(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176220
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】洗浄システム及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01J 38/66 20060101AFI20231206BHJP
B01J 29/90 20060101ALI20231206BHJP
B01J 38/02 20060101ALI20231206BHJP
B01J 38/50 20060101ALI20231206BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20231206BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B01J38/66
B01J29/90 A ZAB
B01J38/02
B01J38/50
B01D53/96 500
B08B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088384
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】513165665
【氏名又は名称】株式会社オプティ
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】猪野 栄一
(72)【発明者】
【氏名】脇原 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊與木 健太
(72)【発明者】
【氏名】ラケル シマンカス
【テーマコード(参考)】
3B201
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201AB03
3B201AB42
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB95
4D148AA06
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4G169AA10
4G169BA07A
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4G169BA47C
4G169BE01C
4G169BE14C
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4G169BE17C
4G169CA03
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4G169FB30
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4G169GA10
4G169GA12
4G169ZA01A
4G169ZA19A
4G169ZD10
(57)【要約】
【課題】触媒としての性能を維持しつつハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットを洗浄すること。
【解決手段】洗浄システムは、複数の細孔を有する*BEA型ゼオライトを備えるハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットの洗浄システムであり、洗浄装置10と焼成装置20とを備える。洗浄装置10は、触媒ユニット12にイオン交換をさせないという条件のもと、例えばTEAOH等のアルカリ溶液の溶剤17により触媒ユニット12を洗浄する。焼成装置20は、洗浄がなされた触媒ユニット12を600℃の温度で2時間焼成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を有する触媒活性成分を備えるハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニットを洗浄する洗浄システムにおいて、
前記触媒ユニットにおいてイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液により前記触媒ユニットを洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄がなされた前記触媒ユニットを所定の温度で焼成する焼成装置と、
を備える洗浄システム。
【請求項2】
前記条件は、前記アルカリ溶液に含まれるカチオンのサイズが、前記触媒ユニットの前記触媒活性成分の前記細孔のサイズより大きいという条件である、
請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】
前記条件を満たす前記アルカリ溶液は、テトラアルキルアンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミンのうち1種類以上の有機物から構成される、
請求項2に記載の洗浄システム。
【請求項4】
複数の細孔を有する触媒活性成分を備えるハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニットを洗浄する洗浄方法において、
前記触媒ユニットにおいてイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液により前記触媒ユニットを洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄がなされた前記触媒ユニットを所定の温度で焼成する焼成ステップと、
を含む洗浄方法。
【請求項5】
前記条件は、前記アルカリ溶液に含まれるカチオンのサイズが、前記触媒ユニットの前記触媒活性成分の前記細孔のサイズより大きいという条件である、
請求項4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記条件を満たす前記アルカリ溶液は、テトラアルキルアンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミンのうち1種類以上の有機物から構成される、
請求項5に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばNOx(窒素酸化物)の浄化に使われているハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニットの洗浄システム及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル自動車用の酸化触媒装置に関し、DOCの浄化性能を回復することが可能な洗浄方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットの洗浄方法については開示されていない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、触媒としての性能を維持しつつハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットを洗浄することができる洗浄システム及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の洗浄システムは、
複数の細孔を有する触媒活性成分を備えるハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニットを洗浄する洗浄システムにおいて、
前記尿素SCRシステムの前記触媒ユニットにおいてイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液により前記触媒ユニットを洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄がなされた前記触媒ユニットを所定の温度で焼成する焼成装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、触媒としての性能を維持しつつハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットを洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の洗浄システムの洗浄対象の一例のハニカムモノリス型尿素SCRシステム中の触媒ユニットの部分拡大図である。
【
図2】
図1の触媒ユニットのゼオライトの骨格構造を幾何学的に示す図である。
【
図3】
図1の触媒ユニットを洗浄する洗浄システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図3の洗浄システムによる洗浄方法を示す図である。
【
図5】
図1の触媒ユニットに用いる触媒のサンプルを洗浄する前のデータを示す図である。
【
図6】
図5のサンプルを洗浄せずに焼成したときのデータを示す図である。
【
図7】
図5のサンプルを洗浄した後のデータを示す図である。
【
図8】
図5のサンプルを洗浄した後に焼成形したときのデータを示す図である。
【
図9】
図5のサンプルの、洗浄前後のUV-可視光スペクトル特性を示す図である。
【
図10】
図5のサンプルについての、洗浄前後のNH
3SCR反応の結果を示す図である。
【
図11】
図5のサンプルを洗浄しないTG-MSプロフィールと、当該サンプルを洗浄及び焼成したTG-MSプロフィールとの対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
まず、初めに本発明を導き出すまでの経緯について説明する。
従来から、ハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムにおける触媒ユニットでは、尿素水が原因のトラブルが多発している。
尿素SCRシステムに用いられる触媒ユニットの内部に固形状物質が堆積し、その堆積した堆積物によりディーゼル排気が阻害されたり、また触媒相が尿素由来の物質(シアヌル酸等)により被覆されてしまい、還元反応ができなくなる。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、この固形堆積物及び被覆物は、アルカリ溶液によって溶かすことができることを突き止めた。
しかし、アルカリ溶液によっては、触媒とイオン交換するものがある。
例えば苛性ソーダ、テトラメチル・アンモニウムヒドロキシド(TMAOH)等は、触媒とイオン交換してしまい、触媒が役割を果たせなくなるため、NOxを浄化できなくなる。
【0011】
本発明者らは、イオン交換しないアルカリ溶液として、例えばテトラエチル・アンモニウムヒドロキシド(TEAOH)やテトラプロピル・アンモニウムヒドロキシド(TPAOH)等が有効であることを突き止めた。つまり、苛性ソーダやTMAOHよりもカチオンの粒径が大きいTEAOHやTPAOH等のアルカリ溶液が有効であることを特定した。
【0012】
原理的には、イオン交換しないような条件のアルカリ溶液を用いて尿素SCRシステム中の触媒ユニットを洗浄することで、当該触媒ユニットの触媒相に担持される触媒活性成分(ゼオライト等)の細孔にカチオンが入らないように洗浄できるので、触媒活性成分(ゼオライト等)上の固形堆積物及び被覆物を取り除くことができる。
【0013】
以下、上記の原理を具現化した洗浄システムと洗浄方法について説明する。
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明に係る洗浄システムの洗浄対象の一例のハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットについて説明する。
図1は、本発明に係る一つの実施形態の洗浄システムの洗浄対象の一例のハニカムモノリス型尿素SCRシステムの触媒ユニットの部分拡大図である。
図2は、
図1のハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットのゼオライトの骨格構造を幾何学的に示す図である。
【0014】
洗浄システムの洗浄対象の一例は、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムに用いられる触媒ユニットである。
SCRは、人体に無害な尿素の水溶液をディーゼル排気中に噴霧し、尿素水の熱分解・加水分解反応で生成するNH3を還元剤として、ディーゼル排気中に存在するNOx成分を選択的にN2へ浄化することを言う。
【0015】
ハニカムモノリス型とは、
図1に示すように、互いに平行な多数のセル1(貫通孔)をもつコージェライトや炭化ケイ素等のセラミックス素材のハニカム部材2の夫々のセル1内の触媒相3に触媒活性成分としてのゼオライトを担持するものである。
ゼオライトは、沸石とも呼ばれるアルミノ珪酸塩鉱物で、大きな特徴としては結晶構造に由来した微細な空洞を有しており、その構造により、触媒、イオン交換等の用途に利用される。また、ゼオライトは、多孔質構造であり、その穴の形状は、Å(オングストローム:100億分の1m)単位の極微少な連続した空洞(細孔)を有する。
【0016】
ゼオライトのうち、特に、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステム中の触媒ユニットの触媒相3に用いるゼオライトは、幾何学的形状で説明すると、例えばリング状の細孔(
図2参照)を有する。
リング状の細孔を有するゼオライトには、*BEA型(大細孔)とCHA型(小細孔)がある。
例えば*BEA型(大細孔)のゼオライトは、
図2に示すように、ゼオライト中の12個のT原子(ケイ素やアルミニウム)の位置を線で繋いでリング状に表される12員環の骨格構造をとるものである。
12員環のゼオライトの細孔は、対向するT原子(ケイ素やアルミニウム)間の距離のうち、例えば短径Aが6.6Å(オングストローム)、長径Bが7.1Å(オングストローム)程度である。
なお、同じ12員環のものでもその傾き(ねじれ)によりリングのサイズ(短径A×長径B)が異なる。CHA型(小細孔)のゼオライトは、対向するT原子(ケイ素やアルミニウム)間の距離のうち、例えば短径Aが5.6Å、長径Bが5.6Å程度のものであり、多少の凹凸はあるものの短径Aと長径Bがほぼ同じものである。
【0017】
ここで、触媒活性成分のバリエーションについて説明する。
上記条件を満たすアルカリ溶液は、テトラアルキルアンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミンのうち1種類以上の有機物から構成される。
【0018】
具体的に、条件を満たすアルカリ溶液は、以下に示す有機物を含むものが有効である。
例えばテトラアルキルアンモニウムは、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等である。
この他、条件を満たすアルカリ溶液としては、例えばモルホリン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、2-メチルピリジン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、コリン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、N-メチルシクロヘキシルアミン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、キヌクリジン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアザビシクロ-(2,2,2)オクタンイオン、ジ-n-ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、2-イミダゾリドン、ジ-イソプロピル-エチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、N-メチル-n-ブチルアミン、ヘキサメチレンイミン等の1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミン等が挙げられる。
これらの中でも、細孔の大きさや材料コストの面で水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)を用いることが好ましい。
【0019】
続いて、
図3を参照して、上記
図1に示したハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットを洗浄する洗浄システムについて説明する。
図3は、実施形態に係る洗浄システムの構成例を示す図である。
【0020】
図3に示す洗浄システムは、洗浄装置10と、焼成装置20とを備える。
洗浄装置10は、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニット12を載置する台座11と、台座11を収容する容器13と、ポンプ14と、配管15と、容器13の上部に配置された散水装置16とを備える。
【0021】
容器13は、上部が開口されている。容器13の内部には、台座11の高さに至らない量の溶剤17が収容されている。
台座11の上部(台の部分)は、網状に形成されており、触媒ユニット12を通過した溶剤17は、台の部分の網目を通して水滴となり落下する。
ポンプ14は、容器13の溶剤17を、配管15を介して散水装置16に汲み上げ、散水装置16から散水されて容器13内に戻された溶剤17を循環させる。
散水装置16は、例えばシャワーヘッドのようなものであり、ポンプ14により汲み上げられた溶剤17を下方に配置された触媒ユニット12へ散布(散剤)する。
溶剤17には、例えば水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)等のアルカリ溶液が用いられる。
【0022】
洗浄装置10は、上述した触媒ユニット12においてイオン交換をさせないという条件のもと、上記溶剤17により触媒ユニット12を洗浄する。
その条件は、例えば溶剤17に含まれるカチオンのサイズが、触媒ユニット12の触媒活性成分(ゼオライト等)の細孔のサイズより大きいという条件である。この条件に適合する溶剤17が、上記TEAOHである。
【0023】
焼成装置20は、洗浄がなされた尿素SCR触媒を所定の温度で焼成する。所定の温度は、例えば有機物が燃焼する温度である450℃乃至600℃等とする。
【0024】
次に、
図4を参照して
図3の洗浄システムによる洗浄方法について説明する。
図4は、
図3の洗浄システムによる洗浄方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップS1において、容器13内に溶剤17を入れる。
【0025】
ステップS2において、容器13内に固定した台座11の上に、触媒ユニット12を配置する。この際、触媒ユニット12のセル1(
図1参照)を上下に向けるように触媒ユニット12を配置する。触媒ユニット12の上下はどちらでもよいが、下記洗浄ステップS3の洗浄中に上下を反対にする。つまりひっくり返す。
【0026】
洗浄ステップS3において、洗浄装置10は、触媒ユニット12においてイオン交換をさせないという条件のもと、TEAOH等の溶剤17により触媒ユニット12を洗浄する。
具体的には、洗浄装置10は、ポンプ14を駆動してTEAOHの溶剤17を、装置内に循環させることで、触媒ユニット12を洗浄する。装置内の循環とは、溶剤17を容器13から配管15を通じて汲み上げて散水装置16から散水し、触媒ユニット12を通じて容器13に戻すことである。
【0027】
濯ぎステップS4において、触媒ユニット12を洗浄装置10から取り出して水で濯ぐ。
その後、洗浄装置10により洗浄された触媒ユニット12を焼成装置20のマッフル炉の中に入れる。その後、焼成ステップS5に移行する。
【0028】
焼成ステップS5において、焼成装置20は、3℃/分の昇温速度で加熱し、550℃に達すると、その温度を2時間保持する。その後、保温を停止し、炉内の温度を常温まで戻して焼成処理を終了し、触媒ユニット12をマッフル炉から取り出す。
この焼成ステップS5は、尿素由来の化学物質であるシアヌル酸、シアン酸、アンメリン、アンメリド等を昇華すること、石油由来の有機基礎化学品等を燃焼させること、金属縁を分解すること等を目的としている。
【0029】
このように実施形態に係る洗浄システムによれば、触媒ユニット12にイオン交換をさせないという条件を持つTEAOH等の溶剤17を用いて触媒ユニット12を洗浄し、当該触媒ユニット12をおおよそ600℃で焼成することにより、TEAOH等の溶剤17(アルカリ溶液)で、触媒ユニット12の還元機能を損なうことなく洗浄することができる。
【0030】
以下、
図5乃至
図11を参照して実施形態の洗浄システムによる洗浄効果について説明する。
図5は、触媒ユニットに用いる触媒のサンプルを洗浄する前のデータを示す図である。
図6は、
図5のサンプルを洗浄せずに焼成したときのデータを示す図である。
図7は、
図5のサンプルを洗浄した後のデータを示す図である。
図8は、
図5のサンプルを洗浄した後に焼成形したときのデータを示す図である。
図9は、
図5のサンプルの、洗浄前後のUV-可視光スペクトル特性を示す図である。
図10は、
図5のサンプルについての、洗浄前後のNH
3SCR反応の結果を示す図である。
図11は、
図5のサンプルを洗浄しないTG-MSプロフィールと、当該サンプルを洗浄及び焼成したTG-MSプロフィールとの対比を示す図である。
【0031】
図5乃至
図8の表は、ゼオライトベータに相当する活性触媒の粉末サンプルについて、所定の条件下で試験したデータを示している。
所定の条件を以下に示す。
SCR反応について、
試験は、固定床流通式反応器(4mm)内において大気圧で実施した。
NH
3-SCRとして、約100mgの触媒(40~250μmメッシュサイズ)を反応器に充填した。300ppmのNH
3、300ppmのNO、5%のO
2、3%のH
2Oを含み、残余がN
2であるガス流を34000h-1の毎時気体空間速度(GHSV)で反応器に供給した。流出する気体組成物を、NOxアナライザー(ヤナコ製、ECL-88A)及びECD検出器を備えるガスクロマトグラフ(島津GC-8A)でオンライン分析した。試験温度は150、200、250、300、350、400、450及び500°Cとした。
図5の表は、上記の試験により得られたデータであり、洗浄しないサンプルの回折角2θ°と相対強度との関係を示す。
図6の表は、洗浄せずに焼成したサンプルの回折角2θ°と相対強度との関係を示す。
図7の表は、洗浄したサンプルの回折角2θ°と相対強度との関係を示す。
図8の表は、洗浄後焼成したサンプルの回折角2θ°と相対強度との関係を示す。
【0032】
図5の表は、触媒ユニットに用いる触媒のサンプルを洗浄する前のデータを示したものであり、*BEA型のゼオライトが結晶構造を保って残っていることが分かる。
図6の表は、サンプルを洗浄せずに焼成したデータを示したものであり、
図5のデータとほぼ同じであり、*BEA型のゼオライトが結晶構造を保って残っていることが分かる。
図7の表は、サンプルを洗浄しただけのデータを示したものであり、
図5のデータとほぼ同じであり、*BEA型のゼオライトが結晶構造を保って残っていることが分かる。
図8の表は、サンプルを洗浄した後、焼成したデータを示したものであり、
図5のデータとほぼ同じであり、*BEA型のゼオライトが結晶構造を保って残っていることが分かる。
即ち、
図5乃至
図8の表から、*BEA型のゼオライトの結晶構造を保たれており、洗浄や焼成により、触媒としての特性に変化がないことを確認できた。
【0033】
図9の洗浄前後のUV-可視光スペクトル特性から内部の活性点の鉄等の凝集状態が分かるが、それが洗浄によって、大きく変化していることが確認できる。
【0034】
図10の洗浄前後のNH
3SCRシステム中の触媒の反応の結果であるが、この結果の数値を見ると、洗浄前よりも洗浄後の方が数値が大きく、洗浄前に低下していた触媒活性が、洗浄と焼成を経ることで向上することが確認できた。
【0035】
図11(A)は、洗浄前のデータであり、
図11(B)は洗浄及び焼成後のデータであり、これらのグラブからは、含まれている有機物の量が分かる。
図11(A)の洗浄前のデータは、有機物の量が4.32%、
図11(B)の洗浄及び焼成後のデータは有機物の量が3.49%であり、夫々にはその量の有機物が含まれていることが分かる。
図11(A)のデータTG-MSプロフィールに対して、
図11(B)のTG-MSプロフィールは、焼成しているため、有機物が減少していることが分かる。
【0036】
上述した実施形態は、本発明を実施するための一例を記載したに過ぎず、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではない。
上述した実施形態では、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステム中の触媒ユニットを例示したが、これ以外の型の触媒であってもよく、尿素SCRシステム中の触媒ユニットであれば足りる。
上述した実施形態では、焼成手段として、焼成装置20等の焼成専用の炉(マッフル炉)を用いて触媒ユニット12を焼成する例を例示したが、この他、例えば車両に触媒ユニット12を取り付けて強制燃焼させることで焼成を行ってもよく、焼成手段は、実施形態のみに限定されない。
【0037】
以上を換言すると、本発明が適用される洗浄システムは、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される洗浄システム(例えば
図3参照)は、
複数の細孔を有する触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)を備えるハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄する洗浄システム(例えば
図3参照)において、
前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)においてイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液(例えばTEAOH等)により前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄する洗浄装置(例えば
図2の洗浄装置10等)と、
前記洗浄がなされた前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を所定の温度で焼成する焼成装置(例えば
図3の焼成装置20等)と、
を備える。
このように尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)にイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液(例えばTEAOH等)により尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄することにより、触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)の触媒相(例えば
図1の触媒相3等)が尿素由来の物質(シアヌル酸等)により被覆されることがなくなり、洗浄後も還元反応を行わせることができる。つまりハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)をアルカリ溶液(例えばTEAOH等)で洗浄した後でも触媒としての機能を維持することができるようになる。
この結果、洗浄後に触媒としての性能を維持できるように、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)をアルカリ溶液(例えばTEAOH等)で洗浄することができる。
【0038】
前記条件は、前記アルカリ溶液(例えばTEAOH等)に含まれるカチオンのサイズが、前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)の前記触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の前記細孔のサイズより大きいという条件である。
このように、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)の触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の細孔のサイズより大きいサイズのカチオンを含むアルカリ溶液(例えばTEAOH等)を用いて触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄することで、触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の細孔にカチオンが入らないようにしてアルカリ洗浄を行うことができるので、触媒ユニットに担持されている触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の詰まりを取り除くことができる。
【0039】
上記洗浄システム(例えば
図3参照)において、
前記洗浄がなされた尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を所定の温度(例えば450℃乃至600℃、好ましくは600℃に近い温度)で焼成する。
このように所定の温度(例えば450℃乃至600℃、好ましくは600℃に近い温度)で触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を焼成することにより、触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の活性を復活させることができる。
【0040】
複数の細孔を有する触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)を備えるハニカムモノリス型の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄する洗浄方法(例えば
図4参照)において、
前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)においてイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液(例えばTEAOH等)により前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄する洗浄ステップ(例えば
図4の洗浄ステップS3等)と、
前記洗浄がなされた前記触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を所定の温度で焼成する焼成ステップ(例えば
図4の焼成ステップS5等)と、
を含む。
このように尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)にイオン交換をさせないという条件のもと、所定のアルカリ溶液(例えばTEAOH等)により尿素SCRシステムの触媒ユニットを洗浄する洗浄ステップと、洗浄がなされた触媒ユニットを所定の温度(例えば450℃乃至600℃、好ましくは600℃に近い温度)で焼成する焼成ステップとを有することにより、触媒ユニットの触媒相が尿素由来の物質(シアヌル酸等)により被覆されることがなくなり、洗浄後も還元反応を行わせることができる。つまりハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニットをアルカリ溶液(例えばTEAOH等)で洗浄した後でも触媒の機能を維持することができるようになる。
この結果、ハニカムモノリス型の尿素SCRシステムの触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)をアルカリ溶液(例えばTEAOH等)により洗浄することができる洗浄方法を提供することができる。
【0041】
上記洗浄方法において、
前記条件は、前記アルカリ溶液(例えばTEAOH等)に含まれるカチオンのサイズが、前記尿素SCRシステムの前記触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の前記細孔のサイズより大きいという条件である。
このように、尿素SCRシステムの触媒ユニットの触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の細孔のサイズより大きいサイズのカチオンを含むアルカリ溶液(例えばTEAOH等)を用いて当該触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)を洗浄することで、触媒活性成分(例えば
図2の*BEA型ゼオライト等)の細孔にカチオンが入らないようにしてアルカリ洗浄を行うことができるので、触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)の詰まりを取り除くことができる。
【0042】
上記洗浄方法において、
前記条件を満たす前記アルカリ溶液は、テトラアルキルアンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミンのうち1種類以上の有機物から構成される。
このようにテトラアルキルアンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミンのうち1種類以上の有機物から構成されるアルカリ溶液を用いて洗浄することで、触媒ユニット(例えば
図3の触媒ユニット12等)の機能を低下させずに洗浄することができる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・洗浄装置、11・・・台座、12・・・触媒ユニット、13・・・容器、14・・・ポンプ、15・・・配管、16・・・散水装置、17・・・溶剤、20・・・焼成装置