(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175836
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20231205BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20231205BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20231205BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20231205BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231205BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20231205BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/204 401F
H01M10/6555
H01M10/653
H01M50/289 101
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/204 401Z
H01M10/615
H01M10/6554
H01M10/658
H01M10/613
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150883
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2023511955の分割
【原出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021100880
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健一
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、温度上昇による性能低下を抑制でき、かつ、不燃性にも優れた二次電池を提供することである。
【解決手段】本発明は、正極端子を有する正極と、負極端子を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介挿されたセパレータと、該セパレータに保持された電解質とを備える電池積層体を含む2以上の単電池と、不燃層を有する第2蓄熱シートとを備え、前記第2蓄熱シートが、前記2以上の単電池の間に配置されていることを特徴とする二次電池に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子を有する正極と、負極端子を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介挿されたセパレータと、該セパレータに保持された電解質とを備える電池積層体を含む2以上の単電池と、不燃層を有する第2蓄熱シートとを備え、
前記蓄熱シートは、融点が15℃超70℃以下である蓄熱材を1種又は2種以上含み、
前記第2蓄熱シートが、前記2以上の単電池の間に配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
正極端子を有する正極と、負極端子を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介挿されたセパレータと、該セパレータに保持された電解質とを備える電池積層体を含む2以上の単電池と、不燃層を有する第2蓄熱シートとを備え、
前記第2蓄熱シートは、蓄熱材として脂肪酸エステルを1種又は2種以上含み、
前記第2蓄熱シートが、前記2以上の単電池の間に配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
前記蓄熱材として脂肪酸エステルを1種又は2種以上含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記蓄熱材が、外殻で被覆された被覆粒子である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第2蓄熱シートは、隣り合う前記単電池同士を隔離するように配置されている請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記単電池は、前記正極端子および前記負極端子が露出した状態で、前記第2蓄熱シートで被覆されている請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項7】
前記不燃層がアルミニウム、不燃紙または鉄である請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第2蓄熱シートの厚さは、100~6000μmであり、かつ、前記不燃層の厚さは3~1000μmである請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項9】
前記単電池及び前記第2蓄熱シートが、ケースに収納された二次電池であって、前記ケースの内面または外面に、前記第2蓄熱シートとは異なる第1蓄熱シートが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1蓄熱シートに含まれる第1蓄熱材の融点が-30℃以上15℃以下である請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1蓄熱シートは、前記第1蓄熱材を含有する発泡体で構成されている請求項10に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、一定の温度領域(例えば15~35℃)を外れると、性能が低下する傾向にある。例えば、0℃以下の低温になると、起電力が極端に低下して、起動や充電に支障を来たす場合がある。このため、停止から次の起動までの一定時間、電池を保温可能な保温機構を備えることが望まれている。
【0003】
また、高速充電時や高出力放電時の発熱によって、電池の温度が上昇すると、電解質の不安定化や、電池の短寿命化を招き、大きな性能劣化に繋がる場合がある。そして、80℃を超えると、電池の破損の危険性も生じる。このため、冷却機構が必須となるが、大規模な装置等が必要になることから、電池の大型化を招く。さらに、今後、超高速充電化が進むにつれて、より発熱量が高まることが予測され、電力だけに頼らない昇温抑制方法の開発が求められている。
【0004】
これらの要望に対応すべく、例えば、特許文献1には、単電池同士の間に蓄熱シートを挟持した構成の車載用組電池(二次電池)が開示されている。
【0005】
しかし、蓄熱シートに含まれる蓄熱材は、一般に可燃性のものが多いため、万が一、二次電池を構成する単電池の異状等によって破損し発火等した場合に、燃え広がりやすいことが懸念された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、二次電池の性能低下の要因となる単電池の温度上昇を抑制でき、かつ、万が一の事態が発生した場合であっても、燃え広がりを防止可能なレベルの不燃性を備えた二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、正極端子を有する正極と、負極端子を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介挿されたセパレータと、該セパレータに保持された電解質とを備える電池積層体を含む2以上の単電池と、不燃層を有する第2蓄熱シートとを備え、前記第2蓄熱シートが、前記2以上の単電池の間に配置されていることを特徴とする二次電池によって、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次電池の温度上昇に起因した性能低下を抑制でき、かつ、単電池の異状等によって破損し発火等した場合であっても、二次電池の燃え広がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の二次電池の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1中のA-A線に沿って切断した単電池の部分断面図である。
【
図4】本発明の二次電池の第2実施形態を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【
図5】昇温抑制の模擬実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二次電池100は、正極端子を有する正極と、負極端子を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介挿されたセパレータと、該セパレータに保持された電解質とを備える電池積層体を含む2以上の単電池1と、不燃層99を有する第2蓄熱シート30とを備え、前記第2蓄熱シート30が、前記2以上の単電池1の間に配置されていることを特徴とする。この第2蓄熱シート30は、第2蓄熱材を含有する。かかる構成により、二次電池100(単電池1)の充電時等における発熱を第2蓄熱材が吸収することで、単電池1の温度の上昇等を防止することができる。よって、単電池1の劣化、発火等を未然に防止することができる。また、前記構成により、万が一、発火などの異状が発生した場合であっても、燃え広がりを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の二次電池100は、前記第2蓄熱シート30が、隣り合う前記単電池1同士を隔離するように配置されていることが好ましい。かかる構成により、二次電池100(単電池1)の充電時等における発熱を第2蓄熱材が吸収することで、単電池1の温度の上昇等を防止することができる。よって、単電池1の劣化、発火等を未然に防止することができる。また、前記構成により、万が一、1つの単電池1で発火などの異状が発生した場合であっても、燃え広がりをより効果的に抑制することができるため、他の単電池1の発火等を抑制することができる。
【0013】
本実施形態では、各単電池1は、正極タブ29および負極タブ39が露出した状態で、その周囲が第2蓄熱シート30で被覆されていることが好ましい。これにより、二次電池100(単電池1)の充電時等において、単電池1の温度の上昇等をより一層効果的に抑制することができる。また、前記構成により、万が一、発火などの異状が発生した場合であっても、燃え広がりをより効果的に抑制することができる。
【0014】
第2蓄熱材の融点の具体的な値は、15℃超70℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることがさらに好ましく、35℃以上45℃以下であることが特に好ましい。かかる範囲の融点を有する第2蓄熱材を使用することにより、二次電池100(単電池1)の充電時等における発熱をより良好に吸収することができる。
【0015】
第2蓄熱材としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸エステル、アルカン(パラフィン)等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、第2蓄熱材としては、無機蓄熱材を使用することもできる。
【0016】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル等が挙げられる。中でも、脂肪酸エステルは、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチルが好ましく、ステアリン酸メチルがより好ましい。
【0017】
アルカンとしては、例えば、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン等が挙げられる。中でも、アルカンは、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンが好ましく、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンがより好ましく、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンがさらに好ましい。
【0018】
かかる第2蓄熱材は、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂のような有機材料からなる外殻で被覆された被覆粒子の形態であることが好ましい。これにより、相変化による溶融時の第2蓄熱材の染み出し等を防止することができる。
【0019】
この場合、被覆粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10~1000μmであることが好ましく、50~500μmであることがより好ましい。
【0020】
なお、一次粒子の平均粒子径が上記範囲であることが好ましいが、平均粒子径が1~50μm(好ましくは2~10μm)の一次粒子が凝集して二次粒子を形成し、この二次粒子の平均粒子径が上記範囲であってもよい。
【0021】
被覆粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA-950V2」)により測定して、得られたメジアン径(体積累積分布の50%に相当する粒径:50%粒径)とすることができる。
【0022】
第2蓄熱シート30は、第2蓄熱材(被覆粒子)を保持するとともに、第2蓄熱材同士の間を結合する樹脂を含有することが好ましい。かかる樹脂が第1蓄熱材同士の間を、三次元網目状に結合することにより、空隙部を有する第2蓄熱シート30を作製し易い。
【0023】
第2蓄熱材は、その含水率が3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましく、1.2質量%以下であることが特に好ましい。第2蓄熱材の含水率を上記範囲とすることにより、得られる第2蓄熱シート30の微細な膨れや凹み等の発生を抑制し易くなり、好適な外観を有する第2蓄熱シート30を得易くなる。
【0024】
第2蓄熱シート30は、マトリクスを形成する樹脂を含有することが好ましい。
【0025】
かかる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、第2蓄熱シート30の成形性に優れることから、樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合、スチレン・ブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、1,2-ポリブタジエン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。中でも、低温下での成形性や第2蓄熱材の分散性を高め易いことから、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0027】
塩化ビニル系樹脂を使用すれば、その粒子を使用した樹脂組成物を調製して、ゾルキャスト膜を形成することで、低温下で第2蓄熱シート30の作製が可能となるため好ましい。樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂粒子と可塑剤との混合物中に、第2蓄熱材が分散されたペースト状の組成物である。
【0028】
塩化ビニル系樹脂粒子の平均粒子径は、0.01~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましい。樹脂組成物中では、塩化ビニル系樹脂粒子は、一次粒子の状態で直接分散していても、一次粒子が球状の二次粒子として凝集した状態で分散していてもよい。
【0029】
また、平均粒子径の異なる塩化ビニル樹脂粒子が混合されて、ピークが2以上存在する粒度分布を有してもよい。粒子径は、レーザー法等により測定することができる。
【0030】
塩化ビニル系樹脂粒子の形状は、好適な流動性を発現し易く、熟成粘度変化が小さいことから、略球形形状であることが好ましい。
【0031】
塩化ビニル系樹脂粒子は、乳化重合、懸濁重合により製造することで、球形形状にし易く、また、粒度分布を制御し易いため好ましい。
【0032】
塩化ビニル系樹脂の重合度は、500~4000であることが好ましく、600~2000であることがより好ましい。また、上記範囲とすることにより、樹脂組成物の回転粘度計の粘度や定常せん断粘度を好適な範囲に調整し易くなる。
【0033】
塩化ビニル系樹脂粒子は、市販品を適宜に使用することができる。市販品の具体例としては、例えば、ZEST PQ83、PWLT、PQ92、P24Z等(いずれも、新第一塩ビ株式会社製)や、PSL-675、685等(いずれも、株式会社カネカ製)が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂を使用する場合、第2蓄熱シート30中の熱可塑性樹脂の含有量は、10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、30~60質量%であることがさらに好ましい。かかる範囲とすることにより、第2蓄熱シート30中において樹脂のマトリクスを好適に形成することでき、柔軟性と強靭性とを有する第2蓄熱シート30を形成し易くなる。また、上記範囲とすることにより、第2蓄熱シート30の貯蔵弾性率を好適な範囲に調整し易くなる。柔軟性に優れた第2蓄熱シート30は、例えば
図4に示すような円筒状の単電池1の周りを、第2蓄熱シート30で被覆するような場合に、第2蓄熱シート30を湾曲しやすく、前記単電池1を被覆しやすい。
【0035】
また、熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂組成物の良好な塗工性や成形性を確保し易いことから、樹脂組成物には、可塑剤を混合することが好ましい。
【0036】
可塑剤としては、エポキシ系可塑剤、メタクリレート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、脂肪族ジエステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、安息香酸系可塑剤、フタル酸系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
可塑剤には、市販品を適宜使用することができる。
【0038】
エポキシ系可塑剤の市販品としては、DIC社製 モノサイザーW-150;新日本理化社製 サンソサイザー E-PS、E-PO、E-4030、E-6000、E-2000H、E-9000H;ADEKA社製 アデカサイザー O-130P、O-180A、D-32、D-55、花王社製 カポックス S-6等が挙げられる。
【0039】
ポリエステル系可塑剤の市販品としては、DIC社製 ポリサイザーW-2050、W-2310、W-230H;ADEKA社製 アデカサイザー PN-7160、PN-160、PN-9302、PN-150、PN-170、PN-230、PN-7230、PN-1010、三菱化学社製 D620、D621、D623、D643、D645、D620N;花王社製 HA-5等が挙げられる。
【0040】
トリメリット酸系可塑剤の市販品としては、DIC社製 モノサイザーW-705、ADEKA社製 アデカサイザーC-9N、三菱化学社製 TOTM、TOTM-NB等が挙げられる。
【0041】
安息香酸系可塑剤の市販品としては、DIC社製 モノサイザーPB-3A、三菱化学社製 JP120等が挙げられる。
【0042】
第2蓄熱材や可塑剤の染み出しを抑制し易いことから、上記の中でも、特に低温でゲル化し得る可塑剤を使用することが好ましい。
【0043】
かかる可塑剤のゲル化終了温度は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましく、110℃以下であることが最も好ましい。ゲル化終了温度は、ゲル化膜の光透過性が一定となる温度とすることができる。
【0044】
低温成形性の良好な可塑剤としては、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、安息香酸系可塑剤等が挙げられる。これらの低温成形性の良好な可塑剤は、好適な蓄熱性とともに、樹脂のマトリクスに対して強靭性を付与し易いため好ましい。
【0045】
また、耐熱性と低温成形性との観点からは、エポキシ系可塑剤およびポリエステル系可塑剤を特に好ましく使用することができる。
【0046】
ゲル化終了温度は、具体的には、ペースト用塩化ビニル系樹脂(重合度:1700)と上記可塑剤と熱安定剤(Ca-Zn系)とを質量比100/80/1.5で混合した組成物を調製し、この組成物をガラスプレートとプレパラートとの間に挟み込み、その後、5℃/分の昇温速度で昇温し、光透過性の変化を顕微観察用ホットステージ(Metter
800)を用いて観察して、光透過性が一定となる温度とすることができる。
【0047】
可塑剤の25℃における粘度は、1500mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることがさらに好ましく、300mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0048】
かかる範囲の粘度を有する可塑剤を使用すれば、第2蓄熱シート30を作製するための樹脂組成物の粘度を低く抑えることができるため、第2蓄熱シート30における第2蓄熱材の充填率を高めることができる。
【0049】
また、この場合、樹脂組成物の回転粘度計の粘度や定常せん断粘度を好適な範囲に調整し易くなる。
【0050】
また、可塑剤の重量平均分子量は、200~3000であることが好ましく、300~1000であることがより好ましい。この場合、可塑剤自身が染み出し難く、かつ樹脂組成物の粘度を低く抑えることができる。このため、第2蓄熱シート30における第2蓄熱材の充填率を高めることができる。
【0051】
また、この場合、樹脂組成物の回転粘度計の粘度や定常せん断粘度を好適な範囲に調整し易くなる。
【0052】
重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPC測定は、以下の条件にて測定することができる。
【0053】
<重量平均分子量の測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製ガードカラム「HLC-8330」
カラム :東ソー株式会社製「TSK SuperH-H」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器 :RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
カラム温度:40℃
展開溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :0.35mL/分
試料 :樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターにより濾過して得られた濾過物(100μL)
標準試料 :上記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いる。
【0054】
<標準試料:単分散ポリスチレン>
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0055】
また、第2蓄熱材が被覆粒子である場合、上記可塑剤の中でも、第2蓄熱材とのHSP距離が6以上の可塑剤を使用することが好ましい。かかる可塑剤を使用することにより、高温下での第2蓄熱シート30からの脱離成分の発生を抑制することできる。また、第2蓄熱シート30は、高温下でも体積収縮が生じ難い好適な耐熱性を実現し易くなる。
【0056】
ここで、蓄熱材を含有する蓄熱シートにおいては、高温下で大きく体積収縮を生じる場合がある。第2蓄熱材と可塑剤とのHSP距離を上記範囲とすることにより、高温下で多量の脱離成分を生じる要因となる可塑剤の第2蓄熱材への取り込みを抑制することができる。その結果、第2蓄熱シート30の高温下での体積収縮を抑制し易くなり、好適な耐熱性を実現し易くなる。
【0057】
このHSP距離は、好適な耐熱性を得やすいことから、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、HSP距離の上限は、特に限定されないが、好適な相溶性や成形性を得易いことから、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましい。
【0058】
HSP距離とは、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いた物質同士の間の溶解性を表す指標である。ハンセン溶解度パラメータは、溶解性を多次元(典型的には、三次元)のベクトルで表すものであり、このベクトルは、分散項、極性項、水素結合項で表すことができる。そして、ベクトルの類似度を、ハンセン溶解度パラメータの距離(HSP距離)として表す。
【0059】
ハンセン溶解度パラメータは、各種文献において参考となる数値が提示されており、例えば、Hansen Solubility Parameters:A User’s
Handbook(Charles Hansen等、2007、第2版)等が挙げられる。また、市販のソフトウェア、例えば、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)を用いて、物質の化学構造に基づいてハンセン溶解度パラメータを算出することもできる。なお、算出は、溶媒温度を25℃として行う。
【0060】
可塑剤と第2蓄熱材との好ましい組み合わせとしては、例えば、以下の組み合わせが挙げられる。
【0061】
アクリル系樹脂の外殻を有する第2蓄熱材(被覆粒子)を使用する場合、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等を好ましく使用することができる。
【0062】
また、メラミン系樹脂の外殻を有する第2蓄熱材(被覆粒子)を使用する場合、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、安息香酸系可塑剤等を好ましく使用することができる。
【0063】
特に、エポキシ系可塑剤は、第2蓄熱シート30に対して、耐熱性等の各種特性を好適に付与し得るため好ましい。
【0064】
また、第2蓄熱シート30において、樹脂のマトリクスを好適に形成し易いことから、使用する熱可塑性樹脂と可塑剤とのHSP距離は、15以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。また、HSP距離の下限は、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。
【0065】
第2蓄熱材として被覆粒子を使用する場合、第2蓄熱材に対して可塑剤を混合した際のJIS K5101-13-1に準じて測定される第2蓄熱材100質量部に対する可塑剤の吸収量が150質量部以下の可塑剤を好適に使用することができる。
【0066】
かかる可塑剤を使用することにより、高温下での第2蓄熱シート30からの脱離成分の発生を抑制でき、高温下でも体積収縮が生じ難い好適な耐熱性を実現できる。
【0067】
可塑剤の吸収量は、好適な耐熱性を得易いことから、140質量部以下であることが好ましく、135質量部以下であることがより好ましく、130質量部以下であることがさらに好ましい。また、吸収量の下限は、特に限定されないが、好適な相溶性や成形性を得易いことから、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。可塑剤の吸収量が上記範囲であることにより、樹脂組成物の貯蔵弾性率を好適な範囲に調整し易くなる。
【0068】
可塑剤の吸収量は、JIS K5101-13-1の吸油量の測定方法に準じて測定される。具体的には、予想される吸収量に応じて、1~20gを秤量した第2蓄熱材を試料としてガラス板上に設置し、可塑剤をビュレットから一回に4~5滴ずつ徐々に加える。その都度、鋼製のパレットナイフで試料に練り込む。この操作を繰り返し、可塑剤と試料との塊ができるまで滴下を続ける。以後、1滴ずつ滴下し完全に混練する操作を繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになったところを終点とし、このときの吸収量を可塑剤の吸収量とする。
【0069】
なお、終点は、ペーストが割れたりぼろぼろになったりせず広げることができ、かつ、測定板に軽く付着する程度とする。
【0070】
第2蓄熱シート30としては、樹脂と第2蓄熱材とを含有する樹脂組成物を支持体上に塗布し加熱し得られる塗工膜の一方の面または両方の面に不燃層99を有するシートを使用することができる。前記第2蓄熱シート30としては、前記塗工膜の一方の面側に不燃層99を有するものを使用することが好ましい。
【0071】
第2蓄熱シート30を構成する前記塗工膜は、樹脂と第2蓄熱材とを含有する樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を支持体上に塗布して塗工膜を形成した後、塗工膜の温度が150℃以下の温度で加熱することにより作製することができる。
【0072】
支持体は、第2蓄熱シート30を剥離可能で、加熱工程の温度での耐熱性を示すフィルム状基材を好適に使用することができる。
【0073】
フィルム状基材としては、例えば、各種の工程フィルムとして使用される樹脂フィルムを好適に使用することができる。かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムのようなポリエステル樹脂フィルム等が挙げられる。
【0074】
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、取扱い性や入手の容易性の観点から、25~100μmであることが好ましい。
【0075】
樹脂フィルムは、表面が剥離処理されているのが好ましい。剥離処理に用いられる剥離処理剤としては、例えば、アルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0076】
樹脂組成物を支持体上に塗布するキャスト成膜は、ロールナイフコーター、リバースロールコーター、コンマコーターのような塗工機を使用して行うことができる。中でも、支持体上に樹脂組成物を送り出し、ドクターナイフ等により、一定の厚みの塗工膜を形成する方法を好ましく使用することができる。
【0077】
また、形成された塗工膜は、加熱や乾燥によるゲル化や硬化により、シート状に成形することができる。
【0078】
加熱時の塗工膜の温度(加熱温度)は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。塗工膜の温度を上記範囲に設定することにより、第2蓄熱材の熱による破壊(分解、劣化)を好適に抑制することができる。
【0079】
加熱時間は、ゲル化速度等に応じて適宜調整すればよいが、10秒~10分程度であることが好ましい。
【0080】
また、塗工膜に対しては、加熱とともに、適宜、風乾等の乾燥を行ってもよい。
【0081】
樹脂組成物が溶媒を含有する場合、上記加熱工程において、溶媒の除去を同時に行ってもよいが、上記加熱の前に、予備乾燥を行うことも好ましい。
【0082】
第2蓄熱シート30は、支持体から剥離されて使用される。この剥離は、適宜、好適な手法で行えばよい。
【0083】
第2蓄熱シート30を形成する樹脂組成物(塗工液)は、樹脂および第2蓄熱材に応じて適宜混合して調製すればよい。例えば、樹脂として塩化ビニル系樹脂を使用する場合、塩化ビニル系樹脂粒子を含むビニルゾル塗工液を用いて、ゾルキャストにより塗工膜を形成する方法が好ましい。この場合、ミキサー等による混練や押出成形等を用いることなく、低温下での塗工膜の成形が可能となる。このため、第2蓄熱材の破壊が生じ難く、得られる第2蓄熱シート30からの第2蓄熱材の染み出し等が生じ難い。
【0084】
ビニルゾル塗工液は、適宜、溶媒を含有することもできる。溶媒としては、塩化ビニル系樹脂のゾルキャスト法にて使用される溶媒を適宜使用することができる。中でも、溶媒としては、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸ブチルのようなエステル類、グリコールエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0085】
上記溶媒は、常温で樹脂をわずかに膨潤して分散を助長し易く、また、加熱工程で溶融ゲル化を促進し易いため好ましい。
【0086】
また、上記溶媒とともに希釈溶媒を使用してもよい。希釈溶媒としては、樹脂を溶解せず、分散溶媒の膨潤性を抑制する溶媒が好適に使用される。このような希釈溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素、テルペン系炭化水素等が挙げられる。
【0087】
ビニルゾル塗工液には、塩化ビニル系樹脂の脱塩化水素反応を主とする分解劣化、着色を抑制するために、熱安定剤を混合することできる。熱安定剤としては、例えば、カルシウム/亜鉛系安定剤、オクチル錫系安定剤、バリウム/亜鉛系安定剤等が挙げられる。ビニルゾル塗工液中の熱安定剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましい。
【0088】
ビニルゾル塗工液には、上記以外の成分として、減粘剤、分散剤、消泡剤のような添加剤を、必要に応じて混合してもよい。これら添加剤の含有量は、それぞれ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましい。
【0089】
ビニルゾル塗工液の塗工時の粘度は、目的とする第2蓄熱シート30の厚さや、塗工条件等により適宜調整すればよいが、良好な塗工性を得易いことから、1000mPa・s以上であることが好ましく、3000mPa・s以上であることがより好ましく、5000mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、この粘度の上限は、70000mPa・s以下であることが好ましく、50000mPa・s以下であることがより好ましく、30000mPa・s以下であることがさらに好ましく、25000mPa・s以下であることが特に好ましい。なお、塗工液の粘度は、B型粘度計にて測定することができる。
【0090】
上記塩化ビニル系樹脂粒子および第2蓄熱材を含有するビニルゾル塗工液のゾルキャスト膜からなる第2蓄熱シート30は、製造時に第2蓄熱材にシェアや圧力がかからないため第2蓄熱材の破壊が生じ難い。したがって、樹脂系の材料を使用しながらも第2蓄熱材の染み出しが生じ難い。また、第2蓄熱材による蓄熱性を有するとともに、良好な柔軟性を有する第2蓄熱シート30が得られる。さらに、容易に他の層との積層や加工も可能であることから、二次電池100へ好適に適用される。
【0091】
第2蓄熱シート30中の第2蓄熱材の含有量は、好適な蓄熱性を実現し易いことから、10~90質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0092】
第2蓄熱シート30中の可塑剤の含有量は、5~75質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。この場合、樹脂組成物の良好な塗工適性や成形性を得易くなる。
【0093】
また、熱可塑性樹脂に対する可塑剤の量比は、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に調整し易いことから、熱可塑性樹脂100質量部に対して可塑剤が30~150質量部であることが好ましく、40~130質量部であることがより好ましく、50~120質量部であることがさらに好ましい。
【0094】
第2蓄熱シート30の厚さは、特に限定されないが、100~6000μmであることが好ましく、300~4000μmであることがより好ましく、500~3000μmであることがさらに好ましい。この場合、隣り合う単電池1同士での熱の移動を良好に防止しつつ、第2蓄熱シート30の蓄熱性より向上させることができる。
【0095】
また、本発明の二次電池で使用する第2蓄熱シート30は、不燃層99を有する。
【0096】
前記不燃層99は、前記第2蓄熱シート30の片面側または両面側のいずれかを構成していることが好ましい。
【0097】
前記不燃層99としては、例えば不燃紙、アルミニウム、鉄、無機材料等を使用することができ、アルミニウムまたは不燃紙を使用することが好ましく、アルミニウムを使用することが、優れた不燃性と熱拡散効果とを両立するうえでより好ましい。前記不燃層99としては、不燃紙等の紙状のものや、アルミニウム箔などの薄いフィルムまたはシート状のものを使用することができる。
【0098】
前記不燃紙としては、不燃性を有するものであれば特に限定しないが、例えば、紙に難
燃剤を塗布、含浸、内添しているものを使用できる。難燃剤としては、水酸化マグネシウ
ム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、リン酸塩、ホウ酸塩、ステファミン酸塩等の塩基性化合物、ガラス繊維等が例示できる。
【0099】
前記不燃層99は、厚さ3~1000μmの範囲であることが好ましく、3~300μmの範囲であることが、コンパクトに組込むうえでより好ましい。例えば
図4に示すような円筒状の単電池1の周りを、第2蓄熱シート30で被覆するような場合に、第2蓄熱シート30を湾曲しやすく、ケース内に単電池1を最適な数だけ設置することができる。
【0100】
前記不燃層99として前記不燃紙を用いる場合、前記第2蓄熱シート30は、前記樹脂と第2蓄熱材とを用いて得られたシート状物の片面または両面に、前記不燃紙を貼付することによって得ることができる。また、前記第2蓄熱シート30は前記シート状物の片面または両面に、不燃性のコーティング材料を塗布し不燃層を形成することによって得ることもできる。
【0101】
第2蓄熱シート30の引張強さは、0.1MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、0.6MPa以上であることがさらに好ましく、1MPa以上であることが特に好ましい。この場合、柔軟性を有しながらも強靭な第2蓄熱シート30を得ることができる。また、第2蓄熱シート30は、加工時や搬送時等にも割れが生じ難く、好適な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等を発現し易くなるため好ましい。
【0102】
なお、第2蓄熱シート30の引張強さの上限は、特に限定されないが、15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることがさらに好ましい。
【0103】
また、第2蓄熱シート30の引張破断時の伸び率は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。この場合、第2蓄熱シート30の脆化を抑制することができる。また、第2蓄熱シート30は、加工時や搬送時等に曲げや歪みが生じた場合にも、割れや欠けが生じ難い。
【0104】
なお、第2蓄熱シート30の引張破断時の伸び率の上限は、1000%以下であることが好ましく、500%以下であることがより好ましく、300%以下であることがさらに好ましい。この場合、第2蓄熱シート30は、強靭でありながら好適な柔軟性を有することができる。よって、第2蓄熱シート30は、良好な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等をより発現し易くなる。
【0105】
第2蓄熱シート30の引張強さおよび引張破断時の伸び率は、それぞれ第1蓄熱シート20の引張強さおよび引張破断時の伸び率と同様にして測定される。
【0106】
本実施形態では、各単電池1が、正極タブ29および負極タブ39が露出した状態で、その周囲が第2蓄熱シート30で被覆されているが、単電池1同士の間に第2蓄熱シート30を挟持するように配置してもよい。
【0107】
また、
図3に示すように、封止体5の内面に第2蓄熱シート30を配置するようにしてもよい。この場合、単電池1の周囲を被覆する第2蓄熱シート30は、省略しても、省略しなくてもよい。
【0108】
<第1実施形態>
本発明の二次電池の第1実施形態について説明する。
【0109】
図1は、本発明の二次電池の第1実施形態を示す斜視図であり、
図2は、
図1中のA-A線に沿って切断した単電池の部分断面図であり、
図3は、単電池の他の構成を示す部分断面図である。
【0110】
図1に示す二次電池100は、例えば、車両等に搭載される二次電池であり、複数の単電池1と、単電池1を収納するケース10とを有している。
【0111】
各単電池1は、
図2に示すように、正極タブ(正極端子)29を有する正極2と、負極タブ(負極端子)39を有する負極3と、正極2と負極3との間に介挿されたセパレータ4と、このセパレータ4に保持された電解質とを備える電池積層体9を有している。
【0112】
そして、この電池積層体9は、
図1に示すように、正極タブ29および負極タブ39が露出した状態で、封止体5により封止されている。
【0113】
前記電池積層体9を有する単電池1の間には、前記第2蓄熱シート30が配されている。前記第2蓄熱シート30は、前記単電池1の周囲を被覆するように(前記単電池1を巻くように)配置されてもよい。前記第2蓄熱シート30として、第2蓄熱材を含む塗工層の片面にのみ不燃層99を有するものを使用した場合、前記不燃層99側の面が単電池1側となるように(例えば不燃層99が前記単電池1に接するように)、前記第2蓄熱シート30を配置することが好ましい。
【0114】
本実施形態の正極2は、正極集電体(アルミニウム箔等)21と、正極集電体21の両面に設けられた正極活物質層22とを有している。
【0115】
そして、正極活物質層22から露出する正極集電体21の部分に、正極タブ29が接合されている。正極タブ29は、金属片(銅片、アルミニウム片、ニッケル片等)で構成されている。なお、正極集電体21を加工して、正極タブ29を形成してもよい。
【0116】
正極活物質層22は、例えば、正極活物質と導電助剤とを含有する。
【0117】
正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムのような金属酸リチウム化合物、ナトリウム層状化合物等が挙げられる。これらの金属酸リチウム化合物またはナトリウム層状化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0118】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0119】
また、正極活物質層22は、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンのような結着剤(結着ポリマー)を含有してもよい。
【0120】
本実施形態の負極3は、負極集電体(銅箔等)31と、負極集電体31の両面に設けられた負極活物質層32とを有している。
【0121】
そして、負極活物質層32から露出する負極集電体31の部分に、負極タブ39が接合されている。負極タブ39は、金属片(銅片、アルミニウム片、ニッケル片等)で構成されている。なお、負極集電体31を加工して、負極タブ39を形成してもよい。
【0122】
負極活物質層32は、例えば、負極活物質と導電助剤とを含有する。
【0123】
負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、グラファイト(黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボンのような炭素系材料が挙げられる。これらの炭素系材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0124】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0125】
また、負極活物質層32は、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンのような結着剤(結着ポリマー)を含有してもよい。
【0126】
正極2と負極3との間には、セパレータ4が介挿されている。セパレータ4は、正極2と負極3との短絡を防止する機能および電解質を保持する機能を有する。なお、電解質を保持したセパレータ4を、電解質層とも呼ぶことができる。
【0127】
セパレータ4は、絶縁性を有し、かつ電解質を保持可能であればよく、例えば、複数の細孔を有するシート材、不織布のような多孔膜で構成することができる。
【0128】
多孔膜の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンのようなポリオレフィン等が挙げられる。
【0129】
電解質は、好ましくは、非水系溶媒に溶解した電解液として使用される。電解質(電解液)は、単電池1の充放電時における、金属イオンの移動媒体として機能する。
【0130】
非水系溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。これらの非水系溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0131】
電解質としては、例えば、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウムのようなリチウムとフッ化物との塩、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムのようなナトリウムとフッ化物との塩等が挙げられる。
【0132】
なお、電解質には、電解質ポリマーを使用することもできる。
【0133】
封止体5は、金属箔と樹脂シートとの積層体(ラミネートフィルム)、金属製の缶体等で構成することができる。
【0134】
本実施形態の二次電池100は、かかる単電池1の複数個をケース10に収納して構成されている。
【0135】
ケース10は、例えば、アルミニウム、鉄、またはこれらを含む合金のような金属材料、ポリフェニレンサルファイドのような樹脂材料等により形成することができる。
【0136】
ケース10は、底部と周壁部とを有する箱状の部材で構成され、開口部を塞ぐように蓋体(図示せず。)が装着される。蓋体には、ケース10に装着した状態で、複数の正極タブ29に一括して接続される外部接続用正極端子と、複数の負極タブ39に一括して接続される外部接続用負極端子とが設けられている。
【0137】
このケース10の内面または外面に、第1蓄熱材を含有する第1蓄熱シート20が配置されていることが好ましい。また、ケース10の内面に、前記1蓄熱シート20が固定されていることがより好ましい。ケース10を樹脂材料で構成することにより、二次電池100の軽量化に寄与するとともに、ケース10と第1蓄熱シート20との密着性を高めることもできる。
【0138】
蓄熱材は、固体から液体へ相変化する際に熱を吸収し、一方で液体から固体へ相変化する際に熱を放出する物質である。
【0139】
したがって、相変化を生じる温度が比較的低い蓄熱材を選択すれば、周辺温度が低下することに伴って単電池1の温度が低下した場合、蓄熱材が蓄えた熱を放出することで、単電池1の温度の低下等を防止することができる。
【0140】
一方、相変化を生じる温度(すなわち、融点)が比較的高い蓄熱材を選択すれば、二次電池100(単電池1)の充電時等における発熱を蓄熱材が吸収することで、単電池1の温度の上昇等を防止することができる。
【0141】
本実施形態では、第1蓄熱材として、融点が比較的低い蓄熱材を使用する。この場合、第1蓄熱材がケース10の内面付近に散らばって存在することになるので、周辺温度の低温領域での変化に応じて、第1蓄熱材が熱を円滑に吸収および放出することができる。
【0142】
したがって、第1蓄熱シート20をケース10の内面に固定することにより、停止後、次の起動までの一定時間、単電池1の保温が可能となる。その結果、二次電池100(車両)の電圧が極端に低下するのを防止することができる。
【0143】
第1蓄熱材の融点の具体的な値は、-30℃以上15℃以下であることが好ましく、-10℃以上10℃以下であることがより好ましく、0℃以上8℃以下であることがさらに好ましい。かかる範囲の融点を有する第1蓄熱材を使用することにより、停止後の単電池1の保温効果をより向上させることができる。
【0144】
第1蓄熱材としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸エステル、アルカン(パラフィン)等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0145】
脂肪酸エステルとしては、例えば、デカン酸メチル、デカン酸エチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミトレイン酸メチルエステル、オレイン酸メチル等が挙げられる。中でも、脂肪酸エステルは、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミトレイン酸メチルエステルが好ましく、ラウリン酸メチルがより好ましい。
【0146】
アルカンとしては、例えば、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等が挙げられる。中でも、アルカンは、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカンが好ましく、テトラデカンがより好ましい。
【0147】
かかる第1蓄熱材は、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂のような有機材料からなる外殻で被覆された被覆粒子の形態であることが好ましい。
【0148】
この場合、被覆粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10~3000μmであることが好ましい。かかる範囲の平均粒子径を有する被覆粒子を使用することにより、第1蓄熱シート20において、被覆粒子同士の間に空隙部を形成し易く、かつ良好な成形性を実現し易くなる。
【0149】
平均粒子径は、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、100μm以上が特に好ましい。また、好適な空隙部の形成や良好な成形性とともに、強固に被覆粒子を第1蓄熱シート20に保持し易いことから、平均粒子径は、2000μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。なお、一次粒子の平均粒子径が上記範囲であることが好ましい。
【0150】
被覆粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA-950V2」)により測定して、得られたメジアン径(体積累積分布の50%に相当する粒径:50%粒径)とすることができる。
【0151】
第1蓄熱シート20は、第1蓄熱材(被覆粒子)を保持するとともに、第1蓄熱材同士の間を結合する樹脂を含有することが好ましい。かかる樹脂が第1蓄熱材同士の間を、三次元網目状に結合することにより、空隙部を有する第1蓄熱シート20を作製し易い。
【0152】
また、樹脂には、その水性分散液を第1蓄熱材と混合して混合液を調製する際に、第1蓄熱材100質量部に対する水性分散液の吸収量が70質量部以下である樹脂を使用することが好ましい。この場合、第1蓄熱シート20中に好適なサイズの空隙部を確保し易く、また第1蓄熱材同士の間を樹脂で強固に結合して、高い機械的強度を有する第1蓄熱シート20を作製することができる。また、その作製時にも、混合液の良好な塗工性を確保して、第1蓄熱シート20を作製し易くなる。
【0153】
上記吸収量は、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。吸収量の下限値は、通常、10質量部程度である。第1蓄熱材に対する水性分散液の吸収量は、例えば、JIS K5101-13-1に準じて測定することができる。なお、樹脂の水性分散液には、水45質量部中に樹脂55質量部を分散させた水性分散液を使用することが好ましい。
【0154】
樹脂の態様は、空隙部を有する第1蓄熱シート20(マトリクス)を作製可能であれば、特に制限はない。ただし、第1蓄熱シート20の全体構造を形成し易く、また良好な空隙部の形成や、空隙部の含有量(空隙率)の確保が容易であることから、機械発泡により空隙部を形成し得るエマルジョン樹脂が好適である。
【0155】
したがって、第1蓄熱シート20は、第1蓄熱材を含有する発泡体で構成されていることが好ましい。これにより、第1蓄熱シート20の保温性をより高めることができる。
【0156】
エマルジョン樹脂としては、例えば、アクリル系エマルジョン樹脂、ウレタン系エマルジョン樹脂、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、塩化ビニル系エマルジョン樹脂、エポキシ系エマルジョン樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル系エマルジョン樹脂は、耐熱性や断熱性に優ることから好ましく、ウレタン系エマルジョン樹脂は、柔軟性に優れることから好ましい。
【0157】
エマルジョン樹脂の平均粒子径は、第1蓄熱材の被覆や、樹脂で被覆された第1蓄熱材同士の間を結合し易いことから、30~1500nmであることが好ましく、50~1000nmであることがより好ましい。
【0158】
エマルジョン樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される50%メジアン径、例えば、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA型粒度分布測定装置により測定される体積基準での50%メジアン径とすることができる。
【0159】
第1蓄熱シート20は、第1蓄熱材が樹脂で被覆されるとともに、この第1蓄熱材同士が樹脂により互いに結合してなる構造を有することが好ましい。第1蓄熱シート20は、かかる構成により、成形されたフォーム材に第1蓄熱材を保持させた構成や、樹脂のマトリクス中に独立気泡や第1蓄熱材が分散した構成に比べ、第1蓄熱材および空隙部の双方を高密度で含有することができる。
【0160】
また、空隙部の含有率(空隙率)および第1蓄熱材の含有率の双方の調整も容易であることから、第1蓄熱シート20の蓄熱性や保温性、断熱性を適切に調整することもできる。さらに、軽量でシート形状への成形や加工も容易であり、第1蓄熱材の脱落も生じ難く、柔軟性の付与も容易である。
【0161】
第1蓄熱シート20は、樹脂で被覆された第1蓄熱材同士を上記樹脂が結合することにより、第1蓄熱材同士の間に空隙部を有する構造である。このため、第1蓄熱シート20の比重は、0.15~0.9であることが好ましく、0.3~0.9であることがより好ましい。この場合、第1蓄熱シート20の高い保温性を得易い。また、この場合、第1蓄熱シート20の軽量化が容易であり、良好な加工性も得られる。
【0162】
第1蓄熱シート20中の第1蓄熱材の含有量は、好適な蓄熱性や保温性を実現し易いことから、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
【0163】
また、第1蓄熱シート20中の樹脂の含有量は、空隙部および第1蓄熱材の含有量の調整や、双方の含有量を向上させ易いことから、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
【0164】
また、好適な保温性や断熱性を得易いことから、第1蓄熱材と樹脂との量比は、第1蓄熱材/樹脂で表される固形分質量比で、80/20~15/85であることが好ましく、70/30~30/70であることがより好ましい。
【0165】
第1蓄熱シート20は、切断等の加工が容易であることから、取り扱い性に優れる。
【0166】
第1蓄熱シート20の厚さは、特に限定されないが、100~6000μmであることが好ましく、300~4000μmであることがより好ましく、500~3000μmであることがさらに好ましい。この場合、第1蓄熱シート20の蓄熱性および保温性をより向上させることができる。
【0167】
第1蓄熱シート20は、JIS K5600-5-1(1999)に準拠した耐屈曲性試験において割れの生じるマンドレル直径が、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、16mm以下であることがさらに好ましい。かかる要件を満たす第1蓄熱シート20は、好適な柔軟性や各種部材の表面への優れた追従性を確保することができる。
【0168】
また、第1蓄熱シート20のJIS L1913(2010)に規定されるガーレ法に準拠して測定した剛軟度は、0.1~30mNであることが好ましく、0.5~20mNであることがより好ましく、1~10mNであることがさらに好ましい。かかる剛軟度を有する第1蓄熱シート20も、好適な柔軟性や各種部材の表面への優れた追従性を確保することができる。
【0169】
第1蓄熱シート20の引張強さは、0.1MPa以上であることが好ましく、0.2MPa以上であることがより好ましい。この場合、柔軟性を有しながらも強靭な第1蓄熱シート20とすることができる。また、かかる第1蓄熱シート20は、加工時や搬送時等にも割れが生じ難く、好適な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等を発揮し得るため好ましい。
【0170】
なお、第1蓄熱シート20の引張強さの上限は、特に限定されないが、15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることがさらに好ましい。
【0171】
また、第1蓄熱シート20の引張破断時の伸び率は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。この場合、第1蓄熱シート20の脆化を抑制することができる。また、かかる第1蓄熱シート20は、仮に、加工時や搬送時等に曲げや歪みが生じた場合にも、割れや欠けが生じ難い。
【0172】
なお、第1蓄熱シート20の引張破断時の伸び率の上限は、1000%以下であることが好ましく、500%以下であることがより好ましく、300%以下であることがさらに好ましい。この場合、第1蓄熱シート20は、強靭でありながら優れた柔軟性を実現することができる。よって、第1蓄熱シート20は、良好な加工性や取扱い性、搬送適正、各種部材の表面への追従性等を得易い。
【0173】
第1蓄熱シート20の引張強さおよび引張破断時の伸び率は、それぞれJIS K6251に規定の方法に準じて測定することができる。
【0174】
具体的には、第1蓄熱シート20をダンベル状2号形に切り出し、初期の標線間距離を20mmとして2本の標線をつけた試験片を作製する。この試験片を引張り試験機に取り付け、速度200mm/分で引っ張って破断させる。このとき、破断までの最大の力(N)および破断時の標線間距離(mm)を測定し、以下の式により引張り強さおよび引張り破断時の伸び率を算出することができる。
【0175】
引張強さTS(MPa)は、以下の式により算出される。
【0176】
TS=Fm/Wt
ただし、Fmは最大の力(N)、Wは平行部分の幅(mm)、tは平行部分の厚さ(mm)である。
【0177】
また、引張り破断時の伸び率Eb(%)は、以下の式により算出される。
【0178】
Eb=(Lb-L0)/L0×100
ただし、Lbは破断時の標線間距離(mm)、L0は初期の標線間距離(mm)である。
【0179】
なお、第1蓄熱シート20は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、例えば、難燃剤、ホルムアルデヒド等の有害物質吸着剤、着色顔料、消臭剤等が挙げられる。
【0180】
以上のような第1蓄熱シート20は、好ましくは、樹脂、第1蓄熱材および水性媒体を含有する樹脂組成物を機械発泡させた後、塗布や注型し、乾燥して作製することができる。第1蓄熱シート20の作製に際しては、樹脂組成物は、乾燥した後に、必要に応じて、熱や紫外線等により硬化させてもよい。
【0181】
樹脂組成物の調製に使用可能な水性媒体としては、水を好ましく使用することができる。
【0182】
また、水性媒体は、水と水溶性溶剤との混合物であってもよい。この水溶性溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブのようなアルコール類、N-メチルピロリドンのような極性溶剤等が挙げられる。これらの水溶性溶剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0183】
樹脂組成物には、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤、難燃剤、架橋剤、その他の添加物を混合してもよい。
【0184】
例えば、起泡した泡の微細化や安定化のために、樹脂組成物には、任意の界面活性剤を混合することができる。界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等のいずれを使用してもよい。
【0185】
特に、起泡した泡の安定性を高める観点から、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が好ましく、ステアリン酸アンモニウムのような脂肪酸アンモニウム性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0186】
樹脂組成物には、起泡した泡の安定性や成膜性を向上させるために、増粘剤を必要量混合してもよい。増粘剤としては、例えば、アクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤等が挙げられる。中でも、増粘剤には、アクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤を使用することが好ましい。
【0187】
樹脂組成物中には、第1蓄熱シート20の難燃性を向上させるために、難燃剤を必要量混合してもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、有機系難燃剤、無機系難燃剤を適宜使用することができる。
【0188】
有機系難燃剤としては、例えば、リン系化合物、ハロゲン化合物、グアニジン化合物等であることが好ましい。有機系難燃剤の具体例としては、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸トリエステル、亜リン酸エステル、フォスフォニウム塩、リン酸トリアミド、塩素化パラフィン、臭化アンモニウム、デカブロモビスフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモフェニルオキサイド、ペンタブロモオキサイド、ヘキサブロモベンゼン、塩酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニル尿素等が挙げられる。
【0189】
無機系難燃剤としては、例えば、アンチモンやアルミニウムの化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物であることが好ましい、無機系難燃剤の具体例としては、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、四ホウ酸ナトリウム十水和物(ホウ砂)、硫酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0190】
難燃剤には、上記化合物のうちの1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0191】
樹脂組成物には、第1蓄熱シート20の機械的強度を向上させるために、硬化剤を必要量混合してもよい。硬化剤は、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤等が挙げられる。
【0192】
樹脂組成物中の樹脂の含有量は、例えば、アクリル系エマルジョン樹脂を使用する場合には、水性媒体100質量部に対して、30~200質量部であることが好ましく、50~150質量部であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に調整し易く、また、安定的に発泡させ易くなる。
【0193】
樹脂組成物中の第1蓄熱材の含有量は、第1蓄熱シート20中の第1蓄熱材/樹脂の量比が上記範囲となるように配合すればよい。
【0194】
樹脂組成物に界面活性剤を混合する場合、その含有量は、好適な発泡性を得易いことから、樹脂100質量部(固形分)に対して、30質量部以下であることが好ましく、0.5~20質量部であることがより好ましく、3~15質量部であることがさらに好ましい。
【0195】
樹脂組成物に増粘剤を混合する場合、その含有量は、樹脂100質量部(固形分)に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましい。
【0196】
上記方法で得られた第1蓄熱シート20としては、不燃層を有するものを使用することもできる。前記不燃層を有する第1蓄熱シートを使用することによって、二次電池を構成する単電池の燃え広がり等を効果的に抑制することができる。
【0197】
第1蓄熱シート20のケース10の内面への固定は、例えば、接着剤、融着(超音波融着、高周波融着、熱融着)、粘着剤等により行うことができる。
【0198】
<第2実施形態>
図4は、本発明の二次電池の第2実施形態を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【0199】
以下、第2実施形態の二次電池100について説明するが、上記第1および第2実施形態の二次電池100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0200】
図4に示す二次電池100では、矩形状のケース10内に複数の円筒状の単電池1が配置されている。そして、ケース10の内面に、第1蓄熱シート20が固定されている。
【0201】
複数の単電池1は、長手方向(軸方向)をケース10の厚さ方向(高さ方向)として行列状(マトリクス状)にケース10に収納(配置)されている。また、ケース10の側面には、複数の正極タブ29に一括して接続される外部接続用正極端子12と、複数の負極タブ39に一括して接続される外部接続用負極端子13とが設けられている。
【0202】
さらに、単電池1内にセパレータ4を配置して巻回するようにしてもよい。すなわち、各単電池1には、通常の円筒状の単電池を使用することもできる。
【0203】
この場合、各単電池1の外周を第2蓄熱シート30で被覆するようにしてもよく、一列に並ぶ複数の単電池1を一括して、第2蓄熱シート30で被覆するようにしてもよい。前記第2蓄熱シート30として、片面にのみ不燃層99を有するものを使用した場合、前記不燃層99側の面が単電池1側となるように(例えば不燃層99が前記単電池1に接するように)、前記第2蓄熱シート30を配置することが好ましい。
【0204】
以上、本発明の二次電池について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。
【0205】
例えば、本発明の二次電池は、上述した実施形態に構成において、他の任意の目的の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
【0206】
また、第1蓄熱シート20および第2蓄熱シート30は、それぞれ複数が積層された積層体であってもよい。
【0207】
また、ケース10の内面に第1蓄熱シート20が固定され、その内側に第2蓄熱シート30が積層されてもよい。
【0208】
また、本発明の二次電池は、充放電の際に移動させるイオン種に応じて、正極活物質、負極活物質および電解質の種類が適宜選択される。
【実施例0209】
次に、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0210】
2.第2蓄熱シートの作製
重合度900のポリ塩化ビニル系樹脂粒子(新第一塩ビ社製 ZEST PQ92)100質量部、ポリエステル系可塑剤(DIC社製 ポリサイザーW-230H)70質量部、その他添加剤として分散剤(DIC社製 エポサイザーE-100EL)2質量部、および分散剤(BYK社製 Disperplast-1142)2質量部と、ステアリン酸メチルを含有する第2蓄熱材をウレタン樹脂からなる外殻を用いてマイクロカプセル化した被覆粒子(平均粒子径:150μm、融点:38℃)100質量部を配合し、プラスチゾル塗工液を調製した。
【0211】
このプラスチゾル塗工液を不燃紙上にアプリケーター塗工機にて塗布した後、150℃のドライヤー温度で8分間加熱してゲル化させ、厚さ1mmの第2蓄熱シートを作製した。
【0212】
第2蓄熱シート中に含まれる被覆粒子の含有量は35.5質量%であった。
【0213】
3.昇温抑制の模擬実験
3-1.試験体の準備
(実施例B)
まず、6枚の厚さ1mm×横200mm×縦300mmのアルミニウム(A1050)板と、3つの横50mm×縦100mm×容量30Wのシリコンラバーヒータ(八光電機社製、「SBH2123」)とを準備した。
【0214】
次に、2枚のアルミニウム板同士の間に、1つのシリコンラバーヒータを介挿することにより、3つの模擬単電池を作製した。
【0215】
次に、模擬単電池同士の間に第2蓄熱シートを配置した。
【0216】
なお、上から2つ目の模擬単電池と第2蓄熱シートとの間の温度を測定するために2つの温度センサを取り付けた。
【0217】
(比較例B1)
第2蓄熱シートに代えて、厚さ1mm×横150mm×縦150mmの塩化ビニルシート(第2蓄熱材を含有せず。)を使用した以外は、実施例Bと同様にして、試験体を準備した。
【0218】
(比較例B2)
第2蓄熱シートを省略した以外は、実施例Bと同様にして、試験体を準備した。なお、模擬単電池同士の間には、1mmの隙間を保持した。
【0219】
3.実験方法
各試験体を25℃の環境下に配置した状態で、シリコンラバーヒータによる30Wの発熱を10分間継続した後、シリコンラバーヒータをオフして30分間放置した。
【0220】
このとき、各測定点の温度変化を記録した。その結果を
図5に示す。
【0221】
図5に示すように、第2蓄熱シートを固定することにより、単電池の昇温を抑制することができる。
【0222】
4.燃焼性試験
4-1.試験体の準備
JIS D1201にて定められる燃焼試験装置を用いた。
【0223】
(実施例C1)
重合度900のポリ塩化ビニル系樹脂粒子(新第一塩ビ社製 ZEST PQ92)100質量部、ポリエステル系可塑剤(DIC社製 ポリサイザーW-230H)70質量部、その他添加剤として分散剤(DIC社製 エポサイザーE-100EL)2質量部、および分散剤(BYK社製 Disperplast-1142)2質量部と、ステアリン酸メチルを含有する第2蓄熱材をウレタン樹脂からなる外殻を用いてマイクロカプセル化した被覆粒子(平均粒子径:150μm、融点:38℃)100質量部を配合し、プラスチゾル塗工液を調製した。
【0224】
このプラスチゾル塗工液を不燃紙上にアプリケーター塗工機にて塗布した後、150℃のドライヤー温度で8分間加熱してゲル化させ、厚さ3mm、幅65mm及び長さ200mmの第2蓄熱シートを作製した。第2蓄熱シート中に含まれる被覆粒子の含有量は35.5質量%であった。前記第2蓄熱シートの燃焼性は、下記「4-2.実験方法」に示す方法で行った。その際、炎は、前記第2蓄熱シートを構成する不燃紙からなる面に接するようにした。
【0225】
(実施例C2)
実施例C1で使用した第2蓄熱シートと同一のものを用い、下記「4-2.実験方法」に示す方法でその燃焼性を評価した。その際、炎は、前記第2蓄熱シートを構成する蓄熱材を含む層側(不燃紙からなる面の反対側)に接するようにした。
【0226】
(比較例C)
不燃紙を用いないこと以外は、上記実施例C1と同様の方法で第2蓄熱シートを作成した。実施例C1で使用した第2蓄熱シートの代わりに、本比較例Cで作成した上記第2蓄熱シートを試験片としたこと以外は、実施例C1と同様の方法でその燃焼性を評価した。
【0227】
4-2.実験方法
2枚のU字形金属板からなる試験片取付具に試験片を設置し、以下の方法で燃焼試験を行い、燃焼距離(mm)及び燃焼時間(s)を測定し、その他の所見(自己消火など)を記録した。
・ガスバーナーの使用ガスは、発熱量が約38MJ/m3のガスを用いる。
・ガスの炎を38mmの高さに調節する。炎を安定させるために、1分間以上燃やす。
・試験片取付具を燃焼試験装置の内部に押し込み、試験片の端部を炎にさらす。15秒間炎にさらした後にガスを止める。
・燃焼時間の測定は、試験片の端部から50mmの位置を測定開始点とし、試験片の端部に着火した炎の根元が測定開始点に達したときに開始する。燃焼速度が、他の面より大きい面での炎の伝わり方を観察する。
・燃焼時間の測定は、炎が測定終了点に達したとき、又は炎が測定終了点に達する前に消えたときに終了する。測定終了点は、前記測定開始点から150mm離れた点である。炎が測定終了点に達しない場合、炎が消えた位置と測定開始点との距離を測定し、表中の燃焼距離とする。燃焼距離を測定する部分は、燃焼によってその表面又は内部が損傷している変質部分である。
【0228】