(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175807
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231205BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231205BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20231205BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08K5/098
C08K5/521
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149016
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2019539639の分割
【原出願日】2018-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2017168030
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】横田 悠里
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】堀越 隆裕
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱可塑性樹脂に、優れた透明性と物性とを付与することができる組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)、
(一般式(1)中、R
1~R
4は各々独立に、水素原子等を表し、R
5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有する組成物であって、(A)/(B)のモル比が、0.30~0.56の範囲内である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、
(一般式(1)中、R
1~R
4は各々独立に、水素原子または炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基を表し、R
5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有する組成物であって、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]であり、
前記カルボン酸ナトリウム(B)が、芳香族カルボン酸ナトリウムおよび炭素原子数10~21の脂肪酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)/前記カルボン酸ナトリウム(B)のモル比が、0.30~0.56の範囲内であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸ナトリウム(B)が、芳香族カルボン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムおよびリノール酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、0.001~10質量部となるように請求項1または2記載の組成物を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物
。
【請求項5】
請求項3または4記載の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【請求項6】
熱可塑性樹脂、および、組成物を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、
前記組成物が、下記一般式(1)、
(一般式(1)中、R
1~R
4は各々独立に、水素原子または炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基を表し、R
5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有し、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]であり、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)/前記カルボン酸ナトリウム(B)のモル比が、0.30~0.56の範囲内であり、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、0.001~10質量部となるように前記組成物を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体に関し、詳しくは、熱可塑性樹脂に、優れた透明性と物性とを付与することができる組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、成形加工性・低比重等、種々の物性に応じて、建材、自動車材料、家電機・電子用材料、繊維材料、包装用資材、農業用資材、家電製品のハウジング材料、生活雑貨用品、フィルム、シートおよび構造部品等の各種成形体に広く利用されている。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1等のポリオレフィン系樹脂は、その成形加工性、耐熱性、力学的特性および低比重等に優れている利点があり、フィルム、シートおよび各種成形品(構造部品等)に広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は成形後の結晶化速度が遅いため、成形サイクル性が低く、また、加熱成形後の結晶化の進行によって大きな結晶が生成し、透明性や強度が不足する欠点があった。これらの欠点は、全て、ポリオレフィン系樹脂の結晶性に由来するものであり、ポリオレフィン系樹脂の結晶化温度を高め、微細な結晶を急速に生成させることができれば、上記問題は解消されることが知られている。
【0004】
このために核剤を添加することが知られており、例えば、安息香酸ナトリウム、4-tert-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムおよび2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート等の環状有機リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”-トリス[2-メチルシクロヘキシル]-1,2,3-プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシルナフタレンジカルボキサミド、1,3,5-トリ(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等のアミド化合物等が知られている。
【0005】
これらの化合物の中でも、ポリオレフィン系樹脂の透明性と物性の改良効果が大きい核剤として、環状有機リン酸エステル金属塩が知られている。例えば、特許文献1において、結晶性合成樹脂に、環状有機リン酸エステル塩基性アルミニウム塩およびステアリン酸ナトリウムを含有させた樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2において、結晶性合成樹脂に、環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩およびアルカリ金属カルボン酸塩を含有させた樹脂組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、核剤は、2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)ホスフェートナトリウム、ジ(4-tert-ブチル-フェノキシ)ホスフェートナトリウム、アルミニウムヒドロキシビス[2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)ホスフェート]、ビス(2-アルキル、4-アルキルフェノキシ)ホスフェート、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンジカルボン酸ナトリウムあるいはビシクロ[2,2,1]ヘプタンジカルボン酸カルシウムの中から一種以上の、その中の二種以上の混合物が好ましいと記載があり、この核剤と安息香酸ナトリウムを添加した樹脂組成物が実施例に記載されている。さらに、特許文献4では、p-tert-ブチル安息香酸ヒドロキシアルミおよび/または安息香酸ナトリウムと、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]を混合した核剤組成物が提案されている。さらにまた、特許文献5では、ジアリールリン酸を置換する多価金属塩と一価脂肪酸のアルカリ金属塩を含有するポリプロピレン用透明化剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-120116号公報
【特許文献2】特開平5-156078号公報
【特許文献3】中国公開特許102344609号公報
【特許文献4】中国公開特許101845171号公報
【特許文献5】中国公開特許101265347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2において、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]とステアリン酸ナトリウムの組み合わせが記載されているが、これらの核剤効果は未だ十分なものではなかった。また、特許文献3では、クリープ耐性を改善することが示されているが、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]を配合した評価はなされておらず、透明性と物性に関する評価は十分ではない。さらに、特許文献4において、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸ナトリウムおよびp-tert-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシアルミと、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]とをブレンドした組成物が記載されているが、それ以上の言及はなく、また、樹脂に配合した評価がなされていないため、透明性および物性への影響については、検討の余地が残されていた。さらにまた、特許文献5において、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)ホスフェート]と、ステアリン酸ナトリウムやロジン酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム、および/または、ヒドロキシステアリン酸リチウムの一価脂肪酸のアルカリ金属塩を含有する樹脂組成物が示されているが、その効果については満足できるものではなく、さらなる改善が求められていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、熱可塑性樹脂に、優れた透明性と物性とを付与することができる組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、環状有機リン酸エステルアルミニウム塩の割合が多い場合、熱安定性が乏しくなるとの知見を得た。かかる知見をもとに本発明者らはさらに鋭意検討した結果、環状有機リン酸エステルアルミニウム塩の割合を特定の範囲とすることで、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の組成物は、下記一般式(1)、
(一般式(1)中、R
1~R
4は各々独立に、水素原子または炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基を表し、R
5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有する組成物であって、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]であり、
前記カルボン酸ナトリウム(B)が、芳香族カルボン酸ナトリウムおよび炭素原子数10~21の脂肪酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)/前記カルボン酸ナトリウム(B)のモル比が、0.30~0.56の範囲内であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の組成物においては、前記カルボン酸ナトリウム(B)が、芳香族カルボン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムおよびリノール酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、0.001~10質量部となるように本発明の組成物を含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明の成形体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするものである。また、本発明の他の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、および、組成物を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、
前記組成物が、下記一般式(1)、
(一般式(1)中、R
1~R
4は各々独立に、水素原子または炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基を表し、R
5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有し、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]であり、
前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)/前記カルボン酸ナトリウム(B)のモル比が、0.30~0.56の範囲内であり、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)が、0.001~10質量部となるように前記組成物を含有することを特徴とするものである。さらに、本発明の他の成形体は、本発明の他の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱可塑性樹脂、特に、ポリオレフィン系樹脂に対し、優れた透明性と物性とを付与することができる組成物、これを用いた熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。本発明の組成物は、下記一般式(1)、
で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)、および、カルボン酸ナトリウム(B)を含有する組成物である。
【0018】
まず、一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩(A)(以下、(A)成分とも称す)について説明する。一般式(1)中、R1~R4は各々独立に、水素原子または炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基を表し、R5は、炭素原子数1~4のアルキリデン基を表す。
【0019】
一般式(1)中のR1~R4で表される炭素原子数1~9の直鎖または分岐を有するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、アミル基、tert-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基等が挙げられるが、本発明の組成物においては、特に、tert-ブチル基が好ましい。
【0020】
一般式(1)中のR5で表される炭素原子数1~4のアルキリデン基としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基等が挙げられるが、本発明の組成物においては、メチレン基が好ましい。
【0021】
本発明の組成物の一般式(1)で表される環状有機リン酸エステルアルミニウム塩の製造方法としては、例えば、該当する構造の環状リン酸と、アルミニウム水酸化物、アルミニウム酸化物、アルミニウムハロゲン化物、アルミニウム硫酸塩、アルミニウム硝酸塩、アルミニウムアルコキシド化合物等のアルミニウム化合物とを、必要に応じて使用される塩基性化合物等の反応剤を用いて反応させる方法や、該当する構造の環状リン酸エステルのアルカリ金属塩と、アルミニウム水酸化物、アルミニウム酸化物、アルミニウムハロゲン化物、アルミニウム硫酸塩、アルミニウム硝酸塩、アルミニウムアルコキシド化合物等のアルミニウム化合物とを、必要に応じて使用される反応剤を用いて塩交換させる方法、環状オキシ塩化リンを出発物質として、加水分解により環状リン酸を生成させ、金属化合物と反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)で表される化合物の具体例として、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明の組成物において、(A)成分は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0023】
【0024】
本発明の組成物において、(A)成分は、粒子径や粒度分布等の粒子状態によって限定されるものではないが、粒子径が微細であれば樹脂中への分散性が良化することが知られており、体積平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、体積平均粒子径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3000II)による体積で重みづけされた平均粒子径を表す。
【0025】
本発明の組成物においては、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]が、ポリオレフィン系樹脂に対して最も良好な透明性を付与できるので好ましい。
【0026】
本発明の組成物においては、(A)成分を40~65質量%含有することが好ましく、50~65質量%の範囲がより好ましい。(A)が40質量%未満の場合、あるいは、65質量%を超える場合、核剤効果が乏しかったり、熱安定性が低下したりする場合がある。
【0027】
熱可塑性樹脂に対する(A)成分の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部であり、0.006~5質量部がより好ましい。配合量が、0.001質量部未満の場合、核剤効果が得られない場合があり、10質量部を超えると、熱可塑性樹脂中への分散が困難になり、成形品の物性や外観に悪影響を及ぼす場合がある。
【0028】
次に、カルボン酸ナトリウム(B)(以下、(B)成分とも称す)について説明する。本発明の組成物において、カルボン酸ナトリウム(B)としては、芳香族カルボン酸ナトリウムおよび脂肪酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、メトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸、テノイル酸等が挙げられる。本発明の組成物においては、安息香酸、tert-ブチル安息香酸が、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0030】
脂肪酸ナトリウムに係る脂肪酸としては、炭素原子数9~30のアルキル基、アルケニル基、2つ以上の不飽和結合が導入された脂肪酸が挙げられ、脂肪酸の水素原子が水酸基で置換されていてもよく、分岐を有していてもよい。脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、4-デセン酸、4-ドデセン酸、パルミトレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の直鎖不飽和脂肪酸等が挙げられる。本発明の組成物においては、炭素原子数10~21である脂肪酸が好ましく、炭素原子数12~18がより好ましい。特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が、本発明の効果が顕著なものとなるので特に好ましい。
【0031】
本発明の組成物において、(B)成分は、35~60質量%含有することが好ましく、35~50質量%の範囲がより好ましい。(B)が35質量%未満、あるいは、60質量%を超える場合、核剤効果に乏しくなる場合がある。
【0032】
本発明の組成物は、(A)成分および(B)成分のモル比が、(A)/(B)=0.20~0.56の範囲であり、0.30~0.50の範囲がより好ましい。(A)/(B)の比率が、0.20よりも少ないと、核剤効果が不十分である場合や、初期の加熱変色が多くなる場合があり、0.56よりも多いと、熱可塑性樹脂に組成物を添加して成形した成形品の熱安定性が低下したり、本発明の効果が得られなくなる場合がある。
【0033】
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において利用可能な樹脂は、熱可塑性樹脂であれば制限はないが、本発明の効果が顕著になる観点から、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、含ハロゲン樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン、ブロックコポリマーポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン重合体、エチレン-プロピレンのブロックまたはランダム共重合体、インパクトコポリマーポリプロピレン、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィン共重合体、ポリフルオロオレフィン、さらにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらの2種以上の共重合体でもよい。
【0035】
スチレン系樹脂としては、例えば、ビニル基含有芳香族炭化水素単独、および、ビニル基含有芳香族炭化水素と、他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、(メタ)アクリロニトリル等)との共重合体が挙げられ、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、耐熱ABS樹脂、アクリレート-スチレン-アクリロニトリル(ASA)樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン(AAS)樹脂、スチレン-無水マレイン酸(SMA)樹脂、メタクリレート-スチレン(MS)樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)樹脂、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)樹脂等の熱可塑性樹脂、並びに、これらのブタジエンあるいはイソプレンの二重結合を水素添加したスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)樹脂、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)樹脂等の水素添加スチレン系エラストマー樹脂が挙げられる。
【0036】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;および、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2-オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0037】
ポリエーテル系樹脂としては、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0038】
ポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、ポリカーボネート/ASA樹脂、ポリカーボネート/AES樹脂、分岐ポリカーボネート等が挙げられる。
【0039】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタム(ナイロン6)、ウンデカンラクタム(ナイロン11)、ラウリルラクタム(ナイロン12)、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、9-アミノノナン酸、α-ピロリドン、α-ピペリドン等の重合物;ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、ノナンメチレンジアミン、メチルペンタジアミン、ウンデカンメチレンジアミン、ドデカンメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等のジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸等のジカルボン酸等のカルボン酸化合物とを共重合させて得られる共重合体、または、これらの重合体または共重合体の混合物等が挙げられる。また、デュポン社製商品名“ケブラー”、デュポン社製商品名“ノ-メックス”、株式会社帝人製商品名“トワロン”、“コーネックス”等のアラミド系樹脂が挙げられる。
【0040】
含ハロゲン樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-シクロヘキシルマレイミド共重合体等が挙げられる。
【0041】
さらに熱可塑性樹脂の例を挙げると、例えば、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂およびこれらのブレンド物を用いることができる。
【0042】
また、熱可塑性樹脂は、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等のエラストマーであってもよく、併用してもよい。
【0043】
本発明の樹脂組成物においては、これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併せて使用してもよい。また、アロイ化されていてもよい。なお、これらの熱可塑性樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず使用することができる。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、発明の効果が顕著となるからポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0045】
本発明の組成物の(A)成分および(B)成分を熱可塑性樹脂に配合する方法は、特に限定されず、公知の樹脂添加剤の配合技術を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂粉末若しくはペレットと、各成分をドライブレンドする方法、熱可塑性樹脂を重合する際に、予め重合系に添加する方法、重合途中で添加する方法、重合後に添加する方法の何れも用いることができる。また、各成分の何れかを高濃度で含有するマスターバッチを作製し、これを熱可塑性樹脂に添加する方法、各成分の一部または全成分をペレット形状に加工して熱可塑性樹脂に添加する方法が挙げられる。さらにまた、各成分の何れかを、充填剤等に含浸させたり、顆粒にしたものを熱可塑性樹脂に配合することができる。さらにまた、各成分を事前にブレンドしてから熱可塑性樹脂に添加してもよく、別々に添加するものであってもよい。
【0046】
ペレット形状に加工する方法としては、本発明の組成物とフェノール系酸化防止剤、高分子化合物、石油樹脂等のバインダーおよび必要に応じて任意で含まれる他の添加剤を混合した混合物を加熱して、融解状態のバインダーの存在下で混合することによって製造することができる。加工条件、加工機器等については何ら限定されることなく、周知一般の加工方法、加工機器を使用することができる。具体的な製造方法としては、ディスクペレッター法、押出法等が挙げられる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意で公知の樹脂添加剤(例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、その他の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、(A)成分とは異なるその他の核剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、充填剤、ハイドロタルサイト類、帯電防止剤、蛍光増白剤、顔料、染料等)を含有させてもよい。
【0048】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’-オキサミド-ビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-エチルヘキシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-エチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸およびC13-15アルキルのエステル、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(ADEKA POLYMER ADDITIVES EUROPE SAS社製商品名「AO.OH.98」)、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンズ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフォビン、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート]カルシウム塩、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンとo-キシレンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、DL-a-トコフェノール(ビタミンE)、2,6-ビス(α-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、ビス[3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル-3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[2-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナモイルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、ステアリル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド等の3-(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸誘導体等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~5質量部が好ましく、より好ましくは、0.03~3質量部である。
【0049】
リン系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピルグリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、テトラフェニル-テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2―tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、(1-メチル-1―プロペニル-3-イリデン)トリス(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9-ビス(4-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト、ポリ4,4’-イソプロピリデンジフェノールC12-15アルコールホスファイト、ビス(ジイソデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。リン系酸化防止剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは、0.01~0.5質量部である。
【0050】
チオエーテル系酸化防止剤は、例えば、テトラキス[メチレン-3-(ラウリルチオ)プロピオネート]メタン、ビス(メチル-4-[3-n-アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5-tert-ブチルフェニル)スルファイド、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ラウリル/ステアリルチオジプロピオネート、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、ジステアリル-ジサルファイドが挙げられる。チオエーテル系酸化防止剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは、0.01~0.5質量部である。
【0051】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾトリアゾリルフェノール)、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類;各種の金属塩、または金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、またはキレート類等が挙げられる。紫外線吸収剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは、0.01~0.5質量部である。
【0052】
ヒンダードアミン化合物は、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-tert-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス{4-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート等が挙げられる。ヒンダードアミン化合物を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは、0.01~0.5質量部である。
【0053】
(A)成分とは異なるその他の核剤としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、4-tert-ブチル安息香酸アルミニウム塩、および2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等のポリオール誘導体、N,N’,N”-トリス[2-メチルシクロヘキシル]-1,2,3-プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシルナフタレンジカルボキサミド、1,3,5-トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等を挙げることができる。その他の核剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、(A)成分とその他の核剤の合計量が、0.001~10質量部であることが好ましく、0.01~5質量部がより好ましい。本発明の組成物においては、ポリオール誘導体とアミド化合物を含まないことが好ましく、その他の核剤を含まないことがより好ましい。
【0054】
難燃剤は、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンテトラフェニルジホスフェート、1,3-フェニレンテトラキス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、株式会社ADEKA製商品名「アデカスタブFP-500」、「アデカスタブFP-600」、「アデカスタブFP-800」の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸(1-ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2-アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、リン含有ビニルベンジル化合物および赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2-ジブロモ-4-(1,2-ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレンおよび2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、および、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等を挙げることができる。これら難燃剤はフッ素樹脂等のドリップ防止剤や多価アルコール、ハイドロタルサイト等の難燃助剤と併用することが好ましい。難燃剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、より好ましくは、10~70質量部である。
【0055】
ハイドロタルサイト類は、天然物や合成物として知られるマグネシウム、アルミニウム、水酸基、炭酸基および任意の結晶水からなる複合塩化合物であり、マグネシウムまたはアルミニウムの一部をアルカリ金属や亜鉛等他の金属で置換したものや水酸基、炭酸基を他のアニオン基で置換したものが挙げられ、具体的には、例えば、下記一般式(2)で表されるハイドロタルサイトの金属をアルカリ金属に置換したものが挙げられる。また、Al―Li系のハイドロタルサイト類としては、下記一般式(3)で表される化合物も用いることができる。
【0056】
ここで、一般式(2)中、x1およびx2はそれぞれ下記式、
0≦x2/x1<10,2≦x1+x2≦20
で表される条件を満たす数を表し、pは0または正の数を表す。
【0057】
ここで、一般式(3)中、A
q-は、q価のアニオンを表し、pは0または正の数を表す。また、これらハイドロタルサイト類における炭酸アニオンは、一部を他のアニオンで置換したものでもよい。
【0058】
ハイドロタルサイト類は、結晶水を脱水したものであってもよく、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックス等で被覆されたものであってもよい。
【0059】
ハイドロタルサイト類は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。ハイドロタルサイト類の合成方法としては、特公昭46-2280号公報、特公昭50-30039号公報、特公昭51-29129号公報、特公平3-36839号公報、特開昭61-174270号公報、特開平5-179052号公報等に記載されている公知の方法が挙げられる。また、前記ハイドロタルサイト類は、その結晶構造、結晶粒子等に制限されることなく使用することができる。ハイドロタルサイト類を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~5質量部が好ましく、より好ましくは、0.01~3質量部である。
【0060】
滑剤は、成形体表面に滑性を付与し傷つき防止効果を高める目的で加えられる。滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、ブチルステアレート、ステアリルアルコール、ステアリン酸モノグリセライド、ソルビタンモノパルミチテート、ソルビタンモノステアレート、マンニトール、ステアリン酸、硬化ひまし油、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。滑剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましく、より好ましくは、0.03~0.5質量部である。
【0061】
帯電防止剤は、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤、ポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤が挙げられる。これら帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。帯電防止剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.03~2質量部が好ましく、より好ましくは、0.1~0.8質量部である。
【0062】
蛍光増白剤とは、太陽光や人工光の紫外線を吸収し、これを紫~青色の可視光線に変えて輻射する蛍光作用によって、成形体の白色度や青味を助長させる化合物である。蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾール系化合物C.I.Fluorescent Brightner184;クマリン系化合物C.I.Fluorescent Brightner52;ジアミノスチルベンジスルフォン酸系化合物C.I.Fluorescent Brightner24、85、71等が挙げられる。蛍光増白剤を用いる場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.00001~0.1質量部が好ましく、より好ましくは、0.00005~0.05質量部である。
【0063】
顔料は、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリーン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、29、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、15、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0064】
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0065】
本発明の成形体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の成形方法を用いて成形することができる。例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等を用いて成形品を得ることが可能である。
【0066】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途としては、バンパー、ダッシュボード、インパネ等自動車材料、冷蔵庫、洗濯機、掃除機等のハウジング用途、電気・機械部品、食器、バケツ、入浴用品等の家庭用品、玩具、文具等の雑貨品、熱や放射線等により滅菌されるディスポーザブル注射器、輸液・輸血セット、採血器具等の医療用器具類、衣料ケースや衣料保存用コンテナ等の各種ケース類;食品を熱充填するためのカップ、レトルト食品用、電子レンジ用、飲料用、調味料用、化粧品用、医薬品用、洗髪用のボトルやパック等の包装容器およびキャップ、米、パン、漬物等の食品用ケース等の成形品、タンク、ボトル、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0068】
〔実施例1-1~1-5、参考例1、比較例1-1~1-9〕
熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン(メルトフローレート 8g/10min;ISO規格1133準拠 2.16kg×230℃)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.1質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製商品名「DHT-4A」)0.05質量部、および、表1~表3記載の組成物を配合し、ヘンシェルミキサーで、1000rpm×1min混合後、二軸押出機を用いて、230℃の押出温度で造粒した。造粒したペレットは、60℃で8時間乾燥させた後、下記に記載の条件で曲げ弾性率および荷重たわみ温度(HDT)を測定した。これらの結果について、それぞれ表1~表3に示す。なお表中の各成分の単位はすべて質量部である。
【0069】
〔実施例2-1~2-2、比較例2-1~2-8〕
熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン(メルトフローレート 8g/10min;ISO規格1133準拠 2.16kg×230℃)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.1質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製商品名「DHT-4A」)0.05質量部および、表4、表5記載の組成物を配合し、ヘンシェルミキサーで、1000rpm×1min混合後、二軸押出機を用いて、230℃の押出温度で造粒した。造粒したペレットは、60℃で8時間乾燥させた後、下記に記載の条件でHazeを測定した。これらの結果について、それぞれ表4、表5に示す。なお表中の各成分の単位はすべて質量部である。
【0070】
〔実施例3-1~3-6、参考例3、比較例3-1~3-7〕
熱可塑性樹脂として、ブロックコポリマー(メルトフローレート 11.5g/10min;ISO規格1133準拠 2.16kg×230℃)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム 0.05質量部、架橋剤あるいは過酸化物{2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン}0.023質量部、および表6、表7記載の組成物を配合し、ヘンシェルミキサーで、1000rpm×1min混合後、二軸押出機を用いて、230℃の押出温度で造粒した。造粒したペレットは、60℃で8時間乾燥させた後、下記に記載の条件で曲げ弾性率および荷重たわみ温度(HDT)を測定した。なお、造粒したペレットのメルトフローレートは、40g/10minであった。これらの結果について、それぞれ表6、表7に示す。なお表中の各成分の単位はすべて質量部である。
【0071】
〔実施例4-1~4-4、比較例4-1、4-2〕
熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン(メルトフローレート 8g/10min;ISO規格1133準拠 2.16kg×230℃)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.1質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製商品名「DHT-4A」)0.05質量部、および表8記載の組成物を配合し、ヘンシェルミキサーで、1000rpm×1min混合後、二軸押出機を用いて、230℃の押出温度で造粒した。造粒したペレットは、60℃で8時間乾燥させた後、熱安定性の評価を行った。これらの結果について、それぞれ表8に示す。なお表中の各成分の単位はすべて質量部である。
【0072】
〔実施例5-1~5-2、参考例5、比較例5-1~5-4〕
熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン(メルトフローレート 8g/10min;ISO規格1133準拠 2.16kg×230℃)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.05質量部、および、表9の組成物を配合し、ヘンシェルミキサーで、1000rpm×1min混合後、二軸押出機を用いて、230℃の押出温度で造粒した。造粒したペレットは、60℃で8時間乾燥させた後、下記に記載の条件でHaze、曲げ弾性率、荷重たわみ温度(HDT)、結晶化温度および半結晶化時間を測定した。これらの結果について、表9に示す。なお表中の各成分の単位はすべて質量部である。
【0073】
<曲げ弾性率>
上記ペレットを用い、射出成形機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、金型温度50℃、樹脂温度200℃の条件で射出成形し、寸法80mm×10mm×4mmの試験片を作製し、23℃の恒温機で48時間以上静置した後、島津製作所株式会社製曲げ試験機「AG-IS」を用いて、ISO178に準拠し、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0074】
<HDT(荷重たわみ温度)>
上記ペレットを用い、射出成形機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、金型温度50℃、樹脂温度200℃の条件で射出成形し、寸法80mm×10mm×4mmの試験片を作製し、23℃の恒温機で48時間以上静置した後、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠してHDT(℃)を測定した。
【0075】
<Haze>
上記ペレットを用い、射出成形機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、金型温度50℃、樹脂温度200℃の条件で射出成形し、寸法60mm×60mm×2mmの試験片を作製し、23℃の恒温機で48時間以上静置した後、ヘイズ・ガード2〔BYK Additives&Instruments製〕にて、ISO14782に準拠してHaze(%)を測定した。
【0076】
<熱安定性>
上記ペレットを用い、射出成形機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、金型温度50℃、樹脂温度200℃の条件で射出成形し、寸法60mm×30mm×2mmの試験片を作製し、成形後、直ちに23℃の恒温機で48時間放置後、150℃のオーブンに試験片を静置し、積分球分光光度計(Color-Eye 7000A;X-Rite社製)を用いて、経時で、試験片のY.I.を測定し、オーブンに入れる前の初期のY.I.との差をΔY.I.として、試験片の熱安定性を評価した。
【0077】
<結晶化温度>
上記ペレットを少量切り取り、示差走査熱量測定器(ダイアモンド・パーキエルマー社製)を用いて結晶化温度を測定した。測定は、室温から50℃/minの速度で230℃まで昇温し、10分間保持後、-10℃/minの速度で50℃まで冷却して得られたチャートにおいて、吸熱反応がピークトップとなる温度を結晶化温度とした。
【0078】
<半結晶化時間>
上記ペレットを少量切り取り、示差走査熱量測定機(ダイアモンド;パーキンエルマー社製)にて、50℃/minの速度で230℃まで加熱し、10分間保持後-200℃/minの速度で135℃まで冷却し、135℃に到達後はその温度を15分間保持し、結晶化に要する吸熱エンタルピーの熱量が半分となる時間を求め、これを半結晶化時間とした。
【0079】
【表1】
(A)-1:アルミニウムヒドロキシビス[2,2’メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート](分子量:1015.23)
(B)-1:ステアリン酸ナトリウム(分子量:306.46)
(b)-1:ミリスチン酸リチウム(分子量:234.304)
【0080】
【表2】
比較核剤1:株式会社ADEKA製 商品名「アデカスタブNA-21」
比較核剤2:株式会社ADEKA製 商品名「アデカスタブNA-11」
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
(A)成分と、(B)成分とのモル比、(A)/(B)が、0.20~0.56の範囲外である場合、比較例1-2~1-4、比較例3-2~3-4および比較例5-2より、試験片の剛性や耐熱性に乏しく、比較例2-2~2-3および比較例5-2より、試験片の透明性改善効果に乏しいことが確認できた。また、比較例4-1、4-2より、(A)成分と、(B)成分とのモル比、(A)/(B)が、0.56を超える場合、ΔY.I.の上昇が顕著であり、430時間後には試験片が脆化し、熱安定性に乏しいことが確認できた。また、比較例1-7~1-9および比較例2-6~2-8より、(B)成分とは異なるカルボン酸金属塩を用いた場合、(A)/(B)=0.20~0.56の条件を満たしていても、透明性と物性は十分なものではなかった。
【0089】
これらに対し、(A)/(B)が、0.20~0.56の範囲内である本発明の熱可塑性樹脂組成物の試験片は、透明性と物性に優れ、熱安定性も良好であることが確認できた。