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  • 特開-排水送出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176146
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】排水送出装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20231206BHJP
   E03F 3/00 20060101ALI20231206BHJP
   E03F 3/02 20060101ALI20231206BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/00
E03F3/02
E03F5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088272
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭介
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA07
2D063DC04
2D063EA00
(57)【要約】
【課題】簡易な装置で排水を低地から高地に送出する
【解決手段】 排水源としての宅地ます33からの排水を下水道施設へ送出するようにした排水送出装置10は、宅地ます33よりも高い位置に設置されている。排水送出装置10は、宅地ます33から搬送された排水を一時的に貯留する集水タンク12と、集水タンク12に接続された真空ポンプ13と、集水タンク12に接続された吸引管21及び吐出管22と、吸引管21の内部の圧力を測定する圧力伝送器14と、真空ポンプ13の駆動制御を行う制御部17を備える。制御部17は、圧力伝送器14で測定された吸引管21内部の圧力の測定値が設定値を超えた場合に、真空ポンプ13を駆動して集水タンク12を負圧にすることで、宅地ます33からの排水を吸引管21を介して集水タンク12に吸い上げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水源からの排水を下水道施設へ送出するようにした排水送出装置であって、前記排水送出装置は前記排水源よりも高い位置に設置されており、前記排水送出装置は、
前記排水源から搬送された排水を一時的に貯留する集水タンクと、
前記集水タンクに接続された真空ポンプと、
前記集水タンクに接続された吸引管及び吐出管と、
前記吸引管の内部の圧力を測定する圧力測定器と、
前記真空ポンプの駆動制御を行う制御部であって、前記圧力測定器で測定された前記吸引管内部の圧力の測定値が設定値を超えた場合に前記真空ポンプを駆動して前記集水タンクを負圧にすることで、排水源からの排水を前記吸引管を介して前記集水タンクに吸い上げることを特徴とする、排水送出装置。
【請求項2】
前記吸引管に設置された第1の電動弁をさらに備え、前記制御部は、前記真空ポンプを駆動した後に前記第1の電動弁を閉状態から開状態に切り替えることで、排水源からの排水が前記吸引管を介して前記集水タンクに吸い上げられることを特徴とする、請求項1記載の排水送出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記真空ポンプの駆動を開始してから所定時間の経過後に前記真空ポンプを停止する、請求項2記載の排水送出装置。
【請求項4】
前記吐出管に設置された第2の電動弁をさらに備え、前記制御部は、前記第2の電動弁を閉状態から開状態に切り替えることで、前記集水タンクに貯留された排水を前記下水道施設に向けて送出することを特徴とする、請求項1記載の排水送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプを用いて集水タンクを負圧にすることで、集水タンクに貯留された排水を吸引して送出する排水送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家屋からの排水(生活排水)を送出する装置として、地中に埋設された貯留槽に排水を一時的に貯留し、当該貯留槽に設けたポンプを用いた圧送により排水を下水本管に送出する生活排水送出装置が知られている。
【0003】
また、真空設備を用いて生活排水を送出する真空式下水道システムも利用されている。図3において、真空式下水道システムは、宅地内の住宅100の地下に設置された自然流下式の管路101、汚水ます102、真空弁ユニット103で構成された宅地内排水設備と、宅地に隣接する公有地(公道等)の地下に設置された真空管路104と、その下流側に設けられた真空ステーション105を備えた構成を有する。
【0004】
この真空式下水道システムでは、家屋から排出された生活排水が、管路101を通じて汚水ます102に流れ込み一時的に貯留される。汚水ます102内の排水が所定量以上になると、真空弁ユニット103の真空弁を開くことで、これに接続された真空管路104からの真空吸引力により、排水が真空管路104を通じて真空ステーション105に収集される。
【0005】
また、特許文献1には、真空弁とその付属装置を宅地内の地上に収納設置することで、設置スペースの小さい民間の宅地内にも設置可能とした真空弁ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-320717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、家屋が低地にある場合には、マンホールポンプや宅内ポンプユニット等の送出設備を用いて、低地にある家屋から生活排水を高地に送出する必要があるが、その場合、当該送出設備とともに、電力会社の了解を得て受電設備を宅地に設置する必要があり、容易に設置できない場合があった。
【0008】
また、前述した真空式下水道システムは、真空ステーション、真空管路及び真空弁ユニットといった設備が必要となり、これらは複数の排水源(家屋等)から生活排水を(面的に)収集する目的で設計され、単一の家屋からの生活排水を(線的に)収集する場合には設置コストが高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排水送出装置は、上記に鑑みなされたもので、排水源よりも高い位置に設置されており、前記排水送出装置は、前記排水源から搬送された排水を一時的に貯留する集水タンクと、前記集水タンクに接続された真空ポンプと、前記集水タンクに接続された吸引管及び吐出管と、前記吸引管の内部の圧力を測定する圧力測定器と、前記真空ポンプの駆動制御を行う制御部を備える。制御部は、前記圧力測定器で測定された前記吸引管内部の圧力の測定値が設定値を超えた場合に前記真空ポンプを駆動して前記集水タンクを負圧にすることで、排水源からの排水を前記吸引管を介して前記集水タンクに吸い上げるように構成される。
【0010】
排水送出装置は、前記吸引管に設置された第1の電動弁をさらに備えても良く、前記制御部は、前記真空ポンプを駆動した後に前記第1の電動弁を閉状態から開状態に切り替えることで、排水源からの排水が前記吸引管を介して前記集水タンクに吸い上げられるように構成しても良い。制御部は、前記真空ポンプの駆動を開始してから所定時間の経過後に前記真空ポンプを停止するように構成しても良い。
【0011】
排水送出装置は、前記吐出管に設置された第2の電動弁をさらに備えても良く、前記制御部は、前記第2の電動弁を閉状態から開状態に切り替えることで、前記集水タンクに貯留された排水を前記下水道施設に向けて送出するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、簡易な構成により、低地にある排水発生源からの排水を外部に送出することができる。また、宅地内に受電設備を設置する必要がなく、電力会社の了解を得る手間を省くことができ、設備の管理コストの削減を図ることができる。さらに、排水発生源に水位計等の設備を設置する必要がなくなるから、配線工事を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る排水送出装置を含む下水道システムの構成を示す説明図である。
図2図1の排水送出装置の真空ポンプ、吐出電動弁及び流入電動弁の動作制御の一例を示す説明図である。
図3】従来の排水送出装置を含む下水道システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る排水送出装置を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、家屋からの生活排水を送出する場合を例にして説明するが、これに限られることはなく、例えば、ビルの地下ピットに集められる排水を送出する場合においても、本発明を適用することができる。
【0015】
図1は排水送出装置を含む下水道システムの構成を示す説明図である。排水送出装置10は、住宅31より高地に設置されており、低地にある生活排水(排水)の排水源である宅内ます33から、真空による吸引力を利用して吸引管を介して排水を吸い上げ、集水タンクに一時的に貯留する。集水タンクの貯留量が一定量を越えた場合に、排水が吐出管を介して既設の自然流下配管のマンホールへと流出する。
【0016】
図1において、排水送出装置10は、独立した防水型屋外収納ボックス11内に収容される集水タンク12、真空ポンプ13、圧力伝送器14、流入電動弁15、吐出電動弁16と、防水型屋外収納ボックス11に隣接して配置される制御部17を備える。排水送出装置10は、さらに、排水を送出するための吸引管21及び吐出管22と、真空ポンプ13による吸引用の真空ポンプ接続管23及び排気管24を備えている。なお、排水送出装置10は独立した小型の建屋内に収容してもよい。
【0017】
この排水送出装置10を備える下水道システムでは、家屋31から排出された生活排水が、地下に埋設された自然落下式管路である汚水流入管32を介して、宅内ます33に流入される。宅地に配設された宅内ます33(あるいは、宅内ます33と家屋31及び汚水流入管32を組み合わせた構成)が、排水源を構成する。宅内ます33には、排水送出装置10の吸引管21が接続されており、真空ポンプ13による真空吸引力により排水が吸込官21から集水タンク12に吸い上げられる。吸引管21は、宅内ます33の底面から吸込間の口径分離された位置に管端がくるように設置されている。
【0018】
集水タンク12は、宅内ます33と同程度の容積を有する1基の液体収集用のタンクであり、宅内ます33の1回分の排水量に相当する量の排水を一時的に貯留する。集水タンク12の側面上部には、宅地ます33から排水を吸引するための吸引管21が接続されており、下部には排水をマンホール34に送出する吐出管22が接続されている。
【0019】
真空ポンプ13は、例えば、高速回転するロータによって気体を輸送するルーツ式ドライ真空ポンプが用いられる。封水等の付帯設備を設ける必要がなく、設置コストの削減を図ることができる。真空ポンプ13は、真空ポンプ接続管23を介して集水タンク12の上部に接続されており、真空ポンプ13の起動により集水タンク12内の空気が真空ポンプ接続管23及び排気管24より排気され、これにより集水タンク12内を負圧にする。
【0020】
圧力伝送器14は、流入電動弁15の吸引管側に設置され、吸引管21内の圧力を測定して測定圧力に対応した信号を出力することで、吸込官21内の圧力を検出する。圧力伝送器14で出力された圧力の信号は、配電盤17へ送信される。なお、圧力伝送器14に代えて、所定圧力で接点を開閉する圧力スイッチを設けても良い。
【0021】
流入電動弁15及び吐出電動弁16は、それぞれ、集水タンク12に接続された吸引管21と吐出管22の根元に設置され、制御盤17に電気的に接続されている。これら電動弁15,16は、制御盤17からの制御信号を受けて、吸引管21と吐出管22のそれぞれを開閉し、これにより排水の送出を制御する。
【0022】
吐出管22には、既設の自然流下配管のマンホールが接続されており、集水タンク12から排出された生活排水が、吐出管22を介してマンホールに流出される。
【0023】
制御部17は、汎用型又は専用のコンピュータ装置が備えられた制御盤であり、真空ポンプ13、圧力伝送器14、流入電動弁15及び吐出電動弁16に電力を供給するとともに、圧力伝送器14からの信号を受けて、真空ポンプ13の運転/停止、電動弁15,16の開閉の制御を行う制御プログラムがインストールされている。また、制御部17は、真空ポンプ13及び電動弁15,16の動作時間をカウントするタイマー装置が備えられている。
【0024】
本実施形態の排水送出装置10では、宅内ます33からの生活排水の吸引を開始する水位(起動水位。例えば宅内ます33の底面から30cm)を予め定められており、その状態での吸引管21内の圧力を、真空ポンプ13の起動開始のトリガーとなる起動圧力P1として、制御部17内のメモリに保存されている。また、真空ポンプ13の起動時間、流入電動弁15及び吐出電動弁16を開状態に維持する時間の情報が予め設定されており、制御部17内のメモリに保存されている。
【0025】
また、制御部17に警報器を設け、集水タンク内の排水につき所定条件(水位、pH等)が所定値に達した場合に警報を発生させるように構成しても良い。
【0026】
以下、制御部17の具体的な制御例について、図2を参照しつつ説明する。家屋から排水された生活排水は、自然流下により流入管32から宅内ます33に流入する。宅内ます33に排水が貯留されていない状況では、吸引管21内の圧力は大気圧P2となっており、流入電動弁15及び吐出電動弁16はいずれも閉状態となっている。
【0027】
生活排水が宅内ます33に流入され、吸引管21の管端が没水された状況で排水がさらに流入されると、水位の上昇に伴い吸引管21内の空気が圧縮され、その結果、吸引管21の圧力が上昇する。
【0028】
圧力伝送器14は、継続的に吸引管21内の圧力値を検出しており、検出された圧力が起動圧力P1に達すると、制御部17は真空ポンプ13を起動して集水タンク12内を負圧にする。その後、制御部17は流入電動弁を開状態に切り替える。これにより、宅内ます33内の生活排水が吸引管21を介して集水タンク12に吸い上げられる。
【0029】
制御部17は、真空ポンプ13を起動する設定時間が経過したことを検出すると、真空ポンプ13を停止する。真空ポンプ13の停止後も、集水タンク12内の残圧によりしばらくの間、吸引管21から空気を吸い続け、最終的に集水タンク21内は大気圧になる。
【0030】
集水タンク12(及び吸引管21)の内部が大気圧になったことが検出されると、制御部17は、吐出管22に設置された吐出電動弁16を開状態に切り替える。これにより、集水タンク13内の排水が自然流下で吐出管22を介して既設のマンホールへ流出される。
【0031】
制御部17は、吐出電動弁16が開状態になってから所定時間が経過したことを検出すると、流入電動弁15及び吐出電動弁16を閉状態に切り替える。これにより、集水タンク12からの排水の送出が完了する。
【0032】
このように、本実施形態に係る排水送出装置によれば、宅地内に排水用の機械設備を設置する必要がないため、簡易な構成により、低地にある排水発生源からの排水を外部に送出することができる。また、配電盤(制御部)を宅地内に設置する必要がなくなるため、電力会社の了解を得る手間を省くことができるとともに、設備の管理コストの削減を図ることができる。さらに、排水発生源に水位計等の設備を設置する必要がなくなるから、配線工事を省略することができる。
【0033】
上記実施形態の排水送出装置では、圧力伝送器を1箇所に設けて吸引管21内の圧力を測定しているが、吸引管21の高さが異なる2箇所に圧力伝送器を設け、これら圧力伝送器での圧量の測定値の差分(差圧)を検出し、当該差圧に基づき真空ポンプを停止するよう制御しても良い。
【0034】
上記実施形態の排水送出装置では、タイマーにより設定時間の経過を検出することで電動弁の開閉制御を行っているが、これに限られることはなく、例えば集水タンクに水位計を設置し、当該水位計の水位の検出値に基づき電動弁の開閉制御を行うように構成しても良い。
【0035】
上記実施形態の排水送出装置では、構成機器一式を設置するようにしているが、故障時にバックアップできるように予備を一式追加し機器を切り換えて排水の送出ができるように構成してもよい。
【0036】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0037】
10 排水送出装置
12集水タンク
13 真空ポンプ
14 圧力伝送器
15,16 電動弁
17 制御部
21 吸引管
22 吐出管
図1
図2
図3