(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176145
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】開閉式煙灰排出装置
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
F27D17/00 105K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088270
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】真壁 祐太
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA02
4K056CA04
4K056DB23
(57)【要約】
【課題】煙灰排出シュートと煙灰回収用コンテナとの間のシール性を維持できシール構造の耐久性も高くできる開閉式煙灰排出装置を提供する。
【解決手段】煙灰排出シュートSと煙灰回収用コンテナCとの間を連通する、伸縮可能な筒状部材2と、筒状部材2の下端に設けられ、筒状部材2が伸長した状態において煙灰回収用コンテナCの上面Caに配置される蓋部3と、蓋部3を昇降する昇降機構10と、を備えており、蓋部3は、その下面に、煙灰回収用コンテナCの上面Ca上に配置された状態において煙灰回収用コンテナCの上面Caに設けられた開口hの周囲を囲むように配置されるシール部材3aを備えており、蓋部3は、その自重でシール部材3aによって3蓋部の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密に維持し得る重量を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道から煙灰を排出する煙灰排出シュートから排出される煙灰を煙灰回収用コンテナに供給する開閉式煙灰排出装置であって、
前記煙灰排出シュートと前記煙灰回収用コンテナとの間を連通する、伸縮可能な筒状部材と、
前記筒状部材の下端に設けられ、該筒状部材が伸長した状態において前記煙灰回収用コンテナの上面に配置される蓋部と、
該蓋部を昇降する昇降機構と、を備えており、
前記蓋部は、
その下面に、前記煙灰回収用コンテナの上面に配置された状態において前記煙灰回収用コンテナの上面に設けられた開口の周囲を囲むように配置されるシール部材を備えており、
該蓋部は、
該蓋部の自重で該蓋部の下面と前記煙灰回収用コンテナの上面との間を前記シール部材によって気密にシールできる重量を有している
ことを特徴とする開閉式煙灰排出装置。
【請求項2】
前記昇降機構が、
シリンダと、
該シリンダのロッドと前記蓋部とを連結する連結機構と、を備えており、
該連結機構は、
第一端部が前記シリンダのロッドに対して揺動可能に連結され、第二端部が前記蓋部に揺動可能に連結されたリンク部材を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の開閉式煙灰排出装置。
【請求項3】
前記蓋部には、
揺動軸を有する連結部材が設けられており、
前記リンク部材は、
前記第一端部と前記第二端部とを繋ぐ方向に沿って延びる長孔を有しており、
該長孔に前記連結部材の揺動軸が挿通されている
ことを特徴とする請求項2記載の開閉式煙灰排出装置。
【請求項4】
前記昇降機構には、
前記シリンダに加わる荷重を検出する検出部が設けられており、
該検出部が検出する荷重に基づいて前記シリンダの作動を制御する制御部を備えている
ことを特徴とする請求項3記載の開閉式煙灰排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉式煙灰排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化精鉱を原料とする非鉄金属製錬では自熔炉や転炉等の製錬炉が使用される。この製錬炉では、製錬時に高濃度の亜硫酸ガスを含む排ガスが発生しており、この排ガスは煙道を通して硫酸製造工程等の次工程に供給される。排ガスには亜硫酸ガス等のガスだけでなく製錬時に発生した煙灰も含まれているが、煙灰には銅や亜鉛などの有価金属も含まれている。このため、煙道に設けられた電気集塵機や次工程において煙灰は回収され、回収された煙灰は製錬炉等に戻されて再度処理される(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、排ガスの気流だけで全ての煙灰を製錬炉から電気集塵機や次工程まで搬送することは難しく、煙道の水平になった部分(煙道水平部)が存在する場合には煙道水平部に気流に追従できない煙灰が堆積する。このため、煙道水平部には、内部に堆積した煙灰を回収するために煙灰排出コンベアが設けられている。煙道水平部に煙灰排出コンベアを設ければ、煙灰排出コンベア上に堆積した煙灰を煙灰排出コンベアによって煙道水平部に設けられた煙灰排出シュートまで搬送することができる。そして、煙灰排出シュートの下部に煙灰回収用コンテナを設けておけば、煙灰排出コンベアから煙灰排出シュートに排出される煙灰を煙灰回収用コンテナに回収することができる。
【0004】
煙灰回収用コンテナに回収された煙灰は製錬炉等に供給される。具体的には、煙灰回収用コンテナに回収された煙灰が一定量以上になると、煙灰回収用コンテナは煙灰排出シュートから切り離されて、フォークリフトなどによって製錬炉等に搬送される。また、煙灰回収用コンテナが切り離された煙灰排出シュートには、フォークリフトなどによって搬送される新しい煙灰回収用コンテナが接続される。
【0005】
煙灰を煙灰回収用コンテナに回収している間は、ガスの無駄な出入りや煙灰の飛散を防ぐため煙灰回収用コンテナは気密に接続する必要がある一方で、上述したように、煙灰回収用コンテナの交換の際には、煙灰回収用コンテナと煙灰排出シュートとを接続分離しなければならない。接続時における気密状態を維持しつつ煙灰回収用コンテナと煙灰排出シュートとを接続分離するために、両者間は、
図3に示すような煙灰排出シュートSの下端部Saに設けられたフレキシブルホースHとこのフレキシブルホースHに設けられている蓋Rとを有する装置によって接続される。
【0006】
具体的には、フレキシブルホースHは、上端が煙灰排出シュートSの下端SAに接続されており、下端に蓋Rが接続されている。このフレキシブルホースHの側方には、伸縮方向がフレキシブルホースHの伸縮方向と平行となるようにエアシリンダーCLが設けられており、このエアシリンダーCLのロッドrの先端は連結部材CPによって蓋Rに連結されている。蓋Rの下面には、シールパッキンSPが設けられている。このシールパッキンSPは、蓋Rの下面を煙灰回収用コンテナCの上面に接触させた際に、煙灰回収用コンテナCの上端に設けられた煙灰排出シュートSから排出される煙灰を受け入れる開口hを囲むように設けられている。かかる構造とすれば、煙灰排出シュートSの下方に煙灰回収用コンテナCを配置した状態でエアシリンダーCLを伸縮させれば、蓋RによってフレキシブルホースHと煙灰回収用コンテナCとを外部から気密に接続したり両者を分離したりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、煙灰排出シュートSの下方に配置される煙灰回収用コンテナCは、煙灰回収用コンテナCを配置する場所や老朽化による煙灰回収用コンテナCのコンテナ形状変化、さらにコンテナCからこぼれた煙灰などにより生じる地面の起伏によって、煙灰回収用コンテナCの上面の高さやその傾き(水平に対する傾き)が変化する。煙灰回収用コンテナCの上面の高さやその傾きが変化すれば、蓋Rと煙灰回収用コンテナCの上面との間のシール性が悪くなるという問題が生じる。
【0009】
また、煙灰回収用コンテナCの上面の高さやその傾きが変化すると、エアシリンダーCLに加わる負荷が変化する。例えば、煙灰回収用コンテナCの上面の高さが所定の高さよりも高ければ、蓋RのシールパッキンSPと煙灰回収用コンテナCの上面とを接触させた際にエアシリンダーCのロッドrに対してその軸方向に加わる力が大きくなる。また、煙灰回収用コンテナCの上面の水平に対する傾きが大きくなると、エアシリンダーCLのロッドrにはその伸縮方向に対して交差するような力が加わる。このような力がエアシリンダーCLのロッドrに加われば、エアシリンダーCLが劣化したり損傷したりし易くなる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、煙灰排出シュートと煙灰回収用コンテナとの間のシール性を維持でき装置の耐久性も高くできる開閉式煙灰排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の開閉式煙灰排出装置は、煙道から煙灰を排出する煙灰排出シュートから排出される煙灰を煙灰回収用コンテナに供給する開閉式煙灰排出装置であって、前記煙灰排出シュートと前記煙灰回収用コンテナとの間を連通する、伸縮可能な筒状部材と、前記筒状部材の下端に設けられ、該筒状部材が伸長した状態において前記煙灰回収用コンテナの上面に配置される蓋部と、該蓋部を昇降する昇降機構と、を備えており、前記蓋部は、その下面に、前記煙灰回収用コンテナの上面に配置された状態において前記煙灰回収用コンテナの上面に設けられた開口の周囲を囲むように配置されるシール部材を備えており、該蓋部は、該蓋部の自重で該蓋部の下面と前記煙灰回収用コンテナの上面との間を前記シール部材によって気密にシールできる重量を有していることを特徴とする
第2発明の開閉式煙灰排出装置は、第1発明において、前記昇降機構が、シリンダと、該シリンダのロッドと前記蓋部とを連結する連結機構と、を備えており、該連結機構は、第一端部が前記シリンダのロッドに対して揺動可能に連結され、第二端部が前記蓋部に揺動可能に連結されたリンク部材を備えていることを特徴とする。
第3発明の開閉式煙灰排出装置は、第2発明において、前記蓋部には、揺動軸を有する連結部材が設けられており、前記リンク部材は、前記第一端部と前記第二端部とを繋ぐ方向に沿って延びる長孔を有しており、該長孔に前記連結部材の揺動軸が挿通されていることを特徴とする。
第4発明の開閉式煙灰排出装置は、第3発明において、前記昇降機構には、前記シリンダに加わる荷重を検出する検出部が設けられており、該検出部が検出する荷重に基づいて前記シリンダの作動を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、蓋部の自重でシール部材を煙灰回収用コンテナの上面に押し付けるので、煙灰回収用コンテナの上面の高さやその傾きが変化しても、蓋部の下面と煙灰回収用コンテナの上面との間を安定して気密に維持することができる。
第2および第3発明によれば、煙灰回収用コンテナの上面の高さやその傾きが変化してもシリンダに過度な負荷が加わることを防止できる。
第4発明によれば、シリンダの作動を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の開閉式煙灰排出装置1の概略説明図であり、(A)は(B)のA部の概略拡大説明図であり、(B)は本実施形態の開閉式煙灰排出装置1を設けた設備の概略説明図である。
【
図2】(A)は煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置かつ水平に配置された状態における昇降機構10の概略説明図であり、(B)は煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置より上方かつ水平に配置された状態における昇降機構10の概略説明図であり、(A)は煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置かつ水平に対して傾いて配置された状態における昇降機構10の概略説明図である。
【
図3】従来の開閉式煙灰排出装置の概略説明図であり、(A)は(B)のA部の概略拡大説明図であり、(B)は従来の開閉式煙灰排出装置を設けた設備の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の開閉式煙灰排出装置は、自熔炉や転炉等の製錬炉から次工程に排ガスを搬送する煙道を有する設備において、煙道から煙灰を排出する装置に使用されるものである。
【0015】
本実施形態の開閉式煙灰排出装置を採用する設備としては、例えば、非鉄金属製錬設備や焼却炉、焙焼炉等の設備を挙げることができるがとくに限定されない。煙灰や飛散した原料等が堆積する煙道等から煙灰等を回収することが必要な設備であれば採用することができる。
【0016】
<本実施形態の開閉式煙灰排出装置1>
図1において、符号Fは煙道を示しており、符号CVは煙道F内に設けられた煙灰排出コンベアCVを示しており、符号Sは煙道Fに設けられた煙灰排出シュートSを示している。この煙灰排出シュートSの下端SAは、本実施形態の開閉式煙灰排出装置1を介して煙灰回収用コンテナCに接続分離可能に連通されている。
【0017】
<筒状部材2>
図1に示すように、本実施形態の開閉式煙灰排出装置1は、煙灰排出シュートSの下端SAに上端が連結された筒状部材2を備えている。この筒状部材2は、蛇腹構造等の伸縮可能な構造を有している。つまり、筒状部材2は、その上端と下端との間で上下方向に伸縮できるようになっている。筒状部材2としては、例えば、蛇腹状のチューブや伸縮可能な素材で形成されたチューブ等を採用することができる。
【0018】
<蓋部3>
図1に示すように、筒状部材2の下端には蓋部3が設けられている。この蓋部3は、蓋部3は板状の部材であり、筒状部材2の下端開口と連通する貫通孔3hが形成されている。この蓋部3は、後述する伸縮機構10によって、筒状部材2が伸長した状態において(
図1(B)参照)、煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せられる位置に保持されている。より詳しくは、蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せられると、蓋部3の貫通孔3hが煙灰回収用コンテナCの開口hと対応する位置に配置されるように、蓋部3は後述する伸縮機構10によって保持されている。
【0019】
蓋部3の貫通孔3hは、筒状部材2の下端開口および煙灰回収用コンテナCの開口hよりも小さく形成されており、蓋部3の下面には、この貫通孔3hの周囲を囲むようにシール部材3aが設けられている。しかも、このシール部材3aは、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せたときに、煙灰回収用コンテナCの上面Caに形成されている開口hの周囲を囲むことができるように設けられている。
【0020】
蓋部3のシール部材3aは、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せたときに、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールできる素材によって形成されている。例えば、シール部材3aは、ゴムや膨張黒鉛等の柔軟性を有する部材によって形成されている。
【0021】
そして、蓋部3は、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せたときに、自重だけでも、シール部材3aを煙灰回収用コンテナCの上面Caに押し付けて蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールできる重さを有している。
【0022】
なお、本明細書でいう「蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシール」とは、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間から煙灰が漏れない程度の気密性を維持できる状態を意味している。
【0023】
<伸縮機構10>
図1に示すように、本実施形態の開閉式煙灰排出装置1は、蓋部3を昇降させる機能を有する伸縮機構10を備えている。
【0024】
本実施形態の開閉式煙灰排出装置1が上記のような構造を有しているので、煙灰排出シュートSの下端SAの下方に煙灰回収用コンテナCを配置し、伸縮機構10によって蓋部3を下方に移動させれば、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに配置することができる。すると、蓋部3の貫通孔3hを介して、筒状部材2の下端開口と煙灰回収用コンテナCの開口hとを連通することができる。しかも、蓋部3の自重によって、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間をシール部材3aによって気密にシールすることができる。その状態で、煙灰回収用コンテナCによって煙灰を煙灰排出シュートS排出すれば、煙灰排出シュートSと筒状部材2を通して、煙灰回収用コンテナCに煙灰を供給することができる。
【0025】
煙灰回収用コンテナCに一定量以上の煙灰が蓄積されると、煙灰排出コンベアCVによる煙灰の排出が停止する。煙灰排出コンベアCVが停止した後、伸縮機構10によって蓋部3を上方に移動させれば、蓋部3と煙灰回収用コンテナCとを分離することができる。蓋部3が煙灰回収用コンテナCから分離されると煙灰回収用コンテナCは搬出され、蓋部3の下方に新しい煙灰回収用コンテナCが搬入される。すると、伸縮機構10によって蓋部3が下方に移動され、蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せられると、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間が気密にシールされる。その状態で、煙灰排出コンベアCVによる煙灰の排出を開始すれば、煙灰排出シュートSを通して煙灰回収用コンテナCに煙灰を回収することができる。
【0026】
上記作業を繰り返せば、煙道Fに堆積した煙灰を順次煙灰回収用コンテナCに回収して、回収された煙灰を製錬炉等において再処理することができる。
【0027】
<伸縮機構10の詳細な説明>
ここで、煙灰回収用コンテナCを蓋部3の下方に配置したとき、コンテナCからこぼれた煙灰などにより生じる地面の起伏等の影響で煙灰回収用コンテナCの上面Caの高さが変化したり上面Caが水平面に対して傾いたりすることがある。しかし、本実施形態の開閉式煙灰排出装置1では、蓋部3を昇降する伸縮機構10が以下のような構造を有しているので、煙灰回収用コンテナCの上面Caの高さが変化したり上面Caが水平面に対して傾いたりしても、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を安定して気密に維持できる。
以下、伸縮機構10の構造を具体的に説明する。
【0028】
図1に示すように、伸縮機構10は、シリンダ11と、シリンダ11と蓋部3とを連結する連結機構15と、を備えている。
【0029】
<シリンダ11>
シリンダ11は、例えば、エアシリンダーや油圧シリンダ等であり、そのシリンダボディ11aが煙道Fに設けられた構造物等に固定されている。具体的には、シリンダ11のロッド11bを下方に向けた状態かつ上下方向に沿って伸縮することができるように、シリンダ11は構造物等に固定されている。このシリンダ11は、伸縮機構10に設けられた制御部によってその作動が制御されている。つまり、煙灰排出コンベアCVの作動や煙灰回収用コンテナCの供給搬出などの状態に基づいて、シリンダ11の伸縮、つまり、蓋部3の昇降を制御部が制御している。
【0030】
また、シリンダ11は、蓋部3を下降させる際、つまり、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに接触させる際に、所定の長さだけ伸長するように制御部によって制御されている。所定の長さとは、煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置(高さ)に配置されたときに、蓋部3のシール部材3aが煙灰回収用コンテナCの上面Caに接触する長さよりも若干長い長さである。
【0031】
<連結機構15>
連結機構15は、シリンダ11のロッド11bの先端(
図1では下端)と蓋部3(
図1では蓋部3の上面)との間を連結するように設けられている。具体的には、連結機構15は、シリンダ11のロッド11bの先端に設けられた第一連結部材16と、蓋部3の上面に設けられた第二連結部材17と、第一連結部材16と第二連結部材17との間を連結するリンク部材18と、を備えている。
【0032】
第一連結部材16は、シリンダ11のロッド11bの伸縮方向と直交する揺動軸16aを備えている。この揺動軸16aにはリンク部材18の上端(第一端部)が揺動可能に連結されている。つまり、リンク部材18は、第一連結部材16によってシリンダ11のロッド11bに対して揺動可能に連結されている。なお、第一連結部材16は、例えば、ナックルジョイントに揺動軸16aとしてピンなどが設けられたものやトラニオン金具等を採用することができる。
【0033】
第二連結部材17は、蓋部3の上面に設けられており、シリンダ11のロッド11bの伸縮方向と直交する揺動軸17aを備えている。この揺動軸17aにはリンク部材18の下端(第二端部)が揺動可能に連結されている。つまり、リンク部材18は、第二連結部材17によって蓋部3に対して揺動可能に連結されている。なお、第二連結部材17は、例えば、ナックルジョイントに揺動軸17aとしてピンなどが設けられたものやトラニオン金具等を採用することができる。
【0034】
そして、リンク部材18は、その上端が、第一連結部材16の揺動軸16aに対して、揺動はできるが揺動軸16aの半径方向には移動できないように連結されている。一方、リンク部材18の下端は、第二連結部材17の揺動軸17aに対して、揺動可能かつ揺動軸17aの半径方向に移動できるように連結されている。具体的には、リンク部材18の下端には、その上端と下端とを繋ぐ方向に沿って延びる長孔18hが設けられており、この長孔18hに揺動軸17aが挿入された状態でリンク部材18の下端と第二連結部材17とが連結されている。
【0035】
<伸縮機構10の作動>
上記のごとき構成を有するので、シリンダ11によって蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに接触させる際には、伸縮機構10は以下のように作動する。
【0036】
蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Caに接触していない状態では、蓋部3は、第二連結部材17の揺動軸17aがリンク部材18の長孔18hの下端に引っ掛かった状態、つまり、揺動軸17aによって蓋部3がリンク部材18に吊り下げられた状態となる。
【0037】
煙灰回収用コンテナCの上面Caに蓋部3を配置する場合には、制御部は、蓋部3が下降するようにシリンダ11を伸長させる。
【0038】
ここで、煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置に配置されている場合であれば、シリンダ11が伸長すれば、シリンダ11の伸長量が所定の長さとなる前に蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Caの上面に接触した状態となる。この状態からシリンダ11が所定の長さになるまで伸長すると、第二連結部材17の揺動軸17aがリンク部材18の長孔18hの下端から若干(
図2(A)のL1分)浮いた状態となる(
図2(A)参照)。すると、蓋部3の自重が全てシール部材3aに加わり、蓋部3の自重だけで、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールした状態とすることができる。
【0039】
一方、煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置よりも高さL2だけ高い位置に配置されているとする(
図2(A)、(B)参照)。この場合でも、
図2(A)のL1と高さL2とを合せた長さが長孔18hの長さL(
図2(A)参照)よりも短ければ、蓋部3の自重が全てシール部材3aに加わる状態、かつ、第二連結部材17の揺動軸17aがリンク部材18の長孔18hの上端に接触せず、リンク部材18が第二連結部材17に接触しない状態に維持できる。すると、煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置に配置されている状態と同様に、蓋部3の自重だけで、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールした状態とすることができる。
【0040】
また、煙灰回収用コンテナCの上面Caが水平に対して傾いている場合には、蓋部3を煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せると、第二連結部材17が第一連結部材16の鉛直下方に位置しない可能性がある(
図2(C)参照)。この場合でも、リンク部材18が第一連結部材16および第二連結部材17に対して揺動し、かつ、第二連結部材17の揺動軸17aがリンク部材18の長孔18hに沿って移動すれば、蓋部3の自重だけで、蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールした状態とすることができる。しかも、シリンダ11に対して伸縮方向や伸縮方向と交差する方向の力が加わらない状態にできるので、シリンダ11に過度な負荷が加わることを防止できる。すると、シリンダ11のロッド11bの破損を防止することが可能となり、シリンダ11の交換に伴う設備停止を防ぐことができる。
【0041】
なお、煙灰回収用コンテナCの上面Caが所定の位置よりも低い位置に配置された場合には、設定される所定の長さが短ければ、シリンダ11の伸長量が所定の長さとなっても蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Cに接触しない可能性がある。したがって、設定される所定の長さは、想定される煙灰回収用コンテナCの上面Caの高さのうち、最も低い位置に煙灰回収用コンテナCの上面Caが配置されても、蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Cに接触し、かつ、蓋部3の自重だけで蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間を気密にシールした状態とすることができる長さとすることが望ましい。
【0042】
<連結機構15について>
連結機構15のリンク部材18は、上記のように、長孔18hに揺動軸17aを挿入して、第二連結部材17に対して揺動可能かつ揺動軸17aの半径方向への移動も可能に連結するようにしてもよい。しかし、リンク部材18の下端は、単に、第二連結部材17の揺動軸17aに対して揺動のみできるようになっていてもよい。この場合でも、煙灰回収用コンテナCの上面Caからシリンダ11に加わる力によってシリンダ11が損傷することを抑えることができる。つまり、煙灰回収用コンテナCの上面Caの高さの変化や傾きに合せてリンク部材18が揺動すれば、シリンダ11に対して加わる力をある程度軽減できる。また、リンク部材18が揺動すれば、シリンダ11に対して伸縮方向と交差する方向から加わる力をある程度軽減することは可能である。
【0043】
<伸縮機構10について>
図1では、伸縮機構10がシリンダ11を2本設けている場合を記載しているが、シリンダ11を設ける数はとくに限定されない。1本でもよいし3本以上設けてもよい。蓋部3の下面をほぼ水平に維持した状態で安定して昇降させる上では、シリンダ11は少なくとも2本以上設けることが望ましい。蓋部3の移動を案内する案内機構等を設けるのであれば、シリンダ11が1本でも蓋部3の下面をほぼ水平に維持した状態で安定して昇降させることは可能である。
【0044】
伸縮機構10は、シリンダ11に加わる負荷、例えば、シリンダ11を伸長させようとする力や収縮させようとする力を検出する検出部を設け、この検出部が検出する信号に基づいて制御部がシリンダ11の作動を制御するようにしてもよい。この場合には、制御部は、検出部が検出するシリンダ11に加わる荷重に基づいて、蓋部3が煙灰回収用コンテナCの上面Caに載せられたか、また、蓋部3の自重によって蓋部3の下面と煙灰回収用コンテナCの上面Caとの間が気密にシールされた状態となっているか、を判断できるので、シリンダ11の作動を適切に制御することができる。
【0045】
伸縮機構10は上述したようなシリンダ11によって蓋部3を昇降させるものに限定されない。蓋部3を昇降させる機構として、例えば、シリンダに代えて巻き上げ機等を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の開閉式煙灰排出装置は、変動から煙灰を排出するシュートとコンテナとの間を開閉可能に連結する装置に適している。
【符号の説明】
【0047】
1 開閉式煙灰排出装置
2 筒状部材
3 蓋部
3a シール部材
10 昇降機構
11 シリンダ
11a シリンダボディ
11b ロッド
15 連結機構
16 第一連結部材
16a 揺動軸
17 第二連結部材
17a 揺動軸
18 リンク部材
18h 長孔
C 煙灰回収用コンテナ
CV 煙灰排出コンベア
S 煙灰排出シュート
F 煙道