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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176237
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231206BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20231206BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622D
H01L21/304 621D
B24B37/10
B24B55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088409
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】青木 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】平澤 学
(72)【発明者】
【氏名】岡部 和樹
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047FF08
3C047FF19
3C158AA07
3C158AC05
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
5F057AA21
5F057AA28
5F057BA12
5F057CA13
5F057DA03
5F057EA07
5F057EB04
5F057FA12
5F057FA37
5F057FA46
5F057GA02
5F057GA03
5F057GA30
(57)【要約】
【課題】シリコンウェーハの表面の全体としてより高LPD品質なシリコンウェーハを得ることができる、シリコンウェーハの研磨方法を提供する。
【解決手段】リンス工程が、研磨工程に続いて連続的に、研磨布に対し前記研磨ヘッドに保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、リンス剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることによりリンス処理を行う工程であり、前記リンス工程における、リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、10rpm以下とし、かつ、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、3kPa以下で実施される。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨定盤に貼り付けられた研磨布に対し、研磨ヘッドで保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、研磨剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることにより研磨を行う研磨工程と、前記研磨工程が終了した後に、リンス工程がなされるシリコンウェーハの研磨方法であって、
前記リンス工程が、前記研磨工程に続いて連続的に、研磨布に対し前記研磨ヘッドに保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、リンス剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることによりリンス処理を行う工程であり、
前記リンス工程において、
リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、10rpm以下とし、
かつ、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、3kPa以下とする、リンス処理がなされることを特徴とするシリコンウェーハの研磨方法。
【請求項2】
前記リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が段階的に低速化され、最終的に5rpm以上10rpm以下でリンス処理されることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの研磨方法。
【請求項3】
前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重が、1kPa以上3kPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの研磨方法。
【請求項4】
前記リンス処理時間が2秒以上20秒以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの研磨は、通常、研磨布や研磨剤の種類を変えながら複数段階で行われる(多段研磨)。また、シリコンウェーハの研磨方法としては、化学的研磨作用と機械的研磨作用とを複合化させた化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が一般的であり、アルカリベースの水溶液の中に微小なシリカ粒子を分散させた研磨剤(スラリー)を用い、研磨することによって、優れた平滑性および鏡面が得られる。
特に、シリコンウェーハ製造の最終の研磨工程では、表面に欠陥がなく、平滑性の高いシリコンウェーハが求められており、スラリーや研磨布等の研磨消耗資材の組み合わせや研磨条件の最適化が進められている。
【0003】
ところで、シリコンウェーハの研磨工程は、一般的には、例えば、粗研磨工程、中間研磨工程、仕上げ研磨工程の多段の研磨工程が行われる。
そして、例えば、多段の研磨工程うちの一つの研磨工程が終了した毎に、リンス工程が行われる。あるいはまた、仕上げ研磨工程が終了した後に、リンス工程がなされる。
【0004】
このリンス工程では、例えば、特許文献1に示すような研磨用組成物また特許文献2に示すようなリンス用組成物等(以下、これらをリンス剤という)が用いられる。
前記リンス工程は、研磨定盤に貼り付けられた研磨布に対し研磨ヘッドに保持されたシリコンウェーハを押し当て、所定のリンス剤を研磨布に滴下して、研磨定盤および研磨ヘッドを互いに回転して、シリコンウェーハを摺動させることによって、シリコンウェーハのリンス工程が行われる。
【0005】
そして、前記リンス工程によって、シリコンウェーハの表面に付着する砥粒等が除去され、シリコンウェーハの表面の清浄化がなされる。その結果、シリコンウェーハの表面は優れた平滑性有し、鏡面とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-57467号公報
【特許文献2】特開2020-167237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記リンス工程を経たシリコンウェーハの表面には、そもそも、異物のほか、研磨工程において生じるPID欠陥(Polishing Induced Defect)等の欠陥が存在しないことが望ましいが、レーザ表面検査装置を用いて、シリコンウェーハ表面を観察すると、異物、欠陥がLPD(Light Point Defect)として検出される。
しかも、前記LPD(Light Point Defect)がシリコンウェーハの表面全体にわたって均一ではなく、シリコンウェーハの外周部のLPDがシリコンウェーハの内周部のLPDより数多く存在し、シリコンウェーハの外周部のLPD品質が悪かった。
【0008】
本発明者らは、シリコンウェーハの外周部のLPD品質を悪化させる原因について、鋭意研究した。
その結果、シリコンウェーハ外周部において、異物、欠陥が多くなるのは、シリコンウェーハ外周部がリンス工程において疎水状態になりやすく、付着している研磨剤、異物が凝集し、除去し難くなることが起因していることを知見した。
具体的には、本発明者らは、研磨後のリンス工程においてシリコンウェーハと研磨布との摩擦によるせん断応力により、シリコンウェーハ外周部のリンス剤被膜が除去されやすく、それに伴って、シリコンウェーハ外周部が疎水状態になりやすいこと知見した。
そして、本発明者らは、所定条件下でリンス工程を行うことにより、シリコンウェーハ外周部が疎水状態になり難く、付着している研磨剤、異物が凝集することなく、容易に除去でき、LPD(Light Point Defect)数を低減できることを想到した。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、シリコンウェーハの外周部のLPD(Light Point Defect)品質の向上を図ることにより、シリコンウェーハの表面の全体として、より高LPD品質なシリコンウェーハを得ることができる、シリコンウェーハの研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するためになされた、本発明にかかるシリコンウェーハの研磨方法は、研磨定盤に貼り付けられた研磨布に対し、研磨ヘッドで保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、研磨剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることにより研磨を行う研磨工程と、前記研磨工程が終了した後に、リンス工程がなされるシリコンウェーハの研磨方法であって、前記リンス工程が、前記研磨工程に続いて連続的に、研磨布に対し前記研磨ヘッドに保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、リンス剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることによりリンス処理を行う工程であり、前記リンス工程において、リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、10rpm以下とし、かつ、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、3kPa以下とする、リンス処理がなされることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、研磨工程の直後に、所定の条件下でリンス工程を実施することにより、シリコンウェーハの表面が疎水状態になることを抑制する。
前記リンス工程は、リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、10rpm以下とし、かつ、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、3kPa以下として、実施される。
その結果、シリコンウェーハ外周部におけるリンス剤被膜が維持され、濡れ性が保たれる(リンス剤被覆率が高く保たれる)ため、シリコンウェーハ外周部に付着している研磨剤、異物等のパーティクルを効率良く除去することでき、LPD品質を改善することができる。
【0012】
尚、リンス剤被膜率とは、ウェーハ表面の親水性の面積を、ウェーハ表面の面積で割り、100を掛けたものである。即ち、リンス剤被膜率が100%の場合は、ウェーハ表面の全体が親水性を有していることを意味している。
また、研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が10rpmを超え、また研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重が3kPaを超えると、シリコンウェーハW外周部のリンス剤被膜が除去されやすく疎水状態になりやすいため好ましくない。
【0013】
ここで、前記リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が段階的に低速化され、最終的に5rpm以上10rpm以下でリンス処理されることが望ましい。
尚、リンス処理時の研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数が5rpm未満の場合には、シリコンウェーハ外周部の濡れ性を保つ(リンス剤被覆率を高く保つ)ことができないため、好ましくない。
【0014】
また、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重が、1kPa以上3kPa以下であることが望ましい。
尚、シリコンウェーハ表面への荷重が1kPa未満の場合には、シリコンウェーハ外周部の濡れ性を保つ(リンス剤被覆率を高く保つ)ことができないため、好ましくない。
【0015】
更に、前記リンス処理時間が2秒以上20秒以下であることが望ましい。
尚、リンス処理時間が2秒未満の場合には、リンス剤がシリコンウェーハ全体に行き渡らず、シリコンウェーハW外周部の濡れ性を保つ(リンス剤被覆率を高く保つ)ことができないため、好ましくない。また、リンス処理時間が20秒を超える場合には、シリコンウェーハW外周部のリンス剤被膜が除去されやすく疎水状態になりやすいため好ましくない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリコンウェーハの外周部のLPD(Light Point Defect)品質の向上を図ることにより、シリコンウェーハの表面の全体として、より高LPD品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、シリコンウェーハの研磨を行う研磨装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明にかかるシリコンウェーハの研磨方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明にかかるシリコンウェーハの研磨方法の他の例を示す図である。
図4図4は、実施例3における研磨工程およびリンス工程における研磨定盤および研磨ヘッドの回転数とシリコンウェーハへの荷重と研磨時間とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるシリコンウェーハの研磨方法の実施形態を詳細に説明する。尚、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明にかかるシリコンウェーハの研磨方法は、研磨定盤に貼り付けられた研磨布に対し、研磨ヘッドで保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、研磨剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることにより研磨を行う研磨工程と、前記研磨工程が終了した後に、前記研磨工程に引き続いて、連続的にリンス工程がなされるシリコンウェーハの研磨方法である。
【0020】
特に、前記リンス工程が、前記研磨工程に続いて連続的に、研磨布に対し前記研磨ヘッドに保持されたシリコンウェーハを所定の荷重で押し当て、リンス剤を当該研磨布に滴下して、シリコンウェーハを摺動させることによりリンス処理を行う工程であって、前記リンス工程における、リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、10rpm以下とし、かつ、前記リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重を、前記リンス工程の前に実施された研磨工程における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、3kPa以下とする点に特徴がある。
【0021】
まず、このシリコンウェーハの研磨方法に用いられる研磨装置の概略構成を図1に示す。
図1において、研磨装置(片面研磨装置)100は、リテーナリング2およびメンブレン3をシリコンウェーハ保持具として有する研磨ヘッド1と、研磨定盤4と、研磨定盤4に貼り付けられた研磨布5とを備える。
前記研磨ヘッド1は、シリコンウェーハWを囲うように設けられた環状のリテーナリング2、およびシリコンウェーハWの上面に当接して押圧力を付与するメンブレン3を備え、前記リテーナリング2及び前記メンブレン3によって、1枚のシリコンウェーハWを保持する。
【0022】
そして、研磨定盤4に貼り付けられた研磨布5に対し、研磨ヘッド1に保持されたシリコンウェーハWを所定の荷重で押し当て、研磨剤供給管6から、所定のアルカリベースの研磨剤を研磨布5に滴下し、研磨定盤4および研磨ヘッド1を互いに回転し、シリコンウェーハを摺動させる(図1参照)。
これにより、図2に示すように、シリコンウェーハWの研磨工程(研磨処理)S1が所定時間行われる。
【0023】
そして、シリコンウェーハWの研磨工程S1が終了した後、図2に示すように、リンス工程S2がなされる。
このリンス工程S2は、研磨直後に同一研磨布上でリンス工程を実施するものであり、研磨布5に対し前記研磨ヘッド1に保持されたシリコンウェーハWを所定の荷重で押し当て、リンス剤供給管7からリンス剤を当該研磨布5に滴下して、シリコンウェーハWを摺動させることによって行われる工程である。
尚、前記研磨剤供給管6とリンス剤供給管7は一つの管を共用し、図示しないバルブによって切り替えることにより、研磨剤、あるいはリンス剤を滴下できるようにしても良い。
【0024】
前記研磨剤は、アルカリベースの研磨剤であり、pH調整はKOH溶液を添加することによってなされる。
また、前記研磨剤は、砥粒を含有することにより、シリコンウェーハWを研磨できるものであれば良く、例えば、水溶性高分子と遊離砥粒とを含有した研磨剤を好適に用いることができる。
前記水溶性高分子としては、シリコンウェーハWの保護や表面粗さの改善等を効率良く行うためにヒドロキシエチルセルロース(HEC)を使用するのが好ましい。
尚、水溶性高分子は、これに限定されるものではなく、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体や、N-ビニル鎖状アミドのようなN-ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等であってもよい。
【0025】
また、研磨剤に含まれる遊離砥粒は、コロイダルシリカを使用するのが好ましい。尚、研磨剤に含まれる遊離砥粒は、これに限定されるものではなく、フュームドシリカやアルミナ粒子、酸化クロム粒子等であってもよい。
【0026】
また、リンス剤は、高分子の界面活性剤を含んだリンス剤を用いるのが好ましい。尚、リンス剤はこれに限定されるものではなく、有機アルカリ系のものや無機アルカリ系のものであってもよい。
【0027】
また、研磨布5は、特に限定するものではないが、シリコンウェーハWの保護およびシリコンウェーハWの取り代等の観点から適宜決定可能(硬質性、軟質性等)である。研磨布としては、一般的な不織布タイプ、ポリウレタンタイプ、スウェードタイプ等を特に制限なく使用することができる。
【0028】
上記したように、リンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数は、研磨時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数よりも小さく、10rpm以下のリンス処理を行う。
また、リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重は、研磨時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重よりも小さく、3kPa以下のリンス処理を行う。
【0029】
このように、リンス処理時における、研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が、研磨処理時よりも小さく、10rpm以下であり、また研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重が、研磨処理時よりも小さく、3kPa以下でリンス処理を行うため、シリコンウェーハと研磨布との摩擦によるせん断応力を小さくできるために、シリコンウェーハ外周部のリンス被膜は除去され難き、残存する。
【0030】
その結果、シリコンウェーハの表面をリンス液で覆うことができ(被覆することができ)、即ち、シリコンウェーハ表面が親水性となるため、付着している研磨剤、異物が凝集し難く、研磨剤、異物を除去しやすい。
特に、シリコンウェーハW外周部の濡れ性を保つ(リンス剤被覆率を高く保つ)ことができ、シリコンウェーハ外周部が疎水状態になり難く、付着している研磨剤、異物が凝集し難く、除去し易い。
【0031】
具体的に説明すると、リンス工程の前になされる研磨工程では、研磨ヘッド1および研磨定盤4の回転数を研磨処理時の回転数は、20rpm以上70rpm以下であり、シリコンウェーハW表面への荷重は、3kPa以上20kPa以下の範囲である。
シリコンウェーハWへの荷重は、主に研磨ヘッド1の加圧によるものである。そして、この際の圧力が3kPa以上20kPa以下の範囲である場合には、十分な取り代を得ながら、平坦度品質も良く、欠陥導入も最小限に抑えた、研磨を行うことができる。
【0032】
一方、前記研磨工程の後に行われるリンス工程では、リンス処理時の研磨ヘッド1および研磨定盤4の回転数は、研磨処理時の前記回転数より小さく、たとえば、5rpm以上10rpm以下である。
更に、リンス処理時のシリコンウェーハW表面への荷重は、研磨処理時の研磨荷重より小さく、たとえば、1kPa以上3kPa以下である。
【0033】
リンス処理時の研磨ヘッド1および研磨定盤4の回転数が5rpm未満の場合には、シリコンウェーハW外周部の濡れ性を保て(リンス剤被覆率を高く保て)ないため好ましくない。
また、リンス処理時の研磨ヘッド1および研磨定盤4の回転数が10rpmを超える場合には、シリコンウェーハW外周部のリンス被膜が除去されやすく疎水状態になりやすいため好ましくない。
【0034】
また、リンス処理実施時のシリコンウェーハW表面への荷重が1kPa未満の場合には、シリコンウェーハW外周部の濡れ性を保て(リンス剤被覆率を高く保て)ないため好ましくない。
また、リンス処理実施時のシリコンウェーハW表面への荷重が3kPaを超える場合には、シリコンウェーハW外周部のリンス被膜が除去されやすく疎水状態になりやすいため好ましくない。
【0035】
また、リンス工程では、研磨ヘッド及び研磨定盤の回転数を10rpm以下に低速化し、シリコンウェーハの押し当て荷重を3kPa以下に低圧化するリンス処理工程の時間を2秒以上20秒以下とするのが好ましい。
前記リンス処理工程の時間が2秒未満の場合には、リンス剤がシリコンウェーハW全体に行き渡らず、シリコンウェーハW外周部の濡れ性を保つ(リンス剤被覆率を高く保つ)ことができないため、好ましくない。
また、前記リンス処理工程の時間が20秒を超える場合には、シリコンウェーハW外周部のリンス被膜が除去されやすく疎水状態になりやすいため好ましくない。
【0036】
また、リンス工程では、研磨ヘッド1と研磨定盤4の回転数、およびシリコンウェーハW表面への荷重を、例えば、2段階に分けて下げるようにしても良い。
具体的には、リンス処理の開始時に、研磨ヘッド1と研磨定盤4の回転数、およびシリコンウェーハW表面への荷重を、研磨時の回転数および荷重よりも下げ、さらに、リンス工程の途中で回転数および荷重をもう1段階下げても良い。
なお、本発明にあっては、リンス工程におけるリンス終了時の前、少なくとも2秒以上の時間、研磨ヘッド1および研磨定盤4の回転数が5rpm以上10rpm以下を満たし、かつシリコンウェーハW表面への荷重が1kPa以上3kPa以下を満たしていればよく、回転数および荷重を下げる段数については、1段階であっても3段階以上であってもよい。
【0037】
また、前記リンス工程では、研磨布5の表面温度を10℃以上40℃以下とすることが望ましい。
研磨布5の表面温度が10℃未満の場合には、シリコンウェーハ表面の濡れ性が悪化する可能性があるため好ましくない。また、研磨布5の表面温度が40℃を超える場合には、シリコンウェーハ表面のヘイズが悪化し、シリコンウェーハ外周部の濡れ性が悪化する可能性があるため好ましくない。
【0038】
また、図2においては、研磨工程を一つの場合について説明したが、図3に示すように、複数の研磨工程を備えていても良い。
この場合、最後に行われる第3の研磨工程(仕上げ研磨(S1-3))の後の第3のリンス工程(S2-3)のみを実施しても良い。
好ましくは、図3に示すように、例えば、水溶性高分子と遊離砥粒とを含有した研磨剤を滴下して、第1の研磨工程(粗研磨(S1-1))、第2の研磨工程(中間研磨(S1-2))、第3の研磨工程(仕上げ研磨(S1-3))の3つの研磨工程の夫々の工程の後、第1の研磨工程(粗研磨(S1-1))の後に第1のリンス工程(S2-1)を実施し、また第2の研磨工程(中間研磨(S1-2))の後に第2のリンス工程(S2-2)を実施し、更に、第3の研磨工程(仕上げ研磨(S1-3))の後に第3のリンス工程(S2-3)を実施するのが良い。
【0039】
このとき、第1のリンス工程(S2-1)のリンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数が、前記第1のリンス工程(S2-1)の前に実施された第1の研磨工程(粗研磨工程(S1-1))における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、5rpm以上10rpm以下のリンス処理が実施され、かつ、リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重が、前記第1のリンス工程(S2-1)の前に実施された第1の研磨工程(粗研磨工程(S1-1))における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、1kPa以上3kPa以下のリンス処理が実施される。
【0040】
同様に、第2のリンス工程(S2-2)のリンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数は、第2の研磨工程(中間研磨工程(S1-2))における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、5rpm以上10rpm以下のリンス処理が実施される。
また、リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重は、第2の研磨工程(中間研磨工程(S1-2))における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、1kPa以上3kPa以下で実施される。
【0041】
また同様に、第3のリンス工程(S2-3)のリンス処理時の前記研磨ヘッドおよび前記研磨定盤の回転数は、第3の研磨工程(仕上げ研磨工程(S1-3))における研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数より小さく、5rpm以上10rpm以下のリンス処理が実施される。
また、リンス処理時の研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重は、第3の研磨工程(仕上げ研磨工程(S1-3))における研磨布に対するシリコンウェーハの押し当て荷重より小さく、1kPa以上3kPa以下で実施される。
【0042】
このように、複数の研磨工程の夫々にリンス工程が実施されるため、各工程において、シリコンウェーハW表面全体がリンス剤被膜で覆われ、濡れ性が保たれる(リンス剤被覆率を高く保たれる)ため、シリコンウェーハW全体におけるパーティクルを効率良く除去することできる。
【0043】
以上述べたように、シリコンウェーハW表面全体がリンス剤被膜で覆われ、濡れ性が保たれる(リンス剤被覆率を高く保たれる)ため、シリコンウェーハW全体におけるパーティクルを効率良く除去することでき、LPD品質を大幅に改善することができる。
特に、シリコンウェーハW外周部におけるパーティクルを効率良く除去することでき、LPD品質を大幅に改善することができる。
【実施例0044】
(実施例1)
実施例1では、アルカリベースの研磨剤として、平均分子量が30000のヒドロキシエチルセルロースと平均粒径が35nmのコロイダルシリカとを含有する研磨剤を用い、研磨布として、発泡ウレタン樹脂を用い、研磨定盤の回転数を55rpm、研磨ヘッドの回転数を56rpm、研磨荷重を10kPaとして100秒研磨を行った。研磨布の表面温度は、25℃とした。
その後、リンス工程を行った。このリンス剤として高分子の界面活性剤が含有されたものを用い、リンス時間を10秒とした。研磨定盤の回転数は8rpmとした。研磨ヘッドの回転数は、10rpmとした。また、シリコンウェーハへの荷重は3kPaとした。研磨布の表面温度は、25℃とした。
そして、リンス工程の終了した後、レーザ表面検査装置を用いて、LPDを測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
実施例2では、アルカリベースの研磨剤として、平均分子量が30000のヒドロキシエチルセルロースと平均粒径が35nmのコロイダルシリカとを含有する研磨剤を用い、研磨布として、発泡ウレタン樹脂を用い、研磨定盤の回転数を55rpm、研磨ヘッドの回転数を56rpm、研磨荷重を10kPaとして100秒研磨を行った。
その後、リンス工程を行った。このリンス剤として実施例1と同様のリンス剤を用い、リンス時間を10秒とした。研磨定盤の回転数は5rpmとした。研磨ヘッドの回転数は、7rpmとした。また、シリコンウェーハへの荷重は1kPaとし、リンス処理時間は10秒とした。研磨布の表面温度は、25℃とした。
そして、リンス工程の終了した後、レーザ表面検査装置を用いて、LPDを測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
実施例3では、アルカリベースの研磨剤として、平均分子量が30000のヒドロキシエチルセルロースと平均粒径が35nmのコロイダルシリカとを含有する研磨剤を用い、研磨布として、発泡ウレタン樹脂を用い、図4に示すように、研磨定盤の回転数を55rpm、研磨ヘッドの回転数を56rpm、研磨荷重を10kPaとして100秒研磨を行った。
その後、リンス工程を行った。このリンス剤として実施例1と同様のリンス剤を用い、図4に示すように、100秒後(研磨後)になされるリンス工程のリンス時間を10秒(前半5秒→後半5秒)とした。研磨定盤の回転数は、前半5秒は44rpm、後半5秒は8rpmとした。研磨ヘッドの回転数は、前半5秒は45rpm、後半5秒は10rpmとした。
【0047】
また、シリコンウェーハへの荷重は、前半5秒は5kPa、後半5秒は3kPaとした。研磨布の表面温度は、25℃とした。
尚、図4は、研磨工程、及び研磨工程に続き連続的になされるリンス工程における、研磨定盤および研磨ヘッドの回転数(rpm)とシリコンウェーハへの荷重(kPa)と研磨時間(秒)とを示す図である。
そして、リンス工程の終了した後、レーザ表面検査装置を用いて、LPDを測定した。その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例)
比較例では、実施例1と同様の条件で、アルカリベースの研磨剤として、平均分子量が30000のヒドロキシエチルセルロースと平均粒径が35nmのコロイダルシリカとを含有する研磨剤を用い、研磨布として、発泡ウレタン樹脂を用い、研磨定盤の回転数を55rpm、研磨ヘッドの回転数を56rpm、研磨荷重を10kPaとして100秒研磨を行った。
その後、リンス工程を行った。このリンス剤として実施例1と同様のリンス剤を用い、リンス時間を10秒とした。研磨定盤及び研磨ヘッドの回転数は、研磨工程から低速化させずに研磨定盤の回転数は55rpmとし、研磨ヘッドの回転数は、56rpmとした。また、シリコンウェーハへの荷重は10kPaとした。研磨布の表面温度は、25℃とした。
そして、リンス工程の終了した後、レーザ表面検査装置を用いて、LPDを測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<評価>
シリコンウェーハ外周部は、比較例に比べて実施例の方が、濡れ性(リンス剤被覆率)が向上し、パーティクルを効率良く除去することでき、LPD品質が向上することが確認できた。より具体的には、シリコンウェーハ表面のLPD数を比較例に比べて、実施例1で75%に、実施例2で80%に、実施例3で70%に低減することが確認できた。同様に、シリコンウェーハ外周部のLPD数を比較例に比べて、実施例1で62%に、実施例2で68%に、実施例3で50%に低減することが確認できた。
【符号の説明】
【0051】
1 研磨ヘッド
2 リテーナリング
3 メンブレン
4 研磨定盤
5 研磨布
100 片面研磨装置
図1
図2
図3
図4