面改質は、単純な平面に対するものであり、複雑な形状や、研削後のさまざまな表面状態に応じた条件で照射したり、その照射結果をモニタリングしながら照射するものではないため、高速で効果的な処理は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5700264号公報
【特許文献2】特開2017-159421号公報
【特許文献3】特開2005-153129号公報
【特許文献4】特開2008-147639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の如く、従来のシリコンウェハの研削後の表面状態の修復手段によるときは、バフ研磨の場合、表面欠陥が完全に修復できなかったり、原寸法が厳密に維持できなかったりするため、歩留まりが悪く(特にノッチ部)、コスト高となったり、またレーザー照射の場合、研削後の表面状態や形状に応じた迅速で効果的な修復結果が得られない、等々の問題があった。
【0011】
これらの問題点に鑑み、本発明の目的は、被加工材(本願において「シリコンウェハ」と称する。)に対して研削加工を行うと共に、その研削終了領域に、パルス幅がナノ秒レベルのパルスレーザー(本願において「レーザー」と称する。)を照射して加工ダメージの修復等を行う装置及び方法を提供することにある。
【0012】
より具体的には、本発明の目的は、特にシリコンウェハの外周エッジ部及び/又はノッチ部の加工変質層の修復(単結晶化等)と粗さの改善(平坦化)を行う技術を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、ダメージ部の規模や状況を診断し、効果的な照射を行うための方法及び装置を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明のもう1つの目的は、形状の異なるエッジ部・ノッチ部の形状に合わせた効率の良いレーザー照射方法及び装置を提供することにある。
【0015】
換言すれば、本発明の目的は、レーザーを用いて短時間(例えば、面取り部の修復の場合、10秒以下)で効率のよい表面処理を行い、これにより製品のスループットを向上させることにある。
【0016】
したがって、また、本発明の目的は、修復対象であるシリコンウェハについて、レーザー照射前、照射中及び/又は照射後にシリコンウェハの表面状態や形状の確認を行い、歪みや破壊等の状況に応じた条件でレーザー照射を行うことによって、効率よく効果的な表面改質を行うことができるようにすることである。
【0017】
また、本発明の目的は、クラックや歪みを完全修復し、修復対象物の機械的強度を向上させ、後工程の歩留まりを向上させることにある。
【0018】
また、本発明の目的は、研磨糸、研磨液、薬品等の消耗品や、洗浄、乾燥工程を不要とし、環境負荷が小さいプロセスを達成することである。
【0019】
また、本発明の目的は、大気圧、常温等の環境で行うことができ、他の付加原料等の必要がないシンプルな処理を可能とすることである。
【0020】
また、本発明の目的は、修復対象である素材(加工材質)の除去等を伴わない熱処理によって改質を行うことにより、当初の寸法(精度)が維持される修復を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための、本発明の構成は以下のとおりである。
[1] シリコンウェハの表面を研削する研削ユニットと、上記シリコンウェハの表面を修復するために研削された上記シリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置と、を備え、上記レーザー照射修復装置は、上記シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定した測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールし、研削後の上記シリコンウェハの面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部にレーザー照射する、ことを特徴とするシリコンウェハの表面の研削修復装置。
[2] 上記測定データは、画像測定手段、静電容量変化測定手段、液滴接触角度測定手段、ラマン分光測定手段、表面粗さ計、音響測定手段、渦電流特性測定手段、反射率測定手段、X線ラング法測定手段、電子線回析測定手段、SEM測定手段のうちから選ばれたいずれか1種又は2種以上の組合せにより測定されることを特徴とする[1]に記載のシリコンウェハの表面の研削修復装置。
[3] 上記レーザー照射修復装置は、レーザー光源に加えて、ミラー、ガルバノミラー、レンズ、プリズム、コリメーター、偏光子、ビームスプリッター、マスクのうちの少なくとも1種を含む光学機構を有し、上記光学機構によりレーザーの照射条件を変更可能である、ことを特徴とする[1]又は[2]に記載のシリコンウェハの表面の研削修復装置。
[4] シリコンウェハの表面を研削する研削ユニットと、上記シリコンウェハの表面を修復するために研削された上記シリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置と、を備える、シリコンウェハの表面の研削修復装置に適用される研削修復方法であって、上記シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定した測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールし、研削後の上記シリコンウェハの面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部にレーザー照射する、ことを特徴とするシリコンウェハの表面の研削修復方法。
【0022】
本発明の他の実施形態に係るシリコンウェハの表面の研削修復装置は、シリコンウェハの表面の研削修復装置であって、前記シリコンウェハを取り付け、回転、移動、傾動のうちの少なくとも1種が可能なように保持するウェハ送りユニットと、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハの表面を研削する研削ユニットと、研削された前記シリコンウェハの表面にレーザーを照射するレーザー照射修復装置と、を備え、前記レーザー照射修復装置は、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定する計測装置と、前記シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射するレーザー照射ユニットと、前記レーザー照射ユニットを、前記ウェハ送りユニットに保持された前記シリコンウェハに対して回転、移動、傾動のうちの少なくとも1種の変位動作が可能なように支持する変位機構と、前記計測装置による測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールする制御装置と、を有することを特徴とするものである。
【0023】
さらに、上記において前記計測装置が、研削後でレーザー照射前、レーザー照射中及び/又は照射後においてシリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定するよう構成されることが望ましい。
【0024】
さらに、上記において、前記シリコンウェハの前記研削により面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部をレーザー照射するよう構成されることが望ましい。
【0025】
さらに、上記において、前記シリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定する前記計測装置が、画像測定手段、静電容量変化測定手段、液滴接触角度測定手段、ラマン分光測定手段、表面粗さ計、音響測定手段、渦電流特性測定手段、反射率測定手段、X線ラング法測定手段、電子線回析測定手段、SEM測定手段のうちから選ばれたいずれか1種又は2種以上の組合せにより構成されることが望ましい。
【0026】
さらに、上記において、前記レーザー照射ユニットが、レーザー光源に加えて、ミラー、ガルバノミラー、レンズ、プリズム、コリメーター、偏光子、ビームスプリッター、マスクのうちの少なくとも1種を含む光学機構を有し、これによりレーザーの照射条件を変更可能なように構成することが望ましい。
【0027】
さらに、上記において、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハの加熱、冷却を行う温度調節装置を更に備えることが望ましい。
【0028】
さらに、上記において、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハを囲繞する所定の加工領域の気体組成及び圧力を所定範囲に保つ雰囲気維持装置を更に備えることが望ましい。
【0029】
さらに、上記において、前記制御装置が、前記ウェハ送りユニットの駆動装置、前記レーザー照射ユニットの変位機構、前記レーザー光源の出力特性、前記光学機構の作動、前記温度調節装置の作動、前記雰囲気維持装置の作動のうちの少なくとも1種の制御を行うよう構成されることが望ましい。
【0030】
さらに、上記において、前記レーザー照射修復装置に備えられたレーザー照射ユニットにより、シリコンウェハの複数箇所を各種方向から照射するため、前記レーザー光源からのレーザーを複数に分光するビームスプリッターを少なくとも1個有することが望ましい。
【0031】
さらに、上記において、前記ビームスプリッターにより分光された一対のレーザーを、それぞれ個別のガルバノミラーに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーにより前記シリコンウェハのノッチ部の一対の外周側円弧部分をそれぞれ照射し、及び/又は、前記シリコンウェハの表側の面取り斜面と裏側の面取り斜面をそれぞれ照射するように構成されることが望ましい。
【0032】
更にまた、前記目的を達成するため、本発明に係るシリコンウェハの表面の研削修復方法は、シリコンウェハの表面を研削すると共に、その研削後の表面を修復する方法であって、前記シリコンウェハを回転、移動、傾動のうちの少なくとも1種が可能なように保持するウェハ送りユニットに、前記シリコンウェハを取り付ける工程と、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハの表面を研削ユニットにより研削する工程と、研削された前記シリコンウェハの表面にレーザー照射修復装置を使用してレーザーを照射する工程と、を備え、前記レーザー照射修復装置の使用において、レーザー照射前に、前記レーザー照射修復装置に備えられた計測装置により、前記ウェハ送りユニットに保持されたシリコンウェハの表面状態及び/又は形状を測定する工程と、前記レーザー照射修復装置に備えられた制御装置により、前記計測装置による測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気を設定する工程と、前記制御装置の設定条件に従い、前記レーザー照射修復装置に備えられたレーザー照射ユニットにより、前記シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射する工程と、前記計測装置により、レーザー照射中及び/又は照射後においても前記シリコンウェハの表面状態を測定し、前記シリコンウェハの表面が修復されたか否かを確認する工程と、修復された場合はレーザー照射を終了し、修復されていない場合は修復が確認されるまでレーザー照射を再開もしくは続行する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0033】
さらに、上記において、前記レーザー照射修復装置に備えられたレーザー照射ユニットにより、前記シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射する工程において、前記シリコンウェハの前記研削により面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部をレーザー照射することが望ましい。
【0034】
さらに、上記において、前記レーザー照射修復装置に備えられたレーザー照射ユニットにより、前記シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射する工程において、前記レーザー照射ユニットの変位機構、前記レーザー光源の出力特性、前記光学機構の作動のうちの少なくとも1種の制御を行うことが望ましい。
【0035】
さらに、上記において、前記レーザー照射修復装置に備えられたレーザー照射ユニットにより、前記シリコンウェハの研削された表面にレーザーを照射する工程において、前記レーザー照射ユニットのレーザー光源からのレーザーを複数に分光し、分光したそれぞれのレーザーによりシリコンウェハの複数箇所を各種方向から照射することが望ましい。
【0036】
さらに、上記において、ビームスプリッターにより分光された一対のレーザーを、それぞれ個別のガルバノミラーに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーにより前記シリコンウェハのノッチ部の一対の外周側円弧部分をそれぞれ照射し、及び/又は、前記シリコンウェハの表側の面取り斜面と裏側の面取り斜面をそれぞれ照射するように構成されることが望ましい。
【0037】
さらに、上記において、前記シリコンウェハのノッチ部の凹所底部の円弧部分にレーザーを照射する場合において、レーザーの照射方向を一定に保持した状態で、前記ノッチ部の凹所底部の円弧部分の曲率半径の中心をレーザーLの光路上に置き、前記曲率半径の中心を中心として、シリコンウェハ自体を回転させながら照射するように構成することが望ましい。
【0038】
さらに、上記において、前記シリコンウェハのノッチ部の凹所の直線部分にレーザーを照射する場合において、レーザーの照射方向を前記直線部分と直交状態に保持した状態で、シリコンウェハを直線部分の方向に沿って直線移動させるように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明は上記の如く構成され、その計測装置により、シリコンウェハの表面状態や形状を測定することにより、研削加工によるダメージ部の規模や状況を確認、把握した上で、その制御装置がレーザー照射ユニットの変位機構や光学機構、温度調節装置等々を介してレーザーの照射条件や雰囲気等をコントロールして効果的なレーザー照射を行うことで、効率的なウェハ表面の修復や平坦化処理を行うことが可能となる。また、形状に合わせたレーザーの走査方法を実行できるので、短時間で適正な修復が可能となる。
【0040】
即ち、より具体的には、(1)研削後の表面状態を、レーザー照射前に調べ、それに応じた条件でレーザー照射を行うことにより、効率よく効果的な表面改質を行うことができる、(2)レーザーを用いて短時間(10秒以下)で表面処理を行うことによりスループットが向上する、(3)研磨糸、研磨液・薬品や、洗浄・乾燥工程がいらず、環境負荷の小さいプロセスが可能となる、(4)大気圧、常温等の環境で行うので、他に付加しなければならない原料等が不要となる、(5)レーザー照射は一種の熱処理による改質であり、物質の除去等を伴わないので、原寸法を維持できる、(6)クラックや歪みを完全修復できるので、加工物の機械的強度が向上し、後工程の歩留まりが向上する、等々の多くの効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係るシリコンウェハ表面の研削修復装置の一実施形態の主要部を示す正面図
図2】一実施形態における装置全体の主要部を示す平面図
図3】一実施形態における外周精研削スピンドル部の加工中の状態を示す一部拡大側面図
図4】従来技術による加工後のシリコンウェハの形状を示す断面図
図5】一実施形態における加工後のシリコンウェハの形状を示す断面図
図6】シリコンウェハに設けられるノッチ部と、その精研削面取り加工の工程を示す説明図
図7】本発明におけるレーザー照射修復装置の一実施形態の主要な構成要素の関係を示すブロック図
図8】本発明におけるレーザー照射修復装置に備えられる計測装置の諸例を示すイメージ図
図9】本発明におけるレーザー照射修復装置によってシリコンウェハのノッチ部の形状に合わせたレーザー照射を行う形態の一例を示すイメージ図
図10】本発明におけるレーザー照射修復装置によってシリコンウェハのノッチ部の形状に合わせたレーザー照射を行う形態の数例を示すイメージ図
図11】本発明におけるレーザーの照射条件の一例を説明するためのイメージ図
図12】本発明に係るレーザー照射修復方法のフローチャート
図13】研削加工されたシリコンウェハの表面層のレーザー照射前と照射後の状態を対比するための拡大イメージ図
図14】シリコンウェハの表面層のレーザー照射による修復原理を示す説明図
図15】本発明に係る研削修復装置及び方法により研削加工を終えた状態で、レーザー照射実施前のシリコンウェハのノッチ部の顕微鏡写真
図16図15に示したシリコンウェハのノッチ部の研削後の領域に、本発明に係る研削修復装置及び方法によりレーザー照射処理を行った後の顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るシリコンウェハの表面の研削修復装置1の主要部を示す正面図である。
【0043】
研削修復装置1は、ウェハ送りユニット20と、研削ユニット10と、レーザー照射修復装置100とを備える。ウェハ送りユニット20は、これにシリコンウェハWを取り付け、そのシリコンウェハWを回転、移動、傾動のうちの少なくとも1種が可能なように保持する。研削ユニット10は、前記ウェハ送りユニット20に保持されたシリコンウェハWの表面、特にその外周エッジ部やノッチ部の研削加工を行う。レーザー照射修復装置100は、研削された前記シリコンウェハWの表面にレーザーを照射し、表面粗さの平坦化や加工変質層の修復を行う。
【0044】
まず、シリコンウェハWの研削加工を行う研削ユニット10及びウェハ送りユニット20について説明する。
【0045】
研削ユニット10は、砥石回転ユニット50や、研削ユニット各部の動作を制御するコントローラ等から構成される。
【0046】
ウェハ送りユニット20の駆動装置12は、図示しないウェハ供給/収納部、ウェハ洗浄/乾燥部、ウェハ搬送手段等々を備えると共に、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、22、4個のX軸リニアガイド23、23、… 、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るX軸駆動機構25によって図のX方向に移動されるXテーブル24を有している。
【0047】
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール26、26、4個のY軸リニアガイド27、27、… 、図示しないボールスクリュー及びステッピングモータから成るY軸駆動機構によって図のY方向に移動されるYテーブル28が組込まれている。
【0048】
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29、29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るZ軸駆動機構30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組込まれている。
【0049】
Zテーブル31には、θ軸モータ32、θスピンドル33が組込まれ、θスピンドル33にはウェハW(板状の被加工材)を吸着載置するウェハテーブル34が取り付けられており、ウェハテーブル34はその回転軸心を中心として図のθ方向に回転される。
【0050】
また、ウェハテーブル34の下部には、ウェハWの周縁を仕上げ面取りする砥石のツルーイングに用いるツルーイング砥石41(以下ツルアー41と称する)が、ウェハテーブル回転軸心と同芯に取り付けられている。
【0051】
このウェハ送りユニット20によって、ウェハW及びツルアー41は図のθ方向に回転されるとともに、X、Y、及びZ方向に移動される。
【0052】
砥石回転ユニット50の外周粗研削装置60には、外周粗研削砥石52が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心を中心に回転駆動される外周砥石スピンドル51が設けられている。更に、砥石回転ユニット50には上方に配置されたターンテーブル53に取り付けられた上外周精研削スピンドル54及び上外周精研削モータ56を有している。同じくターンテーブル53に下固定枠59(図1では、一部切り欠いて図示)を介して下外周精研削スピンドル57及び下外周精研削モータ(図示せず)が設けられている。また、ターンテーブル53には、ノッチ部粗研削砥石61、ノッチ部粗研削スピンドル62、ノッチ部粗研削モータ63と、ノッチ部精研削砥石64、ノッチ部精研削スピンドル65及びノッチ部精研削モータ66とが設けられている。
【0053】
図2は、研削修復装置1全体の主要部を示す平面図であり、供給回収部は、面取り加工すべきウェハWをウェハカセット70から供給すると共に、面取り加工されたウェハWをウェハカセット70に回収する。この動作は供給回収ロボット40で行われる。ウェハカセット70はカセットテーブル71にセットされ、面取り加工するウェハが多数枚収納されている。供給回収ロボット40はウェハカセット70からウェハWを1枚ずつ取り出したり、面取り加工されたウェハWをウェハカセット70に収納したりする。
【0054】
供給回収ロボット40は3軸回転型の搬送アーム80を備えており、搬送アーム80は、その上面部に図示しない吸着パッドを備えている。搬送アーム80は、吸着パッドでウェハWの裏面を真空吸着してウェハWを保持する。すなわち、この供給回収ロボット40の搬送アーム80は、ウェハWを保持した状態で前後、昇降移動、及び旋回することができ、この動作を組み合わせることによりウェハWの搬送を行う。
【0055】
研削ユニット10は正面部に配置されており、ウェハWの外周面取りの全加工、すなわち、粗加工から仕上げ加工までを行う。この研削ユニット10は、図1に示すウェハ送りユニット20と砥石回転ユニット50から構成されている。
【0056】
上外周精研削スピンドル54及び下外周精研削スピンドル57は、図1に示す如く、ウェハWの回転軸に対して回転軸が3~15°、望ましくは6~10°傾斜させた状態でウェハWの外周面取りの仕上げ加工を行う。これにより、ヘリカル研削が行われ、ウェハWの面取り部には斜め方向に弱い研削痕が発生するものの、通常研削に比べ面取り部の表面粗さが改善される効果が得られる。ただし、本発明に係る研削修復装置1に備えられる研削ユニット10における研削方式は、このようなヘリカル研削方式に限らず、ウェハの主平面と平行な方向に沿った通常の研削方式のものも広く含まれる。
【0057】
図3は、外周精研削スピンドル部の一部を拡大した側面図であり、併せてその加工中の状態を示している。上外周精研削スピンドル54にはウェハWの外周を仕上げ研削する面取り用砥石である上外周精研削砥石(上研削砥石)55-1が取り付けられ、同様に、下外周精研削スピンドル57には下外周精研削砥石(下研削砥石)55-2が上外周精研削砥石55-1に対してウェハWの厚さより小さい0.1~1mm程度の隙間を持って回転軸が略同芯となるように取付けられる。
【0058】
また、上外周精研削砥石55-1と下外周精研削砥石55-2とは回転方向が逆回転、つまり反対回転となるように上外周精研削スピンドル54、下外周精研削スピンドル57でそれぞれ駆動される。ウェハWを加工するための研削溝は、上外周精研削砥石55-1と下外周精研削砥石55-2とで形成される。隙間は、その研削溝の回転軸方向における略中央に設けられる。
【0059】
ウェハ加工プロセスは、スライス→面取り→ラップ→エッチング→ドナーキラー→精面取りの順で行われ、工程間には汚れを取り除くため、各種洗浄が用いられる。シリコン等は固くてもろく、ウェハの外周のエッジ部がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウェハ表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、面取り工程では切り出されたウェハの外周の端面をダイヤモンドでコートされた面取り砥石で面取りする。
【0060】
面取り工程は、ラッピング工程の後に行なわれることもある。この時、バラツキのある外周の直径を合わせ、オリエンテーションフラット(OF)の幅の長さを合わせることや、ノッチと呼ばれる微少な切欠きの寸法を合わせることも含まれる。
【0061】
前記図3には、外周精研削スピンドル部の加工中の状態が併せて示されており、上外周精研削スピンドル54及び下外周精研削スピンドル57の回転方向と力、クーラント液の流入、滞留、切屑の排出の関係を示している。上外周精研削スピンドル54は左回転(矢印Aが示す方向、即ち、図面視左から右へ回転)し、ウェハWの回転軸に対して時計方向に傾斜、即ち、図で左から右に下方に傾斜しているので、ウェハWに対して矢印Aのように力が加わる。ウェハWは中央が保持され、外周は自由端となっているので、分力により下に曲げられるようになる。一方、下外周精研削スピンドル57は、右回転(矢印Bが示す方向、即ち、図面視右から左へ回転)し、図で右から左に上方に傾斜しているので、ウェハWに対して矢印Bのように力が加わる。
【0062】
上外周精研削砥石55-1及び下外周精研削砥石55-2との隙間は回転軸方向に中央で対称となっているので、ウェハWと上外周精研削砥石55-1及び下外周精研削砥石55-2との接触面積は等しくなる。したがって、それぞれの研削抵抗がつり合い、ウェハWを曲げるような力を生じない。これにより、ウェハWが中心から先端に架けて曲げ変形することがなく、曲げ変形による加工面の形状精度に影響を与えることがない。
【0063】
矢印C、Dは、クーラント液の流入方向を示し、ウェハWの上側は、上外周精研削砥石55-1の回転方向である反時計方向に沿って、図3で左側から且つウェハWの外周から中心に向かって流入させる。下側は、下外周精研削砥石55-2の回転方向である時計方向に沿って右側から且つウェハWの外周から中心に向かって流入させる。
【0064】
図4は、従来技術による加工後のウェハWの形状を示す断面図であり、通常の外周精研削砥石で加工した切り込み位置でのウェハWの形状を示し、厚さが740μmで上面(表面)のA1が340μm、B1が300μm、θ1が43°に対して下面(裏面)のA2が250μm、B2が190μm、θ2が40°と言うように、ウェハWが下方に曲げられることで表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3との対称性が崩れていた。
【0065】
一方、図5は、本発明の一実施形態における加工後のウェハWの形状を示す断面図であり、図4に対して、外周精研削砥石55を上下に分離して上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2として逆回転させた場合のウェハWの形状を示す。厚さが740μmで上面(表面)のA1が290μm、B1が260μm、θ1が44°に対して、下面(裏面)のA2が290μm、B2が240μm、θ2が42°と言うように、表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3との対称性が改善され、精度が向上している。
【0066】
なお、上記シリコンウェハWの外周には、その結晶方位の判別及びウェハの整列を容易にするためにオリフラ(オリエンテーションフラットの略称)又はノッチ部が形成されることが多い。そして、これらのウェハについては、オリフラ又はノッチ部についても同様に精研削面取り加工を施す必要がある。
【0067】
図6には、ノッチ部の一例とその精研削面取り(仕上げ面取り)加工の工程が示されている。図6の(d)には、シリコンウェハWと、その外周部の一箇所に形成されたノッチ部wnが示されている。ノッチ部wnは略V字型の切欠き状を呈し、その外周側の両端部と底部は円弧状をなしている。
【0068】
図6(a)~(c)には、上記ノッチ部wnの精研削面取り(仕上げ面取り)を行う工程が示されているが、その前に、シリコンウェハWの外周部を外周粗研削砥石52により粗研削面取りする。次いで、シリコンウェハWの外周面の1箇所に、図1に示すノッチ部粗研削砥石61を用いてノッチ部wnを形成する。次いで、前記の如く、前記外周精研削砥石55によりシリコンウェハWの外周面取り部を精研削(仕上げ研削)する。次に、図1に示すターンテーブル53を回転させ、図6(a)に示す如くノッチ部精研削砥石64を加工位置に位置付ける。この状態でノッチ部精研削砥石64を高速回転させながら、図6(b)~(c)に示すように、ウェハWをX及びY方向に送ることにより、順次ノッチ部wnの輪郭に沿って精研削面取りを行う。即ち、図6(a)に示すノッチ部wnの外周側コーナー部をノッチ部精研削砥石64で円弧状に精研削面取りし、図6(b)に示す如くノッチ部wnの底部を経由し、図6(c)に示す反対側の外周側コーナー部まで精研削面取りを行う。この間、ウェハWのθ回転は行わず、X及びY方向送りでノッチ部wnを精研削面取りする。
【0069】
以上により、研削修復装置1における研削ユニット10によるシリコンウェハWの外周エッジ部とノッチ部の表側及び裏側の面取り斜面の粗研削及び精研削作業が終了する。
【0070】
次に、本発明に係る研削修復装置1におけるレーザー照射修復装置100の構成とその作動について、図1を再度参照しつゝ説明する。レーザー照射修復装置100は、前記の如くして研削ユニット10によって外周エッジ部及び/又はノッチ部を研削され、面取り加工されたシリコンウェハWの研削部にレーザーを照射して、表面粗さの平坦化や加工変質層の修復を行う。レーザー照射修復装置100は、レーザー照射ユニット101と、計測装置102と、制御装置103とを備える。
【0071】
なお、レーザー照射修復装置100のレーザー照射ユニット101が搭載、支持される変位機構120において、参照符号121~133で示す各構成要素は、前記研削ユニット10のウェハ送りユニット20における参照符号21~33でそれぞれ示す各構成要素と同一又は同等の構成であるので、ここでは説明を省略する。これらの構成要素によって、回転テーブル135は、X、Y、Z軸方向へ移動可能であると共に、θスピンドル133の軸を中心に回転可能なように構成される。
【0072】
更に、回転テーブル135上には傾動架台136が取り付けられ、その上にレーザー照射ユニット101が載置される。傾動架台136は、軸支ピン137によって回転テーブル135に対して傾動可能に保持され、カムピン139により回動可能に設けられたカム138をパルスモータ等(図では省略)で回動させることにより、傾動架台136が軸支ピン137を中心に回動する。これにより、レーザー照射ユニット101を上下方向に傾動させることができ、前記X、Y、Z軸方向への移動、θスピンドル133の軸を中心とする回転と合わせて、シリコンウェハWに向けてのレーザーの照射方向を連続的に調整でき、レーザーの照射条件の変更手段の一つを構成する。なお、図示した実施例では、変位機構120が、レーザー照射ユニット101をシリコンウェハWに対して移動、回転、傾動のすべてを可能とする構成がなされているが、使用目的に応じて、移動、回転、傾動のうちの少なくとも1種の変位動作を可能とするものとしてもよい。
【0073】
上記レーザー照射ユニット101は、シリコンウェハWの研削後の所定の表面にレーザーを照射するようになっており、図1に示した実施例において、前記シリコンウェハWの面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部をレーザー照射するように構成されている。レーザー照射ユニット101は、図7のブロック図中に示すように、レーザー光源101aと、光学機構101bとを有し、光学機構101bは、レーザーの照射条件を変更可能なように構成され、図示した実施例の場合、中継用ミラー101cと、コリメーター101dと、マスク101eと、集光レンズ101fと、焦点位置調整用の移動テーブル101g、等々を備えている。この場合、レーザー光源101aから出射されたレーザーは、中継用ミラー101cにより方向転換され、コリメーター101dにより所定径の平行光束にされた後、遮光用のマスク101eに沿って進み、集光レンズ101fによって、照射対象であるシリコンウェハWの表面上の所定位置に収束される。集光レンズ101fは焦点位置調整用の移動テーブル101g上に取り付けられ、レーザーを収束させる位置をシリコンウェハW上の照射すべき位置と合致させる。なお、光学機構101bを構成する光学要素は、図示した例のものに限らず、ミラー、ガルバノミラー、レンズ、プリズム、コリメーター、偏光子、ビームスプリッター、マスク、等々のうちの少なくとも1種を含み、それらによりレーザーの照射条件を変更可能な構成のものであればよい。ガルバノミラーは、その回転や振動によりレーザーを照射対象面上で走査させる。
【0074】
レーザー照射修復装置100は、更に計測装置102と制御装置103を備えている。また、図1には示されていないが、必要に応じて、図7に示す如く、前記ウェハ送りユニット20に保持されたシリコンウェハW等の加熱、冷却等を行う温度調節装置104や、シリコンウェハWを囲繞する所定の加工領域の気体組成及び圧力を所定範囲に保つ雰囲気維持装置105も備えている。
【0075】
計測装置102は、図1に示す如く、その計測器本体102aがウェハ送りユニット20のZテーブル31に取り付けた支柱102bを介してシリコンウェハWのレーザーを照射すべき箇所の近傍に、シリコンウェハWとは非接触状態で保持されるようになっている。計測器本体102aは支柱102b上で位置調整可能なように構成し、また好適には、支柱102bも適宜可動なように構成して、シリコンウェハWの所望箇所の表面状態(表面粗さ、反射特性、散乱光、等々)及び/又は形状を測定可能なように構成される。
【0076】
このようなシリコンウェハWの表面状態等の測定は、まずレーザー照射開始時の照射条件や照射雰囲気を設定するために、シリコンウェハWの研削を終えた後でレーザー照射前のシリコンウェハWの表面状態等を測定する。また、レーザーの当て過ぎを防止したり、照射状況の適否をモニタリングするためにレーザーの照射中にも測定を行い、更に照射結果の適否を判定するために照射後にも測定するように構成することが望ましい。
【0077】
計測装置102によるシリコンウェハWの表面状態及び/又は形状の測定は非破壊方式のものが望ましく、具体的な計測手段としては、例えば、画像測定手段、静電容量変化測定手段、液滴接触角度測定手段、ラマン分光測定手段、表面粗さ計、音響測定手段、渦電流特性測定手段、反射率測定手段、X線ラング法測定手段、電子線回析測定手段、SEM測定手段、等々のうちから選ばれたいずれかを用いたり、或いはそれらの2種以上を組み合せて用いることも推奨される。これらのうち、数例を図8を参照して説明する。
【0078】
図8(a)は画像測定手段を用いたものであり、シリコンウェハWの例えば表側の面取り斜面w2の表面粗さを計測するため、計測用光源140からレーザー光や所望の波長範囲の光等を面取り斜面w2に照射し、その映像をハイパースペクトルカメラ等の検出器141で撮像して、その画像分析により面粗さ等を検知し、その検知結果に基づいて前記レーザー照射ユニット101からの照射条件等を選択、制御し、面取り斜面w2等の平坦化や加工変質層の修復を行うものである。このような画像分析による面粗さ等の判定には、試行実験や対照サンプルとの比較等に基づく機械学習手段を採用するようにしてもよい。
【0079】
図8(b)は静電容量変化測定手段を用いた計測装置である。この場合、シリコンウェハWの外周端面w1、表側及び裏側の面取り斜面w2、w3に対して電極142を近づけて配置し、シリコンウェハWと電極142との間に直流電源143から電圧を印加し、その静電気による引力Fを検知することによって、前記外周端面w1、表側及び裏側の面取り斜面w2、w3の表面粗さ等を検知するようにしたものである。
【0080】
図8(c)は液滴接触角度測定手段を用いた計測装置である。この場合、シリコンウェハWの例えば表側の面取り斜面w2に適宜の液滴144を付着させ、面取り斜面w2に対する液滴144の接触角144aを測定するものである。面取り斜面w2の表面粗さのレベルに応じてその濡れ性が変化し、それに応じて液滴144の接触角144aも変化することを利用したものである。
【0081】
計測手段としては、これらのほか、図示は省略するが、例えばラマン分光測定手段を利用することもできる。その場合、ラマンシフトからの歪みを計測することにより、シリコンウェハWの内部の結晶状態の変化を検知でき、それに基づいて研削加工による変質のレベルを判定し、その結果に基づいてレーザー照射条件等を最適に制御することができる。また、音響測定手段により、破壊を伴わない超音波やAE波を用いて検知したり、非接触式もしくは接触式の表面粗さ計を用いることも可能であり、また、渦電流特性測定手段により前記面取り斜面等の導電性の良否を測定し、研削加工による変質のレベルを判定することも可能である。更にまた、反射率測定手段、X線ラング法測定手段、電子線回析測定手段、SEM測定手段、等々の各種公知の手段を用いて、シリコンウェハWの表面の研削加工による変質の規模や状況を判定し、その結果に基づいてレーザー照射条件等を最適に効率よく調節、制御することができる。
【0082】
次に、レーザー照射修復装置100の制御装置103は、上記計測装置102による測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気をコントロールする機能を有する。制御装置103は、図1に示した実施例においては、砥石回転ユニット50の基体内に設けられているが、その設置箇所は自由であり、また研削修復装置1全体の制御装置の一部として構成されてもよい。
【0083】
図7のブロック図に示す如く、レーザー照射修復装置100の制御装置103の制御対象は、図示した実施例において、前記ウェハ送りユニット20の駆動装置12、前記レーザー照射ユニットの変位機構120、前記レーザー光源101aの出力特性(エネルギ密度等)、前記光学機構101bの作動(レーザーの方向、光束径、焦点位置の調整、走査範囲や周波数、等々)、前記温度調節装置104の作動、前記雰囲気維持装置105の作動、等々であり、それらの制御対象を前記計測装置102の測定データに基づいて所定のプログラムに従ってコントロールする。
【0084】
なお、前記温度調節装置104としては、前記の如く、シリコンウェハWの加熱、冷却を行って熱応力の影響を排除したり、レーザーの照射効果を促進、適正化するものや、ウェハ送りユニット20やレーザー照射ユニット101への熱応力の影響を排除するため、それらの温度を一定に保つものなどが設けられる。
【0085】
また,シリコンウェハWを囲繞する所定の加工領域の気体組成及び圧力を所定範囲に保つ雰囲気維持装置105を設け、加工条件に適した気体成分や圧力等の雰囲気を形成、維持するようにする。
【0086】
なお、加工領域からのレーザーの漏洩を防止するシールド機構を設け、必要に応じて、そのようなシールド機構も制御装置103の制御対象とする。
【0087】
次に、上記レーザー照射修復装置100によるシリコンウェハの研削後の表面状態や形状に応じたレーザ照射において、効果的、効率的で短時間での修復が可能な照射形態の例について説明する。その場合において、表面状態に応じた照射条件の変更は、一般的には、レーザー光源101aと光学機構101bによってレーザーの出力特性やエネルギー密度等を変更することにより行う。また、照射領域の形状に応じた照射の変更は、一般的には、レーザー照射ユニット及び/又はシリコンウェハ(被加工体)の位置や姿勢を変えることにより行い、ノッチ部の深さ方向に対してはシリコンウェハ側の姿勢や光学機構中のミラー等の向きを変えることにより行う。ただし、これらに限られるものではなく、これら各種手段を状況に応じて適宜取捨選択したり、組み合わせたりすることも可能である。
【0088】
図9には、シリコンウェハWの面取りされたノッチ部の形状に合わせた本発明による照射形態の一例が示されている。より具体的には、図9(a)には、面取りされたノッチ部wnの外周側円弧部分w4とw5との2箇所を同時並行的に、かつ図9(b)[(a)図中のB-Bに沿った拡大断面図]に示すように、表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3及びノッチ部凹所の端面w1についても連続的にレーザー照射可能なように構成した光学機能が示されている。なお、図9(a)では、説明の便宜のため、シリコンウェハWについては、そのノッチ部wnの部分だけを拡大して描いてある。
【0089】
即ち、具体的には、ビームスプリッター101mにより分光された一対のレーザーL11aとL12aを、それぞれ個別のガルバノミラー101nと101oに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーL11bとL12bとによりノッチ部wnの一対の外周側円弧部分w4及びw5をそれぞれ照射するように構成されている。その際、ガルバノミラー101nと101oを回転もしくは往復回動させることにより、反射レーザーL11bとL12bの方向が変化し、走査形式で外周側円弧部分w4及びw5の表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3及び外周端面w1が同時並行的に効率よくレーザー照射されるものである(図9(b))。図示した実施例の場合、ガルバノミラー101n及び101oは放物面鏡であり、照射ターゲットである前記外周側円弧部分w4及びw5に焦点を結ぶようになっている。この焦点位置は、上記ビームスプリッター101mに入射する以前の段階のレーザーの光束を、例えば図7に記載の前記集光レンズ101fの移動テーブル101gを調節することによって調整できるようにすることが可能である。図9(a)中、O1は、ノッチ部wnの凹所底部の円弧部分w6の曲率半径の中心であり、O2及びO3は、ノッチ部wnの前記円弧部分w4及びw5の曲率半径の中心である。なお、図9(b)における表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3に描いた凹凸形状は、研削によって生じた表面粗さをイメージ的に拡大して示したものである。
【0090】
なお、このような光学機構を用いて、前記ガルバノミラー101n、101oの焦点を、回転するシリコンウェハWの外周面取り斜面に合わせてレーザー照射すれば、前記ノッチ部に限らず、シリコンウェハWの外周の表側及び裏側の面取り斜面並びに端面についても効率的かつ効果的に、例えば外周全体について10秒未満で迅速に修復することができる。なお、図9(a)中の前記ビームスプリッター101mより前段には、同図に示す如く、偏光子101lや、光束調整用のビームスプリッター101kを設け、更にその前段は、図7に記載の前記光学機構101bに接続し、そして図9(a)に示す各光学要素も前記光学機構101bに含めてそれら全体が本発明における光学機構を構成するものとする。
【0091】
更に、図10(a)には、シリコンウェハWの表側の面取り斜面w2、裏側の面取り斜面w3、外周の端面w1を同時に照射するもう1つの構成例が示されている。即ち、ビームスプリッター101hにより分光された一対のレーザーL13aとL14aを、それぞれ個別のガルバノミラー101iと101jに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーL13bとL14bとによりシリコンウェハWの表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3をそれぞれ照射するようにした構成例が示されている。より具体的には、この照射例においては、図7で示した前記レーザー光源101aから発せられたレーザーは前記光学機構101b中の所定の光学要素を通過した後、図10(a)のビームスプリッター101hを通過して、2本のレーザーL13a及びL14aに分光される。このうち、レーザーL13aは、その光路上に置かれたガルバノミラー101iで反射されて、シリコンウェハWの表側の面取り斜面w2に照射される。ガルバノミラー101iを回転又は所定角度範囲内で回動させることにより、反射後のレーザーL13bによって斜面w2が走査形式で照射される。同様に、レーザーL14aは、その光路上に置かれたガルバノミラー101jで反射されて、シリコンウェハWの裏側の面取り斜面w3に走査形式で照射される。このときシリコンウェハWの外周の端面w1も照射されるようにするため、各光学要素の配置等を調整して、ガルバノミラー101i及び/又は101jによる走査範囲内に前記端面w1を含めるようにしてもよい。或いはまた、照射期間中、シリコンウェハWの向きを変化させることにより照射対象領域全体が照射されるようにしてもよい。なお、図10(a)に示した例では、ビームスプリッター101hの透過レーザーL15によって前記シリコンウェハWの外周の端面w1を照射するようになっている。この実施形態の場合、前記ビームスプリッター101h、ガルバノミラー101i及び101jも前記光学機構101bの構成要素に含まれる。
【0092】
次に、図10(b)には、シリコンウェハWのノッチ部wnの凹所底部の円弧部分w6にレーザーLを照射する場合の好適な照射形態が示されている。この場合には、前記ノッチ部wnの凹所底部の円弧部分w6の曲率半径の中心O1をレーザーLの光路上に置き、(換言すれば、レーザーLが前記中心O1を通過するよう設定し)、このO1を中心として、シリコンウェハW自体を回転させながら照射するようにする。或いはまた、前記中心O1をレーザーLの光路上に置いた状態で、このO1を中心として、レーザーの照射方向を旋回させるようにしてもよい。これにより、レーザーLが円弧部分w6の曲面に略直交する状態で照射され続け、効果的で効率のよい照射効果が得られる。上記の如くシリコンウェハWを前記中心O1を中心として回転させるには、例えば、図1に示した研削修復装置1のウェハ送りユニット20のウェハテーブル34の回転中心にノッチ部の凹所底部の円弧部分w6の曲率半径の中心O1を位置させて、ウェハテーブル34を回転させるようにする。
【0093】
次に、図10(c)には、シリコンウェハWのノッチ部wnの凹所の直線部分w7(w8の場合も同様)にレーザーLを照射する場合の好適な照射形態が示されている。この場合には、レーザーLの照射方向を前記直線部分w7と直交状態に保持した状態で、シリコンウェハWを直線部分w7の方向に沿って直線移動させるようにする。これにより、レーザーLが直線部分w7の平面に直交する状態で照射され続け、効果的で効率のよい照射効果が得られる。シリコンウェハWを前記直線部分w7の方向に沿って直線移動させるには、例えば、図1に示した研削修復装置1のウェハ送りユニット20のXテーブル24とYテーブル28を利用して、前記直線部分w7の方向に沿って直線移動させることができる。
【0094】
図11(a)には、本発明によりレーザー照射すべきシリコンウェハWの外周部の面取り部分の拡大断面図が示され、図11(b)には、ノッチ部の平面図が示されている。このような照射対象に対する好適な照射条件の仕様の一例を示せば、レーザーの波長λ=532nm、パルス幅=3~7ns(一般的には10ns以下。ただし、シリコンウェハの表面のダメージが大きく深い場合は、50ns程度までは必要な場合がある。)、1パルス当たりのエネルギー=60~80μJ、エネルギー密度=0.6~0.8J/cm(一般的には0.24~1.44J/cmの範囲)、照射領域=0.5mm×0.5mm、雰囲気圧力=大気圧である。
【0095】
次に、図12を参照しつつ、本発明に係るシリコンウェハの表面の研削修復方法について説明する。本発明に係る方法は、より具体的には、シリコンウェハWの表面を研削すると共に、その研削後の表面を修復する方法である。
【0096】
図12に示すように、本発明に係る方法は、まず、(1)シリコンウェハWを回転、移動、傾動のうちの少なくとも1種が可能なように保持するウェハ送りユニット20に、シリコンウェハWを取り付ける工程を実行する。
【0097】
次いで、(2)前記ウェハ送りユニット20に保持されたシリコンウェハWの表面を研削ユニット10により研削する工程を実行する。
【0098】
次いで、(3)レーザー照射修復装置100によるレーザー照射前に、前記レーザー照射修復装置に備えられた計測装置102により、前記ウェハ送りユニット20に保持されたシリコンウェハWの表面状態及び/又は形状を測定する工程を実行する。
【0099】
次いで、(4)前記レーザー照射修復装置100に備えられた制御装置103により、前記計測装置102による測定データに基づいてレーザーの照射条件及び/又は照射雰囲気を設定する工程を実行する。
【0100】
次いで、(5)前記制御装置103の設定条件に従い、前記レーザー照射修復装置100に備えられたレーザー照射ユニット101により、前記シリコンウェハWの研削された表面にレーザーを照射する工程を実行する。
【0101】
次いで、(6)前記計測装置102により、レーザー照射中及び/又は照射後においてもシリコンウェハの表面状態を測定し、シリコンウェハの表面が修復されたか否かを確認する工程を実行する。
【0102】
次いで、(7)修復された場合はレーザー照射を終了し、修復されていない場合は修復が確認されるまでレーザー照射を再開もしくは続行する工程を実行する。
【0103】
以上の如く、本発明方法によれば、シリコンウェハWの表面状態や形状に応じたレーザー照射が効率良く行われ得るため、前記レーザー照射修復装置100に備えられたレーザー照射ユニット101により、前記シリコンウェハWの研削された表面にレーザーを照射する工程において、前記シリコンウェハWの前記研削により面取りされた外周エッジ部及び/又はノッチ部にレーザー照射する操作を好適に行うことができる。
【0104】
また、本発明方法によるときは、前記レーザーを照射する工程において、前記の如く、レーザー照射ユニットの変位機構120、前記レーザー光源101aの出力特性(エネルギー密度等)、前記光学機構101bの作動(レーザーの方向、光束径、走査範囲や周波数、等々)のうちの少なくとも1種の制御を行うようにする。
【0105】
また、本発明方法によるときは、前記計測装置102で取得したシリコンウェハWの照射部の形状に応じてレーザーを照射するため、前記の如く、レーザー照射ユニット101のレーザー光源101aからのレーザーを複数に分光し、分光したそれぞれのレーザーによりシリコンウェハWの複数箇所を各種方向から照射するようにして、形状の異なる外周部やノッチ部への照射操作を効率よく行うことが可能である。
【0106】
また、本発明方法によるときは、図9により説明した如く、ビームスプリッター101mにより分光された一対のレーザーL11aとL12aを、それぞれ個別のガルバノミラー101nと101oに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーL11bとL12bとによりシリコンウェハのノッチ部wnの一対の外周側円弧部分w4及びw5をそれぞれ同時に照射することが可能であり、従来は効率的で良好な照射が困難であったノッチ部への照射操作を効率よく行うことが可能である。
【0107】
また、本発明方法によるときは、図10(a)により説明した如く、ビームスプリッター101hにより分光された一対のレーザーL13aとL14aを、それぞれ個別のガルバノミラー101iと101jに入射させ、更に反射させて、それぞれの反射レーザーL13bとL14bとによりシリコンウェハの表側の面取り斜面w2と裏側の面取り斜面w3をそれぞれ同時に照射することが可能であり、従来は効率的で良好な照射が困難であった表裏両面の面取り斜面への照射操作を効率よく行うことが可能である。
【0108】
また、本発明方法によるときは、図10(b)により説明した如く、前記シリコンウェハWのノッチ部wnの凹所底部の円弧部分w6にレーザーLを照射する場合において、レーザーLの照射方向を一定に保持した状態で、前記ノッチ部wnの凹所底部の円弧部分w6の曲率半径の中心O1をレーザーLの光路上に置き、このO1を中心として、シリコンウェハW自体を回転させながら照射することが可能であり、従来は効率的で良好な照射が困難であったノッチ部wnの凹所底部の円弧部分への照射操作を効率よく行うことが可能である。
【0109】
また、本発明方法によるときは、図10(c)により説明した如く、前記シリコンウェハWのノッチ部wnの凹所の直線部分w7(w8)にレーザーLを照射する場合において、レーザーLの照射方向を前記直線部分w7(w8)と直交状態に保持した状態で、シリコンウェハWを直線部分w7(w8)の方向に沿って直線移動させることが可能であり、従来は効率的で良好な照射が困難であったノッチ部wnの凹所の直線部分への照射操作を効率よく行うことが可能である。
【0110】
図13には、本発明のシリコンウェハ表面へのレーザー照射による修復効果を説明するため、シリコンウェハWの表面を研削加工した際に生じる表面層の凹凸が、レーザー照射により平坦化して修復する場合のイメージ図が示されている。即ち、図13(a)に示すように、シリコンウェハWの表面を研削加工すると、本来の単結晶層w9の表面領域は加工変質層となって、凹凸w10を有する粗い面となる。この粗い表面にレーザーLを照射すると、その照射された表面領域は溶融し、表面張力によって図13(b)に示すように平坦面w11となると共に、その表面近傍領域は再び単結晶化して修復される。その原理について、図14を参照して説明する。
【0111】
図14(a)に示すように、シリコンウェハの研削部分は、その加工部分の表面近傍層が機械加工によって結晶欠陥を生じ、アモルファス層や転位層のような加工変質層となっている。この加工変質層部分のレーザー吸収率は、単結晶領域より著しく高いため、(b)に示すようにレーザー(ナノ秒パルスレーザー)の照射により加工変質層が溶融し、熱伝導によって(c)に示すように溶融領域が拡大すると共に、溶融領域の表面は、表面張力で平坦化する。レーザー照射を停止すると、(d)に示すように単結晶領域を種(seed)として液相のエピタキシャル結晶が成長し、これにより、研削加工の際に生じた結晶の格子欠陥はなくなり、(e)に示すようにレーザー照射を受けた部分は元の単結晶に修復される(特許文献4参照)。
【0112】
最後に、図15及び図16を参照しつつ、本発明に係る研削修復装置及び方法により、研削加工後のシリコンウェハの表面に対してレーザーを照射する前と後の表面状態を対比することによって、本発明の効果について説明する。図15は、本発明に係る研削修復装置及び方法により研削加工を終えた状態で、レーザーを照射する前のシリコンウェハのノッチ部の顕微鏡写真であり、図16は、図15に示したシリコンウェハのノッチ部の研削後の領域に、本発明に係る研削修復装置及び方法によりレーザー照射処理を行った後の顕微鏡写真である。
【0113】
図15に示すように、研削加工を終えた状態で、レーザーを照射する前のシリコンウェハWのノッチ部wnの面取り斜面w2を含む研削面には、細かい研削痕(擦過痕ないし条痕)が形成されている。即ち、ノッチ部wnの一方の外周側円弧部分w4から直線部分w7、凹所底部の円弧部分w6、もう一方の直線部分w8を経て、もう一方の外周側円弧部分w5に至るまでの領域全体に、多数の細かい略平行な凹凸条痕から成る研削痕が形成されており、それにより粗い表面状態となっている。このような研削痕は写真に示すノッチ部wnだけでなく、シリコンウェハWの外周の端面及び外周の面取り斜面にも同様に形成されている。また、研削加工によるダメージは、このように顕微鏡で観察できる表面だけではなく、前記の如く、表面から所定の深さの領域がアモルファス層や転位層に変化した加工変質層となって内部にまで及んでいる。
【0114】
図16には、図15に示したシリコンウェハのノッチ部の研削後の表面領域に、本発明に係る研削修復装置及び方法によりレーザー照射処理を行った後の状態が示されている。即ち、レーザー照射処理後においては、前記の如く、ノッチ部wnの一方の外周側円弧部分w4から直線部分w7、凹所底部の円弧部分w6、もう一方の直線部分w8を経て、もう一方の外周側円弧部分w5に至るまでの領域の表面が、全体的に平滑で光沢ある平坦面となっていることが視認できる。即ち、レーザーをノッチ部wnの形状及び表面状態に対応させつつ、前記の如く研削面に対してレーザーを各種方向から適正な強度等の照射条件で照射することによって、通常は均等で良好な照射が困難なノッチ部wnに対して、本発明によるときは、満遍なく均等に、且つ、効率よく迅速で効果的に適正なレーザー照射が行われ、前記修復の原理に基づいて、研削加工によるダメージの修復がなされるものである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は上記構成を有し、その計測装置により、シリコンウェハの表面状態や形状を測定することにより、研削加工によるダメージ部の規模や状況を確認、把握した上で、その制御装置がレーザー照射ユニットの変位機構や光学機構、温度調節装置等々を介してレーザーの照射条件や雰囲気等をコントロールして効果的なレーザー照射を行うことで、効率的なウェハ表面の修復や平坦化処理を行うことが可能となる。また、形状に合わせたレーザーの走査方法を実行できるので、短時間で適正な修復が可能となる。
【符号の説明】
【0116】
L…レーザー
W…シリコンウェハ(被加工材)
w1…外周又はノッチ部凹所の端面
w2…表側の面取り斜面
w3…裏側の面取り斜面
w4、w5…ノッチ部の外周側円弧部分
w6…ノッチ部の凹所底部の円弧部分
w7、w8…ノッチ部の凹所の直線部分
w9…単結晶層
w10…凹凸
w11…平坦面
wn…ノッチ部
O1…ノッチ部の凹所底部の円弧部分の曲率半径の中心
O2、O3…ノッチ部の外周側円弧部分の曲率半径の中心
1…本発明に係る研削修復装置
10…研削ユニット
11…本体ベース
12…ウェハ送りユニットの駆動装置
20…ウェハ送りユニット
21、121…X軸ベース
22、122…X軸ガイドレール
23、123…X軸リニアガイド
24、124…Xテーブル
25、125…X軸駆動機構
26、126…Y軸ガイドレール
27、127…Y軸リニアガイド
28、128…Yテーブル
29、129…Z軸ガイドレール
30、130…Z軸駆動機構
31、131…Zテーブル
32、132…θ軸モータ
33、133…θスピンドル
34、134…ウェハテーブル
40…供給回収ロボット
41…ツルアー
50…砥石回転ユニット
51…外周砥石スピンドル
52…外周粗研削砥石
53…ターンテーブル
54…上外周精研削スピンドル
55…外周精研削砥石
55-1…上外周精研削砥石(上研削砥石)
55-2…下外周精研削砥石(下研削砥石)
56…上外周精研削モータ
57…下外周精研削スピンドル
59…下固定枠
60…外周粗研削装置
61…ノッチ部粗研削砥石
62…ノッチ部粗研削スピンドル
63…ノッチ部粗研削モータ
64…ノッチ部精研削砥石
65…ノッチ部精研削スピンドル
66…ノッチ部精研削モータ
70…ウェハカセット
71…カセットテーブル
80…搬送アーム
100…レーザー照射修復装置
101…レーザー照射ユニット
101a…レーザー光源
101b…光学機構
101c…中継用ミラー
101d…コリメーター
101e…マスク
101f…集光レンズ
101g…焦点位置調整用の移動テーブル
101h…ビームスプリッター
101i、101j…ガルバノミラー
101k…ビームスプリッター
101l…偏光子
101m…ビームスプリッター
101n、101o…ガルバノミラー
102…計測装置
102a…計測器本体
102b…支柱
103…制御装置
104…温度調節装置
105…雰囲気維持装置
120…変位機構
135…回転テーブル
136…傾動架台
137…軸支ピン
138…カム
139…カムピン
140…計測用光源
141…検出器
142…電極
143…直流電源
144…液滴
144a…接触角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16