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特開2023-175754シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175754
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20231205BHJP
   G21K 4/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20231205BHJP
【FI】
G01T1/20 D
G21K4/00 A
G01T1/20 B
A61B6/03 320S
G01N23/046
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145829
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2021556138の分割
【原出願日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019205706
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】福田 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】森本 一光
(72)【発明者】
【氏名】林 誠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放射線検出器の診断画像の高解像度化が進む中、反り、外形寸法のバラツキの少ないシンチレータアレイが求められている。
【解決手段】シンチレータアレイは、複数のシンチレータセグメントと、複数のシンチレータセグメントのそれぞれを囲み、かつ、複数のシンチレータセグメントのうちの縦方向に配列されたシンチレータセグメント間、および、複数のシンチレータセグメントのうちの横方向に配列されたシンチレータセグメント間に設けられるとともに光を反射する第1の反射層と、を有する、構造体と、構造体の表面に接して設けられ、光を反射する第2の反射層を含む層と、を具備する。第1の反射層は、縦方向に配列されたシンチレータセグメント間および横方向に配列されたシンチレータセグメント間において構造体の表面から突出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシンチレータセグメントと、前記複数のシンチレータセグメントのそれぞれを囲み、かつ、前記複数のシンチレータセグメントのうちの縦方向に配列されたシンチレータセグメント間、および、前記複数のシンチレータセグメントのうちの横方向に配列されたシンチレータセグメント間に設けられるとともに光を反射する第1の反射層と、を有する、構造体と、
前記構造体の表面に接して設けられ、光を反射する第2の反射層を含む層と、
を具備し、
前記第1の反射層は、前記縦方向に配列されたシンチレータセグメント間および前記横方向に配列されたシンチレータセグメント間において前記構造体の前記表面から突出する、シンチレータアレイ。
【請求項2】
前記第1の反射層は、前記構造体の側面に設けられ、かつ、前記構造体の前記表面から突出する、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項3】
接着層をさらに具備し、
前記第1の反射層は、前記接着層に接する、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項4】
接着層をさらに具備し、
前記第1の反射層は、前記接着層を貫通し、前記第2の反射層に接する、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項5】
接着層をさらに具備し、
前記第1の反射層は、前記第2の反射層を貫通する、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項6】
前記第1の反射層は、前記構造体の側面に設けられ、かつ、前記構造体の側面全体を覆う、請求項5に記載のシンチレータアレイ。
【請求項7】
前記層の厚さTに対する、前記第1の反射層の前記突出する部分の長さDの比D/Tは、0.10以上1.00以下である、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項8】
前記第1および第2の反射層からなる群より選ばれる少なくとも一つの反射層は、
エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む樹脂と、
酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、光を反射する反射粒子と、
を含む、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項9】
前記層は、接着層をさらに含み、
前記第2の反射層は、前記接着層を介して前記構造体の上に設けられる、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項10】
前記第1の反射層の前記突出する部分は、前記接着層の内部に延在し、前記第2の反射層まで延在しない、請求項9に記載にシンチレータアレイ。
【請求項11】
前記接着層は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つの樹脂を含む、請求項9または請求項10に記載のシンチレータアレイ。
【請求項12】
前記接着層は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つをさらに含む、請求項11に記載のシンチレータアレイ。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のシンチレータアレイを具備する、放射線検出器。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線検出器を具備する、放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断や工業用非破壊検査等の分野では、X線断層撮影装置(以下、X線CT装置と記す)のような放射線検査装置を用いた検査を行う。X線CT装置は、扇状のファンビームX線を照射するX線管(X線源)と、多数のX線検出素子を備えるX線検出器とを、被検査体の断層面を挟んで互いに対向して配置する。
【0003】
X線CT装置は、被検査体に対して回転しながらX線管からファンビームX線を照射し、被検査体を透過したX線吸収データをX線検出器で収集する。この後、X線吸収データをコンピュータで解析することによって、断層像を再生する。
【0004】
X線CT装置の放射線検出器は、固体シンチレータを用いた検出素子を広く使用する。固体シンチレータを用いた検出素子を具備する放射線検出器は、検出素子を小型化してチャンネル数を増やすことが容易であることから、X線CT装置等の解像度をより一層高めることができる。
【0005】
X線CT装置等の放射線検査装置は、医療用や工業用等の様々な分野に用いられている。X線CT装置の例は、フォトダイオード等の検出素子を縦横に2次元的に並べ、その上にシンチレータアレイを搭載したマルチスライス型の装置を含む。マルチスライス型の装置は、コンピュータ断層撮影(CT)を重ねることができ、これによりCT画像を立体的に示すことができる。
【0006】
放射線検査装置に搭載される放射線検出器は、縦横複数列に並べられた複数の検出素子を備え、それぞれの検出素子がシンチレータセグメントを有する。放射線検出器は、シンチレータセグメントに入射するX線を可視光に変換し、可視光を検出素子で電気信号に変換して画像を形成する。近年、高解像度を得るために検出素子を小型化し、さらに隣り合う検出素子間のピッチを狭くする。これらに伴って、シンチレータセグメントのサイズも小さくなっている。
【0007】
上述したようなシンチレータセグメントに使用される各種のシンチレータ材料のうち、希土類酸硫化物系の蛍光体セラミックスは、発光効率が高く、シンチレータセグメントに使用するために好適な特性を有する。このため、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体セラミックスの焼結体(インゴット)から切り出し加工または溝切り加工等の加工法を用いて加工されたシンチレータセグメントと、検出素子としてのフォトダイオードと、を組み合せた放射線検出器が普及しつつある。
【0008】
蛍光体セラミックスを用いたシンチレータの例は、ガドリニウム酸硫化物蛍光体の焼結体からなるシンチレータを含む。上記シンチレータを用いたシンチレータアレイは、例えば以下のようにして製造される。まず、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体粉末を適当な形状に成形し、これを焼結して焼結体(インゴット)を形成する。この焼結体に切り出し加工または溝切り加工等の切断加工を施して、複数の検出素子に対応するシンチレータセグメントを形成する。さらに、これらのシンチレータセグメント間に光を反射する反射層を形成して一体化してシンチレータアレイを製造する。
【0009】
上述したようなシンチレータアレイを放射線検出器に使用する場合、シンチレータアレイの寸法精度がCT診断画像の解像度に影響する。さらに、X線CT装置に搭載される放射線検出器には最大50℃以上60℃以下の温度が加わる。樹脂を含む反射層を有するシンチレータアレイでは、加温による反射層の膨張、および温度低下による収縮が発生し、隣接するシンチレータセグメント間で微小な寸法変化、すなわちシンチレータセグメントのピッチずれ、シンチレータアレイの反りを主な要因とする外形寸法のバラツキ等が生まれてしまう。こうした反り、外形寸法のバラツキがあると、検出器であるダイオードアレイに貼り付けたとき、その間の接着層厚を不均一にし、放射線検出器の診断画像の解像度を悪化させる原因となる。放射線検出器の診断画像の高解像度化が進む中、反り、外形寸法のバラツキの少ないシンチレータアレイが求められている。さらに、放射線検出器の検出面積の微細化に伴ってシンチレータアレイとダイオードアレイ間の接着層の均一化が重要になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5866908号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/082337号
【特許文献3】国際公開第2017/110850号
【発明の概要】
【0011】
実施形態のシンチレータアレイは、複数のシンチレータセグメントと、複数のシンチレータセグメントのそれぞれを囲み、かつ、複数のシンチレータセグメントのうちの縦方向に配列されたシンチレータセグメント間、および、複数のシンチレータセグメントのうちの横方向に配列されたシンチレータセグメント間に設けられるとともに光を反射する第1の反射層と、を有する、構造体と、構造体の表面に接して設けられ、光を反射する第2の反射層を含む層と、を具備する。第1の反射層は、縦方向に配列されたシンチレータセグメント間および横方向に配列されたシンチレータセグメント間において構造体の表面から突出する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のシンチレータアレイの構造例を示す平面図である。
図2】従来のシンチレータアレイの構造例を示す断面図である。
図3】実施形態のシンチレータアレイの構造例を示す断面図である。
図4】実施形態のシンチレータアレイの他の構造例を示す断面図である。
図5】実施形態のシンチレータアレイの他の構造例を示す断面図である。
図6】実施形態のシンチレータアレイの他の構造例を示す断面図である。
図7】シンチレータアレイの製造方法例を説明するための断面図である。
図8】シンチレータアレイの製造方法例を説明するための断面図である。
図9】シンチレータアレイの製造方法例を説明するための断面図である。
図10】シンチレータアレイの製造方法例を説明するための断面図である。
図11】放射線検出器の構成例を示す図である。
図12】放射線検査装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0014】
以下、実施形態のシンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置について説明する。
【0015】
(シンチレータアレイ)
図1は、実施形態のシンチレータアレイの構造例を示す平面図である。図2は、従来のシンチレータアレイの構造例を示す断面図である。図3は、実施形態のシンチレータアレイの構造例を示す断面図である。図4図5図6は、実施形態のシンチレータアレイの他の構造例を示す断面図である。図1ないし図6は、シンチレータアレイ1と、シンチレータセグメント2と、反射層3と、反射層(天板反射層)4と、を図示する。なお、反射層4は、図1において便宜のため省略される。
【0016】
シンチレータアレイ1は、複数のシンチレータセグメント2と、反射層3と、反射層4と、を具備する。シンチレータセグメント2および反射層3は、X線入射面である表面20aと、表面20aの反対側の表面20bと、を有する構造体20を形成する。シンチレータセグメント2の個数は、放射線検出器の構造や解像度等に応じて適宜に設定される。
【0017】
従来のシンチレータアレイでは、図2に示すように、表面20aがシンチレータセグメント2から反射層3まで面一に延在する。これに対し、実施形態のシンチレータアレイの一例では、図3に示すように、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面において、反射層3が部分的に反射層4の内部に食い込むように入り込む。換言すると、反射層3が反射層4の内部に延在する部分を有する。
【0018】
実施形態のシンチレータアレイの他の例では、図4に示すように、反射層4が接着層5を介して表面20aの上に貼り合わされ、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面において、反射層3が接着層5を通して反射層4の内部に部分的に食い込むように入り込んでもよい。換言すると、反射層3が接着層5を介して反射層4の内部まで延在する部分を有する。
【0019】
実施形態のシンチレータアレイの別の他の例では、図5に示すように、反射層4が接着層5を介して表面20aの上に貼り合わされ、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面において、反射層3が接着層5の内部に部分的に食い込むように入り込むとともに反射層4の内部には入り込まなくてもよい。換言すると、反射層3が接着層5の内部に延在し、反射層4まで延在しない部分を有する。
【0020】
実施形態のシンチレータアレイの別の他の例では、図6に示すように、反射層4が接着層5を介して表面20aの上に貼り合わされ、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面において、反射層3の一部が反射層4を貫通してもよい。
【0021】
シンチレータセグメント2は、入射される放射線(X線)を光(可視光)に変換する。複数のシンチレータセグメント2は、それらに接着する反射層3により一体化されて構造体20を形成する。
【0022】
反射層3は、光(可視光)を反射する。反射層3は、X線を透過できる。反射層3は、隣接するシンチレータセグメント2の間に設けられ、それぞれのシンチレータセグメント2に接着する。
【0023】
反射層4は、光(可視光)を反射する。反射層4は、X線を透過できる。反射層4は、例えば図3に示すように、表面20aの上に設けられるとともに構造体20を覆う。
【0024】
シンチレータアレイ1は、複数のシンチレータセグメント2を一列に並べた構造、または図1に示すように複数のシンチレータセグメント2を縦方向および横方向に所定の個数ずつ2次元的に並べた構造のいずれかの構造を有していてもよい。複数のシンチレータセグメント2を2次元的に配列する場合、反射層3は、縦方向に配列されたシンチレータセグメント2間および横方向に配列されたシンチレータセグメント2に設けられる。反射層3は、表面20aに沿ってシンチレータセグメント2を囲んでもよい。
【0025】
シンチレータセグメント2は、希土類酸硫化物蛍光体を含む焼結体を有する。希土類酸硫化物蛍光体の例は、付活剤としてプラセオジム(Pr)を含有する希土類酸硫化物蛍光体を含む。希土類酸硫化物としては、例えばイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素の酸硫化物が挙げられる。
【0026】
希土類酸硫化物蛍光体は、
一般式:RES:Pr …(1)
(REはY、Gd、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示す)
で表される組成を有することが好ましい。
【0027】
上述した希土類元素のうち、特にGdはX線吸収係数が大きく、シンチレータアレイ1の光出力の向上に寄与する。従って、シンチレータセグメント2は、GdS:Pr蛍光体(GOS蛍光体)を有することがより好ましい。なお、Gdの一部は他の希土類元素で置換してもよい。このとき、他の希土類元素によるGdの置換量は10モル%以下であることが好ましい。
すなわち、希土類酸硫化物蛍光体は、
一般式:(Gd1-x,RES:Pr …(2)
(式中、REはY、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示し、xは0≦x≦0.1を満足する数(原子比)である)
で実質的に表される組成を有することが好ましい。
【0028】
シンチレータセグメント2は、光出力を増大させる付活剤として、プラセオジム(Pr)を有していてもよい。Prは、他の付活剤に比べてアフターグローを低減できる。従って、付活剤としてPrを含有する希土類酸硫化物蛍光体セラミックスは、放射線検出器の蛍光発生器として有効である。
【0029】
希土類酸硫化物蛍光体におけるPrの含有量は、蛍光体母体(例えばGdSのようなRES)の含有量に対して0.001モル%以上10モル%以下であることが好ましい。Prの含有量が10モル%を超えると、光出力の低下を招く。Prの含有量が0.001モル%未満では、主付活剤としての効果を十分に得ることができない。Prの含有量は、0.01モル%以上1モル%以下であることがより好ましい。
【0030】
希土類酸硫化物蛍光体は、主付活剤としてのPrに加えて、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、およびリン(P)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を共付活剤として微量含有してもよい。これらの元素は、曝射劣化の抑制、アフターグローの抑制等に対して効果を示す。これら共付活剤の含有量は、総量として、蛍光体母体に対して0.00001モル%以上0.1モル%以下の範囲であることが好ましい。
【0031】
シンチレータセグメント2を構成する焼結体は、高純度な希土類酸硫化物系蛍光体セラミックス(シンチレータ材料)からなることが好ましい。不純物はシンチレータの感度の低下要因となるため、できるだけ不純物量が少ないことが好ましい。特に、燐酸根(PO)は感度低下の原因となるため、その含有量は100ppm以下であることが好ましい。フッ化物等を焼結助剤として使用して焼結体の密度を高める場合、焼結助剤が不純物として残留するため、感度の低下をもたらす。
【0032】
焼結体は、立方体形状または直方体形状を有する。シンチレータセグメント2の体積は、1mm以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2を小型化することによって、検出される画像を高精細化することができる。シンチレータセグメント2の縦(L)、横(S)、厚さ(T)の各サイズは必ずしも限定されないが、それぞれ1mm以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2の体積が1mm以下である場合、反射層3の幅(W)は100μm以下、さらには50μm以下に薄くすることも可能である。ただし40μm未満の場合、製造プロセスが煩雑となるため、反射層3の幅(W)は40μm以上が好ましい。
【0033】
反射層3は、光を透過する樹脂(透光性樹脂)と、樹脂中に分散され、光を反射する反射粒子と、を含有する。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。例えばエポキシ樹脂は、水添エポキシ樹脂、エポキシシリコーン樹脂等が好ましい。反射粒子は、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。なお、樹脂中に含まれる気泡も反射粒子としての役割を果たすことがある。
【0034】
反射層4は、反射層3と同様の透光性樹脂および反射粒子を用いることができる。
【0035】
反射層3および反射層4における透光性樹脂と反射粒子の割合は、透光性樹脂の質量比が15%以上60%以下、反射粒子の質量比が40%以上85%以下であることが好ましい。透光性樹脂の質量比と反射粒子の質量比との合計は100%である。反射粒子の質量比が40%未満では、反射層の反射効率が低下し、波長512nmの光に対する反射層の反射効率が90%よりも低くなりやすい。反射粒子の質量比が85%を超えると、反射層の反射効率は変わらないが、透光性樹脂の質量比が相対的に低下するために、反射層の安定した固体化が難しくなる。
【0036】
構造体20の表面20aの上に、予め作製された反射層4を貼り合わせる場合、接着層5は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれ、光、熱、湿気のいずれかにより硬化された少なくとも一つの樹脂を含む。接着層5は、透光性樹脂でもよいが、接着層5を通して、一つのシンチレータセグメント2からの光が、他の一つのシンチレータセグメント2に進入することを低減するためには、接着層5は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0037】
以上のように、実施形態のシンチレータアレイは、反射層3が部分的に反射層4または接着層5に食い込む構成を備える。
【0038】
X線CT装置等の放射線検出装置に用いられるシンチレータは、X線によって生じた光を、反射層を利用し画素内に閉じ込めて、フォトダイオード側に効率的に取り出す。反射層としては、シンチレータセグメント間を埋め尽くすように形成された反射層、また場合によっては、さらにX線の入射面側に、シンチレータアレイを覆うように形成された天板反射層を有するのが一般的である。X線により発光したシンチレータの光は、直接またこうした反射層を介して効率よくフォトダイオードに導かれる。X線検出器に組み込まれたシンチレータアレイは最大50℃以上60℃以下の温度が加わり、動作していないときは室温に置かれる。また動作時には被検査体の周囲を高速で回転するため、それに伴う力が加わることになる。こうした使用環境温度の変動や回転に伴う内部応力の発生に起因すると思われる問題として、天板反射層がシンチレータアレイから剥離する現象がしばしば発生し、その対策が求められる。
【0039】
これに対し、シンチレータセグメント間の反射層において、エポキシ樹脂に含まれる反射粒子の色を選択し、またエポキシ樹脂のガラス転移点が80℃以上の樹脂を組み合わせることにより、シンチレータセグメント間の光出力のばらつきまたひずみを抑制する技術が知られている。
【0040】
また、反射層を構成する透光性樹脂のガラス転移点が50℃以上であり、かつガラス転移点より高い温度における透光性樹脂の熱膨張係数が3.5×10-5/℃以下であるシンチレータアレイが知られている。一般に、透光性樹脂の熱膨張係数は、ガラス転移点を境にして、大きく変化し、この変化に伴って起こる反りを、その条件設定により調整する。
【0041】
また、シンチレータアレイの反りを低減するため、複数のシンチレータセグメントを反射層により一体化し、反射層の透光性樹脂のガラス転移点が50℃以上であり、複数のシンチレータセグメントのX線が入射する面側に配置された第2の反射層の透光性樹脂のガラス転移点が30℃以下である構成のシンチレータアレイが知られている。
【0042】
これらのシンチレータアレイでは、反りはある程度改善される。しかしながら、天板反射層を有するシンチレータアレイにおいて、その天板反射層の剥離に対しては、必ずしも有効なものとは言えず、更なる改善が求められる。
【0043】
天板反射層に用いられる材料とシンチレータセグメントに用いられる材料は、線膨張係数や弾性係数において大きな差を有する。この差は、シンチレータアレイを検出器に組み込み、使用環境温度の変動や回転に伴う遠心力に曝したとき、応力を発生させ、天板反射層の剥離の原因となる。
【0044】
これに対し、本実施形態では、反射層3を反射層4または接着層5に食い込ませることにより、これらの凹凸により接触面積を増加させ、所謂アンカー効果を得ることができるため反射層4の剥離を抑制できる。
【0045】
表1は、図2に示す構造を有する従来のシンチレータアレイと、図3に示す構造を有するシンチレータアレイと、のそれぞれの強制試験における剥離発生率の例を示す。強制試験は、シンチレータアレイを室温から50℃まで5分で昇温し、10分間放置した後、室温にて200rpmの回転速度で5分間回転する。これらの動作を1サイクルの動作とし、各サンプルに対して100サイクルの動作を行う。試作数100個のサンプルの強制試験では、図3に示す構造を有するシンチレータアレイに剥離がなく、このことから剥離耐性が大幅に改善することがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
実施形態のシンチレータアレイは、図3図4図5図6に示されるように、反射層3が部分的に反射層4を含む層に食い込む構造を有するが、食い込み長さが短くなると剥離抑制効果は低減する。有効な剥離抑制効果を実現するためには、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面において、反射層4または反射層4および接着層5(反射層4を含む層)の厚さTに対する、反射層3における上記反射層4を含む層の内部に延在する部分の長さDの比D/Tは、0.10以上1.00以下の範囲、より好ましくは0.20以上1.00以下の範囲であることが好ましい。厚さTと長さDは、シンチレータアレイ1の厚さ方向の断面を電子顕微鏡または光学顕微鏡によって観察し、その観察像から測定可能である。反射層3、反射層4、接着層5はそれぞれの層でポリマーのネットワーク構造を形成するため、これらの層の界面が明確である。また顔料濃度が異なる場合、さらに明確であるため、厚さTと長さDを判断しやすい。
【0048】
次に、シンチレータアレイ1の製造方法例について説明する。シンチレータアレイ1は、以下のように製造される。ここでは、一例として図4に示す構造を有する場合について説明する。
【0049】
図7ないし図10は、実施形態のシンチレータアレイの製造方法例を説明するための断面図である。まず第1の工程により、白色反射材を含むエポキシ樹脂等の樹脂で所定の大きさの白色シートを形成する。
【0050】
白色シートは、反射粒子と透光性樹脂との混合物やラッカー系塗料等の材料を用いて形成できる。反射粒子と透光性樹脂との混合物は、反射層3と同様な構成を有していることが好ましい。白色シートは市販の白色シートを用いても良い。
【0051】
白色シートは、反射層4を形成し、その厚さは50μm以上250μm以下の範囲である。厚さが50μm未満であると、光の反射効率の向上効果を十分に得ることができない。厚さが250μmを超えると、透過するX線量が低下して検出感度が低下する。
【0052】
第1の工程では、希土類酸硫化物系蛍光体焼結体等のシンチレータ材料を所定の大きさの薄板(厚さ0.5mm以上2mm以下)として切り出し、図7に示すように、板状の焼結体2aと反射層4を形成する白色シートとをエポキシ樹脂等の接着層5を介して接着して貼り合わせる。
【0053】
次に、第2の工程により、図8に示すように、焼結体2aにダイシングによる溝加工を施して焼結体2aを部分的に除去することによりシンチレータセグメント2と溝Sとを形成する。焼結体2aの厚さ方向の断面において、溝Sの幅は例えば40μm以上200μm以下の範囲である。溝Sは、焼結体2aおよび接着層5を介して反射層4の内部まで延在する。
【0054】
次に、第3の工程により、図9に示すように、第2の工程で形成された溝Sに反射層3を形成する。まず、反射粒子と透光性樹脂を構成する未硬化状態の樹脂組成物(透光性樹脂の未硬化物)とを用意し、その混合物であるスラリーを、溝Sに注入する。
【0055】
未硬化状態の樹脂組成物は、0.2Pa・s以上1.0Pa・s以下(200cps以上1000cps以下)の粘度を有することが好ましい。樹脂組成物の粘度が1.0Pa・sを超えると、流動性が悪く、溝Sへの注入の作業性が低下する。樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s未満では、流動性が高くなりすぎて塗布性または充填性を低下させる。また、透光性樹脂の全光線透過率は85%以上であることが好ましい。透光性樹脂の全光線透過率が85%未満であると、反射層3の反射効率が低下しやすくなる。
【0056】
溝Sにスラリーを注入した後、スラリーを硬化させて反射層3を形成することによって、隣接するシンチレータセグメント2間を結合・一体化して構造体20を形成する。スラリーの硬化処理は、未硬化状態の樹脂組成物や硬化剤の種類等に応じて適宜に設定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物の場合には、熱処理することにより硬化反応を進行させる。2液型のエポキシ樹脂のような樹脂組成物の場合、室温下で放置することにより硬化反応を進行させてもよい。
【0057】
次に、第4の工程により、図10に示すように、構造体20の周縁の不要な部分を取り除く周縁加工、さらに研磨処理を施す。以上の工程によりシンチレータアレイ1を製造できる。
【0058】
(放射線検出器)
実施形態の放射線検出器は、上述したシンチレータアレイ1を、入射した放射線に応じて光を放射する蛍光発生器として具備し、さらに蛍光発生器からの光を受け、光の出力を電気的出力に変換する光電変換器を具備する。図11は放射線検出器の構成例を示す図であり、X線検出器を示す。図11に示すX線検出器6は、蛍光発生器としてシンチレータアレイ1と、光電変換器として光電変換素子7とを具備する。
【0059】
X線検出器6は、構造体20の表面20bに一体的に設けられた光電変換素子7を備える。光電変換素子7は、シンチレータセグメント2においてX線を変換することにより形成された光(可視光)を検出する。光電変換素子7の例は、フォトダイオード等を含む。光電変換素子7は、複数のシンチレータセグメント2のそれぞれに対応するように配置されている。これらの構成要素によって、放射線検出器を構成する。
【0060】
(放射線検査装置)
実施形態の放射線検査装置は、被検査体に向けて放射線を照射する放射線源と、被検査体を透過した放射線を検出する放射線検出器とを具備する。放射線検出器は、上述した実施形態の放射線検出器を用いることができる。
【0061】
図12は、放射線検査装置の構成例を示す図である。図12は、X線CT装置10と、被検体11と、X線管12と、コンピュータ13と、ディスプレイ14と、被検体画像15と、を図示する。X線CT装置10は、X線検出器6を備えている。X線検出器6は、例えば被検体11の撮像部位が配置される円筒の内壁面に貼り付けられている。X線検出器6が貼り付けられた円筒の円弧の略中心には、X線を出射するX線管12が設置されている。X線検出器6とX線管12との間には被検体11が配置される。X線検出器6のX線入射面側には、図示しないコリメータが設けられている。
【0062】
X線検出器6およびX線管12は、被検体11を中心にしてX線による撮影を行いながら回転するように構成されている。被検体11の画像情報が異なる角度から立体的に集められる。X線撮影により得られた信号(光電変換素子により変換された電気信号)はコンピュータ13で処理され、ディスプレイ14上に被検体画像15として表示される。被検体画像15は、例えば被検体11の断層像である。図1に示すように、シンチレータセグメント2を2次元的に配置したシンチレータアレイ1を用いることによって、マルチ断層像タイプのX線CT装置10を構成することも可能である。この場合、被検体11の断層像が複数同時に撮影され、例えば撮影結果を立体的に描写することもできる。
【0063】
図12に示すX線CT装置10は、シンチレータアレイ1を有するX線検出器6を具備する。前述したように、シンチレータアレイ1は反射層3および反射層4等の構成に基づいて、シンチレータセグメント2から放射される可視光の反射効率が高いため、優れた光出力を有する。このようなシンチレータアレイ1を有するX線検出器6を使用することによって、X線CT装置10による撮影時間を短くできる。この結果、被検体11の被曝時間を短くすることができ、低被曝化を実現することが可能になる。放射線検査装置(X線CT装置10)は、人体の医療診断用のX線検査に限らず、動物のX線検査や工業用途のX線検査等に対しても適用可能である。さらに、X線非破壊検査装置による検査精度の向上等にも寄与する。
【実施例0064】
シンチレータアレイ1の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0065】
実施例および比較例を示すにあたり、板状の焼結体2aを次のように製作した。GdS:Pr(Pr濃度=0.05モル%)の組成を有する蛍光体粉末をラバープレスにより仮成形し、この仮成形体をタンタル(Ta)製のカプセル中に脱気密封した後、これを熱間等方圧加圧(HIP)処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1425℃の条件で3時間処理した。このようにして、直径約80mm×高さ約120mmの円柱状の焼結体を作製した。この焼結体から、種々のサイズのGOSセラミック板を切り出し、実施例および比較例の焼結体2aとした。
【0066】
(実施例1)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板の表面に、焼結体2aよりも一回り面積が大きい白色ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製、厚さ100μm)を、接着層5としてエポキシ接着材を介して貼り合わせた。貼り合わせる際にはGOSセラミック板、エポキシ接着材、白色PETフィルムを重ねて、16kgの荷重を印加し、100℃の温度で加熱して接着した。常温まで冷却した後に荷重を除いて積層体を作製した。この積層体のGOSセラミック板表面にダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成した。溝Sの深さは1.25mmである。溝Sは白色PETフィルムの内部まで延在する。溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させ、シンチレータセグメント2の表面を研磨した。その後、周縁部をカットし、図4に相当するシンチレータアレイ1を作製した。反射層4を含む層の厚さTに対する、反射層3における反射層4を含む層の内部に延在する部分の長さDの比D/Tは0.40であった。
【0067】
(実施例2)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板の表面に、酸化チタンとエポキシ樹脂と含むスラリーを塗布し、スラリーを熱硬化させた後に研磨することで厚さTが0.3mmの反射層4を形成した。その後、GOSセラミック板の表面からダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成した。溝Sの深さは1.25mmである。溝Sは反射層4の内部まで延在する。溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させ、シンチレータセグメント2の表面を0.1mm研磨した。その後、反射層4の表面を0.1mm研磨し、周縁部をカットし、図3に相当するシンチレータアレイ1を作製した。比D/Tは0.25であった。
【0068】
(実施例3)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板の表面に、酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを塗布し、スラリーを熱硬化させた後に研磨することで厚さ0.3mmの反射層4を形成した。その後、GOSセラミック板の表面からダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成した。溝Sの深さは1.4mmである。溝Sは反射層4の内部まで延在する。溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させ、シンチレータセグメント2の表面を0.1mm研磨した。その後、反射層4の表面を0.15mm研磨し、反射層4を貫通して反射層3を反射層4の表面に露出させたのち、周縁部をカットし、シンチレータアレイ1を作製した。比D/Tは1.00であった。
【0069】
(実施例4)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板の表面に、酸化チタンとエポキシ樹脂と含むスラリーを塗布し、スラリーを熱硬化させた後に研磨することで厚さ0.3mmの反射層4を形成した。その後、GOSセラミック板の表面からダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成した。溝Sの深さは1.22mmである。溝Sは反射層4の内部まで延在する。溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させ、シンチレータセグメント2の表面を0.1mm研磨した。その後、反射層4の表面を0.1mm研磨し、周縁部をカットし、図3に相当するシンチレータアレイ1を作製した。比D/Tは0.10であった。
【0070】
(実施例5)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板の表面に、酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを塗布し、スラリーを熱硬化させた後に研磨することで厚さ0.3mmの反射層4を形成した。その後、GOSセラミック板の表面からダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成した。溝Sの深さは1.35mmである。溝Sは反射層4の内部まで延在する。溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させ、シンチレータセグメント2の表面を0.1mm研磨した。その後、反射層4の表面を0.1mm研磨し、周縁部をカットし、図3に相当するシンチレータアレイ1を作製した。比D/Tは0.75であった。
【0071】
(比較例1)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板にダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成し、溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させた後、研磨して反射層3を形成した。この構造体20のX線入射面に酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを塗布し、スラリーを100℃の温度で3時間加熱して硬化させた。厚さを150μmにするため、硬化後に研磨し、反射層4を形成し、シンチレータアレイ1を作製した。反射層3は、反射層4まで延在しない。
【0072】
(比較例2)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板にダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成し、溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させた後、研磨することで反射層3を形成した。次に、反射層4として白色PETフィルム(三菱ケミカル製、厚さ100μm)をエポキシ接着材を介して構造体20と貼り合わせた。貼り合わせる際には構造体20、エポキシ接着材、白色PETフィルムを重ねて、16kgの荷重を印加し、100℃の温度で加熱して接着した。常温まで冷却した後に荷重を除き、シンチレータアレイ1を作製した。反射層3は、反射層4まで延在しない。
【0073】
(比較例3)
長さ76mm、幅25mm、厚さ1.2mmのGOSセラミック板にダイシングによる溝加工を施してシンチレータセグメント2と溝Sとを形成し、溝Sに酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを注入し、スラリーを熱硬化させた後に、研磨することで反射層3を形成した。この構造体20のX線入射面に酸化チタンとエポキシ樹脂とを含むスラリーを塗布し、100℃の温度で4時間加熱して硬化させた。厚さを100μmにするため、硬化後に研磨して反射層4を形成し、シンチレータアレイ1を作製した。反射層3は、反射層4まで延在しない。
【0074】
実施例および比較例での反射層4の剥離性は、次のような強制試験により評価した。得られたシンチレータアレイ1を恒温恒湿試験機に入れ、-20℃の温度で30分放置、後、昇温速度5℃/分で60℃の温度まで昇温し、60℃の温度で30分放置、その後、降温速度5℃/分で-20℃の温度まで降温させた。このサイクルを1000回行った後、シンチレータアレイ1の周縁部を観察し剥離の有無を評価した。試験での湿度は40%RH(Relative Humidity)とした。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2から、実施例のシンチレータアレイ1では、シンチレータセグメント2間の反射層3を反射層4を含む層の内部まで延在させて食い込ませ、一体化することにより、反射層4の剥離性において、比較例との間で有意な差が認められた。食い込みの程度が小さい場合であっても、剥離は、比較例よりも少なかった。
【0077】
実施形態のシンチレータアレイによれば、従来一定の割合で発生していた反射層4の剥離を、実質上なくすことができるため、産業上有用なものといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12