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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176326
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20231206BHJP
   G01L 7/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
G01L9/00 303P
G01L7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088556
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】金丸 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】青野 宇紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055DD04
2F055EE13
2F055FF38
2F055GG25
(57)【要約】
【課題】本発明は、流体からの圧力を受けても、感度の低下や流体の漏れを防止できる圧力センサを提供する。
【解決手段】本発明による圧力センサは、流体の流路33である空間を内部に有する筐体32と、ひずみ検出部31bを備え薄膜半導体で構成されたセンサチップ31と、筐体32の内部に設けられたひずみ伝達物質36とを備える。ひずみ伝達物質36は、流路33である空間に接する受圧面36aと、ひずみ伝達物質36に対して受圧面36aと反対側の位置にあって筐体32の内面に固定された接合面36bとを備える。センサチップ31の全体は、ひずみ伝達物質36の内部に埋設されている。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路である空間を内部に有する筐体と、
ひずみ検出部を備え、薄膜半導体で構成されたセンサチップと、
前記筐体の前記内部に設けられたひずみ伝達物質と、
を備え、
前記ひずみ伝達物質は、前記空間に接する受圧面と、前記ひずみ伝達物質に対して前記受圧面と反対側の位置にあって前記筐体の内面に固定された接合面と、を備え、
前記センサチップの全体は、前記ひずみ伝達物質の内部に埋設されている、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記ひずみ伝達物質は、前記筐体よりも剛性が小さい、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記センサチップに接して設置され、前記センサチップの電極と電気的に接続されたリードフレームを備え、
前記リードフレームは、前記ひずみ検出部を含む前記センサチップの部分に面する範囲で開口する開口部を備える、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記センサチップの、前記リードフレームと接する面と反対側の面に設置されたキャップ部材を備え、
前記キャップ部材は、前記センサチップと接する面に、長手方向と短手方向を有する形状を持って前記ひずみ検出部の周囲を囲む凹部を備え、
前記凹部と前記開口部と前記キャップ部材を前記センサチップ上に投影したとき、前記凹部の投影された外形線は、前記開口部の投影された外形線よりも内側に位置し、前記キャップ部材の投影された外形線は、前記センサチップの外形線よりも内側に位置する、
請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記リードフレームは、一部が前記ひずみ伝達物質の前記内部に埋設されており、他の一部が前記筐体の外部に突出している、
請求項3に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関し、特に分注装置に設置可能な圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力を測定する圧力センサは、例えば、薄膜半導体ひずみセンサで構成され、分注装置に用いられる。分注装置は、例えば自動分析装置に備えられ、液体であるサンプル(検体)や試薬をノズルで吸引したり吐出したりする。分注装置に設置された圧力センサは、ノズルの詰まりや空吸い等の異常を検知するのに用いられることがある。
【0003】
特許文献1には、流体の圧力を測定する従来の圧力センサの例が記載されている。特許文献1に記載された圧力センサは、台座プレートに支持されたセンサチップを備える。センサチップは、流体の圧力に応じてひずみが生じるセンサダイアフラムを備え、圧力を検出する。台座プレートは、支持ダイアフラムに接合されている。支持ダイアフラムの中央部分は、センサチップに流体の圧力を導くための圧力導入孔を備える。センサチップの受圧部は、センサチップに対して、センサチップの台座プレートとの接合部と同一方向の位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-3234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄膜半導体ひずみセンサで構成された従来の圧力センサは、特許文献1に記載されているように、センサチップが圧力センサの筐体(又は台座)に固定され、センサチップの筐体との接合部とセンサチップの受圧部とが、センサチップに対して同一方向の位置にあるのが一般的である。この構造では、流体の流路が筐体で形成されており、センサチップの受圧部だけでなく、センサチップの筐体との接合部も直接流体に接する。このため、センサチップの筐体との接合部には、流体の圧力を受けると接合部を筐体から引き剥がす方向の引張応力が生じ、接合部が筐体から剥離する懸念がある。センサチップの筐体との接合部が剥離すると、圧力センサの感度の低下や接合部から流体が漏れる原因となる。このように、従来の圧力センサでは、流体からの圧力を受けると、センサチップの筐体との接合部に引張応力が生じて、感度の低下や流体の漏れを招くことが懸念されている。
【0006】
本発明の目的は、流体からの圧力を受けても、感度の低下や流体の漏れを防止できる圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による圧力センサは、流体の流路である空間を内部に有する筐体と、ひずみ検出部を備え、薄膜半導体で構成されたセンサチップと、前記筐体の前記内部に設けられたひずみ伝達物質とを備える。前記ひずみ伝達物質は、前記空間に接する受圧面と、前記ひずみ伝達物質に対して前記受圧面と反対側の位置にあって前記筐体の内面に固定された接合面とを備える。前記センサチップの全体は、前記ひずみ伝達物質の内部に埋設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、流体からの圧力を受けても、感度の低下や流体の漏れを防止できる圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1による圧力センサを備える分注装置の基本構成を示す図。
図2】ノズルが液体を吸引した直後の、アームにおける配管の内部の状態を示す図。
図3】従来の圧力センサの断面の一例を示す模式図。
図4A】実施例1による圧力センサの分解斜視図。
図4B】実施例1による圧力センサの、流路の方向に直交する面での断面図。
図5】実施例1による圧力センサにおいて、センサチップと、ボンディングワイヤと、リードフレームのみを示した分解斜視図。
図6】本発明の実施例2による圧力センサにおいて、センサチップと、ボンディングワイヤと、リードフレームと、キャップ部材のみを示した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による圧力センサは、流体の流路を構成する筐体と、筐体の内部に設置されたセンサチップを備え、流体からの圧力を受けても、センサチップの筐体との接合部に引張応力が生じず、感度の低下や流体の漏れを防止することができる。このため、本発明は、信頼性の高い圧力センサを提供することができる。
【0011】
以下、本発明の実施例による圧力センサを、図面を参照して説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0012】
本発明の実施例1による圧力センサを、図1から図5を参照して説明する。以下では、一例として、本実施例による圧力センサが、分注装置のサンプル分注機構に設置されている構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施例による圧力センサ15を備える分注装置1の基本構成を示す図である。分注装置1は、流路系と、サンプル分注機構13と、制御部14を備える。
【0014】
分注装置1の流路系は、ノズル2と、シリンジポンプ4と、電磁弁5と、ギアポンプ6と、システム水を貯蔵したタンク7を備え、これらの構成要素が配管8で接続されている。サンプル分注機構13は、ノズル2を有するアーム16を備え、ノズル2で液体(例えば、サンプルやシステム水)を吸引したり吐出したりする。制御部14は、分注装置1を制御する。例えば、サンプル分注機構13などを駆動するモータは、制御部14により制御される。
【0015】
シリンジポンプ4は、容器9と、プランジャ10と、ボールねじ11と、駆動モータ12を備える。駆動モータ12は、制御部14により制御される。
【0016】
アーム16は、その内部に本実施例による圧力センサ15を備える。アーム16は、液体を吸引・吐出する位置にノズル2を移動させるため、回転移動と上下移動が可能である。
【0017】
図2は、ノズル2が液体を吸引した直後の、アーム16における配管8の内部の状態を示す図である。
【0018】
配管8の内部は、シリンジ圧力伝達用の水であるシステム水21で満たされている。配管8内にシリンジポンプ4による圧力が伝達されることにより、ノズル2は、液体22(例えば、サンプルやシステム水)を吸引したり吐出したりすることができる。
【0019】
ノズル2が液体22を吸引するときには、電磁弁5を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を容器9から引く。ノズル2が液体22を吐出するときには、電磁弁5を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を容器9に押し込む。なお、ノズル2がサンプルなどの液体22を吸引する場合には、液体22が配管8内のシステム水21と混ざらないように、ノズル2は、分節するための分節空気23を吸引した後で、液体22を吸引する。
【0020】
また、ノズル2が液体22を吐出した後には、ノズル2の洗浄を行う。ノズル2の洗浄では、ノズル2の外壁に洗浄用の水を当てるのと同時に、ノズル2の内部のシステム水21をノズル2から押し出す。ノズル2の洗浄時にシステム水21をノズル2から押し出すときには、電磁弁5を開にしてギアポンプ6の圧力を利用する。このため、ノズル2の洗浄時には、システム水21は、シリンジポンプ4で押し出されるときよりも高圧で押し出される。
【0021】
分注装置1は、分注動作中に生じる可能性のあるノズル2の詰まりや空吸い等の異常を検知するため、配管8に圧力センサ15を備える。圧力センサ15は、システム水21の圧力をモニタリングし、ノズル2に異常が生じたときに発生する圧力変化を検知する。
【0022】
圧力センサ15の設置位置は、任意に定めることができる。本実施例では、一例として、ノズル2の圧力変化を敏感にとらえるために、圧力センサ15は、ノズル2に比較的近い位置であるアーム16の内部に設置されている。圧力センサ15は、アーム16の内部に限らず、例えばサンプル分注機構13の側面に設置してもよい。
【0023】
図3を用いて、従来の一般的な圧力センサの構造とその課題を説明する。
【0024】
図3は、従来の圧力センサ15aの断面の一例を示す模式図である。圧力センサ15aは、薄膜半導体で構成されたセンサチップ31と、センサチップ31が接合された筐体32とを備え、流路35を流れる流体を測定対象とする。センサチップ31の中央部の表面には、ひずみゲージ部31bが設けられている。図3に示す断面は、ひずみゲージ部31bを通り、センサチップ31の法線方向に沿う面での断面である。図3には、流体から圧力pを受けて変形したセンサチップ31を示している。
【0025】
センサチップ31は、流路35を流れる流体の圧力pを受けるように配置され、接合剤40で筐体32に接合されている。測定対象である流路35を流れる流体は、例えば、システム水21である。センサチップ31は、測定対象の流体の圧力pにより変形し、この変形によるひずみを測定することによって、測定対象の流体の圧力pを測定する。ひずみの測定は、ひずみゲージ部31bが行う。
【0026】
この圧力センサ15aにおいて、測定対象の流体から圧力pを受けてセンサチップ31が変形したとき、センサチップ31と接合剤40との接合面と、筐体32と接合剤40との接合面には、これらの接合を引き剥がす方向の力が生じる。このため、従来の圧力センサ15aには、センサチップ31が、過大な圧力や繰り返しの圧力を受けた場合に筐体32から剥離する懸念がある。また、従来の圧力センサ15aでは、センサチップ31の表面の一部や上記の接合面が測定対象の流体や外気に接するため、測定対象の流体や外気の湿度の影響等により、接合面の劣化や接合力低下も懸念される。
【0027】
本実施例による圧力センサ15は、これらの課題を解決することができる。図4A図4B図5を用いて、本実施例による圧力センサ15の構造と特徴を説明する。
【0028】
図4A図4Bは、本実施例による圧力センサ15の構造の一例を示す図である。図4Aは、圧力センサ15の分解斜視図を示している。図4Bは、圧力センサ15の、流路の延伸方向に直交する面での断面図を示している。
【0029】
圧力センサ15は、薄膜半導体で構成されたセンサチップ31と、センサチップ31を収容する筐体32と、筐体32の内部に設けられたひずみ伝達物質36を備え、流路33を流れる流体を測定対象とする。流体の流路33は、筐体32の内部に形成された空間である。センサチップ31の中央部の表面には、ひずみ検出部であるひずみゲージ部31bが設けられている。測定対象である流路33を流れる流体は、例えば、システム水21である。
【0030】
図4Bに示す断面は、ひずみゲージ部31bを通り、流体が流路33を流れる方向に直交する面(センサチップ31の法線方向に沿う面)での断面である。
【0031】
ここで、センサチップ31の法線方向を「上下方向」と、流路33の延伸方向(流体が流路33を流れる方向)を「流路方向」と、上下方向及び流路方向と直交する方向を「横方向」と、それぞれ定義する。
【0032】
筐体32は、上部筐体32aと、上部筐体32aの下方に位置する下部筐体32bとを備え、その内部にシステム水21が流れる流路33を備える。上部筐体32aと下部筐体32bは、互いに接触しており、これらの接触面32cは、システム水21が筐体32から漏れ出さないように、封止部材で封止されている。封止部材には、例えば、Oリングやシール剤等を用いることができる。なお、筐体32は、必ずしも2つの部品(上部筐体32aと下部筐体32b)で構成されている必要はなく、例えば、インサートモールド等により1つの部品で構成されていてもよく、3つ以上の部品で構成されていてもよい。
【0033】
流路33の流路方向の両端部には、図示しないネジ部が設けられている。流路33は、このネジ部により、継手を介して分注装置1の配管8と接続可能である。
【0034】
ひずみ伝達物質36は、筐体32の内面(すなわち、流路33の壁面)に固定されている。ひずみ伝達物質36の、筐体32の内面との固定面を接合面36bと呼ぶ。ひずみ伝達物質36は、流路33を流れるシステム水21と接すると、システム水21の圧力により圧縮される。ひずみ伝達物質36の、システム水21と接する面を受圧面36aと呼ぶ。受圧面36aは、流体の流路33である空間に接し、システム水21の圧力を受ける面である。接合面36bは、ひずみ伝達物質36に対して、受圧面36aと反対側の位置にある。ひずみ伝達物質36は、柔軟弾性体で構成することができ、例えばシリコーンゲルなどのゲル状物質で構成することができる。
【0035】
圧力センサ15は、センサチップ31に電気的に接続されたリードフレーム45を備えることができる。リードフレーム45は、センサチップ31と上下方向で接するように設置されている。なお、リードフレーム45とセンサチップ31の位置の上下関係は、任意に定めることができ、どちらが上方(図4Bでは筐体32の内面に近い位置)に配置されていてもよい。本実施例では、一例として、センサチップ31がリードフレーム45の上方に位置する。
【0036】
センサチップ31の全体とリードフレーム45の一部は、ひずみ伝達物質36の内部に埋設されている。
【0037】
リードフレーム45は、リードフレーム45を貫通する開口部(穴)であるアパーチャ45aを備える。アパーチャ45aは、ひずみゲージ部31bを含むセンサチップ31の部分に面する範囲で開口する。すなわち、リードフレーム45は、センサチップ31のひずみゲージ部31bとその周辺の部分に面する部分が、アパーチャ45aとして開口している。
【0038】
センサチップ31のうち、アパーチャ45aによって解放されている部分(すなわち、アパーチャ45aに面している部分)が、変形部であるダイアフラム部31aである。リードフレーム45がアパーチャ45aを備えることにより、ひずみ伝達物質36が圧縮されて生じたひずみが、ひずみ伝達物質36からセンサチップ31のダイアフラム部31aに伝わり、ダイアフラム部31aがたわんで変形する。センサチップ31は、このひずみをひずみゲージ部31bで測定することによって、筐体32の内部の流路33を流れるシステム水21の圧力を測定する。
【0039】
リードフレーム45は、センサチップ31からの出力を取り出すために設けられる。リードフレーム45のリード部は、センサチップ31の電極部とボンディングワイヤ46で電気的に接続されている。リードフレーム45は、その一部が筐体32の外部に突出しており、リード部が突出部まで伸びている。リードフレーム45と筐体32との間は、封止部材37で封止されている。封止部材37には、任意の部材を用いることができ、例えば、ひずみ伝達物質36を封止部材37に用いてもよく、Oリングを用いたり、リードフレーム45に形成されたガスケット等を用いたりすることもできる。
【0040】
センサチップ31は、リードフレーム45のリード部により、筐体32の外部と電気的に接続することができる。従来の圧力センサでは、センサチップ31を筐体32の内部に配置すると、センサチップ31に配線を接続してセンサチップ31を筐体32の外部に電気的に接続するのが困難であった。本実施例による圧力センサ15は、センサチップ31に電気的に接続されたリードフレーム45により、センサチップ31を筐体32の外部に電気的に接続することができる。
【0041】
本実施例による圧力センサ15の特徴は、ひずみ伝達物質36が、流体の流路33に接して流体から圧力を受ける受圧面36aと、ひずみ伝達物質36に対して受圧面36aと反対側の位置にあって筐体32の内面(すなわち、流路33の壁面)に接する接合面36bを備えることと、センサチップ31の全体が、ひずみ伝達物質36の内部に埋設されていることである。
【0042】
接合面36bが、ひずみ伝達物質36に対して受圧面36aと反対側の位置にあるという特徴により、ひずみ伝達物質36には、受圧面36aが流体から圧力を受けたとき、接合面36bに圧縮応力が生じる。すなわち、ひずみ伝達物質36には、受圧面36aが流体から圧力を受けることにより、接合面36bを筐体32に押し付ける方向の力が生じるため、原理上、接合面36bが筐体32から剥離することがない。
【0043】
センサチップ31の全体が、ひずみ伝達物質36の内部に埋設されているという特徴により、センサチップ31とひずみ伝達物質36の境界面は、システム水21や外気に晒されることがない。このため、センサチップ31は、システム水21や外気の湿度等により、ひずみ伝達物質36との接合力が低下することがない。
【0044】
従って、本実施例による圧力センサ15は、流体からの圧力を受けても、剥離に起因するセンサチップ31の感度の低下や、センサチップ31が接合されている箇所からの流体の漏れを防止できる。
【0045】
図5は、本実施例による圧力センサ15において、センサチップ31と、ボンディングワイヤ46と、リードフレーム45のみを示した分解斜視図である。センサチップ31の電極部31cは、リードフレーム45のリード部45bとボンディングワイヤ46で電気的に接続されている。
【0046】
リードフレーム45に設けられたアパーチャ45aは、長手方向と短手方向を有する形状、例えば長方形や楕円形や角丸長方形等の形状であるのが好ましい。図5には、一例として、長手方向が流路方向であり短手方向が横方向である長方形のアパーチャ45aを示している。
【0047】
センサチップ31のダイアフラム部31aは、センサチップ31のうちアパーチャ45aによって解放されている部分である。このため、ダイアフラム部31aの形状は、アパーチャ45aの形状によって定められ、長手方向と短手方向を有する形状、例えば長方形や楕円形や角丸長方形等の形状であるのが好ましい。
【0048】
長手方向と短手方向を有するダイアフラム部31aが、システム水21からの圧力を受けて変形すると、ひずみゲージ部31bでは、長手方向のひずみと短手方向のひずみの間で大きさに差が生じる。
【0049】
ダイアフラム部31aが長手方向と短手方向を有する形状である場合には、センサチップ31として、ひずみゲージ部31bの長手方向と短手方向のそれぞれのひずみを検知し、これらのひずみの差を出力するセンサチップを用いるのが好ましい。このような、ひずみの異方性を検知できるセンサチップ31を用いることにより、圧力センサ15は、圧力の検出感度を向上させることができる。なお、このようなセンサチップ31には、既存のセンサチップを用いることができる。
【0050】
また、このようなセンサチップ31を用いると、等方的なひずみを生じる熱ひずみの影響、すなわち温度変化の影響を小さくすることができる。従って、圧力センサ15は、温度変化による出力特性の変化を小さくすることができる。
【0051】
ひずみ伝達物質36は、筐体32の剛性よりも十分に小さい剛性を持つ材料で構成されるのが好ましい。一般に、筐体32は、システム水21の圧力による変形が十分小さくなるように、剛性が十分に大きい材料を用いて作られる。ひずみ伝達物質36が筐体32よりも十分に小さい剛性を持つことにより、システム水21の水圧に対して、ひずみ伝達物質36のみが効率よく変形する。このことにより、圧力センサ15は、圧力の検出感度を向上させることができる。
【実施例0052】
本発明の実施例2による圧力センサを、図6を参照して説明する。本実施例による圧力センサ15は、実施例1による圧力センサ15と同様の構成を備えるが、センサチップ31がキャップ部材を備える点が実施例1による圧力センサ15と異なる。以下では、本実施例による圧力センサ15について、実施例1による圧力センサ15と異なる点を主に説明する。
【0053】
図6は、本実施例による圧力センサ15において、センサチップ31と、ボンディングワイヤ46と、リードフレーム45と、キャップ部材34のみを示した分解斜視図である。
【0054】
キャップ部材34は、センサチップ31の表面に設置され、ひずみゲージ部31bを覆って保護する部材である。キャップ部材34は、センサチップ31のリードフレーム45と接する面と上下方向の反対側の面に設置されており、ひずみ伝達物質36の内部に埋設されている。キャップ部材34は、例えばシリコンで構成することができ、センサチップ31に熱硬化型接着剤等の接着部材を用いて接着されている。
【0055】
キャップ部材34は、キャビティ34aを備える。キャビティ34aは、キャップ部材34のセンサチップ31と接する面に設けられ、ひずみゲージ部31bの周囲を囲む凹部である。センサチップ31は、キャビティ34aに面する部分で変形可能であり、この変形可能な部分がダイアフラム部31aとして機能する。キャビティ34aは、長手方向と短手方向を有する形状、例えば長方形や楕円形や角丸長方形等の形状であるのが好ましい。図6には、一例として、長手方向が流路方向であり短手方向が横方向である楕円形(長円形)のキャビティ34aを示している。
【0056】
キャビティ34aをセンサチップ31上に投影したときのキャビティ34aの外形線を、キャビティ34aの外形投影線51と呼ぶ。アパーチャ45aをセンサチップ31上に投影したときのアパーチャ45aの外形線を、アパーチャ45aの外形投影線50と呼ぶ。キャップ部材34をセンサチップ31上に投影したときのキャップ部材34の外形線を、キャップ部材34の外形投影線52と呼ぶ。本実施例による圧力センサ15では、キャビティ34aの外形投影線51は、アパーチャ45aの外形投影線50よりもひずみゲージ部31b側(内側)に位置し、キャップ部材34の外形投影線52は、センサチップ31の外形線53よりも内側に位置する。
【0057】
本実施例による圧力センサ15が備えるセンサチップ31は、小型であり、半導体プロセスを用いてシリコンウエハ上に格子状に形成したセンサチップを矩形状にダイシングして製造するのが一般的である。キャップ部材34の外形投影線52が、センサチップ31の外形線53よりも内側に位置するので、センサチップを形成したウエハに対して、キャップ部材34を半導体プロセスで形成した後にダイシングする製造方法が可能である。従って、キャップ部材34の外形寸法や設置位置を、半導体プロセスを用いて高精度に決めることができる。
【0058】
また、キャビティ34aの外形投影線51が、アパーチャ45aの外形投影線50よりも内側に位置することにより、ダイアフラム部31aの形状は、キャビティ34aの外形投影線51により定められる。キャップ部材34は、半導体プロセスにより高精度な製造が可能である。このため、本実施例による圧力センサ15では、キャップ部材34のキャビティ34aの形状によって定まるダイアフラム部31aの形状の製造ばらつきを非常に小さくできる。従って、ダイアフラム部31aの形状のばらつきによるセンサチップ31の感度のばらつきも小さくできる。
【0059】
本実施例による圧力センサ15は、実施例1による圧力センサ15が有する効果に加えて、センサチップ31の感度のばらつきを小さくすることができるという効果を有する。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…分注装置、2…ノズル、4…シリンジポンプ、5…電磁弁、6…ギアポンプ、7…タンク、8…配管、9…容器、10…プランジャ、11…ボールねじ、12…駆動モータ、13…サンプル分注機構、14…制御部、15…圧力センサ、15a…従来の圧力センサ、16…アーム、21…システム水、22…液体、23…分節空気、31…センサチップ、31a…ダイアフラム部、31b…ひずみゲージ部、31c…電極部、32…筐体、32a…上部筐体、32b…下部筐体、32c…上部筐体と下部筐体の接触面、33…流路、34…キャップ部材、34a…キャビティ、35…流路、36…ひずみ伝達物質、36a…受圧面、36b…接合面、37…封止部材、40…接合剤、45…リードフレーム、45a…アパーチャ、45b…リード部、46…ボンディングワイヤ、50…アパーチャの外形投影線、51…キャビティの外形投影線、52…キャップ部材の外形投影線、53…センサチップの外形線。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6